説明

生物剤と化学剤の、標識を用いないエバネッセント場検出

液体または気中いずれかの生物病原体、化学剤、および他の有害種または毒性種を検出するためのエバネッセント場センサシステムおよびそのシステムの使用方法が提供される。このセンサシステムは、1)連続的に取替え可能な検出領域の一部を形成する、少なくとも部分的な生物または化学反応層を持つ基体表面を有するエバネッセント場センサ、2)生物または化学反応層をモニタするための光学呼掛け装置、および3)気流供給システムを備えている。光学呼掛け装置は、光源、光供給システム、および検出器具またはデバイスを有する。気流供給システムは、生物または化学分析物を検出領域に搬送するように設計された巨視的または微視的流体通路いずれかを備えている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、ここに引用する、2003年3月27日に出願された米国仮特許出願第60/458119号からの優先権の恩恵を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生物剤と化学剤のエバネッセント場検出に関する。本発明は、より詳しくは、気中または流体の分析物に関する即時応答の生物結合イベントまたは化学反応をモニタするためのセンサシステム、それに関連する光電子成分、およびそのシステムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エバネッセント場に基づくセンサが、標識を用いない、生物反応の精密な検出のために最適な技術に急速になりつつある。近年、生物、薬剤、および他の研究団体は、エバネッセント場に基づくセンサが、様々な生物機能または生化学機能を測定するための有用な高処理量研究器具であり得ることを認識し始めてきた。この技術は、一般的に、生物反応や化学反応が行われる局所的環境の変化(屈折率)を検出するための光学的エバネッセント場の使用を含む。グレーティングやプリズムを用いて、光を光学モードの内外で結合し、それによって、表面の屈折率と共に変化するモードの実効屈折率を調べることができる。例えば、プローブ光の角度や波長の変化は、センサの表面での活性から生じる導波路の実効屈折率の変化を示す。エバネッセント場センサは、高い感度、および約250Daの分子量ほど小さな結合反応(例えば、ビオチンのストレプトアビジンへの結合)を検出する能力を示してきた。典型的な胞子に基づく病原体(例えば、炭疽菌)は、エバネッセント技術の従来の標的である極小の薬剤候補と比較してかなり大きな実在物(≧20〜50kDa)である。その結果、そのようなセンサおよび器具は、気中の病原体検出のために十分に敏感でなければならない。さらに、屈折率に対するそれらの応答性のために、これらの種類のセンサは、化学物質に対しても応答し、したがって、同様に化学的毒素を検出できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、気中または流体の分析物に関する即時応答の生物結合イベントまたは化学反応をモニタするためのセンサシステム、それに関連する光電子成分、およびそのシステムの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ある態様によると、一部には、液体または気中いずれかの生物病原体、化学剤、および他の有害種または毒性種を検出するためのセンサシステムに関する。このセンサシステムは、1)連続的に取替え可能な検出領域を形成する、少なくとも部分的な生物または化学反応層を持つ基体表面を有するエバネッセント場センサ、2)光源、光供給システム、および検出器具を有する、生物または化学反応層をモニタするための光学呼掛け装置、および3)生物または化学分析物を一つ以上の検出領域に搬送するように設計された巨視的または微視的流体通路いずれかを有する、気流供給システムを備えている。この基体は、反応領域と非反応領域を有し、生物または化学反応層の安定な固定化を向上させる一種類以上の物質によって修飾できる。例えば、生物または化学反応層は、生物分析物に関するガングリオシド・プローブまたは病原体特異的抗体を含んでもよい。あるいは、生物または化学反応層は、関心のある化学分子または部位を吸着し、質量または屈折率いずれかの変化を生じるように設計されていてもよい。質量の変化は、化学分子の表面への付着またはセンサの表面からの元々そこにある化学物質の除去から生じるであろう。
【0006】
本発明によるエバネッセント場センサは、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の近接した組のセンサ領域またはセンサアレイいずれかをその上に持つ連続基体を有し、ここで、各アレイは、生物または化学検出のための所定の組の多数の領域を有してなる。検出領域の生物または化学反応層は、特定の生物または化学反応物と反応するように特異的に処方されている。好ましい実施の形態において、エバネッセント場センサは、それぞれが、連続してまたは並行してのいずれかで光学的に呼び掛けられる一つ以上の検出領域を有する個々の基体の集合物を含む。基体が光学的に透明であることが好ましい。このシステムは、検出領域中に引き込まれる前に、空気中の粒子をその場で濃縮する試料収集または濃縮装置を含むことが好ましい。
【0007】
ある実施の形態によるセンサシステムは、連続様式で単一ユニットとして分配装置から供給することができる、引張強度と柔軟性を有する基体を含むことが好ましく、この基体は、分割せずに最長の寸法に沿って完全に延ばされた長さの一部分に構造化でき、毒素標的との分子相互作用アッセイを行うのに適した連続体としてそのような構造から取り出すことができる。あるいは、エバネッセント場センサは、回転板(プラットホーム)の形態にある基体を有する。特定の実施の形態によれば、前記装置は、それぞれが連続して光学的に呼び掛けられる1つ以上検出領域を有する個々の基体の集合体を有してなる。
【0008】
別の態様によれば、本発明は、毒素を検出する方法に関する。この方法は、連続的に取替え可能な検出領域を形成する少なくとも一部は生物または化学反応層を有する、上述したようなエバネッセント場センサシステムを提供し;個々のセンサアレイを、未知の有害な汚染物を含む環境に曝露し;センサシステムからの応答をモニタして、汚染物レベルを測定する各工程を有してなる。このセンサシステムは移動板上に配置してもよく、この移動番は汚染した環境に移動させるか、またはその環境中を通して移動させられる。センサの応答信号は、遠く離れた分析位置に伝送できる。
【0009】
本発明の追加の特徴および利点が、以下の詳細な説明において明らかになるであろう。先の要約および以下の詳細な説明と実施例は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明を理解するための概要を提供することが意図されている。
【0010】
セクションI − 定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の組成物、試薬、プロセス工程、または設備に必ずしも限られず、それ自体様々であってよい。本明細書および添付の特許請求の範囲に用いているように、単数形は、その文脈に明白に別記されていない限り、複数の対象を含む。ここに用いた用語法は、特定の実施の形態を説明する目的のためだけであり、制限を意図するものではない。ここに用いた全ての技術用語および化学用語は、別に定義しない限り、本発明の関連する当該技術分野の当業者に通常理解される一般的な意味を有する。
【0011】
ここに用いた「気流供給システム」という用語は、大気または周囲の環境から生物または化学分析物の試料を収集し、これらの試料をセンサに供給できる流体(すなわち、気体または液体)システムを称する。
【0012】
ここに用いた「分析物」、「毒素」、または「標的」という用語は、検出すべき、生物病原体、化学剤、および他の有害種または毒性種を称する。
【0013】
ここに用いた「生物反応(性)」または「化学反応(性)」という用語は、生物種または化学種を吸着、脱着、反応、または結合する能力を称する。
【0014】
ここに用いた「生物または化学反応層」は、エバネッセント場センサの基体表面上のプローブの集合体を称する。
【0015】
ここに用いた「エバネッセント」という用語は、マクスウェル方程式によると、光学場の一部分であって、光学場の実効屈折率が媒体の局部屈折率を超え、それによって、空間において場を指数関数的に減衰させる一部分を称する。
【0016】
ここに用いた「エバネッセント場センサ」という用語は、エバネッセント光学場が、検出すべき媒体と相互作用し、光学場の変化を検出して、媒体の性質または変化する特徴を示すことのできる任意の種類のセンサを一般に称する。
【0017】
ここに用いた「マイクロスポット」という用語は、プローブ物質を含有する、基体の表面上の個々のまたは所定の区域、座またはスポットを称する。アレイにおけるような、1つ以上のマイクロスポットが検出領域を構成する。
【0018】
ここに用いた「プローブ」という用語は、検出媒体の一部を構成する基体表面に固定化された、天然または合成いずれかの、生物または化学反応性分子を称する。一組のプローブが、分析物と結合または他の様式で反応できる。本発明により使用してよいプローブの例としては、以下に制限されるものではなく、抗体(例えば、モノクローナル抗体および特定の抗原決定基と反応性である抗血清)、ガングリオシドを含む糖脂質、薬剤または毒素分子、ポリヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド、タンパク質、コファクター、レクチン、多糖類、ウイルス、細胞、細胞膜または脂質膜、膜免疫レセプタ、および細胞小器官が挙げられる。化学検出に関して、プローブとしては、高分子マトリクス、またはリガンド依存性イオンチャンネル膜を挙げてよい。プローブは、マイクロスポットのアレイを形成するように空間的にアドレス可能な様式で配列されていることが好ましい。そのアレイを、関心のある試料を曝露すると、試料中の分子が、その結合相手(すなわち、プローブ)に選択的かつ特異的に結合する。プローブに対する「標的」の結合は、その「標的」分子の濃度と特定のプローブに関するその親和性によって決定される程度で生じる。
【0019】
ここに用いるように、「レセプタ」という用語は、リガンドに関する親和性を有する分子を称する。レセプタは、天然に生じる分子でも、人工の分子であってもよい。それらレセプタは、未改変状態で用いても、他の種との集合体として用いてもよい。レセプタは、当該技術分野において抗リガンドと称されることもある。2つの分子が分子識別によって結合して、複合体を形成するときに、「リガンド−レセプタ対」が形成される。
【0020】
ここに用いた「検出領域」は、分析物が付着し、検出されるエバネッセント場センサの表面上の区域または窓を称する。エバネッセント場センサの全表面に亘り、それぞれ連続してまたは並行して光学的に評価される検出領域が少なくとも1つ、好ましくは複数ある。言い換えれば、検出領域はスライドまたはフイルムのフレームに類似している。
【0021】
ここに用いた「基体」または「基体表面」という用語は、安定な支持体を形成でき、エバネッセント場センサとして機能できる固体または半固体物質を称する。基体表面は、様々な物質から選択できる。
【0022】
セクションII − 説明
本発明は、一部には、エバネッセント場光学素子によって毒素を検出するためのセンサシステムおよび方法に関する。図1は、一般的なエバネッセント場センサ装置の概略図である。導波路などの光学的制限層が、光学モードが伝搬する区域を提供する。導波路は、周囲の環境または媒体に対する良好な感度(屈折率)を提供する。光源は、検出すべき媒体中に透過するエバネッセント光学場を提供する。このエバネッセント場は媒体中に及ぶので、検出媒体の質量や屈折率の変化によって、光学的制限層における場の性質が変化する。センサの表面は異なる生物または化学分子に遭遇すると、エバネッセント場は応答の変化を示し、これはモニタすることができる。入射または入力プローブの光ビームが、制限された光エネルギーと相互作用するのに用いられ、その後、出力光ビームが所望の情報を含む。制限された光学モードとプローブビームとの間の相互作用には、センサから情報を抽出するために、プリズム、グレーティング、誘電積重体などのいずれかで用いられる屈折/回折の物理的過程により決定される波長および/または角度のパラメータの正確な適合が必要であるので、この情報は一般的に、出力光の波長または角度いずれかの変化の形態にある。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、様々な種類の種を検出するために上述したエバネッセント場センサを使用する方法は、連続的に取替え可能な検出領域を形成する、少なくとも一部には生物または化学反応層を有する基体表面、および少なくとも2つの連続した組のセンサアレイをその上に有する連続基体を備えたエバネッセント場センサを含むセンサシステムを提供する工程であって、各アレイは、生物または化学検出のための所定の組の多数の領域を含み、個々の検出領域またはセンサアレイは、未知の有害な汚染物を有する環境に曝露される工程、およびセンサシステムの応答をモニタして、汚染物レベルを測定する工程を有してなる。
【0024】
A.センサ
本発明によれば、このセンサシステムは、生物実在物、化学剤、および他の有害な病原種または毒性種のエバネッセント検出のための多重式高処理量構成を提供する。センサシステムは、基体表面の少なくとも一部の上に、検出領域の部分を形成する、生物または化学反応層を有するエバネッセント場センサを有してなる。各検出領域は、基体上の分析物結合部位、またはマイクロスポットが光学的に呼び掛けられる区域または窓を提供する。
【0025】
病原体または毒素検出のためにセンサを活性化させるために、連続基体表面全体またはその少なくとも一部分いずれかを、所望の生物または化学活性のために、適切な生物または化学種で被覆する。言い換えれば、基体全面を化学または生物反応性物質で比較することは一般に必要ではなく、センサ区域の活性なマイクロスポットのみが反応性コーティングを有する必要がある。多重検出の場合、別々のセンサの各列(基体の連続方向に沿った)は、異なる生物または化学反応性コーティングにより区別される。さらに、非特異的(バックグラウンド)ノイズから真の特異的検出を区別するために、反応性コーティングが用いられていない多重毒素センサの各アレイを持つ対照センサを含んでもよい。
【0026】
基体上の検出媒体は、特異的に流体または気中の分析物と結合できる、プローブと称される様々なリガンドまたはレセプタ分子を含む生物または化学反応層である。病原体または毒素に特異的なセンサを開発するには、プローブをセンサの表面にしっかりと固定化する必要がある。基体の検出領域内またはその周りの表面の化学的性質は通常、特定の種類のプローブを固定化するために注文製造される。基体は、共有結合または非共有結合によって別の分子に関する特異的親和性をそれぞれが有する、生物分子または化学分子いずれかから選択された結合実在物を少なくとも一種類有してもよい。特異的結合実在物は、結合実在物を、基体の表面上の一般の官能基と共有的にまたは非共有的に反応もしくは結合させる、(元来または修飾によってのいずれか)官能性化学基(第一アミン、スルフヒドリル、アルデヒド、カルボキシル、アクリルなど)、一般的な配列(核酸、エピトープ(抗体))、ハプテン、またはリガンドを含むことが好ましい。特異的結合実在物としては、以下に限られないが、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、合成オリゴヌクレオチド、抗体、タンパク質、ペプチド、レクチン、修飾多糖類、合成複合体巨大分子、官能化ナノ構造体、合成ポリマー、修飾/ブロックされたヌクレオチド/ヌクレオシド、修飾/ブロックされたアミノ酸、フルオロフォア、発色団、リガンド、キレート、およびハプテンが挙げられる。多重の実施の形態において、センサのアレイ内の各マイクロスポットは、特定の生物または化学分析物/標的と反応するように特異的に処方された異なる生物または化学反応層を有してよい。ある実施の形態について、表面のさらに別の生物調製は、非特異的結合のブロック剤などの施用を含んでよい。
【0027】
病原体の高特異的同定のための要件の1つは、標的に関する大きな結合親和性を示すプローブ(例えば、抗体、タンパク質、免疫レセプタなど)の使用可能性である。病原体に特異的な抗体が、高度の特異性を提供するために使用されることが多い。プローブは、特定の官能性に関する特異性にしたがって選択してよい。例えば、プローブは、これらの種類の官能性の炭疽菌と結合できる4つまたは5つの異なる抗体などの、特定の病原体の様々な異なる表面マーカー分子に対する抗体を含んでよい。しかしながら、そのような物質の製造は難しいことが多い。例えば、抗体は、製造と精製が難しいであろうし、異なるプローブと置換しなければならない。入手し易く、病原体を捕捉するのに抗体と同じくらい特異的な病原体標的の他の例としては、ガングリオシドが挙げられ、これらは、多くの毒素(炭疽菌を含む)によって標的とされる糖類/脂質複合体である。
【0028】
最近、結合アッセイのためのガングリオシドの表面への固定化が示された(Fang et al., "Ganglioside Microarrays for Toxin Detection," Langmuir 2003, 19, 1500-1505)。生体膜のアレイを用いた毒素の検出に関する詳細が、ここに引用する米国特許出願第60/392275号明細書に与えられている。結合アッセイについて、センサの配置前に、ガングリオシドをエバネッセント場センサの表面に固定化することができる。追加の利点として、そのような結合反応を使用すると、ほとんどの吸収スペクトルに基づく隔離検出技法よりも大きな特異性(より少ない偽陽性)が得られる。あるいは、検出層または反応層は、リガンド依存性イオンチャンネルを有する生体膜、高分子マトリクスを含んでもよく、もしくは化学化合物を化学毒素の検出に用いてもよい。
【0029】
センサ表面を一旦調製したら、センサは、図2に示すような気中の病原体検出の準備が実質的にできている。図2は、センサの基体表面に亘って配置された考えられる複数の検出領域の内の1つを示している。検出領域は、動作する際に、一時、空気または流体の試料に曝露される。気中の病原体または毒素がプローブに結合したときにセンサが応答し、上述したようなセンサ表面で実効屈折率のこの変化を検出することができる。反応層がそのために設計された粒子は、特異性を持って結合する。しかしながら、他の粒子の非特異的結合も生じ、時間が経つと、検出領域が汚染されてくる。検出領域が一旦汚染されると、光学的呼掛けがそれほど正確ではなくなる傾向にある。このことを踏まえて、センサシステムは、本発明によれば、各エバネッセント場センサが連続的に取替え可能な検出領域を有するように設計される。すなわち、複数の検出領域が基体の表面に配置されている。前の検出領域が非特異的汚染の所定のレベルに一旦到達した所定の期間後に、結合と呼掛けのために、新たな検出領域を曝露させることができる。特定の期間は、汚れレベルやエアゾール濃度などの特定の環境要因または条件に依存するであろう。
【0030】
本発明によるセンサシステムは、改善された程度の感度および特異性を示すことができる。本発明によれば、センサは、1リットル当たり少なくとも1つの有機体のレベルで試料中に存在する微生物(例えば、ウイルスや細菌)、1リットル当たり少なくとも約1または10フェムトモルのレベルで試料中に存在する生物毒素、および1リットル当たり約50〜100アトモルのレベルで存在する化学毒素を検出することができる。さらに、これらの反応は即時応答でモニタすることができ、無人機、地上の工事用機器、および地域または共同体応答型ネットワークにそれらを使用することができる。
【0031】
エバネッセント場検出は一般に、光位相の変化をモニタする。様々な光学素子が位相検出を組み込んでいる。これらの例としては、共鳴リング、マッハ・ツェンダー干渉計、またはハートマン干渉計が挙げられるであろう。センサは、パターンの形成された光回路を含む、様々な他の形態をとってもよい。ある実施の形態によるセンサは、基体上にまたは基体に対して配置された導波閉込め層、膜、または実効屈折率領域により形成された導波構造体である。導波領域が、基体の屈折率よりも少なくとも0.1%高い屈折率を有することが好ましい。導波構造体中に回折格子が含まれていてもよい。生物または化学反応層が導波体または膜に隣接して配置されており、ここで、生物または化学反応層は、関心のある毒素と相互作用できる。センサは、表面プラズモンモードを支持することのできる金属膜が被覆された基体から製造してもよい。別の実施の形態において、センサは、多数の誘電層が被覆された基体であってもよい。誘電層は様々な光屈折率を有し、光学場は、検出すべき媒体と直ちに接触する層の下に延在するエバネッセント・テールを有する。
【0032】
B.システム設計
基本的なセンサシステムは理解するのがかなり単純である。エバネッセント場センサは、様々な形状とサイズ、並びにガラス、誘電材料、金属、金属酸化物、並びに比較的安価なプラスチックを含む様々な材料で製造することができる。理想的には、古いセンサが汚染されたり、表面の化学的性質が使用によって不活性になったときに、新しいセンサに切り換える能力を与えられるように多くのセンサを一緒にまとめるべきである。これらの検討事項に鑑みて、本発明は、多くのセンサを組み込んだ連続的に取替え可能な基体を提供する。光学的モニタビームは、おそらく、任意の所定の時間でセンサ基体上の1つのサブセットの全てのマイクロスポットのみと相互作用するであろう。
【0033】
しかしながら、毒素検出技術のどの実際的な実施の形態も、1つの特定の毒素のみを標的としない。この理由のために、多数のセンサが多重形式で動作可能であるべきである。これは、複数のセンサの同時モニタ、または単純に、個々のセンサの連続検出を含んで差し支えない。多重化を提供するために、連続基体は、各グループの多数のセンサがほぼ同じであるかまたは検出することを望んでいる多数の毒素種に対応しているセンサのグループが配置されることが好ましいであろう。例えば、5種類の毒素種をモニタしようとする場合、基体は、5つの隣接するエバネッセント場センサを収容するように構成されているであろう。各センサが、例えば、約2mmの直径のマイクロスポットの形態にある場合、これによって得られるマイクロスポットセンサのアレイは、連続基体の全長に沿って何回も繰り返される、約10mm幅×約2mm長であろう。あるいは、空間条件を考えると、所望の数の多重化センサを基体上に1つの線上に配置することができない場合、2つ以上の平行な行と列で、二次元の直線行列のグループ化でセンサのアレイを編成しても差し支えない。例えば、10mm幅の基体上での、上述したような、直径が2mmのマイクロスポットに関して、15種類の異なる毒素を、3×5アレイのマイクロスポットセンサでモニタすることができた。
【0034】
システムのある実施の形態によれば、エバネッセント場センサは、それぞれが、連続してまたは並行して光学的に呼び掛けられる1つ以上の検出領域を有する基体の集合体を有していてよい。ある実施の形態において、エバネッセント場センサは、少なくとも2つの連続した組のセンサアレイが基体表面上に配置された連続基体を有し、各アレイは、生物または化学検出のための所定の組の多数の領域を有してなっている。センサの各アレイにおいて、生物または化学反応層は、一種類以上の特定の生物または化学分析物と反応するように特異的に処方されている。基体は、引張強度および柔軟性を有し、連続様式で単独ユニットとして分配装置から供給することができる。基体は、分割せずに最長の寸法に沿って完全に延長された長さの一部分に構造化でき、分子標的との分子相互作用アッセイを行うのに適した連続体としてそのような構造体から取り出すことができる。例えば、基体は、約50マイクロメートルから約2mm厚の光学的に透明な(高分子)フイルムである。以下に詳しく論じられる他の実施の形態において、エバネッセント場センサは、回転板の形態をとってもよい。
【0035】
病原体は、直接の気流並びに流体捕捉/流れを含む様々な様式でセンサに導入することができる。それゆえ、センサを横切る流体(ガス、エアゾール、または液体)流れは、任意の検出システムの別の構成要素である。流体は、巨視的または微視的流体システムいずれによって導入しても差し支えなく、器具に含まれるアッセイのための試薬を含んでもよい。空気試料供給システムは、流動通路、モニタ、またはさらには病原体濃縮技術と組み合わされた空気濾過システムを含んでもよい。ある実施の形態は、多数の異なるマクロまたはミクロ構造から構成された通路の網状構造を有してもよく、これは、通路の寸法を変更することによって空気試料の流れの速度を変える、または空気試料の効率的な混合を促進するであろう。図4Aは、供給システムの典型的な実施の形態を示している。空気流体供給システムは、以下に限られないが、漏斗形空気試料捕集器、交換式フィルタ、マクロまたはミクロ通路または流路の網状構造、および通路を通して空気または流体を引き込むためのファン、空気処理器またはポンプを備えていてよい。さらに、気中病原体は、ハイブリッド式空気/流体システムを介して供給しても差し支えない。流体中の気中標的を捕捉するためのシステムがいくつか市販されている。さらに、粒子を検出領域中に流入させる前に、空気試料の単位当たりで分析物または毒素の粒子をその場で濃縮するためのユニットが組み込まれていてもよい。図4Bの実施の形態に示したような、そのようなユニットの例は液体浴を備えてもよく、したがって、空気試料は、フィルタを通過した後に、検出領域を通る前に、流体中に懸濁されながら液体中に吹き込まれる。
【0036】
他の実施の形態において、空気試料がシステムから排出される前に、ある所定の期間に亘り同じ空気試料を連続的に循環させることを可能にするために、検出領域に空気試料の出口を一時的に向け直してもよい。これによって、空気中の内容物をよりよくサンプリングできるであろう。センサシステム全体を、小型の移動式ハウジング設計内に適合するように製造してもよい。
【0037】
交換式フィルタの実施の形態は、交換式カートリッジの形態であってよい。カートリッジの設計には、所望の用途に応じて異なるフィルタサイズを実施できるように、特定の用途に構造化できる利点がある。そのカートリッジにおいて、フィルタは連続ロールに巻かれていてもよい。センサの基体上の検出領域と同様に、ある期間後、または必要になったときに、フィルタロールは、新たなフィルタ表面を露出するように所定の長さだけ機械的に進行させることができる。フィルタロールのサイズおよび局所環境中に存在する汚染物のレベルのみによって制限されるフィルタの連続ロールが、より効率的な濾過プロセスを提供できる。それゆえ、フィルタを交換したり、または他のメンテナンスを行う必要なく、長期間に亘って、前記器具をその場所に配置することができる。
【0038】
センサシステムの最も重要な構成部材の1つは、化学反応層をモニタするための光学的呼掛け装置である。このセンサは、図2または7Bいずれかに示されるような光ビームによってモニタされ、ここで、入射光の角度および/または波長が、(案内されたモードの)エバネッセント場を励起し、プローブするように特別に選択される。したがって、光学計測器は、光源、光供給システム(一般的に、自由空間またはファイバ)、および検出機器を含む。光源は、レーザからなどの単一波長のものまたは白色光いずれであってもよく、光ファイバなどの他の供給デバイスを用いてもよい。光供給システムは、入射および出射する光学プローブビームをエバネッセント検出場に結合させるために特別に製造された誘電積重体、プリズム、または回折格子を含んでもよい。ある実施の形態によれば、光供給システムは、多数の検出領域の多重モニタのために多数の光プローブビームを生成するための回折光学素子を用いてもよい。光供給システムは、センサからの光信号を送達または収集するための光ファイバを用いてもよい。光検出器は、例えば、感光性アレイ、CCDカメラ、または出射する光ビームの波長または角度のいずれかの変化を検出できる他の器具または手段であってもよい。
【0039】
図5は、GCWエバネッセント場センサに呼び掛けるために用いられる器具の例を示している。多重化の基本は、19×19のビームアレイを生成する回折光学素子であり、レンズがこれらのビームをアレイ式センサ基体の各ウェル上に向ける。
【0040】
この幾何学形状は、多くの追加の光学素子を用いずに、いくつかのセンサを多重化するために回折光学素子を使用する能力を示す。この器具により得られた生物または化学標的の検出に関するデータを以下に詳述する。
【0041】
システムの他の設計が図6Aおよび6Bに図示されている。説明目的のために、レーザなどの光源により光学的に呼び掛けられている、回転センサ基体を持つ実施の形態が示されている。検出器は、光応答信号を捕捉し、センサをモニタしている担当者にデータとフィードバックを提供できる、コンピュータなどの処理装置および/または分析装置に離れてまたは近接して接続されていてもよい。
【0042】
セクションIII − 実施の形態の例
本発明の一般的な概念を説明してきたが、以下は、見込みのある実施の形態の例を説明する。しかしながら、これらの詳細な例は、本発明によるセンサ基体の設計に関する多くの可能性の内のいくつかに過ぎない。
【0043】
A. グレーティング結合導波路(GCW)センサ
GCWセンサは、エバネッセント場技術の優れた例である。いくつかの特徴はGCW装置に特有であるかもしれないが、本発明は、エバネッセント光学場が生体事象に応答するものである任意のエバネッセントに基づく生体センサに関する。したがって、このセンサは、グレーティングまたはプリズム結合(上述したような)を持つ透明な光導波路、表面プラズモンモードを示す金属層、または全反射で光学場を制限する誘電積重体を有していて差し支えない。いずれの場合においても、一般的に実施の形態は、エバネッセント・テールが生体刺激に応答するときに光学モードをモニタすることを含む。気体、液体、固体および多孔質試料中の、物質の選択的検出および/または屈折率変化の検出のための光センサ。ここに引用する、ティーフェンサラー(Tiefenthaler)等の米国特許第4815843号、同第5071248号、同第5738825号、または同第6455004号の各明細書に記載された装置などの類似のGCWセンサ装置の例において、本発明の特定の詳細が完全に理解されるであろう。
【0044】
図7AはGCWセンサ装置の概略図を示している。導波フイルムおよび薄いグレーティングが厚い基体上に配置されている。導波フイルムおよび薄いグレーティングの順序は、置き換えられても、逆であってもよい。さらに、導波路は、連続した単一フイルムである必要はないが、様々な材料と幾何学形状で形成され、実効屈折率案内領域を生じも差し支えない。同様に、特定の用途では、毒素の結合、吸着、または脱着を促進するために表面化学の非常に薄い層を加える必要があるかもしれない。図7Bに示した実施の形態によれば、生物媒体が、GCWセンサと接触する上層(カバー層)として機能する。
【0045】
GCW設計の例はプラスチック基体を含んでよく、ここで、基体の屈折率ns=1.53、グレーティングのピッチΛ=538nm、グレーティングの厚さtg=10nm、導波路の屈折率nf=2.01、導波路の厚さtf=110nm、および上層の屈折率は公称で水の屈折率(ほとんどの実験が行われる溶媒、nc≧1.33)である。これらの数はもちろん、これらのパラメータの広い範囲でも適切な検出動作の要件が満たされるので、単なる公称値である。例えば、グレーティングのピッチは、所望の動作波長および標的に対するデバイスの感度に応じて、約300nmから約500nm以上に及んで差し支えない。基体と導波路の屈折率は、選択する材料に応じて、約1.0(空気)から約3.5までに及んで差し支えない。しかしながら、光学的制限を与えるために、基体の屈折率は通常、制限層の屈折率よりも低い。導波路の厚さは一般に、検出のために単一に制限されたモードを維持するために、動作波長未満である。
【0046】
GCW装置の物理的動作は、自由空間光場と装置の導波モードとの間の相互作用として理解できる。この相互作用は、入射する伝搬ベクトルに対して所定の角度で特定の波長の光を回折するように設計された回折格子によって可能にできる。図7Bに示すようなGCW装置において、特定の角度での特定の波長の入射は、導波路の基本モードに直接回折され、ある(短い)距離だけ伝搬する。グレーティングと導波路との間の結合は運動量を保存する。この詳細な計算が文献に見つけられる。略して、単に、自由空間と導波路モードとの間のx伝搬係数の実部の差はグレーティングの波動ベクトルと等しいことを述べておく。言い換えれば、
【数1】

【0047】
ここで、βgは導波路の伝搬定数であり、βxは自由空間伝搬定数であり、Λはグレーティング周期である。この特定の波長をグレーティングに結合させる同じグレーティングは、入力結合を規定する同じ回折角の法則にしたがって、この光を導波路から出るように結合させるように働く。正味の結果は、GCW装置への光の入射の狭い波長帯の角再方向付けである。この挟帯域応答は、ウッドの変則(Wood anomaly)と称されることもある。このデバイスの設計が、導波路結合の入力角と波長、並びに出力角を決定する。このタイプの機能性は、方向性光濾過と類似しており、光濾過が必要な場合はいつでも用途が明白である。
【0048】
動作の単純さと効率を維持するために、生物検出に用いられる装置は通常、グレーティングのゼロ次の回折次数のみが自由空間を伝搬するように設計される。高次の回折次数は、サブ波長グレーティングを設計することにより避けられる。すなわち、グレーティングのピッチは所望の動作波長よりも小さい。そのような状況において、入力/出力光と導波路モードとの間の結合効率は、高次の次数がシステムからパワーを奪わないので大きい。さらに、ゼロ次の反射および透過ビームのみが自由空間に存在するので、GCWはそれによって、所望の(異常な)波長のほぼ全反射または透過を生じることができる。共鳴反射ビーム(垂直から3°で)が、入射TE光について824nmの近傍で生じ、このときカバー屈折率は1.33(水)である。
【0049】
上述した共鳴の位置(波長と角度の両方における)を導波路の上層の屈折率と合わせる能力によって、生物検出用途のためにGCW装置を使用できることになる。伝搬している導波モードのエバネッセント・テールは、上層の屈折率変化を意味し、それによって、案内されたモードの実効屈折率を変化させる。これによって、上記方程式(1)によるGCWの共鳴条件が変わり、それゆえ、共鳴が新たな波長または角度位置にシフトする。角度と波長との関係が、特定の市販のセンサについて図9に示されている。異なる曲線は、2つの異なるカバー屈折率(水の屈折率=1.33)について、TEおよびTM偏光両方の挙動を示している。
【0050】
B. フイルムベースの基体
小容積のセンサが利用できると、小型の取替え可能な生物病原体または毒素システムの新規の設計が可能になる。任意に示された2つの端部を持つ基体の一部分は、壊したり、基体に取り返しのつかない物理的損傷を与えずに、最長の寸法に沿って、弓または正弦波形状に曲げてもよく、ここで、一端が他端に接触するかほぼ接触する。例えば、個々のセンサ基体は、9mm2×1mm厚に達するように製造してよい。その代わりに、約50μmから約1または2mm厚の高分子フイルムを製造して、センサの全容積をたった1.35mm3まで減少させても差し支えない。この技術は、小型化と移動性が重要な関心事である、軍事防御または民間防衛および安全保障の用途にとって理想的に適している。
【0051】
特別な実施の形態において、高分子フイルムベースのGCWセンサは、機械化された市販の35mmフイルムに適合するように製造できる。そのような解決策では、フイルム業界から商業技術を直ちに利用できる。例えば、そのような実施の形態による検出領域は、フイルムのフレームの表面に類似または同等であると考えてもよい。フイルムのリール、スプロケット、駆動モータおよびカメラや映写機の他の装置または機構を、フイルムのフレームのように各検出領域を前進させるように適応できる。さらに、この手法では、連続ロールが、前の検出表面が使われたときに進行する新たなセンサを提供する、取替え可能なセンサ表面が製造される。
【0052】
例として、GCWセンサが埋め込まれた、約50〜150または200μm厚のフイルムを連続ロールに巻きつけてもよい。この実施の形態が図10に示されている。次いで、ロールを、一度に1つのセンサだけ、器具の光学検出領域を横切るように配置することができる。すなわち、フイルムを、光学検出窓を横切って進行させるときに、プローブの光ビームが各センサを照らす。陽性の病原体結合イベントを経験する、または非特異的結合により最終的に無効になるのに要するような期間に亘って、センサを検出領域の上に留めることができる。センサの連続ロールが利用できることによって、センサロールのサイズおよび局部環境に存在する汚染物によってのみ制限される長期間に亘って、器具をその場に配置することができる。これらの要因は、センサ基体を進行させる速度に影響を与えるであろう。フイルムの実施の形態による基体は、実際にはどのような長さであってもよい。あるものは、幅の少なくとも約5倍、10倍、100倍の長さを有するものとして特徴付けられる。
【0053】
C. 回転基体
センサは実質的にどのような構成で実施しても差し支えないので、フイルムロールが本発明の唯一の見込みのある実施の形態ではない。他の実施の形態としては、以下に限られないが、回転板(例えば、CD−ROM/DVD形式のフォーマットなどのディスク)または回転トレー、もしくは図11A〜Dに示したものなどのマルチセンサ・カートリッジ等が挙げられる。CDやDVD上のように、回転板は、その全面を覆う一連の光感受性センサを有していても、または例えば、ディスク状回転トレーの縁に沿って多数のセンサを有していてもよい。各センサまたはセンサの群は、分析物または毒素を含むかもしれない流体(空気または液体)に曝露されるときに、回転板は、光学装置の検出窓の下に進む。ここに記載したフイルムと回転式の実施の形態の両方に適用できるより一般的な特徴において、基体は、合計で約1mまたは10mの長さ、または少なくとも10mまたは1kmの長さに及ぶ実効連続センサ長さ(すなわち、基体の表面積全体に亘る連続したセンサ領域の長さの合計)を有する。
【0054】
上述したように、多数の毒素を同時に1つの装置で検出できるべきである。ここに記載したフイルムと回転式の実施の形態の両方は、典型的なセンサの設置面積(例えば、9mm2)が比較的小さいので、この点に関して等しく適用できる。図12に示したようにフイルム上にいくつかの検出領域が近接して配置されているので、光学素子は、各検出領域に同時にアクセスするように改良することができる(この場合には回折光学素子により達成された)。光多重化は、光ファイバ束、走査ミラーなどを含む様々な追加の方法を用いて実施できる。
【0055】
センサは、そのような実施の形態にしたがって、1つ以上のフイルムまたはCD基体を収容する使い捨て式カートリッジ内で予め製造し、実行された検出システムのメンテナンスを容易にしても差し支えない。交換用または第2のカートリッジは、第1のカートリッジにあるセンサの全てが使用されたときに適所に挿入してよく、それによって、長期の連続モニタのために一連の新しいセンサを確保できる。
【0056】
セクションIII − システムの観察
本発明のエバネッセント場センサシステムは、様々な生物または化学分子をアッセイするための様々な用途に適用してもよい。
【実施例】
【0057】
実施例1
エバネッセント場センサ技術の最も基本的な実証の1つは、屈折率の異なる化学物質をセンサ表面に亘り流動させるときのセンサ応答のモニタである。図13は、1つのセンサの、その表面での変化する化学物質の屈折率に対する応答を示す。この操作は、実際の毒素が化学反応表面に遭遇したとき、センサ表面で化学反応を伴うであろう応答と同等である。
【0058】

実施例2
センサ表面との生物反応の例として、図14は、生物反応センサと非生物反応センサとの間の応答の差を示す。曲線A(BSA)は非反応性化学的性質を示し、一方で、曲線B(ストレプトアビジン)は生物反応性化学的性質を示す。これは、生物種とセンサとの結合または反応を検知する能力を示すだけでなく、良好な特異性で所望の毒素を適切に検出するための対照センサの使用も示している。
【0059】

実施例3
最近開発された技術(Fang et al., "Ganglioside Microarrays for Toxin Detection," Langmuir 2003, 19, 1500-1505;米国仮特許出願第60/392275号明細書;および米国特許出願公開第2002/0094544A1号明細書)を利用して、ガングリオシドを含有するマイクロメートルサイズのスポットのアレイをセンサ領域内に製造してもよい。ガングリオシド・マイクロアレイは丈夫であり、生物機能を維持し、空気/流体界面を通って引き出されたときに基体に付着したままである。本発明による多数の病原体の同時検出のために、基体の各個別のセンサ領域に異なるガングリオシド化合物(異なる病原体に特異的)を固定化してもよい。
【0060】
図15において、パネルA〜Cは、1つのγ−アミノプロピルシラン−(GAPS)−被覆スライド上の3つの同じマイクロアレイの偽色彩イメージを示している。各マイクロアレイは、DLPC(上の列)、GM1でドープしたDLPC(真ん中の列)、およびGT1bでドープしたDLPC(下の列)の三重のマイクロスポットを有する。GM1はコレラ毒素に関する標的ガングリオシドであり、一方でGT1bは破傷風の標的である。最初のマイクロアレイ(図15A)は、緩衝液のみで処理し、陰性対照として働く。予期したように、どのマイクロスポットにも信号は観察されなかった。第2のマイクロアレイ(図15B)は、コレラ毒素と接触させた(Bサブユニット;FITC−CTx)。GM1ガングリオシドを含有するマイクロスポットとの強力な結合が観察された。マイクロアレイを破傷風毒素(C断片;FITC−TTx)で処理したときに(図15C)、最大量の結合が、この毒素の公知の特異性にしたがって、GTb1ガングリオシドを含有するマイクロスポットに対応することが分かった。いくつかのFITC−TTxがGM1マイクロスポットに結合した。信号は、GT1bマイクロスポットへの結合について観察されたものの約35%であった(図15D)。
【0061】

実施例4
図16は、5つの標的検出領域(この場合、流体ウェル内)を有する、GCWセンサの多重動作を示す。このデータは、多数の個々のセンサを同時かつ即時応答でモニタする能力を示している。各異なる流体に関する各センサの応答は、任意のノイズ(水平偏差)またはセンサ間の差よりあきらかに上である。このことは、連続モニタを実施するために、センサを通り過ぎる流体、この場合は液体を流動させる能力を示している。
【0062】

実施例5
各々が反対に帯電したPSS(ポリスチレンスルホネート)およびPAS(ポリアリルアミン塩酸塩)が明確な単層(それぞれ約4nm)を形成するので、センサ自体の表面感度および動的範囲を定量的に示すことができる。図17は、これらの化合物の交互の層に関する試験結果を要約している(PSS/PAH結合のためのセンサ表面を活性化させるために、最初のPEI層を用いた)。
【0063】
図17は、1.333〜1.400の屈折率変動が可能な、実施例の装置の優れたダイナミックレンジおよび即時応答モニタの利点を示す。センサは、表面に吸着したPSSとPAH種の両方並びに数百ナノメートル以内の表面近くのバルク周囲種を検出できる。異なる化学物質を、間にいずれかの液体(緩衝液または水)で濯ぎながら、センサの上を流したときに、2つのタイプのセンサ応答がある。第1のタイプは周囲の化学物質に対するバルクセンサ応答であり、第2のタイプは表面に吸着した物質に対する応答である。この第2の寄与は、濯ぎ後のみに明白になり、濯ぎ後レベルと曝露前の基線レベルとの間の差で定量化された。図は多数の化学曝露/濯ぎサイクルを示しており、累積する吸着応答レベルが、連続した濯ぎの間の差として計算される。このようにして、図17は、エバネッセント場センサがどのようにバルク化学物質と吸着化学物質の両方に応答できるかを示している。
【0064】

本発明を、一般的に、また実施例により詳細に説明した。当業者には、本発明は必ずしも、開示された特定の実施の形態に制限されないことが理解されよう。本発明の範囲内で用いられる、現在公知の、または開発される同等の構成部材を含む、特許請求の範囲またはそれらの同等物によって定義される本発明の範囲から逸脱せずに、改変および変更が行われてもよい。それゆえ、本発明の範囲から逸脱しない限りは、変更もここに含むものと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は一般的なエバネッセント場センサの概略図である。
【図2】図2は、グレーティング結合導波路(GCW)センサ上で流れ、センサにより検出されるエアゾール病原体の概略図である。
【図3A】図3Aは、その表面に生物または化学反応プローブを有するGCWの概略図であり、エバネッセント場センサの表面が異なる分析物に遭遇したときの、モニタされた信号応答における三段階に亘る変化を示している。最初に、応答は基線レベルにある。分析物が表面を通過するにつれ、いくつかの粒子が結合して、それに関連して信号が増加する。結合後の信号応答は基線レベルよりも高い。
【図3B】図3Bは、結合した分析物の量に比例する、出射光ビームの波長の変化(Δλ)を示している。
【図4A】図4Aは本発明による気流供給システムの概略図である。
【図4B】図4Bは別の気流供給システムの概略図である。
【図5】図5は多重角センサシステム設計の概略図である。
【図6A】図6Aは別のセンサシステム設計の概略図である。
【図6B】図6Bは図6Aに示したシステム設計の変更例である。
【図7A】図7Aは典型的なグレーティング結合導波路(GCW)装置の概略図である。
【図7B】図7BはGCW装置を用いた検出の概略図である。
【図8】図8は、図7Aに示したGCW装置における反射異常を示している。
【図9】図9は、GCWセンサに関する理論角対波長の曲線のプロットである。
【図10】図10は、検出システムの基体がフイルムである、本発明の実施の形態を示している。
【図11A】図11Aは、多数の検出領域が回転式の基体または板上に位置している、本発明の実施の形態の変更例を示している。
【図11B】図11Bは、多数の検出領域が回転式の基体または板上に位置している、本発明の実施の形態の変更例を示している。
【図11C】図11Cは、多数の検出領域が回転式の基体または板上に位置している、本発明の実施の形態の変更例を示している。
【図11D】図11Dは、多数の検出領域が回転式の基体または板上に位置している、本発明の実施の形態の変更例を示している。
【図12】図12は本発明による多重病原体検出システムを示している。
【図13】図13は、化学分析物の存在による屈折率変化の関数としてのGCWセンサの応答を示している。
【図14】図14は、生物反応表面対比生物反応表面に関するGCWセンサの生物応答を示している。
【図15】図15は、A)対照、B)コレラ、およびC)破傷風のガングリオシド・プローブへの毒素結合を示してる。
【図16】図16は、化学的屈折率差による多重センサ動作を示すグラフである。
【図17】図17は、PSS/PAH種の即時応答モニタを示すグラフである。センサは、表面に吸着された両方の種だけでなく、数百ナノメートル以内の表面に近い多量の周囲種も検出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中の生物病原体、化学剤、もしくは他の有害種または毒性種を検出するためにエバネッセント場センサを使用する方法であって、連続的に取替え可能な検出領域を形成する、少なくとも一部は生物または化学反応層を有する基体表面を持つエバネッセント場センサを有するセンサシステムを提供し、個々のセンサアレイを未知の有害な汚染物を含む環境に曝露し、前記センサシステムからの応答をモニタして、汚染物レベルを測定する各工程を有してなる方法。
【請求項2】
生物病原体、化学剤、もしくは他の有害種または毒性種を検出するためのセンサシステムであって、1)連続的に取替え可能な検出領域を形成する、少なくとも一部は生物または化学反応層を持つ基体表面を有するエバネッセント場センサ、2)光源、光供給システム、および検出器具を有する、前記生物または化学反応層をモニタするための光学呼掛け装置、および3)生物または化学分析物を前記検出領域に搬送するように設計された巨視的または微視的流体通路いずれかを有する気流供給システムを備えたセンサシステム。
【請求項3】
前記生物または化学反応層が、関心のある生物または化学分子と反応して、質量または屈折率いずれかの変化を生じるように設計されていることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記質量の変化が、関心のある前記化学分子の結合、または前記センサの表面からの元々そこにあった化学物質の除去いずれかによるものであることを特徴とする請求項1記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記基体が反応体領域および非反応体領域を有することを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記エバネッセント場センサが、少なくとも2つ以上の連続組のセンサアレイをその上に有する連続基体を有し、各々のアレイが生物または化学検出のための所定の組の多数の領域を有することを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項7】
引張強度および柔軟性を有する前記基体が、連続様式で単一ユニットとして分配装置から供給することができ、前記基体が、分割せずに最長の寸法に沿った完全に延ばされた長さの一部分に構成可能であり、毒素標的との分子相互作用アッセイを行うのに適した連続体としてそのような構成から取り出せることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記エバネッセント場センサが、回転可能な板または光学的透明なフイルムいずれかの形態にある基体を有することを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項9】
各々が、連続して光学的に呼び掛けられる1つ以上の検出領域を有する、個々の基体の集合体を含むことを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記検出領域の前記生物または化学反応層が、特定の生物または化学分析物と反応するように特異的に処方されていることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記生物または化学反応層におけるプローブが、高分子マトリクス、リガンド依存性イオンチャンネルを有する生体膜、または化学化合物を含むことを特徴とする請求項1記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記生物または化学反応層におけるプローブが、糖脂質、ガングリオシド、脂質生体膜、抗体、免疫レセプタを含むことを特徴とする請求項10記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記生物または化学反応層が、関心のある化学分子を吸着するように設計されていることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記センサシステムが移動性プラットホーム上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のセンサシステム。
【請求項15】
前記センサが、少なくとも1フェムトモル毎リットル、または少なくとも1有機体毎リットルいずれかのレベルで試料中に存在する生物毒素を検出できることを特徴とする請求項1記載のセンサシステム。
【請求項16】
前記センサが、少なくとも50〜100アトモル毎リットルのレベルで試料中に存在する化学毒素を検出できることを特徴とする請求項15記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記センサが、基体を被覆する実効屈折率導波路領域によって形成された導波路構造体であり、該導波路領域が前記基体の屈折率よりも少なくとも0.1%高い屈折率を有し、回折格子が前記導波路構造体内またはその近いに含まれ、生物または化学反応層が前記導波路領域を覆い、該生物または化学反応層が前記関心のある毒素と相互作用できることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項18】
前記センサが、表面プラズモンモードを支持できる金属フイルムにより被覆された基体であることを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記光供給システムが、回折格子、プリズム、または入射し出射する光プローブビームをエバネッセント検出場に結合させるために特別に製造された誘電性積重体を含むことを特徴とする請求項1または2記載のセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−501402(P2007−501402A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529371(P2006−529371)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/006046
【国際公開番号】WO2005/012886
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】