説明

生体物質の検出方法、生体物質検出用チップの製造方法及び生体物質検出用チップ

【課題】インターリンカーを通じてポリジアセチレンリポソーム間の連結を強化してセンサチップ内のポリジアセチレンリポソームが積層された形態とし、蛍光信号を増幅して低い濃度の生体物質を効果的に検出できる生体物質の検出方法を提供する。
【解決方法】本発明の生体物質の検出方法は、(S1)基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させる段階と、(S2)前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させて前記基板上に積層する段階と、(S3)前記ポリジアセチレンリポソームに検出対象の生体物質と相補的に結合する物質を固定化させる段階と、(S4)前記ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させて生体物質検出用チップを製造する段階と、(S5)前記生体物質検出用チップに前記検出対象の生体物質を反応させる段階と、(S6)前記生体物質検出用チップの蛍光信号を測定する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体物質の検出方法に関し、更に詳しくは、外部からの刺激に対して色遷移が可能なポリジアセチレン(PDA)をナノプローブに製作して色遷移現象で抗原を迅速かつ簡便に探知できる生体物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリジアセチレンバイオセンサの大半が合成レセプターを用いる形態であり、現在まで抗体を選択的に固定化したセンサの例は極一部に過ぎない。2003年に米国の研究チームがポリジアセチレンで免疫検出法を開発して発表したが、製作方式が複雑であり、対案となり得る新たな形態の免疫検出法が必要であると判断される。
【0003】
現在、海外各地でポリジアセチレンに関する研究が進められているが、これまではポリジアセチレン分子体の物理的、化学的特性に基づいた実験を中心に研究が行なわれており、バイオセンサとして活用できるという理論的な土台のみを提供している。韓国のポリジアセチレンセンサの研究レベルは世界的な水準であり、特にポリジアセチレンでセンサチップを製作する技術は最も進んでいると判断される。
【0004】
一般に、抗体を用いた定量分析方法としては、酵素免疫測定法(Enzyme Immunoassay、EI)、ELISA法(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)及び放射免疫測定法(Radio Immunoassay、RIA)などが挙げられる。
【0005】
ELISA法は、抗体に酵素を結合させて抗原−抗体反応を確認する方法であって、放射能免疫試験法(RIA)に匹敵する水準の敏感度を有しながらも放射能を使用しないという点で大きな長所を有しており、その利用が増えている。しかし、ELISA法は分析に多量の試料を必要とし、時間が長くかかるほか、複数段階の過程を経なければならないという短所がある。また、最も敏感度の高い方法である放射免疫測定法は放射能物質による危険が問題となる。
【0006】
近年、このような従来技術の問題点を解決するために、同位元素、蛍光、酵素反応を用い、信号変換が可能な分析方法が提案された。しかし、これらの方法のうち、同位元素測定法は安全性に問題があり、酵素反応測定法は分析範囲が狭いため多様な濃度で存在する試料を分析するのに不適であり、蛍光測定法は高価の蛍光物質を検出蛋白質に再び結合させて用いなければならないという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために、ポリジアセチレンを用いることのような非標識(Label−free)検出方式が提案された。ポリジアセチレンは3重結合が交互に存在するジアセチレン(diacetylene)単量体の高分子を意味する。ジアセチレンは両性性質によって水溶液上でリポソーム、Langmuir−Blodgett(LB)又はLangmuir−Schaeffer(LS)単分子膜のような超分子体を形成するものと知られている。超分子体を形成したジアセチレンは紫外線に露出する場合、隣接するジアセチレンの間で高分子化反応が生じ、青色を呈するようになる。また、高分子化されたポリジアセチレン超分子体は、温度、pH、摩擦、界面活性剤又は溶媒などの刺激を受けると、赤色に色遷移されるという特性を有する。ポリジアセチレンの色遷移は、高分子結合のπ−結合(conjugation)の長さと、これにより分子が取る構造に従う。従って、ポリジアセチレン高分子結合の変化を用いた多様な形態のセンサが製造可能である。しかし、このようなポリジアセチレンバイオセンサは、ポリジアセチレンの固定化の不安定により、検出物質に対する信号が弱いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ジアミンなどのインターリンカーを通じてポリジアセチレンリポソーム間の連結(interlink)を強化してセンサチップ内のポリジアセチレンリポソームが積層された形態となるようにすることで、蛍光信号を増幅して低い濃度の生体物質を効果的に検出できる生体物質の検出方法を提供することになる。
【特許文献1】特開2007−161717
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、ポリジアセチレンリポソームを強固に結合させて基板上にポリジアセチレンリポソームを積層された形態で固定化させることで、チップを製造し、これを生体物質と反応させて色遷移を通じて信号の増幅を確認することで、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、(S1)基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させる段階と、(S2)前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させて前記基板上に積層する段階と、(S3)前記ポリジアセチレンリポソームに検出対象の生体物質と相補的に結合する物質を固定化させる段階と、(S4)前記ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させて生体物質検出用チップを製造する段階と、(S5)前記生体物質検出用チップに前記検出対象の生体物質を反応させる段階と、(S6)前記生体物質検出用チップの蛍光信号を測定する段階とを含む生体物質の検出方法を提供する。
【0011】
前記ポリジアセチレンリポソームは、例えばPCDA(10、12−Pentacosadiynoic−acid)及びDMPC(1、2−Dimyristoyl−sn−Glycero−3−phosphocholine)の混合物から製造され得る。ここで、リポソームの製造効率及び工程の容易性を考慮すると、前記PCDA及びDMPCの混合比は9:1〜6:4であり、前記PCDAとDMPCの混合時の温度は4〜100℃にすることが好ましい。
【0012】
一方、前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことが好ましい。
【0013】
前記(S2)段階で前記ポリジアセチレンリポソームは、インターリンカーを用いて互いに結合されることができる。ここで、前記インターリンカーは、リポソームの作用基と結合できる同一又は互いに異なる2つ以上の作用基を含み、例えば、スルホン基、アミン基又はカルボキシル基などの作用基を含むことができる。このようなインターリンカーの例としては、ジアミン、ジチオール、ジカルボキシ酸、ジオール、ストレプトアビジンなどが挙げられる。一方、前記インターリンカーの濃度は、0mMを超え、20mM以下であることが好ましい。インターリンカーの濃度が20mMを超えると、あまり広い範囲のリポソーム表面をアミン基に置換させるという問題が発生し得るので、好ましくない。
【0014】
前記(S1)段階は、例えば、前記基板と前記ポリジアセチレンリポソームにそれぞれアミン基とカルボキシル基を置換して、アミン基とカルボキシル基との間のNHS(N−Hydroxysuccinimide)/EDC(1−ethyl−3−[3−dimethylamino−propyl]carbodiimide hydrochloride)化学反応を用いて行われることができる。前記EDCは、一般にアミド結合を算出するために、カルボキシル基を活性化させてアミンと連結されるのに寄与する。このとき、連結の効率性を増加させるためにNHSを添加させて反応させる。前記NHS/EDC化学反応は、本技術分野において周知の内容であるため、詳細な説明を省略する。
【0015】
このとき、NHS/EDC化学反応は0〜37℃の範囲で行われることが好ましい。アミン基とカルボキシル基以外にも相互間で反応できる作用基を基板及びポリジアセチレンリポソームに置換して互いに反応させることで、(S1)段階を進めることができる。例えば、PCDAにマレイミド(maleimide)が結合されるPCDA−MIの場合、チオール基(−SH期)に置換された基板を用いて基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させることができる。
【0016】
前記(S3)段階で前記抗体の固定化は、NHS/EDCの化学反応を用いて行われることができる。
【0017】
前記(S4)段階で前記ポリジアセチレンリポソームは、10秒〜10分間紫外線に露出させることが好ましい。露出時間が10秒以下の場合には、露出時間があまりにも短いため、リポソームが青色に変化するのに限界があり、10分を超えると、既に青色に変化したリポソームにストレスが加わって赤色に変化するのに問題がある。
【0018】
前記(S5)段階で前記生体物質検出用チップに前記生体物質を反応させることは0〜50℃で行われることが好ましい。反応温度が0℃未満であるか、50℃を超える場合には生体物質に損傷が生じるという問題がある。
【0019】
本発明の生体物質の検出方法は、抗原−抗体、酵素−基質など相補的結合又は免疫反応をする物質の検出に広く活用され得る。
【0020】
前記生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acids)、オリゴヌクレオチド(oligonucleotides)、ペプチド(peptides)、蛋白質、生体膜(membrane)、糖鎖(polysaccharides)、抗原(antigen)、抗体(antibody)、及び細胞からなる群より選択される少なくとも1つであることができる。前記病原菌としては、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る生体物質の検出方法は、あらゆる生物学的結合及び生体内で行われ得るあらゆる化学的結合に適用可能である。また、本発明の生体物質の検出方法は極少量の生体物質も検出できるが、例えば、C.parvumなど病原菌の約10unit/mlの濃度も検出可能である。
【0022】
また、本発明は、(S1)基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させる段階と、(S2)前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させて前記基板上に積層する段階と、(S3)前記ポリジアセチレンリポソームに検出対象の生体物質と相補的に結合する物質を固定化させる段階と、(S4)前記ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させる段階とを含む生体物質検出用チップの製造方法を提供する。
【0023】
前記ポリジアセチレンリポソームは、PCDA及びDMPCの混合物から製造され得る。ここで、前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことができる。
【0024】
前記(S2)段階で前記ポリジアセチレンリポソームは、インターリンカーを用いて互いに結合されることができる。ここで、前記インターリンカーはリポソームの作用基と結合できる同一又は互いに異なる2つ以上の作用基を含み、例えば、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基などの作用基を含むことができる。このようなインターリンカーの例としては、ジアミン、ジチオール、ジカルボキシ酸、ジオール、ストレプトアビジンなどが挙げられる。
【0025】
前記生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acids)、オリゴヌクレオチド(oligonucleotides)、ペプチド(peptides)、蛋白質、生体膜(membrane)、糖鎖(polysaccharides)、抗原(antigen)、抗体(antibody)、及び細胞からなる群より選択される少なくとも1つであることができる。前記病原菌としては、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、本発明は、基板上に固定化された多層のポリジアセチレンリポソームを含み、前記ポリジアセチレンリポソームは検出対象の生体物質と相補的に結合する物質が固定化され、紫外線処理されて青色を呈することを特徴とする生体物質検出用チップを提供する。
【0026】
前記ポリジアセチレンリポソームは、PCDA及びDMPCの混合物から製造され得る。ここで、前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことができる。
【0027】
前記ポリジアセチレンリポソームは、インターリンカーを通じて互いに結合され得る。ここで、前記インターリンカーは、リポソームの作用基と結合できる同一又は互いに異なる2つ以上の作用基を含み、例えば、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基などの作用基を含むことができる。このようなインターリンカーの例としては、ジアミン、ジチオール、ジカルボキシ酸、ジオール、ストレプトアビジンなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
前記生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acids)、オリゴヌクレオチド(oligonucleotides)、ペプチド(peptides)、蛋白質、生体膜(membrane)、糖鎖(polysaccharides)、抗原(antigen)、抗体(antibody)、及び細胞からなる群より選択される少なくとも1つであることができる。前記病原菌としては、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ジアミンなどのインターリンカーを通じてポリジアセチレンリポソーム間の連結を強化してセンサチップ内のポリジアセチレンリポソームが積層された形態を形成するようにすることで、蛍光信号を増幅して低い濃度の生体物質を効果的に検出できるという効果を奏する。本発明は、生体物質を検出するバイオセンサチップなどに適用されて広く活用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明によれば、生体物質の検出のためのポリジアセチレンリポソームチップの製造時にエチレンジアミン(Ethylenediamine)のようなインターリンカーを用いてリポソーム間の結合を強化してリポソームが基板上に積層されるようにすることで、抗原−抗体免疫反応による色遷移信号を大幅に増幅させて生体物質を効果的に検出できる。
【0031】
ジアセチレンは両性性質により水溶液と界面を形成するので、リポソーム、マイセル、Langmuir Blodgett又はLangmuir Schaefferフィルムのような超分子体に自己組立の誘導が可能である。超分子体を形成するとき、ジアセチレン単量体間の距離が十分に狭いと、紫外線により高分子化され得るが、このとき、新たに形成された高分子結合により青色を呈するようになる。ここで、高分子結合の色は結合に加わるπ−結合と密接な関係があり、外部からの刺激により高分子の単量体の再配列が発生し、π−結合の長さが短くなり、刺激の程度によって次第に赤色への色遷移現象が生じる。色遷移を起こし得る一般的な刺激としては、温度、pH、表面摩擦、有機溶媒又は界面活性剤との相互作用が挙げられる。その他、超分子体の単量体を化学的に変形してレセプターが超分子体の界面に導き出されるように設計する場合、レセプターがリガンドと反応して色遷移が誘導されるバイオセンサ、又は生化学的分析技術として利用され得る。
【0032】
図1〜図3は、本発明によって生体物質検出用チップが製造される過程を概略的に示す図である。図1〜図3を参照すれば、まず基板110にポリジアセチレンリポソーム120が固定化される(図1)。基板には、アミン基111などが置換されてポリジアセチレンリポソーム120のカルボキシル基などと反応することで、ポリジアセチレンリポソーム120を固定化させる。次に、前記ポリジアセチレンリポソーム120を互いに結合させて前記基板110上に前記ポリジアセチレンリポソーム120を積層する(図2)。本段階を行う前にはポリジアセチレンリポソーム120間の結合力が弱いため、ポリジアセチレンリポソーム120が容易に洗い流されるので、積層構造を形成できないが、本段階を行うことで、結合力が強化されて積層構造を形成するようになる。次に、ポリジアセチレンリポソーム120に生体物質と相補的に結合する物質140を固定化させる(図3)。最後に、ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させる。本段階を通じてポリジアセチレンリポソームは青色を呈するようになる。
【0033】
以下、本発明の理解を促進するために、好適な実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例>多層ポリジアセチレンリポソームを含むセンサチップを用いた病原菌の検出
【0035】
1)PCDAとDMPCを用いてポリジアセチレンリポソームを製造
【0036】
最初の段階としては、リポソームの製造とガラス基板への固定化はPCDAとDMPCの混合とNHS/EDCの化学作用により行われた。PCDAとDMPCをそれぞれクロロホルムに一定の濃度(10mM)で溶解させてバイアルに強固に封止して−20℃で保管した。2つの溶液を一定のモル比率で混合して最終の脂質濃度が1mMとなるようにした。PCDAとDMPCを8:2のモル比率で混合した後、窒素ガスを用いてクロロホルムを蒸発させ、バイアルの底面にリピドフィルムを形成させた。形成されたリピドフィルムにPBSバッファを添加させ、80℃で15分間加熱して脂質フィルムをバッファ内に再分散させた。このように再分散された溶液をエクストルーダ(Extruder)システムを通じて透過大きさが100nmの膜に数回通過させた。このとき、エクストルーダシステムはPCDA脂質構造体の容易な形成のために75℃を維持した。最終的に、膜を通過した溶液はPCDAとDMPCを含む100nmサイズのリポソームで構成された。製造されたリポソーム溶液は、室温(25℃)で20分間冷やした後、アミンに置換されたガラス基板に固定化させる準備をした。
【0037】
2)ポリジアセチレンリポソームの固定化とポリジアセチレンリポソームの積層
【0038】
化学的方法を用いてポリジアセチレンリポソームをアミン置換されたガラス基板に固定化させた。NHSとEDCをPBSバッファ(10mM、pH7.4)にそれぞれ200mMの濃度となるように溶解させた。その後、準備されたポリジアセチレンリポソーム溶液をNHS/EDC溶液及びエチレンジアミンと同量で混合させた。このとき、エチレンジアミンの最適な濃度を決定するためにエチレンジアミンの濃度を0mM〜20mMまで多様に変化させながら、実験を行った。エチレンジアミンの濃度範囲は、エチレンジアミンの濃度があまり高いと、ポリジアセチレンリポソームの表面がいずれもアミン基に置換されてガラス基板に固定化されず、また、あまり低いと、信号増幅の効果がないということを考慮したものである。混合されたリポソーム溶液はマイクロ−アレイヤー(micro−arrayer)を用いてアミン置換されたガラス基板にスパットした。このようにポリジアセチレンリポソームがスパットされたガラス基板はリポソーム溶液の蒸発を防ぐために、低温(4℃)の多湿な容器で2時間反応させた。反応の終了後、ポリジアセチレンリポソーム基板を蒸留水と0.1%のTween−20溶液を用いて迅速に洗浄し、窒素ガスを用いて軽く乾燥させた。
【0039】
3)病原菌に対する抗体をポリジアセチレンリポソーム上に固定化
【0040】
抗体固定化もNHS/EDC化学反応を用いた。PBSバッファに溶解させた200mMのNHS/EDC溶液に抗体を混合してポリジアセチレンリポソームを固定化させた基板と、3時間反応させた。本過程も抗体溶液の蒸発を防ぐために低温(4℃)の多湿な容器で反応させた。反応の終了後、前の段階でのように、洗浄及び乾燥させてポリジアセチレンリポソームセンサチップの製作を完成した。
【0041】
4)病原菌(Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli 0−157、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalis)の検出
【0042】
先に製造されたセンサチップを254nmの紫外線に約5分間露出させた。紫外線に露出したポリジアセチレンリポソームセンサチップは、青色を呈するようになり、その後、前記準備した0mM〜20mM濃度のジアミン処理を施したセンサチップに病原菌(Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli 0−157、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalis;10unit/ml)を免疫反応の最適温度(37℃)で流した。このとき、免疫反応のストレスによって青色のポリジアセチレンリポソームセンサチップは赤色を呈するようになり、その色遷移の程度を光学顕微鏡で測定した。
【0043】
図4〜図6は、本実験を通じて得られるものであって、図4は、インターリンカーの濃度によるC.parvumの検出信号を示すグラフであり、図5は、インターリンカーを用いずにポリジアセチレンリポソームを単層で固定化した場合と、インターリンカーを用いてポリジアセチレンリポソームを多層で固定化した場合の検出信号を比較したグラフであり、図6は、インターリンカーの濃度別のC.parvum検出の色遷移イメージである。なお、図6をカラーで示したものを本件出願の物件提出書で提出している。
【0044】
図4〜図6の分析結果を通じて0mM〜1mMまでジアミンの濃度が高くなるほど、信号も増加したが、1mM以後は濃度が高くなるほど、信号が減少することが確認できた。また、ジアミンの濃度が1mMであるとき、信号が約205で最も高く、イメージを見ても明確に分かる。そして、既存の方法(0mM)と1mMのジアミンで処理したグラフを見ると、約20倍の信号が増幅されることを確認することができた。
【0045】
5)病原菌の濃度による検出信号の変化
【0046】
前記のような方法でジアミン処理をすれば、既存の方法よりも信号がかなり増幅するということを確認することができた。しかし、このような方法でセンサチップの機能を果たすことができるかを証明するためには、検出対象生体物質の濃度別に正確な信号が感知されることを示さなければならなかった。また、実際に河川水の病原性微生物を検出するためには、既存の方法の検出限界である10unit/mlでは実用化し難いため、更に低い検出限界を得なければならなかった。従って、センサチップの機能を正常に行えるかを証明するために、病原菌を濃度別に検出する実験を実施した。
【0047】
上記の方法通り、最適な濃度である1mMのジアミン処理されたポリジアセチレンリポソームセンサチップを254nmの紫外線に約5分間露出させた後、C.parvum(10unit/ml〜10unit/ml)、Giardia lamblia、E.coli 0−157、Salmonella typhimurium、 Shigella flexneri, Encephalitozoon intestinalis(10unit/ml〜10unit/ml)を37℃で流した。そして、光学顕微鏡で蛍光信号を測定した。図7及び図8は、上記実験を通じて得られるものであって、図7は、C.parvumの濃度による検出信号変化を示すグラフであり、図8は、検出信号値とC.parvumの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。図9は、Giardia lambliaの濃度による検出信号変化と検出信号値とGiardia lambliaの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。図10は、E.coli 0−157の、図11はSalmonella typhimuriumの、図12はShigella flexneri、図13はEncephalitozoon intestinalisのそれぞれの濃度による検出信号変化グラフと各病原菌の検出信号値と濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【0048】
図7〜図13の結果を通じて細胞の濃度が増加するにつれて信号も一定に増加して細胞の濃度による黒曲線が直線形態を示すことを確認し、最低10unit/mlの濃度から最大10unit/mlまで検出が可能であることが分かった。
【0049】
図14〜図19は、C.parvum(図14)、Giardia lamblia(図15)、E.coli 0−157(図16)、Salmonella typhimurium(図17)、Shigella flexneri(図18)、及びEncephalitozoon intestinalis(図19)に対する抗体を固定させたセンサチップで6種類の病原菌(10unit/ml)を同時に全て反応させて蛍光信号を分析したことを示すものである。図14〜図19の結果を通じてセンサチップに固定させた抗体に相応する病原菌のみ蛍光信号を示すことが分かる。即ち、本発明の生物質検出用チップは、標的物質ではないものには反応せず、所望の目標とする生体物質に対して特異的に反応することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によって生体物質検出用チップが製造される過程を概略的に示す図である。
【図2】本発明によって生体物質検出用チップが製造される過程を概略的に示す図である。
【図3】本発明によって生体物質検出用チップが製造される過程を概略的に示す図である。
【図4】インターリンカーの濃度によるC.parvumの検出信号を示すグラフである。
【図5】インターリンカーを用いずに、ポリジアセチレンリポソームを単層で固定化した場合と、インターリンカーを用いてポリジアセチレンリポソームを多層で固定化した場合の検出信号を比較したグラフである。
【図6】インターリンカーの濃度別のC.parvum検出の色遷移イメージである。
【図7】C.parvumの濃度による検出信号変化を示すグラフである。
【図8】検出信号値とC.parvumの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図9】Giardia lambliaの濃度による検出信号変化と検出信号値とGiardia lambliaの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図10】E.coli 0−157の濃度による検出信号変化と検出信号値とE.coli 0−157の濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図11】Salmonella typhimuriumの濃度による検出信号変化と検出信号値とSalmonella typhimuriumの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図12】Shigella flexneriの濃度による検出信号変化グラフと検出信号値とShigella flexneriの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図13】Encephalitozoon intestinalisの濃度による検出信号変化グラフと検出信号値とEncephalitozoon intestinalisの濃度の指数的な相関関係を示すグラフである。
【図14】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。
【図15】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。
【図16】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。
【図17】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。
【図18】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。
【図19】製作された生体物質検出用チップが所望の検出物質にのみ特異的に反応することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させる段階と、
(S2)前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させて前記基板上に積層する段階と、
(S3)前記ポリジアセチレンリポソームに検出対象の生体物質と相補的に結合する物質を固定化させる段階と、
(S4)前記ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させて生体物質検出用チップを製造する段階と、
(S5)前記生体物質検出用チップに前記検出対象の生体物質を反応させる段階と、
(S6)前記生体物質検出用チップの蛍光信号を測定する段階と
を含む生体物質の検出方法。
【請求項2】
前記ポリジアセチレンリポソームは、PCDA(10、12−Pentacosadiynoic−acid)及びDMPC(1、2−Dimyristoyl−sn−Glycero−3−phosphocholine)の混合物から製造されることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項3】
前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項2に記載の生体物質の検出方法。
【請求項4】
前記(S2)段階でインターリンカーを用いて前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項5】
前記インターリンカーは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項4に記載の生体物質の検出方法。
【請求項6】
前記PCDA及びDMPCの混合比は9:1〜6:4であることを特徴とする請求項2に記載の生体物質の検出方法。
【請求項7】
前記PCDAとDMPCの混合時の温度は、4〜100℃であることを特徴とする請求項2に記載の生体物質の検出方法。
【請求項8】
前記(S1)段階は、前記基板に置換されたアミン基と前記ポリジアセチレンリポソームのカルボキシル基のNHS(N−Hydroxysuccinimide)/EDC(1−ethyl−3−[3−dimethylamino−propyl]carbodiimide hydrochloride)化学反応を用いたことを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項9】
前記(S1)段階で前記NHS/EDC化学反応は、0〜37℃の範囲で行われることを特徴とする請求項8に記載の生体物質の検出方法。
【請求項10】
前記インターリンカーの濃度は、0mMを超え、20mM以下であることを特徴とする請求項4に記載の生体物質の検出方法。
【請求項11】
前記(S3)段階で前記抗体の固定化は、NHS/EDC化学反応を用いることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項12】
前記(S4)段階で前記ポリジアセチレンリポソームを10秒〜10分間紫外線に露出させることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項13】
前記(S5)段階で前記生体物質検出用チップに前記生体物質を反応させることは0〜50℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項14】
前記検出対象の生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質、生体膜、糖鎖、抗原、抗体、及び細胞からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項15】
前記病原菌は、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項14に記載の生体物質の検出方法。
【請求項16】
(S1)基板にポリジアセチレンリポソームを固定化させる段階と、
(S2)前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させて前記基板上に積層する段階と、
(S3)前記ポリジアセチレンリポソームに検出対象の生体物質と相補的に結合する物質を固定化させる段階と、
(S4)前記ポリジアセチレンリポソームを紫外線に露出させる段階と
を含む生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項17】
前記ポリジアセチレンリポソームは、PCDA及びDMPCの混合物から製造されることを特徴とする請求項16に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項18】
前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項17に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項19】
前記(S2)段階でインターリンカーを用いて前記ポリジアセチレンリポソームを互いに結合させることを特徴とする請求項16に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項20】
前記インターリンカーは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項19に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項21】
前記検出対象の生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質、生体膜、糖鎖、抗原、抗体、及び細胞からなる群より選択されることを特徴とする請求項16に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項22】
前記病原菌は、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli 、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項21に記載の生体物質検出用チップの製造方法。
【請求項23】
基板上に固定化された多層のポリジアセチレンリポソームを含み、
前記ポリジアセチレンリポソームは検出対象の生体物質と相補的に結合する物質が固定化され、紫外線処理されて青色を呈する生体物質検出用チップ。
【請求項24】
前記ポリジアセチレンリポソームは、PCDA及びDMPCの混合物から製造されることを特徴とする請求項23に記載の生体物質検出用チップ。
【請求項25】
前記PCDAは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項24に記載の生体物質検出用チップ。
【請求項26】
前記ポリジアセチレンリポソームは、インターリンカーを通じて互いに結合されることを特徴とする請求項23に記載の生体物質検出用チップ。
【請求項27】
前記インターリンカーは、スルホン基、アミン基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項26に記載の生体物質検出用チップ。
【請求項28】
前記検出対象の生体物質は、病原菌、DNA、RNA、PNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質、生体膜、糖鎖、抗原、抗体、及び細胞からなる群より選択されることを特徴とする請求項23に記載の 生体物質検出用チップ。
【請求項29】
前記病原菌は、Cryptosporidium parvum、Giardia lamblia、E.coli、Salmonella typhimurium、Shigella flexneri、及びEncephalitozoon intestinalisからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項28に記載の生体物質検出用チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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