説明

生体電極

【課題】生体電極の装着作業を簡略化し、且つ、生体電極のサイズを小型化すること。
【解決手段】ケーブル部11は、端部191から分枝部192まで伸延して分枝部192にて枝部193a〜193cに分枝するよう形成され、枝部193a〜193cにて中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cに接続する。シート部13は、被計測者への貼付のための粘着層を有する。シート部13は、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cが互いに離間して列をなす配置状態で、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを保持し、この配置状態を保ちながら粘着層により被計測者に貼付されるよう一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図などの生体信号の計測に用いられる生体電極には、従来から様々なタイプのものがあり、これらは目的や用途などに応じて使い分けられている。
【0003】
例えば、生体電極と信号伝送手段(例えばケーブル)とを使用中に分離させないために、電極部とケーブル部とを予め一体化したタイプが用いられることがある。さらに、同時使用される複数個の電極部がそれぞれ設けられた複数本のケーブル部を、電極側の部分を互いに分離させ残余の部分を束ねて一体化したタイプもある(例えば特許文献1参照)。なお、このようなタイプは、構造上では1本のケーブル部が途中から複数本に枝分かれしたものであることから、説明簡略化のために以下の説明ではこのようなタイプを「分枝型」という。
【0004】
また、長時間(例えば数日間)にわたって生体電極を被計測者に装着し続けて心電図を計測する場合には、衛生上の観点から使用後に廃棄できるディスポーザブルタイプの生体電極(以下、単に「ディスポ電極」という)が用いられることがある。
【0005】
ディスポ電極においては、その構造などについて従来から様々な提案がなされている。例えば、フレキシブルプリント基板(以下、単に「フレキ基板」という)をケーブル部として用いた分枝型のディスポ電極がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−183133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の分枝型の生体電極においては、複数の電極部が互いに独立した構成となっている。そのため、被計測者への装着を行う際には、保護フィルムから電極部を剥がしてその電極部を被計測者の体表面に貼付するという動作を、電極部の個数だけ繰り返し行う必要があったため、装着作業が煩雑であった。
【0008】
さらに、生体電極のサイズが大きくなると装着作業の効率や被計測者の不快感に影響を及ぼすことから、生体電極は小型に設計することが求められている。
【0009】
本発明の目的は、装着作業を簡略化し、且つ、サイズを小型化することができる生体電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生体電極は、生体信号の被計測者に貼付されて使用される生体電極であって、少なくとも3個の電極部と、端部から分枝部まで伸延して前記分枝部にて少なくとも3本の枝部に分枝するよう形成され、前記少なくとも3本の枝部にて前記少なくとも3個の電極部に接続するケーブル部と、前記被計測者への貼付のための粘着層が設けられたシート部と、を有し、前記シート部は、前記少なくとも3個の電極部が互いに離間して列をなす配置状態で前記少なくとも3個の電極部を保持し、前記配置状態を保ちながら前記粘着層により前記被計測者に貼付されるよう一体に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体電極の装着作業を簡略化し、且つ、生体電極のサイズを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体電極の全体構成を示す分解斜視図
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体電極を上面側から見た平面図
【図3】本発明の一実施の形態に係る回路分離部の回路パターンを示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体電極の要部構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
まず、本実施の形態の生体電極の全体構成について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の生体電極の全体構成を示す分解斜視図であり、図2は、本実施の形態の生体電極を上面側から見た図である。なお、以下の説明において「上」および「下」は、図1における上側および下側をそれぞれ意味する。
【0016】
生体電極10は、機能的に見て大別すると、3つの機能部、すなわち、ケーブル部11、電極部12およびシート部13を有する。
【0017】
ケーブル部11は、電極部12により検出された生体信号を伝送する。
【0018】
電極部12は、第1の電極部としての中央電極部12a、第2の電極部としての左電極部12b、および第3の電極部としての右電極部12cからなり、被計測者から生体信号を検出する。中央電極部12aは、不関電極としての機能を有し、左電極部12bおよび右電極部12cは、(+)電極または(−)電極としての機能を有する。
【0019】
シート部13は、電極部12を保持し、保持された電極部12が被計測者の体表面に接触する状態で被計測者の体表面に貼付される。
【0020】
また、生体電極10は、構造的には積層構造を有する。具体的には、生体電極10は、上から順に、不織布層110、PET基材層120、銀塩化銀電極層130、銀回路層140、レジスト層150、カーボン層160、導電性ゲル層170および不織布層180を有する。以下、この構造的構成について、上記機能部ごとに分けて説明する。
【0021】
まず、ケーブル部11の構成について説明する。
【0022】
ケーブル部11は、PET基材層120、銀回路層140、レジスト層150およびカーボン層160により構成されたフレキ基板である。
【0023】
PET基材層120は、PET(ポリエチレンテレフタラート)により形成された可撓性を有する平面状の基材である。PET基材層120は、基材端部121から基材分枝部122まで、数cmから数十cmの長さに伸延して、基材分枝部122にて3本の基材枝部123a、123b、123cに分枝する形状を有する。
【0024】
基材枝部123aは、基材端部121から基材分枝部122までの伸延方向の延長線上に伸延し、基材枝部123b、123cはその両側に伸延する。
【0025】
基材枝部123a、123b、123cの先端に形成された基材先端部124a、124b、124cは、円形形状であり、その中心位置は中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの中心位置に合わせられる。
【0026】
なお、基材先端部124a、124b、124cは、使用中の電極部12の導電性ゲル層170の吸湿防止などのために、電極部12、特に導電性ゲル層170を、完全に被覆するサイズ(直径)を有する必要がある。しかし、PETは水分の透過性を持たない材料である。このため、基材先端部124a、124b、124cのサイズを、皮膚への影響などを考慮して、電極部12の被覆に必要な最小限のサイズとすることが好ましい。基材枝部123a、123b、123cについても同様である。
【0027】
なお、PET基材層120の上面は、絶縁性、防水性およびクッション性を有する材料の層で被覆してもよい。
【0028】
銀回路層140は、導電性を有する銀インクにより形成された所定の回路パターンを有する電気回路であり、PET基材層120の下面に印刷などの加工法により形成される。
【0029】
銀回路層140の回路パターンは、回路端部141に設けられたコネクタ端子(図示せず)と電極部12とを電気的に接続して生体信号を伝送するための複数の信号線からなり、概形としては、基材端部121に対応する位置にある回路端部141から、基材分枝部122に対応する位置にある回路分枝部142まで伸延して、回路分枝部142にて3本の回路枝部143a、143b、143cに分枝する形状を有する。
【0030】
基材枝部123a、123b、123cの下面にそれぞれ設けられた回路枝部143a、143b、143cの回路先端部144a、144b、144cは、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの領域において、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの中心位置を越えた位置にある。
【0031】
また、銀回路層140は、中間部分に回路分離部145を含む回路パターンを有する。
【0032】
レジスト層150は、銀回路層140の信号線を酸化やマイグレーションから保護するために、絶縁性を有するレジストインクにより形成された薄膜であり、銀回路層140を被覆するようにPET基材層120の下面に印刷などの加工法により形成される。
【0033】
レジスト層150は、基材端部121に対応する位置にあるレジスト端部151から、基材分枝部122に対応する位置にあるレジスト分枝部152まで伸延して、レジスト分枝部152にて3本のレジスト枝部153a、153b、153cに分枝する形状を有する。
【0034】
基材枝部123a、123b、123cの下面にそれぞれ設けられたレジスト枝部153a、153b、153cのレジスト先端部154a、154b、154cは、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの領域において、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの中心位置を越えない位置にある。
【0035】
また、レジスト層150は、銀回路層140の回路分離部145に対応する位置に開口部155を有する。
【0036】
カーボン層160は、導電性を有し且つ酸化に強いカーボンインクにより形成された薄膜であり、レジスト層150の下面に形成される。カーボン層160は、基材端部121に対応する位置にあるカーボン端部161から、基材分枝部122まで到達しない位置にあるカーボン先端部162まで伸延する。
【0037】
なお、カーボン層160の下面は、絶縁性、防水性、クッション性を有する材料の層で被覆してもよい。
【0038】
ケーブル部11の上記構成において、基材端部121、回路端部141、レジスト端部151およびカーボン端部161の組合せは、ケーブル部11の端部191を構成する。
【0039】
また、基材分枝部122、回路分枝部142およびレジスト分枝部152の組合せは、ケーブル部11の分枝部192を構成する。
【0040】
また、基材枝部123a、回路枝部143aおよびレジスト枝部153aの組合せは、ケーブル部11の第1の枝部としての枝部193aを構成する。また、基材枝部123b、回路枝部143bおよびレジスト枝部153bの組合せは、ケーブル部11の第2の枝部としての枝部193bを構成する。また、基材枝部123c、回路枝部143cおよびレジスト枝部153cの組合せは、ケーブル部11の第3の枝部としての枝部193cを構成する。
【0041】
また、基材先端部124a、回路先端部144aおよびレジスト先端部154aの組合せは、先端部194aを構成する。また、基材先端部124b、回路先端部144bおよびレジスト先端部154bの組合せは、先端部194bを構成する。また、基材先端部124c、回路先端部144cおよびレジスト先端部154cの組合せは、先端部194cを構成する。
【0042】
また、回路分離部145、開口部155およびカーボン層160の組合せは、ケーブル部11の回路交差部195を構成する。
【0043】
次に、電極部12の構成について説明する。
【0044】
電極部12は、銀塩化銀電極層130および導電性ゲル層170により構成される。
【0045】
銀塩化銀電極層130は、銀塩化銀電極130a、130b、130cを有する。銀塩化銀電極130a、130b、130cは、銀により形成された平面部材の表面に塩化銀をメッキすることにより形成された電極である。
【0046】
導電性ゲル層170は、導電性ゲル170a、170b、170cを有する。導電性ゲル170a、170b、170cは、導電性および粘着性を有し、直径数十mm(例えば27mm)程度の円板状に形成されている。
【0047】
銀塩化銀電極130aおよび導電性ゲル170aの組合せは、中央電極部12aを構成する。中央電極部12aは、回路先端部144aを含む回路枝部143aの一部分を銀塩化銀電極130aと導電性ゲル170aとで挟み込むように配置され、これにより銀回路層140に電気的に接続する。
【0048】
また、銀塩化銀電極130bおよび導電性ゲル170bの組合せは、左電極部12bを構成する。左電極部12bは、回路先端部144bを含む回路枝部143bの一部分を銀塩化銀電極130bと導電性ゲル170bとで挟み込むように配置され、これにより銀回路層140に電気的に接続する。
【0049】
また、銀塩化銀電極130cおよび導電性ゲル170cの組合せは、右電極部12cを構成する。右電極部12cは、回路先端部144cを含む回路枝部143cの一部分を銀塩化銀電極130cと導電性ゲル170cとで挟み込むように配置され、これにより銀回路層140に電気的に接続する。
【0050】
左電極部12bおよび右電極部12cは、一定レベル以上の精度で生体信号の検出を行うために、中心間を例えば75mmより長く離間させて配置され、さらに、全体のサイズ縮小のために、中心間を例えば95mm以上離間させずに配置される。例えば、中心間の距離が85mmとなるように左電極部12bおよび右電極部12cを離間させて配置することが好ましい。
【0051】
中央電極部12aは、左電極部12bと右電極部12cとの間に配置される。良好な精度で生体信号の検出を行うために、中央電極部12aは、左電極部12bまでの距離と右電極部12cまでの距離とが等しくなるような位置に配置される。
【0052】
また、中央電極部12aは、左電極部12bおよび右電極部12cとともに略一直線上に列をなすように配置される。中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを、三角形をなすように配置せずに列をなすように配置することにより、全体のサイズを縮小することができる。
【0053】
次に、シート部13の構成について説明する。
【0054】
シート部13は、不織布層110、180により構成される。
【0055】
不織布層110は、通気性を有する1枚の不織布であり、その下面には粘着剤からなる粘着層(図示せず)が設けられる。同様に、不織布層180も、通気性を有する1枚の不織布であり、その下面には粘着剤からなる粘着層(図示せず)が設けられる。
【0056】
不織布層110、180は、分枝部192と枝部193a、193b、193cとを含むケーブル部11の一部分および電極部12を上下から挟み込むようにして互いに貼り合わせることにより、一体化される。
【0057】
この一体化の結果として、電極部12がシート部13に装着される。また、不織布層180の下面全域、および、不織布層110の下面のうち不織布層180と重なり合っていない領域により、貼付面が構成される。貼付面は、生体電極10の不使用時には保護フィルムに貼付され、生体電極10の使用時には被計測者の体表面に貼付される。
【0058】
不織布層180は、開口部181a、181b、181cを有する。開口部181a、181b、181cは、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの中心領域が露出するような位置に形成される。これにより、生体電極10の使用時に、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを体表面に接触させることができる。
【0059】
なお、基材先端部124a、124b、124cと、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cと、開口部181a、181b、181cとが同心状となるように配置することが好ましい。
【0060】
なお、シート部13の貼付面については、中央電極部12a、左電極部12b、右電極部12cが体表面との接触状態を使用中維持し得る粘着力が得られるように、シート部13のサイズを決定する必要がある。ただし、貼付面の面積増大は使用時の被計測者の不快感の増大につながることから、シート部13のサイズは、粘着力の確保に必要な最小限のサイズであることが好ましい。
【0061】
以上、生体電極10の全体構成について説明した。
【0062】
ここで、ケーブル部11に設けられた回路交差部195について説明する。
【0063】
本実施の形態では、銀回路層140は、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cによりそれぞれ検出された生体信号を伝送するために3本の信号線を必要とする。また、本実施の形態では、中央に位置する中央電極部12aを不関電極として使用する一方で、不関電極のコネクタ端子はケーブル部11の幅方向において中央部ではなく側部にある。このため、中央電極部12aと接続する信号線を側部に回り込ませる必要がある。
【0064】
これを実現する1つの方法としては、中央電極部12aの信号線が他の信号と交差しないように、例えば左電極部12bの信号線のまわりを迂回させるように引き回す方法が挙げられる。しかし、この方法では、基材枝部123bの幅を迂回信号線の分だけ広げる必要が生じ、水分透過性の点で好ましくない。
【0065】
そこで、本実施の形態では、回路分離部145において、中央電極部12aの信号線を断線させる。具体的には、図3に示すように、断線部147、148をそれぞれ有する信号線146a、146dを含む回路パターンが形成される。また、左電極部12bの信号線146bはクランク形状(Z形状)に折れ曲がったクランク形状部149を有し、右電極部12cの信号線146cは直線状となっている。
【0066】
そして、断線部147、148は、下面側に曲げられ、レジスト層150に形成された開口部155を通り抜けてカーボン層160に接触するように加工される。これにより、信号線146a、146dは互いに電気的に接続される。よって、PET基材層120の各部分の幅に何ら影響を与えることなく、中央電極部12aにより検出される生体信号を側部のコネクタ端子に伝送することができる。
【0067】
次いで、生体電極10の要部構成について、図2および図4を参照しながら説明する。
【0068】
図4は、図2に示す生体電極10の要部構成を示す図である。ここでは、シート部13の一体化、枝部193a、193b、193cの相対角度、および枝部193aの幅を中心に説明する。
【0069】
まず、シート部13の一体化について説明する。
【0070】
シート部13は、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを全て保持し得るように一体に形成されている。前述のとおり、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cは、一定間隔に離間し、且つ、略直線状の列をなす状態に配置されている。すなわち、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cは、この配置状態で、一体のシート部13に保持されている。
【0071】
このため、生体電極10の使用時に、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを保護フィルムから剥がす動作は一挙動で行うことができ、これらを体表面に貼付する動作も一挙動で行うことができる。当然のことながら、体表面に貼付される際、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cの配置状態は、シート部13によって保たれる。よって、貼付の位置決めが容易であり、検出精度の確保も容易である。すなわち、生体電極10の装着作業を簡略化することができる。
【0072】
また、分枝部192と枝部193a、193b、193cも、一体のシート部13に保持されている。このため、中央電極部12a、左電極部12bおよび右電極部12cを保護フィルムから剥がしたり体表面に貼付したりする際に、枝部193a、193b、193cが互いに絡まることがなく、取り扱いが容易となる。
【0073】
なお、分枝部192がシート部13に保持されていない構成や、枝部193a、193b、193cが部分的にシート部13に保持されていない構成を採用してもよい。
【0074】
次に、枝部193a、193b、193cの相対角度について説明する。
【0075】
枝部193aは、ケーブル部11の端部191から分枝部192までの伸延方向と同一方向(以下「第1の方向」という)において、分枝部192から伸延する。そして、枝部193bは、第1の方向に対して角度θ1をなす第2の方向において、分枝部192から伸延する。さらに、枝部193cは、枝部193bとともに枝部193aを跨いでV字を形成するように第1の方向に対して角度θ2をなす第3の方向において、分枝部192から伸延する。以下、説明簡略化のため、この構成を「V字枝形状」という。
【0076】
ここで、V字枝形状との比較例として、枝部193b、193cを一直線状(つまり、θ1=90°、θ2=90°、θ1+θ2=180°)とした場合(以下「直線枝形状」という)を挙げる。そして、比較のために次のような状況を想定する。すなわち、生体電極10が体表面に貼付された後に例えば体動などによって、左電極部12bおよび右電極部12cが互いに近づくように撓む力が働き、その結果として分枝部192の付近が左電極部12bおよび右電極部12cの付近よりも隆起して、体表面から浮くような状況を想定する。
【0077】
直線枝形状の場合、枝部193a、193b、193cと分枝部192とをシート部13に保持させ且つシート部13のサイズを小さくしようとすれば、枝部193aの長さを極めて短くせざるを得ない。枝部193aを短くすると、ケーブル部11自体が一定の復元力を有していることにも起因して、体表面から浮かせる力が枝部193aを経由して中央電極部12aに伝達しやすくなる。よって、中央電極部12aが体表面から浮きやすくなる。
【0078】
これに対し、V字枝形状の場合には、枝部193a、193b、193cと分枝部192とをシート部13に保持させ且つシート部13のサイズを小さくしようしても、枝部193aの長さを確保することができる。枝部193aの長さが確保されると、体表面から浮かせる力が枝部193aを経由して中央電極部12aまで伝達しにくくなる。さらに、枝部193b、193cはそれぞれ、枝部193aと鋭角をなし、且つ、分枝部192と端部191との間の伸延部分とは鈍角をなす。このため、体表面から浮かせる力は、ケーブル部11自体が一定の復元力を有していることに起因して、分枝部192から枝部193aよりもむしろ端部191側に逃げやすくなる。よって、中央電極部12aが体表面から浮く可能性を低くすることができる。
【0079】
さらに、V字枝形状の場合には、次のような効果も得ることができる。
【0080】
V字枝形状の場合に枝部193aの長さを確保できることは前述のとおりであるが、これを言い換えると、枝部193b、193cと中央電極部12aとの間に、離間距離を確保することができる。このため、中央電極部12aを構成する導電性ゲル170a(図1)が例えば粘着力低下などの原因により変位しても、枝部193b、193cまで到達して短絡が生じる可能性を低くすることができる。
【0081】
なお、本実施の形態では、枝部193a、193b、193cがいずれも直線状に伸延しているが、枝部193a、193b、193cのうち少なくとも1つが非直線形状(例えば湾曲形状)であってよい。端部191から分枝部192までの伸延部分についても同様である。
【0082】
また、本実施の形態では、枝部193aが伸延する第1の方向が、端部191から分枝部192までの伸延部分の伸延方向と同一であるが、異なる方向であってもよい。
【0083】
最後に、枝部193aの幅について説明する。
【0084】
枝部193aは、端部191から分枝部192までの伸延部分の幅W1よりも狭い幅W2を有する。このため、端部191から分枝部192までの伸延部分を捩る力が働いても、そのトルクを中央電極部12aまで伝達させにくくすることができ、中央電極部12aが体表面から浮く可能性を低くすることができる。この構成は、枝部193aが伸延する第1の方向が、端部191から分枝部192までの伸延部分と同一方向である場合に、特に有利である。
【0085】
なお、本実施の形態では、端部191から分枝部192までの伸延部分が一定の幅W1で伸延し、枝部193aが一定の幅W2で伸延しているが、枝部193aの少なくとも一部分が分枝部192よりも幅狭であれば、上記と同様の効果を実現することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0087】
なお、上記構成は、形状や材質、サイズなどについて、種々変更して実施することができる。
【0088】
例えば、本実施の形態では、電極部12が3個の電極部(つまり、中央電極部12a、左電極部12b、右電極部12c)を含んでいるが、4個以上の電極部を含んでもよい。
【0089】
また、本実施の形態では、ケーブル部11としてフレキ基板が用いられているが、フレキ基板と同様に可撓性を有し且つ信号伝送機能を有するものであれば、フレキ基板と異なる部材をケーブル部11として用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 生体電極
11 ケーブル部
12 電極部
12a 中央電極部
12b 左電極部
12c 右電極部
13 シート部
110、180 不織布層
120 PET基材層
121 基材端部
122 基材分枝部
123a、123b、123c 基材枝部
124a、124b、124c 基材先端部
130 銀塩化銀電極層
130a、130b、130c 銀塩化銀電極
140 銀回路層
141 回路端部
142 回路分枝部
143a、143b、143c 回路枝部
144a、144b、144c 回路先端部
145 回路分離部
146a、146b、146c、146d 信号線
147、148 断線部
149 クランク形状部
150 レジスト層
151 レジスト端部
152 レジスト分枝部
153a、153b、153c レジスト枝部
154a、154b 154c レジスト先端部
155、181a、181b、181c 開口部
160 カーボン層
161 カーボン端部
162 カーボン先端部
170 導電性ゲル層
170a、170b、170c 導電性ゲル
191 端部
192 分枝部
193a、193b、193c 枝部
194a、194b、195c 先端部
195 回路交差部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号の被計測者に貼付されて使用される生体電極であって、
少なくとも3個の電極部と、
端部から分枝部まで伸延して前記分枝部にて少なくとも3本の枝部に分枝するよう形成され、前記少なくとも3本の枝部にて前記少なくとも3個の電極部に接続するケーブル部と、
前記被計測者への貼付のための粘着層が設けられたシート部と、を有し、
前記シート部は、前記少なくとも3個の電極部が互いに離間して列をなす配置状態で前記少なくとも3個の電極部を保持し、前記配置状態を保ちながら前記粘着層により前記被計測者に貼付されるよう一体に形成されている、
生体電極。
【請求項2】
前記ケーブル部は、前記端部から前記分枝部まで伸延して前記分枝部にて前記少なくとも3本の枝部に分枝する形状の平面を有する可撓性基材と、前記可撓性基材に印刷された電気回路と、を有する、
請求項1記載の生体電極。
【請求項3】
前記シート部は、前記少なくとも3本の枝部と前記分枝部とを含む前記ケーブル部の一部分をさらに保持する、
請求項2記載の生体電極。
【請求項4】
前記少なくとも3個の電極部は、第1、第2および第3の電極部を含み、前記第1の電極部は前記第2および第3の電極部の中央に位置し、
前記少なくとも3本の枝部は、第1、第2および第3の枝部を含み、
前記第1の枝部は、第1の方向において前記分枝部から伸延して、前記第1の枝部の先端部にて前記第1の電極部に接続し、
前記第2の枝部は、前記第1の方向に対して斜め方向である第2の方向において前記分枝部から伸延して、前記第2の枝部の先端部にて前記第2の電極部に接続し、
前記第3の枝部は、前記第1の方向に対して斜め方向であり且つ前記第2の方向と異なる第3の方向において前記分枝部から伸延して、前記第3の枝部の先端部にて前記第3の電極部に接続する、
請求項3記載の生体電極。
【請求項5】
前記第1の枝部における前記可撓性基材の平面は、前記分枝部における前記可撓性基材の平面よりも幅狭の部分を有する、
請求項4記載の生体電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72543(P2011−72543A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226966(P2009−226966)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)