説明

生コンクリート中の単位水量測定装置

【課題】小型で大掛かりなシステムになることがなく、かつ低コストで打設現場において簡単に生コンクリート中の単位水量を測定することができる生コンクリート中の単位水量測定装置を提供する。
【解決手段】生コンクリートから採取した試料中の空気量を測定するエアメータ2と、単位水量の推定式の計算プログラムを格納した計算機3と、を備え、試料の測定空気量と、試料について別途測定された測定質量と、生コンクリートの配合とから、計算機3によって生コンクリート中の単位水量を計算する生コンクリート中の単位水量測定装置1であって、計算機3として、アイポッドタッチ14を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアメータ法により生コンクリート中の単位水量を測定する生コンクリート中の単位水量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの強度は水とセメントの重量比等で決まり、水が多いとコンクリートの強度が低下し、ひび割れも発生しやすくなる。このため、生コンクリート製造時の混錬水量を十分に管理する一方、コンクリートの打設現場で荷卸時を含む打設前の時期に、生コンクリート中の単位水量(生コンクリート1m3あたりの水量)を測定して、コンクリートの品質を確保した打設が行われるようにすることが求められる。
【0003】
ところで、近年、トンネル等においてコンクリートの脆化に伴う剥落等の現象が相次いで発生したことなどから、国土交通省が耐久性指針として生コンクリート中の単位水量について許容値を示し、生コンクリートを打設するにあたり単位水量を測定することを義務づけることとなった。
【0004】
生コンクリート中の単位水量の測定法には、高周波加熱乾燥法や一般加熱乾燥法、アルコール等を用いる試薬濃度差法、水分計法である静電容量測定法やRI水分計による方法、赤外線水分計を用いる方法、さらにはエアメータ法等々、多くの方法が知られている。
【0005】
中でも、生コンクリートの空気量と質量とから単位水量を求めるエアメータ法は、他の測定方法に比べて試料量が5〜7リットルと多いため、試料のサンプリング誤差が無視できる容量で試験が行えるとともに、試験方法が従来の空気量試験と同様に行うことができるため、測定の簡便性や迅速性などから現場適用性が高い。
【0006】
従来、エアメータ法による単位水量測定装置として、生コンクリートの空気量測定器(エアメータ)を質量(重量)計測ユニット上に設置し、空気量測定器の空気室に取付けた圧力計および質量計測ユニットに無線送受信機能を具備させて測定装置本体を構成する一方、打設現場から離れた例えば生コンクリート製造工場に集中制御部を設置して、計測した質量データおよび圧力データを集中制御部に無線で送信し、集中制御部の演算表示部で単位水量を演算し表示して、遠隔で単位水量を管理できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
上記提案の単位水量測定装置によれば、コンクリートの打設現場から離れた場所で単位水量を知って集中管理することができる利点がある。しかしながら、打設現場に持ち込んだ測定装置本体以外に、そこから離れた場所に集中制御設備を設置して無線で計測データ等の送受信を行わなければならず、その上、集中制御設備にパソコン等のデータ処理・管理手段を具備させる必要もあり、単位水量測定装置全体が大掛かりなシステムになる。また空気量測定器を質量計測ユニット上に一体化しているので、測定装置本体が大型化する。
【0008】
このため、従来から、小型で、大掛かりなシステムになることがなく、打設現場で簡単に生コンクリート中の単位水量を測定することができる単位水量測定装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0009】
ここで、特許文献2に記載された発明では、測定空気量その他の測定値、および生コンクリートの配合(略してコンクリートの配合)(生コンクリートに使用したセメント、水、細骨材、粗骨材の量、空気量)から単位水量を計算する計算機として、小型で携帯性の高い一般のPDA(Personal Digital Assistants)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−14602号公報
【特許文献2】特開2006−3121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のPDA(Personal Digital Assistants)は、時代の変化とともに、通信サービスの中止等の関係で継続使用することができなくなっている。また、従来のPDA(Personal
Digital Assistants)では、低コスト化が進む現在の経済環境の中で比較的高価であることが問題になっている。
【0012】
そこで、本発明は、小型で大掛かりなシステムになることがなく、かつ低コストで打設現場において簡単に生コンクリート中の単位水量を測定することができる生コンクリート中の単位水量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願第1発明は、生コンクリートから採取した試料中の空気量を測定するエアメータと、単位水量の推定式の計算プログラムを格納した計算機と、を備え、前記試料の測定空気量と、前記試料について別途測定された測定質量と、前記生コンクリートの配合とから、前記計算機によって前記生コンクリート中の単位水量を計算する生コンクリート中の単位水量測定装置であって、前記計算機は、アイポッドタッチであることを特徴とする。
【0014】
本願第1発明によれば、生コンクリート中の単位水量を計算するための計算機として、アイポッドタッチを用いることができる。また、アイポッドタッチ単体としては、市場に広く流通しているため、比較的、低コストで入手することができる。
【0015】
本願第2発明は、本願第1発明において、前記計算機は、通信端末装置と無線通信可能な無線通信機能を備え、前記計算機により得られた前記生コンクリート中の単位水量の計算結果が無線通信により他の通信端末装置に送信されることを特徴とする。
【0016】
本願第2発明によれば、計算機により得られた生コンクリート中の単位水量の計算結果が無線通信により他の通信端末装置に送信されことにより、データ送受信用ケーブル自体が不要になるため、単位水量測定装置が持ち込まれる現場において生コンクリート中の単位水量測定作業がし易くなる。また、データ送受信用ケーブルの破損などによる故障が発生することがなく、生コンクリート中の単位水量の測定作業を確実かつ正確に遂行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型で大掛かりなシステムになることがなく、かつ低コストで打設現場において簡単に生コンクリート中の単位水量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の生コンクリート中の単位水量測定装置の実施例を示す全体図である。
【図2】エアメータ法による単位水量推定の原理を説明するための説明図である。
【図3】本発明の生コンクリート中の単位水量測定装置を構成するアイポッドタッチ(計算機)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1実施形態に係る生コンクリート中の単位水量測定装置について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の生コンクリート中の単位水量測定装置の実施例を示す全体図である。単位水量測定装置1は、生コンクリート中の空気量を測定するエアメータ2と、その測定空気量その他の測定値、および生コンクリートの配合(略してコンクリートの配合)(生コンクリートに使用したセメント、水、細骨材、粗骨材の量、空気量)から単位水量を計算するアイポッドタッチ(計算機)3と、を組み合わせて構成されている。
【0021】
エアメータ2は、生コンクリートから採取した試料を詰めるフランジ付きの円筒容器4と、該容器4の上部開口に施蓋して容器内を密閉する蓋5と、からなる。蓋5の上部には、空気室6が形成されている。この空気室6には、排気弁7、手動空気ポンプ8、圧力計9、調圧弁10および空気室内6を蓋5の浅い円錐形状の下面に連通させる開閉動作弁11が設けられている。また、蓋5には、図では空気室6の後側で見えないが、開閉コック付きの給水口と、蓋周縁部に施蓋時に容器4のフランジ4aに係合締結するようにした複数個の締金具12と、が設けられている。
【0022】
生コンクリート中の空気量の測定法はJIS規格(JIS A
1128)に定められており、エアメータ2の他に、突き棒、メスシリンダー、スポイト、ストレート・エッジ、キャリブレーション用パイプを使って、一定の手順で操作するようになっている。生コンクリート中の単位水量を測定にするには、他に試料の質量を測定する必要があり、質量計(秤)を別途用意する。質量計は秤量が25kg以上で、最小目盛りが5g以下のものならばよい。
【0023】
図1及び図3に示すように、計算機3は、インターネット接続可能な端末装置に限定されるものではなく、インターネット接続機能がなくても、無線LAN機能(例えば、Wi−Fi)付きのものであればよい。具体的には、計算機3は、フラッシュメモリを内蔵したアイポッドタッチ(米国:アップル社製、iPodtouch)14が用いられる。計算機3としてアイポッドタッチ14を適用することにより、小型で、携帯性及び経済性の高くなる。また、他の通信端末装置(例えば、パーソナルコンピュータなど)16とのデータ連携機能や通信機能は、無線通信方式が採用されている。なお、無線LAN機能付きのアイポッドタッチ14に限られるものではなく、アイポッドタッチ14に無線LAN機能が装備されていなければ、データ送受信用ケーブルなどの有線を用いて、アイポッドタッチ14と他の通信端末装置16とを接続して、生コンクリート中の単位水量の測定結果を他の通信端末装置16に送信してもよい。しかしながら、無線環境を構築し、無線通信を行うことにより、データ送受信用ケーブル自体が不要になるため、単位水量測定装置1が持ち込まれる現場において作業がし易くなる。また、データ送受信用ケーブルの破損などによる故障が発生することがない。
【0024】
アイポッドタッチ14は、物理的なボタンは一つに絞り、ほとんどの操作は画面15にタッチして行うという特徴を持っている。また、一般的なタッチパネルとは異なり、「マルチタッチ」と呼ばれるタッチパネルを使用することにより、単に画面15を触るだけではなく、どの程度の速度で触っているかを認識し、表示している項目のスクロールの速度をコントロールしたり、複数の指で画面15上を押し広げたりつまんだりするような操作でアイポッドタッチ14の画面15に表示している写真などを直感的に拡大・縮小するなど、従来のタッチパネルにない高度な操作を可能としている。
【0025】
図3に示すように、アイポッドタッチ14は、主として、CPU14Aと、ROM14Bを有している。ROM14Bには、以下に示すエアメータ法による単位水量推定の原理及び所定の推定式が採用された、生コンクリート中の単位水量を計算するための計算プログラム等が格納されている。ROM14Bに格納された計算プログラムに基づいて、CPU14Aにより生コンクリート中の単位水量が算出される(詳細は、後述する)。
【0026】
ここで、エアメータ法による単位水量推定の原理について説明する。
図2は、エアメータ内に詰められたフレッシュコンクリート中の材料配分を模式化したものである。図2(A)に比較して図2(B)は水量の多い配合であり、水の密度は骨材やセメントの密度に比較してかなり小さいため、図2(A)より図2(B)のコンクリートの質量は小さくなる。コンクリート中の水量が変化すると、コンクリートの単位容積質量も変化する。また、空気量の変動によってもコンクリートの単位容積質量は変動するため、容積、質量に加えて、コンクリート中の空気量も精度良く測定し、空気を除いた単位容積質量(試験で得られる単位容積質量γ2)を求め、この値を配合表から得られる空気を除いた単位容積質量(配合表上の単位容積質量γ1)と比較することで、単位水量を推定する。なお、コンクリート質量中の大半は骨材が占めるため、骨材の密度が正確に把握されていないと単位水量の推定精度は低下する。エアメータは、空気量を正確に測定する装置であり、かつ容器の容積が一定であることから、空気量測定時に試料の質量を量るだけで、単位水量を推定することができる。
【0027】
本発明の測定装置では、単位水量の測定にエアメータ法を採用しているが、エアメータ法は、エアメータにより生コンクリートの空気量を測定し、この測定した空気量と別途測定した生コンクリートの質量とから単位水量を計算により求めるものである。具体的には、生コンクリートの「配合表上の単位容積質量γ1」と「試験で得られる単位容積質量γ2」を比較することで単位水量を推定するもので、本実施例では、その推定計算に独立行政法人土木研究所が導いた推定式(以下土研式推定式と称す)を用いている。計算機3には、土研式推定式の計算プログラムおよびその他必要なプログラムが予め組み込まれている。
【0028】
単位容積質量および土研式推定式は、次のようになる。
単位容積質量γ1、γ2
γ1=Mc/{1−(Air+α)×0.01}…(1)
γ1:配合表上の空気量を除いた単位容積質量(kg/m3
Mc:配合表上のコンクリート1m3あたりの質量(kg/m3
Air:配合表上の空気量(%)
α:セメント粒子への水の浸潤による容積減少量(%)
単位セメント量100kg/m3あたり0.01%とする。
【0029】
γ2=M2/{V2−V3×Air2×0.01}…(2)
γ2:試験で得られる空気量を除いた単位容積質量(kg/m3
M2:試料の質量(g)
V2:試料の容積(リットル)
注水法ではV2=全容器容積−注水量、無注水法ではV2=V3
V3:試料を詰める容器の容積
Air2:試料中の空気量(%)
Air2=測定空気量−骨材修正係数
単位水量推定式
正規の配合で混錬したコンクリートのγ2はγ1と同じ値を示すはずであるが、実際のコンクリートが式(1)に示す配合表通りのコンクリートにW’の加水があったものになっているとすると、実際の単位容積質量γ2は式(1)を書き換えて式(3)のように表せる。
【0030】
γ2=(Mc+W’)/{1−(Air+α)×0.01+W’×0.001}…(3)
W’:単位水量の誤差(kg/m3
式(3)からW’を求めると、
W’={γ2(1−(Air+α)×0.01)−Mc}/(1―γ2×0.001)…(4)
となる。従って、推定単位水量Wは、式(5)によって求めることができる。
【0031】
W=W1+W’=W1+{γ2(1−(Air+α)×0.01)−Mc}/(1―γ2×0.001)…(5)
W:推定単位水量(kg/m3
W1:配合表上の単位水量(kg/m3
【0032】
次に、本発明の測定装置による生コンクリート中の単位水量の測定法を説明する。なお、空気量の測定は無注水法としたが、注水法で測定する場合も、無水法に順じた操作で単位水量を測定することができる。
【0033】
先ず、アイポッドタッチ14(計算機3)のタッチパネルの画面で、エアメータ2の容器4の容積、蓋5を含めた容器4の全容積、エアメータ2の質量を予め入力する。また、水、セメント、細骨材および粗骨材の各質量(kg)と空気量(%)を入力する。ついで、生コンクリートから採取した試料についてJIS
A 1128(後述)に従って空気量を測定し、これと一緒に試料の質量も測定する。
【0034】
JIS A 1128による空気量の測定では、先ず、生コンクリートから試料を約20kg程度採取して、エアメータ2の容器4に試料を突き棒で突きながら詰め、詰めた生コンクリートの表面をストレート・エッジで均してから、蓋5を締める。試料を詰めた容器の質量を蓋ごと測定し(MA)、試料の質量(MB)をMB=MO−MA(MO:エアメータ質量)から求める。ついで、エアメータ2の空気室6に手動空気ポンプ8で圧縮空気を入れて高圧状態に保持し、そのときの空気室6の圧力を圧力計9で計測する。ついで、開閉弁11を開いて空気室6を蓋2の下面に連通し、空気室6の圧縮空気を容器4内の生コンクリートに作用させる。これにより、空気室6と容器4の空気の圧力が平衡し、その平衡圧力を圧力計9で測定すると、平衡圧力の初期圧力からの減量(減量=初期圧力−平衡圧力)としてコンクリート中の空気量(%)が測定される。空気量は0.1%単位で測定する。
【0035】
試料の空気量および質量を測定したら、その試料の測定空気量および測定質量をアイポッドタッチ14の画面に入力する。アイポッドタッチ14のROM14Bに格納されている計算プログラムに基づいて、CPU14Aにより土研式推定式の計算が実行されて計算結果が求まり、アイポッドタッチ14の画面に、配合上の単位容積質量、試料の単位容積質量、単位水量の誤差の推定値と共に推定単位水量が表示され、単位水量の測定値が求まる。
【0036】
以上説明したように、本発明の単位水量測定装置1によれば、エアメータで測定した試料中の空気量と、別途測定した試料の質量と、コンクリートの配合とから、生コンクリート中の単位水量を計算するのに、単位水量の推定式のプログラムを内蔵したアイポッドタッチ14を使用するので、装置が小型で、大掛かりなシステムになることがなく、打設現場で簡単に生コンクリート中の単位水量を測定し、また測定結果を表示することができる。
【0037】
特に、生コンクリート中の単位水量の計算機3として、アイポッドタッチ14を用いることができる。また、アイポッドタッチ14単体としては、市場に広く流通しているため、比較的、低コストで入手することができる。
【0038】
さらに、アイポッドタッチ14の無線LAN(無線通信)を用いれば、通信端末装置16に対して、生コンクリート中の単位水量の測定値をデータとして容易に送信することができる。これにより、データ送受信用ケーブルなどが不要になり、現場に単位水量測定装置1を持ち込んでもケーブルが作業の邪魔になることがない。このように、無線通信環境を構築し、無線通信を行うことにより、データ送受信用ケーブル自体が不要になるため、単位水量測定装置1が持ち込まれる現場において作業がし易くなる。また、データ送受信用ケーブルの破損などによる故障が発生することがなく、生コンクリート中の単位水量の測定作業を確実かつ正確に遂行することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 単位水量測定装置
2 エアメータ
3 計算機
4 容器
5 蓋
6 空気室
9 圧力計
14 アイポッドタッチ(計算機)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートから採取した試料中の空気量を測定するエアメータと、単位水量の推定式の計算プログラムを格納した計算機と、を備え、前記試料の測定空気量と、前記試料について別途測定された測定質量と、前記生コンクリートの配合とから、前記計算機によって前記生コンクリート中の単位水量を計算する生コンクリート中の単位水量測定装置であって、
前記計算機は、アイポッドタッチであることを特徴とする生コンクリート中の単位水量測定装置。
【請求項2】
前記計算機は、通信端末装置と無線通信可能な無線通信機能を備え、
前記計算機により得られた前記生コンクリート中の単位水量の計算結果が無線通信により前記通信端末装置に送信されることを特徴とする請求項1に記載の生コンクリート中の単位水量測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−180014(P2011−180014A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45408(P2010−45408)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(591165182)株式会社丸東製作所 (4)