説明

生化学試験容器

【課題】生化学試験の液体・試薬・検体等の混合、希釈、攪拌、遠心分離、保存に用いる容器であって、キャップ開封操作性に優れ、液体の飛散が無く、無菌操作性に優れた容器を提供することである。
【解決手段】生化学試験容器(10)は、上部に開口部を有する本体(4)と、本体(4)の上部開口部を封止する栓体(11)とを含み、栓体(11)は、ヒンジ(3)を介して開閉可能に設けられた第一の蓋材(1)と第二の蓋材(2)で構成されて、また、ヒンジ(3)は、複数のヒンジ(3)で構成されている生化学試験容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学試験の際の液体・試薬・検体等の混合、希釈、攪拌、遠心分離、保存に用いる生化学試験容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生化学試験で使用されている容器のうち、主に、リキッドハンドリングと呼ばれる混合、希釈等の操作を行う際には試験管、マイクロチューブ、凍結保存チューブ、遠沈管と呼ばれるチューブ容器類が使用されている。
【0003】
その中でも特に遠沈管は本来遠心分離に使用される容器であるが、スクリューキャップが附属している事と、容量が10mL〜200mL程度の品揃えで液体の取扱いに適していることから遠心分離以外の幅広い用途に使用されている。
【0004】
遠沈管を、リキッドハンドリング用途に使用する際問題となるのは、スクリューキャップであるため開封に時間がかかり、大量に開封操作を繰り返す際に作業効率が著しく低下してしまう事と、開封時に本体とキャップが分離するため、例えば数本の遠沈管を並べて希釈−攪拌−分注操作を行う際、チューブ本体とキャップとの組み合わせを誤り、別のチューブに分注した試薬が他のチューブに混入してしまう恐れがある。
【0005】
また、通常リキッドハンドリングの際には片手にピペッター(ピペット分注装置)を持ちながら、もう一方の手で容器の開封を余儀なくされるが、片手でスクリューキャップを開封するには操作に慣れも必要となり、更に作業時間を要する。
【0006】
生化学試験においてはクリーンベンチ等の無菌条件下で液体を扱う機会も多く、その場合予め滅菌された容器類が使用されるが、開封操作等のチューブの取扱にも注意が必要となり、遠沈管を使用した場合、前述の如く片手操作でなおかつ菌の混入にも留意しながらの作業を正確に行うにはかなりの熟練が必要となる。
【0007】
以上の問題点を解決すべく、通常0.5mL〜2mLのマイクロチューブの容量を50mLに拡大した形状のヒンジキャップを有する容器が開発されている(例えば特許文献1)。しかし、開封時に指がチューブ本体の開口部に接触し、コンタミネーションの恐れがある点と、キャップが閉じた状態を保持する勘合部とキャップと本体の機密性を保持する勘合部が同一である為、キャップと本体の間に滞留した液体が開封時に飛散してしまう恐れがあった。
【特許文献1】USP 4,783,056
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生化学試験の液体・試薬・検体等の混合、希釈、攪拌、遠心分離、保存に用いる容器であって、キャップ開封操作性に優れ、液体の飛散が無く、無菌操作性に優れた容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生化学試験容器は、上部に開口部を有する本体と、前記本体の上部開口部を封止する栓体とを含み、前記栓体は、ヒンジを介して開閉可能に設けられた第一および第二の蓋材で構成されていることを特徴とする。
【0010】
この生化学試験容器においては、栓体がヒンジを介して開閉可能になっている。これにより、リキッドハンドリング時に、栓体を取り外すとき、栓体が第一および第二の蓋材で構成され、また、その蓋材がそれぞれヒンジで繋がっているため、片手操作で栓体を開封することができる。また、栓体が本体から分離することがないので、複数の容器を扱う場合にも誤って別の栓体で栓をすることがなくなる。
【0011】
また、前記ヒンジ部は、複数のヒンジで構成されていてもよい。これにより、開封時蓋材を大きく上方にに開けることが可能となり操作が用意とする生化学試験容器とすることができる。
【0012】
また、前記第一の蓋材には、前記第二の蓋材と勘合するための第一および第二の勘合手段が設けられていてもよい。これにより、キャップが閉じた状態の保持と、キャップと本体を液密的にすることを別にすることが可能となり、キャップと本体の間に液体を滞留させることがなく、開封時液体を飛散させてしまうことがない生化学試験容器とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生化学試験に使用する容器であって、キャップ開封操作性に優れ、無菌操作性に優れた容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についての好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による生化学試験容器の一実施例を示す正面図である。生化学試験容器(10)は、上部に開口部を有する本体(4)と、本体(4)の上部開口部を封止する栓体(11)とを含み、栓体(11)は、ヒンジ(3)を介して開閉可能に設けられた第一の蓋材(1)と第二の蓋材(2)で構成されている。
【0016】
以下、生化学試験容器の各部の構成について説明する。
【0017】
図3に示すように、栓体(11)は、ヒンジ(3)を介して開閉可能に設けられた第一及び第二の蓋材(1、2)で構成されている。そのため、第一及び第二の蓋材(1、2)のヒンジ(3)により片手で容易に開封することが可能となる。また、第一及び第二の蓋材(1、2)の材質は特に限定するものではないが、ヒンジ(3)の作動性の点、及び強度や成形性、取り扱い性、価格、耐放射線(滅菌)性などの点において樹脂製が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等を選択することが出来る。ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使用する事で特にヒンジ(3)の作動性及びキャップを閉じた際の密封性にも優れる為好ましい。
【0018】
第一及び第二の蓋材(1、2)と本体(4)は任意に分離できる事が好ましく、それによって、液体のデカンテーション等の移し変え作業をおこなう場合、必要に応じて第一と第二の蓋材(1、2)から構成される栓体(11)を本体(4)から取り外して作業をおこなう事で栓体(11)部分への液残りの心配がなくなる。
【0019】
さらに、高回転の遠心分離や長期保存に使用する等、より強い密閉性を必要とする場合、一連の作業を終えた後に、本発明の栓体(11)から密閉式のキャップに取り替えて使用することも可能である。
【0020】
第一及び第二の蓋材(1、2)と本体(4)の接合方法は特に限定するものではないが、スクリュー機構による接合がキャップを締めた際の確実性の点において特に好ましい。
【0021】
ヒンジ(3)部分の形状は特に限定するものではないが、ある程度の開封操作を行った後ヒンジ(3)部分の弾性力等により自動的に一定の角度まで第二の蓋材(2)が開放される、いわゆるスナップキャップであれば、開封時にキャップ開封角度を保持する必要が無いため、作業性が向上し、更に操作時のコンタミネーションや感染を防止出来る点において好ましい。
【0022】
効率性及び製造時の異物付着(エンドトキシン、DNA分解酵素等)を低減化する点において、製造工程を短く、出来るだけ組立工程を省く事が生化学容器としては好ましく、その為に第一と第二の蓋材(1、2)及びそれらをつなぐヒンジ(3)部分は一体で成形されていることが好ましく、その上で上記スナップ機構を付与する為には、ヒンジ(3)が複数のヒンジ(3)で構成されていることが好ましい(図2)。構成としては、センターヒンジと、その両側に併設された補助ヒンジからなる三点ヒンジにする事で、特に操作性に優れ、キャップの開封強度やキャップの開封角度もセンターヒンジと補助ヒンジの形状を変えることで設計時に任意に設定する事が出来るため特に好ましい。
【0023】
第一の蓋材(1)と第二の蓋材82)の勘合部分が蓋が閉じた状態を保持する機構と機密性を保持する機構を兼ね備えた形状にした場合、開封の際の衝撃で液体が飛散する危険性があり生化学試験用用途としては特に大きな問題となる。その為、本願発明者らは鋭意検討の結果、第一の蓋材(1)に第二の蓋材(2)と勘合するための第一および第二の勘合手段(7、8)を設ける事により、液体の飛散の危険性を大幅に低下させ得ることを見出した。更に第一の勘合手段(7)に栓体が閉じた状態を保持する機能を付与し、第二の勘合手段(8)に機密性を保持する機能を各々付与する事で、開封感覚と密閉性を各々の勘合手段の設計で調節する事ができるため、優れた開封感覚による確実な開封−密閉操作が可能になると同時に高い密閉性も得る事ができる。
【0024】
図4に示すように、栓体が閉じた状態を保持する勘合部の形状は特に限定するものではなく、例えば第一の蓋材(1)に爪を設けて第二の蓋材(2)にその爪が勘合するような溝を設けて蓋を閉めた際にそれらが勘合する様な形状が考えられる。機密性を保持する勘合部の形状も特に限定するものではなく、第二の蓋材(2)に設けた開口部が蓋を閉めた際に第一の蓋材(1)の一部分が密着する事で機密性を保持するような形状、または第一の蓋材(1)に設けた凸状の栓体が蓋を閉めた際に第二の蓋材(2)に設けた開口部に嵌まる事で機密性を保持するような形状が考えられる。
【0025】
図5に示すように、第一および第二の勘合手段(7、8)を設ける場合、栓体が閉じた状態を保持する勘合部の勘合力が、機密性を保持する勘合部の勘合力を上回っていることが飛散をより効果的に防止する点において好ましい。
【0026】
本体の形状は特に限定するものではないが、遠心分離も可能な形状であればより幅広い用途に使用できるため好ましく、底面がコニカル(円錐)またはラウンド(半球)形状であれば遠心分離効率に優れる。
【0027】
本体の容量は目的に応じて任意に選択する事が出来るが、10mL〜250mLの範囲であれば取り扱い性に優れるため好ましい。
【0028】
本体の材質も特に限定するものではないが、蓋材と同様、強度や成形性、取り扱い性、価格、耐放射線(滅菌)性において樹脂製が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、TPX樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を選択することが出来る。
【0029】
また、透明性と遠心強度を考慮すると、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂が特に好ましい。
【0030】
生化学実験の用途上、本体および蓋材は滅菌されている事が好ましく、滅菌方法は特に限定するものではないが、γ線または電子線を用いた滅菌方法が量産性や残留ガスの問題がない点において特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の生化学試験容器示す正面図である。
【図2】本発明の生化学試験容器示す平面図である
【図3】本発明の生化学試験容器の蓋材の開封状態を示す概略図である。
【図4】本発明の生化学試験容器の蓋材の封止状態を示す概略図である。
【図5】本発明の生化学試験容器の蓋材の第一および第二の勘合手段を示す断面図である
【符号の説明】
【0032】
1 第一の蓋材
2 第二の蓋材
3 ヒンジ
4 本体
5 センターヒンジ
6 補助ヒンジ
7 第一の勘合手段
8 第二の勘合手段
10 生化学試験容器
11 栓体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する本体と、
前記本体の上部開口部を封止する栓体とを含み、
前記栓体は、ヒンジを介して開閉可能に設けられた第一および第二の蓋材で構成されていることを特徴とする生化学試験容器。
【請求項2】
前記ヒンジは、複数のヒンジで構成されている請求項1に記載の生化学試験容器。
【請求項3】
前記第一の蓋材には、前記第二の蓋材と勘合するための第一および第二の勘合手段が設けられている請求項1または2に記載の生化学試験容器。
【請求項4】
前記第一の勘合手段は、前記栓体が閉じた状態を保持するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生化学試験容器。
【請求項5】
前記第二の勘合手段は、前記栓体の機密性を保持するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の生化学試験容器。
【請求項6】
前記栓体と前記本体は、それぞれスクリュー機構を備え、前記スクリュー機構によって互いに脱着可能である請求項1ないし4のいずれかに記載の生化学試験容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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