説明

生体電位制御式電位治療器

【課題】従来の装置は生体電位を設定値にすることはできず、しかも、治療中の患者の体動などにより生体電位は変化するため、所望の治療効果が得られなくなるという問題があった。また、刺激に対する慣れが生じて治療効果が低下する、患者と周囲の導体が接触し衝撃を受けて危険である、等の問題があった。
【解決手段】生体電位を測定するための生体電位検出手段を設け、生体電位が設定値になるように高電圧発生手段を制御するようにした。また、生体電位が経時的に変化するようにゆらぎを持たせた。さらに、生体電位、生体電流、又は電極電圧のいずれかを測定し、これらの値が所定の範囲を超えたとき警報を発し、患者と周囲の導体が接触したとき出力を低下させて衝撃を低減するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療中の患者の生体電位が所望の電位になるように制御して、より高い治療効果を得ることができるようにした電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
電位治療器は、生体に数百ボルト以上の高電位を印加し、自律神経や内分泌系、体液に影響を与えて全身機能賦活化作用をもたらし、生体のホメオスターシスの維持等に供するものである。
最近は後述のような新しい医学的知見が得られ、新分野への応用も試みられている。
【0003】
電位治療器の生体作用は、生体に印加する電圧(生体電位)の大きさに依存し、生体電位が適切であれば適正な治療効果が得られるが、生体電位が高すぎると副作用等の不具合が生じ、生体電位が低すぎると十分な治療効果は得られない。
【0004】
従来の電位治療器の例を図6に示す。装置は高電圧発生部63と電極66で構成され、高電圧発生部63は一次と二次の巻線比が1対Nのトランス61(61aは一次巻線、61bは二時巻線)で構成され、商用電源64の電圧をN倍に昇圧して出力電圧eoを出力する。
このため、このタイプの装置では、電源64の電圧が一定であれば、出力電圧eoは一定である。
また、電源64の電圧が変動すると、出力電圧eoも変動する。
トランス61の出力は、電流制限用高インピーダンス素子62(過大な電流が出力しないようにする)と、電位供給ライン65を介して、電極66に供給され、電極66に載った生体68を高電位に維持する。
電極66は、椅子状やマット状など様々なものがあり、患者が快適に台に載れるように、図には示していないが、柔軟なクッション材で覆っている。また、絶縁台67でアース69から絶縁されている。
【0005】
装置に患者が載ると、電極66と生体68は容量C1で、生体68とアース69は容量C2で、それぞれ電気的に容量結合される。このため、治療時の生体電位esは、電極66の電圧(出力電圧eo)を容量C1とC2で分割した値になる。
治療時には、これらの容量結合を介して生体に微弱な電流(生体電流)が流れる。
しかし、容量C1とC2は、患者や、電極部の構造・材質、クッション材の構造・材質、装置の設置場所その他の様々な要因に依存する、不定のパラメータである。
また、電極66に載った患者が体動を起こすと、患者と電極の距離が変わり、電気的な結合が変化するため、出力電圧eoは変化しなくても、生体電位は変動(図4参照)する。
しかも、体動の程度によっても生体電位の変動の程度も変化する。
【0006】
以上のように、図6のタイプの装置は、
1.出力電圧(電極66の電圧)は固定で制御できない。
2.入力電源の電圧が変動すると出力電圧も変動する。
3.生体電位は不定で制御できない。
4.生体電位は患者の体動により変動する。
という問題を有している。
このため、生体電位を所望の(治療に適した)値にすることはできず、正確で科学的な治療はできなかった。
【0007】
上記問題のうち、「出力電圧が固定で制御できない」という点を改良する技術(出力を調節する技術)は既に開示されている(例えば特許文献1など)。
図7は特許文献1に記載されている実施例である。図の符号は一部変更し一部削除している。以降の図8〜11も同様である。
トランス71の一次側に複数のタップ70a、70b、・・・70nを設け、制御部74でタップ切替え器73を制御して所望のタップを選択して、巻線比を変更して、出力電圧を変更できるようにしている。
これと類似のもので、トランスの二次側に複数のタップを設け、これを切り替えて、出力電圧を変更できるようにしたものも特開2007−111196などに開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1や特開2007−111196などの技術は、用意された複数の出力の中からある出力を選択して出力するものであり、連続的に出力を調節することはできない。
このため、生体電位を最適な値にするには不十分である。
また、特許文献1や特開2007−111196は、上記の「電源の電圧が変動すると出力電圧も変動する」、「生体電位は不定で制御できない」、「生体電位は患者の体動により変動する」という問題は何解決されていない。
【0009】
出力電圧を任意の値に制御する技術も開示されている(例えば、特許文献2など)。
図8は特許文献2に記載されている実施例である。治療中に、通電シート80の電圧を出力電圧検出回路8aで検出し、通電シートの電圧が設定値になるように、マイクロコンピュータ85でインバータ回路86を制御し、トランスの入力電圧を制御して、出力電圧を制御している。
特許文献2の技術により、出力電圧は任意に連続的に設定でき、しかも電源電圧が変動しても設定電圧になるように制御することができる。しかし、特許文献2でも、生体電位は不定であり、体動で変動するという問題は解決していない。
【0010】
最近の研究で、特定の電圧で電位治療おこなうと、脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生が促進し、脳神経機能の向上、虚血性脳障害の解消、認知症予防、鬱病の改善、メタボリックシンドロームの予防及び改善等に有効であることが判り、その技術が開示されている(例えば特許文献3など)。
この特許文献3によると、適度の電圧を生体に印加するとBDNFの産生が長時間にわたり持続するが、電位が高すぎると一時的にBDNFの産生を促進するがその後は抑制する、電位が低すぎると十分なBDNFの産生が得られない、ということが知られている。
特許文献3は 生体に適度の電圧を加え、長時間にわたり持続的にBDNFの産生を促進し、前述のような疾患を効果的に治療しようというものである。
図9に特許文献3の実施例を示す。
装置は、電圧生成手段92と通電手段99と電圧測定手段98を有し、通電手段99の電圧がBDNF産生に適した電圧に位が設定した値になるように制御部94で高電圧発生回路95を制御する。
図8と9は類似のハードウェア構成であり、通電手段の電圧を設定値にするという制御方法も類似である。しかし、図9の装置はBDNF産生を促進する特別な出力電圧にする点に特徴がある。
【0011】
以上のように、特許文献2や特許文献3等によって、出力電圧を任意の設定値に正確に制御することは可能になったが、生体電位は不定のまま使用しており、生体電位の体動等に伴う変動も防止できず、依然として、科学的な治療をおこなうことはできないという問題を有している。
【0012】
一方、電位治療では、他の物理療法と同様、同じ条件で長時間の治療をおこなうと、刺激に対する慣れが生じて、治療効果が低下するという問題がある。
従来も、この慣れを防止し、治療効果をより高くするために、出力を変動させる技術が開示されている(例えば、特許文献4など)。
図10は特許文献4に記載されている実施例である。(A)のように、メモリ107に電圧変動パターンをメモリしておき、このメモリに従って制御部104で電源部105を制御してトランス102の出力電圧を所望のパターンで変動させ、これを、通電シート103を介して生体に印加するようにしたものである。
図10(B)は電圧変動パターンの例である。
このように、生体に印加する電位を変動させることで、治療の慣れを防止することができる。
【0013】
しかし、特許文献4の装置は、出力電位をフィードバックして制御する機能を持たず、図6の従来機器と同様に、トランスの巻き線比に応じて入力電源電圧を昇圧して出力電圧を得ているので、電源電圧の変動の影響を受けるという問題を有する。また、生体電位は不定のままで、体動などによる生体電位の変動も防止できないまま使用しているため、科学的な治療ができないという問題を有する。
【0014】
以上のような問題の他に、電位治療では、生体を高電位にしているため、治療中の人と周囲の人や導体が接触すると、インパルス状の電流が流れて衝撃を受け、危険であるという問題がある。
これを防止する技術も開示されている(例えば、特許文献5など)。
図11は特許文献5に記載されている実施例である。この装置は、生体の電位を検出する電極115と、電極115で検出した電圧を濾波するフィルタ125と、フィルタ125の出力と基準値を比較して衝撃が発生したか否かを判断するための比較器126を有し、衝撃が発生したと判断したとき、マイクロコンピュータ121で昇圧トランス制御回路122を制御して、衝撃が発生している間、トランス113の入力電圧をゼロにして、通電シート114への電圧供給を遮断するようにしている。
しかし特許文献5の装置は、図6の従来装置と同様、出力電圧はトランスの巻き線比で決定される固定値であり、電源電圧の変動の影響を受けるという問題を有する。また、電位検出電極115は衝撃の検出だけのために使用されており、生体電位は制御対象としていないため、従来の電位治療器同様、生体電位は不定であり、体動等により生じる生体電位の変動は避けられない。このため、患者に最適な電位に制御して科学的な治療をおこなうということはできない。
【0015】
【特許文献1】特開昭61−185277
【特許文献2】特開2000−271233
【特許文献3】特願2006−209423
【特許文献4】特開2000−189525
【特許文献5】特開2002−189523
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
電位治療器で、確実に、十分な治療効果を得るには、生体の電位を、患者に適した値に維持することが重要である。
【0017】
しかし、前述のように、図6の装置は、
トランス61の巻線比が固定であるため出力電圧(電極66の電圧)も固定である、
入力電源の電圧が変動すると出力電圧も変動する、生体電位は不定で、体動等による生体電位の変動を避けられない、等の問題を有していた。
このため、患者に適した生体電位に制御して科学的な治療をおこなうことはできなかった。
【0018】
また、特許文献1の装置は、図6の装置を改良したもので、出力を段階的に調節することはできるが、連続的に出力を調節することはできない。また、電源電圧の変動に伴う問題に対しては何の解決策も示されていない。さらに、生体電位を制御対象としていないため、生体電位は不定であり、体動等による生体電位の変動にも対応できない。
このため、患者に最適な生体電位に維持して治療をおこなうことはできない。
【0019】
特許文献2の装置は、電極電圧を任意の設定値に制御することができる。
しかし、制御対象は電極電圧であるため、生体電位は不定で、治療中の患者の体動等に伴う生体電位の変動も防止することはできず、このため、科学的な治療をおこなうことはできない。
【0020】
特許文献3は効果的にBDNFの産生を促進できるが、特許文献2とほぼ同様の問題を有する。
つまり、電極電圧を設定値に制御することができるが、生体電位を制御対象としておらず、生体電位は未知のまま使用しており、治療中の患者の体動等に伴う生体電位の変動も防止することはできない。
【0021】
特許文献4の装置は、メモリのプログラムに従って出力を変化させるようにしたものであり、治療の慣れを防止することができる。
しかし、この装置は商用電源電圧が変動すると、出力電圧も変動する、生体電位は不定で、体動が生じたときには生体電位が変動する、という問題を有する。
このため、生体電位を患者に最適な値に制御することはできず、科学的な治療ができない。
【0022】
特許文献5の装置は、治療中に患者と周囲の導体(物、人)が触れたときに生じる衝撃から患者を守ることができる。
しかし、特許文献5は、図6の従来装置と同様、出力電圧は固定であり、電源電圧の変動の影響を受け、生体電位は不定である、体動等によって生体電位の変動が生じる、等の問題があり、科学的な治療をおこなうことができない。
【0023】
本願発明は、このような課題を解決し、生体電位を所望の設定値に維持して治療効果を高くし、より安全な装置を提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで請求項1記載の発明では、
高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記高電圧発生手段の出力を生体に供給する電位供給手段と、
前記高電圧発生手段の出力制御を含めて装置全体を制御する制御手段と
を有する電位治療器において、
生体電位を検出する生体電位検出手段を設け、
前記生体電位検出手段で検出した生体電位が、予め設定した生体電位の設定値又は所定の設定範囲になるように、前記高電圧発生手段を制御する出力制御手段を設けた。
【0025】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の電位治療器において、生体電位をBDNFの産生に適した値に制御するようにした。
【0026】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の電位治療器において、生体電位を3000〜6000Vに維持するようにした。
【0027】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載した電位治療器において、生体電位を3500〜5200Vに維持するようにした。
【0028】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載した電位治療器において、生体電位を連続波又は断続波にし、連続波の周波数又は振幅、又は断続波の繰返し周期又は振幅を、ランダムに、リズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎ特性を有するように、変化させるようにした。
【0029】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載した電位治療器に、
生体に流れる電流を測定する生体電流測定手段と、
前記高電圧発生手段の出力電圧を測定する出力電圧測定手段、
の一方又は両方を設けた。
請求項1で生体電位を検出するため、本請求項記載の発明により、生体電位、生体電流及び出力電圧をモニタすることができる。
【0030】
請求項7記載の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載した電位治療器において、前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧のなかの1つ又は複数を測定し、測定した前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧のなかの1つ又は複数が所定の許容範囲を超えて変動したとき警報を発する手段と前記出力電圧を低下させる手段の一方または両方を設けた。
【0031】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれかに記載した電位治療器において、電位治療中の患者と周囲の導体が接触したとき、前記制御手段で前記電位発生手段を制御して出力を低くして患者が受ける衝撃を低減する衝撃緩衝手段を設けた。
【発明の効果】
【0032】
請求項1記載の発明により、生体電位検出手段で検出した生体電位と、予め設定した設定値を比較し、生体電位が設定値又は所定の設定範囲になるように、制御手段で電位発生手段1を制御する。
このため、生体電位を設定値に正確に維持することができる。
【0033】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の電位治療器において、生体電位をBDNFの産生に適した値に維持する。
このため、BDNFの産生を促進し、これを長時間維持できる。
【0034】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の電位治療器において、生体電位を3000〜6000Vに維持する。この電位は、特許文献4に記載してあるように、BDNFの産生の促進に効果的である。
このため、より効果的にBDNFの産生を促進し、これを長時間維持し、BDNFの産生不足に伴う疾患の治療を効果的におこなうことができる。
【0035】
請求項4記載の発明では、請求項1から3のいずれかに記載した電位治療器において、生体電位を3500〜5200Vに維持する。この電位は、特許文献4に記載されているように、請求項3の発明よりもさらに効果的にBDNFの産生を促進し、これを長時間維持できる。
このため、請求項3の発明より効果的にBDNFの産生を促進し、これを長時間維持し、BDNFの産生不足に伴う疾患の治療を効果的におこなうことができる。
【0036】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4記載の電位治療器において、生体電位の振幅又は周波数を、又は生体電位を断続してその繰返し周期又は振幅を、ランダムに、又はリズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎを有するように、変化させる。
このため、刺激の慣れを効果的に防止し、電位治療をより効果的におこなうことができる。
高電位治療では、電極と生体、生体とアースの間には電気的に容量結合されており、治療中、微弱な電流が流れ、これを知覚できる。生体電位を変化させると、この変化をより明確に知覚できるため、治療感を得ることができ、患者の満足感も増し、より高い治療効果を得ることができる。
【0037】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5記載の電位治療器に、生体電流測定手段と出力電圧測定手段の一方または双方を設けた。
これにより、電位治療中に、生体電流、出力電圧、生体電位の中の1つ又は複数をモニタすることができる。
このため、これらの値が異常になると、安全性が損なわれる可能性があるため、その対策を講じることができ、安全な電位治療が可能になる。
【0038】
請求項7記載の発明では、請求項1〜6記載の電位治療器において、生体電位、生体電流、出力電圧の3つのパラメータの中のいずれか1つ又は複数をモニタし、モニタするパラメータの測定値が前記許容範囲を超えて変動したとき、警報を発し、出力電圧を低下させる。
治療中の患者の体動が大きくなるほど生体電位及び生体電流、出力電圧の変動は大きくなる。
体動が大きいほど、患者が付近の導体と接触する危険性が高くなり、患者が治療台から落下する可能性も高くなる。また、体動が大きくなると、通常は電極と患者の距離が大きくなり、生体電位が低下するため、本願発明では、生体電位を設定値に保つために、出力電圧eoを高くする。出力電圧eoが高いと、接触したときの衝撃が大きくなり、危険性が高くなる。
このように、生体電位、生体電流、出力電圧の1つ又は複数をモニタし、そのいずれか1つが、又は2つが、又は3つとも、所定の許容範囲を超えると、危険な状態にある。
このため、警報を発して危険を知らせる、出力電圧を低下させて安全性を確保する、という2つの手段の、一方又は両方を設け、安全性を確保した。
所定の許容範囲は、実験的に所定の体動を起こさせて求めればよい。
【0039】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7記載の電位治療器において、患者が周囲の導体と触れたとき、生体電位検出手段、生体電流検出手段及び出力電圧検出手段のなかの1つ又は複数の検出手段を用いてこれを検出し、出力制御手段を作動させて電位発生手段を制御して出力電圧を低くする。
このため、患者が受ける衝撃を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の実施例を図によって説明する。
【実施例1】
【0041】
請求項1記載の発明は、
高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記高電圧発生手段の出力を生体に供給する電位供給手段と、
前記高電圧発生手段の出力制御を含めて装置全体を制御する制御手段と
を有する電位治療器において、
生体電位を検出する生体電位検出手段を設け、
前記生体電位検出手段で検出した生体電位が、予め設定した生体電位の設定値になるように、前記高電圧発生手段を制御する出力制御手段を設けた電位治療器である。
【0042】
この実施例を図1に示す。図の1は高電圧発生手段、2は電位供給手段、3は生体電位検出手段、4は制御手段、7はトランス電源制御手段、8は昇圧用のトランスである。
高電圧発生手段1は、トランス電源制御手段7と昇圧トランス8で構成する。トランス電源制御手段7は制御手段4で制御され、入力電圧eiをトランス入力電圧eitに変換するもので、例えばインバータ回路を用いる。
【0043】
入力の電源電圧eiをトランス電源制御手段7でトランス入力電源eitに変換(増幅又は減衰)し、これをトランス8で高電圧eoに昇圧し、電位供給手段2(電極部)に出力する。
トランス電源制御手段7として、ここではインバータ回路の例を示したが、生体電位を所定の値に維持できるように、トランス電源制御手段7の出力、つまりトランス入力電圧eitに制御できるものであれば、どのような方式を用いてもよい。
【0044】
電位供給手段2は、高電圧発生手段1の出力を生体に供給する電極と、それを覆って生体を感電から防御する絶縁物等で構成する。椅子型の装置では、通常、座席部の表面にレザーを張り、その下にクッション材を置き、その下に電極を設置して電位供給手段2とし、患者は違和感や不快感なく電位供給手段2に載ることができるようにしている。
マット型の装置でも同様で、表面のシートの下にクッション材を置いてその下に電極を置いている。
【0045】
電位発生手段1の出力eoは数百ボルト以上の高圧であるため、電位発生手段1と電位供給手段2を接続するケーブルも絶縁性の高いものが使用される。また、図には記載していないが、図6に示した電流制限用高インピーダンス素子62と同様の出力電流制限機能を設けるのが普通である。
【0046】
生体電位検出手段3は生体Sの電位esを測定するもので、その測定データは制御手段4に転送される。生体Sの電位は高いため、生体電位検出手段3と制御手段4は高いインピーダンスで結合している。生体電位検出手段3は高インピーダンスの電圧計を使用すればよい。
【0047】
制御手段4は、生体電位設定手段で設定した設定値と、生体電位検出手段3で測定した実際の生体電位を比較し、生体電位が設定値になるように、電位発生手段1を制御する。
【0048】
生体電位設定手段は、図には記載していないが、装置のパネル面に設けたキースイッチや調節用つまみ等で構成され、これを操作して設定値を入力する。プリセットされたデータやソフトウェアで作成するデータ、ICカード等の電子メディアや通信回線を介しての設定など、設定値を設定できればよく、その手段は問わない。
【0049】
治療前に、装置の操作パネル面に設けた生体電位設定手段により生体電位の目標値(設定理)epと治療時間その他を設定する。
治療を開始すると、電源電圧eiを電源制御手段7でeitにし、これをトランス8で高電圧eoに昇圧し、電位供給手段(電極)に出力し、これを生体に印加すると、生体電位はesになる。
【0050】
この生体電位esを生体電位検出手段3で測定し、測定された生体電位esと設定値epを制御手段4で比較し、生体電位esが設定値epになるように、制御部4は電位発生部1のインバータ回路7を制御する。設定値epは一定値又は所定の範囲の値である。
以上の生体電位の制御の様子を図1(B)のフローチャートに示す。生体電位の設定値epと実測の生体電位esを比較し、実測値が設定値よりも低いと制御部4でトランス電源制御手段7を制御してトランスの入力電圧eitを上げて出力電圧eoを上げ、実測値が設定値よりも高いと制御部4でトランス電源制御手段7を制御して出力電圧eoを下げ、同じであればその電圧を維持する。通常は、設定値は所定の範囲を有する設定範囲である。
【0051】
以上のようにして、本請求項記載の発明では、生体電位が設定値になるように制御する。
このため、図6や6に記載したような従来装置と異なり、患者に適した電位に生体電位を制御することができ、患者に最適な、高い効果の治療をおこなうことができる。
電源電圧eiが変動しても、生体電位esが設定値になるように制御するため、従来装置のような、電源電圧の変動の影響を受けて治療効果が低下するという不具合は生じない。
また、生体電位は患者に最適な任意の生体電位に制御し維持することができる。
【0052】
前述のように、電位治療器では、電極部と生体、生体とアースがそれぞれ電気的に容量結合しており、電極部の電圧とこれらの電気的な結合の割合で、生体電位が決定する。しかし、電気的結合の程度は人によって、同じ人でも姿勢によって、また、装置の設置場所等によって異なる。このため、従来の電位治療器では、前述のように、電極電位は既知であっても、生体電位は未知であった。
また、治療中の患者が動いたりすると、電極部と生体、生体とアースのそれぞれの結合容量が変化するため、体動に応じて生体電位も変動する。
このため、従来の装置では、生体電位は所望の値に設定して治療することはできず、また、治療時に患者や姿勢が変化すると、生体電位も変動し、治療効果が低下することもあった。
このため、十分な治療効果を得ることはできなかった。
【0053】
これに対して本請求項記載の発明は、出力電圧eoを任意の値に設定でき、また、商用電源の変動の影響を受けず、生体電位を所望の設定値に正確に維持することができる。
つまり、前述の、従来の電位装置の問題を解決した。
このため、どのような体格患者であっても、また、治療中にどのように姿勢を変化しても、装置の設置場所を変更しても、常に、正確に、生体電位を設定値に維持することができるため、確実に、効果的に電位治療を行うことができる。生体電位が設定値になるように制御するので、生体制御、すなわち治療を科学的におこなうことができる。
【0054】
なお、図11(特許文献5)の装置は、人体電位を検出する電極15を設けて、この信号を制御部に取り込んでいる点で、ハードウェアの構成は本請求項記載の発明と似ている。
しかし、この発明は、前述のように、患者が導体に触れたとき発生する放電パルスを検知し、所定の期間、電極部への通電を停止し、放電パルスによる衝撃を防止するというものであり、図1(B)に示す本発明のフローチャートのような制御手段は有しない。つまり、生体電位を設定値に維持するという制御はおこなっていない。
このように、特許文献5は本願発明と構成が異なり、このため本願発明の効果を得ることはできない。
【0055】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電位治療器の生体電位をBDNFの産生に適した値に制御するものである。
本請求項記載の発明では、請求項1記載の発明において、生体電位の設定値として、BDNFの産生に適した値が設定される。治療中、生体電位検出手段3で生体電位を直接測定し、測定された生体電位と生体電位の設定値を比較し、トランス電源制御手段7を制御して、生体電位が設定値になるように制御する。
このようにして、生体電位がBDNFの産生に適した値に制御される。
【0056】
BDNFは脳由来の神経栄養因子であり、これまでに、脳神経機能の向上、虚血性脳障害の解消、認知症予防、鬱病の改善、メタボリックシンドロームの予防及び改善などに有効であることが確認されている。これは特許文献3に記載されている。
【0057】
特許文献3の装置は、生体に電位を与えてBDNFの産生を促進し、これらの疾患を治療することのできる治療器を提供しようというものである。しかし、図9からわかるように、この装置は通電手段(電極)の電位を制御するもので、電極電圧をBDNFの産生に適した値にしても、生体電位を生体電位をBDNFの産生に適した値に維持することにはなら。
また、前述のように特許文献3の装置は生体電位は不定であり、体動によって生体電位は変動するため、生体電位を何ボルトにして治療しているのかは不明で、このため、治療の確実さに欠ける。
【0058】
これに対して本請求項記載の発明は、生体電位を正確にBDNFの産生に適した設定値に維持するので、より確実に電位治療を行い、より高い治療効果を得ることができる。
【0059】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の電位治療器の生体電位を3000〜6000Vに維持するようにしたことを特長とするものである。
生体電位の設定値として、BDNFの産生に適した3000〜6000Vの間の患者に適切な値が設定される。治療中、生体電位検出手段3で生体電位を直接測定し、測定された生体電位と生体電位の設定値を比較し、トランス電源制御手段7を制御して、生体電位が設定値になるように制御する。
このようにして、生体電位はBDNFの産生に適した3000〜6000Vの間の値に制御される。
【0060】
特許文献3はこの電位がBDNFの産生を効果的であることを記載している。しかし、前述のように、特許文献3は通電手段(電極)の電位をこの値に制御するが、生体電位はこれと異なるため、確実にBDNFの産生を促進することはできない。
これに対して本請求項記載の発明は生体電位を3000〜6000Vに維持するので、確実にBDNFの産生を促進することができ、より高い効果が得られる。
【0061】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の電位治療器の生体電位を3500〜5200Vに維持するようにするものである。
生体電位の設定値として、BDNFの産生に適した3500〜5200Vの間の患者に適切な値が設定される。治療中、生体電位検出手段3で生体電位を直接測定し、測定された生体電位と生体電位の設定値を比較し、トランス電源制御手段7を制御して、生体電位が設定値になるように制御する。
このようにして、生体電位はBDNFの産生に適した3500〜5200Vの間の値に制御される。
この電位は請求項3記載の発明の電位より効果的にBDNFの産生を促進することが確認されている。この点も特許文献3に記載されている。
特許文献3は通電手段(電極)の電位をこの値に制御するが、生体電位はこれと異なるため、確実にBDNFの産生を促進することはできない。
これに対して本願発明は生体電位を3500〜5200Vに維持するので、より確実にBDNFの産生を促進し、より高い治療効果が得られる。
【0062】
図2は本願発明の装置によるBDNF産生の様子を示す。図2(A)は請求項2記載の発明による電位治療でBDNF産生量が増加する様子を示す。電位を4000Vにして約30分の治療をおこなうと、BDNFが約33%増加することが確認された。
図2(B)は、電位を変えた場合、30分の電位治療後、BDNFの濃度がどのように変化するかを示したものである。電位が5800Vでは、一旦、急激にBDNFが増加し、その後減少し、再度上昇する。電位が3500Vでは、一旦上昇した後、徐々に減少する。6000Vよりも高い電位では、図には記載していないが、一旦高い濃度になった後、ベースライン程度になる。3000V以下では、治療後も濃度上昇は少なく、すぐにベースライン程度になることを確認した。
これより、BDNFを効果的に促進しこれを長時間持続させるには、生体電位を3000〜6000Vに、より好ましくは3500〜5200Vに維持することが重要であることが分る。
このため、請求項2では、生体電位を3000〜6000Vとし、より好ましくは、請求項3で、生体電位を3000〜6000Vとした。
このように、BDNFの産生には3000〜6000Vの電位、特に、3500〜5200Vが望ましい。
請求項2〜4記載の発明により、BDNFの産生を促進できる。このため、BDNFの産生不良に伴う疾患、例えば脳神経機能の向上、虚血性脳障害の解消、認知症予防、鬱病の改善、メタボリックシンドロームの予防及び改善などに、より高い効果を得ることができる。
【0063】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載した電位治療器において、生体電位の振幅又は周波数を、又は生体電位を断続波にしてその繰返し周期または振幅を、ランダムに、又はリズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎを有するように、変化させるものである。
本請求項記載の発明では、所望するゆらぎのパターンをプログラムし(又は表を作成しておき)、このプログラムを実行して得られるデータ(表の場合はそのデータ)を制御の目標値とし、治療中に生体電位検出手段3で検出された生体電位がこの制御目標値になるように制御手段4で高電圧発生手段1を制御すると、所望の生体電位のゆらぎを得ることができる。
【0064】
電気信号等をランダムに、又はリズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎを有するように変化させる方法は公知であり、電位治療器でもこの技術が開示されている。
しかし、出力にゆらぎをもたせた従来の装置は、電位供給手段つまり患者が載る電極の電位を制御するものであり、これに対して本請求項記載の発明は、生体電位を設定値に制御するものである。従来の装置は、生体電位をどの程度にして治療をおこなっているのかを知ることができなかったため、確実な治療ができなかった。これに対して本願発明は、医師が最適と判断する生体電位に設定できるため、より確実に、高い治療効果を得ることができる。
図3に請求項5の揺らぎの例を示す。
図3(A)は、生体電位を一定周期で断続する例である。断続するだけでも、周期が一定であっても、生体の慣れを防止できる。
この断続パターンを得るには、断続パターンをプログラムし(又はテーブルを作成しておき)、このプログラムを実行したときに得られるデータ(テーブルの場合はそのデータ)を目標値とし、この目標値と実際に生体電位検出手段によって検出される生体電位を比較し、生体電位がこの目標値になるように制御手段で制御すると、図3(A)の生体電位を得ることができる。
【0065】
図3(A)の断続波の繰返し周期をランダムに、又はリズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎを有するように変化させてもよい。また、図3(A)のパルス幅又は振幅をランダムに、又はリズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎを有するように変化させてもよい。
【0066】
図3(B)は連続波の生体電位の振幅を3000〜6000Vの間で正弦波状(リズミカル)に変化させる例である。
同図(C)は生体電位の振幅を3000〜6000Vの間でランダムに変化させる例である。
同図(D)は1/f揺らぎを有するパワースペクトルである。
振幅に1/f揺らぎを持たせると、図3(C)に近いパターンになる。図3(C)の不規則な揺らぎは1/f2の特性を有し、1/fよりも強い変化を示す。
図3に示した揺らぎの例に限らず、本請求項記載の発明では、慣れを防止できるものであれば、どのようなパターンであってもよい。
【0067】
なお、ランダムな変化とは、次の事象の発生を予測できない変化のことで、乱数表を用いて、出力を発生させればよい。図4は不規則に生体電位を変化させる例である。実際には、電位の大きさや周波数はある範囲内で変化するようにするので(装置の性能や安全性上の制約から)、擬似的な不規則性しか生じることはできないが、実質的には問題は無い。
【0068】
前述のように、生体を長時間、同じ条件で刺激をおこなうと慣れが生じて、治療効果が低下する。しかし、本請求項記載の発明により電位治療を続けても慣れは生じにくく、より効果的に治療を行うことができ、BDNFの産生を促進できる。このため、BDNFの産生不良に伴う疾患、例えば脳神経機能の向上、虚血性脳障害の解消、認知症予防、鬱病の改善、メタボリックシンドロームの予防及び改善などに、より高い効果を得ることができる。
本請求項記載の発明では、生体電位を制御しているので、従来装置の電極電圧を制御していたものよりもより確実に、より安全に、より高い効果を得ることができる。
【0069】
高電位治療では、電極と生体、生体とアースの間で電気的な結合があり、微弱な電流が流れ、これを知覚できる。本請求項記載の発明により生体電位を変化させると、生体電流の変化をより明確に知覚でき、治療感を得ることができるため、患者の満足感も増し、より高い治療効果を得ることができる。
【0070】
図2に示すように、電極部の電位をランダムに変化させるものは公知である。引用はしていないが、パワースペクトルが1/f揺らぎを有するように電位を変化させる技術も開示されている。しかし、従来の技術は電極部の電位を制御するものであり、生体電位を制御するものではないため、生体電位はどのように揺らいでいるのかは不明で、慣れの防止が十分であるか、わからなかった。
本請求項記載の発明は、生体電位を所望のように制御できるため、確実に慣れを防止でき、より高い治療効果を得ることができる。
【0071】
請求項6記載の発明は、
請求項1〜5記載の電位治療器に、
生体に流れる電流を測定する生体電流測定手段5と、
前記高電圧発生手段の出力電圧を測定する出力電圧測定手段6、
の一方又は両方を設けたものである。
この実施例を図1に示す。
生体電流測定手段5と出力電圧測定手段6で検出された生体電流の値と出力電圧の値は制御手段4に転送され、図には記載していないが、制御手段4に接続される表示部に表示される。
また、請求項1には生体電位検出手段3を設けているので、生体電位は制御手段4を介してこの表示部に表示することができる。
本請求項記載の発明により、生体電流や出力電圧、生体電位をモニタし、治療の状態を確認することができる。
【0072】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6記載の電位治療器において、
生体電位、生体電流、出力電圧の3つのパラメータの中のいずれか1つ又は複数のパラメータをモニタし、
前記のモニタするパラメータの測定値に変動を許容する許容範囲を設けておき、
前記のモニタするパラメータの測定値を表示するとともに、前記の測定値が前記許容範囲を超えて変動したとき警報を発する手段と前記出力電圧を低下させる手段の一方または両方を設けたものである。
【0073】
図4(A)は、患者の最適として医師が決定した生体電位esである。
図4(B)は安定した姿勢で、患者が電位供給手段2に載ったときの様子と、その時の電位供給手段2の電圧、つまり出力電圧eoである。このとき、電位供給手段2と患者Sの距離はdとなり、この図には示していないが、図6に示すように、電気的には容量C1で容量結合され、また、患者Sとアースの間は電気的容量C2で容量結合され、生体電位esは電極の電位eoをC1とC2で分割した値となり、生体電位esが常に設定値になるように、制御手段4で電位供給手段1を制御し、電位供給手段の電圧をeoにする。
【0074】
図4(C)は、患者が治療中に体動をおこしたときの様子である。電位供給手段2と患者Sの距離はd‘となり、電気的容量C1とC2が変動し、生体電位esも変動する。この生体電位esを設定値に制御するため、制御手段4で電位供給手段1を制御し、電位供給手段の電圧をeo’にして、生体電位esを設定値にする。
このように、治療中に体動を起こすと、電位供給手段の電圧eoが変化して、生体電位esを一定に保つ。
電位供給手段の電圧eoの変化は、体動の大きさに依存するが、体動が大きくなると、装置からはみ出す量が大きくなり、付近にある導体や人に触れる可能性が高くなり、衝撃が発生し、危険性が高まる。また、体動が大きいと、装置から落下する可能性もある。さらに、体動が大きいとき、電位供給手段2の電圧を大きく上昇させると、生体に対する危険性も増加する。
このように、電位供給手段の出力電圧eoの変化量は、付近にある導体や人に触れて衝撃が発生する危険性や、落下の危険性、電圧が高くなる過ぎることによる危険性などを表す指標となりうる。
【0075】
そこで、前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧のなかの少なくとも1つをモニタして測定し、前測定値の少なくとも1つが所定の許容範囲を超えて変動したとき警報を発し、出力電圧を低下させるようにした。本請求項記載の発明では、警報を発する手段と、出力電圧を低下させる手段の、一方又は両方を設けるようにした。
ただし、安全上、まずは出力電圧を低下さ、同時に警報を出すようにすることが望ましい。
【0076】
例えば、出力電圧eoを測定する場合について説明する。
予め、出力電圧eoが変動してもよい許容範囲を設けておき、出力電圧測定手段により出力電圧eoを測定する。大きな体動により出力電圧eoが許容範囲内を超えて変動した場合に、出力電圧を低下させる手段を作動させて出力電圧を低下させ、同時に警報音を出すようにすればよい。
このとき、出力電圧は、図4(B)の、安定した姿勢のときの出力電圧程度に下げればよい。
警報は、表示、音その他、どのような手段を用いても、またそれらを複数組み合わせて用いてもよい。
許容範囲は任意に設定できるが、実際には実験によって決定している。
許容範囲は、複数段階に細分化しもよい。図4(D)では、3段階に分けて表示する例を示している。例えば出力電圧を測定するようにし、例えば出力電圧は30%の変動を許容するとし、10%未満の増加であれば安全で、11−20%なら危険、20%以上なら注意として表示する例を示している。表示器にこの3段階に合わせて3つ以上のLEDを配列すると、出力電圧の変動の程度も眼で見て確認することができる。これにより患者が導体と接触して衝撃を受ける可能性がどの程度高くなっているか、又は転落の危険性はどの程度高くなっているかを知ることができる。また、出力電圧が上昇すると、患者が周囲の導体と接触したときの衝撃は大きくなるが、本請求項記載の発明により、この危険性の程度も知ることができる。
以上の例では、出力電圧をモニタする例を示したが、生体電流や生体電位をモニタし、同様の警報を発し出力電圧を低下させるようにしてもよい。
【0077】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7記載の電位治療器において、治療中に、生体電位、生体電流、出力電圧のいずれかをモニタし、電位治療中の患者と周囲の導体が接触したとき、これを前記生体電位検出手段6、前記生体電流検出手段5、又は前記出力電圧検出手段3の中の1つ又は複数の検出手段により検出し、前記制御手段4で前記電位発生手段を制御して出力を低くして使用者が受ける衝撃を低減する衝撃緩衝手段を設けたものである。
【0078】
図5は本請求項記載の発明による制御時の出力電流の波形の例で、(A)は患者と周囲の導体が接触したときに発生する衝撃の例で、急激に出力電圧が低下する。(B)と(C)はこれを本請求項記載の発明により制御した例である。(B)は衝撃が発生したとき、次のゼロクロスラインまで出力電圧を小さい値に低下させた例であり、(C)は次のゼロクロスラインまで出力電圧をゼロにした例である。
治療中に患者が周囲の導体や人に接触すると、(A)のようなパルス状の出力電圧の変化が生じ、衝撃を受ける。
これと同期して、生体電流も変動し、生体電位も短時間の変動を示す(生体電位は設定値になるように制御しているため、短時間で設定値になり、出力電圧の波形とは異なる)。
この変化を出力電圧測定手段6と、電流測定手段5と、出力電圧測定手段6のいずれかで測定し、請求項6記載の電位治療器の解析手段で解析し、本請求項記載の発明の衝撃識別手段で衝撃が発生したことを識別し、制御手段で電位発生手段1を制御して出力電圧を低くして、衝撃を低減するようにした。
衝撃を識別するには、生体電位と生体電流と出力電圧のいずれかを測定し、その変化率の大きさから判断したり、画像処理やフィルタの技術を用いればよい。
図5(B)と(C)には次のゼロクロスラインまで出力電圧を低下させる例を示したが、もっと長い間、出力電圧を低下させてもよい。
以上の例では、患者が周囲の導体と接触したとき、出力電圧を制御して衝撃を防止する礼をしましたが、生体電流を抑制したり、生体電位を制御しても良よい。
【0079】
本請求項記載の発明では、図6(B)のように、導体接触のイベントが生じている間、またはそれよりも長く、強い衝撃が感じられない程度に、生体電位を低く又はゼロに維持する。
このため、本請求項記載の発明により、患者が導体に接触しても、衝撃を低減又は無くすことができ、安全な治療を行うことができる。
特許文献5にも類似の技術が開示されているが、この引用文献は衝撃を防止する技術に関するもので、生体電位を設定値に制御するものではない。
このため、特許文献5は、従来と同様、生体電位は不明のまま使用している。つまり、本願発明が解決しようとした課題を解決していない。このため、生体電位を所望の値に制御して確実に効果的な治療をおこなうという科学的な治療をおこなうことはできない。
【0080】
本願発明は、出力電圧を制御して生体電位を任意の値に設定できる、電源電圧の変動の影響を受けない、生体そのものの電位を設定どおりの値に制御する、体動をおこしても生体電位を設定値に維持できるという、従来に無い効果を得ている。また、これにより、BDNFの産生をより効果的に促進する、治療の慣れも防止する、体動の程度をモニタし外部導体への接触の危険性、装置からの落下の危険性、外部導体への接触時に生じるであろう衝撃の程度等を予め知ることができ、例え外部導体に接触しても衝撃を減らすことができるようにした。
このため、より効果的な、より安全な電位治療をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の電位治療器のブロック図。
【図2】本発明によるBDNF産生の図。
【図3】本発明の電位治療器の揺らぎを持たせた生体電位の例。
【図4】本願発明の、体動を起こしたときの生体電位と出力電圧の図。
【図5】患者と周囲の導体が触れたときの出力電流と、これを請求項8の発明で抑制したときの出力電圧波形。
【図6】従来の電位治療器のブロック図の例。
【図7】特許文献1の実施例。
【図8】特許文献2の実施例。
【図9】特許文献3の実施例。
【図10】特許文献4の実施例。
【図11】特許文献5の実施例。
【符号の説明】
【0082】
1:電位発生手段
2:電位供給手段
3:生体電位検出手段
4:制御手段
5:生体電流測定手段
6:出力電圧測定手段
7:インバータ回路
8:昇圧トランス
S:生体
D:電極
K:クッション材
ei:入力電源の電圧
eo、eo’、eo’’:出力電圧
es:生体電位
ep:設定生体電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記高電圧発生手段の出力を生体に供給する電位供給手段と、
前記高電圧発生手段の出力制御を含めて装置全体を制御する制御手段と
を有する電位治療器において、
生体電位を検出する生体電位検出手段を設け、
前記生体電位検出手段で検出した生体電位が、予め設定した生体電位の設定値又は所定の設定範囲になるように、前記高電圧発生手段を制御する出力制御手段を設けたことを特長とする、電位治療器。
【請求項2】
生体電位はBDNFを産生する電位であることを特長とする、請求項1記載の電位治療器。
【請求項3】
生体電位は3000〜6000Vであることを特長とする、請求項1又は2のいずれかに記載した電位治療器。
【請求項4】
生体電位は3500〜5200Vであることを特長とする、請求項1から3のいずれかに記載した電位治療器。
【請求項5】
生体電位を連続波又は断続波とし、連続波の周波数又は振幅を、又は断続波の繰返し周期又は振幅を、ランダムに、リズミカルに、又はパワースペクトルが1/f揺らぎ特性を有するように、変化させるようにしたことを特長とする、請求項1〜4のいずれかに記載した電位治療器。
【請求項6】
請求項1〜5記載の電位治療器において、
治療中に加える電圧によって生体に流れる生体電流を測定する生体電流測定手段と、
前記高電圧発生手段の出力電圧を測定する出力電圧測定手段、
の一方又は両方を設けたことを特長とする、請求項1〜5のいずれかに記載した電位治療器。
【請求項7】
請求項1〜6記載の電位治療器において、
前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧のなかの1つ又は複数を測定し、
前測定値が所定の許容範囲を超えて変動したとき警報を発する手段と前記出力電圧を低下させる手段の一方または両方を設けたことを特長とする、請求項1〜6のいずれかに記載した電位治療器。
【請求項8】
請求項1〜7記載の電位治療器において、
前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧のなかの1つ又は複数を測定し、
測定した前記生体電位と前記生体電流と前記出力電圧値のなかの1つ又は複数が急激に変動したとき、治療中の患者と周囲の導体が接触したと判断し、
所定の時間、前記制御手段で前記電位発生手段を制御して出力を低くして使用者が受ける衝撃を低減する衝撃緩衝手段を設けたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載した電位治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−264242(P2010−264242A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107687(P2010−107687)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)
【出願人】(506263376)
【Fターム(参考)】