説明

生体内イメージング法

本発明は、パーキンソン病(PD)の早期診断を容易にするインビボイメージング法を提供する。神経保護治療は健常な神経細胞への適用により、衰弱性臨床症状の発現を遅らせるか又は更には阻止することができるので、早期診断は特に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボイメージング、特にパーキンソン病の早期診断を容易にするインビボイメージング法に関する。
【背景技術】
【0002】
Braakら(2004 Cell Tissue Res.; 318: 121−34)は、パーキンソン病(PD)の神経病態生理において6つのステージを定義し、各連続ステージを、レビー小体(LB)及びレビー神経突起(LN)の漸進的な発現によって定義づけた。これらのLB及びLNはほとんど、タンパク質α−シヌクレインの凝集体からなる(Spillantiniら、1997 Nature; 388: 839−40)。このα−シヌクレインは、健常神経細胞中では、折り畳まれていない膜結合タンパク質として存在する。まだ明らかになっていない条件下で、α−シヌクレインは膜から脱離してβ−シート構造を取り、それが凝集を可能にし、その結果としてLB及びLNを形成する。PDにおいて、最も早期の病変は嗅球、前嗅核、及び迷走神経の背側運動核に出現する(Braak 2004 Cell Tissue Res.; 318: 121−34)。このプロセスは、胃腸管(GIT)の粘膜関門を通過し、迷走神経から腸ニューロンを経て中枢神経系(CNS)に入る未知の病原体が引き金となって、CNSの外で発生すると仮定された(Braakら、J. Neural Transm. 2003; 110: 517−36)。
【0003】
PDのかなり明確な診断が、ほとんどの場合、患者の病歴及び床検査を用いて得ることができる。Samiiら(Lancet 2004; 363(9423): 1783−93)によって述べられたように、診断に使用される基準の1つは、抗パーキンソン薬、典型的にはドーパミン作働薬又はレボドパに対する確定的な反応である。したがって、例えば、レボドパの試験は、PDを、正常な老化、本態性振せん、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症(MSA)及びレビー小体型認知症(DLB)と識別するのに役立つことができる。しかし、被検者に不適切な治療を受けさせることは理想的とは言えない。さまざまな潜在的副作用に不必要に曝露されるだけでなく、場合によっては、疾病が悪化するおそれがある。例えば、DLBを患っている被検者の場合、抗パーキンソン薬による不適切な治療は、精神症状を悪化させる可能性がある。
【0004】
PDの診断の助けとなるCNSのインビボイメージングが、当業界で知られている(Rachakondaら、2004 Cell Res.; 14(15): 349−60参照)。例えば、6−[18F]−フルオロ−L−ドーパが、ドーパミン作動性ニューロンの機能を評価するPETトレーサーとして使用されている。SPECTトレーサー[123I]−2−[β]−カルボメトキシ−3−[β]−(4−ヨードフェニル)−トロパンは、小胞モノアミン輸送体の機能の評価に使用されている。WO2004/075882は、被検者において、異常に折り畳まれたかもしくは凝集したタンパク質及び/又はアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断するインビボイメージング法であって、放射性標識イノシトール誘導体の投与を含む方法を開示している。WO2004/075882には、このインビボイメージング法がPDの診断に適用できることが教示されている。しかし、WO2004/075882には、CNS外の、異常に折り畳まれたか又は凝集したタンパク質を標的とすることによるPDのインビボイメージングについては何ら言及されていない。また、WO2004/075882には、異常に折り畳まれたか又は凝集したタンパク質がα−シヌクレインであることも具体的に開示されていない。
【0005】
PDを患っている被検者の中枢神経系(CNS)中に存在するα―シヌクレイン沈着物を特に標的とするインビボ造影剤が、報告されている。WO2004/100998は、インビボ造影剤で標識されたアミロイド−βに結合する薬剤を開示し、更に、これらの化合物が、CNS中のα−シヌクレイン沈着物を標的とするのにも使用でき、PD診断に役立つことを教示している。WO2005/013889は、LB病を診断するためのLBのインビボイメージング法を開示しており、この方法は、LB中のα−シヌクレインに特異的に結合する抗体の患者への投与を含む。WO2005/013889は、CNS中のLBの存在に関してLB病を記載しており、CNS外のLBについては特に言及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のインビボイメージング技術は、不正確な鑑別診断及びPD治療の不適切な適用という問題を克服できるが、それらは全て、LB及びLNがCNS中に存在するステージの疾病過程を標的とする。このステージでは、臨床症状が顕著であり、線条体ドーパミン性ニューロンの約80%及び黒質ニューロンの50%が失われる(Samiiら、2004 The Lancet; 363(9423): 1783−1793)。CNSのニューロンは細胞死の後では独力で再生できないので、神経保護治療は、診断時にまだ生きているニューロンにしか役立たないであろう。患者にとっては、疾病の進行を可能な限り早期に抑える治療を受けることが有利であろう。したがって、ニューロンが著しく失われる前にPDを鑑別する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パーキンソン病(PD)の早期診断法に使用するためのインビボ造影剤を提供する。神経保護治療は、健常な神経細胞への適用により、衰弱性臨床症状の発現を遅らせるか又は更には阻止することができるので、早期診断が特に有利である。先行技術に勝る本発明の更なる利点は、インビボ造影剤がCNSに入る必要がないことである。したがって、本発明のインビボ造影剤が血液脳関門を通り抜けるか否かについて検討する必要もなく、又は比較的侵襲的である、脳へのインビボ造影剤の直接投与経路を検討する必要もない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
イメージング法
一態様において、本発明は、パーキンソン病(PD)の存在又はPDへの感受性の測定方法に使用するためのインビボ造影剤であって、前記インビボ造影剤がインビボイメージング部分で標識されたα−シヌクレイン結合剤を含み、前記インビボ造影剤が0.1nM〜50μMの結合親和力でα−シヌクレインに結合しており、前記方法が、
(i)検出可能な量の前記インビボ造影剤を被検者に投与するステップ、
(ii)ステップ(i)の前記投与されたインビボ造影剤を、前記被検者の自律神経系(ANS)中のα−シヌクレイン沈着物に結合させるステップ、
(iii)ステップ(ii)の前記結合したインビボ造影剤によって放出されるシグナルを、インビボイメージング法を用いて検出するステップ、
(iv)前記シグナルの位置及び/又は量を表す画像を生成させるステップ、並びに
(v)ステップ(iv)において生成された画像を用いて、PDの存在又はPDへの感受性を測定するステップ
を含むインビボ造影剤を提供する。
【0009】
用語「α−シヌクレイン沈着物」は、タンパク質α−シヌクレインを含む不溶性タンパク質封入体を意味する。レビー小体(LB)及びレビー神経突起(LN)は、α−シヌクレインを主成分とする周知の不溶性タンパク質封入体であり、PDでは、中枢神経系(CNS)にもANSにも存在することが報告されている。しかし、PDは従来からCNSの疾病とみなされており、CNS中に存在するPD標的α−シヌクレイン沈着物の検出のためのインビボイメージング法が知られている。
【0010】
「中枢神経系」(CNS)は、脳及び脊髄からなる脊椎動物の神経系の一部である。CNSには、「タイトジャンクション」によって内皮細胞が体の他の部位よりも密に詰まっている。タイトジャンクションは、隣接上皮細胞間にシールを形成する多機能複合体であり、上皮層の一側から反対側へのほとんどの溶解分子の通過を妨げる。これが血液脳関門(BBB)を形成し、BBBは、脂溶性によって細胞膜を横断する分子(例えば、酸素、二酸化炭素、エタノール及びステロイドホルモン)並びに特定の輸送系によって入ることができる分子(例えば、糖及び一部のアミノ酸)を除く全ての分子の移動を阻止する。分子量が500Daより大きい物質(例えば、抗体)は一般に、受動拡散によってBBBを横断することはできないが、より小さい分子は横断できることが多い。インビボ造影剤がCNS中の標的と接触するためには、その化学構造を、BBBを通過するように適応させるか、又は別法として、インビボ造影剤を比較的侵襲的な方法を用いてCNS中に直接投与しなければならない。
【0011】
末梢神経系(PNS)は、CNSの外に存在するか又は伸びている。CNSとは異なり、PNSはBBBによって保護されていない。末梢神経系は体性神経系と自律神経系とに分けられる。「自律神経系」(ANS)(内臓神経系としても知られている)は、制御系の役割をするPNSの一部であり、体内の恒常性を維持する。これらの活動は一般に、意識的な制御も感覚もなく行われる。その活動のほとんどは不随意であるが、呼吸のような一部の活動は、意識と連携して機能する。その主要構成要素は、感覚系、運動系(副交感神経系と交感神経系とからなる)、並びに腸神経系(ENS、胃腸系を制御する)である。
【0012】
本発明の方法は、検出可能なインビボ造影剤を被検者に投与するステップから始まる。この方法の究極の目的は、診断上有用な画像を提供することであるので、被検者への前記インビボ造影剤の投与は、前記画像の生成を容易にするのに必要な予備ステップであることが理解できる。代替の実施形態において、本発明の方法は、検出可能な量のインビボ造影剤が既に投与された被検者を用意するステップから始まることもできる。インビボ造影剤を「投与する」とは、被検者の体内にインビボ造影剤を導入することを意味し、投与は好ましくは非経口的に、最も好ましくは静脈内に行う。静脈内経路は、被検者の全身にインビボ造影剤を送達するのに最も効率的な方法と言える。
【0013】
本発明の「被検者」は、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはインタクトな哺乳動物の生体である。特に好ましい実施形態において、本発明の被検者はヒトである。
【0014】
用語「インビボ造影剤」は大まかには、哺乳動物の生体への投与後に検出できる化合物を意味する。本発明のインビボ造影剤は、インビボイメージング部分で標識されたα−シヌクレイン結合剤を含む。用語「インビボイメージング部分で標識された」とは、(i)α−シヌクレイン結合剤の特定の原子がインビボ検出に適した同位体種であること、又は(ii)前記インビボイメージング部分を含む基が前記α−シヌクレイン結合剤とコンジュゲートされていることを意味する。両者の例を以下により詳細に記載する。インビボ造影剤は、α−シヌクレインに対する結合親和力が0.1nM〜50μM、好ましくは0.1nM〜1μM,最も好ましくは0.1〜100nMの範囲である。Masudaら(2006 Biochemistry; 45: 6085−94)は、インビトロでα−シヌクレインに結合する化合物の能力を試験するためのアッセイを記載している。このアッセイにおいては、試験化合物をα−シヌクレインの溶液と一緒に37℃で72時間インキュベートし、続いて界面活性剤サルコシル(ラウロイルサルコシン酸ナトリウム)を添加することによって、可溶性α−シヌクレインと不溶性α−シヌクレインとの相対比率の測定を容易にする。試験化合物のIC50値は、サルコシル−不溶性α−シヌクレインの量を定量化することによって算出できる。したがって、このアッセイは、個々のインビボ造影剤が本発明に適するか否かを試験するのに使用できる。α−シヌクレインに対する結合親和性を有することが知られ、そのために本発明に適したインビボ造影剤を得るための基礎原料として適切である、種々の化合物がある。Matsudaら(上記)は、α−シヌクレインに結合する、さまざまな異なる化合物クラスを開示している。更に、α−シヌクレインに特異的な抗体も知られており、多くの供給源から市販されている。一部の好ましいα−シヌクレイン結合剤及び対応するインビボ造影剤の非限定的例を、以下により詳細に記載する。
【0015】
「インビボイメージング部分」は、人体の外部で検出することもできるし、或いはインビボで使えるように設計された検出器、例えば、血管内放射線検出器もしくは内視鏡などの光学検出器、又は術中使用のために設計された放射線検出器を用いて検出することもできる。
【0016】
投与ステップ後であって検出ステップ前に、インビボ造影剤を前記被検者のANS中のα−シヌクレインと結合させる。例えば、被検者が完全な哺乳動物である場合には、インビボ造影剤は哺乳動物の体内を動的に移動し、体内の種々の組織と接触するであろう。インビボ造影剤がα−シヌクレインと接触すると、特異的な相互作用が起こり、その結果、α−シヌクレインを含む組織からのインビボ造影剤のクリアランスは、α−シヌクレインを全く又はそれほど含まない組織からのクリアランスよりも長い時間を要するようになる。α−シヌクレインを含む組織に結合したインビボ造影剤とα−シヌクレインを全く又はそれほど含まない組織内で結合したインビボ造影剤との比率の結果として、α−シヌクレインに特異的に結合したインビボ造影剤の検出が可能となる特定の時点に到達するであろう。理想的なこのような比は、少なくとも2:1である。好ましくは、前記α−シヌクレイン沈着物は、ENS、即ち、腸の筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)及び粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)に存在する。
【0017】
本発明の方法の「検出」ステップは、人体の外部でのシグナルの検出、或いはインビボで使えるように設計された検出器、例えば、血管内放射線検出器もしくは内視鏡(腸内のシグナルの検出に適した)などの光学検出器、又は術中使用のために設計された放射線検出器を用いたシグナルの検出を含む。この検出ステップはまた、シグナルデータの取得と理解することもできる。
【0018】
前記インビボイメージング部分によって放出されるシグナルを検出するために選択される「インビボイメージング法」は、シグナルの性質によって異なる。このため、シグナルが常磁性金属イオンから生じる場合には磁気共鳴画像法(MRI)を用い、シグナルがγ線である場合には単一光子放出断層撮影(SPECT)を用い、シグナルが陽電子である場合には陽電子放射断層撮影(PET)を用い、シグナルが光学活性である場合には光学イメージングを用いる。いずれも、本発明の方法に使用するのに適するが、PET及びSPECTは、バックグラウンドの影響を受ける可能性が最も少なく、したがって診断上最も有用であるので、好ましい。
【0019】
本発明の方法の「生成」ステップを、再構成アルゴリズムを取得シグナルデータに適用するコンピューターによって実施して、データセットを得る。次に、このデータセットを操作して、被検者内部の該当領域を示す画像を生成させる。
好ましいインビボイメージング部分
インビボイメージング部分は好ましくは、
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出放射性非金属、
(v)インビボ光学イメージングに適したレセプター
から選択される。
【0020】
インビボ造影剤は、前駆体化合物とインビボイメージング部分の適切な供給源との反応によって都合よく製造できる。「前駆体化合物」は、都合よい化学形態のインビボイメージング部分との化学反応が部位特異的に起こり、最小ステップ数で(理想的には単一ステップで)、精製をそれほど必要とせずに(理想的には更なる精製を全く必要とせずに)実施して所望のインビボ造影剤を生成できるように設計された、インビボ造影剤の誘導体を含む。このような前駆体化合物は合成化合物であり、良好な化学純度で都合よく得ることができる。前駆体化合物は任意選択で、前駆体化合物の特定の官能基に対する保護基を含むことができる。
【0021】
用語「保護基」とは、望まれていない化学反応を阻害又は抑制するが、分子の残部を改変しないような十分に温和な条件下で当該官能基から切断できる十分に反応性に設計された基を意味する。脱保護後、所望のインビボ造影剤が得られる。保護基は当業者によく知られており、アミン基に対してはBoc(Bocは、tert−ブチルオキシカルボニルである)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde(即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)又はNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適切に選択され、カルボキシル基に対してはメチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから適切に選択される。ヒドロキシル基に対しては、適切な保護基は、メチル、エチルもしくはtert−ブチル、アルコキシメチルもしくはアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)又はトリアルキルシリル、例えば、テトラブチルジメチルシリルである。チオール基に対しては、適切な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。保護基の使用については、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene及びPeter G.M. Wuts(Third Edition, John Wiley & Sons, 1999)に記載されている。
【0022】
インビボイメージング部分が放射性金属イオン、即ち、放射性金属である場合には、適切な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaなどの陽電子放射体、99mTc、111In、113mIn又は67Gaなどのγ−放射体のいずれかであることができる。好ましい放射性金属は、99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ−放射体、特に99mTcである。
【0023】
インビボイメージング部分が常磁性金属イオンである場合には、適切な常磁性金属イオンとしては、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III),Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)が挙げられる。好ましい常磁性金属イオンは、Gd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0024】
イメージング部分が金属イオンを含む場合には、金属イオンは好ましくは、金属イオンと合成配位子との金属錯体として存在する。用語「金属錯体」とは、金属イオンと1つ又はそれ以上の配位子との配位錯体を意味する。金属錯体は、「耐キレート交換性」である、即ち、金属配位座を競合する可能性がある他の配位子との配位子交換を容易には受けないのが非常に好ましい。競合する可能性がある配位子としては、インビトロでは製剤中の他の賦形剤(例えば、製剤中に使用される放射線防護剤もしくは抗菌性保存剤)、又はインビボでは内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリンもしくは血漿タンパク質)が挙げられる。用語「合成」は、その従来の意味、即ち、天然供給源、例えば、哺乳動物の体から単離されたのではなく、人造であることを意味する。合成化合物は、製造プロフィール及び不純物プロフィールを完全に制御できるという利点を有する。
【0025】
耐キレート交換性の金属錯体を形成する、本発明への使用に適した配位子は、2〜6個、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が、5もしくは6員キレート環を生じる(金属ドナー原子を連結する炭素原子もしくは他の非配位ヘテロ原子の非配位骨格を有することによって)ように配列されているキレート化剤、又は金属イオンに強く結合するドナー原子を含む単座配位子、例えば、イソニトリル、ホスフィンもしくはジアゼニドを含む。キレート化剤の一部として金属によく結合するドナー原子型の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィンは非常に強い金属錯体を形成するので、単座又は二座ホスフィンであっても適切な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの直線構造は、それらがキレート化剤中に簡単には組み込まれにくく、そのために典型的には単座配位子として使用されるような構造である。適切なイソニトリルの例としては、tert−ブチルイソニトリルなどの単純なアルキルイソニトリル、及びMIBI(即ち、1−イソシアナ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)などのエーテル置換イソニトリルが挙げられる。適切なホスフィンの例としては、テトロホスミン、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンなどの単座ホスフィンが挙げられる。適切なジアゼニドの例としては、HYNIC系の配位子、即ち、ヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0026】
金属イオンがテクネチウムである場合には、耐キレート交換性の金属錯体を形成する適切なキレート化剤としては、
(i)ジアミンジオキシム;
(ii)MAG(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連配位子などのチオールトリアミドドナーセットを有するか、又はPicaなどのジアミドピリジンチオールドナーセットを有するNS配位子、
(iii)BATもしくはECD(即ち、エチルシステイネート二量体)などのジアミンジチオールドナーセット、又はMAMAなどのアミドアミンジチオールドナーセットを有するN配位子、
(iv)サイクラム、モノオキソサイクラム、ジオキソサイクラムなどの、テトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開鎖又は大環状配位子であるN配位子、
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN配位子
が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0027】
99mTcの錯化に特に適するキレートの例は、WO2003/006070及びWO2006/008496に記載されている。
【0028】
インビボイメージング部分がγ線放出放射性ハロゲンである場合には、放射性ハロゲンは123I、131I又は77Brから適切に選択される。125Iは、インビボ画像診断のイメージング部分として使用するのに適さないので、特に除外される。
【0029】
化合物をγ線放出放射性ハロゲンで標識する場合には、適切な前駆体化合物は、求電子もしくは求核ハロゲン化を受けるか、又は標識アルデヒドもしくはケトンと縮合される誘導体を含むものである。第1のカテゴリーの例は、
(a)有機金属誘導体、例えば、トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニルもしくはトリブチルスタンニル)、又はトリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)、又は有機ホウ素化合物(例えば、ボロン酸エステルもしくは有機トリフルオロボレート)、
(b)ハロゲン交換用の非放射性臭化アルキル、又は求核ハロゲン化用の非放射性トシル酸アルキル、メシル酸アルキルもしくはアルキルトリフレート、
(c)求電子ハロゲン化のために活性化された芳香環(例えば、フェノール、フェニルアミン)及び求核ハロゲン化のために活性化された芳香環(例えば、アリールヨードニウム塩アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)
である。
【0030】
放射性ハロゲン化用の前駆体化合物は好ましくは、ヨウ化アリールもしくは臭化アリールなどの非放射性ハロゲン原子(放射性ヨウ素交換を可能にする)、活性化アリール環(例えば、フェノールもしくはフェニルアミン)、有機金属置換基(例えば、トリアルキル錫、トリアルキルシリルもしくは有機ホウ素化合物)、又はトリアゼンなどの有機置換基もしくはヨードニウム塩などの求核置換に好適な脱離基を含む。好ましくは、放射性ハロゲン化の場合には、前駆体化合物は、活性化アリール環又は有機金属置換基を含み、前記有機金属置換基は最も好ましくはトリアルキル錫である。
【0031】
好ましいγ線放出放射性ハロゲンは、放射性ヨウ素、特に123Iである。前駆体化合物及び有機分子中への放射性ヨウ素の導入方法は、Bolton(J.Lab.Comp.Radiopharm., 2002; 45: 485−528)によって記載されている。適切なボロン酸エステル有機ホウ素化合物及びそれらの製造は、Kabalakaら(Nucl.Med.Biol., 2003; 29: 841−843 and 30: 369−373)によって記載されている。適切な有機トリフルオロボレート及びその製造は、Kabalakaら(Nucl.Med.Biol., 2004; 31: 935−938)によって記載されている。
【0032】
放射性ヨウ素を結合させることができるアリール基の例は、以下のものである。
【0033】
【化1】

式中、この場合のアルキルは好ましくは、メチル又はブチルである。これらの基は、芳香環への容易な放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含む。放射性ヨウ素を含む別の置換基は、放射性ヨウ素交換による直接ヨウ素化、例えば、以下の通り合成できる。
【0034】
【化2】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボで代謝されやすく、したがって放射性ヨウ素が失われやすいことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくは、直接共有結合によって、ベンゼン環などの芳香環に結合させる。
【0035】
放射性ヨウ素の供給源は、ヨウ化物イオン又はヨードニウムイオン(I)から選択される。最も好ましくは、化学形態はヨウ化物イオンであり、これは典型的には放射性合成の間に酸化剤によって求電子種に変換される。
【0036】
インビボイメージング部分が陽電子放出放射性非金属である場合には、適切なこのような陽電子放射体としては、11C、13N,15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好ましい陽電子放出放射性非金属は、11C、13N,18F及び124I、特に11C及び18F、とりわけ18Fである。これらのインビボイメージング部分の導入技術は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングの当業者によく知られている。これらの技術の一部を以下に記載する。
【0037】
化合物を11Cで標識する場合、標識方法の1つは、メチル化化合物の脱メチル型である前駆体化合物をヨウ化[11C]メチルと反応させることである。所望の標識化合物の特定の炭化水素鎖のグリニャール試薬を[11C]COと反応させることによって11Cを組み込むことも可能である。11Cはまた、芳香環上のメチル基として導入することも可能であり、その場合には、前駆体化合物はトリアルキル錫基又はB(OH)基を含むであろう。
【0038】
11Cの半減期はわずか20.4分である。このため、中間体の11C部分は高い比活性を有し、ひいては可能な限り速い反応プロセスを用いて生成させることが重要である。
【0039】
このような11C標識技術に関する詳細な総説は、Antoniら、「Aspects on the Synthesis of 11C−Labelled Compounds」、Handbook of Radiopharmaceuticals、M.J. Welch及びC.S. Redvanly編(2003、John Wiley and Sons)に記載されている。
【0040】
化合物をフッ素の放射性同位体で標識するためには、フッ化アルキルはインビボ代謝に対して抵抗性であるので、放射性フッ素原子はフルオロアルキル又はフルオロアルコキシ基の一部を形成することができる。フルオロアルキル化は、フェノール、チオール及びアミドなどの反応性基を含む前駆体化合物とフルオロアルキル基との反応によって実施できる。
【0041】
別法として、放射性フッ素原子は、ベンゼン環などの芳香環に直接共有結合によって結合させることができる。このようなアリール系の場合は、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への適切な経路である。
【0042】
放射性フッ素化は、18F−フッ化物と、臭化アルキル、メシル酸アルキル又はトシル酸アルキルなどの、好適な脱離基を有する前駆体化合物中の適切な化学基との反応を用いる直接標識によって実施できる。
【0043】
18Fの半減期はわずか109.8分である。このため、中間体18F部分は高い比活性を有し、ひいては可能な限り速い反応プロセスを用いて生成させることが重要である。
【0044】
18F標識誘導体の合成経路に関する更なる詳細は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm., 2002; 45: 485−528に記載されている。
【0045】
インビボイメージング部分が、インビボ光学イメージングに適したレセプターである場合には、レセプターは、光学イメージング法で直接的又は間接的に検出できる任意の部分である。レセプターは、光散乱体(例えば、着色粒子又は非着色粒子)、光吸収体又は光放射体であってもよい。より好ましくは、レセプターは、発色団又は蛍光化合物などの色素である。色素は、紫外乃至近赤外域の波長の電磁スペクトルの光と相互作用する任意の色素であることができる。最も好ましくは、レセプターは蛍光性を有する。
【0046】
好ましい有機発色及び蛍光レセプターは、広範な非局在化電子系を有する基を含み、例えば、シアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダトレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素複合体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、インドアニリン色素、ビス(S、O−ジチオレン)錯体である。蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、及び異なる吸収/発光特性を有するGFPの変種も有用である。一部の希土類金属(例えば、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体は、蛍光ナノ結晶(量子ドット)のような特定の状況で使用する。
【0047】
使用できる発色団の詳細例としては、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Marina Blue、Pacific Blue、Oregon Green 88、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、並びにAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750が挙げられる。
【0048】
特に好ましいのは、400nm〜3μm、特に600nm〜1300nmの可視又は近赤外(NIR)域に吸収極大を有する色素である。光学イメージングモダリティ及び測定技術としては、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層撮影法、透過イメージング、時間分解透過イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡法、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光分析法、反射分光分析法、干渉法、コヒーレンス干渉法、拡散光トモグラフィー及び蛍光媒介式拡散光トモグラフィー(連続波システム、時間領域システム及び周波数領域システム)、並びに光散乱、吸収、偏光、発光、蛍光寿命、量子収率及び消光の測定が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0049】
本発明においては、一部の適切なα−シヌクレイン結合剤が、インビボ光学イメージングに適したレセプターにもなることは注目に値する。このような場合には、インビボ造影剤もまたα−シヌクレイン結合剤となる。このようなα−シヌクレイン結合剤の例としては、チオフラビンTの誘導体及びコンゴレッドの誘導体が挙げられ、これらについては以下により詳細に記載する。別法として、これらの化合物は、所望ならば、他のインビボイメージング部分で標識することもできる。
【0050】
好ましい一実施形態において、本発明のインビボイメージング部分は、放射性金属イオン、γ線放出放射性ハロゲン又は陽電子放出放射性非金属である。それぞれの適切な実施形態及び好ましい実施形態は前述の通りである。本発明の特に好ましいインビボイメージング部分は、99mTc、11C、18F及び123Iである。
チオフラビンT誘導体
Maetzlerら(NeuroImage 2008; 39(3): 1027−33)によるPD患者の研究で、式Ia(下記)の範囲内の化合物である[11C]PIB(11C−6−OH−ベンゾチアゾール)が、PDとアルツハイマー病(AD)とを鑑別する可能性を有していることが判明した。PD患者における[11C]PIBのインビボ結合パターンは、脳幹から皮質野に向かって減少しており、PDの病態生理における既知のタンパク質沈着順序と相関が見られた(Braakら、2004 Cell Tissue Res.; 318: 121−34)。インビトロでの蛍光PIBの結合もまた、Maetzlerら(上記)によって評価され、蛍光PIBがPD患者の脳幹組織のレビー小体に特異的に結合することが観察された。
【0051】
更に、WO2004/083195は、CNS中のβ−アミロイド斑の画像化に使用される種々のインビボイメージング部分で標識されたチオフラビンT誘導体が、アルツハイマー病の診断に役立つことを開示している。
【0052】
Volkovaら(Bioorg. Med. Chem. 2008; 16: 1452−9)は、式Ibのモノ−及びトリメチンシアニン色素を用いるα−シヌクレインの特異的な組織学的検出を報告している。そこで、本発明者らは、これらの色素の誘導体が本発明において有用であることを提唱する。
【0053】
好ましい一実施形態において、前記α−シヌクレイン結合剤は、式I又は式I(i)の化合物又はその塩もしくは溶媒和物である。
【0054】
【化3】

式中、
は各々独立に、水素、又はCアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、Cシクロアルキル、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、Cヒドロキシアルケニル、Cヒドロキシアルキニル、チオール、Cチオアルキル、Cチオアルケニル、Cチオアルキニル、Cチオアルコキシ、カルボキシル、Cカルボキシアルキル、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルケニル、Cハロアルキニル、Cハロアルコキシ、アミノ、Cアミノアルキル、Cアミノアルケニル、Cアミノアルキニル、Cアミノアルコキシ、シアノ、Cシアノアルキル、Cシアノアルケニル、Cシアノアルキニル及びCシアノアルコキシ、ニトロ、Cニトロアルキル、Cニトロアルケニル、Cニトロアルキニル、Cニトロアルコキシ並びにOCHOR’から選択されたR基であり、R’はH又はCアルキルであり、
Yは、S、O及びNから選択された0〜3個のヘテロ原子と、それぞれがRに関して定義されたR基である0〜5個の置換基とを有する5〜10員C10アリール環系であり、
式Iでは、ZがS、O又はNR”であり、R”が水素又はCアルキルであり、
式I(i)では、ZがCR”であり、R”がNR”に関して定義された通りである。
【0055】
本発明によって適切な塩はとしては、(i)生理学的に許容され得る酸付加塩、例えば、無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸に由来する酸付加塩、並びに有機酸、例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸に由来する酸付加塩、(ii)生理学的に許容され得る塩基付加塩、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)、トリエタノールアミン、N−メチル−D−グルカミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン及びモルホリンなどの有機塩基の付加塩並びにアルギン及びリジンなどのアミノ酸の付加塩が挙げられる。
【0056】
本発明によって適切な溶媒和物としては、エタノール、水、生理的食塩水、生理的緩衝液及びグリコールによって形成されたものが挙げられる。
【0057】
用語「アルキル」は単独でも組合せでも、炭素数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3の直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。このような基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、オクチルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0058】
用語「アルケニル」は、1つの二重結合を含む不飽和直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素基を意味する。例としては、ビニル(エテニル)、アリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル及び5−ヘキセニルなどの基が挙げられる。
【0059】
用語「アルキニル」は、1つの三重結合を含む不飽和直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素基を意味する。例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル及び5−ヘキシニルなどの基が挙げられる。
【0060】
特に断らない限り、用語「アルコキシ」は単独でも組合せでも、アルキルエーテル基を意味し、ここで用語アルキルは前記で定義された通りである。適切なアルキルエーテル基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0061】
特に断らない限り、用語「シクロアルキル」は単独でも組合せでも、飽和又は部分飽和単環式、二環式又は三環式アルキル基であって、各環状部分が好ましくは3〜8個の炭素原子環員、より好ましくは3〜7個の炭素原子環員、最も好ましくは4〜6個の炭素原子環員を含み、任意選択で、アリール基の定義に関して本明細書中で定義するように、任意選択で置換されているベンゾ縮合環系であってもよい基を意味する。このようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、アダマンチルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0062】
用語「ヒドロキシル」は、−OH基を意味する。本明細書中に使用する用語「ヒドロキシアルキル」、「ヒドロキシアルケニル」及び「ヒドロキシアルキニル」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのヒドロキシ基を意味する。
【0063】
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択された置換基を意味する。本明細書中で使用する用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」、「ハロアルコキシ」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのハロ基を意味する。好ましいハロ置換基は、フルオロ及びヨードである。
【0064】
用語「チオール」は、−SH基を意味する。本明細書中で使用する用語「チオアルキル」、「チオアルケニル」、「チオアルキニル」、「チオアルコキシ」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのチオール基を意味する。
【0065】
本明細書中で使用する用語「シアノ」は、−CN基を意味する。本明細書中で使用する用語「シアノアルキル」、「シアノアルケニル」、「シアノアルキニル」、「シアノアルコキシ」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのシアノ基を意味する。シアノアルキルの代表例としては、シアノメチル、2−シアノエチル及び3−シアノプロピルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0066】
用語「ニトロ」は、−NO基を意味する。本明細書中で使用する用語「ニトロアルキル」、「ニトロアルケニル」、「ニトロアルキニル」、「ニトロアルコキシ」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのニトロ基を意味する。
【0067】
用語「アミノ」は、基−NR10を意味し、R及びR10は独立に水素又は式Iに関して前記で定義されたR基である。本明細書中で使用する用語「アミノアルキル」、「アミノアルケニル」、「アミノアルキニル」、「アミノアルコキシ」はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシを介して親分子部分に付加される少なくとも1つのアミノ基を意味する。
【0068】
用語「カルボキシル」は、基−COOHを意味し、用語「カルボキシアルキル」は、少なくとも1つのカルボキシル基が親分子部分に付加される、本明細書中で定義されたアルキル基を意味する。
【0069】
「アリール」は、炭素数が3〜10であって、環系中の環員が5〜10である芳香環又は芳香環系、例えば、フェニル又はナフチルを意味する。用語「ヘテロ原子」は、環系中の炭素に取って代わるN、S又はO原子を意味する。
【0070】
好ましい一実施形態において、前記α−シヌクレイン結合剤が式Iの化合物である場合には、前記インビボ造影剤は、式Iaの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である。
【0071】
【化4】

式中、
各R1a〜R8aは独立に水素、もしくは式Iに関して前記で定義されたR基であるか、又は本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
は水素、Cアルキル、ハロ、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、チオール、Cチオアルキルであるか、又はYはアミノ基−NR10であり、R及びR10が独立に水素もしくは請求項3で定義されたR基であるか、又はYは本明細書中で定義されたインビボイメージング部分であり、
1a〜R8a及びYのうち少なくとも1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0072】
好ましくは、式Iaに関して、
各R1a8aは独立に水素、ニトロ、シアノ、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルコキシ、Cハロアルケニル、カルボキシル、Cカルボキシアルキル、−OCHOR’から選択され、R’が水素もしくはCアルキルであるか、又は、又は各1a〜R8aは独立に本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
は−NR10であるか、又は本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
1a8a及びYのうち少なくとも1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0073】
最も好ましくは、式Iaに関して、
1a、R2a、R4a、R7a及びR8aは全て水素であり、
3aは、水素、ヒドロキシル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルケニル、カルボキシル、Cカルボキシアルキル及びOCHOR’から選択され、R’が式I及びI(i)に関して前記で定義された通りであるか、又はR3aは、本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
5a及びR6aは各々独立に、水素、Cアルキル、Cアルコキシ、ニトロ、アミノ、Cアミノアルキル、ハロもしくはCハロアルキルであるか、又はR5a及びR6aは各々独立に、本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
3a、R5a、R6a及びYのうち少なくとも1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0074】
式Iaの好ましいインビボ造影剤に関しては、
3a、R5aもしくはR6a又はYのうち1つが、18F、123I又はキレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基から選択されたインビボイメージング部分を含むか、或いは
又はR10の一方がC18F]フルオロアルキル又はC11C]アルキルから選択されたインビボイメージング部分であり、
残りの基は、式Iaに関して前記で定義された通りである。
【0075】
式Iaのインビボ造影剤の構造及び合成は、WO2007/064773に示されている。また、Mathisら(J Med Chem 2003; 46: 2740−54)及びKlunkら(Ann. Neurol. 2004; 55: 306−19)は、式Iaの特定の11C−標識化合物の合成を記載し、Serdonsら(2006 J. Nuc. Med.; 47(Suppl.1): 31P)は、18F原子によるニトロ基の直接芳香族求核置換による式Iaの18F−標識化合物の形成を報告している。これらの報告された方法は、当業者によって、例えば、前述の既知の標識法を用いて、さまざまな式Iaのインビボ造影剤が得られるように容易に構成することができる。
【0076】
別の好ましい実施形態において、前記インビボ造影剤は、式Ibの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である。
【0077】
【化5】

式中、
各R1b〜R4bは独立に水素もしくはR〜Rに関して前記で定義されたR基であるか、又は各R1b〜R4bは独立に本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
は−R1112であり、R11が結合又はC直鎖もしくは分岐鎖アルケニレンリンカーであり、R12が、S、O及びNから選択された0〜3個のヘテロ原子並びにそれぞれがR〜Rに関して前記で定義されたR基である0〜5個の置換基を有する5〜10員C10アリール環系であり、或いはYは本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
1b〜R4b及びYのうち少なくとも1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0078】
用語「アルケニレン」は、2〜6個の炭素原子及び少なくとも1個、好ましくは1〜6個のビニル不飽和部位を有する分岐又は非分岐鎖不飽和炭化水素基の二価基を意味する。この用語の例は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば、−CHCH=CH−及びC(CH)=CH−)などの基である。
【0079】
好ましくは、式Ibに関して、
11は、C直鎖又は分岐鎖アルケニレンリンカーであり、
12は、S及びNから選択された1もしくは2個のヘテロ原子並びにそれぞれが前記で定義されたR基である0〜5個の置換基を有する5〜10員C10アリール環系であるか、又はR12は、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
1b〜R4b又はY12のうち1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0080】
最も好ましくは、式Ibに関して、
12は、以下の基のいずれかである。
【0081】
【化6】

は、N又はCHであり、AはN又はCであり、A又はAの少なくとも1つがNであり、
13、R14及びR1619は独立に水素、Cアルキルから選択されるか、もしくは明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含むか、又はAがCHである場合には、R16及びR17が、A及びR16が結合している炭素と一緒になって、ベンゼン環を形成するか、もしくはAがCである場合には、R18及びR19が、A及びR18が結合している炭素と一緒になって、ベンゼン環を形成し、
15は、水素もしくはCアルキルであるか、又は明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
1b〜R4b又はR13〜R19のうち少なくとも1つは、明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含む。
【0082】
特に好ましくは、式Ibに関して、
1b〜R4bのうち1つが、18F、123I、又はキレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基から選択されたインビボイメージング部分であるか、或いは
11又はR12の一方が、キレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基、C18F]フルオロアルキル又は[11C]メチルから選択されたインビボイメージング部分であり、
残りの基は、前記で定義された通りである。
【0083】
式Ibの好ましいインビボイメージング部分の例は、Volkavaら(Bioorg. Med. Chem. 2008; 16: 1452−9)によって記載された化合物の標識型である。これらの化合物の標識型を得るには、前述のように、インビボイメージング部分の既知の導入方法の直接適用を使用できる。
コンゴレッド誘導体
WO02/074347は、アミロイド斑のインビボイメージングに使用するのに適した99mTc標識コンゴレッド誘導体を開示している。アミロイド斑は、さまざまな疾病、最も顕著にはアルツハイマー病において認められる。本発明は、これら及び他のコンゴレッド誘導体もまた、本発明の方法に適用するのに適することを提唱する。
【0084】
そこで、代替の好ましい実施形態において、前記α−シヌクレイン結合剤は、式IIの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である。
【0085】
【化7】

式中、
2023は独立にH、Cアルキル、ハロ、Cハロアルキル、アミノ及びCアミノアルキルから選択されるか、又はR2023のうち少なくとも1つが本明細書中で定義されたインビボイメージング部分を含み、
Xは、水素、カリウム及びナトリウムから選択された陽イオンを表す。
【0086】
好ましくは、R2023の1つは、前記で定義されたインビボイメージング部分であり、残りのR2023基は前記で定義された通りである。
【0087】
最も好ましくは、R20もしくはR23の一方が18Fもしくは123Iであるか、又はR21もしくはR22の一方が、キレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基、C18F]フルオロアルキル基もしくは[11C]メチル基である。
【0088】
式IIの99mTc標識インビボ造影剤を得るための方法は、WO02/1074347に記載されている。この特許文献に記載された方法は、金属−キレート錯体及び他のインビボイメージング部分を付加するための前記方法を用いて、本発明に使用するのに適したインビボ造影剤が更に得られるように、容易に構成することができる。
抗体
更に代替の好ましい実施形態において、前記α−シヌクレイン結合剤は、α−シヌクレインに特異的に結合する抗体である。
【0089】
「抗体」は、完全長(即ち、天然に存在する、もしくは通常のイムノグロブリン遺伝子断片組換えプロセスによって形成された)イムノグロブリン分子(例えば、IgG抗体)、又は抗体断片などのイムノグロブリン分子の免疫学的に活性な(即ち、特異的に結合する)部分を意味する。
【0090】
「抗体断片」は、抗体の一部分、例えば、F(ab)、Fab、Fv、sFvなどである。構造にかかわらず、抗体断片は、完全な抗体によって認識されるのと同一の抗原と結合する。用語「抗体断片」は、特異抗原と結合して錯体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成タンパク質又は遺伝子組換えタンパク質も含む。例えば、抗体断片は、可変領域からなる単離断片、例えば、重鎖及び軽鎖の可変領域からなるFv断片、軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結された組換え単鎖ペプチド分子(scFvタンパク質)、並びに超可変領域によく似たアミノ酸残基からなる最小認識単位を含む。
【0091】
「特異的に結合する」という表現は、タンパク質の不均一集団の存在下で特定のタンパク質の存在を確定する(determinative)結合反応を意味する。したがって、指定された条件下で、特定の配位子は、特定のタンパク質と優先的に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質とはそれほど結合しない。タンパク質に特異的に結合する抗体などの分子は多くの場合、少なくとも10M−又は10M−、好ましくは10M−〜10M−、より好ましくは約1010M−〜1011M−又はそれ以上の結合定数を有する。種々のイムノアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するのにルーチン的に使用される。例えば、特異的免疫反応性を測定するために使用できるイムノアッセイフォーマット及び条件の解説については、Harlow及びLane(1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照のこと。
【0092】
本発明の方法に使用するのに適したα−シヌクレイン特異抗体を入手し、特性決定するための方法は、当業界で多数開示されている。次の段落は、これらの開示を精選して要約する。
【0093】
多数の研究が、PD及びDLB患者から採取された脳組織中のLBの特性決定において、α−シヌクレインに特異的に結合する抗体を用いている。Babaら(1998 Am. J. Pathol.; 152: 879−84)は、DLBの脳から精製したLBに対して産生されたモノクローナル抗体を用いて、LB中のα−シヌクレインを特性決定した。Arimaら(1998 Brain Res; 808: 93−100)は、α−シヌクレインのN末端の非アミロイド成分(NAC)ドメイン及びC末端に対して抗体を産生させた。特性決定により、NACドメイン及びC末端に対して産生された抗体は、β−シヌクレインよりもα−シヌクレインに対して特異的であることがわかった。同時期の別の研究で、Spillantiniら(1997 Nature; 388: 839−40)は、α−シヌクレインの残基11〜34又は残基116〜131に対して抗体を産生させ、いずれの抗体も、α−シヌクレインには特異的に結合するが、β−シヌクレインには特異的に結合しないことを発見した。Crowtherら(2000 Neurosci Lett; 292: 128−130)は、α−シヌクレインのカルボキシ末端領域に対して抗体を産生させた。この抗体は、α−シヌクレインの単離フィラメントをその全長に沿って標識することがわかったが、α−シヌクレインのアミノ末端領域に対して産生された抗体は、一方のフィラメント末端しか標識しなかった。
【0094】
WO99/50300は、α−シヌクレインに特異的なLBに対して産生されたモノクローナル抗体を提供している。WO99/50300は、このモノクローナル抗体の適切に標識されたものをインビトロアッセイで用いて、生体試料中に存在するα−シヌクレインを検出できることを教示している。WO2008/0175838もまた、α−シヌクレインに特異的な抗体に関し、それらの抗体を蛍光標識、放射性標識又は常磁性標識で標識して、被検者の脳中LBをインビボで検出できることを開示している。WO2005/013889は、常磁性標識又は放射性標識で標識されたα−シヌクレイン特異抗体の投与による、患者LBのインビボイメージング法を提供している。インビボイメージング部分で標識されたWO2008/0175838及びWO2005/013889の抗体は、本発明に使用するのに適している。
【0095】
抗体を、放射性金属イオン又は常磁性イオンであるインビボイメージング部分とコンジュゲートさせるために、抗体を、イオンに結合するための1つ又はそれ以上のキレート化基が結合した長い尾部を有する試薬と反応させることができる。このような尾部は、ポリマー、例えば、ポリリジン、ポリサッカライド、又は前述のような1つもしくはそれ以上の適切なキレート化基が結合できる側基を有する他の誘導体化された鎖もしくは誘導体化可能な鎖であることができる。キレートは、標準的な化学反応を用いてペプチド抗原に結合させる。キレートは通常、免疫反応性の低下並びに凝集及び/又は内部架橋を最小限に抑えながら分子への結合を形成できる基によって、抗体に連結させる。キレートを抗体にコンジュゲートさせるための他のより独特な方法及び試薬は、US4824659に開示されている。
【0096】
本発明については、α−シヌクレイン特異抗体を標識するのに好ましいインビボイメージング部分は、18F、123I及び99mTcである。
【0097】
インビボイメージング部分は、還元された抗体成分のヒンジ領域において、ジスルフィド結合を形成させることによって結合させることができる。別法として、このような部分は、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などのヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させることもできる。このようなコンジュゲートのための一般的技術は、当業界でよく知られている。例えば、Wong、「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking」(CRC Press 1991)を参照のこと。或いは、インビボイメージング部分は、抗体のFc領域の糖鎖によってコンジュゲートさせることができる。
【0098】
抗体は、当業界で知られ、実施されているプロトコール及び技術を用いて、このような試薬で標識できる。抗体の放射性標識に関する技術については、例えば、Wenzel及びMeares、「Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy」, Elsevier, N.Y., 1983;Colcerら、1986 Meth. Enzymol., 121: 802−816、及び「Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy」、Eds. Baldwin et al., Academic Press, 1985, pp. 303−316を参照のこと。
医薬組成物
本発明のインビボ造影剤は好ましくは、生体適合性担体と共にインビボ造影剤を含む「医薬組成物」として、哺乳動物への投与に適した形態で投与する。
【0099】
「生体適合性担体」は、本明細書中で定義されたインビボ造影剤を、組成物が生理学的に許容され得るように、即ち、毒性も過度の不快感もなく哺乳動物の体に投与できるように、懸濁又は溶解させる流体、特に液体である。生体適合性担体媒体は適切には、注射用の滅菌発熱性物質除去水などの注射可能な担体液体、生理的食塩水(注射用の最終製品が等張性であるか又は低張性でないように、有利にバランスさせることができる)などの水溶液、1種又はそれ以上の等張化物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。生体適合性担体媒体はまた、エタノールなどの生体適合性有機溶媒を含むこともできる。このような有機溶媒は、より親油性の化合物又は製剤を可溶化するのに有用である。好ましくは、生体適合性担体媒体は、注射用の発熱性物質除去水、等張生理的食塩水又はエタノール水溶液である。静脈注射用の生体適合性担体媒体のpHは適切には、4.0〜10.5の範囲である。
【0100】
このような医薬組成物は適切には、滅菌の完全性を保持しながら、皮下注射針で1回又は複数回穿刺するのに適したシール(例えば、クリンプオン式セプタム封止蓋)が設けられたいずれかの容器の形で供給する。このような容器は、単一又は複数患者用量を含むことができる。好ましい複数用量容器は、複数患者用量を含む単一バルクバイアル(例えば、容積10〜30cm)を含み、それによって、臨床的症状に合わせて、製剤の有効寿命の間に種々の時間間隔で、単一患者用量を臨床グレードのシリンジ中に吸引することができる。プレフィルドシリンジは、単回ヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって、好ましくは臨床的用途に適した使い捨てシリンジ又は他のシリンジである。医薬組成物が放射性医薬組成物である場合には、プレフィルドシリンジには任意選択で、操作者を放射線量から保護するためのシリンジシールドを設けることができる。適切なこのような放射性医薬品用のシリンジシールドは当業界で知られており、好ましくは鉛又はタングステンを含む。
【0101】
医薬組成物はキットから調製することができる。別法として、医薬組成物は、所望の滅菌製品を生成する無菌製造条件下で調製することもできる。医薬組成物はまた、非滅菌条件下で調製後、例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えば、エチレンオキシドによる)を用いて最終滅菌を行うことができる。
診断及び治療のモニタリング
タンパク質α−シヌクレインは、健常神経細胞には、折り畳まれていない膜結合タンパク質として存在する。シヌクレイン病の病態中に病的刺激に反応して、α−シヌクレインが膜から脱離してβ−シート構造を取り、それが凝集し、LB及びLNを形成する。「シヌクレイン病」は、ニューロン及びグリア中にα−シヌクレインの沈着物が存在することを特徴とする神経変性疾患である。パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症(MSA)は、シヌクレイン病の既知の例である。α−シヌクレイン沈着物は、PDの早期ではANS中に存在する(Braakら、J. Neural Transm. 2003; 110: 517−36)ので、本発明の方法はPDの早期診断に有用である。
【0102】
したがって、本発明は、PDの存在又はPDに対する感受性の測定方法を提供する。この方法は、本発明のインビボ造影剤と関連して前述した通りである。PD又はPDへの感受性の早期診断は、疾病過程を早期で治療できるので有利であり、症状の発現前に疾病治療を行う。現在のところ、このような早期診断法はないので、診断時までに患者は運動機能を制御する黒質線条体ニューロンの大部分を喪失してしまい、神経保護薬の適用は残りの黒質線条体ニューロンにのみ有効である。
【0103】
更に別の態様において、本明細書中に記載した本発明の方法が繰り返して実施され、各実施が時間的に異なる時点に行われ、ステップ(iv)で得られた画像を比較することができる。このような方法は、PDの進行のモニタリングに有用である。好ましい一実施形態において、この方法は、治療計画の有効性を確認できるように、治療計画前、治療計画中及び/又は治療計画後に実施する。
【0104】
別の態様において、本発明は、本明細書中に定義された方法のいずれかに使用するためのインビボ造影剤の製造に使用するための、本明細書中に定義されたα−シヌクレイン結合剤を提供する。
【0105】
更なる態様において、本発明は、前述のような、診断方法又は治療モニタリング方法への使用に適した医薬品の製造に使用するための、本明細書中で定義されたインビボ造影剤を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病(PD)の存在又はPDへの感受性の測定方法に使用するためのインビボ造影剤であって、前記インビボ造影剤がインビボイメージング部分で標識されたα−シヌクレイン結合剤を含み、前記インビボ造影剤が0.1nM〜50μMの結合親和力でα−シヌクレインに結合しており、前記方法が、
(i)検出可能な量の前記インビボ造影剤を被検者に投与するステップ、
(ii)ステップ(i)の前記投与されたインビボ造影剤を、前記被検者の自律神経系(ANS)中のα−シヌクレイン沈着物に結合させるステップ、
(iii)ステップ(ii)の前記結合したインビボ造影剤によって放出されるシグナルを、インビボイメージング法を用いて検出するステップ、
(iv)前記シグナルの位置及び/又は量を表す画像を生成させるステップ、並びに
(v)ステップ(iv)において生成された画像を用いて、PDの存在又はPDへの感受性を測定するステップ
を含むインビボ造影剤。
【請求項2】
前記インビボイメージング部分が以下の(i)〜(v)から選択される、請求項1記載のインビボ造影剤。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出放射性非金属、
(v)インビボ光学イメージングに適したレセプター。
【請求項3】
前記α−シヌクレイン結合剤が、式I又は式I(i)の化合物又はその塩もしくは溶媒和物である、請求項1又は請求項2記載のインビボ造影剤。
【化1】

式中、
は各々独立に、水素、又はCアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、Cシクロアルキル、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、Cヒドロキシアルケニル、Cヒドロキシアルキニル、チオール、Cチオアルキル、Cチオアルケニル、Cチオアルキニル、Cチオアルコキシ、カルボキシル、Cカルボキシアルキル、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルケニル、Cハロアルキニル、Cハロアルコキシ、アミノ、Cアミノアルキル、Cアミノアルケニル、Cアミノアルキニル、Cアミノアルコキシ、シアノ、Cシアノアルキル、Cシアノアルケニル、Cシアノルキニル及びCシアノアルコキシ、ニトロ、Cニトロアルキル、Cニトロアルケニル、Cニトロアルキニル、Cニトロアルコキシ並びにOCHOR’から選択されたR基であり、R’はH又はCアルキルであり、
Yは、S、O及びNから選択された0〜3個のヘテロ原子と、それぞれがRに関して定義されたR基である0〜5個の置換基とを有する5〜10員C10アリール環系であり、
式Iでは、ZがS、O又はNR”であり、R”が水素又はCアルキルであり、
式I(i)では、ZがCR”であり、R”がNR”に関して定義された通りである。
【請求項4】
式Iaの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である、請求項1又は2記載のインビボ造影剤。
【化2】

式中、
各R1a〜R8aは独立に水素もしくは請求項3記載のR基であるか、又は請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、
は水素、Cアルキル、ハロ、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、チオール、Cチオアルキルであるか、又はYはアミノ基−NR10であり、R及びR10が独立に水素もしくは請求項3記載のR基であるか、又はYは請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、
1a〜R8a及びYのうち少なくとも1つは、請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含む。
【請求項5】
各R1a8aが独立に水素、ニトロ、シアノ、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、ヒドロキシル、Cヒドロキシアルキル、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルコキシ、Cハロアルケニル、カルボキシル、Cカルボキシアルキル、−OCHOR’から選択され、R’が水素又はCアルキルであり、Yが−NR10であり、R1a8a及びYのうち少なくとも1つが、請求項2記載のインビボイメージング部分を含む、請求項4記載のインビボ造影剤。
【請求項6】
1a、R2a、R4a、R7a及びR8aが全て水素であり、R3aが水素、ヒドロキシル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルキニル、Cアルコキシ、ハロ、Cハロアルキル、Cハロアルケニル、カルボキシル、Cカルボキシアルキル及びOCHOR’から選択され、R’が請求項1に記載された通りであるか、又はR3aが前記インビボイメージング部分を含み、R5a及びR6aが各々独立に、水素、Cアルキル、Cアルコキシ、ニトロ、アミノ、Cアミノアルキル、ハロもしくはCハロアルキルであるか、又はR5a及びR6aの一方が前記インビボイメージング部分を含み、R3a、R5a、R6a及びYのうち少なくとも1つが、請求項2記載のインビボイメージング部分を含む、請求項5記載のインビボ造影剤。
【請求項7】
3a、R5aもしくはR6a又はYのうち1つが、18F、123I、又はキレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基から選択されたインビボイメージング部分を含むか、或いはR又はR10の一方がC18F]フルオロアルキル又はC11C]アルキルから選択されたインビボイメージング部分であり、残りの基が、請求項4で式Iaに関して定義された通りである、請求項5又は請求項6記載のインビボ造影剤。
【請求項8】
式Ibの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である請求項1又は請求項2記載のインビボ造影剤。
【化3】

式中、
各R1b〜R4bは独立に水素もしくは請求項3記載のR基であるか、又はR1b〜R4bのうち1つは、請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、
は−R1112であり、R11が結合又はC直鎖もしくは分岐鎖アルケニレンリンカーであり、R12が、S、O及びNから選択された0〜3個のヘテロ原子並びにそれぞれが請求項3でRに関して定義されたR基である0〜5個の置換基を有する5〜10員C10アリール環系であるか、或いはYは請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、
1b〜R4b及びYのうち少なくとも1つは、請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含む。
【請求項9】
11が、C直鎖又は分岐鎖アルケニレンリンカーであり、R12が、S及びNから選択された1もしくは2個のヘテロ原子並びにそれぞれが請求項3記載のR基である0〜5個の置換基を有する5〜10員C10アリール環系であるか、又はR12が、請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、R1b〜R4b又はY12のうち1つが、前記インビボイメージング部分を含む、請求項8記載のインビボ造影剤。
【請求項10】
12が、以下の基のいずれかであり、
【化4】

がN又はCHであり、AがN又はCであり、A又はAの少なくとも1つがNであり、
13、R14及びR1619が独立に水素、Cアルキルから選択されるか、もしくは請求項2記載のインビボイメージング部分を含むか、又はAがCHである場合には、R16及びR17が、A及びR16が結合している炭素と一緒になって、ベンゼン環を形成するか、もしくはAがCである場合には、R18及びR19が、A及びR18が結合している炭素と一緒になって、ベンゼン環を形成し、
15が、水素もしくはCアルキルであるか、又は前記インビボイメージング部分を含み、
1b〜R4b又はR13〜R19のうち少なくとも1つが、前記インビボイメージング部分を含む、
請求項9記載のインビボ造影剤。
【請求項11】
1b〜R4bのうち1つが、18F、123I、又はキレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基から選択されたインビボイメージング部分であるか、或いはR11又はR12の一方が、キレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基、C18F]フルオロアルキル又は[11C]メチルから選択されたインビボイメージング部分であり、残りの基が、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載した通りである、請求項10記載のインビボ造影剤。
【請求項12】
式IIの化合物又はその塩もしくは溶媒和物である請求項1又は請求項2記載のインビボ造影剤。
【化5】

式中、
2023は独立にH、Cアルキル、ハロ、Cハロアルキル、アミノ及びCアミノアルキルから選択されるか、又はR2023のうち少なくとも1つが請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、
Xは、水素、カリウム及びナトリウムから選択された陽イオンを表す。
【請求項13】
2023の1つが、請求項2記載のインビボイメージング部分を含み、残りのR20〜R23基が請求項12で定義された通りである、請求項12記載のインビボ造影剤。
【請求項14】
20もしくはR23の一方が18Fもしくは123Iから選択されたインビボイメージング部分を含むか、又はR21もしくはR22の一方が、キレート化放射性もしくは常磁性金属イオンを含むキレート化基、C18F]フルオロアルキルもしくは[11C]メチルから選択されたインビボイメージング部分である、請求項13記載のインビボ造影剤。
【請求項15】
α−シヌクレイン結合剤であることに加えて、式I又は式IIの前記化合物自体が、インビボ光学イメージングに適したレセプターである、請求項3又は請求項12記載のインビボ造影剤。
【請求項16】
前記α−シヌクレイン結合剤が、α−シヌクレインと特異的に結合する抗体である、請求項1記載のインビボ造影剤。
【請求項17】
18F、123I及び99mTcから選択されたインビボイメージング部分を含む請求項16記載のインビボ造影剤。
【請求項18】
前記方法のステップ(ii)において、前記α−シヌクレイン沈着物が腸神経系に存在する、請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載のインビボ造影剤。
【請求項19】
前記方法のステップ(ii)において、前記α−シヌクレイン沈着物がレビー小体(LB)及び/又はレビー神経突起(LN)である、請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載のインビボ造影剤。
【請求項20】
前記方法のステップ(i)の前記被検者が哺乳動物である、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載のインビボ造影剤。
【請求項21】
前記方法のステップ(i)において医薬組成物として投与され、前記医薬組成物が前記インビボ造影剤と哺乳動物への投与に適した生体適合性担体とを含む、請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載のインビボ造影剤。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれか1項記載のインビボ造影剤に関してステップ(i)〜(v)で定義された、パーキンソン病(PD)の存在又はPDへの感受性の測定方法。
【請求項23】
繰り返して実施される請求項22記載の方法を含む、パーキンソン病の進行のモニタリング方法であって、各実施が時間的に異なる時点に行われ、ステップ(iv)で得られた画像を比較してPDの進行を測定する方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法を、治療計画前、治療計画中及び/又は治療計画後に実施する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項22乃至請求項24のいずれか1項記載の方法に使用するのに適したインビボ造影剤の製造に使用するための、請求項3、12又は16のいずれか1項記載のインビボ造影剤に関連して定義したα−シヌクレイン結合剤。
【請求項26】
請求項22乃至請求項24のいずれか1項記載の方法における使用に適した医薬品の製造に使用するための、請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載のインビボ造影剤。

【公表番号】特表2012−510499(P2012−510499A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538991(P2011−538991)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066120
【国際公開番号】WO2010/063701
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】