説明

生中華麺の製造方法

【構成】小麦粉60〜95重量部に、馬鈴薯澱粉および/または緑豆澱粉のエーテル化および/またはエステル化誘導体40〜5重量部を混埋し、これにかん水を加えて混練することを特徴とする生中華麺の製造方法。
【効果】本発明の生中華麺は、食感が良好でかつ長期保存性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長期保存性に優れた生中華麺に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、生中華麺は小麦粉にかん水液を加え、これに必要に応じてグルテン、食塩、プロピレングリコール、エタノール、ソルビトールなどを加えて混埋し、製麺機により圧延した後、切出して製造されている。また、特開昭62−143661号公報にデューラムセモリナに馬鈴薯澱粉、タピオカ加工澱粉およびワキシーコーンスターチを加え、これにかん水を加える方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】通常の生中華麺は、流通期間が2〜5日間と短いため、従来の製法やそれに表化工の澱粉を加えたものでもさほど保存性が問題となることはなかった。しかし最近の生タイプのカップ麺に用いられる中華麺(L.L.麺)は店頭および/または家庭において長期間貯蔵後、食されるために長期の保存性が要求される。すなわち、従来の生中華麺は、長期保存中に食感が著しく低下するという問題点がある。また、タピオカ化工澱粉を添加する方法は、特開昭62−143661号公報には、どの様な化工がなされたものを用いたかの開示がなされていないのでその保存効果については不明であるが、タピオカ系の加工澱粉は、麺類に添加した場合、「もちもち」とした食感となり、うどんならば適するが、「ぐにぐに」「しこしこ」とした食感が必要な中華麺には不向きである。このように、長期保存性に優れ、かつ食感の良好な生中華麺はないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉および/または緑豆澱粉のエーテル化および/またはエステル化誘導体を、小麦粉及びかん水に添加することにより長期保存性に優れ、かつ食感の良好な生中華麺が得られることを見出し本発明を完成するに至った。すなわち、小麦粉60〜95重量部に、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉および/または緑豆澱粉のエーテル化および/またはエステル化誘導体40〜5重量部を混合し、これにかん水を加えて混練することを特徴とする生中華麺の製造方法である。
【0005】本発明に用いられる澱粉誘導体の原料澱粉は、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉、および/または緑豆澱粉である。これらの澱粉を選ぶことにより中華麺に必要な「ぐにぐに」「しこしこ」とした食感を得ることができる。タピオカ系では「もちもち」とした食感となるし、コーンスターチ系では「ぼそぼそ」とした食感となる。これらの原料澱粉に常法によりエーテル化剤、エステル化剤を作用させて、用いる澱粉誘導体を得る。
【0006】本発明に用いられるエーテル化剤、エステル化剤はいずれも常法のものがすべて使用される。例えば、エーテル化剤としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、モノクロル酢酸、ヨードメチルなど、エステル化剤としては無水酢酸、酢酸ビニル、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、無水コハク酸、ノーオクテニル無水コハク酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0007】本発明に用いられる澱粉誘導体の置換度(無水グルコース残基1モルヨリの置換度O.S.モル)は、0.005〜0.3好ましくは0.01〜0.2のものが好適に用いられる。置換度が0.005よりも小さいと長期保存性が悪く、保存中に「ぼそぼそ」とした食感となってしまう。また、置換度が0.3以上の場合は、添加量にもよるが概して軟かい麺となってしまい中華麺としては適さなくなる。
【0008】本発明は、小麦粉60〜95重量部に対して、澱粉誘導体40〜5重量部を好適に用いるが、澱粉誘導体の割合がこれよりも少ないと充分な長期保存性を得ることができない。また、澱粉誘導体の割合がこれよりも多くなると麺の歯応えが弱くなりマロニーの様になってしまう。
【0009】本発明では、これらの原料にかん水を添加する。かん水は、食品添加物で、ナトリウム及びカリウムの炭酸塩及びリン酸塩類の一種、あるいはそれらの混合物であるが、ボーメ2〜5度のものであれば、小麦粉と澱粉誘導体の合計量を100重量部としたとき、27〜35重量部添加するのが望ましい。必要ならば、これらの原料の他にグルテン、食塩、未化工の澱粉、卵白、プロピレングルコール等を添加してもよい。
【0010】上記の原料を充分に混埋し、製麺機等により圧延した後、切出して、本発明の生中華麺を得ることができる。また、混埋後、押出し機によりダイスより直接押出しても、本発明の生中華麺を得ることができる。
【0011】
【実施例】
参考例1水130重量部(以下、部と略す)に水酸化ナトリウム1・5部および硫酸ナトリウム40部を溶解し、これにサゴ澱粉100部を撹拌下に分散させ、さらにプロピレンオキサイド2〜20部を添加し、40℃で10時間反応させる。反応終了後、希塩酸で中和し、水洗、▲ろ▼過、乾燥して各種の置換度のヒドロキシブロピル澱粉を得る。
参考例2サゴ澱粉の代わりに馬鈴薯澱粉および緑豆澱粉を用いる以外は参考例1と同様にして各種の置換度のヒドロキシプロビル澱粉を得る。
参考例3サゴ澱粉100部に1リン酸ナトリウム:2リン酸ナトリウム=2:3の混合物の2〜20部を水220部に溶解し噴霧混合する。これを水分10%以下まで乾燥後、130〜140℃で3、5時間反応させ各種の置換度の澱粉リン酸エステルを得る。
参考例4サゴ澱粉の代わりに馬鈴薯澱粉および緑豆澱粉を用いる以外は参考例3と同様にして各種の置換度の澱粉リン酸エステルを得る。
参考例5水130部にサゴ澱粉100部を撹拌下に分散させ、無水酢酸2〜10部を様々に摘下し、希水酸化ナトリウムを用い、pH8〜9に保ちながら30℃で5時間反応する。反応終了後、希塩酸で中和し、水洗▲ろ▼過、乾燥して各種の置換度の酢酸澱粉を得る。
参考例6サゴ澱粉の代わりに馬鈴薯澱粉および緑豆澱粉を用いる以外は参考例5と同様にして各種の置換度の酢酸澱粉を得る。
参考例7プロピレンオキサイドの代わりにモノクロル酢酸ナトリウムを用いる以外は、参考例1、参考例2と同様にして各種の置換度のカルボキシメチル澱粉を得る。
参考例8プロピレンオキサイドの代わりに、ヨードメチルを用いる以外は、参考例1、参考例2と同様にして各種の置換度のメチル化澱粉を得る。
参考例9無水酢酸の代わりに無水コハク酸を用いる以外は、参考例5、参考例6と同様にして各種の置換度の澱粉コハク酸エステルを得る。
参考例10無水酢酸の代わりに無水オクテニルコハク酸を用いる以外は参考例5、参考例6と同様にして各種の置換度の澱粉オクテニルコハク酸エステルを得る。
参考例11無水酢酸の代わりに無水マレイン酸を用いる以外は、参考例5、参考例6と同様にして各種の置換度の澱粉マレイン酸エステルを得る。
【0012】実施例1参考例1、参考例2で得たヒドロキシプロピル澱粉20部を準強力小麦粉100部と均一に混合後、ボーメ3度のかん水40部を加えて常法により厚さ1、4mm、巾1、4mmの麺線に成形して生中華麺を得る。この生中華麺を茹でた直後、これを真空無菌パックし1週間、1ヶ月保存後、2分間湯もどしし、10人のパネラーによる10段階評価の官能検査を行った。評価は評点の平均の整数値(小数点以下は四捨五入)で表わした。結果を表1に示す。
比較例1澱粉を加えないもの、本発明のヒドロキシプロピル澱粉の代わりにタピオカヒドロキシプロピル澱粉、未化工のサゴ澱粉、馬鈴薯澱粉および緑豆澱粉を用いて実施例1と同様にして生中華麺を得た。これらについて実施例1と同様に官能検査を行い結果を表1に示す。
【表1】


【0013】実施例2参考例3、参考例4で得た澱粉リン酸エステルについて実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表2に示す。
比較例2本発明の澱粉リン酸エステルの代わりにタピオカリン酸エステルを用いて実施例2と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表2に示す。
【表2】


実施例3参考例5、参考例6で得た酢酸澱粉について実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表3に示す。
比較例3本発明の酢酸澱粉の代わりにタピオカ酢酸澱粉を用いて実施例3と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表3で示す。
【表3】


【0014】実施例4参考例7で得たカルボキシメチル澱粉について実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表4に示す。
比較例4本発明のカルボキシメチル澱粉の代わりにタピオカカルボキシルメチル澱粉を用いて実施例4と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表4に示す。
【表4】


実施例5参考例8で得たメチル澱粉について実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表5に示す。
比較例5本発明のメチル化澱粉の代わりにタピオカメチル化澱粉を用いて実施例5と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表5に示す。
【表5】


【0015】実施例6参考例9で得た澱粉コハク酸エステルについて実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表6に示す。
比較例6本発明の澱粉コハク酸エステルの代わりにタピオカコハク酸エステルを用いて実施例6と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い結果を表6に示す。
【表6】


実施例7参考例10で得た澱粉オクテニルコハク酸エステルについて実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表7に示す。
比較例7本発明の澱粉オクテニルコハク酸エステルの代わりにタピオカオクテニルコハク酸エステルを用いて、実施例7と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表7に示す。
【表7】


【0016】実施例8参考例11で得た澱粉マレイン酸エステルについて実施例1と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表8に示す。
比較例8本発明の澱粉マレイン酸エステルの代わりにタピオカマレイン酸エステルを用いて、実施例8と同様にして生中華麺を得、官能検査を行い、結果を表8に示す。
【表8】


【0017】
【発明の効果】表1〜表8よりわかる様に、本発明の生中華麺は食感が良好でかつ長期保存性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】小麦粉60〜95重量部に、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉および/または緑豆澱粉のエーテル化および/またはエステル化誘導体40〜5重量部を混合し、これにかん水を加えて混練することを特徴とする生中華麺の製造方法。
【請求項2】該エーテル化が、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、カルボキシメチル化であり、該エステル化が酢酸エステル化、リン酸エステル化、コハク酸エステル化、アルケニルコハク酸エステル化、マレイン酸エステル化であることを特徴とする請求項1記載の生中華麺の製造方法。
【請求項3】該エーテル化および/またはエステル化の置換度が、0.005〜0.3である請求項2記載の生中華麺の製造方法。

【公開番号】特開平5−316978
【公開日】平成5年(1993)12月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−194455
【出願日】平成4年(1992)5月25日
【出願人】(000227272)日澱化學株式会社 (23)