説明

生ゴミ処理システムのメンテナンススケジュールの作成方法

【課題】
生ごみを処理しながら、利用者から持ち込まれる生ごみの少なくとも重量を少なくとも1週間分析することで生ごみ処理システムに係るメンテナンスプログラムを作成する技術を提供する
【解決手段】
処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日時を入力し、識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開け、投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出し、利用者毎に検出した重量のデータをメモリに蓄積し、蓄積された少なくとも1週間分の重量のデータにもとづいて、撹拌機構及び脱臭機の点検スケジュール、バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、食品系廃棄物の処理を、微生物を用いて炭酸ガスと水に分解する生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界では、ごみが長い年月をかけて風化し、土壌菌などのバクテリアによって分解される。その自然界のごみ分解処理方法を応用して、特に、食品系廃棄物を短時間に分解処理できるようにした生ごみ処理システムがある(例えば「特許文献1」参照)。
【0003】
また、広愛産業株式会社によって、土壌、枯れ草、空気中の自然界に汎生しているバチルス属の菌をもとにして、通性嫌気性菌(両性)と好気生菌のセルロース分解菌、動物油分解菌、植物油分解菌、鉱物油分解菌、たんぱく質分解菌、リグニン分解菌(木質菌)などを処理物に合わせて共生させたバクテリアがKOAI菌(商標出願中)として開発された(例えば、「非特許文献1」参照)。
【0004】
このバクテリアを生ごみ処理システムに投入することによって、生ごみを主体としてポリエチレン及びポリスチレンを含む食品系廃棄物を分解し、ビニール袋、ケースあるいはパック入りの食品系廃棄物であっても、例えば、24時間かけて、減容率が98%以上にできる。
【0005】
このような生ごみ処理システムを導入するに当たって、まず、生ごみ、残飯、パック入り調理食品、ラッピングされた食材などの食品系廃棄物(総称して「生ごみ」という)の量と成分の実態調査を行い、生ごみ処理システムの設置場所、処理能力、使用するバクテリアの配合とメンテナンスプログラムを決定する必要がある。
【0006】
メンテナンスプログラムとは、使用するバクテリアの配合、使用するバクテリアの使用量、撹拌槽内温度設定、生ごみ処理システムの点検、調整、補修等の生ごみ処理システムの処理及びメンテナンスに係るスケジュールをいう。
【0007】
システム導入前の実態調査は、設置地域の予定利用者の排出する生ごみの量と成分を1年程度の長期間にわたって調査及び推定しなければ、適切なメンテナンスプログラムが作成できなかった。生ごみの排出される量と成分は、さまざまである。例えば、レストラン、デパート、コンビニエンスストア、駅等の業種、それらの規模、また地域によって異なり、1日の間でも生ごみの排出量と成分が変化し、曜日や季節、気象条件によっても変化が激しいためである。そのため、メンテナンススケジュールの作成には、時間、労力及び費用がかかるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−1112号公報
【非特許文献1】日本経済新聞、2004年1月9日発行版参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生ごみを処理しながら、利用者から持ち込まれる生ごみの重量を少なくとも1週間分析することで生ごみ処理システムに係るメンテナンスプログラムを作成する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一態様は、投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、を有すること、を特徴とする。
【0011】
本発明の第二態様は、投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構と生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、予め、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを、生ごみの投入日及び重量に応じた類型に分けてメンテナンスプログラムファイルに記録する工程と、処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、前記メンテナンスプログラムファイルを参照して、前記データ入力ユニットに入力された少なくとも1週間分の生ごみの投入日、及び蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、を有すること、を特徴とする。
【0012】
本発明の第三態様は、投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、予め、前記生ごみ処理システムの利用者の名称又は業種をユーザメモリファイルに記録する工程と、処理する生ごみの投入前に前記利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、少なくとも1週間分の生ごみの投入日、及び蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを、前記ユーザメモリファイルに記録された前記利用者の名称又は業種に応じた類型に分けて作成する工程と、を有すること、を特徴とする。
【0013】
本発明の第四態様は、投入された生ごみをバクテリアと共にモータで撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、前記投入口から投入された生ごみの重量及び前記モータの負荷をセンサで検出する工程と、前記利用者毎に、検出した前記重量及び前記負荷のデータをそれぞれメモリに蓄積する工程と、蓄積された少なくとも1週間分の前記重量及び前記負荷のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法は、少なくとも1週間分の処理実績にもとづいて、メンテナンスプログラムを作成して実行し、そのようにして実行した処理データを蓄積分析してより実態に即した生ごみ処理パターンを見出し、より効率のよいメンテナンスプログラムに近づけることができ、このプログラムに基づき的確な保守点検を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明を適用する生ごみ処理システムの一実施例を示すブロック図である。この生ごみ処理システムは、コントローラ11、生ごみ投入口12、撹拌槽13、駆動モータ14、撹拌機構15、消臭機16及び排気装置17から構成されている。
【0016】
生ごみ処理システムにおいては、生ごみ投入口12から生ごみが投入される。投入された生ごみは、撹拌槽13に送られる。生ごみは、撹拌槽13の中で撹拌機構15によって撹拌される。撹拌機構15は、図示されていないが、転軸方向に複数段のパドル状のアームを有し、それらのアーム先端部に撹拌槽13の内壁に少しの間隙をもって生ごみを潰す螺旋状の爪が取り付けられている。このため、撹拌機構15が駆動モータ14によって回転されたときに、生ごみを効率よく潰す構造になっている。撹拌する前に破砕する方がよい場合には、破砕機を設けてもよい。
【0017】
撹拌機構15によって潰された生ごみは、撹拌機構15の回転に伴って、撹拌槽13の中でバクテリアと共に撹拌される。撹拌機構15の回転は、生ごみが均一に処理されるように、例えば30分毎に反転され、生ごみは、バクテリアによって24時間かけて分解される。
【0018】
バクテリアは、土壌、枯れ草、空気中の自然界に汎生しているバチルス属の菌をもとにして、通性嫌気性菌(両性)と好気生菌のセルロース分解菌、動物油分解菌、植物油分解菌、鉱物油分解菌、たんぱく質分解菌、リグニン分解菌(木質菌)などを処理物に合わせて共生させたもの、又は生ごみ処理に利用される公知のもの何れでもよい。前者のバクテリアの場合、ビニールなどの包装を含めて処理する事が可能となる。また、バクテリアは、食品系廃棄物とビニールなどの包装の比率によって、その成分の配合と量が調整される。バクテリアは、多孔質セラミックを菌床として撹拌槽13に投入される。この菌床は、15mm程度の大きさで、生ごみのより微細な破砕を助長するために、粒状ではなく鋭角をもった形状が好ましい。
【0019】
生ごみは、バクテリアの分解作用により分解され、その一部は撹拌槽13の内壁に付着するが、螺旋状の爪で掻き落とされ、撹拌機構15の回転に伴って撹拌槽13の排出部に残渣として集められる。
【0020】
生ごみがバクテリアの分解作用により分解されているときに生じるガスは、300℃の高温に加熱され、消臭機16に備えられるハニカム構造の白金触媒がこれを酸化する。消臭されたガスは排気装置17によって大気に放出される。
【0021】
残渣は、コンクリートなどの二次加工品に利用することができる。生ごみの減容率は、97%から98%に及び、投入された容量が100リットル(l)の生ごみは、2リットル(l)から3リットル(l)の残渣に減容される。減容率は、食物性廃棄物とそれを包装するビニールなどの比率に依存する。
【0022】
図2は、コントローラ11のブロックダイアグラムである。コントローラ11は、データ入力ユニット21、センサユニット23、投入口開閉ユニット24、メモリ25、プロセッサ22、表示ユニット26、及びプリンタ27から構成されている。
【0023】
このコントローラ11は、利用者を識別し、持ち込まれる生ごみを分析して、その分析データを処理してメンテナンスプログラムを作成し実行する。作成及び実行は、メモリ25に記憶されているプログラムをプロセッサ22が実行し、各種データの作成、及びデータ入力ユニット21、センサユニット23、投入口開閉ユニット24、メモリ25、表示ユニット26、及びプリンタ27を制御することにより行われる。
【0024】
データ入力ユニット21は、利用者が有するバーコード、クレジットカード、プリペイドカードあるいは入力キーボードから入力される利用者の識別情報を読み取る。利用者は、手袋をして生ごみを生ごみ処理システムに持ち込む場合が多いので、生ごみが入った袋に予めバーコードを貼って、利用者の識別ができるようにするとよい。生体認証を適用する場合であっても、手袋着用を考慮して手以外の部位によって認識するのが好適である。
【0025】
センサユニット23は、生ごみの重量、撹拌槽13内の温度や湿度、あるいは駆動モータ14の負荷を検出する。さらに、より精度の高い分析データを得るため、生ごみの容量、成分、撹拌槽13内の圧力、ガス又はガス成分、臭気又は臭気成分が検出できるセンサを備えることが望ましい。
【0026】
投入口開閉ユニット24は、投入口12の開閉を制御する。投入口開閉ユニット24は、データ入力ユニット21で読み取った利用者の識別情報が登録された利用者の識別情報である場合及び保守点検者であることを示す識別情報である場合のみ、投入口12を開く。さらに投入口開閉ユニット24は、所定の時間が経過すると、投入口12を閉じる。この投入口開閉ユニット24により、登録された利用者による生ごみの投入、保守点検者によるメンテナンスが実行される。
【0027】
メモリ25には、生ごみデータファイル25a、利用者データファイル25b、メンテナンスデータファイル25c、生ごみ分析プログラムファイル25d、投入生ごみパターンファイル25e、メンテナンスプログラムファイル25f、課金プログラムファイル25g、関連情報ファイル25h、コントロールプログラムファイル25iが格納される。
【0028】
プロセッサ22は、コントロールプログラムファイル25iに従い処理を実行することで各ユニット21、23、24、25、26、27の制御を実行する。表示ユニット26とプリンタ27はプロセッサ22のデータ処理のデータ表示と出力を実行する。
【0029】
生ごみデータファイル25aには、センサ23から出力される生ごみデータが蓄積される。利用者データファイル25bには、利用者の名称又は業種(類型)のデータが蓄積される。メンテナンスデータファイル25cには、どの保守点検者によって、いつ、どのような組成のバクテリアが補充されたか、菌床の補充がされたか、及び機構部品の整備や調整がされたかの情報が蓄積される。関連情報ファイル25hには、予め気象や人口など地域固有の参考データが蓄積される。投入生ごみパターンファイル25eには、利用者の名称又は業種(類型)別の分析された変化パターンが蓄積される。
【0030】
生ごみ分析プログラムファイル25dには、分析プログラムが格納されている。プロセッサ22は、この生ごみ分析プログラムファイル25dに従い処理を実行し、生ごみデータファイル25aと利用者データファイル25b又は関連情報ファイル25hを読み出して分析し、蓄積された生ごみの利用者の名称又は業種に応じた変化をパターン化して出力する。
【0031】
メンテナンスプログラムファイル25fには、投入生ごみパターンファイル25eに応じて作成されたメンテナンスプログラムが格納される。このメンテナンスプログラムには、投入生ごみパターンファイル25eに応じて、バクテリアの補充時期と組成及び補充量、菌床の補充時期及び補充量、撹拌槽13の温度や湿度設定、撹拌機構15や消臭機16等の生ごみ処理システム構成部品の整備や調整等の点検時期が記述される。
【0032】
課金プログラムファイル25gには、課金プログラムが格納されている。プロセッサ22は、課金プログラムファイル25gを実行することで、主として投入された生ごみの重量によって利用者に課金する。
【0033】
課金は、利用者毎に利用料金の値を累積して利用者データファイル25bに蓄積されることにより行われる。一定の利用料金の値を累積するようにしてもよいが、その他、投入生ごみパターンファイル25eを読み出し、生ごみの投入量が少ない時間帯を分析して、当該時間帯に対応する利用料金の値を累積するようにしてもよく、例えば利用料金を安くするなどして生ごみの投入量を時間帯で平準化を図ることができる。
【0034】
データ入力ユニット21が読み取った利用者の識別情報は、プロセッサ22によってメモリ25の利用者データファイル25bと照合される。プロセッサ22は、照合により利用者が登録された正規の利用者であることを確認すると、投入口12を開く制御信号を投入口開閉ユニット24に出力する。
【0035】
投入口12が開かれて生ごみが投入されると、センサユニット23は、投入された生ごみの重量と成分を計測する。センサユニット23は、得られた生ごみデータをプロセッサ22に出力し、プロセッサ22は、課金プログラムファイル25gに従って生ごみデータから利用者ごとに課金処理を行う。
【0036】
利用料金の累積値や課金された値は、利用者データファイル25bに蓄えられると共に、表示ユニット26によってモニタに表示され、プリンタ27によって印刷される。従って、利用者は、生ごみを投入したら、直ちに、表示ユニット26のモニタ表示データとプリンタ27から交付される請求書によって、生ごみ処理費用がいくら掛かったかを確認することができる。
【0037】
図3は、1日の生ごみ量の時間当たりの変化を示す生ごみデータの一例である。図4は、1週間の生ごみ量の一日当たり及び地域別の生ごみデータの一例である。生ごみの量は、1日の時間ばかりでなく、利用者の名称又は業種(類型)などの環境条件によって大きく変わる。また、図5は、図3及び図4に示す生ごみデータの蓄積により作成された生ごみの変化パターンの類型を示す投入生ごみパターンファイル25eであり、利用者毎の1年の生ごみ投入量を示すものである。
【0038】
本発明者は、地域の利用者の生ごみ廃棄量及び成分の曜日毎の変化が少なくとも1週間を単位として、周期的に把握でき、一週間を単位とすると、気象や季節によって投入される生ごみの投入量も緩やかに変化し、少なくとも1週間の生ごみデータで、次の一週間の生ごみの投入量を曜日毎に予測できることを見出した。また、1週間の生ごみ量変化が近似する類型のその後の変化パターンと、その後の生ごみ量変化とに相関関係を見出した。すなわち、生ごみの投入プロセスは、7重マルコフ過程の性質を有する。
【0039】
プロセッサ22は、少なくとも一週間の生ごみデータを分析して、次の一週間の点検時点、残渣の抜き取り時点、バクテリアの補充時点、バクテリアの組成、バクテリアの投入量、菌床の補充時点、及び機構部品の整備時点のスケジュール、すなわちメンテナンスプログラムを作成する。例えば、図4に示す投入生ごみパターンファイル25eから、次週は水曜日にバクテリア及び菌床を追加し、月曜日に撹拌槽内の温度設定を行う。
【0040】
このため、センサユニット23からの生ごみデータをメモリ25に少なくとも1週間分は蓄積し、この生ごみデータファイル25aと投入生ごみパターンファイル25eとから類似する変化パターンの類型を検索する。さらに検索された変化パターンの類型とメンテナンスデータファイル25cとから次の1週間のメンテナンスプログラムを作成する。ここで、上述の通り、メンテナンスデータファイル25cには、定期点検、機構部品交換及び調整、バクテリアの配合と量の使用実績データがファイルされている。
【0041】
図6は、生ごみ処理システムのメンテナンスプログラム作成動作を示すフローチャートである。生ごみ処理システムのプロセッサ22がステップ51でメモリ25のコントロールプログラムファイル25iに応じて処理を開始し、ステップ52においてセンサユニット23からの生ごみデータをメモリ25の生ごみデータファイル25aに読み込む。
【0042】
次いで、ステップ53において生ごみデータファイル25aが1週間分のデータを蓄積したかどうかを調べ、蓄積していなければ生ごみデータの読み込みを続ける。プロセッサ22は、ステップ54でメンテナンスプログラムファイル25fにメンテナンスプログラムがあるかどうかを確認する。
【0043】
そして、メンテナンスプログラムファイル25fにメンテナンスプログラムがない場合には、ステップ55において、既にメンテナンスデータファイル25cに蓄積されているデータを用いて、何曜日のいつ頃どのようなバクテリアと菌床の補充及び機構部品の整備や調整が必要で、そのため保守点検者の配置、補修部品やバクテリアの補充、菌床の用意などのスケジュールを作成し、ステップ57で完了する。
【0044】
また、メンテナンスプログラムファイル25fにメンテナンスプログラムがある場合には、ステップ56において利用者の業種、規模、生ごみの廃棄量、時期、気象条件などの条件を考慮して最も近似したメンテナンスプログラムを選択して、ステップ57でスケジュール作成を完了する。
【0045】
このようにして作成されたスケジュールによって、生ごみ処理状況を点検し、残渣を抜き取り、バクテリアの補充、菌床の補充及び機構部品の整備などを実行する。これらのメンテナンスは、生ごみ処理システムの取り扱いをする専任のオペレータによって行われる。
【0046】
日々蓄積及び分析された生ごみデータは、1週間を単位としてメンテナンス利用されると同時に、利用者の名称又は業種(類型)の環境条件とともに蓄積及び分析されることによって、投入生ごみパターンに分類され、メモリ25の投入生ごみパターンファイル25eに記憶される。
【0047】
そこで本発明の第二実施例は、予め投入生ごみパターンファイル25eを用意できていれば、日々蓄積及び分析された生ごみデータの少なくとも1週間分のデータを用い、最も近似する投入生ごみパターンを投入生ごみパターンファイル25eから選択して、そのパターンにもとづいてメンテナンスプログラムファイル25fを作成する。
【0048】
プロセッサ22は、少なくとも一週間の生ごみデータを分析して、投入生ごみパターンファイル25eから、投入生ごみパターンファイル25eから類似する変化パターンの類型を検索し、検索された変化パターンの類型から、次の一週間の点検時点、残渣の抜き取り時点、バクテリアの補充時点、バクテリアの組成、バクテリアの投入量、菌床の補充時点、及び機構部品の整備時点のスケジュール、すなわちメンテナンスプログラムを作成する。
【0049】
そうすることによって長期的なメンテナンスリソースと短期的なメンテナンスリソースを準備することができる。特に、生ごみ処理システムがいろいろな場所に設置された場合に、保守点検者の配置、バクテリアと菌床の補充及び機構部品の調整、整備が効率的にできることになる。
【0050】
本発明の第三実施例は、プロセッサ22が、生ごみデータファイル25aに蓄積された少なくとも1週間のデータを投入生ごみ分析プログラムファイル25dによって分析して、利用者の業種及び規模によるパターンを推定して、投入生ごみパターンファイル25eに保存し、また、そのパターンによって最も適したメンテナンスプログラムをメンテナンスプログラムファイル25fから選定し、生ごみの投入日時及び重量に応じて撹拌機構とバクテリアの点検、調整及び補充のメンテナンススケジュールを作成する。
【0051】
この第三実施例によれば、生ごみ処理システムの利用者が増減しても、投入生ごみパターンファイル25eの利用者の業種及び規模によるパターンを参照して、メンテナンススイケジュールを作成することができる。
【0052】
図7は、この発明の第四実施例を示す生ごみ処理システムのネットワークブロックダイアグラムである。この生ごみ処理システムのネットワークは、生ごみ処理システム61、62及び63と、集中管理システム69は、相互にデータを授受するために、モデム65、66、67及び68をそれぞれ備えている。
【0053】
この実施例の場合には、ネットワークを構成する生ごみ処理システムは3システムであるが、これ以上の数の生ごみ処理システムを結合することができる。また、生ごみ処理システム61、62及び63の処理能力は、異なってもよい。
【0054】
生ごみ処理システム61、62及び63の構成は、図1及び図2に示した生ごみ処理システムと基本的には同じであり、この実施例では、便宜上、図1及び図2と同じ符号を使用して各部の説明をする。
【0055】
生ごみ処理システム61、62及び63においては、上述した実施例と同じデータ処理が行われる。そして、個別にメンテナンススケジュールが作成され、メンテナンスが実行されるほか、管理に必要なデータは全てモデムによって集中管理システム69に送られ、生ごみ処理システム61、62及び63の各システムと共有される。
【0056】
この集中管理システム69は、図2のコントローラとほぼ同じコンポーネンツで構成され、プロセッサ22、メモリ25、表示ユニット26及びプリンタ27を備えている。
【0057】
この集中管理システム69は、生ごみ処理システム61、62及び63からのデータを収集・蓄積し、生ごみ分析プログラムファイル25dにもとづいて、上述した投入生ごみパターンファイル25eとメンテナンスプログラムファイル25fを作成して、生ごみ処理システム61、62及び63に送る。これによって、生ごみ処理システム61、62及び63は、それぞれに最も適した投入パターンからメンテナンスプログラムを探索することができる。
【0058】
しかし、集中管理システム69が、投入生ごみパターンファイル25eを作成するまでは、長期間にわたって多量のデータの蓄積が必要であるから、それまでは、生ごみ処理システム61、62及び63は、それぞれ少なくとも1週間毎の実績データで次の1週間のメンテナンススケジュールを作成する。また、その場合、長期のメンテナンスについては、メメンテナンスプログラムファイル25fから共通データを読み出して利用する。
【0059】
集中管理システム69は、生ごみ処理システム61、62及び63とデータの授受を行って、どの生ごみ処理システムが、いつ、どの程度のメンテナンスを実行し、次に何を必要とするかを管理することができる。
【0060】
上述した実施例では、主として投入生ごみの重量にもとづいてデータ処理を実行したが、これに加えてセンサユニット23の負荷センサからのデータを使うと、負荷センサは撹拌槽13内のバクテリアの活性度と相関関係があるから、もっと効率よく正確なメンテナンスプログラムを作成することができる。
【0061】
図8は本発明を適用する並設生ごみ処理システムのブロック図である。この並設生ごみ処理システムは、破砕機71、切り替え弁72、コントローラ73、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75から構成されている。
【0062】
この並設生ごみ処理システムの破砕機71、切り替え弁72、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75は、コントローラ73によって制御される。このコントローラは、上述した実施例のコントローラとほぼ同じ構成である。
【0063】
破砕機71は、生ごみの投入口12、投入口開閉ユニット24、少なくとも重量を計測するセンサユニット23及び破砕機構を備えている。投入された生ごみは、センサユニット23でその重量が計測され、生ごみの重量データがコントローラ73に出力される。
【0064】
コントローラ73は、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75とデータの授受を行い、これらのシステムが新たな生ごみ投入時にどの程度の重さの生ごみを処理しているのかを把握することができる。
【0065】
またコントローラ73には、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75の各センサユニット23から検出されたそれぞれの駆動モータ14の負荷のデータが出力される。従って、プロセッサ73は、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75の処理重量をチェックし、処理重量がほぼ等しくなるように切り替え弁72を操作する。もし、第1及び第2生ごみ処理システム74及び75の処理重量がほぼ同じであれば、負荷がほぼ同じになるように切り替え弁72を制御する。
【0066】
このように複数の生ごみ処理システムを用いてシステムの生ごみ処理能力を上げるとともに、処理を実質的に均等になるように制御することによって効率を向上することができる。
【0067】
このようなシステムにおいても、上述した実施例と同様に、1週間の蓄積データにもとづいて、並設生ごみ処理システムを一括してメンテナンススケジュールを作成することができる。
【0068】
上述したように、本発明の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法は、少なくとも1週間分の処理実績にもとづいて、メンテナンスプログラムを作成して実行し、そのようにして実行した処理データを蓄積分析してより実態に即した生ごみ処理パターンを見出し、より効率のよいメンテナンスプログラムに近づけることが出来るという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明を適用する生ごみ処理システムのブロック図である。
【図2】生ごみ処理システムにおけるコントローラのブロック図である。
【図3】1日に投入される生ごみ量の時間的変化の一例を示すグラフである。
【図4】1週間に投入される生ごみ量の曜日による変化の一例を示すグラフである。
【図5】生ごみ量の変化パターンの類型を示すグラフである。
【図6】本発明の第一実施例を示す生ごみ処理システムのフローチャートである。
【図7】本発明の第四実施例を示す生ごみ処理システムネットワークのブロック図である。
【図8】本発明を適用する並設生ごみ処理システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
11 コントローラ
12 投入口
13 撹拌槽
14 駆動モータ
15 撹拌機構
16 消臭機
17 排気装置
21 データ入力ユニット
22 プロセッサ
23 センサユニット
24 投入口開閉ユニット
25 メモリ
26 表示ユニット
27 プリンタ
61 第1生ごみ処理システム
62 第2生ごみ処理システム
63 第3生ごみ処理システム
65 モデム
66 モデム
67 モデム
68 モデム
69 集中管理システム
71 破砕機
72 切り替え弁
73 コントローラ
74 第1生ごみ処理システム
75 第2生ごみ処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、
処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、
前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、
前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、
前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、
蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、
を有すること、
を特徴とする生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項2】
前記スケジュール決定工程では、前記撹拌機構及び前記脱臭機の次の1週間の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充の次の1週間のスケジュールを決定すること、
を特徴とする請求項1記載の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項3】
投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構と生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、
予め、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを、生ごみの投入日及び重量に応じた類型に分けてメンテナンスプログラムファイルに記録する工程と、
処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、
前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、
前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、
前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、
前記メンテナンスプログラムファイルを参照して、前記データ入力ユニットに入力された少なくとも1週間分の生ごみの投入日、及び蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、
を有すること、
を特徴とする生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項4】
投入された生ごみをバクテリアと共に撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、
予め、前記生ごみ処理システムの利用者の名称又は業種をユーザメモリファイルに記録する工程と、
処理する生ごみの投入前に前記利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、
前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、
前記投入口から投入された生ごみの重量をセンサで検出する工程と、
前記利用者毎に、検出した重量のデータをメモリに蓄積する工程と、
少なくとも1週間分の生ごみの投入日、及び蓄積された少なくとも1週間分の前記重量のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを、前記ユーザメモリファイルに記録された前記利用者の名称又は業種に応じた類型に分けて作成する工程と、
を有すること、
を特徴とする生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項5】
複数セットの前記生ごみ処理システムに係る請求項1記載のメンテナンススケジュール作成方法であって、
前記類型分け工程では、前記ユーザメモリファイルに記録された前記利用者の名称又は業種に応じて、各生ごみ処理システムに由来する各蓄積された前記重量のデータを分析して、生ごみの投入日及び重量のデータを類型化し、この類型毎にスケジュールを作成すること、
を特徴とする生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項6】
投入された生ごみをバクテリアと共にモータで撹拌する撹拌機構及び生ごみから出る臭いを脱臭する脱臭機とを備える生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法であって、
処理する生ごみの投入前に利用者の識別情報と生ごみの投入日を入力する工程と、
前記識別情報が予め登録されている情報と一致する場合のみ投入口を開ける工程と、
前記投入口から投入された生ごみの重量及び前記モータの負荷をセンサで検出する工程と、
前記利用者毎に、検出した前記重量及び前記負荷のデータをそれぞれメモリに蓄積する工程と、
蓄積された少なくとも1週間分の前記重量及び前記負荷のデータにもとづいて、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定する工程と、
を有すること、
を特徴とする生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項7】
前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを類型化して予め記録しておく工程を更に有し、
前記スケジュール決定工程では、予め記録された前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、並びに前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールの類型から、蓄積された少なくとも1週間分の前記重量及び前記負荷のデータによって、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールを決定すること、
を特徴とする請求項6記載の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項8】
予め前記利用者の名称又は業種を記録する工程を更に有し、
前記スケジュール決定工程では、前記撹拌機構及び前記脱臭機の点検スケジュール、前記バクテリアの調整及び補充のスケジュールの類型から、前記生ごみデータファイルに蓄積された少なくとも1週間分の前記重量及び負荷のデータ、及び前記記録された前記利用者の名称又は業種に応じたスケジュールを選択すること、
を特徴とする請求項7記載の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項9】
前記スケジュール決定工程の実行結果を表示ユニットに表示する工程を更に有すること、
を特徴とする請求項1、3、4、6、又は8の何れかに記載の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。
【請求項10】
前記入力する工程では、バーコードデータで生ごみ利用者を認識すること、
を特徴とする請求項1、3、4、6、又は8の何れかに記載の生ごみ処理システムのメンテナンススケジュール作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178882(P2008−178882A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108871(P2008−108871)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【分割の表示】特願2005−226141(P2005−226141)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(300006755)株式会社ジェイアール東日本都市開発 (3)
【出願人】(505295570)株式会社シンキングジャパン (4)
【Fターム(参考)】