生体分子を接合するための新規な試薬及び方法
【課題】生体分子を接合するための新規な試薬及び方法の提供。
【解決手段】
ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と反応させることを含む方法。
【解決手段】
ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と反応させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子、特にタンパク質及びペプチドを接合するための新規な試薬及び新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療効果のある分子、例えばタンパク質は、臨床医学的用途において、効力を発揮するために必要とされる特性を有していない。例えば、多くの天然タンパク質は、良い薬にはならない。その理由は、患者への投与時に、(1)タンパク質が血液又は組織中に存在する多くのエンド−及びエキソ−ペプチターゼによって消化される;(2)多くのタンパク質はある程度免疫原性である;並びに(3)タンパク質は腎臓限外ろ過及びエンドサイトーシスにより迅速に排出され得る等を含んだいくつかの固有の欠点があるからである。医学の分野で有効な治療薬としての有用性を発見するかもしれない、いくつかの分子は組織的に有毒であるか又は最適な生物学的利用態及び薬物動態を欠いている。タンパク質がすぐに血液循環から消えてなくなる場合は、タンパク質は一般的に頻繁に患者に投与されなければならない。頻繁な投与はさらに、毒性の危険性、特に免疫学的に生成された毒性を増加する。
【0003】
水溶性、合成ポリマー、特にポリアルキレングルコースは、タンパク質、ペプチド及び低分子薬物のような治療効果のある分子を接合するために幅広く使用される。これらの治療的な接合体は、循環時間を引き延ばすこと及び除去率を減少させること、組織的毒性を減少させること、並びにいくつかの場合では、さらなる臨床的有用性を発揮することにより、薬物動態を優位に変えることが示されている。ポリエチレングリコール、PEGをタンパク質に共有結合する方法は、“PEG化(PEGylation)”として一般的に知られている。
【0004】
最適化された効力にとってタンパク質ごとに複合ポリマー分子の数は各分子に対して同じである用量一貫性のための投与量を確保すること、及び各タンパク質分子は各タンパク質分子中の同じアミノ酸残基と特に共有結合することは重要である。タンパク質分子に沿った部分での非特異的接合は接合生成物の配分及び頻繁に、非複合タンパク質をもたらして精製するのに難しく且つ費用がかかる複雑な混合物を生み出す。
【0005】
チオール特異的接合に対し、マレイミド基で一端を終端されたPEG鎖を有するPEG化試薬が一般的に使用される。そのような試薬は多くの出版物、例えば国際公開第2004/060965号パンフレットに記述されている。マレイミド末端試薬は市販されている。しかしながら、多くのPEG−マレイミドは保管及び薬剤候補接合の間加水分解的に不安定である。特に、マレイミド環の相当な程度の加水分解が抱合前も抱合後も、起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/060965号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は今、PEG化試薬群であって、単一の求核残基、例えばチオール基を介してポリマーにタンパク質及びペプチドを組み込んでいる接合分子に使用され得、そしてそのような市販試薬より有利であるものを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明はポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子の接合方法を提供するものであって、該方法は一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−L]m (I)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wは電子求引基を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
Lは脱離基を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と前記分子の反応を含む。
【0009】
発明の方法による直接的な生成物は一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (IIa)
(式中、
X、Q、W、n及びmは上述した意味であり、そして
Zはチオール基又はアミノ基を介して接合された前記分子を表す。)によって一般的に表され得る。必要に応じて、この式(IIa)で表される得られる化合物は他の望ましい生成物に変換され得る。
特に、一般式(IIa)で表される得られる化合物は一般式II
X−[Q−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (II)
(式中、W‘は電子求引性部分又は電子求引性部分の還元によって調製できる部分を表す。)
で表される化合物に変換され得る。
また、本発明は、第1観点として、ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物を反応させることを含む方法、に関する。
第2観点として、前記Qは直接結合、アルキレン基又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rはハロゲン原子又はアルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−O−基及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得る、第1観点に記載の方法に関する。
第3観点として、前記Qは随意に置換されたヘテロアリール基又はアリール基であって、−NR.CO−基によって隣接した前記ポリマーXが終端されている、第2観点に記載の方法に関する。
第4観点として、前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、第一観点乃至第3観点のいずれか1つに記載の方法に関す
る。
第5観点として、前記Xはポリアルキレングリコールである、第4観点に記載の方法に関する。
第6観点として、前記Xはポリエチレングリコールである、第5観点に記載の方法に関する。
第7観点として、前記nは0である、第1観点乃至第6観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第8観点として、前記式Vで表される化合物は、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基を表す。)である、第1観点乃至第8観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第9観点として、前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、第8観点に記載の方法に関する。
第10観点として、前記Arはフェニル基を表す、第9観点に記載の方法に関する。
第11観点として、前記分子はペプチド又はタンパク質である、第1観点乃至第10観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第12観点として、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
mは1乃至8の整数を表し;そして
Arは未置換の又は置換されたアリール基を表す。)で表される化合物に関する。
第13観点として、前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、第12観点に記載の化合物に関する。
第14観点として、前記Arはフェニル基を表す、第13観点に記載の化合物に関する。
第15観点として、前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、第12観点乃至第14観点のいずれか1項に記載の化合物に関する。
第16観点として、前記Xはポリアルキレングリコールである、第15観点に記載の化合物に関する。
第17観点として、前記Xはポリエチレングリコールである、請求項17に記載の化合物に関する。
第18観点として、前記nは0である、第12観点乃至第17観点のいずれか1つに記載の化合物に関する。
第19観点として、前記Wはケト基を表す、第12乃至第18観点のいずれか1つに記載の化合物に関する。
第20観点として、
式:
【化1】
で表される、第12観点に記載の化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1の第一工程の反応スキームを示す図である。
【図2】図2は実施例1の第二工程の反応スキームを示す図である。
【図3】図3は実施例1の第三工程の反応スキームを示す図である。
【図4】図4は実施例1の第四工程の反応スキームを示す図である。
【図5】図5は実施例2の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図6】図6は実施例3の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図7】図7は実施例5の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図8】図8は実施例6において反応からの逆相クロマトグラフィー分析を示す図である。
【図9】図9は実施例7の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図10】図10は実施例8において反応からの陽イオン交換クロマトグラフィー分析を示す図である。
【図11】図11は実施例8のELISA結果を示す図である。
【図12】図12は実施例9の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図13】図13は実施例11の経時的PEG化のクロマトグラムを示す図である。
【図14】図14は実施例10及び11にあるように化合物9、10及び11の相互変換を示す図である。
【図15】図15は実施例11の変換結果を示す図である。
【図16】図16は実施例12の逆相クロマトグラフィー結果を示す図である。
【図17】図17は実施例13の安定性結果を示す図である。
【図18】図18は実施例17の中間生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図19】図19は実施例17の最終生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図20】図20は実施例17の吸光度結果を示す図である。
【図21】図21は実施例19の反応スキームを示す図である。
【図22】図22は実施例20の反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般式(I)で表される化合物は新規であり、それ故に本発明もまたこれらの化合物自
体を提供する。特に好ましい式(I)で表される新規な化合物は下記に定義された式(Ia)で表されるものである。
【0012】
一般式(II)で表される化合物もまた新規であり、それ故に本発明もまたこれらの化合物自体を提供する。特に好ましい式(II)で表される新規な化合物は下記に定義された式(IIb)で表されるものである。
【0013】
mは1乃至8の整数、例えば1乃至6、好ましくは1乃至4、例えば1を表す。mが1の場合、単一の分子がポリマーに接合される。mが1より大きい場合、ポリマーに対し二つ以上の分子の接合が得られ得る。2乃至8の基−Q−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z又は−Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−Lはポリマーに結合し、変数Q、W、W’、n、L及びZは各そのような基に対して同一又は異なっていても良い。多官能ポリマー化合物は利用でき、例えば、多数の基は、出発物質として登録商標“サンブライト(Sunbright)” :例えば、4−アーム(4−arm)製品は、式C[CH2O(CH2CH2O)n−Y]4(式中、Yは多数の異なった末端基の一つでもよい)の下、NOFから入手可能なマルチアーム(multi−arm)化合物を使用しながら結合され得る。多量体接合体は相乗的かつ追加的な便益をもたらすことができる。例えば、mが1の場合、得られる接合体は複合分子から離れたPEG鎖の末端上に末端基を有する必要がある。これは一般に、アルコキシ基又はよく似た基であり、そして薬学的応用に利用されるとき、そのような基は望ましくない免疫効果を導き得ることが示唆される。mが1より大きい場合、アルコキシ基のような末端基を必要とせずに、複合分子はPEG鎖の両末端に結合される。
【0014】
ポリマーXは、例えばポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、例えばポリアクリロイルモルホリン、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド、例えばポリカルボキシメタクリルアミド、又はHPMAコポリマーであってもよい。さらに、Xは酵素又は加水分解の影響を受けやすいポリマーである。そのようなポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、及びポリ(アミノ酸)のような、ポリアミドが挙げられる。ポリマーXはホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのような構造的に明確なコポリマーであってもよい。例えばXは二種以上のアルキレンオキシド、又はポリ(アルキレンオキシド)及びポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)のいずれかから誘導されるブロックコポリマーであってもよい。使用され得る多官能性ポリマーはジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマーである。
【0015】
天然高分子、例えばキチン、デキストラン、デキストリン、キトサン、でんぷん、セルロース、グリコーゲン、ポリ(シアル酸)及びその誘導体のような多糖もまた使用され得る。タンパク質はポリマーとして使用され得る。これは第二のタンパク質、例えば酵素又は他の活性タンパク質に、1つのタンパク質、例えば抗体又は抗体フラグメントの接合を可能にする。また、触媒配列を含んでいるペプチド、例えばグリコシルトランスフェラーゼのO−グリカンレセプター部位が使用される場合、次の酵素反応の基質又はターゲットの取り込みを可能にする。ポリグルタミン酸又はポリグリシンのようなポリ(アミノ酸)もまた、サッカリド又はアミノ酸のような天然モノマー及びエチレンオキシド又はメタクリル酸のような合成モノマーから誘導されるハイブリッドポリマーとして使用され得る。
【0016】
ポリマーがポリアルキレングリコールである場合、これは好ましくはC2及び/又はC3単位を含んでいるものであり、特にポリエチレングリコールである。ポリマー、特にポリアルキレングリコールは、単一の線状鎖を含んでいてもよく、または多くの鎖−小さい或
いは大きな多くの鎖−により構成された分岐形態を有していてもよい。いわゆるプルロニック(Pluronic)はPEGブロックコポリマーの重要な種類である。これらはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドブロックから誘導される。置換ポリアルキレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコールは使用され得る。発明の好ましい実施態様では、単一鎖のポリエチレングリコールは適切な基、例えばアルコキシ基、例を挙げるとメトキシ基、アリールオキシ基、カルボキシキ基又はヒドロキシ基によって開始され、そして鎖の反対側でリンカー基Qに結合される。
【0017】
ポリマーXはいくつかの所望の方法で誘導体化又は機能化され得る。反応基はポリマー末端又は末端基で、またはペンダントリンカーを介してポリマー鎖に沿って結合され得る;そのような場合、ポリマーは例えばポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は無水マレイン酸コポリマーである。そのような機能性ポリマーは多量体接合体(例を挙げると、ポリマーが二つ以上の分子に接合される接合体)を調製するさらなる機会をもたらすのにより一層の機会をもたらす。必要に応じて、ポリマーは従来の方法を用いて担体に結合され得る。
【0018】
ポリマーの最適分子量はもちろん対象としている用途次第である。好ましくは、数平均分子量は250g/mole乃至およそ75,000g/moleの範囲内である。一般式IIで表される化合物が医学的用途に用いられ、そして血液循環を離れて組織に浸透することを目的としている、例えば悪性腫瘍に起因する炎症、感染又は自己免疫疾患、又はトラウマの治療用の場合、2000−30,000g/moleの範囲内にある低分子量ポリマーを使用することが有用である。一般式IIで表される化合物を血液循環中に残存させることを目的としている用途に対しては、例えば20,000−75,000g/moleの範囲内にある高分子量ポリマーを使用することが有用である。
【0019】
接合体がその使用目的のために溶剤に溶解できるように使用されるポリマーを選ばなければならない。生物学的適用、特に診断的適用及び哺乳類への臨床治療的投与に対する治療への応用に対して、接合体は水媒体に溶解できる。しかしながら、多くの生物学的分子、例えば酵素のようなタンパク質は、例えば化学反応を触媒するために、産業での有用性がある。そのような用途で使用されるための接合体に対し、接合体は水媒体及び有機媒体の一方又は両方に溶解できる必要がある。ポリマーはもちろん接合される分子の所望の機能を不当に損なうべきではない。
【0020】
好ましくはポリマーは合成ポリマーであり、好ましくは水溶性ポリマーである。水溶性ポリエチレングリコールの使用は多くの用途に対して特に好まれる。
【0021】
連結基Qは、例えば直接結合、アルキレン基(好ましくはC1-10アルキレン基)、または随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rは水素原子又はアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好
ましくはC1-6アルキル−フェニル基)を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−
O−基、−O−CO−O、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、−CO−NR−及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得るものある。そのようなアリール基及びヘテロアリール基Qは発明の1つの好ましい実施形態を形成する。適切なアリール基としてはフェニル基及びナフチル基が挙げられ、一方、適切なヘテロアリール基としては、ピリジン基、ピロール基、フラン基、ピラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基及びプリン基が挙げられる。特に適切な連結基Qはヘテロアリール基又は、特に、アリール基、特にフェニル基であって、−NR.CO−基によって隣接したポリマーXを終端化したものである。ポリマーへの結合は加水分解に不安定な結合、又は非不安定な結合を介してでもよい。
【0022】
随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基に存在し得る置換基としては、例えばアルキル基(好ましくはOH又はCO2Hによって随意に置換されたC1-4アルキル基、特にメチル基)、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−
OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、例えばフッ素原子又は塩素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=
CHR(ここで、各Rは独立してハロゲン原子又はアルキル基(好ましくはC1-6アルキ
ル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好ましくはC1-6アルキル−フェニル基)を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換
基が挙げられる。電子求引置換基の存在が特に好ましい。好ましい置換基は例えばCN、NO2、−OR、−OCOR、−SR、−NHCOR、−NR.COR、−NHOH及び
−NR.COR.が挙げられる。
【0023】
Wは、例えばケト基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−を表し、
そしてW’はそのような基又は例えばCH.OH基、エーテル基CH.OR、エステル基CH.O.C(O)R、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2、またはアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2の還元によって得られる基を表
す。
【0024】
好ましくは、nは0である。
【0025】
脱離基Lは例えば、−SR、−SO2R、−OSO2R、−N+R3、−N+HR2、−N+
H2R、ハロゲン原子、又は−Oθを表す(ここで、Rは上述した意味であり、そしてθ
は置換アリール基、特に少なくとも1つの電子求引置換基を含むフェニル基を表すものであって、該電子求引置換基としては、例えば、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR’CO2R、−NO、−NH
OH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’COR、−N+R3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、特に塩素原子、又は特にフッ素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHRであり、各Rは独立して上述した意味の一つである。)。
【0026】
mが2乃至8の整数を表す場合、必要に応じて異なったL基が存在し得る。これは異なった反応性のL基を選ぶことによって、逐次反応中のポリマーXに異なった分子を接合するための有利な条件をもたらす。
【0027】
好ましくは本発明による方法は一般式
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−(CH2)2−SO2R’]m (Ia)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基、特にフェニル基を表すものであって、任意の置換基は連結基Qに含まれるアリール基に対する上記のものから選ばれ;
R’は水素原子又は随意に置換されたアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)、ア
リール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好ましくはC1-6アル
キル−フェニル基)を表し;そして
W及びmは上述した意味を有する。)で表される試薬を使用して、
一般式
X−[NH−CO−Ar−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (IIb)
で表される新規な接合体を製造する。
これらの好ましい化合物Ia及びIIbでは、好ましくはnは0であり、そして好まし
くはmは1乃至4の整数、特に1を表す。好ましくはそれぞれのWはCO基を表し、そしてW’はCO基又はCH.OH基を表す。好ましくはR’は随意に置換されたアルキル基、例えば−CH2CH2OHのような随意にヒドロキシ置換されたC1-4アルキル基、又は
、特に、C1-4アルキル−アリール基、特にp−トルイル基を表す。好ましくはArは未
置換のフェニル基である。好ましくはXはポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールである。
【0028】
式Iで表される化合物、及び特に式Iaで表される化合物は、驚くほど安定であり、そしてまたチオール基又はアミノ基を含んでいる分子に対して高反応性であると考えられる。本発明による接合方法は一般式
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m V
(式中、X、Q、W、n、及びmは上述した意味を有する。)
で表される中間化合物の形成を介して進行すると考えられる。
【0029】
本発明の方法によって接合される分子は任意の所望の分子であり得る。それは例えば天然分子又は天然分子から誘導される分子であり得、またはチオール基(−SH)又はアミノ基(−NHR)を含むという条件で、生物活性、例えば任意のドラッグを有している任意の分子であり得る。例えば、それはタンパク質又はペプチドであり得る:本明細書中、用語“タンパク質”は便宜上使用され、そして文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“タンパク質”への言及は“タンパク質又はペプチド”への言及を意味していると理解すべきである。
【0030】
分子が結合されているチオール基又はアミノ基は、脱離基Lの脱離と同時に試薬Iと反応する能力がある求核試薬である。そのような基は天然生体分子中に存在し得る、または接合前に生体分子に導入され得る。
【0031】
2つのチオール基は天然又は人工ジスルフィド(システイン)架橋の還元によって発生し、それは鎖内又は鎖間であり得る。生体分子は1つ又は非常に多数のジスルフィド架橋を含むことができ、遊離スルフヒドリル部分を生じさせるための還元は1つ又は非常に多数のジスルフィド架橋を還元するために行われ得る。ジスルフィド還元の程度及び使用されるポリマー接合試薬の化学量論次第で、1つ又は非常に多数のポリマー分子を生体分子に接合させることができる。異なった反応条件又は変性剤の添加を使用して部分的な還元のように、ジスルフィド総数未満に減らすことを望む場合、固定化還元剤が使用され得る。
【0032】
また、チオール基は単一のシステイン残基又はもともとジスルフィド架橋から誘導されていない他のチオール基であり得る。単一のシステインは合成手段によって導入され得、付着の適切なポイントをもたらす。そのような手段はペプチドの接合に非常に有用である。
【0033】
アミノ基は例えばリシン又はヒスチジン残基であり得る。これらは天然生体分子中に存在し得る、または合成的に導入され得る。例えば、ヒスチジン残基は隣接するヒスチジン残基の短鎖、例えばタンパク質への合成方法により付着されるヒスチジン残基を最高で12個、ただし一般的には5又は6個の残基を含んでいる、his−タグ(his−tag)の方法によって導入され得る。His−タグはニッケル及びコバルトと強く結合し、His−タグを固定化金属アフィニティークロマトグラフィーとして知られている分離方法に使用されるニッケル−又はコバルト−含有カラムと結合させることを可能とする。ポリヒスチジンタグは幅広く使用され、広範囲のタンパク質及びペプチドに付着して、タンパク質及びペプチド又はそれらから誘導される生成物が、将来、混合物から分離されるようにする。
【0034】
分子がタンパク質の場合には、それは例えばペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質であってもよい。
【0035】
所望の用途に応じて、本発明における有用性を有し得るいくつかの具体的なタンパク質を次に示す。酵素は炭水化物−特異的酵素、タンパク質分解酵素などが挙げられる。興味のある酵素としては、一般的適用や治療への応用において産業上(有機系の反応)及び生物学的応用に対して、米国特許第4,179,337号に開示されているオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ及びリガーゼが特に挙げられる。興味のある特異的酵素としては、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アデノシン・デアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、及びグルタミナーゼが挙げられる。
【0036】
一般式Iで表される化合物に使用されるタンパク質としては、例えばアルブミンのような血漿タンパク質、転送、第VII因子、第VIII因子又は第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、インスリン、ACTH、グルカゴン(glucagen)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、サイモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、黄体形成ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ヘモグロビン、サイトカイン、抗体、抗体フラグメント、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び組織プラスミノゲン活性化因子が挙げられる。
【0037】
インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子のような特定の前記タンパク質もまた非グリコシル化形態で存在し、通常組み換えタンパク質技術による調製の結果に存在する。非グリコシル化型は本発明に使用され得る。
【0038】
興味のある他のタンパク質は、ポリ(アルキレンオキシド)のようなポリマーと接合させ、その結果寛容誘導物質(tolerance inducers)としての使用に適する場合、低下したアレルギー誘発性を有するとしてDreborg et al,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Syst.(1990) 6
315−365によって開示されたアレルゲンタンパク質である。アレルゲンのうち、開示されたものはブタクサ抗原E、ミツバチ毒、ダニ・アレルゲンなどである。
【0039】
IgG、IgE、IgM、IgA、IgD及びフラグメントのような免疫グロブリンがそうであるように、免疫グロブリン、オボアルブミン、リパーゼ、グルコセレブロシダーゼ、レクチン、組織プラスミノゲン活性化因子及びグルコシル化インターロイキンのような糖ポリペプチド、インターフェロンやコロニー刺激因子には興味がある。
【0040】
特に興味深いのは、レセプターやリガンド結合タンパク質及び抗体や抗体フラグメントであって、それらは診断及び治療目的で臨床医学において使用される。抗体は単独で使用され得又は放射性同位体又は細胞毒性/抗感染症薬のような別の原子又は分子と共有結合(投入“loaded”)され得る。エピトープは予防接種のために使用され得、免疫原性ポリマー―タンパク質接合体を生産する。
【0041】
必要に応じて生体分子は誘導体化又は機能化され得る。特に、接合前に、分子、例えば天然タンパク質は様々な保護基と反応され得、鋭敏基(sensitive gruop)表面を保護する;または本発明の方法を使用して或いは別の方法を使用して、1つ以上
のポリマー又は他の分子と前もって接合され得る。
【0042】
分子は相対的に低分子量の合成分子であり得る。これは、例えば、接合が利点をもたらす任意の薬になり得る。多くのこのような分子に対し、発明による試薬に接合させるためにチオール基又はアミノ基を持っている適切なリンカーを挿入する必要がある。代表的な薬としては、例えばカプトプリル、アムホテリシンB、カンプトテシン、タクソール、イリノテカン及びSN38のようなその誘導体、ドセタキセル、及びリバビリンが挙げられる。
【0043】
発明の方法を使用して接合され得る興味がある別の分子としては国際公開第2004/060965号パンフレットに記載されているものが挙げられる。
【0044】
本発明による方法はすべての反応物が溶解できる溶媒又は溶媒混合液中で行われ得る。接合される分子、例えばタンパク質は、水性反応媒体中一般式Iで表される化合物と直接反応してもよい。求核試薬(チオール又はアミン)のpH所要値次第で、この反応媒体はまた緩衝され得る。反応に対する最適なpHはほとんどの場合少なくとも6.0、一般的に約6.8から約8.5の間、例えば約7.0乃至8.0、好ましくは約7.5−8.0であるが、別の場合では4.0という低いpHが使用され得、特にポリヒスチジンタグへの接合が要求されるとき、4.0乃至8.5の範囲にある有効なpHとなる。接合される分子の存在下、系中で上記式Vで表される化合物を生成することが好ましい場合、相対的に高いpHが全体に始めから終わりまで適切に使用される。また、分離工程において上記式Vで表される化合物を生じ、続いて分子を加えて接合体にすることが好ましい場合、第一工程は相対的に高いpH(例えば7.5−8.0)で適切に行われ、一方それに続く工程はより低いpH(例えば6.0乃至6.5)で最適に行われる。相対的に広範囲のpH条件でうまく使用され得ることが本発明の試薬の利点である。
【0045】
3−37℃間の反応温度が一般的に適切である:これらの方法が起こり得る温度で抱合反応が行われる場合、タンパク質は分解し、凝縮し又は障害機能及び/又は反応効率を変性し得る。有機媒体(例えばTHF、酢酸エチル、アセトン)中で行われる反応は一般的に外界までの温度で行われる。
【0046】
多くの他の試薬と違って、化学量論的当量又はわずかに過剰な試薬を使用することで分子は所望の試薬と効果的に抱合される。しかしながら、試薬は溶媒和物、例えばタンパク質に使用される水性媒体と競争反応を起こさないので、過剰な化学量論の試薬と抱合反応を行うことが可能である。過剰な試薬及び生成物は通常の精製中にイオン交換クロマトグラフィーによって、又はhis−タグが存在する場合はニッケルを使用する分離によって容易に分離され得る。
【0047】
分子が接合される基がチオール基である場合には、発明による方法は還元された生成物が式(I)で表される化合物と反応した後に、系中で生体分子中の二つのシステインアミノ酸から誘導されるジスルフィド結合を部分的に還元することによって行われ得る。ジスルフィドは、従来の方法を使用して、例えばジチオスレイトール、メルカプトエタノール、又はトリス―カルボキシエチルホスフィンで還元され得る。
【0048】
発明による方法の即時生成物は一般式(II)(式中、W’は電子求引基である。)で表される化合物である。そのような化合物はそれ自体に有用性がある:発明の方法は適切な条件下可逆的であるので、式(II)(式中、W’は電子求引部分である。)で表される化合物は接合体からの分子の除去が求められる用途、例えば直接的な臨床的応用において有用性がある。しかしながら、電子求引部分W’は還元されて分子の除去を妨げる部分を生じさせ、そしてそのような化合物もまた多くの臨床的、産業的及び診断的適用におい
て有効性がある。
【0049】
それ故、例えば、ケト基を含んでいる部分W’はCH(OH)基を含んでいる部分W’に還元され得る;エーテル基CH.ORはエーテル化剤によるヒドロキシ基の還元によって得られ得る;エステル基CH.O.C(O)Rはアシル化剤のよるヒドロキシ基の反応によって得られ得る;アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2は還元的アミノ化によってケトン又はアルデヒドから調製され得る;またはアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2はアミンのアシル化によって形成され得る。還元剤とし
ての、ホウ化水素、例えばホウ化水素ナトリウム、シアノホウ化水素ナトリウム、ホウ化水素カリウム又はトリアセトキシホウ化水素ナトリウムの使用は特に好ましい。使用され得る他の還元剤としては、例えば塩化スズ(II)、アルミニウムアルコキシドのようなアルコキシド、及び水素化リチウムアルミニウムが挙げられる。
【0050】
一般式(I)で表される化合物は
一般式
A−Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−L (III)
(式中、Q、W、n及びLは上述した意味を有する。)で表される化合物を、
一般式
X−Bm (IV)
(式中、Xはポリマーを表す。)で表される化合物
と反応させることによって調製され得る;A及びBは(III)及び(IV)で表される化合物が共に反応して、式(I)で表される所望の化合物を生じるように選ばれた基である。
【0051】
一般式IIで表される化合物は多くの用途がある。それらは例えば患者への直接的な臨床的応用に使用され得、また結果的に、本発明は薬学的に許容されるキャリヤーと共に一般式IIで表される新規な化合物を含む医薬組成物をさらに提供する。発明は治療用に一般式IIで表される新規な化合物、及び患者に対して本発明による一般式IIで表される新規な化合物の薬学的有効量又は発明による医薬組成物を投与することを含む患者を治療する方法をさらに提供する。任意の所望の薬学的効果、例えば外傷治療、酵素補充、タンパク製剤の補給、創傷管理、毒素除去、抗炎症薬、抗感染薬、免疫調節、ワクチン接種又は制癌は、生体分子の適切な選択によって得られ得る。一般式IIで表される化合物は造影剤、例えば放射性ヌクレオチドを含んでいてもよく、生体内で化合物を追跡することが可能である。
【0052】
一般式IIで表される化合物もまた非臨床的応用に使用され得る。例えば、酵素のような多くの生理的に活性な化合物は有機溶媒中で反応を触媒することが可能であり、そして一般式IIで表される化合物はそのような用途に使用され得る。さらに、一般式IIで表される化合物は診断ツールとしても使用され得る。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は発明を説明する。
【0054】
実施例1:PEG試薬合成:10kDa PEG試薬9の合成
第一工程:p−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロリド2の合成
本工程に対する反応スキームを図1に示す。
250mLの丸底フラスコにp−アセチル安息香酸(15.0g,1)、ピペリジンヒ
ドロクロリド11.11g及びパラホルムアルデヒド8.23gを入れた。無水エタノール(90mL)及び濃塩酸(1mL)をその後加え、そして得られた懸濁液をアルゴン雰囲気下撹拌しながら10時間加熱還流した。還流終了後、アセトン(150mL)を加え、そして反応混合物を室温まで冷却した。得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で単離し、そして冷やしたアセトンで2回洗浄した。固形物をその後真空下で乾燥し、白色の結晶粉末(2,9.72g)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ1.79,2.96,3.45(brm,ピペリジン部分のCH2),3.36(t,2H,COCH2),3.74(t,2H,NCH2),8.09(m,4H,ArH)。
【0055】
第二工程:4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸5の合成
本工程に対する反応スキームを図2に示す。
p−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロリド2(1.0g)及び4−メチルベンゼンチオール(417mg,3)を無水エタノール(7.5mL)及びメタノール(5mL)の混合液で懸濁した。ピペリジン(50μL)をその後加え、そして懸濁液をアルゴン雰囲気中で6時間撹拌しながら加熱還流した。室温まで冷却後得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)でろ過し、冷やしたアセトンで注意深く洗浄し、そして真空中で乾燥させて5(614mg)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ2.27(s,3H,フェニル−CH3),3.24,3.39(t,2×2H,CH2),7.14,7.26(d,2×2H,トリル部分のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0056】
第三工程:4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸6の合成
本工程に対する反応スキームを図3に示す。
4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸5(160mg)を水(10mL)及びメタノール(10mL)の混合液で懸濁した。氷浴で冷却後、オキソン(720mg、アルドリッチ(Aldrich))を加え、そして反応混合物を一晩(15時間)撹拌しながら室温まで温めた。得られた懸濁液を追加の水(40mL)で希釈して懸濁液をほぼ均一にし、混合物をその後クロロホルム(合計100mL)で3回抽出した。溜まったクロロホルム抽出物を塩水で洗浄しその後MgSO4で乾燥した。30℃、真空下で
の揮発性物質の蒸発により白色の固形物6(149mg)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ2.41(s,3H,フェニル−CH3),3.42(t,2H,CO−CH2),3.64(t,2H,SO2−CH2),7.46,7.82(d,2×2H,トリル部分のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0057】
第四工程:PEG化4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸、PEG試薬9の合成
本工程に対する反応スキームを図4に示す。
4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸6(133mg)及びО−(2−アミノエチル)−O’−メチル―PEG8(MW 10kDa,502mg,バイオベクトラ(BioVectra))を乾燥トルエン(5mL)に溶解した。溶媒を加熱しないで真空下で除去し、乾燥固形残渣をその後アルゴン雰囲気下、乾燥ジクロロメタン(15mL)に再溶解した。氷浴で冷却した、得られた溶液に、アルゴン雰囲気下、ゆっくりとジイソプロピルカルボジイミド(DIPC,60mg)を加えた。反応混合物をその後室温で一晩(
15時間)撹拌し続けた。揮発性物質をその後真空下(30℃、水浴)で除去し、アセトン(20mL)中微温(35℃)で再溶解した固体残渣を得た。溶液を非吸収性コットンウールでろ過し、不溶性物質を除去した。溶液をその後乾燥氷浴で冷却し、遠心分離(4600rpm、30分間)によって分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後得られた灰色がかった白色の固形物を真空下で乾燥し、PEG試薬9(437mg)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.46(s,3H,フェニル−CH3)
,3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG)
,7.38,7.83(d,2×2H,トリル部分のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0058】
異なったPEG分子量の類似したPEG試薬を同様の一般的な操作によって調製した。したがって、20kDa PEGを乾燥ジクロロメタン(15mL)中スルホン6(20.8mg)、O−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(20kDa,250mg,フルカ(Fluka))及びDIPC(8.7mg,7)の反応によって調製し、アセトン沈殿精製操作後、灰色がかった白色の固形物(245mg)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.46(s,3H,フェニル−CH3)
,3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG)
,7.38,7.83(d,2×2H,トリル部分のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0059】
実施例2:分子量5、10及び20kDaのPEG試薬9を用いた単一のヒンジジスルフィド(2つのチオール)を有するFab抗体フラグメントのPEG化
Fab溶液(アブカム(Abcam)cat.no.AB6520、1mg/mL)100μLにDTT原液(脱イオン水中100mM)5μLを加え、そして得られた溶液を30分間、室温で放置した。溶液をpH7.8,50mMリン酸緩衝液95μL、0.15M NaCl及び10mM EDTAで200μLに希釈し、そしてその後illustra NAP−5 column(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.No.17−0854−01)に投入し、pH7.8,50mMリン酸緩衝液、0.15M NaCl及び10mM EDTAで前平衡(pre−equilibrate)した。NAP−5 columnは未乾燥のpH7.8リン酸緩衝液の5×300μLで溶離される。還元Fabは主に画分3で特定され、タンパク質濃度は0.23mg/mLであると推定されるとすぐ、280nmでのUV吸光度を全ての画分用に測定した。
【0060】
分子量5kDa、10kDa及び20kDaを有する3つのPEG試薬をpH7.8リン酸緩衝液に溶解して、それぞれ溶液濃度0.5mg/mL、1mg/mL及び2mg/mLを得た。
【0061】
各PEG化反応に対して、還元Fab溶液(0.23mg/mL)5.0μL及びPEG溶液0.42μL(還元ヒンジジスルフィドチオールに対して1モル当量)を使用した。Fab反応溶液もまたpH7.8リン酸緩衝液4.6μLで希釈され、最終容積10μLを得た。反応溶液を12時間、4℃でインキュベートした。
【0062】
ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル (NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels)(インビトロジェン(
Invitrogen) cat.No.NP0321BOX)及びニューページ MES SDSランニングバッファー(NuPAGE MES SDS running buffer)(インビトロジェン(Invitrogen) cat.No.NP002)を使用しながら、SDS−PAGE分析をその後反応溶液で行った。ゲルはインスタン
トブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.NoISB1L)で染色した。以下の図5に結果を示す。SDS−PAGE分析のPEGは、タンパク質マーカーに対してその本当の大きさのおよそ2倍になったので、5kDaは10kDaのようになった。Fabはおよそ50kDaのタンパク質であり、非還元或いは還元形態に対する約25kDaでのバンド又は2つのバンドのような場合、SDS−PAGEゲル上において約50kDaでのいずれかの単一バンドのようになった。これらは重くて明るい鎖であり、該鎖はSDSを用いた還元及びインキュベーション時にヒンジジスルフィドによってもはや結合していない。それ故、Fabはジ−PEG化されるが、それによって単一のPEGを溶液中還元ヒンジジスルフィドの2つのシステインのそれぞれに付着し、SDS−PAGE分析は25kDaの重くて明るい鎖のモノPEG化を示す。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである(ノヴェックス シャープ タンパク質スタンダード(Novex Sharp protein standards、インビトロジェン(Invitrogen)cat.No.LC5800)。レーン2はFabを示す。標識4が付されたレーンはDTT(約25kDa)で還元されたFabを示す。レーン5はPEG化Fabに相当する35kDaにおいて一次生成物であるバンドと5kDa PEG化結果を示す。少量の還元Fabは25kDaにとどまり、FabがほとんどPEG化されたことを示している。レーン6は10kDa PEG化Fabに相当する40kDaマーカーを超えた一次生成物であるバンドと10kDa PEG化結果を示す。レーン7は20kDa PEG化Fabに相当する60kDaマーカーを超えた一次生成物であるバンドと20kDa PEG化結果を示す。レーン3は事前の還元工程なしで試みられたPEG化結果を示す:PEG化の反応部位が還元ジスルフィド結合であるということをPEG化生成物は示さないという事実。
【0063】
実施例3:5kDa PEG試薬9を用いたアスパラギナーゼのPEG化
pH7.8において150mM NaCl及び5mM EDTAを含んでいる20mMリン酸ナトリム緩衝液中でアスパラギナーゼの1mg/mL溶液(シグマ(Sigma)cat.no A3809)1mLを、DTT(15.4mg)に加えそして数秒間ボルテックス(vortex)した後、得られた溶液を40分間、室温で放置した。ロード画分(load fraction)として溶離液を集めながら、溶液1mLをその後pH7.8 20mMリン酸ナトリウム緩衝液で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.No.17−0851−01)に加え、該緩衝液は150mM NaCl及び5mM EDTAを含んでいる。カラムはその後未乾燥のリン酸緩衝液の5×1mLで溶離された。画分3及び4を混ぜ合わせて、2mLとした。
5kDa PEG試薬9の溶液10mg/mLを脱イオン水で調製し、2.0μL(遊離チオールに対して1.5当量のPEG)を還元アスパラギナーゼ100μLに加えた。その溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、その次に一晩4℃で置き、その後サンプルをSDS−PAGE分析した。その結果を図6に示す。レーン1はMWを推定するために使用したタンパク質マーカーであり、レーン2はPEG化前のアスパラギナーゼでありそしてレーン3は5kDa PEG試薬による還元アスパラギナーゼの反応溶液を示す。両方のシステインのPEG化に相当する強いバンドが60kDaタンパク質マーカーの真上に一次生成物として見られた。第二のより低いMWバンドは50kDaタンパク質マーカーの真上に存在し、該マーカーは2つのシステインの1つのみのPEG化に相当する。30と40kDaの間には還元アスパラギナーゼに相当するごくかすかなバンドのみがあり、ほとんど全てのタンパク質はPEG試薬9でPEG化されていることを示す。
【0064】
実施例4:5、10及び20kDaの分子量を有するPEG試薬9を用いた遊離した単一のシステインを持つG−CSF(granulocyte−colony stimulating factor、顆粒球コロニー刺激因子)のPEG化並びにマレイミド官能
基を持つ5kDa PEGとの比較
GCSF原液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液中0.66mg/mL、pH6.2、150mM NaCl及び10mM EDTAを含む)を各々100μLの5つの画分(PEG化反応に対して天然G−CSF及び4つの画分)に分けた。その画分をG−CSFに対して1モル当量のPEG試薬と共に4℃で一晩インキュベートした。5kDa PEG試薬9及び5kDa PEGマレイミド(フルカ(Fluka)cat.no.63187)に対して、脱イオン水中で5mg/mL PEG試薬3.5μLを加えた。10kDa PEG試薬9に対して、脱イオン水中で5mg/mL PEG溶液7μLを加えた。20kDa PEG試薬9に対して脱イオン水中で5mg/mL 溶液14.0μLを加えた。PEG化反応をSDS−PAGE(ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels,MES buffer,
all from Invitrogen)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L))によって分析した。添加されたPEG試薬を用いていないG−CSFは15と20kDaタンパク質マーカーの間にバンドとして現れた。9による5kDa PEG化に対し、5kDa モノPEG化GCSFに相当する約30kDaにおいてバンドは可視的である。9による10kDa PEG化に対し、40kDaより下のバンドは10kDa モノPEG化GCSFに相当して可視的である。20kDa PEG結果に対し、20kDa モノPEG化G−CSFに相当する50と60kDaの間のバンドは可視的である。5kDa PEGマレイミド反応に対し、未反応のG−CSF以外にバンドは見られなく、反応は本試薬とでは起きなかったことを示す。
【0065】
実施例5:10kDa及び20kDa PEG試薬9を用いたC末端上の8個のヒスチジン配列を有するインターフェロン(IFN) α−2bにおけるヒスチジン上のPEG化
IFN α―2b(2mM EDTA及び150mM NaClを含んでいる10mM
リン酸ナトリウム緩衝液中1.13mg/mL、pH7.5)の20μL溶液に1モル当量の10kDa PEG試薬9(脱イオン水中6mg/mL溶液の1.8μL)を加え、得られた溶液を室温で一晩インキュベートした。1モル当量の20kDa PEG試薬9(脱イオン水中6.6mg/mL溶液の3.3μL)でも繰り返し行った。両サンプルをその後SDS−PAGE(ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESランニングバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE
Novex 4−12% Bis−Tris gels,MES running b
uffer,all from Invitrogen)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L)によって分析した。その結果を図7に示す。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである。レーン2は出発IFNのみである。レーン3は10kDa PEG試薬9反応の結果を示す。接合された1乃至5個のPEG鎖を有するIFNに相当する30と160kDa タンパク質マーカーの間に5つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン4は20kDa
PEG試薬9反応の結果を示す。接合された1乃至3つのPEG鎖を有するIFNに相当する60から110kDa タンパク質マーカーの間に3つのはっきりと区別できるバンドがある。標識5が付されたレーンは染色していない20kDa PEG試薬であり、そのためどのバンドも可視的ではない。標識6が付されたレーンは染色していない10kDa PEG試薬であり、そのためどのバンドも可視的ではない。
【0066】
実施例6:5kDa PEG試薬9用いたペプチド(構造中単一の遊離システインを持つ、レプチンフラグメント)のPEG化
レプチンフラグメント116−130アミドマウス(シグマ(Sigma)cat.no.L6788)1mgをpH7.8で150mM NaCl及び10mM EDTAを含んでいる50mM リン酸ナトリウム緩衝液1mLに溶解した。5kDa PEG試薬9の5mg/mL溶液をpH7.8で同じ緩衝液で調製した。レプチンフラグメント溶液50μLを50μL緩衝液及びPEG溶液(システイン上の遊離チオールに対して3モル当量のPEG)96.1μLに加えた。溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、その次に一晩4℃で置いた、その後サンプルをRP−HPLC分析した。RP−HPLCはJASCO HPLCシステムに取り付けられた分析カラム Source 5RPC
4.6/150(アマシャム バイオサイエンス(Amersham bioscience)cat.no.17511601)から構成した。緩衝液Aは水+0.05%トリフルオロ酢酸(フィッシャーサイエンティフィック HPLCグレード(Fisher
scientific HPLC grade)であり、また緩衝液Bはアセトニトリル(フィッシャーサイエンティフィック HPLCグレード(Fisher scientific HPLC grade))であった。この方法は1mL/minの流速で30分以上かけて緩衝液Aの100%緩衝液を0%にしたものである。HPLCプロファイルを214nm及び280nmの下で観察した。レプチンフラグメント、PEG試薬及び反応溶液に対する結果を図8に示す。
レプチンフラグメントは11.4分の保持時間である。反応混合液ではこのピークは消失して16.5分におけるピークに置き換わり、これはフラグメントがうまく誘導体化されたことを示している。
【0067】
実施例7:分子量20kDaのPEG試薬9を用いたポリヒスチジンタグドメイン抗体フラグメントのPEG化及び生物活性
抗TNFアルファドメイン抗体フラグメント溶液(図12においてTAR1−5−19に記載された配列のように特許国際公開2005/035572号パンフレットから抜粋され、そしてタンパク質のC末端上の6個のヒスチジンタグで表わされるタンパク質配列、50mM リン酸ナトリウム、150m塩化ナトリウム及び350mMイミダゾール中1.5mg/mL、pH7.5)2.7mLを脱イオン水(40mg/mL、タンパク質に対して1.9モル当量)中でPEG試薬の溶液0.3mLに加えた。この溶液をD−Tube dialyzer(ノバジェン(Novagen),cat.No.71508−3)に移し、16時間以上4℃で1L pH6.2緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、20mM EDTA)に対して透析した。直線的濃度勾配法(linear gradient)(30分以上かけて、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5を、700mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム、pH4.5へとする)を用いながらこの反応溶液をResource Sカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.No.17−1178−01)で精製した。
【0068】
画分を集め、SDS−PAGEを使用しながら分析し、そしてその結果を図9に示した。ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル (NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels)(インビトロジェン(
Invitrogen) cat.No.NP0321BOX)及びニューページ MES SDSランニングバッファー(NuPAGE MES SDS running buffer)(インビトロジェン(Invitrogen) cat.No.NP002)を使用し、ゲルをインスタントブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.No.ISB1L)で染色した。SDS−PAGE分析のPEGは、タンパク質マーカーに対してその本当の大きさのほぼ2倍になったので、20kDa PEGは40kDaタンパク質のようになった。ドメイン抗体フラグメントはおそよ12.7kDaのタンパク質である。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである(ノヴェックス シャープ タンパク質スタンダード(Novex Sharp protein standard
s)、インビトロジェン(Invitrogen)cat.No.LC5800)。レーン2はタンパク質のみを示す。標識3が付されたレーンは反応溶液である。53kDaにおけるバンドはモノPEG化タンパク質に相当する。ジPEG−タンパク質が約80kDaのバンド付近に現れ、レーンの上部に少量のマルチPEG化されたタンパク質が存在する。レーン4は未PEG化タンパク質からの混入がない単一のバンドとして精製されたモノPEG化ドメイン抗体フラグメントを示す。
【0069】
実施例8:20kDa PEG試薬9を用いた抗−TNF アルファ アフィボディ(anti−TNF alpha Affibody)(1つの遊離チオールシステイン)のPEG化及びELISA結合(ELISA binding)
pH7.8において150mM NaCl及び20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸緩衝液中で抗−TNF アルファ アフィボディ(アフィボディ AB(Affibody AB)cat.no 10.0841.01)の1mg/mL溶液1mLを、DTT(3.0mg)に加えて任意のジスルフィド結合を還元し、数秒間ボルテックス(vortex)した後、得られた溶液を30分間室温で放置した。この溶液1mLをその後pH6.2リン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl及び20mM EDTA)で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.no.17−0851−01)に投入した。カラムはその後未乾燥のpH6.2 リン酸緩衝液の5×1mLで溶離される。A280nm測定は画分3及び4が還元タンパク質を含むこと、また混ぜ合わせて2mLとなることを示した。このタンパク質溶液に飽和水溶性ヒドロキノン溶液10μLを加え、そしてよくかき混ぜた。20KDa PEG試薬9の20mg/mL溶液を脱イオン水で調製し、73μL(遊離システインチオールに対して1モル当量のPEG)をDTT処理されたアフィボディに加えた。この溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、そしてその次に3時間室温で置き、その後サンプルをSDS−PAGE分析した。
【0070】
3時間後、かなりの量のPEG化タンパク質が既に形成されたので、反応を終了させずにPEG化反応を精製した。精製は直線的塩濃度勾配法(0−700mM NaCl)(linear salt gradient)(30分以上かけて、pH4.5、20mM 酢酸ナトリウム移動相で)と共にResource S 陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.No.17−1178−01)を使用して行った。この結果を図10に示す。図10において標識1が付されたレーンはMWを推定するために使用したタンパク質マーカーである。標識2が付されたレーンはDTTによる処理前のアフィボディ溶液を示す。DTT存在下におけるアフィボディは標識3が付されたレーンに示される。レーン4はPD−10カラムによってDTTを除去した後のアフィボディを示し、2つのバンドは単量体アフィボディ(PEG化に使用可能な遊離チオールシステイン)及び二量体アフィボディ(PEG化に使用不可能なシステイン)に相当して可視的である。レーン5はPEG化反応溶液を示す。50kDa タンパク質マーカーの真上のバンドにモノPEG化アフィボディを見ることができる。陽イオン交換クロマトグラフィー精製されたモノPEG化アフィボディは未PEG化タンパク質からの混入がない単一のバンドとしてレーン6に示される。
【0071】
TNF−αへの精製されたモノPEG化生成物の結合活性をELSA法によって分析した;
TNF−α(15mM Na2CO3、34.9mM NaHCO3、pH9.6中10
μg/mL)を100μL/wellで96穴マイクロプレート(96−well microtitre plate)(Maxisorp、Nunc)に加え、一晩4℃でインキュベートした。TNF−αをその後取り除き、PBS/1% BSAを100μL/
wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。PBS/1% BSAをその後取り除き、PEG化抗TNF−α アフィボディ(PBS/1% BSA中0.026、0.13、0.65、3.25ug/mL)を加え、そして室温で1時間インキュベートした。PEG化アフィボディを対照穴に加えなかった。このプレートをその後PBS/0.1%Tween20(PBS/T) 300μL/wellで3回洗浄した。抗PEGウサギ抗体(エピトミクス(Epitomics),cat.no.2061−1;1% BSA/PBS中1:1000)をその後100μL/wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。PBS/Tで3回洗浄した後に、西洋ワサビペルオキシダーゼ−接合抗ウサギ抗体(アブカム(Abcam),cat.no.ab6721;PBS/1%BSA中1:1000)を100μL/wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。穴をその後PBS/Tで3回洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat.no.T0440)を100μL/wellで加えた。暗闇において15分間のインキュベート後、停止試薬(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat.no.S5689)を100μL/wellで加え、650nmでの吸光度を読み取った。
【0072】
図11に示されたELISA結果はPEG化アフィボディによるTNF−αへの特異結合を示し、タンパク質がポスト−PEG化後の活性をも保持することを裏付ける。TNF−αがない場合は、抗PEG抗体の結合は存在しない。
【0073】
実施例9:20kDa PEG試薬9を使用したN−末端上に8個のヒスチジン配列を有するインターフェロン アルファ−2b(IFN α−2b)のヒスチジン配列上のPEG化。水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元をした場合としなかった場合における20kDa PEG化IFNの抗ウイルス活性。
N−末端上に8個のヒスチジン配列を持つIFN α−2bの溶液(150mM NaClを含んでいる50mMリン酸ナトリウム緩衝液中1.07mg/mL、pH7.4)4.67mLを2.6モル当量の20kDa PEG試薬9(脱イオン水中60mg/mL溶液217μL)に加え、得られた溶液を室温で一晩インキュベートした。SDS−PAGE(ニューページ[登録商標]ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESランニングバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE Novex 4−1
2% Bis−Tris gels,MES running buffer,all from Invitrogen)、及びインスタントブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.NoISB1L)染色による分析後、反応サンプルを高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(Jasco HPLCシステムに接続された、東ソー DEAEカラム、S TSKgel DESE−5PW、スペルコ(Supelco)cat no.8−07164)にかけて、モノPEG化IFN α−2bを精製した。イオン交換カラムから得られた画分(各1mL)をSDS−PAGEによって分析した。主にモノPEG化IFNを含んでいる画分を凍結乾燥した。凍結乾燥後に得られた残渣を150mM
NaCl及び2mM ホウ化水素ナトリウムを含んでいる50mM リン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、室温で1時間放置した。得られた溶液をその後サイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/60、Superdex 200、溶離液として50mM
PBS、1.6mL/min 流速及び215nmでの検出)にかけて、モノPEG化IFNを単離した。単離されたサンプルをSDS−PAGEによって分析し、その結果を図12に示す。図12の標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである。標識2が付されたレーンは出発IFNのみを示す。レーン3は精製された20kDaモノPEG化IFN α−2bに相当する50と60kDaタンパク質マーカー間の単一のバンドを示す。
【0074】
抗ウイルス活性:抗ウイルス試験をペニシリン及びストレプトマイシンを含んでいるDMEM/10%ウシ胎仔血清(FCS)で培養されたA549細胞で実施した。A549細胞を0.2×106cells/mLの濃度においてDMEM/10% FCS中で再懸濁し、50μL/wellで96穴マイクロプレートの中にアリコートした。次の日に、PEG化及び天然IFNサンプルを倍数希釈で調製し、各希釈液50μLを穴に加えた。プレートをその後24時間インキュベートした。媒体をその後取り除き、細胞にDMEM/5% FCS(50μL/well)中で調製された脳心筋炎ウイルス(EMCV)を接種した。細胞をさらに24時間インキュベートし、その後PBS 300μL/wellで洗浄し、そして30分間4% ホルムアルデヒド/0.1% メチルバイオレット(50μL/well;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat
no.198099)で染色した。プレートをその後PBS 300μL/wellで2回洗浄し、空気乾燥させた。染料を2% SDS溶液(50μL/well)で可溶化し、吸光度を570nmで測定した。(A)ホウ化水素ナトリウムで処理されていない、又は(B)処理された20kDa PEG化IFN−α2bはそれぞれ、64pg/mL及び68pg/mLの活性を示した。
【0075】
実施例10:マレイミド官能基を有する市販のPEG試薬と比較したPEG試薬9の安定性
PEG試薬9(5kDa及び20kDa試料)の安定性をpH7.4における核磁気共鳴(NMR)分光学によってメトキシポリ(エチレングリコール)マレイミドプロピオンアミド(カイロテックテクノロジーリミテッド(Chirotech Technology Ltd),cat.no.008−008,lot no.223126001)及びα−メトキシ−ω−エチル−マレイミドポリエチレングリコール(アイリスバイオテック(Iris Biotech)cat.no.PEG1146,lot no.128512)と比較した。pH7.4において150mM NaCl及び20mM EDTAを含んでいる50mM リン酸ナトリウム水溶液を最初に凍結乾燥し、そして酸化ジュウテリウムで同体積にもどすことでpH7.4 D2O溶液を製造した。基準としてアセ
トンを3mLにつき1.0μLで緩衝液に加えた。PEG試薬のサンプルを緩衝液0.75mL中1μモルで溶解し、400MHz NMR分光学によって4時間後及び25.5時間後分析した。PEGマレイミドサンプルの安定性を2.17ppmにおけるアセトン基準に対する積分を使用して標準化した後、6.86ppmにおける積分を比較することによって決定した。PEG試薬9の安定性は2.21ppmにおけるアセトン基準に対する積分を使用して標準化した後、7.31、7.40、7.47、7.73、及び8.03ppmにおけるシグナルに対する全積分を比較して決定した。7.31、7.47及び8.03ppmにおけるピークはPEG試薬9から予想通りに形成されたタンパク質活性PEG試薬10(図14)からのものである。実験中、9の10に対する比率は両方のサンプル1及び2に対し1.46から1.77乃至1までの幅がある。安定性研究結果を表1に示す。PEGマレイミドサンプルはpH7.4において21.5時間以上で19から55%まで分解したが、一方PEG試薬9サンプルは同じ条件下では分解しなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例11:様々なpHでの単一の遊離システインチオールを含んでいるラミニンフラグメント925−983(Lamβ1925-933)のPEG化
Lamβ1925-933は合成直鎖非ペプチド(Cys−Asp−Pro−Gly−Tyr
−Ile−Gly−Ser−Arg−NH2)(シグマ(Sigma)cat.no.C
0668)であり、それはラミニンB1鎖の残基925−933に相当し、単一のシステインチオールを含む。
様々なpHでのPEG試薬9を用いたPEG化:凍結乾燥されたLamβ1925-933ペ
プチド(1mg)を脱イオン水500μLに溶解し、2mg/mL原液を得た。ボルテックス(vortex)した後、ペプチド原液を未乾燥で使用し又はアリコートし、そして使用するまで−80℃で保存した。Lamβ1925-933原液を2倍に希釈し、PEG化反
応混合液中で最終濃度1mg/mL(1mM)を得た。5kDa PEG試薬9(5mg)を脱イオン水200μLに溶解し、25mg/mL原液を得た。ボルテックス(vortex)した後、ペプチド原液を未乾燥で使用し又はアリコートし、そして使用するまで−80℃で保存した。PEG原液を5倍に希釈し、PEG化反応混合液中で最終濃度5mg/mL(1mM)を得た。緩衝原液はpH6.0−8.0の範囲に対し1Mリン酸ナトリウム緩衝液及びpH8.5−10.0の範囲に対し0.1mM 炭酸―重炭酸ソーダを含む。全てのpH値に対し、緩衝原液もまた10mM EDTA及びヒドロキノン381μMを含む。緩衝原液を10倍に希釈し、最終濃度が100mMの緩衝剤(リン酸ナトリウム又は炭酸―重炭酸ソーダ)、1mMのEDTA及び38μMのヒドロキノンを得た。
【0078】
各PEG化反応混合液は5μL Lamβ1925-933原液、1μL緩衝液、PEG試薬
溶液(PEG試薬対Lamβ1925-933型ペプチドのモル比率1:1に相当)2μL及び
脱イオン水2μLを含み、全反応容積を10μLとした。数秒間ボルテックス(vortex)した後、続けて簡潔な遠心分離(5,000×gで30秒)を行い、チューブの底に溶液を集め、この反応混合液を室温のまま0.25、0.5、1、2、4、16及び24時間インキュベートした。室温でのインキュベート後、反応混合液を含んでいるチューブを−80℃に置き、逆相クロマトグラフィーによって分析するまで保存した。
【0079】
逆相クロマトグラフィー分析では、Source 5RPC ST 4.6/150(
GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−5116−01)カラムを使用した。PC及びレオダイン7725iマニュアルインジェクターバルブ(Rheodyne 7725i manual injector valve)に接続するため、カラムをJasco PU−980 インテリジェントポンプ(Intelligent Pump)、Jasco LG−980−02 ターナリ―グラジエントユニット(Ternary Gradient Unit)、Jasco デガッシ ポピュライレ デガッシング ユニット(Degassys Populaire Degassing Unit)、Jasco UV−970 4−λ インテリジェント(Intelligent) UV ディテクター(Detector)、Jasco LC−NetII/ADC インターフェース(Interface)からなるJasco HPLCシステムに接続した。EZchrom SI バージョン3.2.1 ビルド3.2.1.34 クロマトグラフィーソフトウエアパッケージ(アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))を使用しながら、コンピュータによってHPLCシステムを制御した。クロマトグラム分析及びデータのエクスポートもまたEZchrom SIクロマトグラフィーデータシステムを使用しながら行った。
【0080】
3つの溶離液方式を使用した。溶離液Aは脱イオン水中に5%アセトニトリル(Far
UV、HPLCグレード、フィッシャー cat.no.A/0627/17)及び0.065%トリフルオロ酢酸(TFA)(アクロス(Acros)cat.no.139721000)を含む。溶離液Bはアセトニトリル中に0.075% TFAを含むが一方、溶離液Cは100%アセトニトリルである。溶離液を使用前に超音波処理によって脱気した。溶離プログラムは20分間の、0−64% B勾配を含み、続いて100%アセトニトリルで洗浄し、溶離液Aで前平衡(pre−equilibrate)した(表2)。実行中、一定の流速1mL/minを保持した。215、250、280及び350nmにおける吸光度を実行中記録した。各サンプル(10μL)を解凍し、上澄み5μLを逆相クロマトグラフィーカラムに注入する前に速やかに簡潔に遠心分離機にかけた(14,000gで1分)。
【0081】
【表2】
【0082】
クロマトグラムにおける各ピークの同定を標準試料(PEG試薬、還元及び酸化された未反応のペプチド)を実行すること及び(PEG化生成物:ペプチド−PEG接合体に関して)相対的な寸法推定に対する分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって確認した。分析用SECに用いられたカラムはBio−Sep−SEC−S3000(300×7.8mm)分析用カラム(フェノメネクス(Phenomenex),cat.no00H−2146−KO)であった。用いられた実行中の溶離液は10%(v/v)アセトニトリルを含んでいる10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)であり、流速は実行中2mL/minで一定に保った。
【0083】
図13に1モル当量の5kDa PEG試薬9を用いた、pH6.5における経時的PEG化実験のクロマトグラムを示す。室温で15分のインキュベーション後、5つのピー
クが現れた:PEG反応性ペプチドLamβ1925-933(ピーク1);ジスルフィド形成
を経て形成された未反応のペプチド二量体(ピーク2);PEG試薬9スルホン酸脱離基(ピーク3、図14中の化合物11);PEG化ペプチド生成物(5kDa PEG−Lamβ1925-933接合体)に相当するピーク(ピーク4)及びPEG試薬9(ピーク6、
未反応形態)。
【0084】
4時間のインキュベーション後、すべての遊離ペプチド(ピーク1)はPEG化が終了するにつれて消費された。一部の過剰ペプチドが未反応の二量体(ピーク2、PEG試薬は当量濃度においてペプチドより強く吸収することに留意する)を形成したので、やや過剰な活性PEG試薬ピーク(ピーク5、図14における化合物10)もまた存在する。酸化Lamβ1925-933(ピーク2)は遊離チオールを持たないので、PEG化されなかっ
た、それ故対応するピーク(ピーク2)は実験中、未変化のままであった。この結果は還元ペプチドを発生しながらシステインチオールPEG化と一致する。
【0085】
pH6.0とpH8.0間のLamβ1925-933に対するPEG試薬1の反応性をペプ
チド(ピーク1)から5kDa PEG化Lamβ1925-933生成物(ピーク4)への変
換を測定することによって推定した。ペプチドピーク結果を100の値を各PEG化反応に使用されたペプチドの全量に相当する較正されたピークエリアに割り当てることによって標準化した、一方生成物ピーク結果をペプチドの生成物への全変換に相当する推定される最大生成物ピークエリアを用いて標準化した。変換(%)を反応に用いられたペプチドの初期量と比較してPEG化ペプチドの割合として定義した。その結果を図15に示す。pH6.0、6.5、7.0、7.5及び8.0において、全てのペプチドがPEG化された。終了速度はpHによって左右され、より高いpH程より速い速度であり、異なったpHにおいて反応性構造10(図14)の形成の異なった速度を示す。
【0086】
実施例12:様々なpHでのPEG試薬9と商業的に入手可能なPEGマレイミドの反応性の比較
実施例11のLamβ1925-933ペプチドに対するPEG試薬9の反応性を商業的に入
手可能なチオール反応性PEG試薬、PEGマレイミド(O−(2−マレイミドエチル)−Ω’−メチル−ポリエチレングリコール5,000、フルカ(Fluka)cat.no.63187)と比較した。PEG試薬9が実験時間スケールにおいて反応に速やかに使用できるようにするため、試薬をpH7.5でインキュベートすること(2時間、4℃)によってチオール反応性形態(試薬10、図14)を最初に形成し、そして試薬10をペプチド接合する前にRPクロマトグラフィーにより単離した。全てのペプチド反応は新規に溶解したPEG試薬を用いて行った。一時的に、PEG化反応溶液(反応スケール10μL)は100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0−8.0)又は100mM炭酸―重炭酸ソーダ(pH8.5−10.0)及び1mM EDTA中で10μg Lamβ1925-933、PEG(5kDa)試薬50μg(PEG試薬対Lamβ1925-933型ペプチドのモル比率1:1に相当)を含んでいた。室温でのインキュベーション後、反応混合液を実施例11で述べたように逆相クロマトグラフィーによって分析した。その結果を図16に示す。PEG試薬9(pH9.0乃至10)及び10(pH6.0乃至8.0)に対し、ペプチドのPEG化形態への完全な変換は15分以内にpH6.0とpH10の間で達成された。
【0087】
PEGマレイミド試薬に対し、変換は15分後単に最大で78.9%に達するもののみであった。より高いpHにおいて、変換はさらに低かった(pH10で51.2)。pH8.5におけるPEGマレイミド反応を16時間後再びサンプル採取し、全てのペプチドは消費された。
【0088】
したがってテストされた全てのpH値において、PEG試薬9及び10はPEGマレイミド試薬より有効である。
【0089】
実施例13:PEG試薬9ペプチド接合体の安定性及びPEGマレイミド誘導ペプチド接合体の比較
PEG試薬9から製造された精製Lamβ1925-933ペプチド接合体及び実施例12か
らのPEGマレイミドの安定性を12日間以上比較した。接合体の安定性は実施例11で述べたように逆相クロマトグラフィーを用いてPEG−ペプチドピークの領域を測定することによって決定した。
PEG試薬9を用いたPEG化Lamβ1925-933の合成:接合体は実施例11の修正
法を用いて調製した(最終ペプチド濃度1.6mg/mL及びペプチド0.4mgを用いてpH6.0)。生成物をRP−クロマトグラフィーで単離した。Lamβ1925-933−
PEG接合体に相当する溶離ピークを集め、凍結乾燥しそしてその後脱イオン水中で再懸濁した。最終的に、2mM水素化ホウ素ナトリウム(アクロスオルガニクス(Acros
Organics),cat.no.200050250)を加え、サンプルを室温で30分間インキュベートした後、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加えた。
PEGマレイミドを用いたPEG化Lamβ1925-933の合成:Lamβ1925-933(0.4mg)を5kDa PEGマレイミド(5kDa、フルカ(Fluka)cat.no.63187)試薬と共にPEG化用に使用した。一時的に、10×緩衝原液(1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)及び10mM EDTAを含んでいる)20μL及びPEG試薬原液(脱イオン水中25mg/mL)40μLをペプチド原液(脱イオン水中2mg/mL)200μLに加えた。室温での1.5時間のインキュベーション後、生成物を実施例11で述べたようにRP−クロマトグラフィーを用いて精製した。溶離ピークサンプルを乾燥凍結し、そしてその次に脱イオン水で再懸濁しその後50mMのリン酸ナトリウム緩衝液をpHを8.0に調節するために加えた。両方のPEG−ペプチド溶液の濃度がおおよそ等しいことを確認するためにRP−クロマトグラフィーを使用した。
【0090】
両方の安定性サンプルを室温でインキュベートした。12日後、サンプルを分析用RPCによって分析し、安定性を図17に示されるように接合体ピークに対する積分領域の変化によって決定した。PEG試薬9から誘導された接合体は12日以上安定した状態を保っていた。PEGマレイミドから誘導された接合体に対し、たったの63%がクロマトグラム中にとどまり、このことはPEG試薬9はより安定した生成物をもたらすことを示す。
【0091】
実施例14:両末端で官能化されたPEGを使用したPEG化−PEG試薬12
【化2】
PEG試薬12をO,O’−ビス(2−アミノエチル)ポリエチレングリコール6000(フルカ(Fluka)cat.no.14504)を使用してPEG試薬9と同様に調製し、実施例11(Lamβ1925-933)からのモデルペプチドと反応させた。水(6
μL)、10×緩衝原液(1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、381μMヒドロキノン及び10mM EDTAを含んでいる)2μL及びPEG試薬12(25mg/mL)2μLをLamβ1925-933原液(脱イオン水中2mg/mL)10μLに加えた
。これは1:0.375モデルペプチド対PEG試薬のモル比率に相当する。反応溶液(5μL)を室温で2.5時間インキュベーションした後に(実施例11で述べたように)分析用RPCによって分析した。反応溶液の全ての成分が別個のピークとして溶出した:Lamβ1925-933単量体は8.1分で溶出した、酸化Lamβ1925-933二量体は8.9分で溶出した、不活性PEG試薬は17.3分で溶出した、活性PEG試薬は15.7分で溶出しそして脱離基11は10.1分であった。生成物ピークは14.2分で溶出した。2.5時間後、反応溶液中に存在(試薬12に対する86%反応)する遊離Lamβ1925-933の65%は接合され、PEG試薬12の両方の反応性末端が反応すること及びこ
の二官能性試薬はPEG分子の両末端で1つのペプチド分子に付着するのにうまく使用され得ることを示す。
【0092】
実施例15:ポリマー成分としてのポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)(PVP)の使用:Lamβ1925-933モデルペプチドを用いたPVPの接合
PVP試薬の調製(3工程):
工程1:末端アミノ基を有するPVP:
圧力管にシステアミン(0.028g)、ジオキサン(8mL)及びマグネチック撹拌子を入れた。溶液を形成するために穏やかな加熱後、この溶液をアルゴンと共に5分間室温でパージした。パージしながら、1−ビニル−2−ピロリドン(2.0g)をその後加え、さらに5分後次にこれに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を加えた(0.089g)。さらに2分後、圧力管をアルゴン雰囲気下スクリューキャップで封をし、撹拌しながら17時間60℃のオイルバス中に置いた。管及び内容物を室温まで冷却した後、ポリマー生成物の沈殿物を得るためにジエチルエーテル(15mL)を加えた。液相をデカントし固形残渣をアセトン(3mL)に再溶解した。得られたアセトン溶液をその後迅速に撹拌されているジエチルエーテル(25mL)に滴下し沈殿物を真空のほんの僅かなバーストと共にno.2 焼結ガラス漏斗で単離した。固形物を未乾燥のジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、その後室温で真空下乾燥させた(質量=1.44g、白色の固体)。
工程2:PVP−アミンへのタンパク質反応末端基の接合:
PVP−アミン(500mg)、4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸(図3中の構造6、166mg)、及び4−ジメチルアミノピリジン(6mg)をアルゴン雰囲気下、無水ジクロロメタン(10mL)で混合し、その後撹拌しながら、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(155μL)を加えた。得られた混合物を室温で週末を通して撹拌した。週末の間揮発性物質は蒸発したので、固形残渣をジクロロメタン(10mL)中に再溶解し、そして非吸収性コットン−ウールを通してろ過した。その後ろ液にジエチルエーテル(30mL)を加え、得られた沈殿物を遠心分離(4,600rpm、−9℃、10分)によって単離した。液相をデカントし、残りの残渣をジクロロメタン(10mL)中に再溶解した。ジエチルエーテル沈殿精製方法を2回以上繰り返し、残渣を真空下乾燥させた(513mg)。リンカー基を接合させたPVPに対する特徴的なNMRシグナルはCDCl3において7.97、7.82、7.59及び7.38に現れた。
工程3:PVP試薬の分別:
上述の段階で得られた固形物の一部(120mg)を水溶性の20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM NaCl、pH 4.0で混合し、その後澄明な液が可視的になるまで13,000rpmで遠心分離機にかけ、そして液相0.45μmをろ過した。ろ液をその後溶出ピークの間1分ごとに留分を集めることにより1mL/minにおいて20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM、pH4.0を稼動させながら、HiLoad 16/60 Superdex 200 prep grade size exclusion column(GEヘルスケア(GE Healthcare))で分別した(1.9mL加えた)。73.9乃至74.9分の間に溶出している画分を凍結乾燥後にタンパク質接合用に使用した。ペプチド反応を1mM EDTA、38μMヒドロキノン、1.03mM Lamβ1925-933及び過剰のPVP試薬を含んでいる100mMリン
酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中で行った。反応混合液を実施例11で述べたように分析用RPCによって分析した。室温での1時間のインキュベーション後、反応混合液中に存在する遊離Lamβ1925-933モデルペプチドのおよそ60%がLamβ1925-933−PVP接合体(11.3分のRPC保持時間)に変換され、これはPEG以外のポリマーが使用され得ることをうまく証明している。
【0093】
実施例16:アミン性脱離基Lを有するPEG試薬の合成及び使用
【化3】
PEG試薬13の合成:PEG試薬13(図19)は実施例1と類似した操作でDIPC(11mg)を使用しながらDMSO(5mL)中で5kDa mPEG−NH2と化合物2(26mg)の直接的な接合により調製し、灰色がかった白色の固形物(31mg)を得た。(CDCl3における)この生成物のNMRスペクトルは8.02及び7.5
9に特徴的なシグナルがあった。
実施例11のLamβ1925-933モデルペプチドとの反応:反応を1mM EDTA、
38μMヒドロキノン、1.03mM Lamβ1925-933及び3モル当量のPEG試薬
13を含んでいる100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中で行った。反応混合液を実施例11で述べたように分析用RPCによって分析した。単量体Lamβ1925-933は8.1分で溶出し、二量化Lamβ1925-933は8.9分で溶出し、アミン脱離基は9.3分で溶出し、アミン脱離基を有さないPEG試薬13は15.2分、PEG試薬13は15.75分、そして生成物のピークは14.2分であった。室温での1時間のインキュベーション後、反応混合液中に存在する遊離Lamβ1925-933モデルペプチドのお
よそ10%がLamβ1925-933−PEG接合体に変換した。
【0094】
実施例17:PEG試薬9を使用したIL−1−RaのチオールPEG化及び活性
ヒトインターロイキン−1−レセプターアンタゴニスト(IL−1−Ra)の組み換え非グルコシル化形態をモデルタンパク質として使用した。IL−1−Raは153アミノ酸、2つのジスルフィド結合(Cys69/Cys116及びCys66/Cys122)からなり、17.3kDaの分子量を有しそしてN−末端のヘキサヒスチジンタグを含む。
一連のチオールPEG化は50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0及び7.5)中で1−4モル当量の10kDa PEG試薬9を使用して行った。発現されたタンパク質は還元したので、PEG化前にジスルフィドの還元は必要ではなかった。タンパク質濃度は0.1mg/mLであった。4℃での1時間のインキュベーション後、サンプルをSDS−PAGE分析し、その結果を図18に示した。pH6.0のみならず7.5においても、1モル当量のPEG試薬を使用した場合、PEG化反応の主な生成物はモノ−PEG化IL−1−Raであった。ジ−PEG化生成物に相当するかすかなバンドもまた見られ、同様に未PEG化IL1−Raに相当するバンドも見られた。反応に使用されたPEGのモル当量を増加させるとジ−、トリ−及びテトラ−PEG化された種が増加した。pH6.0でのより大きなスケールのPEG化をその後20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸ナトリム緩衝液pH6.0中でIR−1−Ra(0.2mg/mL)1.5mg及び1.5モル当量の20kDa PEG試薬9を使用して行った。溶液を少しの間ボルテックス(vortex)し、2時間4℃で置いた。PEG化IL−1−Raを固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。IMAC前に、アミコウルトラ−4(Amicon ultra−4) 3,000Da MWCO 限外ろ過遠心装置(ultrafiltration
centrifugal device)(ミリポア(Millipore)、cat.no.UFC800324)を使用しながら、EDTAを未乾燥のリン酸緩衝液pH7.4を用いて濃縮と希釈の繰り返しサイクルによって取り除いた。最終的に、サンプルを4mLに濃縮し室温で30分間、2mMホウ化水素ナトリウムで処理し、続けてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で前平衡(pre−equilibrate)させたHisTrap HP(1mL)カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−5247−01)に投入した。カラムを20mL PBSで洗浄し、溶離は40分かけてPBSを500mMイミダゾールを含んでいるPBSにする勾配を含む。溶出液の画分(1mL)を集め、各画分のアリコートをSDS−PAGEによって分析して、PEG化生成物を含んでいる画分を特定した。その後、PEG化生成物を含んでいる画分を溜めて限外ろ過(Amicon ultra−4 3,000Da MWCO)によって最終容積0.6mLに濃縮した。濃縮されたIMAC画分をPBS pH7.4で前平衡(pre−equilibrate)させたHiLoad Superdex 200 16/60カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−1069−01)に投入した。流速は実行中1mL/minに保ち、モノ−PEG化生成物は約62分で溶出した。画分(1mL)を溶出ピーク周辺で集め、各画分のアリコートをSDS−PAGEによって分析した。純粋なモノ−PEG化生成
物を含んでいる画分を限外ろ過によって濃縮しそしてSDS−PAGEによって再分析して、純度を確認した。その結果を図19のレーン2に示した。ゲルはモノ−PEG化タンパク質に相当する単一のバンドを示し、遊離タンパク質は可視的ではなかった。
【0095】
紫外分光光度法によって定量化した後、MG−63細胞中のIL−1β−依存的IL−6放出(IL−1β−dependent IL−6 release)の抑制を評価することによってインビトロ生物活性に関してサンプルを分析した。MG−63細胞をDMEM/10% FCS 100μL中20,000 cells/wellで加えた。次の日に、媒体を取り除き未乾燥の媒体50μL/wellを加えた。サンプルを5倍希釈で2サンプル(25μL/well)に加え、1時間予備インキュベートし、その後IL−1βを最終濃度0.3ng/mL(25μL/mL)で加えた。プレートをさらに24時間インキュベートした。細胞の生存可能性を評価するために、10μLのチアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT;DMEM中5mg/mL;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)cat no.M5655)を各穴に加え、3時間インキュベートした。プレートをその後5分間1,500gで遠心分離機にかけ、媒体を注意深く吸引した。代謝的に活発な細胞中のホルマザン生成物をその後DMSO(100μL/well)で溶解し570nmでの吸光度を測定した。その結果を図20に示し、試薬9を用いたPEG化後のPEG化IL−1Raは阻害活性を保持することを示す。
【0096】
実施例18:PEG試薬9を使用したIL−1Raのポリヒスチジン配列上のPEG化、及びPEG化タンパク質の活性
以下のようなPEG化反応前に硫酸銅を用いてタンパク質遊離システインを酸化してジスルフィドにした後、実施例17のIL−1Raをポリヒスチジンタグ上でPEG化した;硫酸銅(1mM)を200mM NaClを含んでいる50mM Tris・HCl(pH8.0)においてIL−1Ra(0.6mg/mL、1.5mg IL−1−Ra)の2.5mL溶液に加えた。4℃で16時間のインキュベーション後、25mM EDTAを加え、サンプルを20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))に投入した。カラムをその後未乾燥のリン酸緩衝液3.5μLで溶出した。PEG化に使用されたタンパク質濃度は0.43mg/mL及びpH7.4でありそして4℃で16時間インキュベートした。PEG試薬9(20kDa)はタンパク質に対して1.5モル当量である。反応は4℃で16時間インキュベートした。モノPEG化種をホウ化水素ナトリウム処理と共に実施例17で述べたように同じクロマトグラフィーを使用しながら単離した。生成物のSDS−PAGE結果を図19のレーン2に示した、レーン2には遊離タンパク質は見ることができなかった。生成物の生物活性は実施例17で述べたようにMG−63細胞中のIL−1β−依存的IL−6放出の抑制を測定することによって評価し、その結果を図20に示した。PEG化IL−1Raは分析結果において阻害活性を有していた。
【0097】
実施例19:PEG試薬合成:10kDa PEG試薬15の合成
PEG化4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸試薬15を図21に示されているように、実施例1中のPEG化4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸9の合成で記載されたのと類似の方法で4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸14から調製した。最初に、4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸14を4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸と類似の方法で4−メチルベンゼンチオールの替わりにメルカプトエタノールを使用して調製した(工程2、実施例1)。
NMR 14(400MHz)δ3.35(t,2H,COCH2),3.5(重なり
m,4H,CH2SO2CH2),3.8(t,2H,CH2OH),5.2(br s,CH2OH),8.05(m,4H,芳香族CH),13.4(br s,1H,COO
H)。
PEG接合工程に対し、スルホン14(143mg)及びO−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(MW 10kDa,1g,バイオべクトラ(BioVectra))を乾燥トルエン(5mL)に溶解した。溶媒を加熱しないで真空下で取り除き、乾燥固形残渣をその後アルゴン雰囲気下、乾燥ジクロロメタン(10mL)に再溶解した。氷浴で冷却した、得られた溶液にアルゴン雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド(DIPC,87mg)をゆっくりと加えた。反応混合液をその後一晩(15時間)、室温で撹拌し続けた。揮発性物質をその後真空下(30℃、水浴)で取り除いて、アセトン中(45mL)で微温(35℃)で再溶解させた固形残渣を得た。溶液を非吸収性コットンウールでろ過して不溶性物質を取り除いた。この溶液をその後、ドライアイス浴で冷却して、遠心分離(4600rpm、30分間)により分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後、得られた灰色がかった白色の固体を真空下で乾燥して、PEG試薬15(1g)を得た。
1H NMR(400 MHz、CDCl3)δ3.30(t,2H,COCH2),δ
3.40(s,3H,PEG−OCH3),δ3.40−3.85(br m,PEG)
,δ3.50(重なり m,2×2H,CH2SO2CH2),δ3.80(t,2H,C
H2OH),δ7.95,δ8.05(2×d,2×2H,カルボン酸部位のArH)。
【0098】
異なったPEG分子量の類似したPEG試薬を同じ基本操作によって調製した。それ故、5kDa PEGを乾燥ジクロロメタン(15mL)においてスルホン14(256mg)、O−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(5kDa,1g,バイオべクトラ(BioVectra))及びDIPC(174mg)の反応によって調製し、アセトン沈殿精製操作後灰色がかった白色の固体15(1g)を得た。
【0099】
実施例20:PEG試薬合成:10 kDa PEG試薬17の合成
PEG試薬17を次のようにPEG試薬9から調製した(図22):PEG試薬9(10kDa,75mg)をおよそ18時間、脱イオン水中でメルカプトコハク酸(6mg)及び炭酸水素ナトリウム(20mg)と一緒にかき混ぜた。揮発性物質をその後ロータリーエバポレーターで取り除き、非吸収性コットン−ウールを通してろ過により取り除いた不溶物と共に固形残渣を温めたアセトン(4mL)に再溶解した。その後溶液をドライアイス浴で冷却することによって生成物をアセトンから沈殿させ、そして液相をデカントすることによって単離し続いて遠心分離した。アセトン沈殿物をさらに3回繰り返し、固形物をその後真空下で乾燥して16(51mg)を得た。化合物16をおよそ18時間、1:1 メタノール:水(1mL)中でオキソンと混合することによってその後スルホン形態17に酸化した。この混合液をアセトン(10mL)で希釈し、不溶物をその後非吸収性コットン−ウールを通して重力ろ過によって取り除いた。均一なろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固しそして添加された1NHCl 2滴を含むアセトン(2mL)に再溶解し、その後16( mg)に対して述べられたように同一のアセトン沈殿によって単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.24−3.08(重なり m,CH2
CH、COCH2),3.38(s、PEG−OCH3),3.44−3.84(br s,重なり m,PEG & CH2SO2),4.44(dd,SO2CH),7.45(
br s,NH),7.98 & 8.06(2×d,4H,カルボン酸部位のArH)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子、特にタンパク質及びペプチドを接合するための新規な試薬及び新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療効果のある分子、例えばタンパク質は、臨床医学的用途において、効力を発揮するために必要とされる特性を有していない。例えば、多くの天然タンパク質は、良い薬にはならない。その理由は、患者への投与時に、(1)タンパク質が血液又は組織中に存在する多くのエンド−及びエキソ−ペプチターゼによって消化される;(2)多くのタンパク質はある程度免疫原性である;並びに(3)タンパク質は腎臓限外ろ過及びエンドサイトーシスにより迅速に排出され得る等を含んだいくつかの固有の欠点があるからである。医学の分野で有効な治療薬としての有用性を発見するかもしれない、いくつかの分子は組織的に有毒であるか又は最適な生物学的利用態及び薬物動態を欠いている。タンパク質がすぐに血液循環から消えてなくなる場合は、タンパク質は一般的に頻繁に患者に投与されなければならない。頻繁な投与はさらに、毒性の危険性、特に免疫学的に生成された毒性を増加する。
【0003】
水溶性、合成ポリマー、特にポリアルキレングルコースは、タンパク質、ペプチド及び低分子薬物のような治療効果のある分子を接合するために幅広く使用される。これらの治療的な接合体は、循環時間を引き延ばすこと及び除去率を減少させること、組織的毒性を減少させること、並びにいくつかの場合では、さらなる臨床的有用性を発揮することにより、薬物動態を優位に変えることが示されている。ポリエチレングリコール、PEGをタンパク質に共有結合する方法は、“PEG化(PEGylation)”として一般的に知られている。
【0004】
最適化された効力にとってタンパク質ごとに複合ポリマー分子の数は各分子に対して同じである用量一貫性のための投与量を確保すること、及び各タンパク質分子は各タンパク質分子中の同じアミノ酸残基と特に共有結合することは重要である。タンパク質分子に沿った部分での非特異的接合は接合生成物の配分及び頻繁に、非複合タンパク質をもたらして精製するのに難しく且つ費用がかかる複雑な混合物を生み出す。
【0005】
チオール特異的接合に対し、マレイミド基で一端を終端されたPEG鎖を有するPEG化試薬が一般的に使用される。そのような試薬は多くの出版物、例えば国際公開第2004/060965号パンフレットに記述されている。マレイミド末端試薬は市販されている。しかしながら、多くのPEG−マレイミドは保管及び薬剤候補接合の間加水分解的に不安定である。特に、マレイミド環の相当な程度の加水分解が抱合前も抱合後も、起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/060965号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は今、PEG化試薬群であって、単一の求核残基、例えばチオール基を介してポリマーにタンパク質及びペプチドを組み込んでいる接合分子に使用され得、そしてそのような市販試薬より有利であるものを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明はポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子の接合方法を提供するものであって、該方法は一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−L]m (I)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wは電子求引基を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
Lは脱離基を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と前記分子の反応を含む。
【0009】
発明の方法による直接的な生成物は一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (IIa)
(式中、
X、Q、W、n及びmは上述した意味であり、そして
Zはチオール基又はアミノ基を介して接合された前記分子を表す。)によって一般的に表され得る。必要に応じて、この式(IIa)で表される得られる化合物は他の望ましい生成物に変換され得る。
特に、一般式(IIa)で表される得られる化合物は一般式II
X−[Q−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (II)
(式中、W‘は電子求引性部分又は電子求引性部分の還元によって調製できる部分を表す。)
で表される化合物に変換され得る。
また、本発明は、第1観点として、ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物を反応させることを含む方法、に関する。
第2観点として、前記Qは直接結合、アルキレン基又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rはハロゲン原子又はアルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−O−基及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得る、第1観点に記載の方法に関する。
第3観点として、前記Qは随意に置換されたヘテロアリール基又はアリール基であって、−NR.CO−基によって隣接した前記ポリマーXが終端されている、第2観点に記載の方法に関する。
第4観点として、前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、第一観点乃至第3観点のいずれか1つに記載の方法に関す
る。
第5観点として、前記Xはポリアルキレングリコールである、第4観点に記載の方法に関する。
第6観点として、前記Xはポリエチレングリコールである、第5観点に記載の方法に関する。
第7観点として、前記nは0である、第1観点乃至第6観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第8観点として、前記式Vで表される化合物は、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基を表す。)である、第1観点乃至第8観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第9観点として、前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、第8観点に記載の方法に関する。
第10観点として、前記Arはフェニル基を表す、第9観点に記載の方法に関する。
第11観点として、前記分子はペプチド又はタンパク質である、第1観点乃至第10観点のいずれか1つに記載の方法に関する。
第12観点として、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
mは1乃至8の整数を表し;そして
Arは未置換の又は置換されたアリール基を表す。)で表される化合物に関する。
第13観点として、前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、第12観点に記載の化合物に関する。
第14観点として、前記Arはフェニル基を表す、第13観点に記載の化合物に関する。
第15観点として、前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、第12観点乃至第14観点のいずれか1項に記載の化合物に関する。
第16観点として、前記Xはポリアルキレングリコールである、第15観点に記載の化合物に関する。
第17観点として、前記Xはポリエチレングリコールである、請求項17に記載の化合物に関する。
第18観点として、前記nは0である、第12観点乃至第17観点のいずれか1つに記載の化合物に関する。
第19観点として、前記Wはケト基を表す、第12乃至第18観点のいずれか1つに記載の化合物に関する。
第20観点として、
式:
【化1】
で表される、第12観点に記載の化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1の第一工程の反応スキームを示す図である。
【図2】図2は実施例1の第二工程の反応スキームを示す図である。
【図3】図3は実施例1の第三工程の反応スキームを示す図である。
【図4】図4は実施例1の第四工程の反応スキームを示す図である。
【図5】図5は実施例2の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図6】図6は実施例3の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図7】図7は実施例5の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図8】図8は実施例6において反応からの逆相クロマトグラフィー分析を示す図である。
【図9】図9は実施例7の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図10】図10は実施例8において反応からの陽イオン交換クロマトグラフィー分析を示す図である。
【図11】図11は実施例8のELISA結果を示す図である。
【図12】図12は実施例9の生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図13】図13は実施例11の経時的PEG化のクロマトグラムを示す図である。
【図14】図14は実施例10及び11にあるように化合物9、10及び11の相互変換を示す図である。
【図15】図15は実施例11の変換結果を示す図である。
【図16】図16は実施例12の逆相クロマトグラフィー結果を示す図である。
【図17】図17は実施例13の安定性結果を示す図である。
【図18】図18は実施例17の中間生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図19】図19は実施例17の最終生成物のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
【図20】図20は実施例17の吸光度結果を示す図である。
【図21】図21は実施例19の反応スキームを示す図である。
【図22】図22は実施例20の反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般式(I)で表される化合物は新規であり、それ故に本発明もまたこれらの化合物自
体を提供する。特に好ましい式(I)で表される新規な化合物は下記に定義された式(Ia)で表されるものである。
【0012】
一般式(II)で表される化合物もまた新規であり、それ故に本発明もまたこれらの化合物自体を提供する。特に好ましい式(II)で表される新規な化合物は下記に定義された式(IIb)で表されるものである。
【0013】
mは1乃至8の整数、例えば1乃至6、好ましくは1乃至4、例えば1を表す。mが1の場合、単一の分子がポリマーに接合される。mが1より大きい場合、ポリマーに対し二つ以上の分子の接合が得られ得る。2乃至8の基−Q−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z又は−Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−Lはポリマーに結合し、変数Q、W、W’、n、L及びZは各そのような基に対して同一又は異なっていても良い。多官能ポリマー化合物は利用でき、例えば、多数の基は、出発物質として登録商標“サンブライト(Sunbright)” :例えば、4−アーム(4−arm)製品は、式C[CH2O(CH2CH2O)n−Y]4(式中、Yは多数の異なった末端基の一つでもよい)の下、NOFから入手可能なマルチアーム(multi−arm)化合物を使用しながら結合され得る。多量体接合体は相乗的かつ追加的な便益をもたらすことができる。例えば、mが1の場合、得られる接合体は複合分子から離れたPEG鎖の末端上に末端基を有する必要がある。これは一般に、アルコキシ基又はよく似た基であり、そして薬学的応用に利用されるとき、そのような基は望ましくない免疫効果を導き得ることが示唆される。mが1より大きい場合、アルコキシ基のような末端基を必要とせずに、複合分子はPEG鎖の両末端に結合される。
【0014】
ポリマーXは、例えばポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、例えばポリアクリロイルモルホリン、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド、例えばポリカルボキシメタクリルアミド、又はHPMAコポリマーであってもよい。さらに、Xは酵素又は加水分解の影響を受けやすいポリマーである。そのようなポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、及びポリ(アミノ酸)のような、ポリアミドが挙げられる。ポリマーXはホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのような構造的に明確なコポリマーであってもよい。例えばXは二種以上のアルキレンオキシド、又はポリ(アルキレンオキシド)及びポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)のいずれかから誘導されるブロックコポリマーであってもよい。使用され得る多官能性ポリマーはジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマーである。
【0015】
天然高分子、例えばキチン、デキストラン、デキストリン、キトサン、でんぷん、セルロース、グリコーゲン、ポリ(シアル酸)及びその誘導体のような多糖もまた使用され得る。タンパク質はポリマーとして使用され得る。これは第二のタンパク質、例えば酵素又は他の活性タンパク質に、1つのタンパク質、例えば抗体又は抗体フラグメントの接合を可能にする。また、触媒配列を含んでいるペプチド、例えばグリコシルトランスフェラーゼのO−グリカンレセプター部位が使用される場合、次の酵素反応の基質又はターゲットの取り込みを可能にする。ポリグルタミン酸又はポリグリシンのようなポリ(アミノ酸)もまた、サッカリド又はアミノ酸のような天然モノマー及びエチレンオキシド又はメタクリル酸のような合成モノマーから誘導されるハイブリッドポリマーとして使用され得る。
【0016】
ポリマーがポリアルキレングリコールである場合、これは好ましくはC2及び/又はC3単位を含んでいるものであり、特にポリエチレングリコールである。ポリマー、特にポリアルキレングリコールは、単一の線状鎖を含んでいてもよく、または多くの鎖−小さい或
いは大きな多くの鎖−により構成された分岐形態を有していてもよい。いわゆるプルロニック(Pluronic)はPEGブロックコポリマーの重要な種類である。これらはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドブロックから誘導される。置換ポリアルキレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコールは使用され得る。発明の好ましい実施態様では、単一鎖のポリエチレングリコールは適切な基、例えばアルコキシ基、例を挙げるとメトキシ基、アリールオキシ基、カルボキシキ基又はヒドロキシ基によって開始され、そして鎖の反対側でリンカー基Qに結合される。
【0017】
ポリマーXはいくつかの所望の方法で誘導体化又は機能化され得る。反応基はポリマー末端又は末端基で、またはペンダントリンカーを介してポリマー鎖に沿って結合され得る;そのような場合、ポリマーは例えばポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は無水マレイン酸コポリマーである。そのような機能性ポリマーは多量体接合体(例を挙げると、ポリマーが二つ以上の分子に接合される接合体)を調製するさらなる機会をもたらすのにより一層の機会をもたらす。必要に応じて、ポリマーは従来の方法を用いて担体に結合され得る。
【0018】
ポリマーの最適分子量はもちろん対象としている用途次第である。好ましくは、数平均分子量は250g/mole乃至およそ75,000g/moleの範囲内である。一般式IIで表される化合物が医学的用途に用いられ、そして血液循環を離れて組織に浸透することを目的としている、例えば悪性腫瘍に起因する炎症、感染又は自己免疫疾患、又はトラウマの治療用の場合、2000−30,000g/moleの範囲内にある低分子量ポリマーを使用することが有用である。一般式IIで表される化合物を血液循環中に残存させることを目的としている用途に対しては、例えば20,000−75,000g/moleの範囲内にある高分子量ポリマーを使用することが有用である。
【0019】
接合体がその使用目的のために溶剤に溶解できるように使用されるポリマーを選ばなければならない。生物学的適用、特に診断的適用及び哺乳類への臨床治療的投与に対する治療への応用に対して、接合体は水媒体に溶解できる。しかしながら、多くの生物学的分子、例えば酵素のようなタンパク質は、例えば化学反応を触媒するために、産業での有用性がある。そのような用途で使用されるための接合体に対し、接合体は水媒体及び有機媒体の一方又は両方に溶解できる必要がある。ポリマーはもちろん接合される分子の所望の機能を不当に損なうべきではない。
【0020】
好ましくはポリマーは合成ポリマーであり、好ましくは水溶性ポリマーである。水溶性ポリエチレングリコールの使用は多くの用途に対して特に好まれる。
【0021】
連結基Qは、例えば直接結合、アルキレン基(好ましくはC1-10アルキレン基)、または随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rは水素原子又はアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好
ましくはC1-6アルキル−フェニル基)を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−
O−基、−O−CO−O、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、−CO−NR−及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得るものある。そのようなアリール基及びヘテロアリール基Qは発明の1つの好ましい実施形態を形成する。適切なアリール基としてはフェニル基及びナフチル基が挙げられ、一方、適切なヘテロアリール基としては、ピリジン基、ピロール基、フラン基、ピラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基及びプリン基が挙げられる。特に適切な連結基Qはヘテロアリール基又は、特に、アリール基、特にフェニル基であって、−NR.CO−基によって隣接したポリマーXを終端化したものである。ポリマーへの結合は加水分解に不安定な結合、又は非不安定な結合を介してでもよい。
【0022】
随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基に存在し得る置換基としては、例えばアルキル基(好ましくはOH又はCO2Hによって随意に置換されたC1-4アルキル基、特にメチル基)、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−
OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、例えばフッ素原子又は塩素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=
CHR(ここで、各Rは独立してハロゲン原子又はアルキル基(好ましくはC1-6アルキ
ル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好ましくはC1-6アルキル−フェニル基)を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換
基が挙げられる。電子求引置換基の存在が特に好ましい。好ましい置換基は例えばCN、NO2、−OR、−OCOR、−SR、−NHCOR、−NR.COR、−NHOH及び
−NR.COR.が挙げられる。
【0023】
Wは、例えばケト基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−を表し、
そしてW’はそのような基又は例えばCH.OH基、エーテル基CH.OR、エステル基CH.O.C(O)R、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2、またはアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2の還元によって得られる基を表
す。
【0024】
好ましくは、nは0である。
【0025】
脱離基Lは例えば、−SR、−SO2R、−OSO2R、−N+R3、−N+HR2、−N+
H2R、ハロゲン原子、又は−Oθを表す(ここで、Rは上述した意味であり、そしてθ
は置換アリール基、特に少なくとも1つの電子求引置換基を含むフェニル基を表すものであって、該電子求引置換基としては、例えば、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR’CO2R、−NO、−NH
OH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’COR、−N+R3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、特に塩素原子、又は特にフッ素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHRであり、各Rは独立して上述した意味の一つである。)。
【0026】
mが2乃至8の整数を表す場合、必要に応じて異なったL基が存在し得る。これは異なった反応性のL基を選ぶことによって、逐次反応中のポリマーXに異なった分子を接合するための有利な条件をもたらす。
【0027】
好ましくは本発明による方法は一般式
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−(CH2)2−SO2R’]m (Ia)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基、特にフェニル基を表すものであって、任意の置換基は連結基Qに含まれるアリール基に対する上記のものから選ばれ;
R’は水素原子又は随意に置換されたアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)、ア
リール基(好ましくはフェニル基)、又はアルキル−アリール基(好ましくはC1-6アル
キル−フェニル基)を表し;そして
W及びmは上述した意味を有する。)で表される試薬を使用して、
一般式
X−[NH−CO−Ar−W’−(CH=CH)n−(CH2)2−Z]m (IIb)
で表される新規な接合体を製造する。
これらの好ましい化合物Ia及びIIbでは、好ましくはnは0であり、そして好まし
くはmは1乃至4の整数、特に1を表す。好ましくはそれぞれのWはCO基を表し、そしてW’はCO基又はCH.OH基を表す。好ましくはR’は随意に置換されたアルキル基、例えば−CH2CH2OHのような随意にヒドロキシ置換されたC1-4アルキル基、又は
、特に、C1-4アルキル−アリール基、特にp−トルイル基を表す。好ましくはArは未
置換のフェニル基である。好ましくはXはポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールである。
【0028】
式Iで表される化合物、及び特に式Iaで表される化合物は、驚くほど安定であり、そしてまたチオール基又はアミノ基を含んでいる分子に対して高反応性であると考えられる。本発明による接合方法は一般式
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m V
(式中、X、Q、W、n、及びmは上述した意味を有する。)
で表される中間化合物の形成を介して進行すると考えられる。
【0029】
本発明の方法によって接合される分子は任意の所望の分子であり得る。それは例えば天然分子又は天然分子から誘導される分子であり得、またはチオール基(−SH)又はアミノ基(−NHR)を含むという条件で、生物活性、例えば任意のドラッグを有している任意の分子であり得る。例えば、それはタンパク質又はペプチドであり得る:本明細書中、用語“タンパク質”は便宜上使用され、そして文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“タンパク質”への言及は“タンパク質又はペプチド”への言及を意味していると理解すべきである。
【0030】
分子が結合されているチオール基又はアミノ基は、脱離基Lの脱離と同時に試薬Iと反応する能力がある求核試薬である。そのような基は天然生体分子中に存在し得る、または接合前に生体分子に導入され得る。
【0031】
2つのチオール基は天然又は人工ジスルフィド(システイン)架橋の還元によって発生し、それは鎖内又は鎖間であり得る。生体分子は1つ又は非常に多数のジスルフィド架橋を含むことができ、遊離スルフヒドリル部分を生じさせるための還元は1つ又は非常に多数のジスルフィド架橋を還元するために行われ得る。ジスルフィド還元の程度及び使用されるポリマー接合試薬の化学量論次第で、1つ又は非常に多数のポリマー分子を生体分子に接合させることができる。異なった反応条件又は変性剤の添加を使用して部分的な還元のように、ジスルフィド総数未満に減らすことを望む場合、固定化還元剤が使用され得る。
【0032】
また、チオール基は単一のシステイン残基又はもともとジスルフィド架橋から誘導されていない他のチオール基であり得る。単一のシステインは合成手段によって導入され得、付着の適切なポイントをもたらす。そのような手段はペプチドの接合に非常に有用である。
【0033】
アミノ基は例えばリシン又はヒスチジン残基であり得る。これらは天然生体分子中に存在し得る、または合成的に導入され得る。例えば、ヒスチジン残基は隣接するヒスチジン残基の短鎖、例えばタンパク質への合成方法により付着されるヒスチジン残基を最高で12個、ただし一般的には5又は6個の残基を含んでいる、his−タグ(his−tag)の方法によって導入され得る。His−タグはニッケル及びコバルトと強く結合し、His−タグを固定化金属アフィニティークロマトグラフィーとして知られている分離方法に使用されるニッケル−又はコバルト−含有カラムと結合させることを可能とする。ポリヒスチジンタグは幅広く使用され、広範囲のタンパク質及びペプチドに付着して、タンパク質及びペプチド又はそれらから誘導される生成物が、将来、混合物から分離されるようにする。
【0034】
分子がタンパク質の場合には、それは例えばペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質であってもよい。
【0035】
所望の用途に応じて、本発明における有用性を有し得るいくつかの具体的なタンパク質を次に示す。酵素は炭水化物−特異的酵素、タンパク質分解酵素などが挙げられる。興味のある酵素としては、一般的適用や治療への応用において産業上(有機系の反応)及び生物学的応用に対して、米国特許第4,179,337号に開示されているオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ及びリガーゼが特に挙げられる。興味のある特異的酵素としては、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アデノシン・デアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、及びグルタミナーゼが挙げられる。
【0036】
一般式Iで表される化合物に使用されるタンパク質としては、例えばアルブミンのような血漿タンパク質、転送、第VII因子、第VIII因子又は第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、インスリン、ACTH、グルカゴン(glucagen)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、サイモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、黄体形成ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ヘモグロビン、サイトカイン、抗体、抗体フラグメント、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び組織プラスミノゲン活性化因子が挙げられる。
【0037】
インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子のような特定の前記タンパク質もまた非グリコシル化形態で存在し、通常組み換えタンパク質技術による調製の結果に存在する。非グリコシル化型は本発明に使用され得る。
【0038】
興味のある他のタンパク質は、ポリ(アルキレンオキシド)のようなポリマーと接合させ、その結果寛容誘導物質(tolerance inducers)としての使用に適する場合、低下したアレルギー誘発性を有するとしてDreborg et al,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Syst.(1990) 6
315−365によって開示されたアレルゲンタンパク質である。アレルゲンのうち、開示されたものはブタクサ抗原E、ミツバチ毒、ダニ・アレルゲンなどである。
【0039】
IgG、IgE、IgM、IgA、IgD及びフラグメントのような免疫グロブリンがそうであるように、免疫グロブリン、オボアルブミン、リパーゼ、グルコセレブロシダーゼ、レクチン、組織プラスミノゲン活性化因子及びグルコシル化インターロイキンのような糖ポリペプチド、インターフェロンやコロニー刺激因子には興味がある。
【0040】
特に興味深いのは、レセプターやリガンド結合タンパク質及び抗体や抗体フラグメントであって、それらは診断及び治療目的で臨床医学において使用される。抗体は単独で使用され得又は放射性同位体又は細胞毒性/抗感染症薬のような別の原子又は分子と共有結合(投入“loaded”)され得る。エピトープは予防接種のために使用され得、免疫原性ポリマー―タンパク質接合体を生産する。
【0041】
必要に応じて生体分子は誘導体化又は機能化され得る。特に、接合前に、分子、例えば天然タンパク質は様々な保護基と反応され得、鋭敏基(sensitive gruop)表面を保護する;または本発明の方法を使用して或いは別の方法を使用して、1つ以上
のポリマー又は他の分子と前もって接合され得る。
【0042】
分子は相対的に低分子量の合成分子であり得る。これは、例えば、接合が利点をもたらす任意の薬になり得る。多くのこのような分子に対し、発明による試薬に接合させるためにチオール基又はアミノ基を持っている適切なリンカーを挿入する必要がある。代表的な薬としては、例えばカプトプリル、アムホテリシンB、カンプトテシン、タクソール、イリノテカン及びSN38のようなその誘導体、ドセタキセル、及びリバビリンが挙げられる。
【0043】
発明の方法を使用して接合され得る興味がある別の分子としては国際公開第2004/060965号パンフレットに記載されているものが挙げられる。
【0044】
本発明による方法はすべての反応物が溶解できる溶媒又は溶媒混合液中で行われ得る。接合される分子、例えばタンパク質は、水性反応媒体中一般式Iで表される化合物と直接反応してもよい。求核試薬(チオール又はアミン)のpH所要値次第で、この反応媒体はまた緩衝され得る。反応に対する最適なpHはほとんどの場合少なくとも6.0、一般的に約6.8から約8.5の間、例えば約7.0乃至8.0、好ましくは約7.5−8.0であるが、別の場合では4.0という低いpHが使用され得、特にポリヒスチジンタグへの接合が要求されるとき、4.0乃至8.5の範囲にある有効なpHとなる。接合される分子の存在下、系中で上記式Vで表される化合物を生成することが好ましい場合、相対的に高いpHが全体に始めから終わりまで適切に使用される。また、分離工程において上記式Vで表される化合物を生じ、続いて分子を加えて接合体にすることが好ましい場合、第一工程は相対的に高いpH(例えば7.5−8.0)で適切に行われ、一方それに続く工程はより低いpH(例えば6.0乃至6.5)で最適に行われる。相対的に広範囲のpH条件でうまく使用され得ることが本発明の試薬の利点である。
【0045】
3−37℃間の反応温度が一般的に適切である:これらの方法が起こり得る温度で抱合反応が行われる場合、タンパク質は分解し、凝縮し又は障害機能及び/又は反応効率を変性し得る。有機媒体(例えばTHF、酢酸エチル、アセトン)中で行われる反応は一般的に外界までの温度で行われる。
【0046】
多くの他の試薬と違って、化学量論的当量又はわずかに過剰な試薬を使用することで分子は所望の試薬と効果的に抱合される。しかしながら、試薬は溶媒和物、例えばタンパク質に使用される水性媒体と競争反応を起こさないので、過剰な化学量論の試薬と抱合反応を行うことが可能である。過剰な試薬及び生成物は通常の精製中にイオン交換クロマトグラフィーによって、又はhis−タグが存在する場合はニッケルを使用する分離によって容易に分離され得る。
【0047】
分子が接合される基がチオール基である場合には、発明による方法は還元された生成物が式(I)で表される化合物と反応した後に、系中で生体分子中の二つのシステインアミノ酸から誘導されるジスルフィド結合を部分的に還元することによって行われ得る。ジスルフィドは、従来の方法を使用して、例えばジチオスレイトール、メルカプトエタノール、又はトリス―カルボキシエチルホスフィンで還元され得る。
【0048】
発明による方法の即時生成物は一般式(II)(式中、W’は電子求引基である。)で表される化合物である。そのような化合物はそれ自体に有用性がある:発明の方法は適切な条件下可逆的であるので、式(II)(式中、W’は電子求引部分である。)で表される化合物は接合体からの分子の除去が求められる用途、例えば直接的な臨床的応用において有用性がある。しかしながら、電子求引部分W’は還元されて分子の除去を妨げる部分を生じさせ、そしてそのような化合物もまた多くの臨床的、産業的及び診断的適用におい
て有効性がある。
【0049】
それ故、例えば、ケト基を含んでいる部分W’はCH(OH)基を含んでいる部分W’に還元され得る;エーテル基CH.ORはエーテル化剤によるヒドロキシ基の還元によって得られ得る;エステル基CH.O.C(O)Rはアシル化剤のよるヒドロキシ基の反応によって得られ得る;アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2は還元的アミノ化によってケトン又はアルデヒドから調製され得る;またはアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2はアミンのアシル化によって形成され得る。還元剤とし
ての、ホウ化水素、例えばホウ化水素ナトリウム、シアノホウ化水素ナトリウム、ホウ化水素カリウム又はトリアセトキシホウ化水素ナトリウムの使用は特に好ましい。使用され得る他の還元剤としては、例えば塩化スズ(II)、アルミニウムアルコキシドのようなアルコキシド、及び水素化リチウムアルミニウムが挙げられる。
【0050】
一般式(I)で表される化合物は
一般式
A−Q−W−(CH=CH)n−(CH2)2−L (III)
(式中、Q、W、n及びLは上述した意味を有する。)で表される化合物を、
一般式
X−Bm (IV)
(式中、Xはポリマーを表す。)で表される化合物
と反応させることによって調製され得る;A及びBは(III)及び(IV)で表される化合物が共に反応して、式(I)で表される所望の化合物を生じるように選ばれた基である。
【0051】
一般式IIで表される化合物は多くの用途がある。それらは例えば患者への直接的な臨床的応用に使用され得、また結果的に、本発明は薬学的に許容されるキャリヤーと共に一般式IIで表される新規な化合物を含む医薬組成物をさらに提供する。発明は治療用に一般式IIで表される新規な化合物、及び患者に対して本発明による一般式IIで表される新規な化合物の薬学的有効量又は発明による医薬組成物を投与することを含む患者を治療する方法をさらに提供する。任意の所望の薬学的効果、例えば外傷治療、酵素補充、タンパク製剤の補給、創傷管理、毒素除去、抗炎症薬、抗感染薬、免疫調節、ワクチン接種又は制癌は、生体分子の適切な選択によって得られ得る。一般式IIで表される化合物は造影剤、例えば放射性ヌクレオチドを含んでいてもよく、生体内で化合物を追跡することが可能である。
【0052】
一般式IIで表される化合物もまた非臨床的応用に使用され得る。例えば、酵素のような多くの生理的に活性な化合物は有機溶媒中で反応を触媒することが可能であり、そして一般式IIで表される化合物はそのような用途に使用され得る。さらに、一般式IIで表される化合物は診断ツールとしても使用され得る。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は発明を説明する。
【0054】
実施例1:PEG試薬合成:10kDa PEG試薬9の合成
第一工程:p−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロリド2の合成
本工程に対する反応スキームを図1に示す。
250mLの丸底フラスコにp−アセチル安息香酸(15.0g,1)、ピペリジンヒ
ドロクロリド11.11g及びパラホルムアルデヒド8.23gを入れた。無水エタノール(90mL)及び濃塩酸(1mL)をその後加え、そして得られた懸濁液をアルゴン雰囲気下撹拌しながら10時間加熱還流した。還流終了後、アセトン(150mL)を加え、そして反応混合物を室温まで冷却した。得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で単離し、そして冷やしたアセトンで2回洗浄した。固形物をその後真空下で乾燥し、白色の結晶粉末(2,9.72g)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ1.79,2.96,3.45(brm,ピペリジン部分のCH2),3.36(t,2H,COCH2),3.74(t,2H,NCH2),8.09(m,4H,ArH)。
【0055】
第二工程:4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸5の合成
本工程に対する反応スキームを図2に示す。
p−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロリド2(1.0g)及び4−メチルベンゼンチオール(417mg,3)を無水エタノール(7.5mL)及びメタノール(5mL)の混合液で懸濁した。ピペリジン(50μL)をその後加え、そして懸濁液をアルゴン雰囲気中で6時間撹拌しながら加熱還流した。室温まで冷却後得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)でろ過し、冷やしたアセトンで注意深く洗浄し、そして真空中で乾燥させて5(614mg)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ2.27(s,3H,フェニル−CH3),3.24,3.39(t,2×2H,CH2),7.14,7.26(d,2×2H,トリル部分のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0056】
第三工程:4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸6の合成
本工程に対する反応スキームを図3に示す。
4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸5(160mg)を水(10mL)及びメタノール(10mL)の混合液で懸濁した。氷浴で冷却後、オキソン(720mg、アルドリッチ(Aldrich))を加え、そして反応混合物を一晩(15時間)撹拌しながら室温まで温めた。得られた懸濁液を追加の水(40mL)で希釈して懸濁液をほぼ均一にし、混合物をその後クロロホルム(合計100mL)で3回抽出した。溜まったクロロホルム抽出物を塩水で洗浄しその後MgSO4で乾燥した。30℃、真空下で
の揮発性物質の蒸発により白色の固形物6(149mg)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ2.41(s,3H,フェニル−CH3),3.42(t,2H,CO−CH2),3.64(t,2H,SO2−CH2),7.46,7.82(d,2×2H,トリル部分のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0057】
第四工程:PEG化4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸、PEG試薬9の合成
本工程に対する反応スキームを図4に示す。
4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸6(133mg)及びО−(2−アミノエチル)−O’−メチル―PEG8(MW 10kDa,502mg,バイオベクトラ(BioVectra))を乾燥トルエン(5mL)に溶解した。溶媒を加熱しないで真空下で除去し、乾燥固形残渣をその後アルゴン雰囲気下、乾燥ジクロロメタン(15mL)に再溶解した。氷浴で冷却した、得られた溶液に、アルゴン雰囲気下、ゆっくりとジイソプロピルカルボジイミド(DIPC,60mg)を加えた。反応混合物をその後室温で一晩(
15時間)撹拌し続けた。揮発性物質をその後真空下(30℃、水浴)で除去し、アセトン(20mL)中微温(35℃)で再溶解した固体残渣を得た。溶液を非吸収性コットンウールでろ過し、不溶性物質を除去した。溶液をその後乾燥氷浴で冷却し、遠心分離(4600rpm、30分間)によって分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後得られた灰色がかった白色の固形物を真空下で乾燥し、PEG試薬9(437mg)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.46(s,3H,フェニル−CH3)
,3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG)
,7.38,7.83(d,2×2H,トリル部分のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0058】
異なったPEG分子量の類似したPEG試薬を同様の一般的な操作によって調製した。したがって、20kDa PEGを乾燥ジクロロメタン(15mL)中スルホン6(20.8mg)、O−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(20kDa,250mg,フルカ(Fluka))及びDIPC(8.7mg,7)の反応によって調製し、アセトン沈殿精製操作後、灰色がかった白色の固形物(245mg)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.46(s,3H,フェニル−CH3)
,3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG)
,7.38,7.83(d,2×2H,トリル部分のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部分のArH)。
【0059】
実施例2:分子量5、10及び20kDaのPEG試薬9を用いた単一のヒンジジスルフィド(2つのチオール)を有するFab抗体フラグメントのPEG化
Fab溶液(アブカム(Abcam)cat.no.AB6520、1mg/mL)100μLにDTT原液(脱イオン水中100mM)5μLを加え、そして得られた溶液を30分間、室温で放置した。溶液をpH7.8,50mMリン酸緩衝液95μL、0.15M NaCl及び10mM EDTAで200μLに希釈し、そしてその後illustra NAP−5 column(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.No.17−0854−01)に投入し、pH7.8,50mMリン酸緩衝液、0.15M NaCl及び10mM EDTAで前平衡(pre−equilibrate)した。NAP−5 columnは未乾燥のpH7.8リン酸緩衝液の5×300μLで溶離される。還元Fabは主に画分3で特定され、タンパク質濃度は0.23mg/mLであると推定されるとすぐ、280nmでのUV吸光度を全ての画分用に測定した。
【0060】
分子量5kDa、10kDa及び20kDaを有する3つのPEG試薬をpH7.8リン酸緩衝液に溶解して、それぞれ溶液濃度0.5mg/mL、1mg/mL及び2mg/mLを得た。
【0061】
各PEG化反応に対して、還元Fab溶液(0.23mg/mL)5.0μL及びPEG溶液0.42μL(還元ヒンジジスルフィドチオールに対して1モル当量)を使用した。Fab反応溶液もまたpH7.8リン酸緩衝液4.6μLで希釈され、最終容積10μLを得た。反応溶液を12時間、4℃でインキュベートした。
【0062】
ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル (NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels)(インビトロジェン(
Invitrogen) cat.No.NP0321BOX)及びニューページ MES SDSランニングバッファー(NuPAGE MES SDS running buffer)(インビトロジェン(Invitrogen) cat.No.NP002)を使用しながら、SDS−PAGE分析をその後反応溶液で行った。ゲルはインスタン
トブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.NoISB1L)で染色した。以下の図5に結果を示す。SDS−PAGE分析のPEGは、タンパク質マーカーに対してその本当の大きさのおよそ2倍になったので、5kDaは10kDaのようになった。Fabはおよそ50kDaのタンパク質であり、非還元或いは還元形態に対する約25kDaでのバンド又は2つのバンドのような場合、SDS−PAGEゲル上において約50kDaでのいずれかの単一バンドのようになった。これらは重くて明るい鎖であり、該鎖はSDSを用いた還元及びインキュベーション時にヒンジジスルフィドによってもはや結合していない。それ故、Fabはジ−PEG化されるが、それによって単一のPEGを溶液中還元ヒンジジスルフィドの2つのシステインのそれぞれに付着し、SDS−PAGE分析は25kDaの重くて明るい鎖のモノPEG化を示す。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである(ノヴェックス シャープ タンパク質スタンダード(Novex Sharp protein standards、インビトロジェン(Invitrogen)cat.No.LC5800)。レーン2はFabを示す。標識4が付されたレーンはDTT(約25kDa)で還元されたFabを示す。レーン5はPEG化Fabに相当する35kDaにおいて一次生成物であるバンドと5kDa PEG化結果を示す。少量の還元Fabは25kDaにとどまり、FabがほとんどPEG化されたことを示している。レーン6は10kDa PEG化Fabに相当する40kDaマーカーを超えた一次生成物であるバンドと10kDa PEG化結果を示す。レーン7は20kDa PEG化Fabに相当する60kDaマーカーを超えた一次生成物であるバンドと20kDa PEG化結果を示す。レーン3は事前の還元工程なしで試みられたPEG化結果を示す:PEG化の反応部位が還元ジスルフィド結合であるということをPEG化生成物は示さないという事実。
【0063】
実施例3:5kDa PEG試薬9を用いたアスパラギナーゼのPEG化
pH7.8において150mM NaCl及び5mM EDTAを含んでいる20mMリン酸ナトリム緩衝液中でアスパラギナーゼの1mg/mL溶液(シグマ(Sigma)cat.no A3809)1mLを、DTT(15.4mg)に加えそして数秒間ボルテックス(vortex)した後、得られた溶液を40分間、室温で放置した。ロード画分(load fraction)として溶離液を集めながら、溶液1mLをその後pH7.8 20mMリン酸ナトリウム緩衝液で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.No.17−0851−01)に加え、該緩衝液は150mM NaCl及び5mM EDTAを含んでいる。カラムはその後未乾燥のリン酸緩衝液の5×1mLで溶離された。画分3及び4を混ぜ合わせて、2mLとした。
5kDa PEG試薬9の溶液10mg/mLを脱イオン水で調製し、2.0μL(遊離チオールに対して1.5当量のPEG)を還元アスパラギナーゼ100μLに加えた。その溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、その次に一晩4℃で置き、その後サンプルをSDS−PAGE分析した。その結果を図6に示す。レーン1はMWを推定するために使用したタンパク質マーカーであり、レーン2はPEG化前のアスパラギナーゼでありそしてレーン3は5kDa PEG試薬による還元アスパラギナーゼの反応溶液を示す。両方のシステインのPEG化に相当する強いバンドが60kDaタンパク質マーカーの真上に一次生成物として見られた。第二のより低いMWバンドは50kDaタンパク質マーカーの真上に存在し、該マーカーは2つのシステインの1つのみのPEG化に相当する。30と40kDaの間には還元アスパラギナーゼに相当するごくかすかなバンドのみがあり、ほとんど全てのタンパク質はPEG試薬9でPEG化されていることを示す。
【0064】
実施例4:5、10及び20kDaの分子量を有するPEG試薬9を用いた遊離した単一のシステインを持つG−CSF(granulocyte−colony stimulating factor、顆粒球コロニー刺激因子)のPEG化並びにマレイミド官能
基を持つ5kDa PEGとの比較
GCSF原液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液中0.66mg/mL、pH6.2、150mM NaCl及び10mM EDTAを含む)を各々100μLの5つの画分(PEG化反応に対して天然G−CSF及び4つの画分)に分けた。その画分をG−CSFに対して1モル当量のPEG試薬と共に4℃で一晩インキュベートした。5kDa PEG試薬9及び5kDa PEGマレイミド(フルカ(Fluka)cat.no.63187)に対して、脱イオン水中で5mg/mL PEG試薬3.5μLを加えた。10kDa PEG試薬9に対して、脱イオン水中で5mg/mL PEG溶液7μLを加えた。20kDa PEG試薬9に対して脱イオン水中で5mg/mL 溶液14.0μLを加えた。PEG化反応をSDS−PAGE(ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels,MES buffer,
all from Invitrogen)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L))によって分析した。添加されたPEG試薬を用いていないG−CSFは15と20kDaタンパク質マーカーの間にバンドとして現れた。9による5kDa PEG化に対し、5kDa モノPEG化GCSFに相当する約30kDaにおいてバンドは可視的である。9による10kDa PEG化に対し、40kDaより下のバンドは10kDa モノPEG化GCSFに相当して可視的である。20kDa PEG結果に対し、20kDa モノPEG化G−CSFに相当する50と60kDaの間のバンドは可視的である。5kDa PEGマレイミド反応に対し、未反応のG−CSF以外にバンドは見られなく、反応は本試薬とでは起きなかったことを示す。
【0065】
実施例5:10kDa及び20kDa PEG試薬9を用いたC末端上の8個のヒスチジン配列を有するインターフェロン(IFN) α−2bにおけるヒスチジン上のPEG化
IFN α―2b(2mM EDTA及び150mM NaClを含んでいる10mM
リン酸ナトリウム緩衝液中1.13mg/mL、pH7.5)の20μL溶液に1モル当量の10kDa PEG試薬9(脱イオン水中6mg/mL溶液の1.8μL)を加え、得られた溶液を室温で一晩インキュベートした。1モル当量の20kDa PEG試薬9(脱イオン水中6.6mg/mL溶液の3.3μL)でも繰り返し行った。両サンプルをその後SDS−PAGE(ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESランニングバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE
Novex 4−12% Bis−Tris gels,MES running b
uffer,all from Invitrogen)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L)によって分析した。その結果を図7に示す。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである。レーン2は出発IFNのみである。レーン3は10kDa PEG試薬9反応の結果を示す。接合された1乃至5個のPEG鎖を有するIFNに相当する30と160kDa タンパク質マーカーの間に5つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン4は20kDa
PEG試薬9反応の結果を示す。接合された1乃至3つのPEG鎖を有するIFNに相当する60から110kDa タンパク質マーカーの間に3つのはっきりと区別できるバンドがある。標識5が付されたレーンは染色していない20kDa PEG試薬であり、そのためどのバンドも可視的ではない。標識6が付されたレーンは染色していない10kDa PEG試薬であり、そのためどのバンドも可視的ではない。
【0066】
実施例6:5kDa PEG試薬9用いたペプチド(構造中単一の遊離システインを持つ、レプチンフラグメント)のPEG化
レプチンフラグメント116−130アミドマウス(シグマ(Sigma)cat.no.L6788)1mgをpH7.8で150mM NaCl及び10mM EDTAを含んでいる50mM リン酸ナトリウム緩衝液1mLに溶解した。5kDa PEG試薬9の5mg/mL溶液をpH7.8で同じ緩衝液で調製した。レプチンフラグメント溶液50μLを50μL緩衝液及びPEG溶液(システイン上の遊離チオールに対して3モル当量のPEG)96.1μLに加えた。溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、その次に一晩4℃で置いた、その後サンプルをRP−HPLC分析した。RP−HPLCはJASCO HPLCシステムに取り付けられた分析カラム Source 5RPC
4.6/150(アマシャム バイオサイエンス(Amersham bioscience)cat.no.17511601)から構成した。緩衝液Aは水+0.05%トリフルオロ酢酸(フィッシャーサイエンティフィック HPLCグレード(Fisher
scientific HPLC grade)であり、また緩衝液Bはアセトニトリル(フィッシャーサイエンティフィック HPLCグレード(Fisher scientific HPLC grade))であった。この方法は1mL/minの流速で30分以上かけて緩衝液Aの100%緩衝液を0%にしたものである。HPLCプロファイルを214nm及び280nmの下で観察した。レプチンフラグメント、PEG試薬及び反応溶液に対する結果を図8に示す。
レプチンフラグメントは11.4分の保持時間である。反応混合液ではこのピークは消失して16.5分におけるピークに置き換わり、これはフラグメントがうまく誘導体化されたことを示している。
【0067】
実施例7:分子量20kDaのPEG試薬9を用いたポリヒスチジンタグドメイン抗体フラグメントのPEG化及び生物活性
抗TNFアルファドメイン抗体フラグメント溶液(図12においてTAR1−5−19に記載された配列のように特許国際公開2005/035572号パンフレットから抜粋され、そしてタンパク質のC末端上の6個のヒスチジンタグで表わされるタンパク質配列、50mM リン酸ナトリウム、150m塩化ナトリウム及び350mMイミダゾール中1.5mg/mL、pH7.5)2.7mLを脱イオン水(40mg/mL、タンパク質に対して1.9モル当量)中でPEG試薬の溶液0.3mLに加えた。この溶液をD−Tube dialyzer(ノバジェン(Novagen),cat.No.71508−3)に移し、16時間以上4℃で1L pH6.2緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、20mM EDTA)に対して透析した。直線的濃度勾配法(linear gradient)(30分以上かけて、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5を、700mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム、pH4.5へとする)を用いながらこの反応溶液をResource Sカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.No.17−1178−01)で精製した。
【0068】
画分を集め、SDS−PAGEを使用しながら分析し、そしてその結果を図9に示した。ニューページ[登録商標] ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル (NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris gels)(インビトロジェン(
Invitrogen) cat.No.NP0321BOX)及びニューページ MES SDSランニングバッファー(NuPAGE MES SDS running buffer)(インビトロジェン(Invitrogen) cat.No.NP002)を使用し、ゲルをインスタントブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.No.ISB1L)で染色した。SDS−PAGE分析のPEGは、タンパク質マーカーに対してその本当の大きさのほぼ2倍になったので、20kDa PEGは40kDaタンパク質のようになった。ドメイン抗体フラグメントはおそよ12.7kDaのタンパク質である。標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである(ノヴェックス シャープ タンパク質スタンダード(Novex Sharp protein standard
s)、インビトロジェン(Invitrogen)cat.No.LC5800)。レーン2はタンパク質のみを示す。標識3が付されたレーンは反応溶液である。53kDaにおけるバンドはモノPEG化タンパク質に相当する。ジPEG−タンパク質が約80kDaのバンド付近に現れ、レーンの上部に少量のマルチPEG化されたタンパク質が存在する。レーン4は未PEG化タンパク質からの混入がない単一のバンドとして精製されたモノPEG化ドメイン抗体フラグメントを示す。
【0069】
実施例8:20kDa PEG試薬9を用いた抗−TNF アルファ アフィボディ(anti−TNF alpha Affibody)(1つの遊離チオールシステイン)のPEG化及びELISA結合(ELISA binding)
pH7.8において150mM NaCl及び20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸緩衝液中で抗−TNF アルファ アフィボディ(アフィボディ AB(Affibody AB)cat.no 10.0841.01)の1mg/mL溶液1mLを、DTT(3.0mg)に加えて任意のジスルフィド結合を還元し、数秒間ボルテックス(vortex)した後、得られた溶液を30分間室温で放置した。この溶液1mLをその後pH6.2リン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl及び20mM EDTA)で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare)cat.no.17−0851−01)に投入した。カラムはその後未乾燥のpH6.2 リン酸緩衝液の5×1mLで溶離される。A280nm測定は画分3及び4が還元タンパク質を含むこと、また混ぜ合わせて2mLとなることを示した。このタンパク質溶液に飽和水溶性ヒドロキノン溶液10μLを加え、そしてよくかき混ぜた。20KDa PEG試薬9の20mg/mL溶液を脱イオン水で調製し、73μL(遊離システインチオールに対して1モル当量のPEG)をDTT処理されたアフィボディに加えた。この溶液を数秒間ボルテックス(vortex)し、そしてその次に3時間室温で置き、その後サンプルをSDS−PAGE分析した。
【0070】
3時間後、かなりの量のPEG化タンパク質が既に形成されたので、反応を終了させずにPEG化反応を精製した。精製は直線的塩濃度勾配法(0−700mM NaCl)(linear salt gradient)(30分以上かけて、pH4.5、20mM 酢酸ナトリウム移動相で)と共にResource S 陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.No.17−1178−01)を使用して行った。この結果を図10に示す。図10において標識1が付されたレーンはMWを推定するために使用したタンパク質マーカーである。標識2が付されたレーンはDTTによる処理前のアフィボディ溶液を示す。DTT存在下におけるアフィボディは標識3が付されたレーンに示される。レーン4はPD−10カラムによってDTTを除去した後のアフィボディを示し、2つのバンドは単量体アフィボディ(PEG化に使用可能な遊離チオールシステイン)及び二量体アフィボディ(PEG化に使用不可能なシステイン)に相当して可視的である。レーン5はPEG化反応溶液を示す。50kDa タンパク質マーカーの真上のバンドにモノPEG化アフィボディを見ることができる。陽イオン交換クロマトグラフィー精製されたモノPEG化アフィボディは未PEG化タンパク質からの混入がない単一のバンドとしてレーン6に示される。
【0071】
TNF−αへの精製されたモノPEG化生成物の結合活性をELSA法によって分析した;
TNF−α(15mM Na2CO3、34.9mM NaHCO3、pH9.6中10
μg/mL)を100μL/wellで96穴マイクロプレート(96−well microtitre plate)(Maxisorp、Nunc)に加え、一晩4℃でインキュベートした。TNF−αをその後取り除き、PBS/1% BSAを100μL/
wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。PBS/1% BSAをその後取り除き、PEG化抗TNF−α アフィボディ(PBS/1% BSA中0.026、0.13、0.65、3.25ug/mL)を加え、そして室温で1時間インキュベートした。PEG化アフィボディを対照穴に加えなかった。このプレートをその後PBS/0.1%Tween20(PBS/T) 300μL/wellで3回洗浄した。抗PEGウサギ抗体(エピトミクス(Epitomics),cat.no.2061−1;1% BSA/PBS中1:1000)をその後100μL/wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。PBS/Tで3回洗浄した後に、西洋ワサビペルオキシダーゼ−接合抗ウサギ抗体(アブカム(Abcam),cat.no.ab6721;PBS/1%BSA中1:1000)を100μL/wellで加え、そして室温で1時間インキュベートした。穴をその後PBS/Tで3回洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat.no.T0440)を100μL/wellで加えた。暗闇において15分間のインキュベート後、停止試薬(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat.no.S5689)を100μL/wellで加え、650nmでの吸光度を読み取った。
【0072】
図11に示されたELISA結果はPEG化アフィボディによるTNF−αへの特異結合を示し、タンパク質がポスト−PEG化後の活性をも保持することを裏付ける。TNF−αがない場合は、抗PEG抗体の結合は存在しない。
【0073】
実施例9:20kDa PEG試薬9を使用したN−末端上に8個のヒスチジン配列を有するインターフェロン アルファ−2b(IFN α−2b)のヒスチジン配列上のPEG化。水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元をした場合としなかった場合における20kDa PEG化IFNの抗ウイルス活性。
N−末端上に8個のヒスチジン配列を持つIFN α−2bの溶液(150mM NaClを含んでいる50mMリン酸ナトリウム緩衝液中1.07mg/mL、pH7.4)4.67mLを2.6モル当量の20kDa PEG試薬9(脱イオン水中60mg/mL溶液217μL)に加え、得られた溶液を室温で一晩インキュベートした。SDS−PAGE(ニューページ[登録商標]ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MESランニングバッファー(全てインビトロジェン)(NuPAGE Novex 4−1
2% Bis−Tris gels,MES running buffer,all from Invitrogen)、及びインスタントブルー(イクスぺドン(Expedon)cat.NoISB1L)染色による分析後、反応サンプルを高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(Jasco HPLCシステムに接続された、東ソー DEAEカラム、S TSKgel DESE−5PW、スペルコ(Supelco)cat no.8−07164)にかけて、モノPEG化IFN α−2bを精製した。イオン交換カラムから得られた画分(各1mL)をSDS−PAGEによって分析した。主にモノPEG化IFNを含んでいる画分を凍結乾燥した。凍結乾燥後に得られた残渣を150mM
NaCl及び2mM ホウ化水素ナトリウムを含んでいる50mM リン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、室温で1時間放置した。得られた溶液をその後サイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/60、Superdex 200、溶離液として50mM
PBS、1.6mL/min 流速及び215nmでの検出)にかけて、モノPEG化IFNを単離した。単離されたサンプルをSDS−PAGEによって分析し、その結果を図12に示す。図12の標識1が付されたレーンはタンパク質マーカーである。標識2が付されたレーンは出発IFNのみを示す。レーン3は精製された20kDaモノPEG化IFN α−2bに相当する50と60kDaタンパク質マーカー間の単一のバンドを示す。
【0074】
抗ウイルス活性:抗ウイルス試験をペニシリン及びストレプトマイシンを含んでいるDMEM/10%ウシ胎仔血清(FCS)で培養されたA549細胞で実施した。A549細胞を0.2×106cells/mLの濃度においてDMEM/10% FCS中で再懸濁し、50μL/wellで96穴マイクロプレートの中にアリコートした。次の日に、PEG化及び天然IFNサンプルを倍数希釈で調製し、各希釈液50μLを穴に加えた。プレートをその後24時間インキュベートした。媒体をその後取り除き、細胞にDMEM/5% FCS(50μL/well)中で調製された脳心筋炎ウイルス(EMCV)を接種した。細胞をさらに24時間インキュベートし、その後PBS 300μL/wellで洗浄し、そして30分間4% ホルムアルデヒド/0.1% メチルバイオレット(50μL/well;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),cat
no.198099)で染色した。プレートをその後PBS 300μL/wellで2回洗浄し、空気乾燥させた。染料を2% SDS溶液(50μL/well)で可溶化し、吸光度を570nmで測定した。(A)ホウ化水素ナトリウムで処理されていない、又は(B)処理された20kDa PEG化IFN−α2bはそれぞれ、64pg/mL及び68pg/mLの活性を示した。
【0075】
実施例10:マレイミド官能基を有する市販のPEG試薬と比較したPEG試薬9の安定性
PEG試薬9(5kDa及び20kDa試料)の安定性をpH7.4における核磁気共鳴(NMR)分光学によってメトキシポリ(エチレングリコール)マレイミドプロピオンアミド(カイロテックテクノロジーリミテッド(Chirotech Technology Ltd),cat.no.008−008,lot no.223126001)及びα−メトキシ−ω−エチル−マレイミドポリエチレングリコール(アイリスバイオテック(Iris Biotech)cat.no.PEG1146,lot no.128512)と比較した。pH7.4において150mM NaCl及び20mM EDTAを含んでいる50mM リン酸ナトリウム水溶液を最初に凍結乾燥し、そして酸化ジュウテリウムで同体積にもどすことでpH7.4 D2O溶液を製造した。基準としてアセ
トンを3mLにつき1.0μLで緩衝液に加えた。PEG試薬のサンプルを緩衝液0.75mL中1μモルで溶解し、400MHz NMR分光学によって4時間後及び25.5時間後分析した。PEGマレイミドサンプルの安定性を2.17ppmにおけるアセトン基準に対する積分を使用して標準化した後、6.86ppmにおける積分を比較することによって決定した。PEG試薬9の安定性は2.21ppmにおけるアセトン基準に対する積分を使用して標準化した後、7.31、7.40、7.47、7.73、及び8.03ppmにおけるシグナルに対する全積分を比較して決定した。7.31、7.47及び8.03ppmにおけるピークはPEG試薬9から予想通りに形成されたタンパク質活性PEG試薬10(図14)からのものである。実験中、9の10に対する比率は両方のサンプル1及び2に対し1.46から1.77乃至1までの幅がある。安定性研究結果を表1に示す。PEGマレイミドサンプルはpH7.4において21.5時間以上で19から55%まで分解したが、一方PEG試薬9サンプルは同じ条件下では分解しなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例11:様々なpHでの単一の遊離システインチオールを含んでいるラミニンフラグメント925−983(Lamβ1925-933)のPEG化
Lamβ1925-933は合成直鎖非ペプチド(Cys−Asp−Pro−Gly−Tyr
−Ile−Gly−Ser−Arg−NH2)(シグマ(Sigma)cat.no.C
0668)であり、それはラミニンB1鎖の残基925−933に相当し、単一のシステインチオールを含む。
様々なpHでのPEG試薬9を用いたPEG化:凍結乾燥されたLamβ1925-933ペ
プチド(1mg)を脱イオン水500μLに溶解し、2mg/mL原液を得た。ボルテックス(vortex)した後、ペプチド原液を未乾燥で使用し又はアリコートし、そして使用するまで−80℃で保存した。Lamβ1925-933原液を2倍に希釈し、PEG化反
応混合液中で最終濃度1mg/mL(1mM)を得た。5kDa PEG試薬9(5mg)を脱イオン水200μLに溶解し、25mg/mL原液を得た。ボルテックス(vortex)した後、ペプチド原液を未乾燥で使用し又はアリコートし、そして使用するまで−80℃で保存した。PEG原液を5倍に希釈し、PEG化反応混合液中で最終濃度5mg/mL(1mM)を得た。緩衝原液はpH6.0−8.0の範囲に対し1Mリン酸ナトリウム緩衝液及びpH8.5−10.0の範囲に対し0.1mM 炭酸―重炭酸ソーダを含む。全てのpH値に対し、緩衝原液もまた10mM EDTA及びヒドロキノン381μMを含む。緩衝原液を10倍に希釈し、最終濃度が100mMの緩衝剤(リン酸ナトリウム又は炭酸―重炭酸ソーダ)、1mMのEDTA及び38μMのヒドロキノンを得た。
【0078】
各PEG化反応混合液は5μL Lamβ1925-933原液、1μL緩衝液、PEG試薬
溶液(PEG試薬対Lamβ1925-933型ペプチドのモル比率1:1に相当)2μL及び
脱イオン水2μLを含み、全反応容積を10μLとした。数秒間ボルテックス(vortex)した後、続けて簡潔な遠心分離(5,000×gで30秒)を行い、チューブの底に溶液を集め、この反応混合液を室温のまま0.25、0.5、1、2、4、16及び24時間インキュベートした。室温でのインキュベート後、反応混合液を含んでいるチューブを−80℃に置き、逆相クロマトグラフィーによって分析するまで保存した。
【0079】
逆相クロマトグラフィー分析では、Source 5RPC ST 4.6/150(
GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−5116−01)カラムを使用した。PC及びレオダイン7725iマニュアルインジェクターバルブ(Rheodyne 7725i manual injector valve)に接続するため、カラムをJasco PU−980 インテリジェントポンプ(Intelligent Pump)、Jasco LG−980−02 ターナリ―グラジエントユニット(Ternary Gradient Unit)、Jasco デガッシ ポピュライレ デガッシング ユニット(Degassys Populaire Degassing Unit)、Jasco UV−970 4−λ インテリジェント(Intelligent) UV ディテクター(Detector)、Jasco LC−NetII/ADC インターフェース(Interface)からなるJasco HPLCシステムに接続した。EZchrom SI バージョン3.2.1 ビルド3.2.1.34 クロマトグラフィーソフトウエアパッケージ(アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))を使用しながら、コンピュータによってHPLCシステムを制御した。クロマトグラム分析及びデータのエクスポートもまたEZchrom SIクロマトグラフィーデータシステムを使用しながら行った。
【0080】
3つの溶離液方式を使用した。溶離液Aは脱イオン水中に5%アセトニトリル(Far
UV、HPLCグレード、フィッシャー cat.no.A/0627/17)及び0.065%トリフルオロ酢酸(TFA)(アクロス(Acros)cat.no.139721000)を含む。溶離液Bはアセトニトリル中に0.075% TFAを含むが一方、溶離液Cは100%アセトニトリルである。溶離液を使用前に超音波処理によって脱気した。溶離プログラムは20分間の、0−64% B勾配を含み、続いて100%アセトニトリルで洗浄し、溶離液Aで前平衡(pre−equilibrate)した(表2)。実行中、一定の流速1mL/minを保持した。215、250、280及び350nmにおける吸光度を実行中記録した。各サンプル(10μL)を解凍し、上澄み5μLを逆相クロマトグラフィーカラムに注入する前に速やかに簡潔に遠心分離機にかけた(14,000gで1分)。
【0081】
【表2】
【0082】
クロマトグラムにおける各ピークの同定を標準試料(PEG試薬、還元及び酸化された未反応のペプチド)を実行すること及び(PEG化生成物:ペプチド−PEG接合体に関して)相対的な寸法推定に対する分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって確認した。分析用SECに用いられたカラムはBio−Sep−SEC−S3000(300×7.8mm)分析用カラム(フェノメネクス(Phenomenex),cat.no00H−2146−KO)であった。用いられた実行中の溶離液は10%(v/v)アセトニトリルを含んでいる10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)であり、流速は実行中2mL/minで一定に保った。
【0083】
図13に1モル当量の5kDa PEG試薬9を用いた、pH6.5における経時的PEG化実験のクロマトグラムを示す。室温で15分のインキュベーション後、5つのピー
クが現れた:PEG反応性ペプチドLamβ1925-933(ピーク1);ジスルフィド形成
を経て形成された未反応のペプチド二量体(ピーク2);PEG試薬9スルホン酸脱離基(ピーク3、図14中の化合物11);PEG化ペプチド生成物(5kDa PEG−Lamβ1925-933接合体)に相当するピーク(ピーク4)及びPEG試薬9(ピーク6、
未反応形態)。
【0084】
4時間のインキュベーション後、すべての遊離ペプチド(ピーク1)はPEG化が終了するにつれて消費された。一部の過剰ペプチドが未反応の二量体(ピーク2、PEG試薬は当量濃度においてペプチドより強く吸収することに留意する)を形成したので、やや過剰な活性PEG試薬ピーク(ピーク5、図14における化合物10)もまた存在する。酸化Lamβ1925-933(ピーク2)は遊離チオールを持たないので、PEG化されなかっ
た、それ故対応するピーク(ピーク2)は実験中、未変化のままであった。この結果は還元ペプチドを発生しながらシステインチオールPEG化と一致する。
【0085】
pH6.0とpH8.0間のLamβ1925-933に対するPEG試薬1の反応性をペプ
チド(ピーク1)から5kDa PEG化Lamβ1925-933生成物(ピーク4)への変
換を測定することによって推定した。ペプチドピーク結果を100の値を各PEG化反応に使用されたペプチドの全量に相当する較正されたピークエリアに割り当てることによって標準化した、一方生成物ピーク結果をペプチドの生成物への全変換に相当する推定される最大生成物ピークエリアを用いて標準化した。変換(%)を反応に用いられたペプチドの初期量と比較してPEG化ペプチドの割合として定義した。その結果を図15に示す。pH6.0、6.5、7.0、7.5及び8.0において、全てのペプチドがPEG化された。終了速度はpHによって左右され、より高いpH程より速い速度であり、異なったpHにおいて反応性構造10(図14)の形成の異なった速度を示す。
【0086】
実施例12:様々なpHでのPEG試薬9と商業的に入手可能なPEGマレイミドの反応性の比較
実施例11のLamβ1925-933ペプチドに対するPEG試薬9の反応性を商業的に入
手可能なチオール反応性PEG試薬、PEGマレイミド(O−(2−マレイミドエチル)−Ω’−メチル−ポリエチレングリコール5,000、フルカ(Fluka)cat.no.63187)と比較した。PEG試薬9が実験時間スケールにおいて反応に速やかに使用できるようにするため、試薬をpH7.5でインキュベートすること(2時間、4℃)によってチオール反応性形態(試薬10、図14)を最初に形成し、そして試薬10をペプチド接合する前にRPクロマトグラフィーにより単離した。全てのペプチド反応は新規に溶解したPEG試薬を用いて行った。一時的に、PEG化反応溶液(反応スケール10μL)は100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0−8.0)又は100mM炭酸―重炭酸ソーダ(pH8.5−10.0)及び1mM EDTA中で10μg Lamβ1925-933、PEG(5kDa)試薬50μg(PEG試薬対Lamβ1925-933型ペプチドのモル比率1:1に相当)を含んでいた。室温でのインキュベーション後、反応混合液を実施例11で述べたように逆相クロマトグラフィーによって分析した。その結果を図16に示す。PEG試薬9(pH9.0乃至10)及び10(pH6.0乃至8.0)に対し、ペプチドのPEG化形態への完全な変換は15分以内にpH6.0とpH10の間で達成された。
【0087】
PEGマレイミド試薬に対し、変換は15分後単に最大で78.9%に達するもののみであった。より高いpHにおいて、変換はさらに低かった(pH10で51.2)。pH8.5におけるPEGマレイミド反応を16時間後再びサンプル採取し、全てのペプチドは消費された。
【0088】
したがってテストされた全てのpH値において、PEG試薬9及び10はPEGマレイミド試薬より有効である。
【0089】
実施例13:PEG試薬9ペプチド接合体の安定性及びPEGマレイミド誘導ペプチド接合体の比較
PEG試薬9から製造された精製Lamβ1925-933ペプチド接合体及び実施例12か
らのPEGマレイミドの安定性を12日間以上比較した。接合体の安定性は実施例11で述べたように逆相クロマトグラフィーを用いてPEG−ペプチドピークの領域を測定することによって決定した。
PEG試薬9を用いたPEG化Lamβ1925-933の合成:接合体は実施例11の修正
法を用いて調製した(最終ペプチド濃度1.6mg/mL及びペプチド0.4mgを用いてpH6.0)。生成物をRP−クロマトグラフィーで単離した。Lamβ1925-933−
PEG接合体に相当する溶離ピークを集め、凍結乾燥しそしてその後脱イオン水中で再懸濁した。最終的に、2mM水素化ホウ素ナトリウム(アクロスオルガニクス(Acros
Organics),cat.no.200050250)を加え、サンプルを室温で30分間インキュベートした後、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加えた。
PEGマレイミドを用いたPEG化Lamβ1925-933の合成:Lamβ1925-933(0.4mg)を5kDa PEGマレイミド(5kDa、フルカ(Fluka)cat.no.63187)試薬と共にPEG化用に使用した。一時的に、10×緩衝原液(1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)及び10mM EDTAを含んでいる)20μL及びPEG試薬原液(脱イオン水中25mg/mL)40μLをペプチド原液(脱イオン水中2mg/mL)200μLに加えた。室温での1.5時間のインキュベーション後、生成物を実施例11で述べたようにRP−クロマトグラフィーを用いて精製した。溶離ピークサンプルを乾燥凍結し、そしてその次に脱イオン水で再懸濁しその後50mMのリン酸ナトリウム緩衝液をpHを8.0に調節するために加えた。両方のPEG−ペプチド溶液の濃度がおおよそ等しいことを確認するためにRP−クロマトグラフィーを使用した。
【0090】
両方の安定性サンプルを室温でインキュベートした。12日後、サンプルを分析用RPCによって分析し、安定性を図17に示されるように接合体ピークに対する積分領域の変化によって決定した。PEG試薬9から誘導された接合体は12日以上安定した状態を保っていた。PEGマレイミドから誘導された接合体に対し、たったの63%がクロマトグラム中にとどまり、このことはPEG試薬9はより安定した生成物をもたらすことを示す。
【0091】
実施例14:両末端で官能化されたPEGを使用したPEG化−PEG試薬12
【化2】
PEG試薬12をO,O’−ビス(2−アミノエチル)ポリエチレングリコール6000(フルカ(Fluka)cat.no.14504)を使用してPEG試薬9と同様に調製し、実施例11(Lamβ1925-933)からのモデルペプチドと反応させた。水(6
μL)、10×緩衝原液(1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、381μMヒドロキノン及び10mM EDTAを含んでいる)2μL及びPEG試薬12(25mg/mL)2μLをLamβ1925-933原液(脱イオン水中2mg/mL)10μLに加えた
。これは1:0.375モデルペプチド対PEG試薬のモル比率に相当する。反応溶液(5μL)を室温で2.5時間インキュベーションした後に(実施例11で述べたように)分析用RPCによって分析した。反応溶液の全ての成分が別個のピークとして溶出した:Lamβ1925-933単量体は8.1分で溶出した、酸化Lamβ1925-933二量体は8.9分で溶出した、不活性PEG試薬は17.3分で溶出した、活性PEG試薬は15.7分で溶出しそして脱離基11は10.1分であった。生成物ピークは14.2分で溶出した。2.5時間後、反応溶液中に存在(試薬12に対する86%反応)する遊離Lamβ1925-933の65%は接合され、PEG試薬12の両方の反応性末端が反応すること及びこ
の二官能性試薬はPEG分子の両末端で1つのペプチド分子に付着するのにうまく使用され得ることを示す。
【0092】
実施例15:ポリマー成分としてのポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)(PVP)の使用:Lamβ1925-933モデルペプチドを用いたPVPの接合
PVP試薬の調製(3工程):
工程1:末端アミノ基を有するPVP:
圧力管にシステアミン(0.028g)、ジオキサン(8mL)及びマグネチック撹拌子を入れた。溶液を形成するために穏やかな加熱後、この溶液をアルゴンと共に5分間室温でパージした。パージしながら、1−ビニル−2−ピロリドン(2.0g)をその後加え、さらに5分後次にこれに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を加えた(0.089g)。さらに2分後、圧力管をアルゴン雰囲気下スクリューキャップで封をし、撹拌しながら17時間60℃のオイルバス中に置いた。管及び内容物を室温まで冷却した後、ポリマー生成物の沈殿物を得るためにジエチルエーテル(15mL)を加えた。液相をデカントし固形残渣をアセトン(3mL)に再溶解した。得られたアセトン溶液をその後迅速に撹拌されているジエチルエーテル(25mL)に滴下し沈殿物を真空のほんの僅かなバーストと共にno.2 焼結ガラス漏斗で単離した。固形物を未乾燥のジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、その後室温で真空下乾燥させた(質量=1.44g、白色の固体)。
工程2:PVP−アミンへのタンパク質反応末端基の接合:
PVP−アミン(500mg)、4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸(図3中の構造6、166mg)、及び4−ジメチルアミノピリジン(6mg)をアルゴン雰囲気下、無水ジクロロメタン(10mL)で混合し、その後撹拌しながら、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(155μL)を加えた。得られた混合物を室温で週末を通して撹拌した。週末の間揮発性物質は蒸発したので、固形残渣をジクロロメタン(10mL)中に再溶解し、そして非吸収性コットン−ウールを通してろ過した。その後ろ液にジエチルエーテル(30mL)を加え、得られた沈殿物を遠心分離(4,600rpm、−9℃、10分)によって単離した。液相をデカントし、残りの残渣をジクロロメタン(10mL)中に再溶解した。ジエチルエーテル沈殿精製方法を2回以上繰り返し、残渣を真空下乾燥させた(513mg)。リンカー基を接合させたPVPに対する特徴的なNMRシグナルはCDCl3において7.97、7.82、7.59及び7.38に現れた。
工程3:PVP試薬の分別:
上述の段階で得られた固形物の一部(120mg)を水溶性の20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM NaCl、pH 4.0で混合し、その後澄明な液が可視的になるまで13,000rpmで遠心分離機にかけ、そして液相0.45μmをろ過した。ろ液をその後溶出ピークの間1分ごとに留分を集めることにより1mL/minにおいて20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM、pH4.0を稼動させながら、HiLoad 16/60 Superdex 200 prep grade size exclusion column(GEヘルスケア(GE Healthcare))で分別した(1.9mL加えた)。73.9乃至74.9分の間に溶出している画分を凍結乾燥後にタンパク質接合用に使用した。ペプチド反応を1mM EDTA、38μMヒドロキノン、1.03mM Lamβ1925-933及び過剰のPVP試薬を含んでいる100mMリン
酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中で行った。反応混合液を実施例11で述べたように分析用RPCによって分析した。室温での1時間のインキュベーション後、反応混合液中に存在する遊離Lamβ1925-933モデルペプチドのおよそ60%がLamβ1925-933−PVP接合体(11.3分のRPC保持時間)に変換され、これはPEG以外のポリマーが使用され得ることをうまく証明している。
【0093】
実施例16:アミン性脱離基Lを有するPEG試薬の合成及び使用
【化3】
PEG試薬13の合成:PEG試薬13(図19)は実施例1と類似した操作でDIPC(11mg)を使用しながらDMSO(5mL)中で5kDa mPEG−NH2と化合物2(26mg)の直接的な接合により調製し、灰色がかった白色の固形物(31mg)を得た。(CDCl3における)この生成物のNMRスペクトルは8.02及び7.5
9に特徴的なシグナルがあった。
実施例11のLamβ1925-933モデルペプチドとの反応:反応を1mM EDTA、
38μMヒドロキノン、1.03mM Lamβ1925-933及び3モル当量のPEG試薬
13を含んでいる100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中で行った。反応混合液を実施例11で述べたように分析用RPCによって分析した。単量体Lamβ1925-933は8.1分で溶出し、二量化Lamβ1925-933は8.9分で溶出し、アミン脱離基は9.3分で溶出し、アミン脱離基を有さないPEG試薬13は15.2分、PEG試薬13は15.75分、そして生成物のピークは14.2分であった。室温での1時間のインキュベーション後、反応混合液中に存在する遊離Lamβ1925-933モデルペプチドのお
よそ10%がLamβ1925-933−PEG接合体に変換した。
【0094】
実施例17:PEG試薬9を使用したIL−1−RaのチオールPEG化及び活性
ヒトインターロイキン−1−レセプターアンタゴニスト(IL−1−Ra)の組み換え非グルコシル化形態をモデルタンパク質として使用した。IL−1−Raは153アミノ酸、2つのジスルフィド結合(Cys69/Cys116及びCys66/Cys122)からなり、17.3kDaの分子量を有しそしてN−末端のヘキサヒスチジンタグを含む。
一連のチオールPEG化は50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0及び7.5)中で1−4モル当量の10kDa PEG試薬9を使用して行った。発現されたタンパク質は還元したので、PEG化前にジスルフィドの還元は必要ではなかった。タンパク質濃度は0.1mg/mLであった。4℃での1時間のインキュベーション後、サンプルをSDS−PAGE分析し、その結果を図18に示した。pH6.0のみならず7.5においても、1モル当量のPEG試薬を使用した場合、PEG化反応の主な生成物はモノ−PEG化IL−1−Raであった。ジ−PEG化生成物に相当するかすかなバンドもまた見られ、同様に未PEG化IL1−Raに相当するバンドも見られた。反応に使用されたPEGのモル当量を増加させるとジ−、トリ−及びテトラ−PEG化された種が増加した。pH6.0でのより大きなスケールのPEG化をその後20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸ナトリム緩衝液pH6.0中でIR−1−Ra(0.2mg/mL)1.5mg及び1.5モル当量の20kDa PEG試薬9を使用して行った。溶液を少しの間ボルテックス(vortex)し、2時間4℃で置いた。PEG化IL−1−Raを固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。IMAC前に、アミコウルトラ−4(Amicon ultra−4) 3,000Da MWCO 限外ろ過遠心装置(ultrafiltration
centrifugal device)(ミリポア(Millipore)、cat.no.UFC800324)を使用しながら、EDTAを未乾燥のリン酸緩衝液pH7.4を用いて濃縮と希釈の繰り返しサイクルによって取り除いた。最終的に、サンプルを4mLに濃縮し室温で30分間、2mMホウ化水素ナトリウムで処理し、続けてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で前平衡(pre−equilibrate)させたHisTrap HP(1mL)カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−5247−01)に投入した。カラムを20mL PBSで洗浄し、溶離は40分かけてPBSを500mMイミダゾールを含んでいるPBSにする勾配を含む。溶出液の画分(1mL)を集め、各画分のアリコートをSDS−PAGEによって分析して、PEG化生成物を含んでいる画分を特定した。その後、PEG化生成物を含んでいる画分を溜めて限外ろ過(Amicon ultra−4 3,000Da MWCO)によって最終容積0.6mLに濃縮した。濃縮されたIMAC画分をPBS pH7.4で前平衡(pre−equilibrate)させたHiLoad Superdex 200 16/60カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare),cat.no.17−1069−01)に投入した。流速は実行中1mL/minに保ち、モノ−PEG化生成物は約62分で溶出した。画分(1mL)を溶出ピーク周辺で集め、各画分のアリコートをSDS−PAGEによって分析した。純粋なモノ−PEG化生成
物を含んでいる画分を限外ろ過によって濃縮しそしてSDS−PAGEによって再分析して、純度を確認した。その結果を図19のレーン2に示した。ゲルはモノ−PEG化タンパク質に相当する単一のバンドを示し、遊離タンパク質は可視的ではなかった。
【0095】
紫外分光光度法によって定量化した後、MG−63細胞中のIL−1β−依存的IL−6放出(IL−1β−dependent IL−6 release)の抑制を評価することによってインビトロ生物活性に関してサンプルを分析した。MG−63細胞をDMEM/10% FCS 100μL中20,000 cells/wellで加えた。次の日に、媒体を取り除き未乾燥の媒体50μL/wellを加えた。サンプルを5倍希釈で2サンプル(25μL/well)に加え、1時間予備インキュベートし、その後IL−1βを最終濃度0.3ng/mL(25μL/mL)で加えた。プレートをさらに24時間インキュベートした。細胞の生存可能性を評価するために、10μLのチアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT;DMEM中5mg/mL;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)cat no.M5655)を各穴に加え、3時間インキュベートした。プレートをその後5分間1,500gで遠心分離機にかけ、媒体を注意深く吸引した。代謝的に活発な細胞中のホルマザン生成物をその後DMSO(100μL/well)で溶解し570nmでの吸光度を測定した。その結果を図20に示し、試薬9を用いたPEG化後のPEG化IL−1Raは阻害活性を保持することを示す。
【0096】
実施例18:PEG試薬9を使用したIL−1Raのポリヒスチジン配列上のPEG化、及びPEG化タンパク質の活性
以下のようなPEG化反応前に硫酸銅を用いてタンパク質遊離システインを酸化してジスルフィドにした後、実施例17のIL−1Raをポリヒスチジンタグ上でPEG化した;硫酸銅(1mM)を200mM NaClを含んでいる50mM Tris・HCl(pH8.0)においてIL−1Ra(0.6mg/mL、1.5mg IL−1−Ra)の2.5mL溶液に加えた。4℃で16時間のインキュベーション後、25mM EDTAを加え、サンプルを20mM EDTAを含んでいる50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5で前平衡(pre−equilibrate)されたPD−10カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))に投入した。カラムをその後未乾燥のリン酸緩衝液3.5μLで溶出した。PEG化に使用されたタンパク質濃度は0.43mg/mL及びpH7.4でありそして4℃で16時間インキュベートした。PEG試薬9(20kDa)はタンパク質に対して1.5モル当量である。反応は4℃で16時間インキュベートした。モノPEG化種をホウ化水素ナトリウム処理と共に実施例17で述べたように同じクロマトグラフィーを使用しながら単離した。生成物のSDS−PAGE結果を図19のレーン2に示した、レーン2には遊離タンパク質は見ることができなかった。生成物の生物活性は実施例17で述べたようにMG−63細胞中のIL−1β−依存的IL−6放出の抑制を測定することによって評価し、その結果を図20に示した。PEG化IL−1Raは分析結果において阻害活性を有していた。
【0097】
実施例19:PEG試薬合成:10kDa PEG試薬15の合成
PEG化4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸試薬15を図21に示されているように、実施例1中のPEG化4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸9の合成で記載されたのと類似の方法で4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸14から調製した。最初に、4−(3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパノイル)安息香酸14を4−(3−トシルプロパノイル)安息香酸と類似の方法で4−メチルベンゼンチオールの替わりにメルカプトエタノールを使用して調製した(工程2、実施例1)。
NMR 14(400MHz)δ3.35(t,2H,COCH2),3.5(重なり
m,4H,CH2SO2CH2),3.8(t,2H,CH2OH),5.2(br s,CH2OH),8.05(m,4H,芳香族CH),13.4(br s,1H,COO
H)。
PEG接合工程に対し、スルホン14(143mg)及びO−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(MW 10kDa,1g,バイオべクトラ(BioVectra))を乾燥トルエン(5mL)に溶解した。溶媒を加熱しないで真空下で取り除き、乾燥固形残渣をその後アルゴン雰囲気下、乾燥ジクロロメタン(10mL)に再溶解した。氷浴で冷却した、得られた溶液にアルゴン雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド(DIPC,87mg)をゆっくりと加えた。反応混合液をその後一晩(15時間)、室温で撹拌し続けた。揮発性物質をその後真空下(30℃、水浴)で取り除いて、アセトン中(45mL)で微温(35℃)で再溶解させた固形残渣を得た。溶液を非吸収性コットンウールでろ過して不溶性物質を取り除いた。この溶液をその後、ドライアイス浴で冷却して、遠心分離(4600rpm、30分間)により分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後、得られた灰色がかった白色の固体を真空下で乾燥して、PEG試薬15(1g)を得た。
1H NMR(400 MHz、CDCl3)δ3.30(t,2H,COCH2),δ
3.40(s,3H,PEG−OCH3),δ3.40−3.85(br m,PEG)
,δ3.50(重なり m,2×2H,CH2SO2CH2),δ3.80(t,2H,C
H2OH),δ7.95,δ8.05(2×d,2×2H,カルボン酸部位のArH)。
【0098】
異なったPEG分子量の類似したPEG試薬を同じ基本操作によって調製した。それ故、5kDa PEGを乾燥ジクロロメタン(15mL)においてスルホン14(256mg)、O−(2−アミノエチル)−O’−メチル−PEG(5kDa,1g,バイオべクトラ(BioVectra))及びDIPC(174mg)の反応によって調製し、アセトン沈殿精製操作後灰色がかった白色の固体15(1g)を得た。
【0099】
実施例20:PEG試薬合成:10 kDa PEG試薬17の合成
PEG試薬17を次のようにPEG試薬9から調製した(図22):PEG試薬9(10kDa,75mg)をおよそ18時間、脱イオン水中でメルカプトコハク酸(6mg)及び炭酸水素ナトリウム(20mg)と一緒にかき混ぜた。揮発性物質をその後ロータリーエバポレーターで取り除き、非吸収性コットン−ウールを通してろ過により取り除いた不溶物と共に固形残渣を温めたアセトン(4mL)に再溶解した。その後溶液をドライアイス浴で冷却することによって生成物をアセトンから沈殿させ、そして液相をデカントすることによって単離し続いて遠心分離した。アセトン沈殿物をさらに3回繰り返し、固形物をその後真空下で乾燥して16(51mg)を得た。化合物16をおよそ18時間、1:1 メタノール:水(1mL)中でオキソンと混合することによってその後スルホン形態17に酸化した。この混合液をアセトン(10mL)で希釈し、不溶物をその後非吸収性コットン−ウールを通して重力ろ過によって取り除いた。均一なろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固しそして添加された1NHCl 2滴を含むアセトン(2mL)に再溶解し、その後16( mg)に対して述べられたように同一のアセトン沈殿によって単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.24−3.08(重なり m,CH2
CH、COCH2),3.38(s、PEG−OCH3),3.44−3.84(br s,重なり m,PEG & CH2SO2),4.44(dd,SO2CH),7.45(
br s,NH),7.98 & 8.06(2×d,4H,カルボン酸部位のArH)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と反応させることを含む方法。
【請求項2】
前記Qは直接結合、アルキレン基又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rはハロゲン原子又はアルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−O−基及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Qは随意に置換されたヘテロアリール基又はアリール基であって、−NR.CO−基によって隣接した前記ポリマーXが終端されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項5】
前記Xはポリアルキレングリコールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Xはポリエチレングリコールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記nは0である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式Vで表される化合物は、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基を表す。)である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項9】
前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Arはフェニル基を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分子はペプチド又はタンパク質である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項12】
一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
mは1乃至8の整数を表し;そして
Arは未置換の又は置換されたアリール基を表す。)で表される化合物。
【請求項13】
前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記Arはフェニル基を表す、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記Xはポリアルキレングリコールである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記Xはポリエチレングリコールである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記nは0である、請求項12乃至請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記Wはケト基を表す、請求項12乃至請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
式:
【化1】
で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項1】
ポリマーにチオール基又はアミノ基を含んでいる分子を接合する方法であって、
該分子を一般式:
X−[Q−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (V)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Qは連結基を表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;そして
mは1乃至8の整数を表す。)で表される化合物と反応させることを含む方法。
【請求項2】
前記Qは直接結合、アルキレン基又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基であって、これらのうちどれでも1つ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(Rはハロゲン原子又はアルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)、ケト基、−O−CO−基、−CO−O−基及び/又は−NR.CO−基によって終端又は中断され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Qは随意に置換されたヘテロアリール基又はアリール基であって、−NR.CO−基によって隣接した前記ポリマーXが終端されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項5】
前記Xはポリアルキレングリコールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Xはポリエチレングリコールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記nは0である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式Vで表される化合物は、一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Arは未置換の又は置換アリール基を表す。)である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項9】
前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Arはフェニル基を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分子はペプチド又はタンパク質である、前記いずれかの請求項のうち1項に記載の方法。
【請求項12】
一般式:
X−[NH−CO−Ar−W−(CH=CH)n−CH=CH2]m (Va)
(式中、
Xはポリマーを表し;
Wはケト基又はエステル基−O−CO−を表し;
nは0又は1乃至4の整数を表し;
mは1乃至8の整数を表し;そして
Arは未置換の又は置換されたアリール基を表す。)で表される化合物。
【請求項13】
前記Arはアルキル基、−CN、−NO2、−CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR.CO2R、−NO、−NHOH、−NR.OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR.COR、−N+R3、−N+H3、−N+HR2、−N+H2R、ハロゲン原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(各Rは独立してハロゲン原子又アルキル基、アリール基又はアルキル−アリール基を表す。)から選ばれる1つ以上の同一又は異なった置換基によって随意に置換されたフェニル基を表す、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記Arはフェニル基を表す、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記Xはポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、多糖、又はタンパク質である、請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記Xはポリアルキレングリコールである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記Xはポリエチレングリコールである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記nは0である、請求項12乃至請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記Wはケト基を表す、請求項12乃至請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
式:
【化1】
で表される、請求項12に記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−252167(P2011−252167A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180530(P2011−180530)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2011−519228(P2011−519228)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(510099774)ポリテリクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2011−519228(P2011−519228)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(510099774)ポリテリクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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