説明

生体親和性結合反応の結合パラメーターを決定するための方法及びキット

共に液相に存在する生体分子とその結合パートナーの間の結合の解離定数及び吸着速度定数を含む結合パラメーターを測定するであって、マーカーフリーの結合段階を含む方法において、以下の段階、(a)固体表面に(a1)結合パートナー又は(a2)生体分子のいずれかを結合させること、(b)液相中及び固体表面上の両方において結合パートナーと生体分子の間の結合を許すこと、(c)もし該結合パートナーが段階(a1)に従う固体表面に固定されていたならば(c1)生体分子に、又はもし該生体分子が段階(a2)に従う固体表面に固定されていたならば結合パートナーに、マーカーを(c2)を結合させること、(d)マーカーが沈殿物を生成することを許すこと、及び(e)該沈殿の形成による固体表面上の表面物質量の変化を測定することにより該固体表面上に沈殿が形成されたまま、該沈殿を検出すること、を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共に液相に存在する生体分子とその結合パートナー間の結合パラメーター、例えば解離定数及び吸着速度定数、を測定する方法であって、マーカーフリーの結合段階を含む方法に関する。本発明は、本方法を実行するためのスライドにもまた関し、本発明に従うスライドからなる少なくとも1の固体表面を含む、本方法を実行するためのキットにもまた関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子とその結合パートナー間のマーカーフリーの結合の結合パラメーターを測定する方法は、先行技術において一般的に公知である。関連する総説が、Haake,H.M., Schutz, A. en Gauglitz,G. , Freseniusによる J.Anal. Chem. (2000年) 第366巻、576〜585ページにより提供されている。
【0003】
先行技術において一般的に公知であるように、特定の結合の解離定数(Kと短縮される)は、いわゆる「吸着速度定数(on-soprtion rate constant)」(Konと短縮される):「脱吸着速度定数(off-sorption rate constant)」又は解離速度定数(desorptionrate constant)(Koffと短縮される)の比として定義され、式K=Koff/Konにより表されることができる。
【0004】
本発明の文脈において、用語「生体分子」は、生物学的な起源を有する分子、例えばタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、ステロイド、及びプロスタグランジン、と定義されるが、それらに制限されない。該生体分子は、インビボ又はインビトロで形成され、後者の場合、該生体分子の天然形と同一であるか又は等価であり、該生体分子は、通常生物学的又は生理学的活性を有するが、必ずしもそうではない。
【0005】
本発明の文脈において、用語「結合パートナー」は、特定の生体分子に対して親和性を有し、ある程度、特異性も有する分子として定義される。結合パートナーは通常、低分子量の有機化合物(例えばステロイド、ここで、生体分子は細胞表面受容体タンパク質である;又は有機基質分子、ここで生体分子は酵素である)であるが、必ずしもそうではない;しかし、生体分子自身が生体分子であることもできる(例えば、抗体、該抗体は本質的にタンパク質であり、ここで生体分子は抗原であり、ここで該抗原自身がタンパク質であることができる)。
【0006】
本質的に、先行技術の方法は、緩衝溶液中で、生体分子(例えば抗原)に対する結合パートナーで被覆された固体表面上での生体分子(例えば抗体)の結合を測定する。通常、表面は、共有結合又は物理的吸着のいずれかにより、例えば生体分子で被覆される。次に、Kの値が、基本的に結合が最大半量であるところの濃度として、一連の、次第に増加する濃度の結合パートナーに対して見積もられる。又は吸着(Kon)の速度定数の値は、初期の吸着相から見積もられ、次に解離の速度定数(Koff)は、結合パートナーを(例えば、洗浄又はフラッシュ洗浄により)除去すること、そして何らかの方法により解離を測定するにより見積もられる。
【0007】
しかし、結合パラメーターを測定する先行技術の方法にはいくつかの欠点があり、特にもし含まれるKd値が10−9Mより低いと特にそうである。第一に、輸送に制限される、結合パートナーの吸着の場合(これは通常達成されない)、結合パートナーの吸着は、結合パートナーの濃度が10−10〜10−11Mまで低くなるとき、実際には、多すぎる回数、起きる。第二に、含まれる高いKon値のために、(生体分子又は結合パートナーの各濃度のために必要とされる)フラッシュ洗浄又は洗浄の間に結合パートナーの更新された吸着はかなり顕著であり、いわゆる「見かけのKoff」(Koff,appと短縮される)は、真のKoffの値よりずっと低くなる。さらに、吸着された結合パートナー分子と表面との弱く非特異的な相互作用は、望ましくないことに、結合が実質的に非可逆的になる点までさえ、解離を妨害する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解離定数が10−9Mより低いとき、測定に関する前述の制限により少なく曝される、又は好ましくは曝されない方法に対する必要性がある。さらに、生体分子とその結合パートナーとの結合の結合パラメーターを測定するための、より少ない段階を含む方法であって、先行技術の方法より労力を要せず、面倒でない方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
結合パラメーターを測定する本発明の方法は、以下の段階、
(a)固体表面に、(a1)結合パートナー又は(a2)生体分子のいずれかを固定すること、
(b)液相中及び固体表面上の両方において結合パートナーと生体分子の間の結合を許すこと、
(c)もし該結合パートナーが段階(a1)に従い固体表面に固定されていたならば(c1)生体分子に、又はもし該生体分子が段階(a2)に従い固体表面に固定されていたならば(c2)結合パートナーにマーカーを結合させること;
(d)マーカーが沈殿物を生成することを許すこと;及び
(e)該沈殿物の形成による固体表面上の表面物質量(surface mass)の変化を測定することにより、該固体表面上に沈殿物が形成されたまま、該沈殿物を検出すること、
を特徴とする。
【0010】
固体表面は、液相中の結合平衡を測定するときに測定ツールとして使用される。結合パートナー又は生体分子は前処理された固体表面に固定される(段階a)。結合パートナー(又は生体分子)による表面への結合の量は、液相中の結合パートナー(又は生体分子)の遊離濃度の尺度である(段階b)。シグナルの増幅は、しばしば非常に低い濃度を測定するために必要であり、これはマーカーを生体分子(又は結合パートナー)に結合させることにより達成される(段階c)。結合そのものは、マーカーフリーである(すなわち、マーカーに誘起される結合親和性の変化及び解離定数の見積もりにおいて、あり得るエラーを避ける)。次にマーカーは、沈殿物を生成することを許され(段階d)、固体表面上での沈殿物の形成の速度は、該沈殿物の生成による固体表面上の表面物質量の変化を測定することにより検出される。
【0011】
本方法の利点は、沈殿物が固体表面上の表面物質量の変化を測定することにより検出されるので、表面において直接被覆された基質のみが沈殿物形成に貢献することである。液相中の転化された基質の小さな集合体は、測定を妨害しない。これは実際、先行技術の方法を用いるときには必須であるところの、面倒で労力の要る、間に割り込む洗浄又はフラッシュ洗浄の段階なしに結合パラメーターを測定する、いわゆるワンステップ分析法をもたらす。本発明に従うと、平衡はかなり素早く得られる。遊離の結合パートナー(又は遊離の生体分子)の濃度は、沈殿物の形成の速度を標準曲線と比較することにより測定されることができる。次に、このようにして測定された遊離の濃度から、結合定数が測定される。本発明に従う方法の主な利点は、遊離の濃度が生体分子とその結合パートナーとの錯体と平衡にある間に測定されることができることである。従って本発明に従う方法を使用するとき、上述の非特異的な相互作用、並びに、かなりの誤差の原因となり得る、真の吸着定数及び見かけの吸着定数の相違に関する問題が回避される。最後に、以下に説明されるように、本発明に従う本固体表面の表面積は、非常に小さく保たれることができる。そうすることにより、遊離のタンパク質濃度に与えるタンパク質吸着のいかなる重大な影響をも防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施態様は、生体分子は酵素であり、結合パートナーはその阻害剤又は基質であるところの結合パラメーターを測定する方法に関する。別の好ましい実施態様に従うと、生体分子は細胞膜タンパク質であり、結合パートナーはその配位子である。好ましくは、該細胞膜タンパク質は、受容体である。本発明の別の実施態様に従うと、生体分子は細胞膜タンパク質であり、結合パートナーは細胞膜構造である。好ましくは該細胞膜構造は人工のものであり、特定に実施態様に従うと、細胞膜構造は完全な細胞である。
【0013】
本発明の好ましい変形は、生体分子が抗体又はそのフラグメントであり、結合パートナーが該抗体又はフラグメントの抗原である方法に関する。好ましくは、本方法のマーカーは、可溶性の基質から沈殿物を形成する酵素である。
【0014】
本固体表面の特に好ましい実施態様は、(i)シリコンスライド(silicon slide)、及び(ii)クロムでスパッタされたガラス(chromium-sputtered glass)である。
【0015】
本発明の段階(e)は、いくつかの方法で行われることができるが、表面物質量の変化の測定はエリプソメーターにより行われることが好ましい。しかし、本発明に従う方法を行うために、表面物質量の変化の測定のための他の解析方法、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)又は全反射照明蛍光(Total Internal Reflection Fluorescence)(TIRF)の原理に基づく解析テクニックが行われることができる。両方のテクニック(SPR及びTIRF)、しかし特にSPR−テクニックを用いて、類似の結果が達成されることができる。
【0016】
好ましくは、表面物質量の変化を測定する段階は、3.0mm未満の表面積上で行われる。
【0017】
本方法の特定の実施態様に従うと、解離定数は10−9Mより低く、特に10−9M〜10−13Mである。
【0018】
本発明は、本方法を行うためのスライドにもまた関する。スライドは、タンパク質吸収層、好ましくは合成ポリマーで被覆されているべきである。好ましくは、スライドは、リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出され、PVC層又はポリスチレン層で被覆されている。PVC層は10〜30nmの厚さを有することが好ましい。上述のスライドの別の好ましい実施態様に従うと、好ましくは1〜5nmの厚さを有するところのシラン層で被覆されている。スライドは生体分子又は結合パートナーの結合を可能とするために、変性されていることができる。好ましいスライドは、リンでドープされ、かつシリカで被覆されシリコンウエハーから切り出され、アミノ基を有する分子の結合により変性されていることを特徴とする。次にアミノ基は、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)による処理により、生体分子又はその結合パートナーの共有結合のために利用される。
【0019】
最後に、本発明は、シリコンスライド又はクロムでスパッタされたガラスからなる少なくとも1の固体表面、及びマークされた結合パートナー又はマークされた生体分子のいずれかを含む、本発明に従う方法を行うためのキットにもまた関する。好ましくは、該キットは、測定されるべき結合パートナー又は生体分子の標準をもまた含む。本発明は、生体分子又はその結合パートナーを、既に結合されている生体分子又はその結合パートナーと固定することのできる少なくとも1の固体表面を含む、本発明に従う方法を行うためのキットにもまた関する。特定の実施態様において、生体分子又はその結合パートナーは、マウスモノクロナール抗体であり、マーカーは、マウスモノクロナール抗体に結合する、HRPでラベルされた二次抗体である。キットは、好ましくは、シリコンスライド、シリコンスライド又はクロムでスパッタされたガラス並びにスライド上に前もって吸着された生体分子の結合パートナーとして使用される任意の抗体に結合するマーカーからなる、少なくとも1の固体表面を含む。特定の実施態様において、HRPでラベルされたタンパク質A又はタンパク質Gがマーカーとして使用される。
【0020】
本発明は、様々な種類の相互作用、その例は、(i)タンパク質と膜(又は膜の成分)との相互作用、(ii)酵素及びその阻害剤の間の相互作用、(iii)膜に結合した受容体及び該受容体の配位子の間の相互作用、及び(iv)抗体及び抗原の間の相互作用である、を調べるために使用されることができる。
【0021】
本発明は、以下の非制限的な実施例により説明される。
【実施例1】
【0022】
タンパク質−膜相互作用の結合定数の測定
小型単層のベシクル(SUV)が、20%ジオレオイル−ホスファチジルセリン(DOPS)及び80%のジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)のリン脂質混合物の超音波処理により製造された。種々の濃度(25〜500nM)の精製されたウシ因子IIが、0.1MのNaCl,3mMのCaCl,0.5g/lのウシ血清アルブミン、及び100ng/mlのウサギ抗ウシ因子II−HRP共役(rabbit anti-bovine factor II-HRP conjugate)を含む0.05MトリスHCl緩衝液(pH7.5)中の0.05mM(合計のリン脂質)のSUVに添加された。シリカ表面は、0.020mMのSUVへのスライドの前暴露により、リン脂質二重膜で被覆された。因子IIの遊離濃度は、市販入手可能なエリプソメーター(EL-X-02C、Dr. Riss Ellipsometerbau、GmbH、Ratzeburg、ドイツ)を使用して、DAB−H基質の添加後の沈殿速度から偏光解析法により測定された。結果は、図1に示され、K=123±21nMの値が得られた。
【実施例2】
【0023】
緩衝溶液中のFABP53E9錯体の解離定数の測定
FABPが抗原として使用され、モノクロナール抗FABP(53E9)が対応する抗体として使用された。両方ともカリム研究所(CARIM)の生理学科のJ.Glatz博士の寄贈品であった。この抗体の解離定数Kdは、1.35nMであることが報告されている(Roos等、J.Immunol.Meth.(1995年)、第183巻:149〜153ページ)。FABP(0.67nM)は、バルク溶液における平衡が確立されるまで、種々の濃度の抗体53E9と共に、30分間インキュベートされた(図2)。次に、遊離のFABPの濃度が、53E9キャッチャー、及び別のHRPでマークされたFABPに対する抗体(118ng/ml)で被覆された小さな表面積を有するシリカ表面上で沈殿の速度の短い測定(10分)により見積もられた。液相中の平衡は、後者の操作によって妨害されないことが重要である。従って、洗浄することなく(ワンステップ法)、遊離のFABP濃度が、DAB−H基質の添加後の沈殿形成の速度から測定された。このようにして測定されたFABP−53E9相互作用の解離定数Kは、8nMであった。
【実施例3】
【0024】
血漿中のIL6−αIL6.16錯体の解離定数の測定
高親和性の抗ヒトIL6抗体は、アムステルダムのサンキン研究所のL.アーデン博士(L. Aarden, Sanquin Research, Amsterdam)の親切な寄贈であった。血漿(5倍希釈)は、図3に示されるように、種々の濃度の高親和性モノクロナール抗ヒトIL6抗体aIL6.16と共に、60分間インキュベートされた。培地は、αIL6.16で被覆されたシリコンスライドとさらに120分間、接触された。次に、本発明に従うワンステップ法が実行されて、遊離のIL6の濃度を測定した。シミュレーションされた曲線(図3)から推定された解離定数Kの値は、24pMであった。
【実施例4】
【0025】
α−IL6.16の結合定数の測定
まず、図4aに示されるように、種々の時間間隔の間、IL6(4pM)がαIL6.16(30pM)とともにインキュベートされた。次に、培地はα―IL6.16で被覆されたシリコンスライドとともにさらに10分間インキュベートされた。次に、本発明に従うワンステップ法が行われて、遊離のIL6濃度を測定した。シミュレーションされた曲線から計算されたK,Kon,及びKoffは、それぞれ29pM、6.8 10−1−1及び0.00020s−1であった。
【0026】
「逆」法を使用して、最初にIL6(400pM)が、50分間、αIL6.16(1nM)と共に予備インキュベートされた。次に、予備インキュベーション培地は、100倍に希釈された。種々の時間間隔後、培地はさらに10分間、α−IL被覆されたシリコンスライドと接触された。次に本発明に従うワンステップ法が行われ、遊離のIL−6濃度を測定した。シミュレーションされた曲線(図4b)からのK、Kon及びKoffは、それぞれ25 pM、6.3 10−1−1及び0.00016s−1であった。
【実施例5】
【0027】
スライド
いくつかのスライド(5.1〜5.4)は以下のように作成された。
【0028】
5.1. リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出されたスライドが、10〜30nmの厚さのPVC層で被覆された。これは、機械的浸漬装置(mechanical dipping device)を使用して、制御された速度でPVCのシクロヘキサノン溶液からスライドを引き出すことにより行われた。
【0029】
5.2. リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出されたスライドは、Sigmacote(商標)及び製造元により示されたプロトコルを使用して、薄い(1〜5nm)のシラン層で被覆された。
【0030】
5.3. リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出されたスライドは(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(Sigma)のアセトン溶液中での含浸によりアミノ停止(amino-terminated)された。N−スクシニミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)試薬を使用して、そのようなスライドが、抗体の共有結合のために使用された。
【0031】
5.4. 5.3.において記載されたように製造されたアミノ停止されたスライドに、ストレプトアビジンが共有結合された。これらのスライドは、ビオチン化抗体の共有結合のために使用された。
【実施例6】
【0032】
キット
キット(6.1.及び6.2.)は、以下のように組み立てられた。
【0033】
6.1. HRPでマークされた適する抗体を含むキットは、以下のように組み立てられた。
【0034】
実施例5(5.1)において記載されたように製造された、8つの高度に疎水性のスライド、並びにHRPでマークされた66E2抗ヒトFABP(マーカー)、組み換えヒトFABP標準、ブロッキング緩衝溶液、及び沈殿形成性のHRP基質(DAB+H)。
【0035】
このキットを使用するために、分析されるべき抗−FABP抗体は、4℃において2mg/Lの抗体において終夜インキュベーションによりスライドに結合されすべきである。次にスライドは、ブロッキング緩衝液中でインキュベーションされるべきである。既知量のFABPが5つの異なる濃度の抗体と共に30分間予備インキュベートされ、次にスライドを含むエリプソメーターセルに添加された。本発明に従うワンステップ法を用いて、3回の較正を含めて、遊離FABPの量が測定されることができる。キットは、2つの予備のスライドをもまた含み、該スライドにFABPが結合されて、分析されるべき抗体が66E2抗−FABP タグと拮抗しないことをチェックしなければならない。
【0036】
6.2. ポリクロナール抗マウスIgGを含むキットは、以下のように組み立てられた。
【0037】
スライドへの抗原の受動的結合又は共有結合のいずれかを許す、前述の5.1〜5.4(実施例5)のタイプの8つのスライド、HRPでマークされた抗マウスIgG(マーカー)、ブロッキング緩衝液、及び沈殿形成性のHRP基質(DAB+H)。
【0038】
このキットを使用するために、顧客により使用される抗原は、スライドに結合され、次にブロッキング緩衝液中でインキュベートされるべきである。固定された濃度の分析されるべき抗体は、5つの異なる濃度の抗原とともに予備インキュベートされて、次にエリプソメーターセルに添加される。次に本発明に従うワンステップ法を用いて、3回の較正を含めて、遊離抗体の量が測定されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】タンパク質−膜相互作用の解離定数の測定の例を示す。
【図2】通常の値の範囲における酵素−阻害剤相互作用の解離定数の測定の例を示す。
【図3】定数の高親和性の範囲における、血漿中のIL6−α126.16錯体の解離定数の測定の例を示す。
【図4】図4aは、α−IL6.16の結合定数の測定の例を示す。図4bは、α−IL6.16の結合定数の測定の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に液相に存在する生体分子とその結合パートナーの間の結合の、解離定数及び吸着速度定数を含む結合パラメーターを測定する方法であって、マーカーフリーの結合段階を含む方法において、以下の段階、
(a)固体表面に(a1)結合パートナー又は(a2)生体分子のいずれかを結合させること、
(b)液相中及び固体表面上の両方において結合パートナーと生体分子の間の結合を許すこと、
(c)もし該結合パートナーが段階(a1)に従い固体表面に固定されていたならば(c1)生体分子に、又はもし該生体分子が段階(a2)に従い固体表面に固定されていたならば(c2)結合パートナーに、マーカーを結合させること、
(d)マーカーが沈殿物を生成することを許すこと、及び
(e)該沈殿物の形成による固体表面上の表面物質量の変化を測定することにより、該固体表面上に沈殿が形成されたまま、該沈殿物を検出すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
生体分子が酵素であり、結合パートナーがその阻害剤又は基質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体分子が細胞膜タンパク質であり、結合パートナーがその配位子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該細胞膜タンパク質が受容体であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生体分子が細胞膜タンパク質であり、結合パートナーは細胞膜構造であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞膜構造が人工のものであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
細胞膜構造が完全な細胞であることを特徴とする、請求項5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
生体分子が抗体又はそのフラグメントであり、結合パートナーが該抗体又はフラグメントの抗原であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マーカーが、可溶性の基質から沈殿物を形成する酵素であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
固体表面がシリコンスライドであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
固体表面が、クロムでスパッタされたガラスであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(e)の表面物質量の変化の測定が偏光解析法により行われることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
表面物質量の変化を測定する段階が、3.0mm未満の表面積上で行われることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
解離定数が10−9Mより低いことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
解離定数が10−9M〜10−13Mであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜10又は請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法を行うためのスライド。
【請求項17】
スライドが、リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出され、かつタンパク質吸着性物質で被覆されていることを特徴とする、請求項16に記載のスライド。
【請求項18】
タンパク質吸着性物質が合成ポリマーであることを特徴とする、請求項17に記載のスライド。
【請求項19】
合成ポリマーがPVCであることを特徴とする、請求項18に記載のスライド。
【請求項20】
合成ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする、請求項18に記載のスライド。
【請求項21】
PVC層が、10〜30nmの厚さを有することを特徴とする、請求項19に記載のスライド。
【請求項22】
スライドが、リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出され、かつシラン層で被覆されていることを特徴とする、請求項16に記載のスライド。
【請求項23】
シラン層が1〜5nmの厚さを有することを特徴とする、請求項22に記載のスライド。
【請求項24】
スライドが、リンでドープされ、かつシリカで被覆されたシリコンウエハーから切り出され、かつ生体分子又はその結合パートナーの化学結合を可能とする化学反応性の基を導入するように処理されたものであることを特徴とする、請求項16に記載のスライド。
【請求項25】
反応性基がアミノ基であるところの、請求項24に記載のスライド。
【請求項26】
結合が、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)による処理で達成されることを特徴とする、請求項25に記載のスライド。
【請求項27】
シリコンスライド又はクロムでスパッタされたガラスからなる少なくとも1の固体表面、及びマークされた結合パートナー又はマークされた生体分子のいずれかを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項28】
測定されるべき結合パートナー又は生体分子の標準をもまた含むことを特徴とする、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
シリコンスライド又はクロムでスパッタされたガラスからなる少なくとも1の固体表面、並びにスライド上に前もって吸着されている生体分子の結合パートナーとして使用される任意の抗体に結合するマーカーを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項30】
マーカーが、結合パートナーとして使用される抗体と反応性のある、HRPでラベルされた抗体であるところの、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
マーカーが、HRPでラベルされたタンパク質A又はHRPでラベルされたタンパク質Gであるところの、請求項29に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501106(P2008−501106A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513823(P2007−513823)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005752
【国際公開番号】WO2005/119257
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】