説明

生体情報取得用クリップ

【課題】生体に取り付けられる接触電極への着脱が容易であるとともに、電気的な安全性を確保して、心電図などの生体情報を正確に検出すること。
【解決手段】クリップ部110では、対向する第1挟持片122及び第2挟持片132によって、生体に取り付けられる電極の突起状の端子部46を挟持する。第1挟持片122及び第2挟持片132の少なくとも一方に設けられたコンタクト150に、端子部46を電気的に接続する。クリップ部110の上方に、信号導電体150である板状コンタクト152、154と離間して設けられ、クリップ部110を遮蔽する面状の導電部材180を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の胸部等に取り付けられた接触電極に突起状に形成された電極端子部を左右の挟持片で把持して、接触電極から得られる生体情報を心電計や生体情報モニタ等の生体情報取得装置に誘導する生体情報取得用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不整脈や虚血性心疾患などの心電図異常を調べるために、心電図検査が行われている。心電図検査では、被検者の両手首、両足首および胸部に電極を取付け、これらの電極で心臓の活動により発生する微小な起電力を検出し、検出した起電力の電位差を利用して心電図波形を取得する。
【0003】
胸部から微小の起電力を検出する場合、例えば、特許文献1に示すように、胸部に、面状の接触電極を取り付ける。そして、この面状の接触電極において外面から突出する電極端子部に、心電計から導出されるケーブルの先端に設けられた電極用クリップまたは電極用ホックを接続することによって、接触電極で検出した起電力の情報は心電計に入力される。
【0004】
電極用クリップは、先端部の半円筒状部が、それぞれ左右に開閉自在となるように結合され、かつ、バネにより閉方向に付勢された一対のクリップ部材を備える。半円筒状部には、下部側に、くの字に切り欠かれた金属板からなるコンタクトが設けられている。一対のクリップ部材では、それぞれの後端側に設けた摘み部を近接させることで、先端部の半円筒状部は開き、これら半円筒状部のコンタクトで電極端子部を挟むことで、接触電極に接続される。つまり、小さい力でコンタクトを開くことができるとともに、閉じる際には、バネによる力で電極端子部を強固に挟持できる。これにより、接触電極とクリップの着脱を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−10138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、胸部に取り付けられる接触電極は、生体と導電的に接触しているため、何らかの原因で周囲の電気器具などと接触した場合に、これらとの間で電気的な導通路が形成されてしまうようなことを極力避けることが望ましい。導通路が形成されてもほとんどの場合、危険な電流が流れることは先ずないが、万が一、アース端子や電気コンセントの端子などと接触した場合には不要な電流が流れることもありうる。
【0007】
これに対し、従来の電極用クリップにおいては、電極端子部を挟持するコンタクトは、上方で露出しているため、この露出したコンタクトの一部またはコンタクトに挟まれた電極端子部の先端部が周囲の電気器具の一部、特に、アース端子や電気コンセントに接触する可能性も万が一にも考えられ、厳密な意味での安全性に問題があった。
【0008】
また、コンタクト及び電極端子部が露出しているため、心電図検査を行う部屋の蛍光灯、衣服のこすれ等による静電気、水滴の付着、或いは埃などの付着によるノイズを受けやすく、検出した信号に不要な信号が加わって、正確な心電図信号を取得できないという問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、生体に取り付けられる接触電極への着脱が容易であるとともに、電気的な安全性を確保して、心電図などの生体情報をノイズの影響を受けにくく正確に検出できる生体情報取得用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生体情報取得用クリップの一つの態様は、対向する第1挟持片及び第2挟持片を有し、これら第1挟持片及び第2挟持片によって、生体に取り付けられる電極の突起状の端子部を挟持して、前記第1挟持片及び第2挟持片の少なくとも一方に設けられた信号導電体に前記端子部を電気的に接続するクリップ部と、前記クリップ部の上方に、前記信号導電体と離間して設けられ、前記クリップ部を遮蔽する面状の導電部材と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体に取り付けられる接触電極への着脱が容易であるとともに、電気的な安全性を確保して、心電図などの生体情報をノイズの影響を受けにくく正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップと接触電極を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの平面図
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの底面図
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの左側面図
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの要部構成を示す図2のA−A線矢視断面図
【図6】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの要部構成を示す図2のB−B線矢視断面図
【図7】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップのクリップ部を開いた状態を示す平面図
【図8】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップが固定されるケーブルの断面図
【図9】本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報取得用クリップ100と、生体情報取得用クリップ100が接続される接触電極40を示す図である。
【0015】
図1に示す生体情報取得用クリップ100は、例えば、心電計などの生体情報取得装置に接続されたケーブル30の先端部31に固定されており、接触電極40に着脱自在に接続される。
【0016】
通常、接触電極40は、生体(ここでは被検者の胸部の皮膚)に直接取り付けて使用される。このため、本実施の形態で使用される接触電極40として、使い捨て電極が用いられている。これにより、接触電極40自体を再使用することがなく、他被検者への感染を防いだり、被検者に衛生面での安心感を与え、不安感を払拭したりしている。
【0017】
接触電極40は、薄いシート状のベースパット42における一方の面にやわらかな導電パット44を設け、また他方の面に、突起状の端子部46を設けた構造とする。更に生体への導電的な接触を簡単に行えるように、ベースパット42の一方の面(裏面)42aは粘着性を有している。
【0018】
使用前にはベースパット42の粘着面である裏面42aに、取り外し自在なテープが貼着されている。端子部46は、導電パット44から突出して設けられ、ベースパット42の他方の面(表面)42bを挿通して外部に露出している。この端子部46は、生体情報取得用クリップ100等の接続具により挟持される頸部46aと、頸部46aの先端に形成され、頸部46aの外径よりも大きい外径の頭部46bと、を備える。
【0019】
このように構成された接触電極40を使用するときには、ベースパット42の裏面42aのテープをはがして、ベースパット42の粘着面(裏面42a)を皮膚に当接して接着させる。この接着により、導電パット44も皮膚面に当接し、測定部位からの電気パルスを導電パット44で検出する。電気パルスは、導電パット44、端子部46、生体情報取得用クリップ100、ケーブル30を介して心電計等の生体情報取得装置へ送られ、表示等がなされる。波形解析等も行われる。
【0020】
生体情報取得用クリップ100は、端子部46を挟持するクリップ部110と、クリップ部110を上方から被覆して、心電図検査を行う部屋の蛍光灯、衣服のこすれ等による静電気等の外部からの電気的なノイズを遮蔽する導電部材180とを有する。
【0021】
図2〜図7は、本実施の形態に係る生体情報取得用クリップ100の構成を示す図である。
【0022】
図2〜図7に示すように、生体情報取得用クリップ100は、ケーブル30の先端部31に固定されている。
【0023】
生体情報取得用クリップ100は、繋ぎ部101で互いに結合された第1挟持部材120及び第2挟持部材130を備える。これら第1挟持部材120及び第2挟持部材130は、繋ぎ部101より前方に突出し、互いに対向する第1挟持片122及び第2挟持片132と、繋ぎ部101よりも後方に突出し、外側面に窪みが形成された摘み部124、134とを備える。加えて、摘み部124、134間には、第1挟持片122及び第2挟持片132がそれぞれ互いに接触する方向、つまり、閉じる方向に付勢する付勢部材(圧縮コイルバネ)140が介設されている。
【0024】
第1挟持部材120及び第2挟持部材130は繋ぎ部101とともにここでは絶縁性を有する材料、例えば、プラスチックなどの合成樹脂或いは絶縁性を備える硬質樹脂により形成されている。第1挟持部材120及び第2挟持部材130は、通常時では、摘み部124、134は左右方向に離間して配置されており、第1挟持片122及び第2挟持片132は、互い当接した状態となっている。そして、第1挟持部材120及び第2挟持部材130では、付勢部材140の付勢力に抗して、互いの摘み部124、134を接近させる方向、つまり、実線Cで示す矢印方向(図3参照)に移動させることで、これらに直結した第1挟持片122及び第2挟持片132が左右に開く(矢印D方向に開く)。
【0025】
第1挟持片122及び第2挟持片132は、図1に示す接触電極40の突起状の端子部46を挟持するものである。これら第1挟持片122及び第2挟持片132の少なくとも一方は、第1挟持片122及び第2挟持片132が端子部46を挟持した際に、この端子部46に接触し、端子部46からの信号を誘導する信号導電体(ここでは板状の信号導電板)150を備える。
【0026】
ここでは、信号導電体150は、それぞれ平面視して中央をV字状に切り欠かれた金属製の板状コンタクト152、154からなる(図3及び図4参照)。信号導電体150(板状コンタクト152、154)は、図2、図3及び図6に示すように、V字状の切欠部152a、154aを水平方向で対向するようにして、半円弧状に形成された第1挟持片122と第2挟持片132のそれぞれの下部に取り付けられている。
【0027】
この構成により、第1挟持片122及び第2挟持片132が端子部46を挟持する際には、それぞれの板状コンタクト152、154におけるV字状の切欠部152a、154a同士で端子部46の頸部46aを挟み、当該頸部46aに接触する(図6参照)。
【0028】
図2、図6に示すように、板状コンタクト152、154の少なくとも一方(ここでは板状コンタクト152)は、ケーブル30の芯線である信号線32に接続されている。
【0029】
第1挟持片122、第2挟持片132及び信号導電体150(板状コンタクト152、154)によりクリップ部110(図1参照)を構成する。そして、このクリップ部110の上方に、導電部材180が、板状コンタクト(信号導電体150)152、154と離間して設けられている。
【0030】
導電部材180は、クリップ部110を上方で覆うものであり、ここでは、伸縮自在な導電性を有するシート材(導電シート)或いは導電フィルムにより形成されている。導電部材180は、ゴムなど伸縮性を有し、且つ導電性を有する材料により構成され、ここでは、図2に示すように、平面視、半楕円状をなしている。なお、導電部材180は、クリップ部110を覆う形状であれば、どのような形状でもよく、平面視、扇状としてもよい。
【0031】
また、導電部材180は、インサート成形或いは二重成型によって、クリップ部110の上部で、且つ、クリップ部110の一部としての第1挟持部材120及び第2挟持部材130に埋め込まれており、第1挟持部材120及び第2挟持部材130に一体的に形成されている。
【0032】
このように伸縮自在の導電シートからなる導電部材180は伸縮するため、図7に示すように、第1挟持片122及び第2挟持片132が、互いに離間した場合、つまり、両者が開いた場合でも、この状態の形状に対応して伸縮する。よって、導電部材180自体は、第1挟持片122及び第2挟持片132の開閉の妨げになることなく、クリップ部110内における板状コンタクト152、154並びに端子部46と、外部(生体と反対側の外部)とを電気的に遮蔽できる。
【0033】
また、導電部材180は、インサート成形或いは二重成形によって生体情報取得用クリップ100に設けられている。ここでは、導電部材180は、クリップ部110に一体的に形成されている。導電部材180の上面は、第1挟持片122及び第2挟持片132を形成する材料よりも弾性変形して伸縮しやすい材料によって被覆されており、生体情報取得用クリップ100が端子部46に取り付けられた状態では、導電部材180は外部に露出しない。この導電部材180は、ケーブル30のシールド線36に接続されている。
【0034】
ここで、ケーブル30の構成を示す。
【0035】
図8にケーブル30の断面図を示す。生体情報取得用クリップ100が固定されるケーブル30は、図8に示すように、ここでは、中央に信号線32が配設され、この信号線32を絶縁被覆材34で被覆し、この絶縁被覆材34の外周に、導電性を有するシールド線36が配設されている。更にシールド線36は、ケーブル30の外皮となる外部絶縁被覆材38により被覆されている。
【0036】
このケーブル30の信号線32は、図2に示すように、生体情報取得用クリップ100内に、第1挟持部材120の後端部、つまり、摘み部124の後端面から摘み部124内に配設されている。このように摘み部124内に配置されている信号線32は、第1挟持部材120(摘み部124)の内部を挿通して、第1挟持部材120の先端部(第1挟持片122)の板状コンタクト152に接合されている(図6参照)。
【0037】
一方、シールド線36は、図2及び図5に示すように、生体情報取得用クリップ100内に、第2挟持部材130の後端部、つまり、摘み部134の後端面から摘み部134内に配設されている。このように摘み部134内に配設されているシールド線36は、第2挟持片132側から、導電部材180に接合されている。
【0038】
このように信号線32は、第1挟持部材120側で生体情報取得用クリップ100内から導出され、シールド線36は、第2挟持部材130側で生体情報取得用クリップ100内から導出されている。このため、ケーブル30の信号線32及びシールド線36は、全く別の経路で、板状コンタクト152、154及び導電部材180に接続されており、信号線32が、シールド線36に接続されることがない。
【0039】
本実施の形態の生体情報取得用クリップ100を用いる際には、先ず、接触電極40を(生体、ここでは被検者の皮膚)に当接させる。
【0040】
一方生体情報取得用クリップ100では、付勢部材140の付勢力に抗して互いを接近させる方向(図3に示す矢印C方向)に移動させて保持する。これにより、第1挟持片122及び第2挟持片132は、繋ぎ部101を中心に互いに離間する方向(図3に示す矢印D方向)に回動して、クリップ部110は開状態となる。そして、第1挟持片122及び第2挟持片132の間に接触電極40の端子部46を位置させて、摘み部124、134の保持を解除する。すると、付勢部材140の付勢力により、摘み部124、134は常態に戻る方向(矢印F方向)に移動して、これに伴い、第1挟持片122及び第2挟持片132は互いに接近する方向(図3に示す矢印E方向)に移動する。
【0041】
これにより、端子部46は、それぞれの板状コンタクト152、154を介して、第1挟持片122及び第2挟持片132によって挟持された状態となり、端子部46と板状コンタクト152、154とが電気的に接続する。このとき、板状コンタクト152、154は、V字状の切欠部152a、154a間で端子部46の頸部46aを挟み込んだ状態となり、板状コンタクト152、154に頭部46bが掛止された状態となる。これにより、板状コンタクト152、154から端子部46が抜けない状態で、互いに電気的に接続される。
【0042】
また、クリップ部110内で、板状コンタクト152、154と端子部46とが接続され、この接続部分は、クリップ部110の上部で、クリップ部110を覆う導電部材180によって被覆されている。
【0043】
これにより、接触電極40(図1参照)の端子部46からの電気パルスは、導電部材180により遮蔽された板状コンタクト152、154を介して信号線32に出力される。この信号線32は、ケーブル30の先端部31における分岐ケーブル31a(図2参照)では外部絶縁被覆材39aにより被覆され、ケーブル30内では絶縁被覆材34(図8参照)により被覆されている。この信号線32を介して端子部46からの電気パルスは、生体情報取得装置などに誘導される。なお、ケーブル30の先端部31において、分岐ケーブル31a(図2参照)とともに分岐する分岐ケーブル31b(図2参照)は、外部絶縁被覆材39bでシールド線36を被覆して構成される。
【0044】
このように生体情報取得用クリップ100では、接触電極40(詳細には、接触電極40の端子部46)と接続するクリップ部110の板状コンタクト152、124が、導電部材180により被覆される。これにより、板状コンタクト152、124と接触電極40との接続部分は外部に露出することがないため、周囲の電気器具などに接触しない。
【0045】
また、この接続部分が、導電部材180により覆われるため、周囲の電気器具の静電気による接続部分へのノイズを遮蔽できる。よって、生体情報取得用クリップ100を用いて心電図検査を行う場合、心電図検査を行う部屋の蛍光灯や商用電源に起因するノイズ、衣服のこすれ等による静電気、水滴の付着、或いは埃などの付着によるノイズを受けることもなく、検出した信号を、正確にケーブルに出力して、正確な心電図信号を取得させることができる。
【0046】
また、生体情報取得用クリップ100は、左右に開閉する第1挟持片122と第2挟持片132に信号導電体150である板状コンタクト152、154を備えるクリップ部110の上部にシート状の導電部材180を配置し、この導電部材180によって、クリップ部110を覆う構成である。このため、生体情報取得用クリップ100は、接触電極40に対する上下方向の厚みを極力薄くして外部ノイズを受けにくい構成を実現できる。
【0047】
さらに、生体情報取得用クリップ100は、クリップ部110において第1挟持片122及び第2挟持片132で接触電極40の端子部46を挟むことで前記接触電極40に接続する構成であるため、その着脱が容易に行うことができる。これにより、接触電極40の端子部46に圧入によって接続する従来の圧入式の電極接続部(例えば、特開2003−10138号公報に示すホック式電極等)と異なり、接触電極40に対して着脱する際に患者に不快感を与えることがない。従来の圧入式の電極接続部では、接触電極に圧入にして取り付ける際に、接触電極40を介して患者の皮膚を押し付けたり、圧入方向とは逆方向に電極接続部を移動して接触電極から取り外すため、接触電極40を介して皮膚を引っ張ったりすることがある。
【0048】
なお、本実施の形態では、クリップ部110の上部に、伸縮自在の導電シートによりなる導電部材180をクリップ部110と一体的に設けた構成としたが、これに限らない。つまり、クリップ部110において、挟持により接触電極40と板状コンタクト152、154との接続部分の上方に、クリップ部110を覆うように外部からのノイズを遮蔽する導電部材180を設けていれば、どのように構成されてもよい。また、導電部材180は、クリップ部110と端子部46との接続部分を露出可能にクリップ部110に対して設けられても良い。例えば、導電部材180は、クリップ部110の上方で、接続部分を上方で覆う位置から水平方向に回転自在に配設されたり、同位置からスライド移動自在に配設されたり、クリップ部110に対して上下方向に開閉する蓋状に取り付けたりした構成にしてもよい。
【0049】
ここで、生体情報取得用クリップの変形例を図9に示す。なお、この生体情報取得用クリップは、図1に示す生体情報取得用クリップと比較して、導電部材の取付状態のみ異なり、その他の構成の基本的構成は同様のものである。よって、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図9に示す生体情報取得用クリップ100Aは、繋ぎ部101Aを支点に、先端部に形成された第1挟持片122A及び第2挟持片132Aが開閉自在な第1挟持部材120A及び第2挟持部材130Aを備える。
【0051】
これら第1挟持部材120A及び第2挟持部材130Aは、生体情報取得用クリップ100の第1挟持部材120及び第2挟持部材130と同様の基本的構成を有する。つまり、第1挟持部材120A及び第2挟持部材130Aは、絶縁材料、ここではプラスチックにより成形され、それぞれの後端部には、摘み部124、134が形成されている。第1挟持部材120A及び第2挟持部材130Aでは、摘み部124、134を接近させることで先端部の第1挟持片122A及び第2挟持片132Aは互いに離間する方向に回動する。すなわち、クリップ部110Aは開く状態となる。また、このクリップ部110Aは、生体情報取得用クリップ100のクリップ部110と同様に、図示しないが板状コンタクトを有する。このクリップ部110Aの上方に、板状コンタクトと接触電極40の端子部46との接続部分を覆う導電部材180が配設されている。
【0052】
この変形例としての生体情報取得用クリップ100Aでは、導電部材180は、第1挟持片122Aの上面部から、第2挟持片132Aを繋ぐ繋ぎ部101Aと第2挟持片132Aとの上に張り出すように、第1挟持片122Aと一体成形されている。この導電部材180の上面は、第1挟持部材120Aと同様の絶縁材料によって覆われている。
【0053】
この構成によれば、第2挟持片132Aが第1挟持片122Aに対して離間方向に移動する際に、第2挟持片132Aの移動は、導電部材180下で移動することになり、クリップ部110Aの開閉状態に関わらず、クリップ部110A上に配置された状態となっている。
【0054】
これにより、生体情報取得用クリップ100Aは生体情報取得用クリップ100と同様の作用効果を得ることができる。なお、変形例では、接触電極40の端子部46を挟持するクリップ部110Aの上方に配置される導電部材180を、クリップ部110Aの第1挟持片122Aと一体に設けた構成としたが、これに限らない。生体情報取得用クリップ100Aの構成において、第2挟持片132Aの上部に、第2挟持片132A側から第1挟持片122Aの上方に延出するように、一体的に構成してもよい。
【0055】
また、生体情報取得用クリップ100Aの構成において、クリップ部110Aにおいて、第1挟持片122及び第2挟持片132の開閉の支点となる繋ぎ部101Aを第1挟持片122及び第2挟持片132と独立した軸部とし、この軸部に導電部材180を固定した構成としてもよい。この構成の場合、導電部材180は、第1挟持片122A及び第2挟持片132Aを有するクリップ部110A上にこれらを覆うように張り出すように軸部に固定する。これにより、クリップ部110Aは、導電部材の下方で、導電部材に覆われた状態で、開閉自在となる。
【0056】
また、クリップ部110において、第1挟持片122及び第2挟持片132の開閉の支点となる繋ぎ部を第1挟持片122及び第2挟持片132と独立した軸部とし、この軸部に、導電部材180を回転可能に取り付けた構成としてもよい。このように構成された生体情報取得用クリップ100では、接触電極40への装着時に、導電部材180を回転させて板状コンタクトによる端子部46との接続部分を上方で覆う位置から退避させることができる。つまり、生体情報取得用クリップ100では、導電部材180は、クリップ部110と端子部46との接続部分を露出可能となっている。これにより、板状コンタクトを上方に露出させて、目視で、板状コンタクトと接触電極40の端子部46との位置関係を確認しながら接続作業を行なうことができる。そして、板状コンタクトと接触電極40の端子部46との接続後、導電部材180を回転させて板状コンタクトによる端子部46との接続部分の上方に位置させることにより、これら接続部分を覆って外部と電気的に遮断する。ここでは、導電部材は、回動することによって、クリップ部110と端子部46との接続部分を遮断する位置を露出可能な構成としているが、これに限らない。板状コンタクトによる端子部46との接続部分、言い換えれば、クリップ部110と端子部46との接続部分を覆う導電部材180は、クリップ部110の上方でクリップ部110を覆う位置に開閉自在に取り付けられたり、折り畳み自在に取り付けられたりした構成としても良い。これにより、導電部材を、開閉したり、折り畳んだりすることによって、板状コンタクト(クリップ部)と端子部とを上方に露出させて、両者の接続を、視認しながら行うことができる。そして、これらの接続後、導電部材を、両者(板状コンタクト(クリップ部)と端子部)の接続部分を上方で覆う位置に位置させることによって、両者の接続部分と、生体の外部とを電気的に遮蔽できる。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る生体情報取得用クリップは、生体に取り付けられる接触電極への着脱が容易であるとともに、電気的な安全性を確保して、心電図などの生体情報を正確に検出できる効果を有し、接触電極と生体情報取得装置とを接続して心電図波形を取得する場合に有用である。
【符号の説明】
【0059】
30 ケーブル
31 先端部
31a、31b 分岐ケーブル
32 信号線
34 絶縁被覆材
36 シールド線
38 外部絶縁被覆材
40 接触電極
42 ベースパット
42a ベースパットの裏面
44 電極パット
46 端子部
46a 頸部
46b 頭部
100、100A 生体情報取得用クリップ
101、101A 繋ぎ部
110、110A クリップ部
120、120A 第1挟持部材
122、122A 第1挟持片
124、134 摘み部
130、130A 第2挟持部材
132、132A 第2挟持片
140 付勢部材
150 信号導電体
152、154 板状コンタクト
180 導電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1挟持片及び第2挟持片を有し、これら第1挟持片及び第2挟持片によって、生体に取り付けられる電極の突起状の端子部を挟持して、前記第1挟持片及び第2挟持片の少なくとも一方に設けられた信号導電体に前記端子部を電気的に接続するクリップ部と、
前記クリップ部の上方に、前記信号導電体と離間して設けられ、前記クリップ部を遮蔽する面状の導電部材と、
を有する、生体情報取得用クリップ。
【請求項2】
前記導電部材は、前記クリップ部と前記端子部との接続部分を露出可能に設けられている、
請求項1記載の生体情報取得用クリップ。
【請求項3】
前記導電部材は、前記クリップ部の上部に前記クリップ部を覆うように一体的に形成されている、
請求項1記載の生体情報取得用クリップ。
【請求項4】
前記クリップ部は、前記第1挟持片及び第2挟持片を繋ぎ、且つ、それぞれ開閉させる支点となる繋ぎ部を有し、
前記第1挟持片及び第2挟持片には、前記繋ぎ部を介して、互いに接離方向に移動させる摘み部がそれぞれ連続して延設され、
一方の摘み部の端部には、前記信号導電体に接続されたリード線が導出され、
他方の摘み部の端部には、前記導電部材に接続されたリード線が導出されている、
請求項1記載の生体情報取得用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−42813(P2013−42813A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180863(P2011−180863)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)