説明

生体用電極パッド

【課題】事前の皮膚処理を不要にして、医療従事者が極めて多忙な実際の医療現場で心電図や筋電データ等を常に安定して計測できるようにすることにある。
【解決手段】生体電気信号を検出する電極1と、電極1を覆う粘着性導電ゲル3と、電極1の不使用時に粘着性導電ゲル3を覆う剥離シート4と、を具え、電極1の使用時に剥離シート4を剥がされて生体の皮膚に装着される生体用電極パッドにおいて、粘着性導電ゲル3と剥離シート4との間に、粘着性導電ゲル3の、電極1に対向する側と反対の側の面の少なくとも一部と対向させて、皮膚処理シート8を引き抜き可能に介挿し、皮膚処理シート8の、剥離シート4と対向する面に脱脂剤9と研磨剤10との少なくとも一方を固着させたことを特徴とする生体用電極パッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体の皮膚に装着されて、心電計等により生体電気信号を計測するために用いられる生体用電極パッドに関し、特には、生体電気信号を容易に安定して計測し得る生体用電極パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の生体用電極パッドとしては、例えば特許文献1に記載された如きものが知られており、この生体用電極パッドは、図5(a),(b)の斜視図および断面図に示すように、平板状の鍔部1aおよびその中央部から突出する接続端子1bを有する電極1を具え、それら鍔部1aおよび接続端子1bの表面が良導電性金属である銀メッキまたは塩化銀コーティングにより被覆されており、その電極1の接続端子1bが、保護シート2の中央部の孔2aに裏側から挿通されて保護シート2の表側に突出し、その保護シート2の裏面に、鍔部1aを覆うようにシート状の粘着性導電ゲル3が貼り付けられ、さらにその粘着性導電ゲル3の全体を覆うように、当該電極の不使用時に粘着性導電ゲル3を保護する剥離シート4が設けられたものである。
【0003】
かかる生体用電極パッドはその使用の際に、接続端子1bに電気ケーブルを介して心電計等を接続するとともに、剥離シート4を剥がして露出させた粘着性導電ゲル3を生体の所定部位の皮膚表面に貼り付けて装着することで、粘着性導電ゲル3を介して皮膚表面の生体電気信号を鍔部1aで検出し、接続端子1bから電気ケーブルを介して心電計等に送ることができる。
【0004】
従来の生体用電極パッドとしてはまた、図6(a),(b)の表側斜視図および裏側斜視図に示す如きフィルム型のものも知られており、このフィルム型電極パッドは、矩形の基部5aとそこから延在する延長部5bとを有するフレキシブル基板5に設けられた電極1を具え、ここではフレキシブル基板5の基部5aの裏面に銅製のプリントパターンにより電極1の平板状の鍔部1aが形成され、また基部5aから延長部5bにかけてフレキシブル基板5の表面に銅製のプリントパターンにより接続回路1cが形成されてその接続回路1cの拡幅された先端部が接続端子1bとされ、基部5aの中央部のスルーホールを介してフレキシブル基板5の裏面の鍔部1aと表面の接続回路1cとが電気的に接続され、フレキシブル基板5の表面の接続回路1cが絶縁膜6で被覆されるとともに、鍔部1aの表面が良導電性金属である銀メッキまたは塩化銀コーティングにより被覆されている。
【0005】
そしてこのフィルム型電極パッドでは、フレキシブル基板5の表面が保護シート2で覆われるとともに、フレキシブル基板5の裏面に鍔部1aを覆うようにシート状の粘着性導電ゲル3が貼り付けられ、上記保護シート2が、粘着シート7の表側の非粘着面にフレキシブル基板5を間に挟んで貼り付けられて、粘着シート7の中央部の開口部7aを粘着性導電ゲル3が貫通し、これによりその粘着シート7の裏側の粘着面が粘着性導電ゲル3の周囲を囲繞し、さらにその粘着シート7の粘着面および粘着性導電ゲル3を全体的に覆うように、当該電極の不使用時に粘着性導電ゲル3を保護する剥離シート4が設けられている。
【0006】
かかる生体用電極パッドもその使用の際に、接続端子1bに電気ケーブルを介して心電計等を接続するとともに、剥離シート4を剥がして露出させた粘着シート7の粘着面および粘着性導電ゲル3を生体の所定部位の皮膚表面に貼り付けて装着することで、粘着性導電ゲル3を介して皮膚表面の生体電気信号を鍔部1aで検出し、接続端子1bから電気ケーブルを介して心電計等に送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−213455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の如き従来の生体用電極パッドでは何れも、皮膚の表面に貼り付ける際に、粘着性導電ゲル3と皮膚表面との電気的接触を良好にするために事前に、皮膚表面の電極装着部位を先ず脱脂剤としてのアルコール綿で拭き、次いで研磨剤としての紙やすりで軽く撫でる、といった皮膚処理が必要となる。しかしながら実際の医療現場では、医療従事者が極めて多忙なため、かかる皮膚処理がなかなか徹底されず、心電図あるいは筋電データ等が安定して計測されていない場合が多々見られた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記従来の生体用電極パッドの課題を有利に解決するものであり、この発明の生体用電極パッドは、生体電気信号を検出する電極と、前記電極を覆う粘着性導電ゲルと、前記電極の不使用時に前記粘着性導電ゲルを覆う剥離シートと、を具え、前記電極の使用時に前記剥離シートを剥がされて生体の皮膚に装着される生体用電極パッドにおいて、前記粘着性導電ゲルと前記剥離シートとの間に、前記粘着性導電ゲルの、前記電極に対向する側と反対の側の面の少なくとも一部と対向させて、皮膚処理シートを引き抜き可能に介挿し、前記皮膚処理シートの、前記剥離シートと対向する面に脱脂剤と研磨剤との少なくとも一方を固着させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる生体用電極パッドにあっては、皮膚の表面に貼り付ける際に、先ず、接続端子に電気ケーブルを介して心電計等を接続するとともに、剥離シートを剥がして粘着性導電ゲルと皮膚処理シートとを露出させ、次いで粘着性導電ゲルの、皮膚処理シートと対向していない部分、あるいはその粘着性導電ゲルの周囲を囲繞する粘着シートを生体の所定部位の皮膚表面に押し付けて貼り付け、皮膚処理シートを粘着性導電ゲルと皮膚表面との間に挟み込む。そしてその状態で皮膚処理シートを粘着性導電ゲルと皮膚表面との間から引き抜くと、当初は剥離シートと対向し、その後は皮膚表面と対抗する皮膚処理シートの面に固着された脱脂剤と研磨剤との少なくとも一方が、皮膚処理シートと一緒に粘着性導電ゲルで皮膚表面に押さえ付けられた状態で皮膚表面上を移動して、皮膚表面の電気的接触を良好にする皮膚処理を行う。しかる後、粘着性導電ゲルの、皮膚処理シートが抜き取られて露出した部分を皮膚表面に押し付けて貼り付ける。
【0011】
従って、この発明の生体用電極パッドによれば、事前に皮膚表面の電極装着部位をアルコール綿で拭いたりさらに紙やすりで軽く撫でたりする等の皮膚処理を行わなくても、生体用電極パッドの装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤と研磨剤との少なくとも一方で皮膚処理を行うことができるので、医療従事者が極めて多忙な実施の医療現場で、心電図あるいは筋電データ等を常に安定して計測することができる。
【0012】
なお、この発明の生体用電極パッドにおいては、前記皮膚処理シートには、前記脱脂剤と前記研磨剤とを前記引き抜き方向へ並べて固着させても良い。このようにすれば、生体用電極パッドの装着の際にその生体用電極が具える脱脂剤および研磨剤で順次に皮膚処理を行うことができるので、皮膚処理をより有効ならしめることができる。ここで、脱脂剤および研磨剤は、皮膚処理シートの引き抜き方向に対し何れが先行しても良いが、先ず脱脂剤で皮膚表面を脱脂し、次いで研磨剤で皮膚表面を荒らすのが、より好ましい。
【0013】
また、この発明の生体用電極パッドにおいては、前記皮膚処理シートは中間で折り返して、その折り返し部に対し一端部側を前記粘着性導電ゲルに対向させるとともに、その折り返し部に対し他端部側を前記剥離シートに対向させて、前記他端部側に前記脱脂剤と前記研磨剤との少なくとも一方を固着させても良い。このようにすれば、皮膚処理シートを粘着性導電ゲルに摺接させずに引き抜くことができるので、皮膚処理シートの引き抜きを容易にするとともに粘着性導電ゲルの表面の荒れを防止することができる。
【0014】
さらに、この発明の生体用電極パッドにおいては、前記皮膚処理シートは前記粘着性導電ゲルの中央部を横切って延在しても良い。このようにすれば、粘着性導電ゲルの両側部を皮膚表面に貼り付けて生体用電極を位置決めした状態で粘着性導電ゲルの中央部から皮膚処理シートを引き抜けるので、皮膚処理シートの引き抜きを容易にすることができる。
【0015】
そして、この発明の生体用電極パッドにおいては、前記粘着性導電ゲルは粘着シートで周囲を囲繞されていても良い。このようにすれば、粘着性導電ゲルの粘着力に加えて粘着シートの粘着力で皮膚表面にしっかり貼り付き得るとともに、粘着性導電ゲルを粘着シートで囲繞して皮膚表面上に確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)および(b)は、この発明の生体用電極パッドの一実施例を示す斜視図および断面図である。
【図2】(a),(b),(c)および(d)は、上記実施例の生体用電極パッドの使用方法を経時的に示す説明図である。
【図3】(a)および(b)は、この発明の生体用電極パッドの他の一実施例を表側および裏側からそれぞれ示す斜視図である。
【図4】(a)および(b)は、上記実施例の生体用電極パッドの構成を示す分解斜視図およびそのフレキシブル基板周りを示す半部断面図である。
【図5】(a)および(b)は、従来の生体用電極パッドの一例を示す斜視図および断面図である。
【図6】(a)および(b)は、従来の生体用電極パッドの他の一例を表側および裏側からそれぞれ示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)および(b)は、この発明の生体用電極パッドの一実施例を示す斜視図および断面図であり、図中、図5に示す従来例と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0018】
この実施例の生体用電極パッドは、図1に示すように、図5に示す従来例と同様、平板状の鍔部1aおよびその中央部から突出する接続端子1bを有する電極1を具え、それら鍔部1aおよび接続端子1bを形成する例えばプラスチック製の基材の表面が、良導電性金属である銀メッキまたは塩化銀コーティングにより被覆されており、その電極1の接続端子1bは、通常の非導電性材料からなる保護シート2の中央部の孔2aに裏側から挿通されて保護シート2の表側に突出し、その保護シート2の裏面には、例えば図示しない両面粘着テープ等を介して、あるいは直接、鍔部1aを覆うようにシート状の粘着性導電ゲル3が貼り付けられている。
【0019】
しかしてこの実施例では、その粘着性導電ゲル3の中央部を横切って延在して粘着性導電ゲル3と対向するように、例えば剥離シート4と同様の材料からなる皮膚処理シート8が重ねられ、そして粘着性導電ゲル3の、皮膚処理シート8で覆われていない両側部に貼り付けるようにして、当該電極パッドの不使用時に粘着性導電ゲル3の全体を覆って保護する、粘着性導電ゲル3から剥がしやすい表面処理がされた通常のフィルムからなる剥離シート4が設けられている。
【0020】
このようにして粘着性導電ゲル3と剥離シート4との間に介挿された皮膚処理シート8は、その中間部で折り返されて、一端部8aが粘着性導電ゲル3の一端部3aと重なり、折り返し部分8bが粘着性導電ゲル3の他端部3aからはみ出し、他端部8cが粘着性導電ゲル3の一端部3aから引き手として突出するように配置されている。
【0021】
そして、この皮膚処理シート8の折り返し部分8bと他端部8cとの間の部分の、剥離シート4に対向する面には、アルコール等を含浸させた不織布等からなる脱脂剤9と、微細な固体粒子等からなる研磨剤10とが、皮膚処理シート8の長手方向に並ぶとともにそれぞれ皮膚処理シート8の全幅に亘って帯状に延在するように接着固定されている。
【0022】
図2(a)〜(d)は、この実施例の生体用電極パッドの使用方法を経時的に示しており、この実施例の生体用電極パッドにあっては、皮膚の表面に貼り付ける際に、先ず、接続端子1bに電気ケーブルを介して心電計等を接続するとともに、図2(a)に示すように、剥離シート4を剥がして粘着性導電ゲル3と皮膚処理シート8とを露出させ、次いで図2(b)に示すように、粘着性導電ゲル3の、皮膚処理シート8と対向していない(皮膚処理シート8で覆われていない)両側部分を生体の所定部位の皮膚表面Sに押し付けて貼り付け、皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間に挟み込む。
【0023】
そしてその状態で、図2(c)に示すように、皮膚処理シート8の上記他端部8cを引いて皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間から引き抜いてゆくと、当初は剥離シート4と対向し、その後は皮膚表面Sと対抗する皮膚処理シート8の面に固着された脱脂剤9と研磨剤10とが、皮膚処理シート8と一緒に粘着性導電ゲル3で皮膚表面Sに押さえ付けられた状態で皮膚表面S上を移動して、先ず脱脂剤9で皮膚表面Sを脱脂し、次いで研磨剤10で皮膚表面Sを荒らす皮膚処理を行うことで皮膚表面Sの電気的接触を良好にする。そしてこの時、折り返し部分8bは、次第に一端部8aに近づくように皮膚処理シート8上で遷移しながら粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間を引き抜き方向へ移動してゆき、粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間から出る際に消滅する。しかる後、図2(d)に示すように、粘着性導電ゲル3の、皮膚処理シート8が抜き取られて露出した残りの部分を皮膚表面Sに押し付けて貼り付ける。
【0024】
従ってこの実施例の生体用電極パッドによれば、事前に皮膚表面Sの電極装着部位をアルコール綿で拭いたりさらに紙やすりで軽く撫でたりする等の皮膚処理を行わなくても、生体用電極パッドの装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤9と研磨剤10とで皮膚処理を行うことができるので、医療従事者が極めて多忙な実施の医療現場で、心電図あるいは筋電データ等を常に安定して計測することができる。
【0025】
しかもこの実施例の生体用電極パッドによれば、皮膚処理シート8には、脱脂剤9と研磨剤10とを引き抜き方向へ並べて固着させているため、生体用電極の装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤9と研磨剤10とで、先ず脱脂し次いで研磨するという順で皮膚処理を行うことができるので、皮膚処理をより有効ならしめることができる。
【0026】
またこの実施例の生体用電極パッドによれば、皮膚処理シート8は中間で折り返して、その折り返し部8bに対し一端部8a側を粘着性導電ゲル3に対向させるとともに、その折り返し部8bに対し他端部8b側を剥離シート4に対向させて、その他端部8b側に脱脂剤9と研磨剤10とを固着させているため、皮膚処理シート8の引き抜きの際に、折り返し部分8bに対し一端部8a側の部分が粘着性導電ゲル3に粘着したまま、折り返し部分8bに対し他端部8b側の部分がその一端部8a側の部分と皮膚表面Sとに摺接し、折り返し部分8bは次第に一端部8aに近づくように皮膚処理シート8上で遷移しながら粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間を引き抜き方向へ移動するので、皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3に摺接させずに引き抜くことができ、これにより皮膚処理シート8の引き抜きを容易にするとともに粘着性導電ゲル3の表面の荒れを防止することができる。
【0027】
さらにこの実施例の生体用電極パッドによれば、皮膚処理シート8は粘着性導電ゲル3の中央部を横切って延在しているため、粘着性導電ゲル3の両側部を皮膚表面Sに貼り付けて生体用電極パッドを位置決めした状態で粘着性導電ゲル3の中央部から皮膚処理シート8を引き抜けるので、皮膚処理シート8の引き抜きを容易にすることができる。
【0028】
図3(a)および(b)は、この発明の生体用電極パッドの他の一実施例を表側および裏側からそれぞれ示す斜視図、そして図4(a)および(b)は、上記実施例の生体用電極パッドの構成を示す分解斜視図およびそのフレキシブル基板周りを示す半部断面図であり、図中、図6に示す従来例と同様に部分はそれと同一の符号にて示す。
【0029】
この実施例の生体用電極パッドは、図3,4に示すように、図6に示す従来例と同様、矩形の基部5aとそこから延在する延長部5bとを有するフレキシブル基板5に設けられた電極1を具え、ここではフレキシブル基板5の基部5aの裏面に銅製のプリントパターンにより電極1の平板状の鍔部1aが形成され、また基部5aから延長部5bにかけてフレキシブル基板5の表面に銅製のプリントパターンにより接続回路1cが形成されてその接続回路1cの拡幅された先端部が接続端子1bとされ、基部5aの中央部のスルーホール5dを介してフレキシブル基板5の裏面の鍔部1aと表面の接続回路1cとが電気的に接続され、フレキシブル基板5の表面の接続回路1cが絶縁膜6で被覆されるとともに、鍔部1aの表面が良導電性金属である銀メッキまたは塩化銀コーティングにより被覆されている。
【0030】
そしてこの実施例のフィルム型電極パッドでは、フレキシブル基板5の表面が保護シート2で覆われるとともに、フレキシブル基板5の裏面に鍔部1aを覆うようにシート状の粘着性導電ゲル3が貼り付けられ、上記保護シート2が、粘着シート7の表側の非粘着面にフレキシブル基板5を間に挟んで貼り付けられて、粘着シート7の中央部の開口部7aを粘着性導電ゲル3が貫通し、これによりその粘着シート7の裏側の粘着面が粘着性導電ゲル3の周囲を囲繞している。
【0031】
しかしてこの実施例では、その粘着性導電ゲル3を横切って延在して粘着性導電ゲル3と対向するように、例えば剥離シート4と同様の材料からなる皮膚処理シート8が重ねられ、さらに粘着性導電ゲル3の両側方に位置する粘着シート7の裏側の粘着面に貼り付けるようにして、当該電極パッドの不使用時に粘着性導電ゲル3の全体を覆って保護する、粘着性導電ゲル3から剥がしやすい表面処理がされた通常のフィルムからなる剥離シート4が設けられている。
【0032】
このようにして粘着性導電ゲル3と剥離シート4との間に介挿された皮膚処理シート8は、先の実施例におけると同様、その中間部で折り返されて、一端部8aが粘着性導電ゲル3の一端部3aと重なり、折り返し部分8bが粘着性導電ゲル3の他端部3aからはみ出し、他端部8cが粘着性導電ゲル3の一端部3aから引き手として突出するように配置されている。
【0033】
そして、この皮膚処理シート8の折り返し部分8bと他端部8cとの間の部分の、剥離シート4に対向する面には、アルコール等を含浸させた不織布等からなる脱脂剤9と、微細な固体粒子等からなる研磨剤10とが、皮膚処理シート8の長手方向に並ぶとともにそれぞれ皮膚処理シート8の全幅に亘って帯状に延在するように接着固定されている。
【0034】
かかる実施例の生体用電極パッドもその使用の際に、先ず、接続端子1bに電気ケーブルを介して心電計等を接続するとともに、剥離シート4を剥がして粘着性導電ゲル3と皮膚処理シート8と粘着シート7の粘着面とを露出させ、次いで粘着性導電ゲル3の両側方に位置する粘着シート7の、皮膚処理シート8と対向していない(皮膚処理シート8で覆われていない)両側部分を生体の所定部位の皮膚表面Sに押し付けて貼り付け、皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間に挟み込む。
【0035】
そしてその状態で、皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間から引き抜いてゆくと、先に実施例におけると同様、当初は剥離シート4と対向し、その後は皮膚表面Sと対抗する皮膚処理シート8の面に固着された脱脂剤9と研磨剤10とが、皮膚処理シート8と一緒に粘着性導電ゲル3で皮膚表面Sに押さえ付けられた状態で皮膚表面S上を移動して、先ず脱脂剤9で皮膚表面Sを脱脂し、次いで研磨剤10で皮膚表面Sを荒らす皮膚処理を行うことで皮膚表面Sの電気的接触を良好にする。しかる後、粘着性導電ゲル3および粘着シート7の、皮膚処理シート8が抜き取られて露出した残りの部分を皮膚表面Sに押し付けて貼り付ける。
【0036】
従ってこの実施例の生体用電極パッドによれば、先の実施例と同様、事前に皮膚表面Sの電極装着部位をアルコール綿で拭いたりさらに紙やすりで軽く撫でたりする等の皮膚処理を行わなくても、生体用電極パッドの装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤9と研磨剤10とで皮膚処理を行うことができるので、医療従事者が極めて多忙な実施の医療現場で、心電図あるいは筋電データ等を常に安定して計測することができる。
【0037】
しかもこの実施例の生体用電極パッドによれば、先の実施例と同様、皮膚処理シート8には、脱脂剤9と研磨剤10とを引き抜き方向へ並べて固着させているため、生体用電極の装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤9と研磨剤10とで、先ず脱脂し次いで研磨するという順で皮膚処理を行うことができるので、皮膚処理をより有効ならしめることができる。
【0038】
またこの実施例の生体用電極パッドによれば、先の実施例と同様、皮膚処理シート8は中間で折り返して、その折り返し部8bに対し一端部8a側を粘着性導電ゲル3に対向させるとともに、その折り返し部8bに対し他端部8b側を剥離シート4に対向させて、その他端部8b側に脱脂剤9と研磨剤10とを固着させているため、皮膚処理シート8の引き抜きの際に、折り返し部分8bに対し一端部8a側の部分が粘着性導電ゲル3に粘着したまま、折り返し部分8bに対し他端部8b側の部分がその一端部8a側の部分と皮膚表面Sとに摺接し、折り返し部分8bは次第に一端部8aに近づくように皮膚処理シート8上で遷移しながら粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとの間を引き抜き方向へ移動するので、皮膚処理シート8を粘着性導電ゲル3に摺接させずに引き抜くことができ、これにより皮膚処理シート8の引き抜きを容易にするとともに粘着性導電ゲル3の表面の荒れを防止することができる。
【0039】
そしてこの実施例の生体用電極パッドによれば、粘着性導電ゲル3は粘着シート7で周囲を囲繞されているので、粘着性導電ゲル3の粘着力に加えて粘着シート7の粘着力で皮膚表面Sにしっかり貼り付き得るとともに、粘着性導電ゲル3を粘着シート7で囲繞して皮膚表面S上に確実に維持することができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、皮膚処理シート8は粘着性導電ゲル3の中央部から一側部を経て外部まで延在しても良く、この場合にも、粘着性導電ゲル3の他方の一側部を皮膚表面Sに貼り付けて生体用電極を位置決めした状態で粘着性導電ゲル3の上記一側部から皮膚処理シート8を引き抜けるので、皮膚処理シート8の引き抜きをある程度容易にすることができる。
【0041】
またこの発明の生体用電極パッドでは、皮膚処理シート8に折り返し部8bを設けず、粘着性導電ゲル3に対向する皮膚処理シート8の面に粘着性導電ゲル3の表面上を滑りやすいように例えばテフロン等の表面処理を施して、粘着性導電ゲル3と皮膚表面Sとに摺接させながら皮膚処理シート8を引き抜くようにしても良い。そしてこの発明の生体用電極パッドでは、皮膚処理シート8に脱脂剤9と研磨剤10との何れか一方のみを固着させても良く、あるいは脱脂剤9と研磨剤10との配置を逆にして設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
かくしてこの発明の生体用電極パッドによれば、事前に皮膚表面の電極装着部位をアルコール綿で拭いたりさらに紙やすりで軽く撫でたりする等の皮膚処理を行わなくても、生体用電極パッドの装着の際にその生体用電極パッドが具える脱脂剤と研磨剤との少なくとも一方で皮膚処理を行うことができるので、医療従事者が極めて多忙な実施の医療現場で、心電図あるいは筋電データ等を常に安定して計測することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電極
1a 鍔部
1b 接続端子
1c 接続回路
1d スルーホール
2 保護シート
2a 孔
3 粘着性導電ゲル
4 剥離シート
5 フレキシブル基板
5a 基部
5b 延長部
6 絶縁膜
7 粘着シート
7a 開口部
8 皮膚処理シート
8a 一端部
8b 折り返し部分
8c 他端部
9 脱脂剤
10 研磨剤
S 皮膚表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体電気信号を検出する電極と、
前記電極を覆う粘着性導電ゲルと、
前記電極の不使用時に前記粘着性導電ゲルを覆う剥離シートと、
を具え、
前記電極の使用時に前記剥離シートを剥がされて生体の皮膚に装着される生体用電極パッドにおいて、
前記粘着性導電ゲルと前記剥離シートとの間に、前記粘着性導電ゲルの、前記電極に対向する側と反対の側の面の少なくとも一部と対向させて、皮膚処理シートを引き抜き可能に介挿し、
前記皮膚処理シートの、前記剥離シートと対向する面に脱脂剤と研磨剤との少なくとも一方を固着させたことを特徴とする生体用電極パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62375(P2011−62375A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216326(P2009−216326)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(592059448)原田電子工業株式会社 (20)