説明

環状アミノエーテルを用いたマンニッヒ反応

【課題】ピペリジン−4−オン誘導体の合成中間体であるアミノメチルケトン誘導体の、工業的な製造方法の提供。
【解決手段】式(I)


で表される環状アミノエーテル化合物と、ケトン誘導体を、反応させる式(III)


で表されるアミノメチルケトン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状アミノエーテル化合物を用いたマンニッヒ反応による農医薬の有用な中間体であるアミノメチルケトン誘導体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農医薬中間体として有用なピペリジン−4−オン誘導体中のうち、架橋構造を有するイソトロパン誘導体の製造方法として、例えば、下記式に示すように、シクロペンタノンをダブルマニッヒ反応にて、一段階で環化させる方法が知られている。(特許文献1を参照)
【0003】
【化1】

【0004】
一方、そのようなダブルマンニッヒ反応の改良方法として、下記に示すように、鎖状のビスアミノエーテル化合物をルイス酸存在下に環状ケトンに反応させる方法が知られている。(非特許文献1を参照)
【0005】
【化2】

【0006】
【特許文献1】特表平6−5063443号公報
【非特許文献1】Synlett,2004, (13), 2359−2363
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法は、工程が短いものの、収率が低く工業的には実用性に乏しいという欠点があった。また、非特許文献1に記載の方法は、収率は優れているが、鎖状のビスアミノエーテル化合物の収率が低く、不安定であるが故に、取り扱いにくい点があること、マンニッヒ反応の基質としては、比較的反応性の高い基質に限定されている点、得られた生成物であるエステル体は通常の条件で加水分解、脱炭酸を行うと、生成物が分解し収率が低い点等、工業的には実用性に乏しく、汎用性にもかけるという欠点があった。
本発明は、ピペリジン−4−オン誘導体の製造上重要な合成中間体であるアミノメチルケトン誘導体の、高収率で作業性に優れた工業的に使用可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、環状アミノエーテル化合物は、収率よく得られ、しかも安定であること、及び、鎖状のビスアミノエーテル化合物を用いる場合よりも安価な試薬を用いても、収率よくマンニッヒ反応が進行し、ピペリジン−4−オン誘導体の合成中間体となるアミノメチルケトン誘導体を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、当該アミノメチルケトン誘導体を用いることで、収率よくピペリジン−4−オン誘導体を与えることをも見出した。
【0009】
すなわち本発明は、
式(I)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは、水素原子または有機基を表し、点線は、化学的に許容される環構造を構成する官能基を表す。)で表される環状アミノエーテル化合物と、式(II)
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。)で表されるケトン誘導体を、反応させることを特徴とする式(III)
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、R、R〜Rは、前記と同じ意味を表す。)で表されるアミノメチルケトン誘導体の製造方法に関し、
式(II)で表される化合物が、式(IV)
【0016】
【化6】

【0017】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表し、RとRは、一体となって化学的に許容される環構造を形成してもよい。)で表されるアセトン誘導体であり、式(III)で表される化合物が、式(V)
【0018】
【化7】

【0019】
(式中、R、R、R、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)で表される化合物であることが好ましく
式(I)中、化学的に許容される環構造を形成する官能基が、アルキレン基であることが好ましく、
式(IV)で表される化合物が、式(VI)
【0020】
【化8】

【0021】
(式中、R11は、水素原子または有機基を表し、点線は、化学的に許容される環構造を構成する官能基を表し、nは、0または化学的に許容される置換基数を表し、nが2以上の場合、R11同士は、同一または相異なっており、カルボニル基のα位は、少なくとも1つの水素原子を有するものとする。)で表される環状ケトン体であることが好ましい。
【0022】
さらに、上記の方法で得られた式(V)で表されるアミノメチルケトン誘導体と、ホルムアルデヒドを反応させることで、式(VII)
【0023】
【化9】

【0024】
(式中、R、R、R、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)で表されるピペリジン−4−オン誘導体を製造することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法を用いることにより、工業的規模で、収率よくアミノメチルケトン誘導体を製造することができるようになった。さらに該アミノメチルケトン誘導体を用いれば、容易にピペリジン−4−オン誘導体を製造することもできるようになった。本発明の方法で製造できるピペリジン−4−オン誘導体は、イソトロパンに代表されるように、農医薬の有用な中間体であり、本製造方法は、産業上の利用価値が高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に使用される式(I)中、Rは、水素原子または有機基を表す。有機基は、炭素原子を含む官能基全般を表し、具体的には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、チオアシル基、ホルミル基、アセタール基、ケタール基、R’OCO−基(R’は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基)、R’SCS基(R’は前記と同じ)、RNCO−基(R’は前記と同じ)、R’NS(O)−基(R’は前記と同じ)、R’NNHCO−基(R’は前記と同じ)、R’NCNH−基(R’は前記と同じ)、R’O基(R’は前記と同じ)、R’S基(R’は前記と同じ)、R’S(O)−基(R’は前記と同じ)、R’S(O)2−基(R’は前記と同じ)、R’N−基(R’は前記と同じ)、R’Si−基(R’は前記と同じ)等を例示することができる。さらに具体的には、脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、2−メトキシ−エテニル基等のアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基、2−フェニルエチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基等を例示することができ、脂環式炭化水素基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、2−オキソ−シクロヘキシル基等を例示することができ、芳香族炭化水素基として、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントラニル基、9−フェナントリル基等を例示することができる。ヘテロ環基として、具体的には、フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、ピロール−2−イル基、ピロール−3−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基、5−フェニル−5−トリフルオロメチル−イソオキサゾリン−3−イル基、2−フルフリルメチル基、3−チエニルメチル基、1−メチル−3−ピラゾロメチル基等の不飽和へテロ5員環基、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、6−クロル−3−ピリジルメチル基、2−ピリミジルメチル基等の不飽和へテロ6員環基、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドラピラン−4−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピロリジン−2−イル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、N−メチルピペラジニル基、2−テトラヒドラフラニルメチル基、3−ピペラジルメチル基、N−メチル3−ピロリジルメチル基、モルホリノメチル基等の飽和ヘテロ環基、ベンゾチオフェン−2−イル基、ベンゾフラン−2−イル基、インドール−2−イル基、ベンゾイミダゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、キノリン−2−イル基、イソキノリン−1−イル基、キサンテン−1−イル基、カルバゾール−1−イル基、キンドリン−1−イル基など2〜5環式のヘテロ環基等を例示することができる。アシル基として、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトニル基、2−ピリジルカルボニル基等を例示することができ、チオアシル基として、チオアセチル基、チオプロピオニル基、チオベンゾイル基、チオナフトニル基、2−ピリジルチオカルボニル基等を例示することできる。アセタール基として、具体的には、アルデヒド部分がアセタールとなった官能基を示し、より具体的には、ジメトキシメチル基、2,2−ジメトキシエチル基等を例示することができ、ケタール基も対応するケトン部分がケタールとなった官能基を表し、より具体的には、1,1−ジメトキシエチル基、1,1−ジメトキシベンジル基、2,2−ジメトキシプロピル基等を例示することができる。また、アセタール部分、ケタール部分は、環状であってもよい。R’OCO−基として、具体的には、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を例示することができ、R’SCS基として、メチルジチオカルボニル基、t−ブチルジチオカルボニル基、フェニルジチオカルボニル基等を例示することができる。RNCO−基として、具体的には、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等を例示でき、R’NS(O)−基として、具体的に、N,N−ジメチルスルファモイル基等を例示することができる。R’NNHCO−基として、具体的には、N−メチルカルバゾイル基、N,N−ジメチルカルバゾイル基等を例示することができる。R’NCNH−基として、具体的には、N−メチルホルムアミジノ基、N−メチル−N’−メチルホルムアミジノ基、N−メチル−N’,N’−ジメチルホルムアミジノ基、N−フェニルホルムアミジノ基、アセトアミジノ基等を例示することができる。R’O基として、メトキシ基、エトキシ基、イロプロポキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を例示することができ、R’S基として、メチルチオ基、イソプロピルチオ基、t−ブチルチオ基、フェニルチオ基等を例示することができ、R’S(O)−基として、メチルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、t−ブチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等を例示することができ、R’S(O)−基として、メチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等を例示することができる。R’N−基として、具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ベンジルアミノ基、アセチルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、2−プロピリデンアミノ基、ビスメチルチオメチリデンアミノ基等を例示することができる。R’Si−基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を例示することができる。
【0027】
これら有機基は、化学的に許容される範囲で構成する各原子上に置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、有機基として具体的に例示された官能基と同様のものを例示することができる。また有機基以外でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基を置換基として例示できる。
【0028】
有機基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基である。
【0029】
式(I)中、点線は、化学的に許容される範囲で環構造を形成できる二価の官能基であれば特に制限されず、たとえば、二価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の炭化水素基、ヘテロ環基等を例示することができる。また、これらの基には、−O−、−NR −(Rは水素原子又は炭化水素基)、−S−、−SO−、−SO −、−CONH−、−CO−または−COO−を連結基として有していてもよい。具体的には、上記有機基の定義において例示された有機基を二価にしたものが例示できるが、より具体的には下記に示す官能基を例示することができる。
【0030】
【化10】

【0031】
また、化学的に許容される範囲で、各元素上に置換基を有していてもよく、そのような置換基として、Rにおいて例示された具体例と同様のものを例示することができる。
【0032】
官能基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基である。
【0033】
式(I)で表される化合物として具体的には、下記示す化合物を例示することができる。
【0034】
【化11】

【0035】
本発明に用いられる式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、または有機基を表す。有機基として、具体的には、式(I)中のRにおいて例示された具体例と同様のものを例示することができる。また、化学的に許容される範囲で各原子は、置換基を有していてもよく、具体的には、式(I)中のRにおいて例示された具体例と同様のものを例示することができる。
有機基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基である。
【0036】
本発明に用いられる式(IV)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または有機基を表す。有機基として、具体的には、式(I)中のRにおいて例示された具体例と同様のものを例示することができる。また、RとRは一体となって化学的許容される範囲で環構造を形成してもよく、具体的には、式中における点線において例示した具体例と同様のものを例示することができる。また、化学的に許容される範囲で各原子は、置換基を有していてもよく、具体的には、式(I)中のRにおいて例示された具体例と同様のものを例示することができる。
有機基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基である。
【0037】
式(IV)として具体的には、下記に示す化合物を例示することができる。
【0038】
【化12】

【0039】
これ等のうち、特にRとRが一体となって環を形成した構造である式(VI)で表される環状ケトン体を好ましく例示することができる。式(VI)中、化学的に許容される環構造を構成する官能基は、式(I)中における化学的に許容される環構造を構成する官能基と同様のものを例示することができる。
官能基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基である。
11は、水素原子または有機基を表し、有機基として具体的には、式(I)中におけるRの具体例と同様のものを例示することができる。
有機基のうち、好ましくは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、5〜20員のヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、5〜10員のヘテロ環基である。
【0040】
本発明の式(III)又は式(V)で表されるアミノメチルケトン誘導体の製造方法は、式(I)で表される環状アミノエーテル化合物を用いたマンニッヒ反応であることを特徴とする。当該アミノメチルケトン誘導体は、式(I)で表される化合物と式(II)又は式(IV)で表される化合物を反応させることで得ることができ、当該反応は酸性条件下で行うことが好ましい。
式(I)で表される化合物の使用量は、特に限定はされないが、式(II)又は式(IV)で表される化合物1molに対して、0.8〜10molの範囲が好ましく、0.8〜2molの範囲がさらに好ましい。
【0041】
使用溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸類などの水系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いられる。必要に応じ有機溶剤との混合溶媒を用いてもよい。
溶媒の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は式(I)で表される化合物に対して質量比で2〜10倍程度が適当である。
【0042】
酸性条件下とするために、塩酸、硝酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸類を用いることができる。
酸類の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は式(I)で表される化合物に対して質量比で2〜10倍程度が適当である。
【0043】
式(I)で表される化合物、式(II)もしくは式(IV)で表される化合物、酸類の添加順序は特に制限されず、任意に選択することができる。
(1)式(I)で表される化合物の酸性溶液中に、式(II)もしくは式(IV)で表される化合物を添加する方法、
(2)式(I)で表される化合物と式(II)もしくは式(IV)で表される化合物の溶液に、酸類を添加する方法、
(3)式(I)で表される化合物の溶液中に、式(II)もしくは式(IV)で表される化合物の酸性溶液を添加する方法、
(4)式(II)もしくは式(IV)で表される化合物の酸性溶液中に、式(I)で表される化合物を添加する方法、等を具体的に例示することができる。
【0044】
反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、特に制限はないが、通常は、室温〜150℃(もしくは溶媒の沸点)、好ましくは70〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、通常は10分〜24時間、好ましくは30分〜4時間である。反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0045】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。また、特に分離精製を行わずに、次の反応に用いることもできる。
【0046】
本発明はさらに、上記方法により得られた式(V)で表されるアミノメチルケトン誘導体を用いて、さらにマンニッヒ反応を行うことで、式(VII)で表されるピペリジン−4−オン誘導体を得ることもできる。すなわち、式(I)で表される環状アミノエーテル化合物を用いた2回のマンニッヒ反応により、式(VII)で表される化合物を得ることができる。
【0047】
式(VII)で表される化合物は、式(V)で表される化合物とホルムアルデヒドを反応させることで得る事ができ、当該反応は酸性条件下で行うことが好ましい。
式(V)で表される化合物に対するホルムアルデヒドの使用割合は、特に限定されないが、式(V)で表される化合物に1mol対して、ホルムアルデヒドを10molの範囲が好ましく、1.5〜3molの範囲がさらに好ましい。
式(V)で表される化合物、ホルムアルデヒドの添加順序は特に制限されず、任意に選択することができる。
【0048】
使用溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸類などの水系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いられる。必要に応じ有機溶剤との混合溶媒を用いてもよい。
また、酸性条件下とするために、塩酸、硝酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸類を用いることができる。
溶媒の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は式(V)で表される化合物に対して質量比で2〜10倍程度が適当である。
酸類の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は式(V)で表される化合物に対して質量比で2〜10倍程度が適当である。
式(V)で表される化合物、ホルムアルデヒドの添加順序は特に制限されず、任意に選択することができる。
【0049】
反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、特に制限はないが、通常は、室温〜150℃(もしくは溶媒の沸点)、好ましくは70〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、通常は10分〜24時間、好ましくは1時間〜6時間である。反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0050】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0051】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
【化13】

【0053】
3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−オン(化合物5)の合成
トルエン20mLに92%パラホルムアルデヒド6.85g(0.23mol)、エチレングリコール6.52g(0.11mol)およびベンジルアミン10.72g(0.10mol)を順次加えて、還流温度にて加熱しながら30分共沸脱水し、3−ベンジル[1.5.3]ジオクサゼパン(化合物1)を得、特に精製することなく次工程に供した。
この化合物に水30mLおよび濃塩酸20.86g(0.20mol)を順次加え、トルエン層を除いた後、水50mLおよびシクロペンタノン19.20g(0.23mol)を加えて50℃にて4時間攪拌、さらに水50mLを加え同温度で1時間攪拌した。28%苛性ソーダにて中和した後トルエン層にて抽出、続いて濃塩酸20.86g(0.20mol)を加えて逆抽出した後酢酸10.8gを加えて、2−(ベンジルアミノメチル)シクロペンタノン(化合物3)塩酸塩の含水酢酸溶液55.22gを得た。この溶液をHPLCにて定量分析した結果、化合物3を33.0wt%含有しており、使用したベンジルアミンを基準とした2工程の通し収率は75.9%であった。
以上により得られた化合物3の含水酢酸溶液55.22gを、92%パラホルムアルデヒド6.53g(0.20mol)を含む酢酸200mLに、95℃にて30分を要して滴下し、さらに同温度にて1時間加熱した。
減圧濃縮により溶媒を留去、クロロホルム、水および28%苛性ソーダを順次加えてpHを3とした後、クロロホルム層を除いた。得られた水層を28%苛性ソーダにてpH12を以上とし、トルエンで抽出して表記化合物5のトルエン溶液25.27gを得た。この溶液をHPLCにて定量分析した結果、化合物5を55.0wt%含有しており、使用したベンジルアミンを基準とした3工程の通し収率は64.6%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは、水素原子または有機基を表し、点線は、化学的に許容される環構造を構成する官能基を表す。)で表される環状アミノエーテル化合物と、式(II)
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。)で表されるケトン誘導体を、反応させることを特徴とする式(III)

【化3】

(式中、R、R〜Rは、前記と同じ意味を表す。)で表されるアミノメチルケトン誘導体の製造方法。
【請求項2】
式(II)で表される化合物が、式(IV)
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表し、RとRは、一体となって化学的に許容される環構造を形成してもよい。)で表されるアセトン誘導体であり、式(III)で表される化合物が、式(V)
【化5】

(式中、R、R、R、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミノメチルケトン誘導体の製造方法。
【請求項3】
式(I)中、化学的に許容される環構造を形成する官能基が、アルキレン基であることを特徴とする請求項1または2に記載のアミノメチルケトン誘導体の製造方法。
【請求項4】
式(IV)で表される化合物が、式(VI)
【化6】

(式中、R11は、水素原子または有機基を表し、点線は、化学的に許容される環構造を構成する官能基を表し、nは、0または化学的に許容される置換基数を表し、nが2以上の場合、R11同士は、同一または相異なっており、カルボニル基のα位は、少なくとも1つの水素原子を有するものとする。)で表される環状ケトン体であることを特徴とする請求項2又は3に記載のアミノメチルケトン誘導体の製造方法。



【公開番号】特開2009−96744(P2009−96744A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268373(P2007−268373)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】