生体材料噴射装置
【課題】生体材料が培養されていた容器から収容部に移すとき、収容部の口元などに付着していた細菌が混入する場合がある。また、生体材料が培養されていた容器から収容部に移すための作業時間を要してしまう。また、収容部に移された生体材料は温度管理されないので、生体材料が劣化したり死滅したりする場合がある。
【解決手段】生体材料を収容する収容部としての生体材料カートリッジ113と、生体材料カートリッジ113を冷却する冷却部としてのペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱部としての放熱板124と、生体材料カートリッジ113に連結された、生体材料を噴射する噴射ヘッド12と、生体材料カートリッジ113を脱着する脱着部と、を備える。
【解決手段】生体材料を収容する収容部としての生体材料カートリッジ113と、生体材料カートリッジ113を冷却する冷却部としてのペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱部としての放熱板124と、生体材料カートリッジ113に連結された、生体材料を噴射する噴射ヘッド12と、生体材料カートリッジ113を脱着する脱着部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の臓器や組織が病気やけがにより損傷し、外科もしくは内科的に治療が出来ない場合にはそれらの臓器や組織を移植する以外に機能を回復させるための選択肢がない場合が多い。しかし、必要な臓器や組織が必要な時に入手できることは稀である。この問題を解決するために、再生医学や組織工学などの分野では移植が必要な本人から細胞を採取し、体外で培養して組織化し、これを移植することを目的とした研究が行われている。
例えば特許文献1では、細胞などの生体材料が収容された収容部とインクジェットプリンタに備えられたようなノズルを有する噴射ヘッドを備えた装置を用いて、噴射ヘッドから生体材料を噴射することにより生体組織を構築する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−17798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体材料を噴射ヘッドから噴射しようとするとき、それまで冷蔵庫などで温度管理されて培養されていた容器から、噴射ヘッドに備えられた収容部に生体材料を移すことになる。
従って、生体材料が培養されていた容器から収容部に移すとき、収容部の口元などに付着していた細菌が混入する場合がある。また、生体材料が培養されていた容器から収容部に移すための作業時間を要してしまう。また、収容部に移された生体材料は温度管理されないので、生体材料が劣化したり死滅したりしてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の一部の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
〔適用例1〕生体材料を収容する収容部と、前記収容部を冷却する冷却部と、前記冷却部から発生する熱を放熱する放熱部と、前記収容部に連結された、前記生体材料を噴射する噴射ヘッドと、前記収容部を脱着する脱着部と、を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【0007】
この構成によれば、収容部を冷却する冷却部と、冷却部から発生する熱を放熱する放熱部を備える。これにより、収容部内の温度が上昇することを抑制できるので、収容部に収容された生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0008】
また、収容部を脱着する脱着部を備える。これにより、噴射ヘッドを用いて生体材料を噴射しないときは、温度管理ができる冷蔵庫などに保管する。そして、噴射ヘッドを用いて生体材料を噴射しようとするときは、冷蔵庫から収容部を取り出し、生体材料噴射装置に装着して噴射ヘッドから生体材料を噴射すればよい。すなわち、冷蔵庫に保管していたときの容器をそのまま生体材料噴射装置の収容部として用いることにより、噴射ヘッドから噴射することができる。従って、容器を移し替えるための作業時間を要しない。また、容器を移し替えることがないので、細菌が生体材料に混入することを抑制できる。
【0009】
〔適用例2〕更に、前記収容部の温度を検出する温度検出部と、前記冷却部の動作を制御することにより、前記収容部の温度を制御する温度制御部と、を備えたことを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0010】
この構成によれば、収容部の温度管理ができるので、収容部内の温度を生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲にすることができる。これにより生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0011】
〔適用例3〕更に、前記冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、アラームを出力するアラーム出力部と、を備え、前記冷却能力判定部は、前記温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0012】
この構成によれば、冷却能力判定部は、温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、アラーム出力部によってアラームを出力させる。これにより、冷却能力が不足する場合、収容部内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、冷蔵庫などに収容部を保管すれば、収容部内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0013】
〔適用例4〕前記冷却部は電流が流れることにより前記収容部を冷却するペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0014】
この構成によれば、冷却部がペルチェ素子を用いて構成されることによって、生体材料噴射装置が大型化することを抑制できる。
【0015】
〔適用例5〕更に、前記ペルチェ素子に流れる電流値を検出する電流値検出部を備え、 前記冷却能力判定部は、前記電流値が所定の電流値以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0016】
この構成によれば、電流値が所定の電流値以上であるときは、アラーム出力部によってアラームを出力させる。これにより、冷却能力が不足する場合、収容部内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、冷蔵庫などに収容部を保管すれば、収容部内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0017】
〔適用例6〕更に、前記放熱部と前記噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えたことを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0018】
この構成によれば、生体材料を含む液体の温度が低下し、粘性が増して噴射ヘッド内の流路が詰まることを抑制できる。従って、冷蔵庫などに保管するときの容器をそのまま生体材料噴射装置に用いて、噴射ヘッドから噴射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
(第1実施例)
本実施例では、火傷やけがなどによって損傷した指、手などの皮膚を、損傷した部位に向かって生体材料を噴射することによって再生する生体材料噴射装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施例における生体材料噴射装置100の外観斜視図である。ベース103には2本のレール106,112が備えられる。スライドベース105は、レール106,112をD1に示す方向にスライドすることができる。スライドベース105には、キャリッジ移動用モータ115、従動ローラ107が備えられる。
【0021】
キャリッジ移動用モータ115によって駆動される駆動ローラ114と従動ローラ107には、ベルト108が備えられる。ベルト108にはキャリッジ111が固定される。
キャリッジ111を貫通するガイド軸120は、レール106の図面右側でスライドベース105に備えられた支持部121と、レール112の図面左側でスライドベース105に備えられた支持部122とによって固定される。
【0022】
キャリッジ移動用モータ115が回転することによって、ベルト108が回転し、キャリッジ111は、ガイド軸120に沿ってD2に示す方向に移動することができる。
【0023】
キャリッジ111には、生体材料が収容された収容部としての生体材料カートリッジ113が搭載される。生体材料カートリッジ113は、キャリッジ111に搭載されたり、キャリッジ111から取り外されたりすることができる。
【0024】
キャリッジ111には、熱を放熱する放熱板124が備えられる。
【0025】
スライドベース105には、ボールナット支持部116が固定される。ボールナット支持部116には、ボールナット117が備えられる。
【0026】
ボールナット117とボールネジ軸118とは噛み合って備えられる。スライドベース移動用モータ101によってボールネジ軸118が時計周りまたは反時計周りに回転されると、スライドベース105は、レール106,112に沿ってD1に示す方向に移動する。
【0027】
キャリッジ111の図面下方向には、噴射ヘッド(不図示)が備えられる。噴射ヘッドからは、生体材料カートリッジ113から供給された生体材料が図面下方向に噴射される。
【0028】
ベース103に備えられた制御ボックス104内には、スライドベース移動用モータ101、キャリッジ移動用モータ115を制御するためのモータ駆動回路(不図示)と、制御ケーブル102を介して、噴射ヘッドから生体材料を噴射するための制御を行う噴射ヘッド駆動回路(不図示)とが備えられる。
【0029】
制御ボックス104には、ボタン操作などによる操作部119、液晶パネルなどからなる表示部123が備えられる。操作部119から入力された数値に基づいて、モータ駆動回路の制御によって、方向D1と方向D2におけるキャリッジ111の位置を指定することができる。
【0030】
噴射ヘッド駆動回路によって、キャリッジ111に備えられた噴射ヘッドから生体材料が、テーブル109に置かれた指110の損傷した部位に向かって噴射される。キャリッジ111が方向D1と方向D2に移動しながら、噴射ヘッドから生体材料を噴射することができる。
【0031】
次に、キャリッジ111に備えられた噴射ヘッドについて説明する。図2は、噴射ヘッド12の斜視図であり、一部断面で示してある。図3は、組み立てられた噴射ヘッド12の断面側面図、図4は図3のA−A線における矢印方向から見た図である。
【0032】
これらの図に示すように、噴射ヘッド12は、下記に詳述する構造を持つ上側基板1、中間基板2、下側基板3を重ねて接合した積層構造となっている。中間基板2は、例えばシリコン基板であり、複数のノズル孔4を構成するように中間基板2の表面に一端より平行に等間隔で形成された複数のノズル溝21と、各々のノズル溝21に連通し底壁を振動板5とする吐出室6を構成することになる凹部22と、凹部22の後部に設けられオリフィス7を構成して流入口となるための細溝23と、及び各々の吐出室6に生体材料を供給するための共通のキャビティ8を構成することになる凹部24を有する。
【0033】
また、振動板5の下部には後述する電極を装着するため振動室9を構成することになる凹部25が設けられている。ノズル溝21のピッチは2mm程度であり、その幅は40μm程度にされる。
【0034】
中間基板2の上面に接合される上側基板1は、例えばガラスまたはプラスチックからなり、この上側基板1の接合によって、ノズル孔4、吐出室6、オリフィス7及びキャビティ8が構成される。そして、上側基板1にはキャビティ8に連通する供給口14を穿設する。
【0035】
中間基板2の下面に接合される下側基板3は、例えばガラスまたはプラスチックからなり、この下側基板3の接合によって振動室9を構成するとともに、下側基板3の表面に振動板5に対応する各々の位置にて電極31を形成する。
【0036】
電極31はリード部32及び端子部33を持つ。さらに端子部33を除き電極31及びリード部32の全体を絶縁膜34で被覆している。各端子部33にはリード線35がボンディングされる。
【0037】
上側基板1、中間基板2、下側基板3は図2のように組み立てられて噴射ヘッド12が構成される。さらに、中間基板2と電極31の端子部33間にそれぞれ発振回路26が接続される。図1の生体材料カートリッジ113からチューブ17、接続パイプ16を介して供給された生体材料は、供給口14を通じて中間基板2の内部に供給され、キャビティ8、吐出室6等を満たしている。
【0038】
次に、噴射ヘッド12の動作を説明する。電極31に発振回路26により、例えば0V〜+電圧のパルス電圧を印加し、電極31の表面が+電位に帯電すると、対応する振動板5の下面は−電位に帯電する。したがって、振動板5は静電気の吸引作用により下方へ撓む。
【0039】
次に、電極31をOFFにすると、該振動板5は復元する。したがって、吐出室6内の圧力が急激に上昇し、ノズル孔4より生体材料13を噴射する。そして、振動板5が下方へ撓むことにより、生体材料がキャビティ8よりオリフィス7を通じて吐出室6内に補給される。
【0040】
発振回路26には、上記のように0V〜+電圧間をON・OFFさせるものや交流電源等が用いられる。
【0041】
図5は、生体材料カートリッジ113の外観斜視図である。生体材料カートリッジ113には、生体材料カートリッジ113の内部に生体材料を収容するために開けたり閉じたりする蓋部57が設けられる。
【0042】
生体材料カートリッジ113の蓋部57と反対側には、弾力性を有するチューブ17が備えられる。生体材料カートリッジ113を生体材料噴射装置100から取り外し、冷蔵庫などに保管するときは、例えばクリップ(不図示)などを用いて、チューブ17をつまみ、生体材料がチューブ17から流出しないようにする。
【0043】
次に、キャリッジ111に備えられた生体材料カートリッジ113と放熱板124について説明する。図6は、図1の方向D2における図面右側から見た図で、キャリッジ111に備えられた生体材料カートリッジ113と放熱板124の図である。
【0044】
キャリッジ111には凹部54が形成されている。キャリッジ111の図面下側には、噴射ヘッド12が備えられる。キャリッジ111には、キャリッジ111の底部を貫通する孔53が形成されている。
【0045】
凹部54に、生体材料カートリッジ113の図面下部が挿入されると、チューブ17は、孔53を通るとともに、チューブ17は接続パイプ16と接続する。従って、凹部54に生体材料カートリッジ113の図面下部が挿入されると、チューブ17と接続パイプ16を介して、生体材料カートリッジ113と図3の噴射ヘッド12は連結される。
【0046】
生体材料カートリッジ113が、凹部54から離脱すると、チューブ17と接続パイプ16とは離間され、生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とは分離される。
【0047】
キャリッジ111に備えられた放熱板124は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する金属から構成される。放熱板124は、複数のフィン56を有する。放熱板のフィン56と反対側には、冷却部としてのペルチェ素子55が備えられる。ペルチェ素子55は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、一方の金属から他方の金属に熱が移動するペルチェ効果が得られる素子である。ペルチェ素子には、図1の制御ボックス104内の電源に接続されたケーブル125を介して電流が流れる。
【0048】
ペルチェ素子55は、例えばコンピュータのCPUの冷却などに利用されているもので、電流が流れることで片面が放熱し、反対側の片面が吸熱する。本実施例では、生体材料カートリッジ113がキャリッジ111に備えられているとき、ペルチェ素子55の放熱側が放熱板124のフィン56と反対側に面で当接し、吸熱側が生体材料カートリッジ113に面で当接する。
【0049】
キャリッジ111には、方向D2にスライドする押し当て板50、キャリッジ111に固定されるバネ支持部52が備えられる。弾性を有するバネ51は、押し当て板50とバネ支持部52とを連結する。
【0050】
生体材料カートリッジ113が凹部54に挿入されているとき、バネ51によって、押し当て板50は、生体材料カートリッジ113を図面左方向に押す力を発生する。そのため、押し当て板50によって、生体材料カートリッジ113がキャリッジ111に固定される。
【0051】
また、押し当て板50が生体材料カートリッジ113を図面左方向に押すことにより、前述したように、ペルチェ素子55の放熱側が放熱板124のフィン56と反対側の面に当接し、吸熱側が生体材料カートリッジ113の面に当接する。これにより、ペルチェ素子55の吸熱側に当接する生体材料カートリッジ113を冷却し、ペルチェ素子55の放熱側に当接する放熱板124から放熱される。
【0052】
本実施例における脱着部は、生体材料カートリッジ113をキャリッジ111に取り付けたり分離したりする手段と、生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とを連結したり分離したりする手段と、を有する。
【0053】
生体材料カートリッジ113をキャリッジ111に取り付けたり分離したりする手段は、キャリッジ111に設けられた、凹部54、押し当て板50、バネ51、バネ支持部52から構成される。
【0054】
生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とを連結したり分離したりする手段は、キャリッジ111に形成された孔53、生体材料カートリッジ113に備えられたチューブ17、及び噴射ヘッド12に備えられた接続パイプ16によって構成される。
【0055】
以上、説明した本実施例における生体材料噴射装置100は、生体材料を収容する収容部としての生体材料カートリッジ113と、電流が流れることにより生体材料カートリッジ113を冷却する冷却部としてのペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱部としての放熱板124と、生体材料カートリッジ113に連結された、生体材料を噴射する噴射ヘッド12と、生体材料カートリッジ113を脱着する脱着部と、を備える。
【0056】
この構成によれば、生体材料カートリッジ113を冷却するペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱板124を備える。これにより、気温の上昇や細胞分裂による発熱などによって、生体材料カートリッジ113内の温度が上昇することを抑制できるので、生体材料カートリッジ113に収容された生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0057】
また、生体材料カートリッジ113とキャリッジ111とを脱着する脱着部としての凹部54、押し当て板50、バネ51、バネ支持部52を備える。これにより、噴射ヘッド12を用いて生体材料を噴射しないときは、温度管理ができる冷蔵庫などに生体材料カートリッジ113を保管する。そして、噴射ヘッド12を用いて生体材料を噴射しようとするときは、冷蔵庫から生体材料カートリッジ113を取り出し、生体材料噴射装置100に装着して噴射ヘッド12から生体材料を噴射すればよい。すなわち、冷蔵庫に保管するときの容器としての生体材料カートリッジ113をそのまま生体材料噴射装置100に用いて、噴射ヘッド12から噴射することができるので、容器を移し替えるための作業時間を要しない。また、容器を移し替えることがないので、細菌が生体材料に混入することを抑制できる。
【0058】
また、冷却部は、ペルチェ素子55から構成されることによって、生体材料噴射装置が大型化することを抑制できる。
【0059】
(第2実施例)
第2実施例では、収容部の温度を検出する温度検出部と、冷却部の動作を制御することによって収容部の温度を制御する温度制御部とを備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0060】
図7は、第1実施例で説明した押し当て板に温度検出部としてのサーミスタを備えたことを示す図である。第2実施例の生体材料噴射装置(不図示)は、第1実施例の生体材料噴射装置100の押し当て板50に温度検出部としてのサーミスタを備えたものである。
【0061】
図7に示すように、第2実施例における押し当て板50aには、温度検出部としてのサーミスタ60が備えられる。サーミスタ60の生体材料カートリッジ113側の面は、押し当て板50aと同一平面を有し、押し当て板50aが生体材料カートリッジ113に当接すると、サーミスタ60は生体材料カートリッジ113に当接する。
【0062】
図8は、第2実施例における生体材料噴射装置100aの電気的な構成を示すブロック図である。制御ボックス104(図1参照)には、CPU71、RAM72、ROM73、ユニット制御部74が備えられたコントローラ基板70が内蔵されている。
【0063】
CPU71がROM73からRAM72に制御用プログラムを読み出して実行することにより、ユニット制御部74は、噴射ヘッド12の駆動、キャリッジ移動用モータ115の駆動、スライドベース移動用モータ101の駆動、冷却部としてのペルチェ素子55の動作、をそれぞれ制御する。
【0064】
収容部の温度が、生体材料が生存するための適正温度範囲に入るように、ユニット制御部74は、ペルチェ素子55に流れる電流を調整し、ペルチェ素子が吸熱したり放熱したりする動作を制御する。
【0065】
制御ボックス104に備えられた操作部119から入力された数値に基づいて、上述の制御用プログラムが実行される。制御ボックス104に備えられた表示部123には、実行する制御用プログラムを選択するためのメニュー、選択された制御用プログラムの実行中に選択するためのメニュー、操作部119から入力された数値などが表示される。
【0066】
温度検出部としてのサーミスタ60は、生体材料カートリッジ113の温度としての情報を検出する。CPU71は、サーミスタ60が検出した温度としての情報を取得する。ユニット制御部74は、取得された温度としての情報に基づいて、ペルチェ素子55の動作を制御する。
【0067】
本実施例における温度制御部は、CPU71、RAM72、ROM73、ユニット制御部74から構成され、CPU71がROM73から制御用プログラムを読み出して実行し、ユニット制御部74がペルチェ素子55の動作を制御することによって機能する。
【0068】
以上、本実施例で説明した生体材料噴射装置100aは、収容部としての生体材料カートリッジ113の温度を検出する温度検出部としてのサーミスタ60と、冷却部としてのペルチェ素子55の温度を制御する温度制御部と、を備える。
【0069】
この構成によれば、収容部の温度管理ができるので、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持できるので、生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0070】
(第3実施例)
第3実施例では、冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、アラームを出力するアラーム出力部と、を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0071】
図9は、第3実施例における生体材料噴射装置100bの電気的な構成を示すブロック図である。図9は、第2実施例で説明した図8の生体材料噴射装置100aの電気的な構成を示すブロック図に、冷却能力判定部75、アラーム出力部80を追加した図である。
【0072】
冷却能力判定部75は、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしているか否かを判定する。冷却能力判定部75は、CPU71がROM73に記憶されたプログラムをRAM72に読み出して実行することにより機能する。
【0073】
アラーム出力部80は、音としてのアラームを出力する例えばブザーなどにより構成されたり、光の点滅をアラームとするLED(LightEmittinngDiode)などにより構成されたりする。あるいは、図1の表示部123をアラーム出力部80として用い、文字情報をアラームとして出力してもよい。
【0074】
図10は、冷却能力判定部75が実行するプログラムのフローチャートである。ステップS200では、CPU71は、冷却部としてのペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する。
【0075】
ペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する方法は、例えば、ペルチェ素子を動作させたり停止させたりしたときに更新されるRAM72に設けられたフラグの内容をCPU71が取得して判断する。
【0076】
CPU71は、ペルチェ素子が動作中であるときは、ステップS201にすすむ。ペルチェ素子が停止中であるときは、ステップS200に戻る。ステップS201では、温度検出部としてのサーミスタ60から温度を取得する。
【0077】
ステップS202では、取得した温度が所定の温度以上であるか否かを判断する。所定の温度以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定し、ステップS203にすすむ。所定の温度未満であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていると判定し、ステップS200に戻る。
【0078】
所定の温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲において、最高温度または高い方の温度を定めた温度である。
【0079】
ステップS203では、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0080】
以上、第3実施例で説明した生体材料噴射装置100bは、第2実施例で説明した生体材料噴射装置100aに、更に、冷却部としてのペルチェ素子55の冷却能力を判定する冷却能力判定部75と、アラームを出力するアラーム出力部80と、を備え、冷却能力判定部75は、サーミスタ60から取得した温度が、所定の温度以上であるとき、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0081】
例えば気温が高いと、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持するために必要な冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合がある。このような場合に、生体材料カートリッジ113の温度は、適正温度範囲において、高い方の温度になる。更に、気温が上昇すると、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲を超えてしまう虞がある。
【0082】
本実施例の構成によれば、冷却能力判定部75は、サーミスタ60から取得した温度が所定の温度以上であるときは、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。これにより、生体材料カートリッジ113内の温度を生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲まで冷却するための冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足している場合に、生体材料カートリッジ113内の温度が、適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、例えば冷蔵庫などに収容すれば、生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0083】
(第4実施例)
第4実施例では、冷却部を動作させるための電流値を検出する電流値検出部を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0084】
図11は、第4実施例における生体材料噴射装置100cの電気的な構成を示すブロック図である。図11は、第3実施例で説明した図9の生体材料噴射装置100bの電気的な構成を示すブロック図に、電流値検出部81を追加した図である。
【0085】
電流値検出部81は、冷却部としてのペルチェ素子55を動作させるための電流値を検出する。
【0086】
図12は、本実施例における冷却能力判定部75が実行するプログラムのフローチャートである。ステップS210では、CPU71は、冷却部としてのペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する。
【0087】
ペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する方法は、例えば、第3実施例で説明したように、ペルチェ素子を動作させたり停止させたりしたときに更新されるRAM72に設けられたフラグの内容をCPU71が取得して判断する。あるいは、電流値検出部81によってペルチェ素子を動作させるための電流値を検出することにより、ペルチェ素子55が動作しているか否かを判断する方法でもよい。
【0088】
CPU71は、ペルチェ素子55が動作中であるときは、ステップS211にすすむ。ペルチェ素子が停止中であるときは、ステップS210に戻る。ステップS211では、CPU71は、電流値検出部81によってペルチェ素子55を動作させるための電流値を取得する。
【0089】
ステップS212では、CPU71は、取得した電流値が所定の電流値以上であるか否かを判断する。所定の電流値は、ペルチェ素子55を動作させるための電流値の範囲において、最大値または高い方の電流値を設定したものである。
【0090】
サーミスタ60によって検出された生体材料カートリッジ113の温度と、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における最高温度との温度差が大きいとき、CPU71は、ペルチェ素子55を動作させるための電流値を大きくしてペルチェ素子55が冷却する能力を上げようとする。
【0091】
従って、電流値検出部81が取得した電流値が、ペルチェ素子55を動作させるための電流値の範囲において最大値または高い方にあるときは、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度になっていることを示す。
【0092】
ステップS212では、CPU71は、取得された電流値が所定の電流値以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定する。そのため、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度になっていると判定し、ステップS213にすすむ。取得された電流値が所定の電流値未満であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていると判定する。そのため、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度にはなっていないと判定し、ステップS210に戻る。
【0093】
ステップS213では、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0094】
以上、第4実施例で説明した生体材料噴射装置100cは、第3実施例で説明した生体材料噴射装置100bに、冷却部としてのペルチェ素子55を動作させるための電流値を検出する電流値検出部81を備え、冷却能力判定部75は、電流値が所定の電流値以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定し、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0095】
第3実施例では説明したように、例えば気温が高いと、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持するために必要な冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合がある。このような場合に、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲において、高い方の温度になる。更に、気温が上昇すると、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲を超えてしまう虞がある。
【0096】
本実施例の構成によれば、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合、生体材料カートリッジ113内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者は、冷蔵庫などに生体材料カートリッジ113を保管すれば、生体材料カートリッジ113内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0097】
(第5実施例)
第5実施例では、放熱板と噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0098】
図13は、放熱板124と噴射ヘッド12とに当接する熱伝導性部材61を備えた図である。熱伝導性部材61は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する金属である。放熱板124から熱伝導性部材61を介して、熱が噴射ヘッド12に伝導される。
【0099】
冷蔵庫などに生体材料を保管することにより、生体材料を含む液体の温度が低下すると、生体材料を含む液体の粘性が低下する。このような生体材料を含む液体が収容された収容部を冷蔵庫から取り出して生体材料を噴射すると、噴射ヘッド12内の流路が詰まる場合がある。
【0100】
本実施例で説明したようにすれば、生体材料を含む液体の温度が低下することにより粘性が増して噴射ヘッド12内の流路が詰まることを抑制できる。従って、冷蔵庫に保管するときの容器としての生体材料カートリッジ113をそのまま生体材料噴射装置に用いて、噴射ヘッド12から噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施例における生体材料噴射装置の外観斜視図。
【図2】噴射ヘッドの斜視図。
【図3】組み立てられた噴射ヘッドの断面側面図。
【図4】図3のA−A線における矢印方向から見た図。
【図5】生体材料カートリッジの外観斜視図。
【図6】キャリッジに備えられた生体材料カートリッジと放熱板の図。
【図7】温度検出部としてのサーミスタを備えたことを示す図。
【図8】第2実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図9】第3実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図10】第3実施例における冷却能力判定部が実行するプログラムのフローチャート。
【図11】第4実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図12】第4実施例における冷却能力判定部が実行するプログラムのフローチャート。
【図13】放熱板と生体材料噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えた図。
【符号の説明】
【0102】
12…噴射ヘッド、16…接続パイプ、17…チューブ、50…押し当て板、51…バネ、52…バネ支持部、53…孔、54…凹部、55…ペルチェ素子、56…フィン、60…サーミスタ、71…CPU、72…RAM、73…ROM、74…ユニット制御部、75…冷却能力判定部、80…アラーム出力部、81…電流値検出部、100,100a…生体材料噴射装置、113…生体材料カートリッジ、124…放熱板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の臓器や組織が病気やけがにより損傷し、外科もしくは内科的に治療が出来ない場合にはそれらの臓器や組織を移植する以外に機能を回復させるための選択肢がない場合が多い。しかし、必要な臓器や組織が必要な時に入手できることは稀である。この問題を解決するために、再生医学や組織工学などの分野では移植が必要な本人から細胞を採取し、体外で培養して組織化し、これを移植することを目的とした研究が行われている。
例えば特許文献1では、細胞などの生体材料が収容された収容部とインクジェットプリンタに備えられたようなノズルを有する噴射ヘッドを備えた装置を用いて、噴射ヘッドから生体材料を噴射することにより生体組織を構築する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−17798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体材料を噴射ヘッドから噴射しようとするとき、それまで冷蔵庫などで温度管理されて培養されていた容器から、噴射ヘッドに備えられた収容部に生体材料を移すことになる。
従って、生体材料が培養されていた容器から収容部に移すとき、収容部の口元などに付着していた細菌が混入する場合がある。また、生体材料が培養されていた容器から収容部に移すための作業時間を要してしまう。また、収容部に移された生体材料は温度管理されないので、生体材料が劣化したり死滅したりしてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の一部の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
〔適用例1〕生体材料を収容する収容部と、前記収容部を冷却する冷却部と、前記冷却部から発生する熱を放熱する放熱部と、前記収容部に連結された、前記生体材料を噴射する噴射ヘッドと、前記収容部を脱着する脱着部と、を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【0007】
この構成によれば、収容部を冷却する冷却部と、冷却部から発生する熱を放熱する放熱部を備える。これにより、収容部内の温度が上昇することを抑制できるので、収容部に収容された生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0008】
また、収容部を脱着する脱着部を備える。これにより、噴射ヘッドを用いて生体材料を噴射しないときは、温度管理ができる冷蔵庫などに保管する。そして、噴射ヘッドを用いて生体材料を噴射しようとするときは、冷蔵庫から収容部を取り出し、生体材料噴射装置に装着して噴射ヘッドから生体材料を噴射すればよい。すなわち、冷蔵庫に保管していたときの容器をそのまま生体材料噴射装置の収容部として用いることにより、噴射ヘッドから噴射することができる。従って、容器を移し替えるための作業時間を要しない。また、容器を移し替えることがないので、細菌が生体材料に混入することを抑制できる。
【0009】
〔適用例2〕更に、前記収容部の温度を検出する温度検出部と、前記冷却部の動作を制御することにより、前記収容部の温度を制御する温度制御部と、を備えたことを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0010】
この構成によれば、収容部の温度管理ができるので、収容部内の温度を生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲にすることができる。これにより生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0011】
〔適用例3〕更に、前記冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、アラームを出力するアラーム出力部と、を備え、前記冷却能力判定部は、前記温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0012】
この構成によれば、冷却能力判定部は、温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、アラーム出力部によってアラームを出力させる。これにより、冷却能力が不足する場合、収容部内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、冷蔵庫などに収容部を保管すれば、収容部内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0013】
〔適用例4〕前記冷却部は電流が流れることにより前記収容部を冷却するペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0014】
この構成によれば、冷却部がペルチェ素子を用いて構成されることによって、生体材料噴射装置が大型化することを抑制できる。
【0015】
〔適用例5〕更に、前記ペルチェ素子に流れる電流値を検出する電流値検出部を備え、 前記冷却能力判定部は、前記電流値が所定の電流値以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0016】
この構成によれば、電流値が所定の電流値以上であるときは、アラーム出力部によってアラームを出力させる。これにより、冷却能力が不足する場合、収容部内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、冷蔵庫などに収容部を保管すれば、収容部内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0017】
〔適用例6〕更に、前記放熱部と前記噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えたことを特徴とする上記生体材料噴射装置。
【0018】
この構成によれば、生体材料を含む液体の温度が低下し、粘性が増して噴射ヘッド内の流路が詰まることを抑制できる。従って、冷蔵庫などに保管するときの容器をそのまま生体材料噴射装置に用いて、噴射ヘッドから噴射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
(第1実施例)
本実施例では、火傷やけがなどによって損傷した指、手などの皮膚を、損傷した部位に向かって生体材料を噴射することによって再生する生体材料噴射装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施例における生体材料噴射装置100の外観斜視図である。ベース103には2本のレール106,112が備えられる。スライドベース105は、レール106,112をD1に示す方向にスライドすることができる。スライドベース105には、キャリッジ移動用モータ115、従動ローラ107が備えられる。
【0021】
キャリッジ移動用モータ115によって駆動される駆動ローラ114と従動ローラ107には、ベルト108が備えられる。ベルト108にはキャリッジ111が固定される。
キャリッジ111を貫通するガイド軸120は、レール106の図面右側でスライドベース105に備えられた支持部121と、レール112の図面左側でスライドベース105に備えられた支持部122とによって固定される。
【0022】
キャリッジ移動用モータ115が回転することによって、ベルト108が回転し、キャリッジ111は、ガイド軸120に沿ってD2に示す方向に移動することができる。
【0023】
キャリッジ111には、生体材料が収容された収容部としての生体材料カートリッジ113が搭載される。生体材料カートリッジ113は、キャリッジ111に搭載されたり、キャリッジ111から取り外されたりすることができる。
【0024】
キャリッジ111には、熱を放熱する放熱板124が備えられる。
【0025】
スライドベース105には、ボールナット支持部116が固定される。ボールナット支持部116には、ボールナット117が備えられる。
【0026】
ボールナット117とボールネジ軸118とは噛み合って備えられる。スライドベース移動用モータ101によってボールネジ軸118が時計周りまたは反時計周りに回転されると、スライドベース105は、レール106,112に沿ってD1に示す方向に移動する。
【0027】
キャリッジ111の図面下方向には、噴射ヘッド(不図示)が備えられる。噴射ヘッドからは、生体材料カートリッジ113から供給された生体材料が図面下方向に噴射される。
【0028】
ベース103に備えられた制御ボックス104内には、スライドベース移動用モータ101、キャリッジ移動用モータ115を制御するためのモータ駆動回路(不図示)と、制御ケーブル102を介して、噴射ヘッドから生体材料を噴射するための制御を行う噴射ヘッド駆動回路(不図示)とが備えられる。
【0029】
制御ボックス104には、ボタン操作などによる操作部119、液晶パネルなどからなる表示部123が備えられる。操作部119から入力された数値に基づいて、モータ駆動回路の制御によって、方向D1と方向D2におけるキャリッジ111の位置を指定することができる。
【0030】
噴射ヘッド駆動回路によって、キャリッジ111に備えられた噴射ヘッドから生体材料が、テーブル109に置かれた指110の損傷した部位に向かって噴射される。キャリッジ111が方向D1と方向D2に移動しながら、噴射ヘッドから生体材料を噴射することができる。
【0031】
次に、キャリッジ111に備えられた噴射ヘッドについて説明する。図2は、噴射ヘッド12の斜視図であり、一部断面で示してある。図3は、組み立てられた噴射ヘッド12の断面側面図、図4は図3のA−A線における矢印方向から見た図である。
【0032】
これらの図に示すように、噴射ヘッド12は、下記に詳述する構造を持つ上側基板1、中間基板2、下側基板3を重ねて接合した積層構造となっている。中間基板2は、例えばシリコン基板であり、複数のノズル孔4を構成するように中間基板2の表面に一端より平行に等間隔で形成された複数のノズル溝21と、各々のノズル溝21に連通し底壁を振動板5とする吐出室6を構成することになる凹部22と、凹部22の後部に設けられオリフィス7を構成して流入口となるための細溝23と、及び各々の吐出室6に生体材料を供給するための共通のキャビティ8を構成することになる凹部24を有する。
【0033】
また、振動板5の下部には後述する電極を装着するため振動室9を構成することになる凹部25が設けられている。ノズル溝21のピッチは2mm程度であり、その幅は40μm程度にされる。
【0034】
中間基板2の上面に接合される上側基板1は、例えばガラスまたはプラスチックからなり、この上側基板1の接合によって、ノズル孔4、吐出室6、オリフィス7及びキャビティ8が構成される。そして、上側基板1にはキャビティ8に連通する供給口14を穿設する。
【0035】
中間基板2の下面に接合される下側基板3は、例えばガラスまたはプラスチックからなり、この下側基板3の接合によって振動室9を構成するとともに、下側基板3の表面に振動板5に対応する各々の位置にて電極31を形成する。
【0036】
電極31はリード部32及び端子部33を持つ。さらに端子部33を除き電極31及びリード部32の全体を絶縁膜34で被覆している。各端子部33にはリード線35がボンディングされる。
【0037】
上側基板1、中間基板2、下側基板3は図2のように組み立てられて噴射ヘッド12が構成される。さらに、中間基板2と電極31の端子部33間にそれぞれ発振回路26が接続される。図1の生体材料カートリッジ113からチューブ17、接続パイプ16を介して供給された生体材料は、供給口14を通じて中間基板2の内部に供給され、キャビティ8、吐出室6等を満たしている。
【0038】
次に、噴射ヘッド12の動作を説明する。電極31に発振回路26により、例えば0V〜+電圧のパルス電圧を印加し、電極31の表面が+電位に帯電すると、対応する振動板5の下面は−電位に帯電する。したがって、振動板5は静電気の吸引作用により下方へ撓む。
【0039】
次に、電極31をOFFにすると、該振動板5は復元する。したがって、吐出室6内の圧力が急激に上昇し、ノズル孔4より生体材料13を噴射する。そして、振動板5が下方へ撓むことにより、生体材料がキャビティ8よりオリフィス7を通じて吐出室6内に補給される。
【0040】
発振回路26には、上記のように0V〜+電圧間をON・OFFさせるものや交流電源等が用いられる。
【0041】
図5は、生体材料カートリッジ113の外観斜視図である。生体材料カートリッジ113には、生体材料カートリッジ113の内部に生体材料を収容するために開けたり閉じたりする蓋部57が設けられる。
【0042】
生体材料カートリッジ113の蓋部57と反対側には、弾力性を有するチューブ17が備えられる。生体材料カートリッジ113を生体材料噴射装置100から取り外し、冷蔵庫などに保管するときは、例えばクリップ(不図示)などを用いて、チューブ17をつまみ、生体材料がチューブ17から流出しないようにする。
【0043】
次に、キャリッジ111に備えられた生体材料カートリッジ113と放熱板124について説明する。図6は、図1の方向D2における図面右側から見た図で、キャリッジ111に備えられた生体材料カートリッジ113と放熱板124の図である。
【0044】
キャリッジ111には凹部54が形成されている。キャリッジ111の図面下側には、噴射ヘッド12が備えられる。キャリッジ111には、キャリッジ111の底部を貫通する孔53が形成されている。
【0045】
凹部54に、生体材料カートリッジ113の図面下部が挿入されると、チューブ17は、孔53を通るとともに、チューブ17は接続パイプ16と接続する。従って、凹部54に生体材料カートリッジ113の図面下部が挿入されると、チューブ17と接続パイプ16を介して、生体材料カートリッジ113と図3の噴射ヘッド12は連結される。
【0046】
生体材料カートリッジ113が、凹部54から離脱すると、チューブ17と接続パイプ16とは離間され、生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とは分離される。
【0047】
キャリッジ111に備えられた放熱板124は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する金属から構成される。放熱板124は、複数のフィン56を有する。放熱板のフィン56と反対側には、冷却部としてのペルチェ素子55が備えられる。ペルチェ素子55は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、一方の金属から他方の金属に熱が移動するペルチェ効果が得られる素子である。ペルチェ素子には、図1の制御ボックス104内の電源に接続されたケーブル125を介して電流が流れる。
【0048】
ペルチェ素子55は、例えばコンピュータのCPUの冷却などに利用されているもので、電流が流れることで片面が放熱し、反対側の片面が吸熱する。本実施例では、生体材料カートリッジ113がキャリッジ111に備えられているとき、ペルチェ素子55の放熱側が放熱板124のフィン56と反対側に面で当接し、吸熱側が生体材料カートリッジ113に面で当接する。
【0049】
キャリッジ111には、方向D2にスライドする押し当て板50、キャリッジ111に固定されるバネ支持部52が備えられる。弾性を有するバネ51は、押し当て板50とバネ支持部52とを連結する。
【0050】
生体材料カートリッジ113が凹部54に挿入されているとき、バネ51によって、押し当て板50は、生体材料カートリッジ113を図面左方向に押す力を発生する。そのため、押し当て板50によって、生体材料カートリッジ113がキャリッジ111に固定される。
【0051】
また、押し当て板50が生体材料カートリッジ113を図面左方向に押すことにより、前述したように、ペルチェ素子55の放熱側が放熱板124のフィン56と反対側の面に当接し、吸熱側が生体材料カートリッジ113の面に当接する。これにより、ペルチェ素子55の吸熱側に当接する生体材料カートリッジ113を冷却し、ペルチェ素子55の放熱側に当接する放熱板124から放熱される。
【0052】
本実施例における脱着部は、生体材料カートリッジ113をキャリッジ111に取り付けたり分離したりする手段と、生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とを連結したり分離したりする手段と、を有する。
【0053】
生体材料カートリッジ113をキャリッジ111に取り付けたり分離したりする手段は、キャリッジ111に設けられた、凹部54、押し当て板50、バネ51、バネ支持部52から構成される。
【0054】
生体材料カートリッジ113と噴射ヘッド12とを連結したり分離したりする手段は、キャリッジ111に形成された孔53、生体材料カートリッジ113に備えられたチューブ17、及び噴射ヘッド12に備えられた接続パイプ16によって構成される。
【0055】
以上、説明した本実施例における生体材料噴射装置100は、生体材料を収容する収容部としての生体材料カートリッジ113と、電流が流れることにより生体材料カートリッジ113を冷却する冷却部としてのペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱部としての放熱板124と、生体材料カートリッジ113に連結された、生体材料を噴射する噴射ヘッド12と、生体材料カートリッジ113を脱着する脱着部と、を備える。
【0056】
この構成によれば、生体材料カートリッジ113を冷却するペルチェ素子55と、ペルチェ素子55から発生する熱を放熱する放熱板124を備える。これにより、気温の上昇や細胞分裂による発熱などによって、生体材料カートリッジ113内の温度が上昇することを抑制できるので、生体材料カートリッジ113に収容された生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0057】
また、生体材料カートリッジ113とキャリッジ111とを脱着する脱着部としての凹部54、押し当て板50、バネ51、バネ支持部52を備える。これにより、噴射ヘッド12を用いて生体材料を噴射しないときは、温度管理ができる冷蔵庫などに生体材料カートリッジ113を保管する。そして、噴射ヘッド12を用いて生体材料を噴射しようとするときは、冷蔵庫から生体材料カートリッジ113を取り出し、生体材料噴射装置100に装着して噴射ヘッド12から生体材料を噴射すればよい。すなわち、冷蔵庫に保管するときの容器としての生体材料カートリッジ113をそのまま生体材料噴射装置100に用いて、噴射ヘッド12から噴射することができるので、容器を移し替えるための作業時間を要しない。また、容器を移し替えることがないので、細菌が生体材料に混入することを抑制できる。
【0058】
また、冷却部は、ペルチェ素子55から構成されることによって、生体材料噴射装置が大型化することを抑制できる。
【0059】
(第2実施例)
第2実施例では、収容部の温度を検出する温度検出部と、冷却部の動作を制御することによって収容部の温度を制御する温度制御部とを備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0060】
図7は、第1実施例で説明した押し当て板に温度検出部としてのサーミスタを備えたことを示す図である。第2実施例の生体材料噴射装置(不図示)は、第1実施例の生体材料噴射装置100の押し当て板50に温度検出部としてのサーミスタを備えたものである。
【0061】
図7に示すように、第2実施例における押し当て板50aには、温度検出部としてのサーミスタ60が備えられる。サーミスタ60の生体材料カートリッジ113側の面は、押し当て板50aと同一平面を有し、押し当て板50aが生体材料カートリッジ113に当接すると、サーミスタ60は生体材料カートリッジ113に当接する。
【0062】
図8は、第2実施例における生体材料噴射装置100aの電気的な構成を示すブロック図である。制御ボックス104(図1参照)には、CPU71、RAM72、ROM73、ユニット制御部74が備えられたコントローラ基板70が内蔵されている。
【0063】
CPU71がROM73からRAM72に制御用プログラムを読み出して実行することにより、ユニット制御部74は、噴射ヘッド12の駆動、キャリッジ移動用モータ115の駆動、スライドベース移動用モータ101の駆動、冷却部としてのペルチェ素子55の動作、をそれぞれ制御する。
【0064】
収容部の温度が、生体材料が生存するための適正温度範囲に入るように、ユニット制御部74は、ペルチェ素子55に流れる電流を調整し、ペルチェ素子が吸熱したり放熱したりする動作を制御する。
【0065】
制御ボックス104に備えられた操作部119から入力された数値に基づいて、上述の制御用プログラムが実行される。制御ボックス104に備えられた表示部123には、実行する制御用プログラムを選択するためのメニュー、選択された制御用プログラムの実行中に選択するためのメニュー、操作部119から入力された数値などが表示される。
【0066】
温度検出部としてのサーミスタ60は、生体材料カートリッジ113の温度としての情報を検出する。CPU71は、サーミスタ60が検出した温度としての情報を取得する。ユニット制御部74は、取得された温度としての情報に基づいて、ペルチェ素子55の動作を制御する。
【0067】
本実施例における温度制御部は、CPU71、RAM72、ROM73、ユニット制御部74から構成され、CPU71がROM73から制御用プログラムを読み出して実行し、ユニット制御部74がペルチェ素子55の動作を制御することによって機能する。
【0068】
以上、本実施例で説明した生体材料噴射装置100aは、収容部としての生体材料カートリッジ113の温度を検出する温度検出部としてのサーミスタ60と、冷却部としてのペルチェ素子55の温度を制御する温度制御部と、を備える。
【0069】
この構成によれば、収容部の温度管理ができるので、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持できるので、生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0070】
(第3実施例)
第3実施例では、冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、アラームを出力するアラーム出力部と、を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0071】
図9は、第3実施例における生体材料噴射装置100bの電気的な構成を示すブロック図である。図9は、第2実施例で説明した図8の生体材料噴射装置100aの電気的な構成を示すブロック図に、冷却能力判定部75、アラーム出力部80を追加した図である。
【0072】
冷却能力判定部75は、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしているか否かを判定する。冷却能力判定部75は、CPU71がROM73に記憶されたプログラムをRAM72に読み出して実行することにより機能する。
【0073】
アラーム出力部80は、音としてのアラームを出力する例えばブザーなどにより構成されたり、光の点滅をアラームとするLED(LightEmittinngDiode)などにより構成されたりする。あるいは、図1の表示部123をアラーム出力部80として用い、文字情報をアラームとして出力してもよい。
【0074】
図10は、冷却能力判定部75が実行するプログラムのフローチャートである。ステップS200では、CPU71は、冷却部としてのペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する。
【0075】
ペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する方法は、例えば、ペルチェ素子を動作させたり停止させたりしたときに更新されるRAM72に設けられたフラグの内容をCPU71が取得して判断する。
【0076】
CPU71は、ペルチェ素子が動作中であるときは、ステップS201にすすむ。ペルチェ素子が停止中であるときは、ステップS200に戻る。ステップS201では、温度検出部としてのサーミスタ60から温度を取得する。
【0077】
ステップS202では、取得した温度が所定の温度以上であるか否かを判断する。所定の温度以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定し、ステップS203にすすむ。所定の温度未満であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていると判定し、ステップS200に戻る。
【0078】
所定の温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲において、最高温度または高い方の温度を定めた温度である。
【0079】
ステップS203では、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0080】
以上、第3実施例で説明した生体材料噴射装置100bは、第2実施例で説明した生体材料噴射装置100aに、更に、冷却部としてのペルチェ素子55の冷却能力を判定する冷却能力判定部75と、アラームを出力するアラーム出力部80と、を備え、冷却能力判定部75は、サーミスタ60から取得した温度が、所定の温度以上であるとき、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0081】
例えば気温が高いと、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持するために必要な冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合がある。このような場合に、生体材料カートリッジ113の温度は、適正温度範囲において、高い方の温度になる。更に、気温が上昇すると、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲を超えてしまう虞がある。
【0082】
本実施例の構成によれば、冷却能力判定部75は、サーミスタ60から取得した温度が所定の温度以上であるときは、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。これにより、生体材料カートリッジ113内の温度を生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲まで冷却するための冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足している場合に、生体材料カートリッジ113内の温度が、適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者が、例えば冷蔵庫などに収容すれば、生体材料が劣化したり死滅したりすることを抑制できる。
【0083】
(第4実施例)
第4実施例では、冷却部を動作させるための電流値を検出する電流値検出部を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0084】
図11は、第4実施例における生体材料噴射装置100cの電気的な構成を示すブロック図である。図11は、第3実施例で説明した図9の生体材料噴射装置100bの電気的な構成を示すブロック図に、電流値検出部81を追加した図である。
【0085】
電流値検出部81は、冷却部としてのペルチェ素子55を動作させるための電流値を検出する。
【0086】
図12は、本実施例における冷却能力判定部75が実行するプログラムのフローチャートである。ステップS210では、CPU71は、冷却部としてのペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する。
【0087】
ペルチェ素子55が動作中であるか否かを判断する方法は、例えば、第3実施例で説明したように、ペルチェ素子を動作させたり停止させたりしたときに更新されるRAM72に設けられたフラグの内容をCPU71が取得して判断する。あるいは、電流値検出部81によってペルチェ素子を動作させるための電流値を検出することにより、ペルチェ素子55が動作しているか否かを判断する方法でもよい。
【0088】
CPU71は、ペルチェ素子55が動作中であるときは、ステップS211にすすむ。ペルチェ素子が停止中であるときは、ステップS210に戻る。ステップS211では、CPU71は、電流値検出部81によってペルチェ素子55を動作させるための電流値を取得する。
【0089】
ステップS212では、CPU71は、取得した電流値が所定の電流値以上であるか否かを判断する。所定の電流値は、ペルチェ素子55を動作させるための電流値の範囲において、最大値または高い方の電流値を設定したものである。
【0090】
サーミスタ60によって検出された生体材料カートリッジ113の温度と、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における最高温度との温度差が大きいとき、CPU71は、ペルチェ素子55を動作させるための電流値を大きくしてペルチェ素子55が冷却する能力を上げようとする。
【0091】
従って、電流値検出部81が取得した電流値が、ペルチェ素子55を動作させるための電流値の範囲において最大値または高い方にあるときは、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度になっていることを示す。
【0092】
ステップS212では、CPU71は、取得された電流値が所定の電流値以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定する。そのため、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度になっていると判定し、ステップS213にすすむ。取得された電流値が所定の電流値未満であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていると判定する。そのため、生体材料カートリッジ113の内部における温度は、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲における高い方の温度にはなっていないと判定し、ステップS210に戻る。
【0093】
ステップS213では、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0094】
以上、第4実施例で説明した生体材料噴射装置100cは、第3実施例で説明した生体材料噴射装置100bに、冷却部としてのペルチェ素子55を動作させるための電流値を検出する電流値検出部81を備え、冷却能力判定部75は、電流値が所定の電流値以上であるときは、ペルチェ素子55の冷却能力が、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を維持するために必要な冷却能力を満たしていないと判定し、アラーム出力部80によってアラームを出力させる。
【0095】
第3実施例では説明したように、例えば気温が高いと、生体材料が劣化せずに生存できる適正温度範囲を保持するために必要な冷却能力より、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合がある。このような場合に、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲において、高い方の温度になる。更に、気温が上昇すると、生体材料カートリッジ113内の温度は、適正温度範囲を超えてしまう虞がある。
【0096】
本実施例の構成によれば、ペルチェ素子55の冷却能力が不足する場合、生体材料カートリッジ113内の温度が、生体材料が劣化せずに生存する適正温度範囲を超えてしまう前に、アラームによって通知を受けた使用者は、冷蔵庫などに生体材料カートリッジ113を保管すれば、生体材料カートリッジ113内の生体材料が劣化してしまうことを抑制できる。
【0097】
(第5実施例)
第5実施例では、放熱板と噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えた生体材料噴射装置について説明する。
【0098】
図13は、放熱板124と噴射ヘッド12とに当接する熱伝導性部材61を備えた図である。熱伝導性部材61は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する金属である。放熱板124から熱伝導性部材61を介して、熱が噴射ヘッド12に伝導される。
【0099】
冷蔵庫などに生体材料を保管することにより、生体材料を含む液体の温度が低下すると、生体材料を含む液体の粘性が低下する。このような生体材料を含む液体が収容された収容部を冷蔵庫から取り出して生体材料を噴射すると、噴射ヘッド12内の流路が詰まる場合がある。
【0100】
本実施例で説明したようにすれば、生体材料を含む液体の温度が低下することにより粘性が増して噴射ヘッド12内の流路が詰まることを抑制できる。従って、冷蔵庫に保管するときの容器としての生体材料カートリッジ113をそのまま生体材料噴射装置に用いて、噴射ヘッド12から噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施例における生体材料噴射装置の外観斜視図。
【図2】噴射ヘッドの斜視図。
【図3】組み立てられた噴射ヘッドの断面側面図。
【図4】図3のA−A線における矢印方向から見た図。
【図5】生体材料カートリッジの外観斜視図。
【図6】キャリッジに備えられた生体材料カートリッジと放熱板の図。
【図7】温度検出部としてのサーミスタを備えたことを示す図。
【図8】第2実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図9】第3実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図10】第3実施例における冷却能力判定部が実行するプログラムのフローチャート。
【図11】第4実施例における生体材料噴射装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図12】第4実施例における冷却能力判定部が実行するプログラムのフローチャート。
【図13】放熱板と生体材料噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えた図。
【符号の説明】
【0102】
12…噴射ヘッド、16…接続パイプ、17…チューブ、50…押し当て板、51…バネ、52…バネ支持部、53…孔、54…凹部、55…ペルチェ素子、56…フィン、60…サーミスタ、71…CPU、72…RAM、73…ROM、74…ユニット制御部、75…冷却能力判定部、80…アラーム出力部、81…電流値検出部、100,100a…生体材料噴射装置、113…生体材料カートリッジ、124…放熱板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料を収容する収容部と、
前記収容部を冷却する冷却部と、
前記冷却部から発生する熱を放熱する放熱部と、
前記収容部に連結された、前記生体材料を噴射する噴射ヘッドと、
前記収容部を脱着する脱着部と、
を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記収容部の温度を検出する温度検出部と、
前記冷却部の動作を制御することにより、前記収容部の温度を制御する温度制御部と、を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、
アラームを出力するアラーム出力部と、を備え、
前記冷却能力判定部は、前記温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生体材料噴射装置において、
前記冷却部は電流が流れることにより前記収容部を冷却するペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記ペルチェ素子に流れる電流値を検出する電流値検出部を備え、
前記冷却能力判定部は、前記電流値が所定の電流値以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記放熱部と前記噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項1】
生体材料を収容する収容部と、
前記収容部を冷却する冷却部と、
前記冷却部から発生する熱を放熱する放熱部と、
前記収容部に連結された、前記生体材料を噴射する噴射ヘッドと、
前記収容部を脱着する脱着部と、
を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記収容部の温度を検出する温度検出部と、
前記冷却部の動作を制御することにより、前記収容部の温度を制御する温度制御部と、を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記冷却部の冷却能力を判定する冷却能力判定部と、
アラームを出力するアラーム出力部と、を備え、
前記冷却能力判定部は、前記温度検出部から取得した温度が所定の温度以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生体材料噴射装置において、
前記冷却部は電流が流れることにより前記収容部を冷却するペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記ペルチェ素子に流れる電流値を検出する電流値検出部を備え、
前記冷却能力判定部は、前記電流値が所定の電流値以上であるときは、前記アラーム出力部によってアラームを出力させることを特徴とする生体材料噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の生体材料噴射装置において、
更に、前記放熱部と前記噴射ヘッドとに当接する熱伝導性部材を備えたことを特徴とする生体材料噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−104269(P2010−104269A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277813(P2008−277813)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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