説明

生体組織処理容器および生体組織処理装置

【課題】最終生成物に生体組織や消化酵素が混入しない消化処理および濃縮処理を行う容器及び装置の提供。
【解決手段】回転軸線の近傍に配置され、生体組織Aおよび消化酵素液を収容する消化処理空間9と、その上部に連絡し、半径方向外方に延びて、回転軸線回りの回転による遠心力により細胞懸濁液Cを濃縮する濃縮処理空間10と、濃縮処理空間10から消化処理空間9への液体の流動を許容しかつ逆流を制限する流動制限手段11と、消化処理空間9の底部から細胞懸濁液Cを外部に吸引する吸引配管4と、濃縮処理空間10内に細胞懸濁液Cおよび洗浄液を供給する供給配管5とを備え、濃縮処理空間10の半径方向最外位置近傍に、回転の停止時に、細胞懸濁液Cを濃縮して得られた細胞を含む少量の液体を貯留可能な凹部12aと、凹部12aにアクセスして細胞を含む液体を取り出し可能な取出ポート15とが設けられている生体組織処理容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織処理容器および生体組織処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪組織等の生体組織を消化酵素により消化し、分離された細胞を洗浄し、最終生成物としての高濃度の細胞懸濁液を得る生体組織処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/133874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の生体組織処理装置においては、脂肪組織を消化して得られた脂肪組織および消化酵素を含む細胞懸濁液の取り出し、脂肪組織が除去された消化酵素を含む細胞懸濁液の供給、細胞懸濁液から細胞が分離除去された上清の取り出し、分離された細胞を洗浄した消化酵素を含む洗浄液の取り出し、および、最終生成物である洗浄後の細胞懸濁液の取り出しが、脂肪組織を消化した消化槽を介して行われる。
【0005】
脂肪組織は容器の内壁に付着しやすいため、上記全ての工程において、取り出しおよび供給される液体は容器の内壁に付着している脂肪組織に接触させられる不都合がある。容器の内壁に付着している脂肪組織は洗浄されていないので、高濃度の消化酵素が付着している可能性があり、最終生成物である細胞懸濁液内に脂肪組織や消化酵素が含まれてしまう虞がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、最終生成物に生体組織や消化酵素が混入しないように、消化処理および濃縮処理を行うことができる生体組織処理容器および生体組織処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、回転軸線の近傍に配置され、生体組織および消化酵素液を収容する消化処理空間と、該消化処理空間の上部に連絡し、半径方向外方に延びて、前記回転軸線回りの回転による遠心力により細胞懸濁液を濃縮する濃縮処理空間と、該濃縮処理空間から前記消化処理空間への液体の流動を許容しかつ逆流を制限する流動制限手段と、前記消化処理空間の底部から細胞懸濁液を外部に吸引する吸引配管と、前記濃縮処理空間内に細胞懸濁液および洗浄液を供給する供給配管とを備え、前記濃縮処理空間の半径方向最外位置近傍に、回転の停止時に、前記細胞懸濁液を濃縮して得られた細胞を含む少量の液体を貯留可能な凹部と、該凹部にアクセスして細胞を含む液体を取り出し可能な取出ポートとが設けられている生体組織処理容器を提供する。
【0008】
本発明によれば、濃縮処理空間に生体組織および消化酵素液を収容して消化処理を行うと、生体組織の消化により生体組織由来細胞が分離されて、比重の大きな細胞懸濁液層が比重の小さい生体組織の下層に形成される。そして、吸引配管を介して細胞懸濁液を外部に吸引することにより、生体組織を消化処理空間に残して細胞懸濁液を消化処理空間から取り出すことができる。
【0009】
この状態で、生体組織処理容器を回転軸線回りに回転させつつ、供給配管を介して濃縮処理空間内に、取り出されていた細胞懸濁液を供給することにより、半径方向外方に延びる濃縮処理空間内において、比重の大きな細胞が半径方向最外部に移動し、細胞懸濁液が細胞群と上清とに遠心分離される。
このとき、消化処理空間に残されている生体組織にも遠心力が作用するが、流動制限手段によって濃縮処理空間への流動が制限され、細胞懸濁液に混入しないように維持される。
【0010】
遠心分離後、回転数を低減することによって遠心力を弱めると、遠心分離された上清が濃縮処理空間から消化処理空間に流れるが、遠心分離された細胞群は、少量の上清とともに凹部に貯留されて濃縮処理空間内に残される。この後に、生体組織処理容器を回転軸線回りに再度回転させつつ、供給配管を介して洗浄液を供給することにより、細胞群が洗浄液によって再懸濁される。そして、洗浄液の供給、遠心分離および上清の消化処理空間への排出を繰り返すことにより、細胞が洗浄され、生体組織片や消化酵素が除去される。
【0011】
最後の遠心分離後に、回転数を低減することによって遠心力を弱めると、遠心分離された上清が濃縮処理空間から消化処理空間に排出され、遠心分離された細胞群が少量の上清とともに、最終生成物として凹部に貯留された状態に残される。これにより、取出ポートを介して、シリンジ等によって凹部にアクセスし、最終生成物を取り出すことができる。
すなわち、本発明によれば、最終生成物である細胞懸濁液を消化処理空間に戻さずに取り出せるので、最終生成物への生体組織片や消化酵素の混入をより確実に防止することができる。
【0012】
上記発明においては、前記流動制限手段が、前記消化処理空間の上方に全周にわたって設けられ、前記消化処理空間の内面より半径方向内方に突出する括れ部であってもよい。
このようにすることで、生体組織処理容器を回転軸線回りに回転させると、消化処理空間内の収容物は遠心力によって消化処理空間の内壁に張り付いて半径方向最外方に移動しようとするが、括れ部によってそれ以上の上昇が制限される。一方、濃縮処理空間において分離された上清については、遠心力を弱めることで重力により、括れ部を通過して容易に消化処理空間に流動することができる。すなわち、簡易な構成によって消化処理空間への流入の許容と、濃縮処理空間への逆流の制限をより確実に行うことができる。
【0013】
また、本発明は、上記生体組織処理容器と、該生体組織処理容器を前記回転軸線回りに回転させる回転駆動部と、前記吸引配管に接続され、前記細胞懸濁液を吸引する吸引手段と、前記供給配管に接続され、前記吸引手段により吸引された前記細胞懸濁液を供給する懸濁液供給手段と、前記供給配管に接続され、前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備える生体組織処理装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、生体組織処理容器内に生体組織と消化酵素液とを収容し、消化処理を行うことによって分離された細胞懸濁液を吸引手段の作動によって吸引配管を介して生体組織処理容器の外部に排出し、回転駆動部の作動により生体組織処理容器を回転軸線回りに回転させつつ、懸濁液供給手段の作動により、排出された細胞懸濁液を供給配管を介して濃縮処理空間に供給することで遠心分離により細胞と上清とを分離することができる。
【0015】
この状態から、回転駆動部による回転を弱めて遠心力を低下させることで、上清を消化処理空間へ排出する動作、回転を再度強めて回転させつつ洗浄液供給手段の作動により、濃縮処理空間内の細胞に対して洗浄液を供給して懸濁させる動作、細胞懸濁液を遠心分離させる動作を繰り返すことにより細胞を洗浄する。そして、最終的に上清を排出した状態で濃縮処理空間の凹部に残る細胞と少量の洗浄液とからなる細胞懸濁液を取出ポートから最終生成物として取り出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最終生成物に生体組織や消化酵素が混入しないように、消化処理および濃縮処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体組織処理容器を示す縦断面図である。
【図2】図1の生体組織処理容器を備える生体組織処理装置を示す全体構成図である。
【図3】図2の生体組織処理装置を用いた消化処理部における脂肪層と細胞懸濁液層との分離工程を示す縦断面図である。
【図4】図2の生体組織処理装置を用いた細胞懸濁液の濃縮工程を示す縦断面図である。
【図5】図2の生体組織処理装置を用いた濃縮された細胞から上清を廃棄する工程を示す縦断面図である。
【図6】図2の生体組織処理装置を用いた最終生成物である濃縮された細胞懸濁液の取り出し工程を示す縦断面図である。
【図7】図2の生体組織処理装置の変形例を示す全体構成図である。
【図8】図1の生体組織処理容器の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る生体組織処理容器1および生体組織処理装置2について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織処理容器1は、図1に示されるように、容器本体3と、該容器本体3内に液体を供給する2本の容器内配管4,5と、容器本体4,5外部の固定配管6,7と容器内配管4,5とを接続する接続部8とを備えている。
【0019】
容器本体3は、下部に配される消化処理空間9と上部に配される濃縮処理空間10とを間に配置される仕切壁11によって上下に区画した回転体形状を有している。
仕切壁11は、中央に貫通孔11aを有するリング板状に形成され、容器本体3の内壁から全周にわたって半径方向内方に向かって延びるとともに、半径方向内方に向かって若干下降する形状を有している。
【0020】
消化処理空間9は、略水平な底面を有し、鉛直に配される回転軸線Xを中心軸とする略円筒状に形成され、内部に脂肪組織(生体組織)および消化酵素液を収容して攪拌することにより、消化酵素液によって脂肪組織を消化し、脂肪組織由来細胞を分離させる空間である。
【0021】
消化処理空間9には、接続部8から鉛直下方に向けて延びる1本の容器内配管4である吸引配管(以下、吸引配管4という。)が、仕切壁11の中央の貫通孔11aを貫通して挿入されている。吸引配管4は、その先端開口4aが消化処理空間9の底面に微小隙間をあけて対向する位置に配置されている。
【0022】
濃縮処理空間10は、消化処理空間9の側壁よりも、全周にわたって半径方向外方に突出する突出部12を有し該突出部12の上下の側壁13,14は、突出部12に向かって漸次広がるテーパ面状に形成されている。
突出部12は、空洞のドーナッツ状に形成され、内面には全周にわたって鉛直下方に凹む円環状の凹部12aを有している。
【0023】
濃縮処理空間10には、接続部8から鉛直下方に延びる1本の容器内配管5である供給配管(以下、供給配管5という。)が、水平方向に湾曲させられて、その先端の開口部5aを突出部12の内面に対向する方向に向けて配置されている。
【0024】
この凹部12aの容積は、所定量の細胞懸濁液を遠心分離して得られる脂肪由来細胞と少量の液体とを含む細胞懸濁液を収容することができる程度の大きさに設定されている。
また、突出部12には、その周方向の1箇所に、前記凹部12aの上方に配置された取出ポート15が備えられている。取出ポート15は突出部12の壁面を貫通する貫通孔15aと、該貫通孔15aを開閉可能に閉塞する蓋部材15bとを備えている。
【0025】
蓋部材15bを取り外して貫通孔15aを開口させ、図示しないシリンジ等の注射針を差し込んで凹部12aに貯留されている細胞懸濁液を吸引することにより容器本体3の外部に細胞懸濁液を取り出すことができるようになっている。
容器本体3と接続部8とは、軸受部材及びシール部材(いずれも不図示)を備えており、それぞれ回転軸線Xに対して回転自在である。したがって、容器本体3を軸線Xで回転させても、吸引配管4、供給配管5、固定配管6,7および接続部8は固定したままの位置をとることができる。
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る生体組織処理装置2について、図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織処理装置2は、上述した容器本体3をその回転軸線X回りに回転させるモータ22と、接続部8を介して吸引配管4および供給配管5に接続され、容器本体3内の細胞懸濁液を吸引および供給する懸濁液給排手段(吸引手段、懸濁液供給手段)16と、接続部8を介して供給配管5に接続され、洗浄液を供給する洗浄液供給手段17とを備えている。
【0027】
懸濁液給排手段16は、シリンジ16aとバルブ16b,18,19とを備えている。容器本体3内の細胞懸濁液を吸引する際には、バルブ19を閉じてバルブ16b,18を開放し、シリンジ16aのピストンを引くことにより、吸引配管4の開口部4aから消化処理空間9内の細胞懸濁液を吸引することができるようになっている。また、バルブ18を閉じてバルブ16b,19を開放し、シリンジ16aのピストンを押すことにより、供給配管5の開口部5aから濃縮処理空間10内へ細胞懸濁液を供給することができるようになっている。
【0028】
また、洗浄液供給手段17は、シリンジ17aと三方弁17bと洗浄液を収容する洗浄液容器17cとを備えている。容器本体3の濃縮処理空間10内に洗浄液を供給するには、三方弁17bのシリンジ17aと洗浄液容器17cとの間を開放し、シリンジ17aのピストンを引くことによって洗浄液容器17c内の洗浄液をシリンジ17a内に吸引した後、三方弁17bのシリンジ17aとバルブ18との間を開放するように切り替えて、バルブ18を閉じてバルブ19を開放する。そして、シリンジ17aのピストンを押すことにより、シリンジ17a内に吸引していた洗浄液を供給配管5を介して濃縮処理空間10内に供給することができるようになっている。
【0029】
このように構成された本実施形態に係る生体組織処理装置2を用いて脂肪組織Aから脂肪由来細胞を分離抽出するには、洗浄液容器17c内の洗浄液の一部をシリンジ17a内に吸引しておく。そして、消化処理空間9内に脂肪組織Aと消化酵素液とを収容し、モータ22を作動させて、容器本体3をゆっくり回転させることにより、消化処理空間9内の脂肪組織Aと消化酵素液とを攪拌する。
【0030】
これにより、脂肪組織Aが消化酵素により消化され、脂肪由来細胞が分離される。そして、モータ22の作動を停止して、所定時間にわたって静置することにより、図3に示されるように、消化処理空間9内の脂肪組織Aと消化酵素液との混合液が、脂肪層Bとその下層の細胞懸濁液層Cとに分離する。
【0031】
この状態で、バルブ19を閉じてバルブ16b,18を開き、懸濁液給排手段16を構成するシリンジ16aのピストンを引くことにより、消化処理空間9の底部に延びた吸引配管4の開口部4aから下層の細胞懸濁液Cをシリンジ16a内に吸引することができる。この状態でバルブ18を閉じる。
【0032】
細胞懸濁液Cが十分に吸引された後には、モータ22を作動させて容器本体3を回転軸線X回りに回転させつつ、バルブ19およびバルブ16bを開く。そして、細胞懸濁液Cを収容している懸濁液給排手段16のシリンジ16aのピストンを押すことにより、供給配管5を介して濃縮処理空間10内に細胞懸濁液Cが供給される。
【0033】
濃縮処理空間10内に供給された細胞懸濁液Cは、容器本体3の回転による遠心力を受けて、図4に示されるように、半径方向最外方に配置されている突起部12内に貯留されていく。そして、細胞懸濁液C内の各成分は、比重の大きさに応じて突起部12内に半径方向外方から比重の大きい順に堆積されていくことになる。すなわち、細胞懸濁液C内において比重の大きな細胞が半径方向最外方に配置され、その内側には、上清が配されるようになる。
【0034】
このとき、図4に示されるように、消化処理空間9内に残されている脂肪Bにも遠心力が作用して、脂肪Bが側壁に貼り付いた形態に配されるが、消化処理空間9と濃縮処理空間10との間は仕切壁11によって区画されているので、脂肪Bが濃縮処理空間10に流入することは防止される。
【0035】
そして、濃縮処理空間10内の細胞懸濁液Cが、十分に遠心分離された状態で、モータ22の回転数を低下させていくと、図5に示されるように、上清Dが突出部12から下側に流れ出し、仕切壁11の中央の貫通孔11aを介して消化処理空間9へと流入させられる。突出部12内面には凹部12aが設けられているので、回転の低下とともに全ての細胞懸濁液Cが突出部12から流出するのではなく、分離された脂肪由来細胞と少量の上清とを含む細胞懸濁液C’が凹部12aに捉えられるようにして残される。
【0036】
次に、モータ22の回転を速めて、細胞懸濁液C’に遠心力を付与しつつ、バルブ18を閉じてバルブ17b,19を開き、洗浄液供給部17のシリンジ17aのピストンを押す。洗浄液は供給配管5を介して濃縮処理空間10内に供給され、突出部12内に収容されている細胞懸濁液C’に向けて吐出されて、細胞が再懸濁される。そして、このようにして生成された細胞懸濁液C’の遠心分離、上清Dの除去および洗浄液の供給による再懸濁を繰り返すことにより、細胞に付着していた組織片や消化酵素が細胞から取り除かれ、清浄な状態の細胞が得られる。
【0037】
最終的には、洗浄工程の終了後に、図5に示されるように上清Dを排出した後、図6に示されるように突出部12に設けられた取出ポート15の蓋部材15bを取り外して、図示しないシリンジの注射針を貫通孔15aに挿入し、凹部12aに貯留されている脂肪由来細胞と少量の洗浄液とを含む細胞懸濁液C’を吸引することにより、矢印に示すようにシリンジ内に最終生成物を回収することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る生体組織処理容器1および生体組織処理装置2によれば、脂肪組織Aの消化に使用した消化処理空間9内に最終生成物である細胞懸濁液C’を戻さないので、細胞懸濁液C’が高濃度の消化酵素や脂肪Bに触れることがなく清浄な状態のまま回収することができるという利点がある。
【0039】
なお、本実施形態においては、脂肪組織Aおよび消化酵素液を消化処理空間9に収容した状態から開始したが、図7に示されるように、吸引配管4に接続したシリンジ20を介して脂肪組織Aおよび消化酵素液を消化処理空間9内に供給してもよい。この場合には、消化処理前の脂肪組織Aの供給経路と、最初の細胞懸濁液Cの回収経路とが同一となるため、最初の回収時には細胞懸濁液Cに脂肪組織A片や消化酵素が付着する可能性があるが、その後の洗浄工程や最終的な取り出し工程においては、細胞懸濁液C’と脂肪Bとの接触が回避されるので、清浄な状態の脂肪由来細胞を回収することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、消化処理空間9と濃縮処理空間10とを仕切壁11によって区画することとしたが、これに限定されるものではなく、図8に示されるように、消化処理空間9と濃縮処理空間10とをその間に配置された半径方向内方に突出する括れ部21によって区画することとしてもよい。図8に示す例では、容器本体3は、消化処理空間9を構成する部分において、下方に向かって広がるテーパ面状に形成されている。これにより、遠心力が作用すると、脂肪Bはテーパ面に沿って鉛直下方に付勢される。これによっても、脂肪Bが括れ部21を超えて濃縮処理空間10に入ることを阻止することができる。
【符号の説明】
【0041】
A 脂肪組織(生体組織)
C 細胞懸濁液
C’ 細胞懸濁液(液体)
D 上清(液体)
X 回転軸線
1 生体組織処理容器
2 生体組織処理装置
4 吸引配管
5 供給配管
9 消化処理空間
10 濃縮処理空間
11 仕切壁(流動制限手段、括れ部)
12a 凹部
15 取出ポート
16 懸濁液給排手段(吸引手段、懸濁液供給手段)
17 洗浄液供給手段
21 括れ部
22 モータ(回転駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線の近傍に配置され、生体組織および消化酵素液を収容する消化処理空間と、
該消化処理空間の上部に連絡し、半径方向外方に延びて、前記回転軸線回りの回転による遠心力により細胞懸濁液を濃縮する濃縮処理空間と、
該濃縮処理空間から前記消化処理空間への液体の流動を許容しかつ逆流を制限する流動制限手段と、
前記消化処理空間の底部から細胞懸濁液を外部に吸引する吸引配管と、
前記濃縮処理空間内に細胞懸濁液および洗浄液を供給する供給配管とを備え、
前記濃縮処理空間の半径方向最外位置近傍に、回転の停止時に、前記細胞懸濁液を濃縮して得られた細胞を含む少量の液体を貯留可能な凹部と、該凹部にアクセスして細胞を含む液体を取り出し可能な取出ポートとが設けられている生体組織処理容器。
【請求項2】
前記流動制限手段が、前記消化処理空間の上方に全周にわたって設けられ、前記消化処理空間の内面より半径方向内方に突出する括れ部である請求項1に記載の生体組織処理容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体組織処理容器と、
該生体組織処理容器を前記回転軸線回りに回転させる回転駆動部と、
前記吸引配管に接続され、前記細胞懸濁液を吸引する吸引手段と、
前記供給配管に接続され、前記吸引手段により吸引された前記細胞懸濁液を供給する懸濁液供給手段と、
前記供給配管に接続され、前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備える生体組織処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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