説明

生ごみの貯溜搬送装置

【課題】貯溜タンクへの給水経路が簡単であって、しかもカウンター上の外観,見栄えも良好となし得るとともに、併せて本来そのまま捨てられるべきシンク排水を生ごみの搬送水として利用可能で節水を果すことができ、加えてシンク排水の排水経路も簡単で、更に生ごみを強い搬送力で搬送し得る生ごみの貯溜搬送装置を提供する。
【解決手段】シンク排水を搬送水として生ごみとともに貯溜する貯溜タンク30と、流入管32と、排水側トラップ部28と、サイホン作用で貯溜タンク30内のシンク排水と生ごみとを排出させるサイホン管53と、通気口38と、強制的にサイホン作用を起させる給気装置44とを含んで生ごみの貯溜搬送装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はキッチンで生じた生ごみを1次的に貯溜した上、シンク排水とともに搬送する生ごみの貯溜搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キッチンで発生した生ごみの処理装置として、ハンマミル式のいわゆるディスポーザを破砕装置として用いたものが広く使用されている。
この生ごみの処理装置では、シンク底部の排水口から投入された生ごみを給水下で破砕装置がハンマミルによりすり潰して微粉砕(破砕)し、そして微粉砕した生ごみを排水とともに排水管路を通じて排出する。
【0003】
一方これとは別に、キッチンで生じた生ごみを微粉砕しないで粗切状態に切断(破砕)し、排水とともに排水管路を通じて外部に排出するようになしたものも提案されている。
このような粗切りによる生ごみの処理装置については下記特許文献1,特許文献2に開示がなされている。
【0004】
破砕装置としてディスポーザを用いた前者の生ごみの処理装置の場合、微粉砕後の生ごみが排水とともにスラリー状となるため、排水の排出に伴ってこれを排水管路を通じて比較的スムーズに排出することが可能であるものの、微粉砕後の生ごみが排水管路に、特に排水管路上に設けたトラップ部(排水側トラップ部)に付着し、また堆積してしまう問題を生じていた。
特に生ごみを粗切状態に破砕する後者の生ごみの処理装置の場合、破砕した生ごみをそのまま通常のシンク排水にて流し切ることは難しく、前者の生ごみの処理装置に比べて破砕後の生ごみが排水側トラップ部に残り、堆積し易い問題を内包する。
【0005】
そこで本出願人は先の特許願(特願2004−286702:未公開)において、搬送水を貯える貯水タンクを設け、水道水(上水)を貯水タンクに給水して所定量の搬送水をそこに貯えておき、排出弁を開くことで内部の搬送水を一挙に放出して、排水側トラップ部に残った破砕後の生ごみを、その搬送水にて一掃するようになしたものを提案している。
このようにすれば、粗切状態の生ごみであっても支障なく排水管路を通じて外部に排出することが可能となる。
しかしながらこの場合、水道水(上水)の給水管を溢れ縁となるカウンターよりも上方に立ち上げた上、シンクに対し縁切りをしなければならず、このため給水経路が煩雑となり、またカウンター上の外観も見栄えが悪いものとなってしまう。
また上水を多く消費することとなり、節水の観点からも望ましくない。
【0006】
そこで次に本出願人は、貯水タンクに上水を貯えるのではなく、シンクから流出するシンク排水(ここではシンクを経由して流出する水を意味する)を流入管を通じて貯水タンク内に流入させて貯え、これを搬送水として貯水タンクから一挙に放出するようになしたものを提案した(特願2005−133097:未公開)。
【0007】
図6はその具体例を示している。
同図において200はキッチンの流し台で、202はシンク、204はカウンター、206はカウンター204上に設けられた流し台水栓である。
シンク底部202Aには排水口208において生ごみの破砕装置210が連結されており、その投入口212を通じて生ごみがその内部に投入可能となしてある。
この破砕装置210の内部にはまた、シンク排水の一部が流入せしめられる。
投入された生ごみはシンク排水、詳しくは流し台水栓206からの給水下で破砕装置210にて破砕される。
【0008】
破砕装置210の投入口212周りには環状の水路214が排水口208に連通して設けられており、シンク排水の残りの一部がこの環状の水路214内に流入せしめられる。
環状の水路214に流入したシンク排水は、横向きに延びる流入管218を通じて、流し台200のキャビネット内部且つシンク202の下側に設けられた貯水タンク216に流入させられて、そこに一定量貯水される。
【0009】
尚、流入管218にはその途中に流入側トラップ部217が設けられている。
この流入側トラップ部217は、貯水タンク216からの臭気の逆流を防止するために設けられている。
この貯水タンク216の底部には、立上り管219と立下り管220とを有する逆U字状のサイホン管222が接続されている。
【0010】
223は排水管で、上部が主管223-1と枝管223-2とに分岐しており、その主管223-1が上記の破砕装置210に接続され、また枝管223-2がサイホン管222の立下り管220に接続されている。
そしてその合流部より下流側において、排水管223には排水側トラップ部224が設けられている。
この図6に示す装置では、破砕装置210で破砕された生ごみがこの排水側トラップ部224に一時的に貯溜される。
【0011】
上記貯水タンク216内に貯溜されたシンク排水は生ごみの搬送水としてのもので、この搬送水はサイホン管222によるサイホン作用で一挙に排水管223側に放出され、排水側トラップ部224に一時的に貯溜された破砕後の生ごみが、その搬送水によって排水側トラップ部224から一挙に下流側に排出される。
即ち排水側トラップ部224内の破砕後の生ごみが、貯水タンク216からの搬送水によってそこから一掃される。
【0012】
この図6に示す装置の場合、貯水タンク216への給水経路上に縁切りのための手段を特に設ける必要がなく、従って貯水タンク216への給水経路が簡単となって、しかもカウンター204上の外観,見栄えも良好となすことができる。
併せて、本来そのまま捨てられるべきシンク排水を生ごみの搬送水として利用することが可能となり、節水を果すことができる。
【0013】
ところでこの図6に示す装置の場合、シンク排水を2つの経路に分けて流すこととなり、これに伴なってシンク排水を排出するための配管経路が複雑化してしまう問題を内包する。
尚、破砕装置としてディスポーザを用いた生ごみの処理装置にあっても、微粉砕後の生ごみが排水側トラップ部224に残留してしまう問題があり、従ってこの場合においても貯水タンク216内に搬送水を貯えてこれを一挙に排出するようになすことができ、排水側トラップ部224の内部に残留した卵の殻や魚の骨等の比重の重いものも円滑に排出することができる。
そしてこの場合においても、シンク排水を貯水タンク216に溜めておくようになした場合には、上記と同様の新たな問題が惹起される。
【0014】
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献3に開示されたものがある。
この特許文献3に開示のものは、シンク排水をタンクに溜めてサイホン管の作用で排出するものであるが、この特許文献3に開示のものはサイホン作用を強制的に起させることのできないものであり、本発明とは異なっている。
【0015】
他の先行技術として下記特許文献4に開示されたものがある。
この特許文献4に開示のものでは、サイホン作用を強制的に起させる点が開示されているが、この特許文献4に開示のものは植木鉢に給水を行うためのものであり、本発明とは技術分野が異なっている。
【0016】
【特許文献1】特開2002−219375号公報
【特許文献2】特公平5−156035号公報
【特許文献3】特開2000−343069号公報
【特許文献4】特開2004−41149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような事情を背景とし、搬送水を貯えるタンクへの給水経路が簡単であって、しかもカウンター上の外観,見栄えも良好となし得るとともに、併せて本来そのまま捨てられるべきシンク排水を生ごみの搬送水として利用可能で節水を果すことができ、加えてシンク排水の排水経路も簡単であって、シンク排水を排出するための配管構造を簡素化することができ、更に生ごみを強い搬送力で搬送し得て配管経路上に生ごみを堆積させることのない生ごみの貯溜搬送装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
而して請求項1のものは、(イ)シンクからの流出水であるシンク排水を搬送水として生ごみとともに貯溜する働きを有する貯溜タンクと、(ロ)下端を該貯溜タンク内の基準水位よりも下側まで突入させ、該生ごみ及びシンク排水を該貯溜タンク内に流入させる流入管と、(ハ)該貯溜タンクの底部から立ち上がる立上り管及び該立上り管の上端部から立ち下がる立下り管を有し、該貯溜タンク内に貯溜された前記シンク排水を前記生ごみとともにサイホン作用で排出させるサイホン管と、(ニ)該貯溜タンクと前記立上り管とで構成された排水側トラップ部と、(ホ)該貯溜タンク内部の前記基準水位より上側の上部空間に連通して設けられて通気を行う通気口と、(ヘ)前記サイホン管の作用で強制的に前記サイホン作用を起させ、前記貯溜タンク内のシンク排水を前記生ごみとともに排出させる強制排出手段と、を有していることを特徴とする。
【0019】
請求項2のものは、請求項1において、前記貯溜タンクが生ごみの破砕装置に対して前記流入管を介して接続され、該破砕装置で破砕された生ごみを貯溜するものであることを特徴とする。
【0020】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記強制排出手段が、前記貯溜タンクに空気圧を加えて該貯溜タンク内のシンク排水を押し下げ、前記サイホン管により強制的に前記サイホン作用を起させるものであることを特徴とする。
【0021】
請求項4のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記貯溜タンクの底部又は側部の注入口から該貯溜タンク内のシンク排水中に空気を強制注入して撹拌を行う給気装置が設けてあることを特徴とする。
【0022】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記貯溜タンク内部を前記流入管,通気口及びサイホン管側の第1室と反対側の第2室とに仕切る仕切壁を設けて、前記サイホン作用時に該第2室内に前記シンク排水を残留させるようになすとともに、該貯溜タンク内部の下部と前記基準水位より上側の上部空間とのそれぞれにおいて該第1室と第2室とを連通させる連通小孔が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、生ごみ及びシンク排水を貯溜する働きを有する貯溜タンクと、下端を貯溜タンク内のシンク排水中に浸漬させる流入管と、貯溜タンク内のシンク排水を生ごみとともにサイホン作用で排出させるサイホン管と、貯溜タンク及びサイホン管の立上り管とで構成される排水側トラップ部と、貯溜タンクの上部空間に通気を行う通気口と、強制的にサイホン作用を起させる強制排出手段と、を含んで生ごみの貯溜搬送装置を構成したものである。
【0024】
かかる本発明によれば、貯溜タンクへの給水経路上に縁切りのための手段を特に設ける必要がなく、従って貯溜タンクへの給水経路が簡単となって、しかもカウンター上の外観,見栄えを良好となすことができ、併せて本来そのまま捨てられるべきシンク排水を生ごみの搬送水として利用することが可能となり、節水を果すことができる。
【0025】
加えて本発明では、貯溜タンク内のシンク排水即ち搬送水を生ごみとともにサイホン作用で一挙に大量に放出するようになしているため、貯溜タンク内の生ごみを余すところなく強い搬送力で貯溜タンクから排出することが可能であるとともに、排水管路上に生ごみを残留、堆積させて閉塞の危険を招くといったことも有効に防止することができる。
【0026】
更に貯溜タンク内のシンク排水をサイホン作用で排出するため、貯溜タンク内のシンク排水を放出するための排出弁を設けたり、排出弁を開閉させるための開閉機構を設けることを不要となし得、装置構成を簡略化することができる。
【0027】
また本発明の装置では、貯溜タンクがシンク排水即ち搬送水を貯溜する働きと生ごみを貯溜する働きとを有しており、更には貯溜タンクとサイホン管の立上り管とが排水側トラップ部を成しているため、図6に示す装置のようにシンク排水を貯水タンク側と破砕装置及び排水側トラップ部側との2系統に分けた後、再び合流させるといったことを行う必要がないとともに、別途に排水側トラップ部を設ける必要もなくなり、シンク排水及び生ごみの排出のための経路を単純化し得て配管構造を簡単化することができ、更にまた流入管が貯溜タンクのシンク排水中に突入して貯溜タンクからの臭気の逆流を防止するため、図6に示す装置の流入側トラップ部217を省略することが可能となる。
【0028】
本発明の装置はまた、サイホン管の作用で強制的にサイホン作用を起させ、貯溜タンク内のシンク排水を生ごみとともに排出させる強制排出手段を備えており、サイホン作用を起させたいときに即ち適正なタイミングでサイホン作用を起させることができる。
【0029】
例えば貯溜タンク内のシンク排水の排出を、貯溜タンク内に多量のシンク排水が流入したときに生ずる自然発生的なサイホン作用に委ねておくと、貯溜タンク内に生ごみが溜まっていないにも拘らず貯溜タンク内のシンク排水が排出されて失われてしまい、シンク排水が効率的に搬送水として利用されないといった場合が生ずるが、本発明に従ってサイホン作用を強制的に起させるようになしておいた場合、貯溜タンク内に生ごみが多量に溜まったところでサイホン作用、即ちシンク排水による搬送を伴なった生ごみの排出を行うことが可能となり、シンク排水を搬送水として効率的に利用することができる。
ここで強制的にサイホン作用を起させるために、自然発生的なサイホン作用ができるだけ生じないようにサイホン管の形状や太さ或いは高さ等を選定しておくことができる。
【0030】
本発明では、貯溜タンクを流入管を介してシンク底部の排水口と直結しておくこともできる。
この場合においてもご飯粒等小粒の生ごみについてはシンク排水とともに貯溜タンク内に流入して来ることから、かかる貯溜タンクは生ごみの貯溜タンクとしても働く。
ただし本発明では、請求項2に従って貯溜タンクを生ごみの破砕装置に対し流入管を介して接続し、破砕装置で破砕された生ごみを貯溜するものとして構成しておくことができる。
【0031】
本発明ではまた、上記強制排出手段を、貯溜タンクに空気圧を加えて貯溜タンク内のシンク排水を押し下げ、サイホン管により強制的にサイホン作用を起させるものとなしておくことができる(請求項3)。
この場合において上記通気口を、空気圧の注入口として用いるようになすことができる。
【0032】
次に請求項4は、貯溜タンクの底部又は側部の注入口から貯溜タンク内のシンク排水中に空気を強制注入して、撹拌を行う給気装置を設けたものである。
貯溜タンク内に貯溜された生ごみは、その殆どが底部に溜まった状態にあり、サイホン管によりサイホン作用を起させる際、その底部に溜まった状態の生ごみがサイホン作用の際の大きな抵抗となり、サイホン作用が円滑に惹起されない恐れが生ずる。
【0033】
しかるに請求項4に従って貯溜タンク内のシンク排水を生ごみとともに撹拌し、その状態でサイホン作用を起させるようにすれば、生ごみによる抵抗を減殺してサイホン作用を円滑に起させることができ、尚且つ生ごみの流れを円滑化させ得て、貯溜タンク内の生ごみを効率高く排出することが可能となる。
この場合において上記給気装置を、貯溜タンク内に空気圧を加えてサイホン作用を強制的に起させる強制排出手段としての働きを兼用させるようになすことができる。
尚この場合には、上記の通気口に連通した通気路上に開閉弁を設けて、これを閉弁状態としたり或いは通気路の流路を小さくすることなどによって、通気口からの空気の逃げを阻止乃至抑制するようになしておくことが望ましい。
【0034】
次に請求項5は、貯溜タンク内部を流入管,通気口及びサイホン管側の第1室と、反対側の第2室とに仕切る仕切壁を設けて、サイホン管によるサイホン作用時に主として第1室内のシンク排水を排出させる一方、第2室内にシンク排水を残留させるようになし、且つ貯溜タンク内部の下部と基準水位より上側の上部空間とのそれぞれにおいて第1室と第2室とを連通小孔で連通させるようになしたものである。
【0035】
本発明の装置では、貯溜タンクがその内部にシンク排水を封水として保持し、サイホン管の立上り管とともに排水側トラップ部を構成するものであり、従って貯溜タンク内のシンク排水の全量がサイホン作用により排出されてしまうと破封状態となって、臭気の逆流防止機能がこのとき失われてしまう。
【0036】
そこでこの請求項5では、サイホン作用時に第2室内にシンク排水を残しておき、サイホン作用後に下部の連通小孔を通じて第2室内のシンク排水を第1室内に徐々に流入させてトラップ機能を回復させるようになしたもので、このようにしておけば、新たに貯溜タンク内にシンク排水が流入して来るのを待たなくても、引き続き貯溜タンクにトラップ機能を保持させておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はキッチンの流し台で、12はシンク、14はカウンター、16はカウンター14上に起立状態に設けられた流し台水栓である。
18は生ごみの破砕装置で、上端の投入口20をシンク底部12Aの排水口に合致させる状態で、シンク底部12Aに連結状態に設けられている。
【0038】
本実施形態において、この破砕装置18は生ごみを微粉砕せずに粗切状態に切断(破砕)するもので容器22と、その内部に設けられ、投入された生ごみを切断刃にて切断し破砕する破砕機構24と、これを回転駆動するモータ26とを備えている。
【0039】
本実施形態の装置は、貯溜タンク30と流入管32とを有している。
流入管32は、破砕装置18にて破砕された生ごみ及びシンク12から流出するシンク排水を貯溜タンク30内部に流入させるもので、その上端が破砕装置18の排出口に接続され、またその下端が貯溜タンク30内の基準水位(設定水位)34よりも下側まで突き出している。
即ち流入管32は、その下端が貯溜タンク30内部に貯溜されたシンク排水の基準水位34よりも下側まで突き出していて、貯溜されたシンク排水内部にその下端が突入している。
【0040】
貯溜タンク30は、破砕装置18で破砕された生ごみ及びシンク排水を内部に貯溜する働きをなす。
この貯溜タンク30には、基準水位34よりも上側の上部空間36に空気を供給し、或いはまた上部空間36内の空気を外部に抜き出すための通気口38がその上端部に設けられており、この通気口38から通気管40が上向きに立ち上がっている。
そしてこの通気管40内部を通る通気路42に対し、強制排出手段としての給気装置44が接続されている。
【0041】
給気装置44は、空気を加圧送出するポンプ46と、給気路48と、給気路48上に設けられた逆止弁50とを備えている。
ここで逆止弁50は、ポンプ46からの加圧空気を供給する方向には開弁し、逆方向には閉弁する一方向性の弁である。
尚、通気路42上には開閉弁52が設けられている。ここで開閉弁52は、通常の状態では開弁状態を維持し、給気装置44にて貯溜タンク30内部に空気圧を供給する際には閉弁状態となる。
【0042】
上記貯溜タンク30の底部にはサイホン管53が接続されている。
サイホン管53は、貯溜タンク30の底部から立ち上がる立上り管54と、その上端部から下向きに立ち下がる立下り管56とを有していて全体として逆U字状をなしており、その立下り管56に対し排水管58が接続されている。
【0043】
本実施形態において、貯溜タンク30内のシンク排水の基準水位34は、サイホン管53のウエア部60の高さによって定まり、ここではそのウエア部60にて定まる基準水位34が貯溜タンク30の上端より僅かに低い位置に設定されている。
またサイホン管53は、その上端部が貯溜タンク30の上端よりも高く、これより上向きにある程度大きく突出させられている。
その結果として、シンク排水が貯溜タンク30内部に一度に多量に流入した場合であっても、自然発生的なサイホン作用が起り難くされている。
この貯溜タンク30はサイホン管53における立上り管54とともに排水側トラップ部28を構成しており、そこにシンク排水を封水として保持し排水管58からの臭気の逆流を防止する働きをなしている。
【0044】
尚、上記通気口38に到る通気路42は、その他端がサイホン管53における立上り管54より下流部に接続されている。具体的にはここでは立下り管56に接続されている。
ただしその接続位置はサイホン管53の上端部であっても良いし、或いはまた排水管58側であっても良い。
【0045】
通気路42をシンク12側に開放状態としておくと、貯溜タンク30内で発生した臭気が通気路42を通じてシンク12側に逆流してしまう問題が生ずるが、ここでは通気路42の端部が排水側トラップ部28の2次側に接続されているため、そうした不都合を生じない。
【0046】
次に本装置の作用を以下に説明する。
本実施形態の装置では、キッチンで発生した生ごみが投入口20を通じて破砕装置18の内部に投入される。
そして流し台水栓16からの給水、即ちシンク排水の給水下で投入された生ごみが破砕装置18にて切断(破砕)され、シンク排水とともに流入管32を通じて貯溜タンク30内に流入し、そこに破砕後の生ごみがシンク排水とともに貯溜される。
【0047】
尚シンク排水が流入管32を通じて貯溜タンク30内に流入する際、貯溜タンク30内部の空気が通気口38を通じて貯溜タンク30から追い出される。
従って貯溜タンク30内部に空気が閉じ込められることによって、貯溜タンク30内へのシンク排水の円滑な流入が妨げられたり、或いは貯溜タンク30内部のシンク排水の水位が基準水位34まで上昇するのが妨げられるといったことは生じない。
【0048】
貯溜タンク30内部に破砕された生ごみがある程度溜まったところで、強制排出手段としての給気装置44から貯溜タンク30内部に空気圧を図1中矢印方向に加えると、その空気圧によって図2に示すように貯溜タンク30内部のシンク排水の水面が下向きに押し下げられ、この結果サイホン管53内部が満水化して、ここにサイホン管53によるサイホン作用が生じ、貯溜タンク30内部に貯溜されている破砕後の生ごみが、同じく貯溜タンク30内部に貯溜されているシンク排水を搬送水として多量に一挙にサイホン管53を通じて排水管58側に排出される。
【0049】
その後、貯溜タンク30内部にシンク排水が流入することでその水面が上昇し、最終的に基準水位34に達したところで水面の上昇が停止し、図1に示した状態に復帰する。
【0050】
以上のように本実施形態は、生ごみ及びシンク排水を貯溜する働きをなす貯溜タンク30と、下端を貯溜タンク30内のシンク排水中に浸漬させる流入管32と、貯溜タンク30内のシンク排水を生ごみとともにサイホン作用で排出させるサイホン管53と、貯溜タンク30及び立上り管54にて構成される排水側トラップ部28と、貯溜タンク30の上部空間36に通気を行う通気口38と、強制的にサイホン作用を起させる給気装置44と、を含んで生ごみの貯溜搬送装置を構成していることから、貯溜タンク30への給水経路上に縁切りのための手段を特に設ける必要がなく、従って貯溜タンク30への給水経路が簡単となって、しかもカウンター14上の外観,見栄えを良好となすことができ、併せて本来そのまま捨てられるべきシンク排水を生ごみの搬送水として利用することが可能となり、節水を果すことができる。
【0051】
加えて本実施形態では、貯溜タンク30内のシンク排水即ち搬送水を生ごみとともにサイホン作用で一挙に大量に放出するようになしていることから、貯溜タンク30内の生ごみを余すところなく強い搬送力で貯溜タンク30から排出することが可能であるとともに、排水管路上に生ごみを残留・堆積させて閉塞の危険を招くといったことも有効に防止することができ、また貯溜タンク30のシンク排水を放出するための排出弁を設けたり、排出弁を開閉させるための開閉機構を設けることを不要となし得、装置構成を簡略化することができる。
【0052】
また本実施形態の装置では貯溜タンク30が、シンク排水即ち搬送水を貯溜する働きと、生ごみを貯溜する働き、更には内部のシンク排水を封水として保持し立上り管54とともに排水側トラップ部28を構成するものであることから、シンク排水及び生ごみの排出のための経路を単純化し得て配管構造を簡単化することができ、更にまた排水経路上に別途に排水側トラップ部を設ける必要がなくなり装置の構成を更に単純化することができる。
【0053】
更にまた流入管32の下端部が貯溜タンク30内部のシンク排水中に突入させられていることから、貯溜タンク30からの臭気の逆流を防止する流入側トラップ部を設ける必要をなくすことができ、更にはまた貯溜タンク30内部への空気圧の供給によって効果的にサイホン作用を起させることができる。
【0054】
本実施形態の装置はまた、サイホン管53を通じて強制的にサイホン作用を起させ、貯溜タンク30内のシンク排水を生ごみとともに排出させる給気装置44を強制排出手段として備えていることから、貯溜タンク30内に生ごみが多量に貯溜されたところでサイホン作用、即ちシンク排水による搬送を伴なった生ごみの排出を行うことが可能となり、シンク排水を搬送水として効率的に利用することができる。
【0055】
図3は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態では、貯溜タンク30の底部に複数(1つであっても良い)の注入口62を設けて、その注入口62に給気装置44の給気路48を接続し、ポンプ46からの加圧状態の空気を各注入口62を通じて貯溜タンク30内に注入し、その注入空気によって貯溜タンク30内の生ごみ及びシンク排水を撹拌するようになしたものである。
【0056】
この実施形態においても、給気装置44は強制的にサイホン作用を起させて貯溜タンク30内の生ごみをシンク排水とともに排出する強制排出手段をなしており、上記の通気路42上には開閉弁52のみが設けられていて、図1に示すような給気装置44はかかる通気路42には接続されていない。
【0057】
この実施形態においては、給気装置44にて各注入口62から貯溜タンク30内部に空気を注入して撹拌を行い、また併せて貯溜タンク30内部に空気圧を加えて内部のシンク排水の水面を押し下げる際には、通気路42上の開閉弁52は閉弁状態とされる。
【0058】
本実施形態では、貯溜タンク30内のシンク排水中に空気を強制注入して撹拌を行い、その状態でサイホン作用を起させるものであることから、生ごみによる抵抗を減殺してサイホン作用を円滑に起させることができ、尚且つ生ごみの流れを円滑化させ得て、貯溜タンク30内の生ごみを効率高く排出することができる。
【0059】
尚図3の実施形態において、給気装置44を単に各注入口62を通じて空気供給することで撹拌のみを行うための装置、即ち強制排出手段としての働きを持たせないで単に撹拌装置としてのみ用いるようになし、強制排出手段を図4に示すように別途に設けておくこともできる。
【0060】
図4の実施形態において、サイホン管53はフレキシブル管から成っていてその上端部が昇降可能とされており、そしてその上端部が強制排出手段としての昇降駆動装置64にて昇降駆動されるようになっている。
【0061】
昇降駆動装置64は駆動プーリ66と、従動プーリ68と、それらに巻き掛けられた無端環状のベルト70と、駆動プーリ66を回転駆動するモータ72と、ベルト70に固設されてベルト70の回転に伴い昇降するアーム74とを有している。
【0062】
アーム74の先端部には保持部76が設けられており、この保持部76にてサイホン管53の上端部が保持され、アーム74の昇降とともにサイホン管53の上端部が上下に昇降駆動されるようになっている。
【0063】
この図4の実施形態では、サイホン管53の上端部を昇降駆動装置64により一定高さまで持ち上げておくことで、自然発生的なサイホン作用を抑制し、貯溜タンク30内に図1の基準水位34までシンク排水を貯溜状態に保持することができる。
一方、その状態で昇降駆動装置64によりサイホン管53の上端部を下降させることでサイホン管53の上端部を満水化し、サイホン作用を強制的に起させることができる。
【0064】
このように図3の給気装置44を単に空気の供給による撹拌装置としてだけ働かせ、強制的なサイホン作用による貯溜タンク30内の生ごみとシンク排水との排出を別の強制排出手段としての昇降駆動装置64にて行うようにすれば、給気装置44におけるポンプ46を小出力且つ小容量の小型のものを用いることが可能となり、装置に要するコストを低減することができる。
【0065】
尚図1に示す実施形態において、通気路42に接続された給気装置44を省略し、これに代えて図4に示す強制排出手段としての昇降駆動装置64を設けるようになすことも勿論可能である。
【0066】
図5は本発明の更に他の実施形態を示している。
この実施形態は、貯溜タンク30内部に仕切壁78を設けて、この仕切壁78により貯溜タンク30内部を流入管32,通気口38及びサイホン管53側の第1室80と、反対側の第2室82とに仕切り、そして仕切壁78の下部と上部とに、第1室80と第2室82とを連通させる連通小孔84,86を設けた例である。
【0067】
この実施形態では、サイホン管53によるサイホン作用が生じると、主として貯溜タンク30内の第1室80内のシンク排水が排出され、第2室82内のシンク排水はほぼそのままそこに残留する。そのように下部の連通小孔84の大きさが定められている。
そしてその後、第2室82内に残留したシンク排水が連通小孔84を通じて第1室80側に徐々に流れ込み、第1室80内のシンク排水の水面を上昇させて封水を回復させる。
【0068】
尚仕切壁78の上部の連通小孔86は、第1室80内の空気を第2室82内へと流入させて第2室82内で負圧が発生するのを防止し、第2室82内に残留したシンク排水を円滑に連通小孔84を通じて第1室80内へと流入させるためのものである。
【0069】
本実施形態によれば、サイホン作用後に下部の連通小孔84を通じて第2室82内のシンク排水を第1室80内に徐々に流入させて、トラップ機能を回復させるようになしていることから、新たに貯溜タンク30内にシンク排水が流入して来るのを待たなくても、引き続き貯溜タンク30にトラップ機能を保持させておくことができる。
【0070】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上記破砕装置18として生ごみをハンマーミルにて給水下で微粉砕するものを用いた場合においても適用可能である等、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態である生ごみの貯溜搬送装置を流し台とともに示す図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す作用説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示す図である。
【図6】本願の先願に係る生ごみの貯溜搬送装置を比較例として示す図である。
【符号の説明】
【0072】
12 シンク
18 破砕装置
28 排水側トラップ部
30 貯溜タンク
32 流入管
34 基準水位
36 上部空間
38 通気口
44 給気装置(強制排出手段)
53 サイホン管
54 立上り管
56 立下り管
62 注入口
64 昇降駆動装置(強制排出手段)
78 仕切壁
80 第1室
82 第2室
84 連通小孔
86 連通小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)シンクからの流出水であるシンク排水を搬送水として生ごみとともに貯溜する働きを有する貯溜タンクと
(ロ)下端を該貯溜タンク内の基準水位よりも下側まで突入させ、該生ごみ及びシンク排水を該貯溜タンク内に流入させる流入管と
(ハ)該貯溜タンクの底部から立ち上がる立上り管及び該立上り管の上端部から立ち下がる立下り管を有し、該貯溜タンク内に貯溜された前記シンク排水を前記生ごみとともにサイホン作用で排出させるサイホン管と
(ニ)該貯溜タンクと前記立上り管とで構成された排水側トラップ部と
(ホ)該貯溜タンク内部の前記基準水位より上側の上部空間に連通して設けられて通気を行う通気口と
(ヘ)前記サイホン管の作用で強制的に前記サイホン作用を起させ、前記貯溜タンク内のシンク排水を前記生ごみとともに排出させる強制排出手段と
を有していることを特徴とする生ごみの貯溜搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記貯溜タンクが生ごみの破砕装置に対して前記流入管を介して接続され、該破砕装置で破砕された生ごみを貯溜するものであることを特徴とする生ごみの貯溜搬送装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記強制排出手段が、前記貯溜タンクに空気圧を加えて該貯溜タンク内のシンク排水を押し下げ、前記サイホン管により強制的に前記サイホン作用を起させるものであることを特徴とする生ごみの貯溜搬送装置。
【請求項4】
請求項1,2の何れかにおいて、前記貯溜タンクの底部又は側部の注入口から該貯溜タンク内のシンク排水中に空気を強制注入して撹拌を行う給気装置が設けてあることを特徴とする生ごみの貯溜搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記貯溜タンク内部を前記流入管,通気口及びサイホン管側の第1室と反対側の第2室とに仕切る仕切壁を設けて、前記サイホン作用時に該第2室内に前記シンク排水を残留させるようになすとともに、該貯溜タンク内部の下部と前記基準水位より上側の上部空間とのそれぞれにおいて該第1室と第2室とを連通させる連通小孔が設けてあることを特徴とする生ごみの貯溜搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate