説明

生体成分測定用試薬及び測定方法

【課題】本発明は、生体試料中の特定成分を測定する方法において、ビリルビン、溶血などの還元物質の影響を回避して測定する試薬及び測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】生体試料中の成分を測定する方法において、前処理工程で過酸化物を0.4nmol/L以上存在させることを特徴とする生体成分の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清、尿、血漿等の生体試料中の特定成分を測定する方法において、ビリルビン、溶血ヘモグロビンによりもたらされる(1)劣化して着色することにより比色法測定に与える影響、(2)酸化還元反応に与える影響、の両方を回避して測定する試薬及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査分野において吸光度測定による成分分析が広く行なわれている。方法としては脱水素酵素を用い、NAD(P)Hを指示物質として用いる方法(脱水素酵素法)、酸化酵素を用い生成した過酸化水素と、ペルオキシダーゼにより発色剤を色素に導き比色定量する方法(酸化酵素法)、発色基を導入した基質を用い、酵素の反応により生成した発色体の増加速度を測定する方法(合成基質法)などがある。これらの方法では生体試料中に多量に存在する可能性のあるビリルビン、溶血の影響により測定値に誤差を生じるため問題となっている。影響の原因となる要因としては、(1)ビリルビン、溶血のもつ還元作用、(2)ビリルビン、溶血の吸収極大付近である400〜450nm付近を測定波長または2波長測定における副波長とする測定においてビリルビン、溶血に起因する吸光度変化、が挙げられる。
【0003】
これに対し、ビリルビン、溶血の影響を回避する方法がこれまで種々報告されている。ビリルビンの影響回避法としては、フェロシアン化物イオンを用いる方法(特許文献1参照。)、ビリルビン酸化酵素を用いてビリルビンを分解する方法(特許文献2参照。)、主反応の前に多量の過酸化水素を発生させペルオキシダーゼの酸化反応を利用してビリルビンを分解する方法(特許文献3、4参照。)、特定の界面活性剤を用いる方法(特許文献5〜8参照。)などが報告されている。溶血の影響回避法としては、チオ尿素を用いる方法(特許文献9参照。)、ピリジン類、イミダゾール類、ヒスタミン類を用いる方法(特許文献10参照。)、アルキルスルホン酸塩を用いる方法(特許文献11参照。)、特定の界面活性剤を用いる方法(特許文献12参照。)などが報告されている。しかし、これらの方法では、ビリルビン、溶血の影響を一挙に回避することができないこと、また測定系に対する阻害作用があること、また、測定試薬の保存安定性を低下させるなどの問題があるため不十分であった。
【特許文献1】特開昭55−25840号公報
【特許文献2】特開昭57−71398号公報
【特許文献3】特開平2−49600号公報
【特許文献4】特開平6−339397号公報
【特許文献5】特開平3−10696号公報
【特許文献6】特公平7−11519号公報
【特許文献7】特開平9−224697号公報
【特許文献8】特開平11−243993号公報
【特許文献9】特公平6−12998号公報
【特許文献10】特公平3−56425号公報
【特許文献11】特公平3−58467号公報
【特許文献12】特開2000−189194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は生体試料中の特定成分を測定する方法において、ビリルビン、溶血などの還元物質の影響を回避して測定する試薬及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、生体試料中の成分を測定する方法において、前処理工程で過酸化物を0.4nmol/L以上存在させることによる生体成分の測定方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ビリルビン、溶血ヘモグロビンなどの影響を回避して測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、生体試料としては、還元性の夾雑物質(以下、還元物質という)を含み、該還元物質が測定対象成分の測定を妨害するものである。このような生体試料としては、血清、尿、血漿等が挙げられる。
【0008】
生体試料中の測定対象となる成分としては、酸化酵素とペルオキシダーゼを共役させる過酸化水素測定系、すなわち、分析対象物またはその反応生成物に酸化酵素を作用させ、生成する過酸化水素をペルオキシダーゼと色原体により、例えばキノンイミン色素に変え、該色素を吸光度測定して比色定量する方法により測定される成分が挙げられる。具体的には中性脂肪、クレアチニン、カルシウム、クレアチン、遊離コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質、無機リン、アミラーゼ、GOT,GPT、シアル酸、グアナーゼ等が挙げられる。なお、分析対象物を検出する場合、その分析対象物に直接酸化酵素を作用させる場合もあるが、多くの場合は、酸化酵素及びペルオキシダーゼの他に、更に1種類以上の他の酵素を必要とする。
【0009】
上記分析対象を測定するための基本原理は、それぞれ種々の方法が知られており、本発明は特に制約なくそれらに適用することが可能である。以下に中性脂肪、クレアチニン及びカルシウムの測定原理を例示する。
【0010】
【化1】

【0011】
これらの分析対象を測定するための試薬についても、それぞれ種々の方法が知られている。例えば、上記測定原理に基づくクレアチニン測定試薬として、下記組成を有するものが挙げられる。
第一試薬R1:クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、カタラーゼ、
第二試薬R2: クレアチニンアミドヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、色原体。
【0012】
つまり、試薬R1に用いる第1酵素反応で、試料中のクレアチンをクレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、カタラーゼの反応により無色の物質に変換して消去する。次いで第2酵素反応として試薬R2を試料及び試薬R1の系に添加して、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、色原体およびペルオキシダーゼの反応により試料中のクレアチニンから有色物質を生成し、該物質を比色定量する。第2酵素反応に共存するカタラーゼは、そのカタラーゼ阻害剤を添加することにより該酵素反応をブロックできる。クレアチニンと同様に中性脂肪の検出においても同様に分析対象物以外に由来する過酸化水素の消去が必要である。
【0013】
本発明では、前処理液(前処理試薬)と検出開始液(検出試薬)を使用する。
【0014】
前処理液は、過酸化物を含有し、生体試料に前処理液を加えて還元物質(例えばビリルビン、溶血ヘモグロビン)を測定に影響しないように処理する。
本発明の前処理工程とは、生体試料と前処理液を混合した状態でインキュベーションされる工程を意味し、測定対象物質はそのまま維持されるかまたは検出物質の前段階まで変換され、ビリルビンなどの還元物質はこの工程で分解等されて、測定対象物質の測定に対する影響を低減される。本前処理工程においては試料中の還元物質以外の妨害物質を除去する工程を含んでいてもよい。例えば妨害物質であるアスコルビン酸をアスコルビン酸オキシダーゼを用いて分解する工程が挙げられる。
該前処理液には、過酸化物を含む。過酸化物の量はビリルビン、溶血の還元性、色調変化を低減する濃度であればよく、通常、前処理工程において0.4nmol/L以上あればよいが、試薬ブランク反応を低減することを考慮すると0.4nmol/L〜5nmol/L以下が好ましく、更には0.5〜2nmol/Lとすることがより好ましい。測定対象物質の濃度により試薬ブランクの上昇が懸念される場合は、抗酸化剤を試薬に共存させることで、前処理工程における還元物質(ビリルビン、溶血など)との未反応の過酸化物を不活化することができ、試薬ブランクの上昇を抑制することができる。還元物質(ビリルビン、溶血など)と未反応の残存過酸化物の不活化は、検出開始試薬の添加までに実施されることが好ましく、また検出開始試薬中には過酸化物を含まないことが試薬ブランクの上昇を抑制する観点において望ましい。検出開始試薬中の過酸化物濃度は通常1.5nmol/L以下であり、好ましくは1.0nmol/L以下である。
【0015】
前処理は、過酸化物を生体試料に加え、20〜40℃程度で2〜10分間程度処理することで行うことができる。
【0016】
本発明の検出開始試薬とは、NADH、CNP、PNP、キノン色素などの検出物質の生成に導く試薬のことを意味する。
【0017】
本発明に用いられる過酸化物は、過酸化水素を除く過酸化物であれば特に限定されず、有機過酸化物が好ましく例示される。
【0018】
有機過酸化物(有機過酸化物は、一般に過酸化水素の誘導体、すなわちH−O−O−Hの水素原子を有機原子団で置換した化合物であり、その化学的特徴は −O−O−結合に起因している。)としては、例えば化学構造で次のように分類される。ハイドロパーオキサイド(R−O−O−H)、ジアルキルパーオキサイド(R−O−O−R)、パーオキシエステル(RCO−O−O−R’)、ジアシルパーオキサイド(RCO−O−O−COR)、パーオキシジカーボネート(ROCO−O−O−COOR)、パーオキシケタール(R−O−O−C(−R’)(−R’’)−O−O−R)、ケトンパーオキサイド(H−O−O−C(−R’)(−R’’)−O−O−H)。本発明には過酸化脂質が好適に用いられる。
【0019】
また、界面活性剤には、本来過酸化物は含まれず、適切な流通・保管の下では化学的に変化することもない。しかしながら、意図的に環境を変化させることにより化学反応を起こして過酸化物を生じうるものがあり、例えば微量金属と共存させたり、光を照射することなどの処理を行うことにより、過酸化物を生じさせることができる。微量金属による処理の場合、処理後の金属の除去が困難であることから、光照射処理がより好ましい。このような界面活性剤から得られた過酸化物も本願発明に用いることができる。
【0020】
なお、界面活性剤がメーカー及び流通業者の品質管理の及ぶ範囲を離れた場合、例えばユーザーにおいて保存条件が適当でない場合は、微量の過酸化物が生じていることがあるが、本発明ではそのような界面活性剤に更に過酸化物を生じさせたものを用いることもできる。
【0021】
光による具体的な処理の方法は、以下の通りである。例えば、界面活性剤10gを市販の透明試験管に入れ密封し、500ルクスの光を10℃で2週間照射する照射するときの条件として、被照射試料の容器、光源、照度、温度、時間等が過酸化物の生成量に影響することから、これらの条件を管理することで過酸化物量の管理が可能である。容器は、不純物の混入を考慮し、蓋付きで透明ガラス材質の容器が好ましく、被処理物質が固形状、フレーク状、のものは特に水溶液状態にして照射するのが望ましい。光源は、蛍光ランプが望ましく白色またはD−65昼光色が用いられる。照度は約300〜1000ルクス、温度は2〜30℃、時間は3日から3週間程度が望ましい。これらの条件は、被処理物質を過酸化物が生成する程度にマイルドに処理することを目的とし、被処理物質を本来の作用を完全に消失させることは想定していない。
【0022】
これらの方法により得られた過酸化物は物質としての特定は難しいが、後述する方法により過酸化物量の測定が可能であり、処理後、目的の過酸化物量になるように調整して用いればよい。用いる界面活性剤の種類は特に限定されない。
【0023】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤または/および両性イオン界面活性剤が好適に用いられる。
【0024】
本発明で用いる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類として例えばエマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン130K、ノニオンK−204、ノニオンK−215、ノニオンK−220、ノニオンK−230、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BL−21、NIKKOL BL−25、ポリオキシエチレンセチルエーテル類として、エマルゲン210、エマルゲン220、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC−5.5、NIKKOL BC−7、NIKKOL BC−10TX、NIKKOL BC−15TX、NIKKOL BC−20TX、NIKKOL BC−23、NIKKOL BC−25TX、NIKKOL BC−30TX、NIKKOL BC−40TX、ノニオンP−208、ノニオンP−210、ノニオンP−213、ポリオキシエチレンステアリルエーテル類として、エマルゲン306P、エマルゲン320P、NIKKOL BS−2、NIKKOL BS−4、NIKKOL BS−20、ノニオンS−206、ノニオンS−207、ノニオンS−215、ノニオンS−220、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類としては、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409P、エマルゲン420、エマルゲン430、NIKKOL BO−2、NIKKOL BO−7、NIKKOL BO−10TX、NIKKOL BO−20、NIKKOL BO−50、ノニオンE−206、ノニオンE−215、ノニオンE−230、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル類としては、NIKKOL BB−5、NIKKOL BB−10、NIKKOL BB−20、NIKKOL BB−30等が挙げられる。
【0025】
また、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル類としては、エマルゲン707、NIKKOL BT−5、NIKKOL BT−7、NIKKOL BT−9、アデカトールSO−80、アデカトールSO−105、アデカトールSO−120、アデカトールSO−135、アデカトールSO−145、アデカトールSO−160、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類としては、エマルゲン810、エマルゲン840S、エマルゲン909、エマルゲン910、エマルゲン930、エマルゲン950、トリトンX−100、トリトンX−114、NIKKOL NP−5、NIKKOL NP−7.5、NIKKOL NP−10、NIKKOL NP−15、NIKKOL NP−20、NIKKOL OP−10、NIKKOL OP−30、等が挙げられる。オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー類としては、エマルゲンPP−150、エマルゲンPP−230、エマルゲンPP−250、エマルゲンPP−290、NIKKOL PBC−34、NIKKOL PBC−44、等が挙げられる。脂肪酸エステル類としては、レオドールTW−L120、レオドールTW−L106、レオドールTW−P120、レオドールTW−S120、レオドールTW−O120、レオドール460、エマノーン1112、エマノーン3115、エマノーン3170、エマノーン3299、エマノーン3130等が挙げられる。ポリオキシエチレンステロール類としては、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30、NIKKOL BPSH−25、NIKKOL DHC−30等が挙げられる。その他には、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、n−オクタノイル−N−メチルグルコアミド、n−ノナノイル−N−メチルグルコアミド、n−デカノイル−N−メチルグルコアミド、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノラウレート、シュークロースモノコレート、ジギトニン等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いる両性イオン界面活性剤としては、例えばアルキルイミダゾリウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアラニン、アルキルアミンオキサイド、これらの誘導体等が挙げられる。これらの具体例としては、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、アンヒトール20Z、等が挙げられる。
【0027】
過酸化物の測定は、例えば非特許文献1に記載の方法で行なうことができる。
【非特許文献1】Fresenius J Anal Chem 365巻、448−451ページ(1999) あるいは、市販の過酸化物測定試薬を使用することにより行なうことができる。(例えば、非特許文献2を参照。)
【非特許文献2】体外診断用医薬品 デタミナーLPO(協和メデックス社、承認番号(62AM)0669)の添付文書、平成14年3月改訂 本発明に用いられる抗酸化剤は、特に限定されないが、測定原理の特性により選択される必要があり、例えばα-トコフェロール、チオグリセロール、ブチルヒドロキシトルエン、メチオニン、酸化酵素として、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、アルキルハイドロペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなどが挙げられる。
【0028】
抗酸化剤の使用量は、0.001〜1重量%程度、好ましくは0.001〜0.1重量%程度である。
【0029】
尚、本発明の生体成分測定試薬には、防腐剤、キレート剤、フェロシアン化物などの鉄錯体を含んでよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。
(実施例1〜4および比較例5〜6)
下記のクレアチニン測定試薬に、過酸化物を濃度を変えて添加した。過酸化物はトリトンX−100 10gを透明試験管に入れ密封し、500ルクスの光を10℃、2週間照射して生成させた。トリトンX−100中の過酸化物濃度は、本操作前に0.07μmol/gであったが操作後には5μmol/gとなった。操作前後のトリトンX−100を混合調製して過酸化物濃度水準を作製し、下記クレアチニン測定試薬の第一試薬または第二試薬にトリトンX−100濃度として1g/Lになるように添加した。調製後、各試薬の第一試薬、第二試薬の過酸化物の終濃度を測定した。尚、過酸化物濃度は市販の過酸化脂質測定試薬「デタミナーLPO」(協和メデックス社製)を用い測定は本キットの用法用量のとおり実施した。
【0031】
このようにして調製されたクレアチニン測定試薬を用い、試料としては精製水、及びビリルビンC(抱合型)、ビリルビンF(遊離型)、溶血(いずれもシスメックス社・干渉チェックAプラス)を各々40mg/dL、40mg/dL、500mg/dLになるように添加したプール血清、及びその対照としてビリルビンC、ビリルビンF、溶血を添加しないプール血清を用いた。これらの試料の測定結果を、精製水測定吸光度を試薬ブランクとし、ビリルビンC、ビリルビンF、溶血添加血清の測定値から無添加血清測定値を差引いた値を無添加血清の測定値を100%として相対%を算出しこれを各還元物質の影響度とした。
(試薬の調製)
下記組成からなるクレアチニン測定試薬をそれぞれ調製した。
第一試薬
PIPES−NaOH 80mM pH7.5
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 5U/mL
ザルコシンオキシダーゼ(東洋紡社製SAO−351) 10U/mL
クレアチンアミジノヒドロラーゼ(東洋紡社製CRH−221) 30U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製CAO−509) 100U/mL
TOOS 0.2g/L
第二試薬
PIPES−NaOH 80mM pH7.5
クレアチニンアミドヒドロラーゼ(東洋紡社製CNH−311) 300U/mL
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 10U/mL
フェロシアン化カリウム 50mg/L
(測定法)
日立7170形自動分析機を用いた。試料4μLに第一試薬 180μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を60μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で546nmにおける吸光度を測定した。
クレアチニン濃度未知試料のクレアチニン濃度の算出は、精製水および5mg/dLクレアチニン水溶液の測定吸光度より算出して求めた。
【0032】
【表1】

【0033】
結果 表1に示す。比較例では試薬ブランクの上昇、ビリルビン、溶血の影響が大きくなるのに対し、実施例では試薬ブランクは低く、ビリルビン、溶血の影響が低減した。
(実施例7〜10および比較例11〜12)
下記の中性脂肪測定試薬に過酸化物を濃度を変えて添加した。過酸化物は、エマルゲン108を用い、実施例1の手順で生成させた。その結果、エマルゲン108中の過酸化物濃度は、本操作前に0.06μmol/gであったが操作後には3.4μmol/gとなった。操作前後のエマルゲン108を混合調製して過酸化物濃度水準を作製し、下記中性脂肪測定試薬の第一試薬または第二試薬にエマルゲン108濃度として1g/Lになるように添加した。調製後、各試薬の第一試薬、第二試薬の過酸化物の終濃度を測定した。
【0034】
このようにして調製された中性脂肪測定試薬を用い、実施例1と同様の試料を測定し、試薬ブランク、ビリルビンC、ビリルビンF、溶血の影響を検討した。
(試薬の調製)
下記組成からなる中性脂肪測定試薬をそれぞれ調製した。
第一試薬
PIPES 50mM pH7.0
MgCl2 0.2g/L
アデノシン3リン酸2Na塩 1.2g/L
4−アミノアンチピリン 0.1g/L
フラビンアデニンジヌクレオチド2Na塩 8μmol/L
グリセロールキナーゼ(東洋紡社製GYK−311) 3U/mL
グリセロリン酸オキシダーゼ(東洋紡社製G3O−311) 5U/mL
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 3U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製) 200U/mL
第二試薬
HEPES−NaOH 50mM pH7.5
塩化マグネシウム・6水和物 0.2g/L
塩化カルシウム 0.1g/L
ADPS 0.3g/L
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 2.9U/mL
リパーゼ(東洋紡社製LPL−314) 2U/mL
フェロシアン化カリウム 5mg/L
(測定法)
日立7170形自動分析機を用いた。試料2.1μLに第一試薬 180μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を90μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で600nmにおける吸光度を測定した。
結果は、精製水および200mg/dLトリオレイン水溶液の測定吸光度より算出し中性脂肪濃度として求めた。
【0035】
【表2】

【0036】
結果 表2に示す。比較例では試薬ブランクの上昇傾向、溶血の影響の増大がみられるのに対し、実施例では試薬ブランクは低く、溶血の影響はほとんどみられなかった。。
実施例13〜16及び比較例17〜18
下記のカルシウム測定試薬に過酸化物を濃度を変えて添加した。過酸化物は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを用い、実施例1の手順で生成させた。その結果、ポリオキシエチレンオレイルエーテル中の過酸化物濃度は、本操作前に0.0μmol/gであったが操作後には2.2μmol/gとなった。操作前後のポリオキシエチレンオレイルエーテルを混合調製して過酸化物濃度水準を作製し、下記カルシウム測定試薬の第一試薬または第二試薬にポリオキシエチレンオレイルエーテル濃度として1g/Lになるように添加した。調製後、各試薬の第一試薬、第二試薬の過酸化物の終濃度を測定した。
このようにして調製されたカルシウム測定試薬を用い、実施例1と同様の試料を測定し、試薬ブランク、ビリルビンC、ビリルビンF、溶血の影響を検討した。
第一試薬
トリス塩酸バッファー(pH7.1) 50mM
NaCl 200mM
1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン四酢酸 0.8mM
ガラクトシルマルトース 2.3mM
2−クロロ−4−ニトロフェニル−4−o−β−D−ガラクトピラノシル-α-マルトシド 0.9mM
第二試薬
グッド緩衝液(pH6.0) 300mM
NaCl 200mM
ガラクトシルマルトース 2.3mM
不活性化型α−アミラーゼ(ヒト唾液由来) 20IU/mL
(測定法)
日立7170形自動分析機を用いた。試料量3.5μlに第一試薬180μl加え、5分間予備加温した後、さらに第二試薬90μlを加えて反応を開始させ、該基質試液添加後2分後からの3分間における1分あたりの吸光度変化を求め、精製水およびカルシウム10mg/dl標準液での2点検量線に基づき試料中のカルシウム量を求めた。測定波長は、主波長405nm、副波長546nmとし、測定温度は37℃で実施した。
【0037】
【表3】

【0038】
結果 表3に示す。比較例では溶血の影響が大きいのに対し、実施例ではほとんど影響はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の生体成分測定用試薬及び測定方法は、体外診断用医薬品などの用途分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の成分を測定する方法において、
(1)0.4nmol/L以上の過酸化物の存在下に生体試料を前処理する工程;及び
(2)1.5nmol/L以下の過酸化物の存在下に工程(1)で前処理された生体試料中の成分を測定する工程
を包含する方法。
【請求項2】
0.4nmol/L以上の過酸化物と抗酸化剤を共存させて前処理工程(1)を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.4nmol/L以上の過酸化物を含む生体試料の前処理液と、1.5nmol/L以下の過酸化物を含む生体成分の検出開始液を含む生体成分の測定試薬。
【請求項4】
前処理液がさらに抗酸化剤を含むことを特徴とする請求項3に記載の測定試薬。

【公開番号】特開2006−81471(P2006−81471A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269724(P2004−269724)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】