説明

生体電池治療具

【課題】従来の生体電池治療具においては、正極と負極とを物理的に離す必要から皮接箇所に空隙、段差あるいは角が形成されてしまい、皮接した際、この部分に皮膚が喰い込んで血行不良を起こし、皮膚を傷付ける場合が多かった。
【構成】表面側がドーム状に膨出した台座1の表面側全体に貴金属面2を形成し、該貴金属面2上にそれより小径の薄膜状のN型半導体層3を形成すると共に、このN型半導体層3の外縁を覆う様に、それより外径が大きい環状かつ薄膜状の絶縁層5を形成し、皮接により貴金属面2を正極、N型半導体層3を負極とする生体電池を構成する様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は生体電池治療具、詳しくは、皮膚に接した状態で使用し、微弱な直流起電力の皮下組織への通電刺激により、治療を行う生体電池治療具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体とこれより高い標準単極電位を有する金属とを導電接続し、皮接により生体電池を形成させ、微弱な直流起電力の皮下組織への通電により、肩等の筋肉のコリや痛みを治療する生体電池治療具は従来よりいくつか提案されている。
【特許文献1】特開平11−123245号公報
【特許文献2】特開2000−126308号公報
【特許文献3】特開2000−84093号公報
【特許文献4】特開2000−237322号公報
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は従来の生体電池治療具の代表例であり、特開平11−123245号公報において開示されている生体電池治療具の断面図であり、この生体電池治療具は第1の素子である台座6とN型半導体である第2の素子7と、前記第2の素子7と一体になっている保護抵抗体8とから構成されており、第1の素子である台座6と第2の素子7は電圧制御機能を有する保護抵抗体8を介して電気的に接続され、台座6には皮膚9に接する側を開口する凹部10が形成されており、前記保護抵抗体8は棒状をなし、第2の素子7は前記保護抵抗体8の皮膚9に接する側の一端部とその反対側の他端部のそれぞれに固定され、保護抵抗体8は前記凹部10内に起立状態で保持されている。この生体電池治療具を貼付布11によりコリや痛みのある身体部位の皮膚9の表面に皮接し固定すると、(皮膚9に接する側ではない方の第2の素子7のN型半導体)→(台座6の貴金属)→(皮膚9)→(皮膚9に接する側の第2の素子7のN型半導体)→(保護抵抗体8)→(皮膚9に接する側ではない方の第2の素子7のN型半導体)という電気的閉回路からなる生体電池が構成され、この生体電池によって発生した直流起電力による通電刺激が皮下組織に加えられ、これにより筋肉のコリや痛みが治療される。これ以外の従来提案されている他の生体電池治療具も、上述のものと同様、すべて電極である第1の素子と第2の素子を皮膚に押し付ける構造となっていた。
【0004】
しかしながら、これら生体電池治療具を実際に皮膚に貼り付けて使用に供した場合、いずれも使用中に皮膚を損傷するという事故が多発していた。当初、この損傷は通電による電流が作用するものと考えられていたが、全く通電しないダミーサンプルにおいても同様な損傷が発生することから、本発明者は、皮膚の損傷は通電によるものではなく、生体電池治療具の皮膚接触部分の表面構造が原因ではないかと考え、実験によりこの仮説が正しいことを突き止めた。つまり、従来の生体電池治療具においては、電極部分を皮膚に押し付ける構造となっていると共に、正極と負極を電気的に分離させる為、何らかの形で空隙、段差あるいは角が皮接部分に形成されてしまい、一見わずかな様に見えるこれら空隙、段差あるいは角に皮膚が喰い込み血行不良を起こし、皮膚の損傷に至っていたのである。この知見に基づき、本発明者は鋭意研究を行った結果、皮膚の損傷が発生する余地のない全く新しい形態の生体電池治療具を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
表面側がドーム状に膨出した台座1の表面側全体に貴金属面2を形成し、該貴金属面2上にそれより小径の薄膜状のN型半導体層3を同心円状に形成すると共に、このN型半導体層3の外縁を覆う様に、それより外径が大きい環状かつ薄膜状の絶縁層5を形成し、皮接により貴金属面2が正極、N型半導体層3が負極となる様にして上記課題を解決した。又、上述のものとは逆に、表面側がドーム状に膨出した台座1の表面側全体にN型半導体層3を形成し、該N型半導体層3上にそれより小径の薄膜状の貴金属面2を同心円状に形成すると共に、この貴金属面2の外縁を覆う様に、それより外径が大きい環状かつ薄膜状の絶縁層5を形成し、皮接により貴金属面2が正極、N型半導体層3が負極となる様にしても良い。更に、貴金属面2、N型半導体層3及び絶縁層5の形成はメッキ、コーティングあるいは塗布によって行っても良く、貴金属面2を構成する貴金属及びN型半導体層3を構成するN型半導体にそれぞれ適量の不純物を混入させることにより発電量の調整を行う様にしても良い。
【発明の効果】
【0006】
この台座1をコリや痛みのある身体部位の皮膚表面に皮接し、粘着テープ等で固定すると、貴金属面2を正極、N型半導体層3を負極とする生体電池が形成され、この生体電池によって発生する直流起電力による通電刺激が皮下組織に加えられ、これによって筋肉のコリや痛みが治療される。、このとき、ドーム状をなした台座1の表面側には、N型半導体層3や絶縁層5の形成により、緩やかな曲率変化や微細な継ぎ目が存在しているが、これらはミクロン単位の極めて微細なものに過ぎず、物理的に皮膚が喰い込むような空隙、段差、角などは一切存在していないので、従来のものの様に長時間の装着によっても血行不良にならず、皮膚の損傷は起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ドーム状の台座1の表面側に貴金属面2、N型半導体層3、絶縁層5を薄膜状に形成し、皮膚に接する箇所に空隙、段差あるいは角が一切存在しない様にした点が最大の特徴である。
【実施例1】
【0008】
図2はこの発明に係る生体電池治療具の実施例1の拡大側面図、図3はその拡大平面図である。図中1は台座であり、その表面側はドーム状に膨出しており、その表面には貴金属面2が形成されている。なお、この貴金属面2は台座1全体を貴金属で構成することによって形成しても良いが、コスト面を考慮した場合、台座1の表面に貴金属をメッキ、コーティングあるいは塗布することによって薄膜状にこの貴金属面2を形成する方が実際的である。なお、この場合のメッキ、コーティングあるいは塗布は数ミクロンの厚さで足りる。ここで、貴金属とは金、銀、銅を言い、これらを主成分とする合金も当然含まれる。
【0009】
そして、この貴金属面2が形成された台座1の表面には、円板状の平面形状になる様に、N型半導体がほぼ同心円状にメッキ、コーティングあるいは塗布され、厚さ数ミクロン程度の薄膜状のN型半導体層3が形成されており、このN型半導体層3が負極となっている。このN型半導体層3の外縁は、台座1の外縁より内側に位置しており、台座1の外縁寄りには貴金属面2が帯状に露出しており、この露出した部分が正極となっている。
【0010】
更に、前記N型半導体層3の外縁を覆う様に、帯状に絶縁物質がコーティングあるいは塗布され、厚さ数ミクロン程度の薄膜状の絶縁層5が形成されている。図4はこの様にして台座1の貴金属面2上にN型半導体層3及び絶縁層5が形成されている状態の断面図であり、貴金属面2、N型半導体層3、絶縁層5のそれぞれの境界には肉眼ではもちろん、触れることによって確認出来る様な顕著な段差や角は全く存在していない。
【0011】
なお、上記実施例は台座1に貴金属面2を形成し、台座1自体を正極としたが、図5に示すものの様に、台座1の表面側全体にN型半導体をメッキ、コーティングあるいは塗布してN型半導体層3を形成して、台座1自体を負極とし、このN型半導体層3上に貴金属をメッキ、コーティングあるいは塗布して薄膜状の貴金属面2を形成してこれを正極とし、この貴金属面2の外縁部分を覆う様に絶縁物質をコーティングあるいは塗布して薄膜状の絶縁層5を形成せしめてもよく、要するにドーム状に膨出した台座1の表面側に生体電池を構成するための正極としての貴金属面2及び負極としてのN型半導体層3が目で見える様な空隙、段差あるいは角を伴わずに形成されていれば良いのである。
【0012】
この実施例は上記の通りの構成を有するものであり、この台座1をコリや痛みのある身体部位の皮膚表面に皮接し、粘着テープ等で固定して使用に供する。このとき、皮膚に接する部分の貴金属面2とN型半導体層3との間には絶縁層5が形成されており、貴金属面2とN型半導体層3との間には皮膚が介在するので、貴金属面2を正極、N型半導体層3を負極とする生体電池が形成され、この生体電池によって発生する直流起電力による通電刺激が皮下組織に加えられ、これによって筋肉のコリや痛みが治療される。
【0013】
ドーム状をなした台座1の表面側には、N型半導体層3や絶縁層5の形成により、緩やかな曲率変化や微細な継ぎ目は存在しているが、これらはミクロン単位の極めて微細なものに過ぎず、物理的に皮膚が喰い込む様な空隙、段差、角などは一切存在していないので、従来のものの様に長時間の装着によっても血行不良にならず、皮膚の損傷は起こらない。
【0014】
なお、従来の生体電池治療具においては、正負電極間に電気抵抗体を介在させることによって電流つまり発電量を制御していたが、上記実施例においては、正極を構成する貴金属面2及び負極を構成するN型半導体層3のそれぞれ成分純度を変化させることにより発電量を自由に制御することが可能であり、治療対象に最適な発電量の生体電池治療具を容易に完成させることが可能である。ちなみに、金、銀、銅の順で発電量は減少するが、銅を主体とし、これに他の不純物を混入させることにより、更に低い発電量とすることも出来る。又、正極負極間に介在させた絶縁層5の抵抗値を適宜変化させることによっても発電量の制御は可能である。以上述べた如く、この発明に係る生体電池治療具においては、皮接の際の皮膚損傷を全く心配することなく、治療に用いることが出来、長時間の連続装用も可能で、筋肉のコリや痛みをより有効に治療出来る効果があり、非常に高い実用的価値を有する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
専門的な医療機関はもとより、家庭においても安全かつ手軽にコリや痛みの治療に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の生体電池治療具の代表例の拡大断面図。
【図2】この発明に係る生体電池治療具の実施例1の拡大側面図。
【図3】同じく、その拡大平面図。
【図4】同じく、その拡大断面図。
【図5】同じく、他の実施例の拡大断面図。
【符号の説明】
【0017】
1 台座
2 貴金属面
3 N型半導体層
5 絶縁層
6 台座
7 第2の素子
8 保護抵抗体
9 皮膚
10 凹部
11 貼付布











【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側がドーム状に膨出した台座1の表面側全体に貴金属面2を形成し、該貴金属面2上にそれより小径の薄膜状のN型半導体層3を同心円状に形成すると共に、このN型半導体層3の外縁を覆う様に、それより外径が大きい環状かつ薄膜状の絶縁層5を形成し、皮接により貴金属面2を正極、N型半導体層3を負極とする生体電池が構成される様にしたことを特徴とする生体電池治療具。
【請求項2】
表面側がドーム状に膨出した台座1の表面側全体にN型半導体層3を形成し、該N型半導体層3上にそれより小径の薄膜状の貴金属面2を同心円状に形成すると共に、この貴金属面2の外縁を覆う様に、それより外径が大きい環状かつ薄膜状の絶縁層5を形成し、皮接により貴金属面2を正極、N型半導体層3を負極とする生体電池が構成される様にしたことを特徴とする生体電池治療具。
【請求項3】
N型半導体層3及び絶縁層5の形成がメッキ、コーティングあるいは塗布によって行われることを特徴とする請求項1記載の生体電池治療具。
【請求項4】
貴金属面2、N型半導体層3及び絶縁層5の形成がメッキ、コーティングあるいは塗布によって行われることを特徴とする請求項2記載の生体電池治療具。
【請求項5】
貴金属面2を構成する貴金属及びN型半導体層3を構成するN型半導体にそれぞれ適量の不純物を混入させることにより、発電量の調整を行うことを特徴とする請求項1あるいは2記載の生体電池治療具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130145(P2007−130145A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324651(P2005−324651)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(505416500)
【出願人】(505416511)
【出願人】(505416522)
【Fターム(参考)】