説明

生体電池治療具

【課題】皮接感がよく、優れた電流刺激効果の得られる生体電池治療具を提供する。
【解決手段】支持体と、前記支持体表面に固着形成された起電層とを備えた生体電池治療具であって、前記起電層は、基材と、この基材に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、この基材に分散して含有された、貴金属微粒子の正極とを具備し、少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極と、少なくとも一部の貴金属微粒子の正極とは互いに接触して生体電池ユニットを構成し、かつ、少なくとも一部の生体電池ユニットが基材表面に配置されている生体電池治療具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体電池治療具、詳しくは、皮膚に接した状態で使用され、微弱な直流起電力の皮下組織への通電刺激により対象部位の処置を行う生体電池治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされる患者が増加しており、これまでにパップ剤、温灸、金属粒、磁気治療具、低周波治療器などが家庭用治療具として多数市販されている。これらの治療具は、種々の原理によって患部の血行を促進し、局部的に滞留した老廃物を浄化する効果を示す。
【0003】
上記の一般的な治療具と異なる原理に基づく治療具として、通電刺激によって筋肉および神経の疲労を癒す生体電池治療具が提案されている(特許文献1〜4)。当該生体電池治療具は、皮膚に接触したときに生体電池を形成して直流電流を与えるものであり、上記の家庭用治療具と同等乃至それ以上の治療効果を有する優れた治療具であることが実証されている。
【0004】
図1に、このような従来の生体電池治療具の一般的な形状を示す。当該生体電池治療具は、台座1、半導体2、支持体3を具備し、皮膚4に貼付される。台座1は、金めっきを施された合成樹脂製の台座であり、電池の正極として作用する。他方、半導体2は、台座1に起立保持されて電池の負極として作用し、台座1と半導体2で一つの電池を形成している。
【0005】
図から明らかなように、当該生体電池治療具は皮接点の面積に比して被覆される皮膚領域が大きく、相互に近接した部位に複数個貼付することが困難である。また、大きさ、皮接感、形状などに改善すべき点がある。また更に、このような従来の生体電池治療具を皮膚に貼り付けて使用した場合に、皮膚を損傷する事故が多い。
【0006】
例えば、皮膚の損傷を防ぐために、その表面構造を改善するための技術が提案されている(特許文献5および6)。しかしながら、そのような提案されている生体電池治療具は、皮膚に貼り付けて使用した場合、未だに、皮接感が十分ではなく、皮膚への損傷の可能性がある。また、安定した電流刺激効果が十分には得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−173554号公報
【特許文献2】特開平11−123245号公報
【特許文献3】特開2000−84093号公報
【特許文献4】特開2000−126308号公報
【特許文献5】特開2000−237322号公報
【特許文献6】特開2007−130145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、この発明の目的は、皮接感がよく、優れた電流刺激効果の得られる生体電池治療具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の構成を備える。
【0010】
1. 支持体と、前記支持体表面に固着形成された起電層とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電層は、基材と、この基材に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、この基材に分散して含有された、貴金属微粒子の正極とを具備し、
少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極と、少なくとも一部の貴金属微粒子の正極とは互いに接触して生体電池ユニットを構成し、かつ、少なくとも一部の生体電池ユニットが基材表面に配置されていることを特徴とする生体電池治療具。
【0011】
2. 支持体と、前記支持体表面に固着形成された起電層とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電層は、基材と、基材に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極とを備えた負極層と、
前記支持体と前記負極層との間に固着して介在された貴金属薄膜の正極層とを具備し、
少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極は、基材表面に配置され、前記貴金属薄膜の正極層に接触して、生体電池ユニットを構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【0012】
3. 少なくとも表面に起電部を形成した複数個の基材と、これら複数個の基材を連結した支持体とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電部は、前記基材表面に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、前記基材表面に分散して含有された、貴金属微粒子の正極とを具備し、
少なくとも一部の酸化亜鉛微粒子の負極と、少なくとも一部の前記貴金属微粒子の正極とが互いに接触して、基材表面に生体電池ユニットを構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【0013】
4. 基材と、前記基材表面に固着形成された起電部とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電部は、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、貴金属微粒子の正極とが互いに接触して構成された生体電池ユニットを複数個並列及び/又は直列に接続して電気回路を構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【0014】
5. 前記支持体は、イオン化傾向が、前記酸化亜鉛微粒子と前記貴金属微粒子との間にある材料で形成されていることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の生体電池治療具。
【0015】
なお、この明細書、特許請求の範囲において、基材の重量部は、基材の乾燥重量部(バインダーの乾燥重量部)を意味する。
【0016】
この明細書、特許請求の範囲の記載において、「酸化亜鉛微粒子」は、少なくとも表面が酸化亜鉛である微粒子を含む。また「貴金属微粒子」は、微粒子の少なくとも表面領域が貴金属で覆われているものを含む。例えば、銀コート銅粉等はこの発明に係る貴金属微粒子である。
【0017】
この明細書、特許請求の範囲の記載において、「微粒子」とは、本発明に係る生体電池治療具を構成するのに必要な大きさの粒径を有する粒子をいう。
【0018】
酸化亜鉛微粒子の平均粒径は、BET計で比表面積から算出した値である。
銀粉等の貴金属微粒子の平均粒径は、レーザー回折法によって測定したD50の値である。
【発明の効果】
【0019】
この発明により、皮接感がよく、優れた電流刺激効果の得られる生体電池治療具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の一般的な生体電池治療具の1例を示す断面図。
【図2】この生体電池治療具の第1の実施形態を示す断面図。
【図3】この生体電池治療具の第2の実施形態を示す説明図で、(a)は平面図,(b)はIII-III線に沿う断面図。
【図4】この生体電池治療具の第4の実施形態を示す断面図。
【図5】この生体電池治療具の第5の実施形態を示す平面図。
【図6】この生体電池治療具の第6の実施形態を示す断面図で、(a)は、その一例を示し、(b)は、その他の例を示し、(c)は、ボールチェーン状の生体電池の作用効果の説明図である。
【図7】この生体電池治療具の第7の実施形態を示す断面図。
【図8】この生体電池治療具の第8の実施形態の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この生体電池治療具は、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子を負極として用い、これを貴金属の正極と接触させて生体電池を構成することに特徴がある。
【0022】
以下、この発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
生体電池治療具の第1の実施形態について図2を用いて説明する。
【0024】
この生体電池治療具20は、支持体21とこの支持体表面に固着された起電層24とを備えている。起電層24は、基材25(例えば、バインダー)中に、貴金属微粒子からなる正極22(黒丸で示す)とN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子からなる負極23(白丸で示す)とを分散して配置している。少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極23と、少なくとも一部の貴金属微粒子の正極22とは互いに接触して生体電池ユニットを構成し、かつ、少なくとも一部の生体電池ユニットが基材表面に配置されている。
【0025】
ナノオーダー又はそれに近いオーダーの酸化亜鉛微粒子を貴金属微粒子とともに基材に混合して配合すると、酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子が多数接触して無数の生体電池ユニットが構成される。
【0026】
そして、これらの微粒子が、皮膚と接触した際に、電気回路を構成して、皮膚に微電流を流すものである。正極22と負極23は何れも微粒子であるので、皮膚に接する面にざらつきがなく、従来と比べて優れた皮接感を有する。しかも、基材表面に無数の生体電池ユニットが構成されているので、安定且つ十分な発電を可能にする。
【0027】
正極22は、貴金属微粒子であればよい。貴金属微粒子として用いられる金属は、化学的変化を受け難く且つ負極となる半導体粒子よりも電極電位が高い貴金属又はその合金であればよい。例えば、金(Au)銀(Ag)、および白金族並びにその合金などであればよい。
【0028】
貴金属微粒子は、その粒径は特に限定されるものではないが、多数の生体電池ユニットを構成するという視点からは、より微粒の粒径が好ましいが、製造上の視点からはより粗粒の方が扱いやすい。両者の妥協を図るとすれば、例えば、平均粒径1nm〜50μmの範囲、平均粒径20nm〜15μm、平均粒径10μm〜15μm、平均粒径20nm〜40nmなどの貴金属微粒子を用いることができる。ただし、本発明はこれらの微粒子に限定されるものではない。
【0029】
負極は、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子であればよい。酸化亜鉛微粒子は、前記貴金属微粒子に使用する金属に比べて低い標準単極電位を有する。酸化亜鉛微粒子が、N型半導体として機能するためには、酸化亜鉛微粒子をそれ自身公知の何れかの手段により処理すればよく、例えば、酸化亜鉛微粒子をアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)などによりドープすることによるN型ドーパントを行えばよい。ただし、本発明はこの処理をおこなって、N型半導体として機能するようにした酸化亜鉛微粒子に限定されるものではない。
【0030】
酸化亜鉛微粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が1nm〜200nm,好ましくは、1nm〜100nm,特に好ましくは1nm〜50μmの範囲である。更に、平均粒径が20nm〜15μm、10μm〜15μm、20nm〜40nmのものなどであってもよい。
【0031】
基材25は、製造時にバインダーとして機能するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネートおよびフェノキシ樹脂などの合成樹脂である。
【0032】
基材25に含まれる貴金属微粒子は、例えば、基材100重量部に対して25重量部〜30重量部であり、また、基材に含まれる酸化亜鉛微粒子は、基材100重量部に対して25重量部〜50重量部である。
【0033】
基材25への貴金属微粒子および酸化亜鉛微粒子の混合は、例えば、溶剤に基材を溶解し、そこに貴金属微粒子および酸化亜鉛微粒子を分散混合するなど、それ自身公知の何れかの手段により行えばよい。
【0034】
そして、分散混合されて貴金属微粒子とN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子とを含む基材25を、支持体21に対して、例えば、塗布、吹き付け、網目スクリーン、スクリーン印刷、射出成型および/または金型成型など任意の公知手段により固着することにより、起電層24が形成される。
【0035】
起電層24の厚み(最大厚み)は、この生体電池治療具20の使用方法に応じ、所望に応じて選択されればよい。例えば、150μm以下、100μm以下、50μm以下、10μm以下、好ましくは5〜10μmである。
【0036】
前記支持体21は、皮膚の形状に適合させ得るような柔軟性を有する紙、布、不織布若しくはプラスティックフィルムなどの任意の素材の基材であってよい。この生体電池治療具を皮膚に接着することにより使用する場合、皮膚の形状に適合させ得るような柔軟性を有する紙、布、不織布若しくはプラスティックフィルムなどが好ましく、これらの素材を適用することにより、皮接感をより向上することが可能である。
【0037】
支持体21への起電層24の形成領域は、支持体21の所望の表面における所望の面積領域であってよい。例えば、支持体の少なくとも一表面の少なくとも一部であってよく、この場合、前記一表面の同一表面上に、皮膚への固定のための接着剤が塗布されてもよい。また、支持体21の少なくとも1表面の全体に起電層が形成されてもよい。この場合、この生体電池治療具が、更に、皮膚に対して接着、付着または固定するための固定部材、例えば、粘着テープに固定されてよい。
【0038】
(第2の実施形態)
生体電池治療具の第2の実施形態について図3(a)および(b)を用いて説明する。
【0039】
図3(a)は、第2の実施形態であるこの生体電池治療具30の平面図であり、図3(b)は図3(a)のIII−III線に沿った断面図である。
【0040】
この生体電池治療具30は、支持体21と、前記支持体21の表面に固定された複数の起電層24を含む。起電層24は、基材25に貴金属微粒子からなる正極22とN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子からなる負極23とを含むもので、前記支持体表面に固着されて形成される。
【0041】
図3(b)では、正極22を黒丸で示し、負極23を白丸で示した。
【0042】
第2の実施形態であるこの生体電池治療具30は、起電層24を複数含むこと以外は、第1の実施形態に記載されたこの生体電池治療具と構成と同様であり、皮膚に接触して回路を構成する。その作用効果も本質的に第1の実施形態に記載されたこの生体電池治療具と同様である。
【0043】
(第3の実施形態)
この生体電池治療具は、上述の第1の実施形態および第2の実施形態における支持体21を皮膚の形状に適合させ得るような柔軟性を有する基材に代えて、任意の金属を用いる。それ以外の構成は、第1の実施の形態および第2の実施形態のこの生体電池治療具と同様の構成であってもよい。金属である支持体21の表面に、貴金属微粒子からなる正極22と、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子からなる負極23とを含む基材を固着することにより起電層24を形成すればよい。
【0044】
金属の支持体を用いることにより、ネックレス、ペンダントおよびブレスレットなどとして利用することが可能である。
【0045】
金属の支持体を適用する場合、支持体を、特に、前記酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子との間のイオン化傾向を有する材料で構成することができる。たとえば貴金属微粒子がAuの場合、前記酸化亜鉛微粒子とAuとの間のイオン化傾向を有する材料である、例えばAg,Cu,Snなどで構成することもできる。このように構成することにより、支持体21と、前記酸化亜鉛微粒子の負極23と、貴金属微粒子の正極22との間で起電力が生じることとなり、生体電池治療具の能力向上が図れる。なお、この場合、支持体の全てを前記酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子との間のイオン化傾向を有する材料で構成する必要はない。めっきなどにより表面のみを上記材料で構成すれば、所期の目的を達成することができる。
【0046】
(第4の実施形態)
上述の第1の実施の形態および第2の実施形態における支持体21の形状を変更した更なる例を図4に示す。第4の実施形態であるこの生体電池治療具は、上述の第3の実施形態における支持体の形状を変更した。それ以外の構成は、第3の実施形態と同様の構成であってよい。
【0047】
この生体電池治療具40は、柄41と、この柄41に一体的に設けられ支持体42と、前記支持体表面に形成された正極および負極を含む起電層43とを含む。起電層43は、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の構成であってよい。
【0048】
支持体42は、柄41と一体化された状態で、この生体電池治療具の長手方向を貫く軸を中心軸とし、支持体42または起電層43を含むこの生体電池治療具の一部分が回転してローラーとして機能する構成としてもよい。この場合、使用者は柄41を持ち、処置しようとする部分に対して起電層43を接触させながらローリングさせることにより生体電池治療具を使用することができる。
【0049】
(第5の実施形態)
この生体電池治療具の第5の実施形態について図5を用いて説明する。
【0050】
この生体電池治療具50は、支持体51と、前記支持体表面に形成された起電層54とを備え、この起電層54は正極層52および負極層を有する。正極層52は、支持体51の表面の少なくとも一部に形成された貴金属薄膜である。負極層は、正極層52の一部が露出されるように正極層52である貴金属薄膜上の領域に形成される。負極層は、基材55(バインダー)に、例えば、平均粒径が1nm〜50μmであるN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極53を分散配合したものである。酸化亜鉛微粒子の配合量は、例えば基材(バインダー)100重量部に対して酸化亜鉛微粒子を25重量部〜50重量部分散配合することにより構成され、このように構成された負極層は金属層薄膜に固着されている。そして、負極53の少なくとも一部は基材55の表面に配置され、正極層52に接している。
【0051】
正極層52の構成を除いて、この生体電池治療具50は、支持体51、基材55および負極53の構成は、第1の実施形態〜第4の実施形態の何れの構成と同様の構成とすることが可能である。
【0052】
また、この生体電池治療具50における負極53は、酸化亜鉛の微粒子である必要はなく、表面が酸化された亜鉛粒子(即ち、表面が酸化亜鉛の亜鉛粒子)であってもよい。この生体電池治療具50は、正極52を例えば、金めっきなどにより形成し、その後、正極52(正極層)の任意の領域に、パインダー100重量部に対して亜鉛粒子を25重量部〜50重量部含む負極層を固着すればよい。亜鉛粒子の表面の酸化は、何れの製造過程において行われてもよい。この構成により、酸化亜鉛のドープ、ドープされた酸化亜鉛の粉砕、等粒化などの工程を省略することが可能である。これは、亜鉛粒子の表面が酸化してN型半導体である酸化亜鉛皮膜が形成されるためである。これにより、当該粒子に含まれる亜鉛と酸化亜鉛によりZnOZnの安定的な導電が可能となる。
【0053】
(第6の実施形態)
図6(a)は、第6の実施形態を示す。この生体電池治療具60は、複数の球状の基材65を支持体61で連結した構造である。なお、基材は球状に限らず、楕円状、板状、水滴状等任意の形状とすることができる。
【0054】
基材として、先の実施形態の説明にて提示したような合成樹脂等を用いて、これに混合配合した場合、その基材表面にN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子とが分散して配置され、前記基材表面に分散して含有された前記酸化亜鉛微粒子の負極と前記貴金属微粒子の正極の少なくとも一部が互いに接触している。
【0055】
第6の実施形態の他の例として、図6(b)に示すように、基材表面を貴金属薄膜(正極)で覆い、この薄膜上にN型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子を分散して配置することも有効である。
【0056】
基材を連結する支持体の材質は特に限定されないが、酸化亜鉛微粒子と貴金属薄膜との間のイオン化傾向を有するもの(貴金属薄膜がAuの場合、例えば、Ag,Cu,Snなど)が好ましい。
【0057】
これら実施形態では、基材(バインダー)に“酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子”又は“酸化亜鉛微粒子”を分散配合してから、基材を固化して製造するものに限らず、先に基材を作り、その表面に“酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子”又は“酸化亜鉛微粒子”を分散配合する構成とすることも可能である。このような構成は、前掲の実施形態における“酸化亜鉛微粒子と貴金属微粒子”又は“酸化亜鉛微粒子”についても同様のことがいえる。
【0058】
図6(c)は、ボールチェーン状の生体電池の作用効果を示す説明図で、正極(貴金属微粒子)62と負極(酸化亜鉛微粒子)63とが、生体(人体等皮膚等)Bに接している状態を示す。向かって左側の図は、酸化亜鉛微粒子63と貴金属微粒子62とが接して配置されている例である。この場合、正極と負極が接しているので、電流が矢印に示すように皮膚表面の浅い部分を流れる。向かって右側の図は、酸化亜鉛微粒子63と貴金属微粒子62とが離れて配置されている例である。符号80は、酸化亜鉛微粒子63と貴金属微粒子62とを接続した導体である。この例では、正極62と負極63とが離れているので、電流が矢印に示すように皮膚の深い部分を流れる。その結果、多くの細胞を通過して、細胞を刺激する。したがって、正極62と負極63との間隔、分布、配合量などを適宜調整、設定することにより、目的に応じた所望の生体電池とすることができる。
【0059】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態を示す。この生体電池治療具70は、起電層が、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極73と、貴金属微粒子の正極72とが互いに接触している生体電池ユニットを並列及び/又は直列に接続して、基材71上に電気回路を構成しているものである。この構成はプリント配線技術などを応用することにより当業者は容易に製造することができ、発電可能な程度の発電能力のきわめて大きな生体電池治療具を構成することができる。従って、必要によりLEDなどを接続して発光させることも可能である。
【0060】
(第8の実施形態)
次に、繊維状形状の生体電池である第8の実施形態について説明する。
【0061】
所定の繊維に、バインダーとして機能する樹脂中に、微細粒の酸化亜鉛(少なくとも表面が酸化亜鉛であるもの、例えば亜鉛の表面がを酸化亜鉛で覆われたものを含む)を、混入もしくはラミネートなどをしてN型半導体として機能する導電性繊維を構成する(以下、この導電性繊維をN繊維と略称する)。ここで、N繊維は、本発明に係る、支持体と、基材及び負極を有する起電層とを構成することになる。
【0062】
正極となる貴金属を主成分とした導電性繊維を構成する(以下、この導電性繊維をA繊維と略称する)。ここでA繊維は、本発明に係る、支持体と、基材及び正極を有する起電層とを構成することになる。
【0063】
通電しうる導電繊維を用意する(以下、この導電性繊維をC導電繊維と略称する)。この導電繊維は、イオン化傾向が正負極の中間が好ましい。ここで、C導電繊維は、本発明に係る、支持体若しくは支持体及び基材を構成することになる。
【0064】
N型半導体を所望する適切な構造に加工して繊維に固定しやすくした粒子を用意する(以下、この粒子をN粒と略称する)。ここでN粒は、本発明に係る、負極を構成することになる。
【0065】
貴金属を所望する適切な構造に加工して繊維に固定しやすくした粒子を用意する(以下、この粒子をA粒と略称する)。ここで、A粒は、本発明に係る、正極を構成することになる。
【0066】
繊維状形状の生体電池は、上記のN繊維、A繊維、C繊維、N粒、およびA粒から適宜選択し、選択されたものを不織布もしくは織布に組み合わせることにより、本発明に係る支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する生体電池治療具が構成される。具体的に以下の組合せが例示される。
【0067】
1)N繊維とA繊維とを組合せた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0068】
2)N繊維とA繊維とC導電繊維とを組合せた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0069】
3)N繊維による不織布もしくは織布とA粒とを組合せた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0070】
4)上記3)にC導電織維を加えた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0071】
5)A繊維による不織布もしくは織布とN粒とを組み合わせた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0072】
6)上記5)にC導電繊維を加えた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0073】
7)C導電繊維による不織布もしくは織布とN粒とA粒とを組み合わせた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0074】
8)上記のN繊維、A繊維、C繊維、N粒、およびA粒、全てを組み合わせた構成。この構成により、支持体と、基材、負極、正極を備えた起電層とを有する本発明に係る生体電池治療具が得られる。
【0075】
なお、以上の構成はあくまで例示であり、本発明に係る繊維状形状の生体電池は、上記1)〜8)に限定されるものではない。また、本発明に係る繊維状形状の生体電池を構成する限り、その他の部材、部品、要素などが付加されてもよいことはもちろんである。
【0076】
また、第8の実施形態では、繊維状形状の生体電池の基本的な構成について説明したが、この第8の実施形態においても、上述した第1〜第7の実施形態の欄で説明された具体的な構成を第8の実施形態に対応するように適宜選択して実施することが可能であることはいうまでもない。
【0077】
これらの繊維状形状の生体電池は、身体に張り付ける、もしくは服に加工することで身体に適合した生体電池とすることができるという優れた効果を奏する。
【0078】
(負極および正極の加工方法)
負極および正極の加工方法として乾式めっき(スパッタリング、イオンプレーティング、蒸着)が挙げられる。この加工方法は、特に負極の加工に適しており、樹脂フィルムや樹脂シート、樹脂成形品、ガラスなどに薄膜印刷することでフレキシブルな電極や、複雑な形状部分を極に加工できる。またその電気特性はほぼ金属に近いものが得られる。例えば電極としてスパッタリングされたプレートを所要の形に加工したり、必更に応じてマスキングをして施工、もしくは施工後に例えば絶縁のためのマスキング印刷などを所要の電気的形状に加工したりすることが可能となる。
【0079】
バインダー中に微粉末のN型半導体を混入して負極とした生体電池を皮膚に付けた揚合、発電力が劣り、せいぜい0.7〜0.8ボルトの程度であるが、酸化亜鉛をスパッタリングにより樹脂フィルムに電極として加工した場合は1.3ボルト程度とほぼ金属の場合と同様な発電力を有する。また負極の色もほぼ透明であり、生体電池として正極と組み合わせても、正極の金の見た目を損なわないものとすることができる。
【0080】
例えば、鎖のように生体電池を連続的に連結させた場合、鎖の端から端の全体を金めっきして、負極とする鎖のみ金めっきの上から負極をスパッタリングでその鎖の一つの表面の全面もしくは表面の一部を加工しても、見た目は金の鎖のように見えるという意匠上の効果がある。
【0081】
また図8のごとく正極の鎖82と負極の鎖83を導体の支持体90で連結することができる。 そして、このように構成された正極と負極とは、ゼリー状の薬剤91を通して皮膚に接触する。このような構成では、支持体90のイオン化傾向は正負極材の中間のイオン化傾向の材質が好ましく、中間のイオン化傾向の材質で連結させることで正極と負極が全体でマトリックス状に発電する。
【実施例】
【0082】
上述した第1の実施形態に相当する生体電池を作成し、発電の安定性などを観察した。
【0083】
実施例1
以下に示す実施例1および2を作製し、それぞれの起電層表面に生理食塩水を塗布して発電の安定性を電気的特性として評価した。更にそれぞれの起電層表面の状態および外観について評価した。
【0084】
アクリル樹脂を基材と使用し、負極には、アルミニウムでドープされた平均粒径10〜15μmの酸化亜鉛微粒子を、正極には平均粒径10〜15μmの銀微粒子を使用した。
【0085】
当該酸化亜鉛微粒子および銀微粒子を基材の乾燥重量に対して同じ割合で、溶剤に溶解した基材に混合した。これを固化して第1の実施形態に相当する生体電池を製造した。
【0086】
酸化亜鉛粉および銀粉を各々25重量部で混合した生体電池を実施例1、基材100重量部に対して各々30重量部で混合した生体電池を実施例2とした。
【0087】
実施例1および2ではいずれも安定した発電が得られた。発電のばらつきもなく、十分な量の発電が観察された。
【0088】
また、実施例1および2は、正極の銀は金属色から銀黄色となり起電層の色調も商品に好ましいと判定された。
【0089】
実施例3
以下に示す実施例3を作製し、それぞれの電池表面に生理食塩水を塗布して発電の安定性を電気的特性として評価した。更にそれぞれの電池表面の状態および外観について評価した。
【0090】
アクリル樹脂を基材と使用し、負極には、アルミニウムでドープされた平均粒径20〜40nmの酸化亜鉛微粒子を、正極には平均粒径20〜40nmの銀微粒子を使用した。
【0091】
実施例3として、50重量部の酸化亜鉛微粒子と30重量部の銀微粒子を用いて上記と同様に第1の実施形態に相当する生体電池を製造した。
【0092】
実施例3では、安定した十分な発電が確認された。また、起電層の外観は、銀微粒子の金属色は銀黄色であり、且つ酸化亜鉛微粒子は極めて透明性が高かった。実施例3の起電層を金めっきした金属に形成した場合、下地の金の色が透けて見えた。これは商品として極めて良好な特徴であると考えられた。
【0093】
また、このような組成の起電層を用いて生体電池治療具を製造する場合、微細目でのスクリーン印刷も可能であり、これにより5〜10ミクロン程度の厚みの起電層の製造が可能となる。それにより生体電池治療具の小型化が可能となる。
【0094】
実施例4
アクリル樹脂を基材と使用し、負極には、アルミニウムでドープされた平均粒径150〜250nmの酸化亜鉛微粒子を、正極には平均粒径10〜15μmの銀微粒子を使用した。基材の乾燥重量100重量部に対して50重量部の酸化亜鉛微粒子と、25重量部の銀微粒子とを溶剤に溶解した基材に混合した。これを固化して第1の実施形態に相当する生体電池を製造し、実施例4とした。
【0095】
実施例4は発電のばらつきも起電層表面のざらつきもなく生体電池としての性質は良好であった。しかしながら、負極の粒子に透明性が十分ではなく、商品としての特徴は実施例3には劣るものであった。負極粒子の透明性を得るためには、酸化亜鉛微粒子の平均粒子径を20〜40nmにする必要があることが分かった。
【0096】
実施例5
アクリル樹脂を基材と使用し、負極には、アルミニウムでドープされた平均粒径20〜40nmの酸化亜鉛微粒子を、正極には平均粒径10〜15μmの銀微粒子を使用した。基材の乾燥重量100重量部に対して50重量部の酸化亜鉛微粒子と、25重量部の銀微粒子とを溶剤に溶解した基材に混合した。これを固化して第1の実施形態に相当する生体電池を製造し、実施例5とした。
【0097】
実施例5は安定且つ十分な発電が得られた。また、酸化亜鉛微粒子の透明度が高く、且つ銀黄色の銀微粒子の色調と合間って商品として提供された際の優れた外観的特徴が示された。実施例5の起電層を金めっきした金属に形成した場合、下地の金の色が透けて見えた。これは商品として極めて良好な特徴であると考えられる。
【0098】
比較例1
以下に示す比較例を作製し、それぞれの電池表面に生理食塩水を塗布して発電の安定性を電気的特性として評価し、更に起電層表面の状態および外観について評価した。ここで示された重量部とは、基材100重量部に対する数値である。
【0099】
アクリル樹脂(バインダー)を基材と使用し、負極には、アルミニウムでドープされた平均粒径250〜350μmの酸化亜鉛粉を、正極には250〜350μmの銀粉を使用した。
【0100】
基材の乾燥重量に対して同じ割合、即ち、各々10重量部で銀粉およびドープ酸化亜鉛粉を溶剤で溶解した基材に混合した。これを固化して生体電池を製造して比較例1を得た。
【0101】
比較例1では、起電層表面の異なる領域間で発電にばらつきがあり、安定した発電は得られなかった。
【0102】
安定した発電が得られなかった理由として、発明者は、酸化亜鉛粉の粒径が大きいため、生体電池ユニットの数を本発明ほど多くすることができず、また、均一に分散配置できなかったためと推測している。
【産業上の利用可能性】
【0103】
この発明により、皮接感がよく、優れた電流刺激効果の得られる生体電池治療具が提供される。このようなこの生体電池治療具は、血行を促進し、局部に滞留した老廃物を浄化することにより、肩こりおよび腰痛などの治療および予防、並びに美肌の維持、肌質の改善など美容の分野においても有利に使用することが可能である。
【0104】
また、この生体電池は、これら生体電池の発電を利用してイオン化した物質を経皮導入器具として使用することができる。
【0105】
さらに、本発明の生体電池治療具は、各種機器に有効に適用することができる。
【0106】
例えば、超音波美顔器に適用した場合、超音波美顔器本体を支持体とし、これに本発明に係る起電層を形成し(たとえば、本体側を正極側、顔に接する側を負極側として、本発明の生体電池治療具としての機能を持たせる)、このことにより、超音波美顔器としての超音波と生体電池治療具としての電流刺激効果との相乗効果を発揮することができる。
【0107】
さらにまた、鼻腔拡張テープの鼻腔拡張部材を導電性材料で形成して本発明に係る起電層を形成する。起電層としては、例えば、一端を正極側、多端を負極側にしても、全体に正極、負極を形成してもよい。このように形成された鼻腔拡張テープは、使用者に鼻づまりがある場合など、血行障害を改善できるなどの効果がある。また、このように構成された鼻腔拡張テープと、上部側に針金等の導電性材料を通して鼻の形状に沿う様に彎曲可能としてあるマスクとを組合せて使用すれば、針金等の導電性材料を通してさらに電流刺激効果を付加させることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…台座
2…半導体
3、21、42、51、61…支持体
4…皮膚
20、30、40、50、60,70…生体電池治療具
22、52、62、72、82…正極
23、53、63,73、83…負極
24、43…起電層
25、55、65、71…基材
41…柄
80…導体
90…支持体
91…ゼリー状の薬剤
B…生体(人体の皮膚等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体表面に固着形成された起電層とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電層は、基材と、この基材に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、この基材に分散して含有された、貴金属微粒子の正極とを具備し、
少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極と、少なくとも一部の貴金属微粒子の正極とは互いに接触して生体電池ユニットを構成し、かつ、少なくとも一部の生体電池ユニットが基材表面に配置されていることを特徴とする生体電池治療具。
【請求項2】
支持体と、前記支持体表面に固着形成された起電層とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電層は、基材と、基材に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極とを備えた負極層と、
前記支持体と前記負極層との間に固着して介在された貴金属薄膜の正極層とを具備し、
少なくとも一部の前記酸化亜鉛微粒子の負極は、基材表面に配置され、前記貴金属薄膜の正極層に接触して、生体電池ユニットを構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【請求項3】
少なくとも表面に起電部を形成した複数個の基材と、これら複数個の基材を連結した支持体とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電部は、前記基材表面に分散して含有された、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、前記基材表面に分散して含有された、貴金属微粒子の正極とを具備し、
少なくとも一部の酸化亜鉛微粒子の負極と、少なくとも一部の前記貴金属微粒子の正極とが互いに接触して、基材表面に生体電池ユニットを構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【請求項4】
基材と、前記基材表面に固着形成された起電部とを備えた生体電池治療具であって、
前記起電部は、N型半導体として機能する酸化亜鉛微粒子の負極と、貴金属微粒子の正極とが互いに接触して構成された生体電池ユニットを複数個並列及び/又は直列に接続して電気回路を構成していることを特徴とする生体電池治療具。
【請求項5】
前記支持体は、イオン化傾向が、前記酸化亜鉛微粒子と前記貴金属微粒子との間にある材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生体電池治療具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205884(P2012−205884A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45494(P2012−45494)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(395012215)
【出願人】(505416500)
【出願人】(505416511)
【出願人】(505416522)
【Fターム(参考)】