説明

生体高分子の精製および分離のためのモノリス状物体

本発明は、モノリス状物体、その調製のための方法、および特に選択的な生体高分子の精製および分離のためのその使用に関する。クロマトグラフィー分離材料が、選択的、効率的および再現可能な生体高分子の精製および分離を可能にする新規のモノリス状物体を用いて与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のモノリス状物体、その調製のための方法、および生体高分子の精製および分離のためのその使用に関する。
【0002】
バイオテクノロジーの分野における進歩する自動化および小型化のため、特に、微量の試料の迅速および効率的な処理のための方法が近年ますます求められている。特に、完全自動化された高処理量作業端末の使用は、非常に多数の試料を可能な最短時間で処理できる一方で同時に最小量の生物試料が再現可能に検出されうる発展をますます要求する。これに関連して、たとえばいわゆるマイクロタイターまたはマルチウェルプレートのような、特にフィルターおよび分離器具の小型化が需要がある。通常の96ウェルプレートに加えて、384ウェルおよびウェル当たり容量50μlのプレートが一方で既に標準である。さらに、ウェル当たり容量5〜10μlの1536ウェルプレートも先般から入手可能である。
【0003】
しかし、生体高分子の精製および分離用の従来のフィルター材料に関しては、特にフィルターおよび分離材料が他方で生体高分子の精製において非常に良好な選択特性および高い結合能を示さなければならない場合は、そのような小型のセルの使用については技術的進歩は限界に達している。
【0004】
このように、96ウェルプレート用の現在入手可能なガラス繊維およびシリカ膜は、フィルターおよび分離表面が満足なレベルの効率および結合能を達成するためには小さすぎるため、384ウェルプレートにおける使用のためには限られた適性しかない。さらに、増加した製造費に加えて、打ち抜かれた小型膜はしばしば薄すぎ、およびそのため、より高い製造コストがかかるが、たとえば追加の基礎板および/またはウェル内に挿入可能な他の安定具のような補助無しには不安定すぎてウェル中で使用できない。
【0005】
加えて、経時変化のために、 従来の ガラス繊維およびシリカ膜は短期間後でさえ相当な効率を失うので、それらは長期保存に適しない。その上、経時変化した膜の活性化は非常に不便であるだけでなく、再現可能な結果を達成するにはしばしば不適当である。
【0006】
これに関連して、クロマトグラフィーの分野では、モノリスフィルターおよび分離材料は現在、キャピラリーカラムの調製において絶えず重要度を増している。ここでは、いわゆるゾル−ゲル法を用いて、重合可能な低分子量化合物(ゾル)がまず調製され、それが次に重合反応で凝集化または重合化材料(ゲル)に変換される。その反応は各クロマトグラフィーカラム内で直接起こる。これらの方法は、しかし、非常に小さい直径(<300μm)のキャピラリーカラムだけに適しており、なぜなら無機モノリスフィルターおよび分離材料は特に通常は相当に収縮しやすいため、それによってモノリスフィルターおよび分離材料および分離器具の間にデッドボリュームが生じ、それはカラムの分離特性を大きく損なうからである(DEOS10028572)。そのようなデッドボリュームを除去するため、フリットの重合およびその後の経時変化および乾燥の後、分離器具を再び重合溶液で満たしおよび調製方法のすべての段階を繰り返すことが提案されている。しかし、新たな重合が実施できる前に、経時変化したフリット材料をまず活性化溶液で再活性化しなければならず、それは全体として非常に時間およびコスト集約的な調製工程に繋がる。
【0007】
これらの複数回重合化されたモノリスフリットの他の不利益はまた、それらの構築のため、それらは安定性がより小さく、および結果としてモノリス材料の摩耗もまたフィルターまたは分離器具の直径の増加に伴って増えることである。特に、加圧器具との併用はしばしば、摩耗の増加による汚染に繋がり、これは今度は、以降の分析段階における干渉、または誤った結果にさえ繋がりうる。
【0008】
公知のクロマトグラフィー分離材料の先端技術における上述のような不利益を克服するために、本発明の基礎を成す目的は、選択的生体高分子の精製および分離ならびに、特に自動化および/または小型化分析手順において、多数の試料の効率的および再現可能な処理を可能にする、安定なフィルターおよび分離材料を提供することである。フィルターおよび分離材料はまた、保存中に安定でありおよび長期保存後に速やかに使用可能であるべきである。
【0009】
この目的は、下記の処理段階を含む方法によって得られたモノリス状物体の本発明に記載の提供によって解決された:
a)二酸化ケイ素を反応容器に入れる;
b)少なくとも一種類以上のアルカリケイ酸塩およびホウ酸カリウムを含む溶液Aの添加、
c)少なくとも一種類以上の細孔形成剤および水を含む溶液Bの添加、
d)少なくとも一種類の有機アミドの添加、および
e)反応混合物の乾燥。
【0010】
上記で示されるモノリス状物体は本発明にしたがって重合処理によって得られる。処理段階a)によるとコロイドシリカゲルがまず反応容器に入れられる。本発明の好ましい一実施形態によると二酸化ケイ素が次いで水系二酸化ケイ素分散物またはシリカゲルの形で添加される。粒径、二酸化ケイ素含量および安定化の種類(たとえばアンモニア、水酸化ナトリウム溶液などの中で安定化)が互いに異なる、さまざまな市販の二酸化ケイ素分散物を使用できる。凝塊化シリカゲルに加えて、本発明によるとコロイドシリカゲルを使用できる。本発明の意味では凝塊化とは、平均粒子直径約40nmの架橋した非多孔性の球状二酸化ケイ素が水中に存在することを意味する。本発明の特に好ましい一実施形態によると、二酸化ケイ素は小さい二酸化ケイ素粒子の水系コロイド分散物の形で存在する。これらは単分散性または多分散性コロイド二酸化ケイ素分散物、たとえば、ルドックス(Ludox)(WRグレース社(W.R.Grace & Co.)、米国コロンビア(Columbia))、またはレバシル(Levasil)(バイエルAG社(Bayer AG)、ドイツ・レーバークーゼン(Leverkusen))などであり、本発明の意味ではコロイドとは、架橋していない個別の球状二酸化ケイ素粒子が水中に存在することを意味する。好ましくは、そのようなコロイド分散物は、重量で30〜50パーセント、好ましくは重量で40〜45パーセントの、平均粒子直径5〜100nm、好ましくは10〜40nm、特に好ましくは15〜25nmを有する二酸化ケイ素粒子を含む。
【0011】
本発明の方法の処理段階b)によると、溶液Aが次に、存在する二酸化ケイ素に添加される。これは少なくとも一種類以上のアルカリケイ酸塩および市販のホウ酸カリウム(ハニーウェル・スペシャル・ケミカルズ社(Honeywell Special Chemicals GmbH)、ドイツ・ゼールツェ(Seelze))を含む。驚くべき発見であった通り、特に本発明に記載のモノリス状物体へのホウ酸カリウムの添加は、メソポアの孔表面での結合特性の改善に繋がり、およびそのようにして共同的に、単離された生体高分子のより高い収量へ繋がる。しかし、ホウ酸カリウムを反応混合物中で溶解するためには、好ましくはアルカリケイ酸塩溶液に溶解する。本発明の意味ではアルカリケイ酸塩は、ケイ酸のアルカリ塩、特にケイ酸ナトリウムおよびカリウムであると理解される。本発明の好ましい一実施形態によると、溶液Aの調製において重量で0.1〜4パーセント、好ましくは重量で0.5〜2パーセント、特に好ましくは重量で0.5〜1.0パーセントのホウ酸カリウム(反応混合物全体に対して相対的に)を、好ましくは、たとえば、コグニス・ドイツ社(Cognis Deutschland GmbH & Co.KG.)ドイツ・デュッセルドルフ(Duesseldorf))の好ましい二酸化ケイ素含量20.5%を含むケイ酸カリウム28°/30°Be(28/30ボーメ、密度1.240/1.261g/cm3に相当)のような市販の無色コロイドケイ酸カリウム溶液に溶解する。
【0012】
本発明に記載のモノリス状物体のさらに大きい機械的安定性を達成するために、恒久的なマクロポーラス・ポリマーが必要である。これらは分散相中の適当な細孔形成剤の存在によって形成される。したがって、さらなる処理段階c)で少なくとも一種類以上の細孔形成剤および水を含む溶液Bが添加される。水溶性化合物は、添加される孔形成物質(いわゆる孔形成剤または細孔形成剤)として有益に用いられる。水溶性または混和性の高い界面活性剤および/または乳化剤が特に適している。そのような孔形成剤が知られている。本発明にしたがって用いられる細孔形成剤は、モノマーに関しては熱力学的に良好な溶媒で、しかしポリマーに関しては悪い溶媒であるべきであり、なぜならこれらは非常に遅い相分離に繋がるからである。この方法で反応混合物の均一性は有益に確実になり、これは非常に安定した透過膜を有するモノリス状物体の調製に繋がる。主に互いに連絡した連続的なマクロポアの膜が細孔形成剤の添加によって生じる一方、メソポアマクロポアの壁に位置するメソポアもまた、添加されたコロイドによって形成される。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態によると、溶液Bの調製において、ポリアルコールが細孔形成剤として好ましくは用いられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロールおよび/またはジグリセロール;だけでなくポリプロピレングリコール(PPG)および/またはポリエチレングリコール(PEG)もまた特に適している。上に示す化合物すべてが個別にまたは混合物として存在しうる。
【0014】
驚くべきことに、本発明に従って形成されたモノリス状物体の安定性は、水に溶解した一種類以上の上に示す細孔形成剤の添加によって大幅に増大されうる。ここでは水(蒸留水または完全脱イオン水)の容量は孔形成に顕著な影響を有する。使用する細孔形成剤に応じて、水約1〜4ml、好ましくは水2〜3mlが、細孔形成剤を溶解するために、または5〜40%、好ましくは10〜20%細孔形成剤溶液の調製のために有益に用いられる。
【0015】
これに関連して、PEG(たとえばPEG3000/フルカ社(Fluka)、スイス、ブーフス(Buchs))およびグリセロール(メルク社(Merck KGaA)、ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt))またはジグリセロール(フルカ社、スイス、ブーフス)の水との混合物の使用は非常に特に有益であることが証明されている。このようにして調製されたモノリス状物体は、最適平均孔直径および狭い孔径分布を有する孔を示す。これは、本発明に記載のモノリスの特異的表面の増加、およびしたがって関連して結合能の増加に有益に繋がる。さらに、たとえばろ過手順などの間の、特に加圧装置の追加的な使用中の、グリセロールおよび/またはジグリセロールの添加によって、形成されたモノリス状物体の摩耗が顕著に低減または回避さえされうる。さらに、グリセロールの量の増加は、本発明に記載のモノリスのより均一な構造に繋がる。
【0016】
現在のゾル−ゲル法から知られている通り、pH値を低下させる物質、たとえば有機酸または無機酸が、ゲル形成を開始するため、つまりゾル形からゲル形への反応混合物の変化のための開始剤として反応混合物(ゾル)に添加される。しかし、有機酸または無機酸は、pH値の非常に急速な低下を引き起こすという欠点を有し、これは結果として、即時のゲル形成に繋がり、ゲル形成は形成すべきモノリス状物体の形状および大きさ次第で不均一または不完全でさえありうる。特に、対応する成型器具への反応混合物の移送は、時間遅延的なゲル形成を必要とする。本発明の意味においては、成型器具は、一方では生体高分子の精製および分離に用いられる市販の器具、たとえばスピンカラム、マルチウェルプレート、ピペットチップなど、および他方ではフリット、ペレットの製造に用いられる成型器具またはモノリスフィルターおよび分離材料のすべての他の考えられる形(たとえば、球、円柱など)と理解される。本発明の好ましい一実施形態によると、塩基性条件下で熱分解しおよび加水分解を通じて反応混合物のpH値を低下させる低分子量化合物が反応混合物に添加され、重縮合反応が開始される。驚くべきことに、有機アミドの使用が、特に有益に均一なおよび低速のゲル形成を可能にすることが見出された。したがって、本発明の特に好ましい一実施形態では、少なくとも一種類の有機アミド(たとえばポリアクリルアミド、アセトアミド、尿素、ホルムアミドなど)が、処理段階d)の通りの反応混合物へ続いてゆっくり添加される。これに関連して、市販のホルムアミドおよび/または尿素(メルク社(Merck KGaA)、ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt))の使用は非常に特に有益であり、なぜならこれらの化合物は低分子量化合物の形成を伴って分解して調製手順中に脱出し、または形成されたモノリス状物体から後で容易に除去でき、および従って、本発明に記載のモノリスを用いて実施される分析中に干渉または誤った結果に繋がらないからである。
【0017】
これらの化合物のさらに大きな利点は、ホルムアミドおよび/または尿素で処理された反応混合物は、添加後30分以内にゲル形成処理に対する悪影響無しに各成型器具へ移すことができる点である。
【0018】
後の使用目的に適した成型器具中への反応混合物の移動または重合の成功後、本発明に記載のモノリス状物体の形成のために、ゲル形を処理段階e)に従って乾燥する。乾燥は、約12〜25時間、好ましくは17〜22時間、特に好ましくは最大20時間、30〜80℃にて、好ましくは40〜60℃にて、適当な乾燥器具、たとえばオーブン、乾燥キャビネットまたは乾燥庫などで実施される。
【0019】
処理段階a)〜d)の間に、反応混合物は、反応混合物中の抽出物の均一な分布を達成しおよびそれによって本発明に記載のモノリス状物体の均一な構造形成を連帯して確実にするため、たとえば振とう、撹拌、ボルテックスによって、または超音波などの使用によって、連続的な動きに有益に保たれる。
【0020】
本発明に記載の調製手順に基づき、予め定められた孔径および予め定められた孔径分布を有するモノリスフィルターおよび分離材料を調製することがこのように可能である。これらは、生体高分子の精製および分離のためのクロマトグラフィー分離材料としての使用中に明らかな長所を示す。特に、ガラス繊維膜のような従来のフィルターおよび分離材料と対比して、本発明に記載のモノリスはより大きな安定性および結合能によって特徴づけられる。
【0021】
驚くべきことに本発明に従って形成されたモノリス状物体のこれらの有益な特性は、フィルター材料中へのホウ素(ホウ酸カリウムの形で)の組み込みによって増強される。特に、本発明に記載のモノリス状物体の調製中の、メソポアの有益な孔径の形成は、ホウ素化合物の添加によって影響されまたは調節さえされうる。
【0022】
結合能の有意な増大のような、特に有益なフィルターおよび分離特性が、ホウ素0.1〜0.3%、好ましくはホウ素0.15〜0.25%ホウ素、特に好ましくはホウ素0.18〜0.22%の重量画分を含む本発明に記載のモノリス状物体によって示された。
【0023】
上に記載される方法の別の長所は、本発明に記載のモノリス状物体の形成に必要な抽出物を、たとえばピペットチップまたは384マルチウェルプレートなどのような非常に小型の賦形器具へ簡単におよび迅速に導入でき、およびモノリス状物体がその場(in situ)で形成されうることである。
【0024】
さらに、最も異なる成型器具の使用もまた有効でありおよび費用を要しない。従来のガラス繊維プレート(特に384マルチウェル形式の)とは異なり、本発明にしたがって調製された成型物体は、クランプ環および基礎プレートを有しない任意の構造を用いて、より経済的におよび迅速に調製されうる。加えて、本発明にしたがって調製された成型物体は、使用後に迅速に新しいものと交換でき、材料についてさらにコスト削減に繋がる。さらに、ペレット製造は特に、本発明に記載のモノリス状物体の迅速および可変的な使用に好ましくなる。それらは同じ良好なおよび再現可能な分離特性を有し、およびまた、直径および密度を容易に変化させることができる。
【0025】
さらに、本発明に関連して、驚くべきことに、本発明に記載のモノリス状物体は生体高分子の選択的分離のためのクロマトグラフィー分離材料として等しく適していることが見出された。これは、まずメソポアの孔径の標的調整によって達成される。本発明に記載の別の一実施形態では、しかし、メソポア内の結合化学は、一種類以上の遷移金属が本発明に記載のモノリス状物体の構造中に組み込まれうるかまたは本発明に記載のモノリス状物体中に形成される孔の表面に結合されうるような方法で随意的に影響される。この目的のために、一種類以上の遷移金属塩を含む水溶液Cが、本発明に記載の方法の前に調製される。
【0026】
本発明のモノリス状物体中への遷移金属の組み込みのためには、本発明に記載の方法の開始時に、溶液Cを溶液Aと混合する。明らかになったように、銅、亜鉛、および/またはマンガン塩の水溶液、好ましくは硫酸銅0.2〜1.7重量パーセントまたは過マンガン酸カリウム0.8〜2.9重量パーセントを含む溶液が得に適している。
【0027】
本発明に記載のモノリス状物体中に形成されるメソポアの特に表面への遷移金属の結合のためには、乾燥したフィルターまたは分離材料を溶液Cに浸漬し、および約18時間室温にて乾燥する。代替的に、材料特性に応じて、より迅速な乾燥を130℃にて実施できる(実施例1bおよび3参照)。使用する溶液は本質的にジルコニウムおよび/またはチタン塩の溶液、好ましくは1〜10%ZrCl4またはTiCl4溶液であり、ここでこれらの化合物はまた、他の標準溶媒(たとえばジエチルエーテル、THF、など)に溶解されうる。
【0028】
要約すると、本発明の好ましい一実施形態によると、本発明に記載のモノリス状物体は下記の組成の反応混合物を用いて調製されることが明らかになる(重量パーセントでの詳細):
【0029】
ケイ酸カリウム35〜85%、
少なくとも一種類のコロイドシリカゲル0.1〜25%、
水0.1〜30%、
少なくとも一種類の細孔形成剤0.1〜12%、
少なくとも一種類の有機アミド6〜12%、
ホウ酸カリウム0.1〜5%、
少なくとも一種類の遷移金属の塩0〜10%。
【0030】
下記の組成の反応混合物が特に好ましい(重量パーセントでの詳細):
ケイ酸カリウム(28/30)50〜60%、
少なくとも一種類のコロイドシリカゲル5〜10%、
水10〜25%、
ポリエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコール3〜6%、
ホルムアミドおよび/または尿素5〜10%、
ホウ酸カリウム0.5〜2%、
グリセロール0〜2%および
少なくとも一種類の遷移金属の塩0〜10%。
【0031】
下記で付属の図および実施例におけるさらなる実験詳細によって本発明をより詳細に説明する。
【0032】
図1および図2に示す本発明に記載のモノリス状物体の写真から、反応混合物へのポリエチレングリコールの添加によって顕著に大きいマクロポアが生じ、それはより良好な流速を示すことが明らかに見られる。マクロポアおよびメソポアの孔径およびそれらの各比表面の測定は電子顕微鏡法によって実施された。試料の比表面は約10m2-1である。
【実施例】
【0033】
実施例1:本発明に記載のモノリスの一般的調製
まず溶液Aおよび溶液Bが調製された(表1参照)。さまざまな量の市販のコロイド二酸化ケイ素を次いで50mlPE容器へ入れ、その中へ溶液Aおよび溶液Bをゾル形成のために連続撹拌しながらゆっくりピペットで加えた。ゲル形成のために、わずかに濁ったしかし沈澱のない反応混合物(RG)に、さまざまな量のホルムアミド(表1参照)を加えた。次に、有機アミドの添加の30分以内に、反応混合物それぞれ150μlを、(たとえば粘着テープなどで)出口を最初閉じた(1)市販のスピンカラムまたは(2)市販のウェルプレートの孔へピペットで加えた。重合後、成型器具の一部の上側の入口もまた覆った。最後に、成型器具を乾燥キャビネット内で20時間40℃に加温した。
【0034】
重縮合および/または乾燥手順中に成型器具を覆うことによって、本発明に記載のモノリス状物体のより低速の乾燥が起こり、そのことがモノリス構造のより一貫した形成をさらに促進したことが実証された。
【0035】
a)さまざまな成型器具の使用
(1)スピンカラム中で得られたモノリスはスピンカラムの下部を完全に満たした。クランプ環を挿入することによってモノリスはスピンカラム中に固定され、および血液試料、ラット肝臓組織およびラット脳組織からのゲノムDNAおよびRNAの単離に直接用いられた。
【0036】
(2)ウェルプレートから得られたモノリスペレットをウェルプレートから取り出しおよびピンカラム中に固定した。そのように準備されたスピンカラムが、血液試料、ラット腎臓組織およびラット脳組織からのゲノムDNAおよびRNAの単離に直接用いられた。スピンカラム中でのペレットの特に良好な固定を確実にするために、スピンカラムの内径より大きい直径のペレットの調製のためにウェルプレートを使用した。これは、クランプ環の使用を不必要にし、および本方法の費用対効果をより高めた。
【0037】
b)本発明に記載のモノリスの乾燥時間
本発明に記載のモノリスの乾燥時間を調べるために、調製したゲルを型器具に入れ、およびこれらを乾燥キャビネット内で約40℃に加温した。形成されたモノリスフリット(成型物体)が乾燥にどれだけの長さ必要かを決定するために毎時間チェックした。実施した実験系列に基づいて、本発明に記載のモノリスは約2時間の反応時間後に硬化しおよび一定の安定性を有したことを実証できた。しかし、それらは、それらを用いて分析結果の成功を得られるような形でシリカ摩耗を防ぐためにはまだ安定性が不十分であった。フリットの完全な性能は17〜20時間後に最初に達成された。
【0038】
さらに、乾燥時間は収縮に関係しうることが実証された。高温および迅速な乾燥時間は、低温で低速の乾燥でよりも小さい収縮を結果として生じた。乾燥温度の限界はしばしば、成型材料の材質によって決定される。それは、まだ未乾燥の成型物体が成型器具から取り出される場合、最大400℃までの温度が適当であることを意味する。
【0039】
反応混合物の分離はゲル化中の連続的振とうによって阻害できることが示されていたため、たとえばマイクロ波照射またはサーモミキサーの使用による乾燥中に、反応混合物の可能な相分離が防げるかどうか、および防げる程度もまた調べた。これは、均一な構造の本発明に記載のモノリスの有意により均一な構造に、およびしたがってより高い容量に有益に繋がった。サーモミキサー中で30〜70℃、好ましくは40〜60℃にて試料を完全に縮重合するのがとくに有益であることが見出された。
【0040】
本発明に記載のモノリス状物体に由来する、調製に関連する不純物が、分離段階中、特に高感度分析手順中に分析結果に干渉しないことを確実にするため、形成されたモノリス状物体をその後随意的に、蒸留水で1回または数回再洗浄しおよび次いで40〜120℃にて乾燥した。
【0041】
c)本発明にしたがって調製されたモノリスの比較
本発明にしたがって調製されたモノリスを互いに比較可能にするため、モノリスを異なる組成の一連の反応混合物から調製しおよびそれらの特性を調べた。この下記の選ばれたものは典型的でありおよび本発明に記載のモノリスの特性を説明するのに役立つ。
【0042】
【表1】

【0043】
安定性および摩耗ならびに色および形状の目視試験に加えて、最初に容量試験を実施した。この目的のために、ゲノムデオキシリボ核酸(gDNA)および/またはリボ核酸(RNA)を特にさまざまな生物試料から精製した。精製は、本発明にしたがって調製されたモノリスカラム材料を用いて、および参照として従来のガラス繊維カラム材料を用いて実施した。好ましくはRNイージー(Rneasy)およびキアプレップ(Qiaprep)(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden))を参照材料として用いた。加えて、試料材料に応じて、精製をそれぞれの現行の精製手順書,たとえば『キアンプDNAブラッドミニ手順書("QIAamp DNA Blood Mini protocol")』または『RNイージーミニ手順書("RNeasy MINI protocol")』などに従って実施した。
【0044】
反応混合物RG1〜5から調製されたモノリスを用いた容量測定に基づいて、たとえば各物質の影響について予測できる。このようにして、表2によるとたとえばホウ酸カリウムの使用は、本発明に記載のモノリスの容量の増加に顕著に寄与する。
【0045】
【表2】

【0046】
本発明に記載のモノリスにおけるホウ酸カリウムの使用によって、従来のスピンカラム材料の容量と比較して容量に最大30%以上の増加が達成されたことが証明された。
【0047】
同様に、本発明に記載のモノリスの特性は反応混合物中のホルムアミドの量の変化によってさらに改善され得たこともまた示すことができた。このように、摩耗はホルムアミドの量の増加による容量損失無しに完全に回避できた。
【0048】
【表3】

【0049】
さまざまな量の細孔形成剤における変化もまたモノリス構造の改善に寄与した。特に、グリセロールおよび/またはジグリセロールの添加によってモノリス構造がより均一になったことが明らかになった。さらに、グリセロールおよび/またはジグリセロールの添加はまた、摩耗の防止にも寄与した。
【0050】
【表4】

【表5】

【0051】
より均一なモノリス構造の別の長所として、細孔形成剤の使用はまた、RNA収量に有意な増加をもたらしたことが明らかになった(実施例2も参照)。
【0052】
実施例2:RNA選択的モノリスの調製
a)硫酸銅を含むRNA選択的モノリスの調製
溶液Cの調製のために、硫酸銅15.9mg(フルカ社(Fluka)、スイス、ブーフス(Buchs))および39.8mg酒石酸カリウム(フルカ社、スイス、ブーフス)を水0.5mlに溶解しおよび水酸化カリウム15.0mg(フルカ社、スイス、ブーフス)でゆっくり処理した。結果として生じる青色の懸濁液を、実施例1の通りに調製した溶液A中へボルテックスしながらピペットで加えた。透明青色の溶液が生じた。これを50mlポリエチレン容器に入ったコロイド二酸化ケイ素0.5mlへピペットでゆっくり加えた。次に、同様にボルテックスしながら、水2mlに溶解した360mgのPEG3000および40mgのグリセロールを含む溶液Bをゆっくり加えた。ホルムアミド0.5mlの添加後、各回100μlの溶液を、対応して準備したスピンカラムにピペットで入れ、および乾燥キャビネット中で20時間40℃に加温した。組織試料からの、gDNAを含まないおよび再現可能なRNA単離が達成された。
【0053】
試料1:ラット腎臓組織20mg中のRNA含量を線維組織用手順書(Fibrous Tissue protocol)(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden)に従って測定した:
【0054】
収量:a) 組織10mg当たり総RNA20 μg (gDNA 汚染無し)
b) 組織10mg当たり総RNA 19 μg (gDNA 汚染無し)
c) 組織10mg当たり総RNA 19 μg(gDNA 汚染無し)
d) 組織10mg当たり総RNA 20 μg(gDNA 汚染無し)
【0055】
b)過マンガン酸カリウム含むRNA選択的モノリスの調製
溶液Cの調製のために、過マンガン酸カリウム0.0625g(フルカ社(Fluka)、スイス、ブーフス(Buchs))を0.5ml脱イオン水0.5mlに溶解した。過マンガン酸カリウム溶液を、実施例1の通りに調製した溶液A中へボルテックスしながらピペットで加えた。コロイドシリカゲル0.5mlを次いで50mlポリエチレン容器に入れ、および上記のケイ酸カリウムおよび過マンガン酸カリウムの混合物をゆっくりピペットで加えた。その後、再びボルテックスしながら、脱イオン水2mlに溶解した360mgのPEG3000および40mlのグリセロールを含む溶液Bを加えた。最後にホルムアミド0.5mlをゆっくり加え、およびそれぞれ準備したスピンカラムにピペットで入れた。乾燥キャビネット中で20時間40℃の乾燥時間後、結果として生じたモノリスをさまざまな組織からのRNAの単離に使用できた。さまざまな組織試料からの、gDNAを含まないおよび再現可能なRNA単離が達成された。
【0056】
試料2:ラット脳組織40mg中のRNA含量を脂質組織用手順書(Lipid Tissue protocol)(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden)に従って測定した:
【0057】
収量:a)組織10mg当たり総RNA7μg(gDNA汚染無し)
b)組織10mg当たり総RNA8μg(gDNA汚染無し)
【0058】
c)追加のコーティングによるRNA選択的モノリスの調製
実施例の通りにRG2から調製された本発明に記載のモノリス状物体の表面のコーティングのために、乾燥フィルターまたは分離材料を二種類の異なる溶液に浸漬した。一方ではモノリス状物体を5%四塩化ジルコニウム/THF溶液(L1)に18時間入れ、および他方では5%ジルコニウム(IV)イソプロポキシド−イソプロパノール複合体/エタノール溶液(L2)中に入れた。
【0059】
約18h 室温の乾燥時間後、結果として生じたモノリス (M1 および M2)を、さまざまな組織からのRNAの単離に使用できた。(M1 および M2 はRG 2/M0由来の非被覆モノリス状物体と比較した)。
【0060】
試料3:ラット腎臓組織 20mg中のRNA含量をRNイージー線維組織用手順書(Rneasy Fibrous Tissue protocol)(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden)に従って測定した(1)。次の実験手順(2)で二倍量のGITC(1.8M)を用いた洗浄段階を、洗浄段階RW1の前に実施し、および三番目の実験手順(3)では半量のGITC(0.45M)を用いた洗浄段階を、洗浄段階RW1の後に実施した。
【0061】

【0062】
選択的な、すなわちgDNAを含まないRNA単離もまた、組織試料から異なる洗浄緩衝液を用いて達成された。
【0063】
実施例3:成型器具中のさまざまな充填容量:
比較のために、150μlに加えて、100μlの調製された反応混合物RG2をスピンカラムに入れ、および乾燥キャビネット中で40℃に20時間加温した。次に本発明に記載のモノリス状物体の容量を、キアクイック(QIAQuick)スピンカラム(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden))の容量と比較した。
【0064】
【表6】

【0065】
使用した容量の低減にかかわらず、モノリス状物体入りのスピンカラムはキアクイック(QIAQuick)スピンカラムと同等の容量を有したことが実証された。また、充填容量50μl以下での実験は非常に成功し、そのためたとえば、384マルチウェルプレートのようなより小さい精製器具が本発明に記載のモノリス状物体を有益に装着しうる。
【0066】
さらに、モノリス材料の摩耗はより小さい充填容量を用いて完全に防がれうる。
【0067】
加えて、モノリス材料は現行のガラス繊維およびシリカ膜よりも有意に安定であると示すことができ、そのため特にフィルターおよび分離材料の小型化においては、たとえば、追加の基礎プレートまたはクランプ環のような補助具を省略できた。材料コストの削減に加えて、これはまたフィルターおよび分離材料のより迅速な調製に有益に繋がる。
【0068】
試料4:各回100μlの反応混合物RG2をスピンカラムにピペットで加えた。スピンカラムを乾燥キャビネット中で40℃にて20時間乾燥した。スピンカラムの下部領域を満たすモノリスが得られた。モノリスをクランプ環の挿入によってスピンカラム内に固定し、および血液からのgDNAの精製に直接使用した。このために全血200μlをキアンプDNAブラッドミニ手順書(QIAamp DNA Blood Mini protocol)(キアゲン社(QIAGEN GmbH)、ドイツ、ヒルデン(Hilden))に従って精製した。必要な試薬はまたキアンプ(QIAamp)キット(キアゲン社、ドイツ、ヒルデン)から借用した。
【0069】
収量:a)gDNA8.7μg
b)gDNA10.4μg
c)gDNA8.5μg
d)gDNA10.5μg
【0070】
実施例4:モノリス状物体の経時変化
この例では、本発明に記載のモノリス状物体(反応混合物RG2から調製)を乾燥キャビネット中で長い保存期間経時させた。調製されたモノリスフリット30個のうち、15個をさらに40時間60℃にて乾燥キャビネット中で乾燥させた(空気循環段階3)。
【0071】
標準フリットと追加に乾燥させたフリットとの間に目視で差は認められなかった。加えて、室温にて長期保存後でさえ、経時に関連する容量の損失は示されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】細孔形成剤としてPEGを用いた本発明に記載のモノリス状物体の電子顕微鏡下の構造。
【図2】細孔形成剤無しの本発明に記載のモノリス状物体の電子顕微鏡下の構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の処理段階を含む方法によって得られるモノリス状物体:
a)二酸化ケイ素を反応容器に入れる;
b)少なくとも一種類以上のアルカリケイ酸塩およびホウ酸カリウムを含む溶液Aの添加、
c)少なくとも一種類以上の細孔形成剤および水を含む溶液Bの添加、
d)少なくとも一種類の有機アミドの添加、および
e)反応混合物の乾燥。
【請求項2】
ホウ素0.1〜0.3%を含む点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項3】
ホウ素0.15〜0.25%を含む点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項4】
ホウ素0.18〜0.22%を含む点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項5】
ポリアルコール、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、特に好ましいポリエチレングリコール、グリセロールおよびジグリセロールおよびそれらの混合物が細孔形成剤として用いられる点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項6】
ホルムアミドおよび/または尿素が有機アミドとして用いられる点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項7】
反応混合物が最大20時間40℃〜60℃にて乾燥される点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項8】
一種類以上の遷移金属塩を含む水溶液Cが溶液Aに添加される点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法によって得られるモノリス状物体。
【請求項9】
銅、亜鉛および/またはマンガン塩の水溶液が溶液Cとして用いられる点で特徴づけられる、請求項8に記載のモノリス状物体。
【請求項10】
反応混合物が
ケイ酸カリウム35〜85%、
少なくとも一種類のコロイドシリカゲル0.1〜25%、
水0.1〜30%、
少なくとも一種類の細孔形成剤0.1〜12%、
少なくとも一種類の有機アミド6〜12%、
ホウ酸カリウム0.1〜5%、
少なくとも一種類の遷移金属の塩0〜10%
である点で特徴づけられる、前記請求項のうち一つに記載のモノリス状物体。
【請求項11】
反応混合物が好ましくは
ケイ酸カリウム(28/30)50〜60%、
少なくとも一種類のコロイドシリカゲル5〜10%、
水10〜25%、
ポリエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコール3〜6%、
ホルムアミドおよび/または尿素5〜10%、
ホウ酸カリウム0.5〜2%、
グリセロール0〜2%および
少なくとも一種類の遷移金属の塩0〜10%
である点で特徴づけられる、前記請求項のうち一つに記載のモノリス状物体。
【請求項12】
生体高分子の精製および分離のためのクロマトグラフィー分離材料としての、前記請求項のうち一つに記載のモノリス状物体の使用。
【請求項13】
生体高分子の選択的分離のためのクロマトグラフィー分離材料としての、前記請求項のうち一つに記載のモノリス状物体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−508505(P2008−508505A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523006(P2007−523006)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008132
【国際公開番号】WO2006/013043
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)