説明

生体電気インピーダンス測定装置及び方法

【課題】被測定者の四肢に対になって接触する少なくとも8つの電極を有する生体電気インピーダンス測定装置を被測定者又は補助者が効率的に使用でき簡単に操作できるよう構成する。
【解決手段】四肢各々に一対の電極が割り当てられる少なくとも8つの電極と、電流源と、電流電圧測定回路とを有する測定回路と、複数の測定プログラムに基づき2つの電極に対し電流を印加し、生じた電圧を他の肢の2つの電極により測定して、身体セグメントのインピーダンスを測定する制御解析装置を有する生体電気インピーダンス測定装置であって、制御解析装置は、前測定において、電流を2つの電極を介して印加し、生じた電流及び/又は他の電極の電圧を測定することにより、接触状態にある電極を判断し、接触状態にある電極の構成に基づき、電流印加及び電圧測定に用いる測定プログラムを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の体組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定装置、及びそれに対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の導電率は、水の含有量に強く影響を受ける。筋肉や体液などの脂肪の無い人体の部分に、体内の水分の大部分が含まれる。一方、脂肪組織中の水の含有量は比較的低い。そのため、人体や身体セグメントの導電率を測定した上で(あるいは、人体や身体セグメントの抵抗の逆数又はインピーダンスを測定した上で)、さらに少なくとも被測定者の身長や体重などのデータを考慮に入れれば、相対的な脂肪含有量を決定することができる。
【0003】
例えば、国際公開WO97/01303(特許文献1)には生体電気インピーダンス分析方法及び分析装置が記載されている。ここに記載の装置は、8つの電極、すなわち、4つの足用電極(それぞれの足の接続用に2つずつの電極)及び4つの手用電極(それぞれの手の接続用に2つずつの電極)を備える。異なった肢上に位置する2つの電極を介して交流電流を印加し、別の2つの電極間の電圧を測定する。この測定電極も同様に異なった肢上に位置する。他の2つの電流印加電極と他の2つの電圧測定電極に切り替えることにより、様々な身体セグメントを連続的に調べることができる。さらに、電流を片手と片足に印加し、同じ手のもう一方の電極と同じ足のもう一方の電極との間の電圧を測定すると体の片側全体が測定できる。
【0004】
手足上のすべての電極が、それぞれの体の部位に電気的に接触している場合、複数の測定プログラム即ち構成が利用可能となる。言い換えれば、どの電極が電流印加電極として働き、どの電極が電圧測定電極として働くのかに関する構成である。こういった電流印加電極と電圧測定電極との構成により、どの身体セグメントを測定するのか、あるいは体全体の測定をするのかどうかが決まる。四肢のそれぞれに2つの電極が電気的に接触している場合、多数の実行可能な測定プログラムが利用できる。接着手段により接着された電極を用いる場合、ある測定プログラムを省略することによって使用する電極を減らすことができるのであれば、省略される場合もある。さらに、被測定者が四肢すべてを電極に接触させられない状況もある。たとえば、一肢が切断されている場合や、包帯やギプスに覆われている場合である。このような状況では、被測定者は、測定装置との接触を、電極との接触に利用可能な肢により確立する。その後、被測定者又は補助者は実行しようとする測定プログラムを選択する必要がある。前述のように、接触点の数によっては、この測定プログラムは一以上の実施可能な測定プログラムを含むこともある。
【0005】
欧州特許公開第2042843A1号(特許文献2)には、装置の少なくとも2つの電極が被測定者と接触していると確認された場合に、生体電気インピーダンス測定ユニットの電源が入り、逆に2つ未満の電極が接触していると確認された場合、電源が切られるように生体電気インピーダンス測定装置を構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO97/01303号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第2042843A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、被測定者の四肢に対になって接触する少なくとも8つの電極を有する生体電気インピーダンス測定装置を、被測定者又は補助者が効率的に使用でき簡単に操作できるよう構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備える生体電気インピーダンス測定装置及び、請求項6の特徴を備える生体電気インピーダンス測定方法によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0009】
本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置は、制御解析装置を有する。制御解析装置は、前測定を行いその過程でどの電極が体と接触しているかを確認するよう構成されている。制御解析装置はさらに、接触状態にある電極の構成を確認した後に、複数の前もってプログラムされ保存されている測定プログラムの中から、接触状態にある電極の構成に適合するものを選択、即ち確認された構成に含まれる電極のみを電流印加用及び電圧測定用に利用する測定プログラムを選択するように構成されている。電極が体に接触しているかどうかは、電流を2つの電極を介して印加し、生じた該電流印加電極を介する電流及び/又は残りの電極の電圧を検知することによって確認される。測定値が所定の限界値の範囲内にあれば、その電極は接触状態にあると判断される。前もって印加される電流は、交流電流でも直流電流でも良い。さらに制御解析装置は、前測定において、8つの電極が各肢に2つずつ接触していると判断された場合に、実行しうる各半身、各腕、各脚及び胴のインピーダンスを測定する測定プログラムを実行するよう構成されている。
【0010】
制御解析装置は、前測定が、使用者により開始されるべきものとして構成されていても良いし、少なくとも2つの電極が接触していることが確認されると直ちに、前測定が自動的に開始されるように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、被測定者の四肢に対になって接触する少なくとも8つの電極を有する生体電気インピーダンス測定装置を、被測定者又は補助者が効率的に使用でき簡単に操作できるように構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、体の片側のインピーダンスを測定するための第一の測定プログラムを行うための模式ブロック図である。
【図2】図2は、腕のインピーダンスを測定するための第二の測定プログラムの模式ブロック図を示す。
【図3】図3は、脚のインピーダンスを測定するのに用いてもよい第三の測定プログラムの模式ブロック図を示す。
【図4】図4は、胴のインピーダンスを測定する第四の測定プログラムの模式ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した好適な実施形態とともに詳細に説明する。
【0014】
典型的な生体電気インピーダンス測定装置は、立ち台を備え、被測定者はその上に両足で立つ。片足につき2つの電極が立ち台上に形成されている。例えば、かかとの部分に1つ、つま先の部分に1つである。さらに、特有の方式で使用者により握られる握り部が2つ設けられており、これにより、片手につき2つの電極、例えば1つは親指、もう1つは掌の接触を確立する。
【0015】
本発明によれば、生体電気インピーダンス測定装置の制御解析装置は、前測定を行うよう構成されている。この前測定中に、どの電極が被測定者と電気的に接触状態にあるかが確認される。このためには、異なった肢の2つの電極が例えば連続的に選択されても良く、これら2つの電極に電流が印加されても良い(前測定においては、電流は交流電流でも直流電流でもよい)。ここで、これら電極を流れる電流が測定され、測定された電流が所定の電流限界値の範囲内であれば、該2つの電極は接触状態にあると判断される。この手順は、各電極について接触状態にあるか否か確認し終わるまで、連続的にさらに別の電極対に実行される。あるいは、電流を2つの電極を介して印加し、他の2つの電極間に生じた電圧の差を測定し、測定された電圧の差が所定の電圧限界値の範囲内であれば、これら他の2つの電極について接触状態にあると判断する。
【0016】
例えば、8つの電極が四肢のそれぞれに2つずつ接触状態にあると判断されている場合、多数の実行可能な測定プログラムが利用できる。例えば、図1に示す交流電流を体の同じ側の手、足の電極を介して印加し、生じた電圧を同じ手と足のそれぞれの別の電極で測定する測定プログラムである。この測定プログラムは体の片側全体のインピーダンスに対し感度が高い。即ち全身のインピーダンスの測定が提供される。
【0017】
図2に示す測定プログラムにおいても、体の同じ側にある手の一方の電極と、足の一方の電極を介して交流電流が印加される。そして、同じ手の他方の電極と別の手の電極間の電圧の差が測定される。このインピーダンス測定は、電流が流れている腕のインピーダンスに感度が高い。
【0018】
図3に示す測定プログラムにおいては、交流電流が上記と同様に印加され、一方の足の電極と他方の足の電極間の電圧の差が測定される。このインピーダンス測定は、電流が流れている脚のインピーダンスに感度が高い。
【0019】
図4に示す測定プログラムにおいては、交流電流が上記と同様に印加され、体の反対側の手の1つの電極と体の反対側の足の1つの電極間の電圧の差が測定される。このインピーダンス測定は、胴のインピーダンスに感度が高い。
【0020】
前測定において、8つの測定電極、即ち2つの電極がそれぞれの肢に接触状態にあると判断された場合、図1〜図4に示したすべての測定プログラム(及びその変形、即ち肢の入れ替えによる変形)が利用でき、これらは、前測定が行われた後に、選択され実行可能なものとして提示される。例えば、表示装置上の選択肢として提示され、使用者がその中から選択しても良い。あるいはすべての測定プログラムが実行される。
【0021】
前測定において、一方の手の電極が接触状態にないと判断された場合、制御解析装置は、接触状態にある電極の構成に適合するような測定プログラムのみを選択する。この場合、図1〜図4の例から選択するのであれば、図1及び図3の測定プログラムとなる。その後、これら測定プログラムは選択され実行可能なものとして提示される。
【0022】
前測定において、例えば、体の同じ側の片手と片足の電極のみが接触状態にあると判断された場合には、一致する唯一の測定プログラムである図1の測定プログラムが選択され実行可能なものとして提示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢のそれぞれに一対の電極が割り当てられる少なくとも8つの電極と、
電流源と、前記電極に選択的に接続されても良い電流電圧測定回路とを有する測定回路と、
複数の所定の測定プログラムに基づき、前記特定の測定プログラムに特有な2つの電極に対し前記電流源から前記人体に電流を印加し、生じた電圧を、異なった肢上の他の2つの特定の電極により前記電圧測定回路を用いて測定し、これに基づき身体セグメントのインピーダンスを決定するよう構成された制御解析装置と
を有する、人体の組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定装置であって、
前記制御解析装置はさらに
前測定において、電流を2つの電極を介して印加し、前記印加電極を介して生じた電流及び/又は他の電極の電圧を測定することにより、どの電極が接触状態にあるかを判断し、
前記判断された接触状態にある電極の構成に基づき、前記測定された接触状態にある電極の構成に含まれる電極のみを電流印加及び電圧測定に用いるような適合する測定プログラムを選択するよう構成されている生体電気インピーダンス測定装置において、
前記前測定において8つの電極がそれぞれの肢に2つずつ接触状態にあると判断された場合、前記制御解析装置はさらに、前記体の各側、各腕、各脚、及び胴のインピーダンスを測定するために利用可能な測定プログラムを実行するよう構成されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記制御解析装置はさらに、前記前測定において2つの電極を介して電流を印加し、前記2つの電極を介した電流を検知し、検知された電流が所定の電流限界値の範囲内にある場合、前記電極が接触状態にあると判断するよう構成されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記制御解析装置はさらに、前記前測定において、電流を毎回異なる組み合わせの2つの電極を介して連続的に印加することにより、2つを超える電極を介して電流を印加し、前記電流を毎回検知し、検知された電流が電流限界値の範囲内にある場合、前記電極が接触状態にあると判断するよう構成されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記制御解析装置はさらに、前記前測定において少なくとも2つの電極を介して電流を印加し、他の2つの電極を用い後者の電極の間にある関係する体の部分での電圧降下を検知するよう構成され、
電流印加用に選択される電極は、これら電極を介して前記電流を印加及び測定した時に、前記電流が所定の限界値の範囲内であったものであり、
前記検知された電圧低下を照合し、前記検知した電圧降下が所定の電圧限界範囲内にある場合、前記電圧降下を検知した電極は接触状態にあると判断することを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前測定の後複数の測定プログラムが前記判断された接触状態にある電極の構成に適合する場合、前記制御解析装置はさらに、前記選択された測定プログラムを表示装置に表示するよう構成されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項6】
人体の組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定方法であって、
2つの電極を前記人体のそれぞれの肢に割り当て、
複数の所定の測定プログラムに基づき、各測定プログラムに特定の2つの電極を介して交流電流を印加し、
異なった肢上の2つの特定の電極により、生じた電圧を検知し、前記測定プログラムが特異的に扱う体の部分のインピーダンスを測定し、
測定プログラムの開始前に、電流を連続的に別の電極対を介して印加し、且つ前記印加電極を介して生じた電流及び/又は残りの電極での電圧を測定することにより、前記測定値が所定の限界値の範囲にある電極については当該電極が接触状態にあると判断するために前測定を行い、
前記判断された接触状態にある電極の構成に基づき、該構成に適合する測定プログラムを選択し、
該測定プログラムにおいては、前記判断された構成に含まれる電極のみを電流印加用及び電圧測定用として指定する、生体電気インピーダンス測定方法において、
前記前測定において8つの電極がそれぞれの肢に2つずつ接触状態にあると判断された場合、前記制御解析装置はさらに、前記体の各側、各腕、各脚、及び胴のインピーダンスを測定するために実行可能な測定プログラムを実行するよう構成されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72784(P2011−72784A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−218362(P2010−218362)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510259769)セカ アーゲー (3)
【Fターム(参考)】