説明

生物学的及び植物性液体の抗酸化力の決定方法

唾液、血清、血漿、尿、汗、涙等の生物学的液体、及び果物、野菜、それらからの飲み物等の植物性液体の抗酸化力を決定するための方法を記載する。前述の方法は、分析的な観点から特定の複雑さを示す唾液の抗酸化力を評価する場合に特に適していることが分かった。更に、本発明は、特定の試薬、及び前述の試薬を含む前述の方法を実施するためのキットに関するものである。上記試薬は、無機ジルコニウム塩と、少なくとも1つの適した溶媒、例えば水・アルコール混合物とを含有しており、リン酸塩の存在に起因する妨害に対処する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液、血清、血漿、尿、汗、涙等の生物学的液体、並びに果物及び野菜等の植物からの液体、及びそれらに由来する飲み物の抗酸化力を決定するための方法に関するものである。前述の方法は、分析的な観点から特定の複雑さを示す唾液の抗酸化力を評価する場合に特に適していることが証明されている。
【0002】
本発明はまた、前述の方法を実施するためのキットに関するものである。
【背景技術】
【0003】
唾液は、食物、飲み物又は揮発性物質が摂取される場合に外的環境と接触する最初の生物学的液体である。その外観は、透明で、わずかに酸性の粘液性漿液タイプの液体であり、主要な腺(耳下腺、顎下腺及び舌下腺)の分泌が歯肉溝滲出液と組み合わさって生じる。
【0004】
24時間に亘って生産される唾液の量は、1〜1.5リットルの幅がある。睡眠中の唾液の流量は、実質的に無視できるものであり、一方、起きている間の流量は、安静時で平均0.3ml/minであり、刺激下では、それが7ml/minにまで達することがある。
【0005】
唾液流量は、多くの変動を受けており、実際には、概日リズムだけでなく季節のリズムも観察され、それは、夏が低く、冬が高い。また、流量は、水和状態、年齢、性別(女性はベースライン分泌及び刺激分泌の両方が男性より低い[1])、光度(暗闇では30〜40%減少[2])及び喫煙等の特定の習慣によっても変わり、局所刺激[2]及びチューインガムの使用に従って分泌を増加させる。
【0006】
安静時(それ故に食物及び/又は咀嚼による刺激なし)での各種唾液腺による分泌全体への寄与は、耳下腺が20%、顎下腺が65%、舌下腺が7〜8%である。
【0007】
しかしながら、刺激中、優勢な分泌は明らかに耳下腺であり、分泌の約50%に寄与する。
【0008】
一般に、唾液のpHは、6〜7の幅があるものの、低下した流量の条件下では、pHが5.3に下がり、増加した流量では、それが7.8に上昇する[1]。一般的な法則として、耳下腺唾液は、アミラーゼ、プロリンに富むタンパク質及び凝集素の含量が高く、リゾチーム及び糖タンパク質の量が少ない。舌下腺及び顎下腺は、代わりに、ムチン(MG1及びMG2)及びリゾチームを特に生産する。
【0009】
唾液は、主に5つの主要な機能を有しており、即ち、潤滑及び保護、緩衝及びクリアランス、歯の完全性の維持、抗菌作用、最後に風味の識別及び消化である。明らかに、これら全ての機能は、別々に考えることができず、統合されたシステム[3]、即ち唾液それ自体の一部を形成しており、これら機能の一つが、その抗酸化作用である。この後者の機能は、唾液流量及び特定の唾液成分の種類の両方によって決まる。
【0010】
異なる種類の分泌に関し、水溶性抗酸化物質への最も大きな寄与は、耳下腺によるものであるが、脂溶性抗酸化物質等の他のものは、大部分が顎下腺及び舌下腺由来である。全体的に見ると、最も分泌される抗酸化物質は、本来親水性であり、他の種類は、全唾液量の10%未満を提供する[5]。
【0011】
それ故に、抗酸化物質の観点から、唾液分泌物は、各種成分及び酵素を含み、その中で最も重要なものは、尿酸(UA)及びペルオキシダーゼ(POXs)であり、両者は水溶性である。
【0012】
UAは、唾液の抗酸化物質量の約70%に相当し、その中に含まれる他の水溶性抗酸化物質、即ちアスコルビン酸は、UAと比べて二次的に又は補助的に重要なものであるように見える[5]。しかしながら、歯肉体液中におけるアスコルビン酸の濃度は、血漿中のものの3倍に達するように思われる[6]。血漿と唾液UA間には相関があり、血漿源が広く行き渡っている。
【0013】
酵素に関し、最も重要なものはPOXsである。しかしながら、グルタチオンペルオキシダーゼ(gluPOx)及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等の他の酵素も単離されている[7]。これら後者は、体内で最も重要な抗酸化系の一つである還元グルタチオン(GSH)の生産、消費及び再生を支持する酵素である;それは、特に体液全体、延いては、限られた量ではあるが、唾液にも存在する全ての細胞で作用する。
【0014】
重量に関して、POXsは、全唾液タンパク質のわずか0.01%に相当し、本質的には、実際の唾液ペルオキシダーゼ(POX)及びミエロペルオキシダーゼの2種が存在する。この後者は、口腔の炎症領域におけるリンパ球によって生成されるラクトペルオキシダーゼと類似している[8,9]。POXsには、二重の規則がある:
a)細菌及び白血球により生成されるHレベルの制御;
b)特定細菌に特異的な抗菌作用。
【0015】
は、強力な酸化剤(どんな細胞膜をも越える能力を持つ)であり、局所的にも胃腸系においても有毒である。実際、それは、下記反応:
【化1】


に従って、チオシアン酸イオン(SCN、即ち、唾液腺によって分泌されるシアン化物[CN]の解毒生成物)を酸化させることができる。HOSCN及びその抱合物OSCNは、それらが抗菌作用を持つ強力な酸化剤である[10]という点において、かなりの細胞傷害能力を有する[9];それらは、そのスルフィドリル基を酸化させることによって細菌性解糖を阻害する。
【0016】
全体的に見ると、POX、ラクトペルオキシダーゼ及びH、並びにSCNの組み合わせは、広いpH範囲内で機能できるため、H単独よりも強力である。
【0017】
実際、酸性環境下において、プロトン化形態HOSCNは、より活性があり(より脂溶性になる)、一方、Hは、中性pHでより活性がある[10]。見落としてはならないのが、HとOSCN間の反応において、ΣO(一重項酸素)もある程度生成され、それもかなりの酸化力を有するという事実である[11]。
【0018】
にかかわる他の反応は、HClO(次亜塩素酸)を形成するために塩素を用いることである;この反応は、好中球において、ミエロペルオキシダーゼの作用によって起こり、細菌叢に逆らって作用できる殺菌機序の一つである。
【0019】
しかしながら、酸化過程は、保護的か又は有害である場合があり、それ故、その保護的な潜在能力を最も多く利用するために制御される必要がある。
【0020】
上述のことから、唾液の抗酸化力は、評価が困難である様々な複合体成分に由来している。それにもかかわらず、それらの複合活性の総合的解析は、唾液の防御能力を決定する際に重要な指標である。
【0021】
以下の表1は、抗酸化保護に関係する安静及び刺激条件下での顕著な唾液パラメータの一部を示す[7]。
【0022】
【表1】

【0023】
その値は、18〜54歳の見掛け上健康そうな19人の被験者[7]に関係している。唾液は、耳下腺唾液に関し、カールソン・クリッテンデンカップを用いて集められ、一方、舌下腺及び顎下腺唾液については、穏やかな吸引が使用された。
【0024】
刺激は、滴状(1ml)の2%クエン酸溶液を30秒間隔で舌背に適用することで達成された。両方の方法によって数分間に亘り収集を行ったが、正確な期間を特定しなかった。
【0025】
注意すべきことは、酸化バランスの状態が、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ酵素)、POX(ペルオキシダーゼ)、UA、TAS(総抗酸化状態)として表され、また、最終的に、チオール基複合体(即ち、還元能力を持つ硫黄アミノ酸/ペプチド/タンパク質基)によって表されたことである。
【0026】
また、注目すべきことは、欄の右側にある[T]値、即ち流量と濃度の積である。この値は、その著者によって与えられなかったが、データを適切に処理することによって導き出され、それ故に、起きていることのより完全な検査を可能にする。
【0027】
このTの評価から、濃度は刺激に関し減少する傾向がある(SODを除く)一方、全成分の総量は、代わりに減少する傾向のあるUAを除き、増加する傾向がある(POX34%、SOD124%、TAS36%、チオール基50%)という結果になる。
【0028】
従って、唾液中の主たる抗酸化物質は、濃度として表すことができず、総量として表されるべきであるように思われる。更に、TASとして表現される総抗酸化力もまた、より正確な測定を達成するため、濃度としてではなく、総容量として表されるべきである。
【0029】
他の研究[5]では、表2に示される25〜50歳の見掛け上健康そうな28人の被験者に関し、TAS(総抗酸化状態又はTAC容量又はTAA活性)を評価することによって、唾液の抗酸化力を決定した。この実験では、先の実験と比べて異なる方法で、15分間に亘り、唾液を集めた。安静時の収集では、試験者は、単に容器内に唾を飛ばし、一方、刺激条件下では、パラフィン1gを噛み、次いで2分毎に15分間被験者に適当な容器内へ唾を吐かせることによって、収集を行った。
【0030】
【表2】

【0031】
表1の場合と同様に、流体と濃度の積計算[T]は、表1中の値のものと同程度の単位で与えられる。先の研究と同様に、刺激は、濃度を減少させるが、総量を増加させることが分かる。
【0032】
上昇する他の重要な要素は、流量(安静時流量及び刺激流量の両方)の差によって表され、それは、負又は正の総量「増幅器」のように振る舞う。
【0033】
この点において、0.42ml/min(表1)から0.33ml/min(表2)への流量低下[およそ20%の低下に相当する]は、およそ70%のTASの低下に相当する0.28mM(表1)から0.08mM(表2)へのTSA総量の変更をもたらす。その差は、流量の刺激に比例して更に増幅される;流量が2倍増加すると、総TASは8倍増加する。
【0034】
示された例から、実際のTASの推定を、過度の増幅を避けるため場合により制限される標準化流量に関して、行うべきである。
【0035】
同一の実験において、以下の表3を参照すると、歯周病の一部のケースでは、その本質的な疾患基準の概要が述べられていないと考えられた(軽度から中程度の歯周病の場合、口腔が不衛生の場合)。
【0036】
【表3】

【0037】
その著者は、以下のように結論を出す:
a)歯周病患者の唾液は、健常者のものと同一の抗酸化力を有する;
b)UAは、唾液の抗酸化力とよく関連している。
【0038】
実際には、T値を考慮し、その値を表1のものと比較することによって、以下のことが分かる:
i)健常者の唾液刺激は、TASを3.5倍増加させ、一方、歯周病患者では、その増加が2.5倍である(70%低い);
ii)健常者の唾液刺激は、UAを2.8倍増加させ、一方、疾患を患う場合では、2.0倍だけ増加させる(70%低い);アスコルビン酸塩についても同様のことをいうことができる(70%低い);アルブミンについては、その差が20%低い。
【0039】
言い換えれば、これらの実験条件下で、正確に、反対のこと、即ち、歯周病を患う被験者の抗酸化防御を弱めるということが実証されており、最近広く証明されている事実である[12]。
【0040】
唾液の抗酸化力の系統的評価は、1990年代の終わりまで遡り、実際のところ、血清又は血漿に用いたものと同一の方法の使用に頼っている[13,14,15]。
【0041】
大部分については、これら方法が、POXs、UA、GSH、ビタミン等の単一成分の調査、又はイソプロスタン、TBARS(チオバルビツール反応性物質)、MDA(マロニルジアルデヒド)及びヒドロペルオキシド等の酸化的付加物の調査に焦点を合わせた。
【0042】
代わりに抗酸化能力を全体として評価する既知の方法は、分光測光、化学発光、ボルタンメトリーという3つの異なるタイプがある。
【0043】
分光測光法は、血液の決定に使用されるものと同一であり、ラジカル型物質の反応性の原則を利用する。
【0044】
これら物質は、極めて反応性があり、それらを捕獲し、その捕獲を受けて色を変える受容体に速やかに結合する傾向がある。評価されるべき液体中に含まれる抗酸化物質(還元力を有する)は、それらの電子を、既知の量でサンプルへ意図的に加えられたラジカル型物質に引き渡す傾向があるであろう;それ故に、その受容体は、それらを捕獲することができないようになる。このようにして着色の程度を弱めることになる。
【0045】
通常の受容体[5]は、2,2’アジノビス(3−エチルベンズチアゾリン6スルホナート)、即ちABTSであり、ラジカル捕獲時にラジカルイオンABTSに変換され、色が青緑になる。UV領域の他、660nm、734nm及び820nmで読み取れる。通常、メトヘモグロビンを酸化できる物として使用し、Hを酸化する物として使用する。
【0046】
液体中での上記2つの物の組み合わせは、フェントン反応を起こし、生じるラジカル(OH・)をABTSが捕獲し、ABTSに変換される。通常、この種類の反応の場合、既知の抗酸化力を持つ標準溶液について言及される。最も使用される系は、トロロクス、即ちビタミンEの可溶性類似体について言及するものである。
【0047】
従って、抗酸化能は、TEAC(即ちトロロクス当量抗酸化力)として表される;その著者によれば、この方法に起因する値を、TAC(総抗酸化能力)、又はTAA(総抗酸化活性)又はTAS(総抗酸化状態)と称する。方法の改善のため部分的に修飾された、反応性を示す変化するものは、同一方法で得られる値が対照の場合でさえも非常に異なることが多くなる。
【0048】
従って、その比較は、同一の実験条件下で行われる実験についてのみ信頼できるものである。即ち、異なる研究室から生じるデータは、ほとんど比較できない。
【0049】
第2の方法は、化学発光に基づくものである[13,15]。
【0050】
HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)は、Hを用いたルミノールの酸化を触媒する。その反応によって生じる光は、光信号を強化する反応におけるp−ヨードフェノールの存在下において増幅される。
【0051】
この信号は、液体中における抗酸化物質の存在によって弱めることができ、その弱体化は、抗酸化物質を使い果すまで残っている。抗酸化能力は、既知の抗酸化物質を用いた標準曲線によってパラメータ化される。
【0052】
この同一の原理に基づいた更なる方法は、液体中に存在する抗酸化物質の能力を利用し、イソルミノール/ミエロペルオキシダーゼによるヒドロペルオキシダーゼ(酸化生成物であり、それ故に酸化の間接的な指標である)間の接触によって生じる発光を阻害する[14]。
【0053】
また、フェントン反応は、その反応を引き起こす液体に応じて抗酸化物質が存在する場合に低減できるOHラジカルの形成によって、化学発光刺激を引き起こすことができる[16]。しかしながら、この方法は、異なる研究室が健常人に関してさえも全く比較できない異なる結果を与えるという点において、ほとんど再現できないことが証明された[13,15]。
【0054】
第3のタイプは、サイクリック・ボルタンメトリー[17]に基づくものであり、唾液中の低分子量抗酸化物質の存在に対して感受性がある。評価されるべきサンプルを、3つの電極を含有するキュベット中に置く;支持電極(炭素)、参照電極(Ag/AgCl)及び補助電極(Pt)である。一定電位の参照電極への印加は、電位(サイクリック・ボルタンメトリー)を記録できるようにし、その値は、液体中に含まれる抗酸化物質の電子を提供する能力に応じている。
【0055】
しかしながら、全ての抗酸化物質が、参照電極によって検知可能な量の電子を提供することができるわけではない;それ故に、その測定は、部分的なものだけであり、時々、特定の抗酸化物質(GSH型)に対して特異的な電極に頼る必要がある。
【0056】
また、FRAP(第二鉄還元/抗酸化力)テストも知られており、それは、血漿の還元力を測定するため、Benzin及びStrainによって初めて確立され、その後、植物種の抗酸化能力の分析に適用されている。そのテストは、強い青色の生成物を形成するための第二鉄2,4,6−トリピリジル−s−トリアジン(TPTZ)の還元を測定する(Guo et al,2003;Jimenez−Escrig et al.,2001)。その還元力は、ポリフェノールにおけるヒドロキシル化の程度及び結合の程度に関係している(Pulido et al.,2000)。しかしながら、FRAPテストは、チオール及びタンパク質等の水素転移(ラジカル失活)により作用する化合物を検出することができない。これは、特に血清中において、結果の過小評価につながる。更に、強酸性pHは、溶液中の鉄を維持するためにFRAPテストにおいて使用されるが、優勢な反応機構における変化につながり、結果的に、FRAPテストの結果は、他の抗酸化テストの測定と比較できないということを暗示している。FRAPは、酸化還元反応がかなり迅速に(4〜6分間で)起こるという前提に基づいているが、実際には、これは、どんな時も起こらない。このことは、このテストを、分析に要する時間に強く依存させる。
【0057】
また、BAP(生物学的抗酸化能)テストも知られており、それは、血漿血清の抗酸化力を、第二鉄イオンから第一鉄イオンに還元する後者の能力の観点から評価し、測光法によって適切な色原体の色変化を検出する。
【0058】
それ故、BAPテストでは、分析されるべき血清サンプルを、第二鉄イオン(FeCl、塩化第二鉄)の源を特定の色原体(硫黄系化合物)に加えることで得られる着色溶液中に溶解させる。短時間のインキュベーション(5分)後、その溶液は色が抜ける;この脱色は更に顕著になり、試験血清の成分は、最初に存在し且つ検討された時間間隔での着色複合体の形成に関与する第二鉄イオンを還元することができたであろう。この脱色の程度を測光評価することによって、還元された第二鉄イオンの量、要するに、キャリブレーターとして知られる参照血清に対する試験血清の還元能力又は抗酸化力を測定することが可能である。その試験結果、即ち血清の鉄還元「生理学的」抗酸化力は、下記式:
【化2】


に従って、サンプル1リットル当たり第二鉄イオンを還元する抗酸化物質のミリ当量で表される。ここで、
・[Abs]は、505nmで測定される溶液の吸光度値であり;
・[キャリブレーター]は、mEq/lで表されるキャリブレーター濃度である。
【0059】
血清1mlが少なくとも1.8μmol/lのビタミンCを還元するのに十分であると考えられていることを念頭に置くと、BAPの結果は、次に、以下に示す参照表と比較される:
【0060】
【表4】

【0061】
BAPテストは、1000〜3000μmol/lの間、線形であると言明された。
【0062】
しかしながら、このテストは、出所及び種類が不明である前述したキャリブレーターの使用に依存している他、特には生物学的液体の場合において、分析されるべきサンプルの組成複雑さを考慮していないことが指摘されている。ここには、第二鉄イオンの還元を妨げる化合物が存在するため、その実際の値について、結果として生じる抗酸化力の決定を変化させ、改ざんし、それ故に、実際のサンプルの抗酸化状態についての不正確な評価を招く。
【発明の概要】
【0063】
そこで、上記問題に関して専用の論文の考察に対して上述したことから、本発明の目的は、生物学的及び植物性液体における抗酸化力のレベルを、確実に、再現性良く、繰り返して、そして、経済的に評価できるようにする方法を特定することにあり、このようにして、上述した既知の方法に関する不利を克服する。
【0064】
上述の目的は、請求項1に示されるように、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための試薬であって、少なくとも1つの無機ジルコニウム塩及び少なくとも1つの適した溶媒を含むものによって達成された。
【0065】
本発明の他の態様は、請求項6に示されるように、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための方法に関するものである。
【0066】
本発明の他の態様は、請求項17に示されるように、前述の方法を実施するためのキットに関するものである。
【0067】
本発明の特徴及び利点は、以下に与えられる詳細な説明と、非限定的な例証目的で提供される実施例とから明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の試薬及び方法の両方は、専ら血漿の抗酸化力の評価に使用されるBAPテストの基礎になる原理から始まることにより、前述のBAPテストだけでなく上述した既知技術の方法とも関係がある既知の不利すべてを、以下広範囲に亘って分かるように、驚くほど克服できるようにしたが、同時に、全く予期せぬ追加の利点も達成された。
【0069】
既に述べたように、チオシアン酸塩(SCN)とFe3+間の反応を阻害する能力に基づくBAPテストから始めて、発明者は、まず、この後者が提供できる結果に関する情報を収集するため、前述のテストの方法論の顕著な特徴について研究した。次に、検討した全ての態様における有効性及び著しい改善を証明するため、本発明の方法によって得られた結果との比較に前述の情報を用いた。
【0070】
知られているように、チオシアン酸塩(SCN)は、Fe3+と反応して、フェロチオシアン酸塩錯体(Fe[(SCN)]3−)を生成する;この錯体は、色が赤褐色であり、波長505nmのUV−Vis分光光度計によって検出される。評価されるべき流体サンプル内の還元物質は、Fe3+をFe2+に還元するため、チオシアン酸塩を用いた反応から除去され、それ故に、サンプル吸光度を修正する。
【0071】
本発明の発明者は、驚いたことに、第二鉄イオン還元を妨げる化合物(このため、その実際の値に関して得られる抗酸化力の決定を変え、その結果、実際には、実際のサンプルの抗酸化状態の不正確な決定につながる)が生物学的及び直物性液体サンプル中のリン酸塩であることを見出した。
【0072】
特に、発明者は、唾液が、例えば、1から50mg/100mlを超えるまでの幅のあるリン酸塩含量を有しているが、血清中では、その量が2.6〜4.5mg/100mlであることに注目した。従って、これらリン酸塩の量は絶対に無視できないので、実際の誤検出を生じさせるような、BAPテストによる抗酸化力の全体として不正確で且つ不明確な測定の根底にある原因を理解することができる。
【0073】
できるだけ繰り返し可能で且つ再現可能な抗酸化力の決定を、とりわけ分析されるべき生物学的液体が唾液である場合に、達成するために生じる更なる問題は、ml/minの単位として唾液流量を標準化することである。なぜなら、上述したように、抗酸化力は、流量それ自体と間接的に比例するように変化するからである。本発明の発明者は、驚いたことに、流量が0.70ml/min〜1.50ml/minでは、抗酸化力を評価する濃度が、後に続く例2及び例3において広く説明され実証されるように、比較できるだけでなく、実際に適合していることを見出した。
【0074】
従って、本発明は、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための試薬であって、少なくとも1つの無機ジルコニウム塩及び少なくとも1つの適した溶媒を含むものを提供する。この点において、前述の試薬の使用は、生物学的及び植物性液体サンプル中のリン酸塩の存在をマスクできるようにし、それ故、前述のリン酸塩を溶液中に維持しつつ、即ち、専用の分離工程を不利に招くであろう沈殿物を回避しつつ、同時に、前述のリン酸塩が抗酸化力の決定を妨げることを有利に回避する。この結果は、診断目的で、特には分析されるべき生物学的液体が唾液である場合(エナメルの再石灰化/脱塩の平衡は、上述の通り、実に>50mg/dlのリン酸塩量を生成することができる)に、極めて重要である。これに比べて、BAPテストは、唾液の真の抗酸化力を決定するのに全体として信頼できないことを証明しており、例4において評価されるようにその結果を実に57%の差で過大評価する。血清に関して、平均リン酸塩量は、標準状態下で4.5mg/mlを超えない。それにもかかわらず、BAPによって決定された総抗酸化力の値は、この場合も例4において評価されるように、33%の差で過大評価された。
【0075】
従って、Fe3+に対するリン酸塩のマスキング作用は、本発明の発明者によって研究されて明らかなように、興味のある液体の抗酸化力の決定のたびに考慮すべきである(FRAPテストも参照[21])。このことから、本発明の試薬のために無機ジルコニウム塩を選択したことがどれほど意外で有利であるのか正当に認識することができる。
【0076】
好ましくは、前述の試薬において、前述の無機ジルコニウム塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。更に好ましくは、前述の無機ジルコニウム塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
好ましい実施態様によれば、前述の無機ジルコニウム塩が、ZrClである。
【0078】
好ましくは、前述の少なくとも1つの適切な溶媒が、水・低級アルコール混合物であり、ここで、低級アルコールは、線状又は枝分れ(C−C)アルコールを意味する。更に好ましくは、それは、水・(C−C)アルコール混合物である。好ましい実施態様によれば、前述の溶媒は、水・イソプロピルアルコール混合物である。
【0079】
好ましくは、前述の試薬は、チオシアン酸塩を更に含み、更に好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属によるチオシアン酸無機塩を含む。
【0080】
更なる態様において、本発明は、与えられた例においても広く実証されるように、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するために前述の試薬を使用することに関する。
【0081】
本発明の他の態様は、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための方法であって、
a)チオシアン酸塩アルコール溶液を提供する工程と;
b)上述の試薬を少なくとも1つ加える工程と;
c)第二鉄塩水溶液を加える工程と;
d)このようにして得られた溶液の吸光度を測定する工程と;
e)生物学的又は植物性液体サンプルを加える工程と;
f)上記サンプルを含有する溶液の吸光度を測定する工程と;
g)工程f)での吸光度から工程d)での吸光度を引く工程と;
h)このようにして得られた吸光度値をビタミンCの標準較正曲線にプロットし、ランベルト・ベールの法則に従い、試験中の液体の抗酸化力の値をビタミンC当量として得る工程と
を含む方法に関するものである。
【0082】
本発明のため、「生物学的又は植物性液体」の語は、唾液、血清、血漿、尿、涙、汗、果物に由来する液体、野菜、食物、ワイン、ビール、飲み物、コーヒー、紅茶等の動物又は植物由来のあらゆる液体を意味する。好ましくは、前述の生物学的液体が、唾液、血清、血漿、尿又は汗である。
【0083】
上述の試薬を用いることにより、リン酸塩に起因する妨害が完全且つ効果的に排除されるため、生物学的及び植物性液体の抗酸化力は、サンプルの吸光度を取得することによって、迅速で、非常に単純で、繰り返し可能で、再現可能な方法で決定できることを、驚いたことに且つ有利に観察した。その上、本発明の方法は、出所及び種類が不明であるが、BAPテストでは血清に必要不可欠である、キャリブレーター等の追加の参照物質を有利に必要としない。
【0084】
好ましくは、前述の較正曲線が、UV−Vis分光光度計に既に存在しており、そのため、問題になっている液体の抗酸化力の値をビタミンC当量(μmol/l)として自動的に供給する。実際、後に続く例1A〜1Dにおいて広く見られるように、ビタミンCの較正曲線は、第二鉄塩濃度の変化及び/又はジルコニウム塩濃度の変化の後でさえ、極めて安定であることが証明された。
【0085】
好ましくは、前述の第二鉄塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩及び硝酸塩からなる群から選択される。好ましい実施態様によれば、前述の第二鉄塩が硝酸塩である。
【0086】
好ましくは、試薬b)の前述の無機ジルコニウム塩と前述の第二鉄塩が、20:1〜5:1のモル比にある。更に好ましくは、前述の無機ジルコニウム塩と前述の第二鉄塩が、15:1〜8:1のモル比にある。好ましい実施態様によれば、前述の無機ジルコニウム塩と前述の第二鉄塩が、約10:1のモル比にある。
【0087】
よって、これらモル比は、Fe3+イオンに対してジルコニウムが過剰であることを意味しており、これは、例6においても分かるように、それらを溶液中に維持し、それらの沈殿を防ぐだけでなく、ジルコニウム塩によってリン酸塩を効果的にマスクする課題を著しく容易にするためである。
【0088】
好ましくは、前述の生物学的又は植物性液体のサンプルと工程c)後に得られる溶液が、1:250〜1:50の体積比にある。更に好ましくは、前述の生物学的又は植物性液体のサンプルと工程c)後に得られる溶液が、1:180〜1:75の体積比にある。更に一層好ましくは、前述の生物学的又は植物性液体のサンプルと工程c)後に得られる溶液が、1:120〜1:90の体積比にある。
【0089】
これらの比は、実際に、体積濃度決定が、更なる希釈を必要とせず、ビタミンCの較正曲線に設定された範囲(500〜6000μmol/l)に直接含まれる可能性を増大させることが分かった。
【0090】
生物学的又は直物性液体サンプルに関しては、その分析がUV−Vis分光光度計で行われるため、キュベット内への導入に適した体積を考慮する。この関連で、唾液、涙及び汗では、約5μlの体積が好ましく、血液(血清又は血漿)では10μl、尿では10μlであるが、脱イオン化HOを用いて1:5に希釈した後であることに注意した。
【0091】
本発明の他の態様は、上述の方法を実施するためのキットであって、
i)少なくとも1つの上述の試薬;
ii)少なくとも1つのチオシアン酸塩アルコール溶液;
iii)少なくとも1つの第二鉄塩の水溶液;及び
iv)抗酸化力の決定を行うための指示を含む図解入りの小冊子
を含むキットに関するものである。
【0092】
その有利な結果は、BAPテストと対照的に本発明のキットがキャリブレーター、即ち参照血清を全く含まないという点で、生物学的又は植物性液体の抗酸化力の決定に要する成分を著しく単純にすることであった。実際、本発明の方法は、ビタミンCの較正曲線を直接参照するため、血清や他のどんな液体にも参照サンプルの必要性がなく、それ故、以下に示す例、特に例4及び5においても実証されるように、より優れた繰り返し性、より優れた再現性、費用の低減、及び結果の優れた信頼性を含めた一連の顕著な利点が達成される。
【0093】
好ましくは、前述のi)少なくとも1つの試薬と、前述のii)少なくとも1つのチオシアン酸塩アルコール溶液とが、単一の溶液(1)である。
【0094】
好ましい実施態様において、前述の図解入り小冊子が、生物学的及び植物性液体サンプルを集めるための指示を更に含む。更に好ましくは、前述の生物学的液体が唾液である場合に、サンプル収集のための前述の更なる指示は、前述の収集が前述の唾液流量0.70〜1.50ml/minの条件下で行われることを示す。更に一層好ましくは、サンプル収集のための前述の更なる指示は、前述の収集が前述の唾液流量1.00〜1.30ml/minの条件下で行われることを示す。好ましい実施態様において、前述の唾液流量は、約1.20ml/minである。
【0095】
本発明の方法について好適で且つ有利であると特定された全ての態様はまた、キット及びその使用についても同様に好適で且つ有利であると認められることが理解されるはずである。
【0096】
以下に、本発明の実施例を非限定的な例証目的で提供する。
【実施例】
【0097】
例1.本発明に従う、唾液、血漿及び尿の抗酸化力の決定方法
以下に示す成分を調製した:
【0098】
【表5】

【0099】
塩化ジルコニウム溶液及びチオシアン酸塩アルコール溶液を組み合わせて溶液(1)を調製した;次いで、UV−Vis分光光度分析用のキュベット中にこの溶液(1)を導入した。その後、溶液(2)を加え、それ故に、色が透明から赤褐色に変化した。その強度は、チオシアン酸塩と反応したFe3+の存在に比例した。直後に、分光光度計によって測定した吸光度の最大ピークに対応する波長がこの場合で505nmであることを確認した。
【0100】
その後、キュベットにサンプルも加えた。5分後、吸光度の読み取りを繰り返した。一番目と二番目の吸光度読み取り間の差は、ランベルト・ベールの法則によって、その濃度を、ビタミンCのμmol/lを単位として得ることができるようにし、それ故に、試験サンプルの抗酸化力が得られた。
【0101】
この点において、後に続く例1Aにおいて実証されるように、500〜6000μmol/l間で線形の値を示したため、上記方法を較正するための基準としてビタミンCを用いた。濃度>6000μmol/lでは、サンプルの値がビタミンCの500〜6000μmol/lの範囲に入るまで、サンプルを脱イオン水によって適切に希釈した。
【0102】
例1A.本発明の方法の線形性
例1Aの目的は、関連液体の抗酸化力を決定する対照として使用されるビタミンCの500〜6000μmol/lの値の間で、本発明の方法の決定の線形性を実証することであった。
【0103】
第一に、溶液(1)及び(2)一緒の最大吸光度値は、例1のように、CV<1%の場合、7134±67.7μmol/lの濃度に相当したことに注目した(ここで、CVは、変動係数である)。この値は、溶液(1)及び(2)一緒の読み取りからブランクの読み取り、即ち溶液(1)単独の読み取りを引くことによって得られた。
【0104】
ビタミンCのスカラー量に応じて較正曲線を展開するため、500μmol/lから開始し、脱塩水中の濃縮溶液(35.22mg/ml)においてビタミンCを脱塩水によって希釈することにより得られる乗数(2,4,8,10,12)を用いたスカラー濃度にて、さまざまなビタミンCの溶液を調製した。
【0105】
各希釈物について測定を5回行い、その測定は異なる連続によって取られた;サンプルの半分については、増大する濃度(500から6000μmol/lまで)で、他の半分については、減少する濃度(6000から500μmol/lまで)であった。全ての測定は、同じ日に、温度制御条件下(25℃)で行われた。
【0106】
実際の決定と期待値間でのスチューデントのt−検定を適用することによって、その値を統計的に分析した;全てのデータを表4に与える。
【0107】
【表6】

【0108】
表4に与えられたデータの分析から分かるように、較正曲線は、完全に線形であり、即ち、3.0%〜3.5%の幅があるCVで、実質的に、最大で6000μmol/lまでの直線である。
【0109】
例1B.ビタミンC較正曲線上での第二鉄塩量の効果の評価
この例は、溶液(2)中における異なる量の第二鉄塩が、ビタミンCのμmol/l値を決定する際に顕著な交互変化を生じないことを実証するために行われた。
【0110】
このため、その決定は、例1Aと同一サンプルに関して行われ、2000及び4000μmol/lの標準ビタミンC濃度だけを利用し、同じFe(NO)濃度の3つの異なる体積、即ち25μl−30μl−35μlを加えた。
【0111】
そのデータに関し、分散分析(ANOVA)を算出した。
【0112】
その結果を表5に示す。
【0113】
【表7】

【0114】
このテストでは、同一濃度のFe(NO)の25〜35μl間の体積を用いた場合、顕著な変化は見られなかったことが確認された。
【0115】
例1C.ビタミンC較正曲線上でのZr塩による妨害の可能性の評価
上記例は、無機Zr塩が、ビタミンC較正曲線の線形性を妨げない、即ち変化させないことを実証するために行われた。
【0116】
2つの異なる溶液(1)との比較サンプルとしてビタミンCを用いた:
・溶液(1)−AcZ、即ち、ZrClの形態でZrを含有する
・溶液(1)−AsA、即ち、Zrなし
【0117】
サンプルは、脱イオン水中における2000μmol/lのビタミンC溶液で構成された。ビタミンC溶液を連続して10回調製した;各ビタミンCサンプルでは、両方の溶液(1)を素早く連続して用いてそのテストを行った。
【0118】
5回は、(1)−AcZを、溶液(1)AsZの前に評価し、5回は、その後に評価した。ZrCl濃度は47.2mmol/lであり、キュベット中に導入された体積は5μlであった。
【0119】
これらサンプルの変動係数(%CV)も評価した。
【0120】
相互依存的データのt−検定を用いてデータを比較し、表6に示した。
【0121】
【表8】

【0122】
上記報告されたデータから、無機Zr塩の添加は、ビタミンCの較正曲線を有利に修飾しないという結果になった;また、無機Zr塩の存在が、都合良く%CVを著しく低減したことに注目した。
【0123】
例1D.ヒト生物学的液体の異なるサンプルに関する評価
本発明の方法は、異なる量の異なる生物学的液体サンプルを用いることによって評価された。
【0124】
このため、尿、唾液及び涙のサンプルを、同一の10人の被験者から得て試験した。彼らは全員ボランティアの健常人であった。
【0125】
コットンを噛んだ後に、>1mlの量の彼らの唾液をプラスチック容器に集めた;20mlの量の尿を外部からプラスチック容器に集めた;換気扇フード下で気体オルト−クロロ−ベンザルマロニトリルに非常に短い時間(3秒)さらされた後、涙をマイクロキュベットに集めた。涙は、100μlの最小量で集められた。この最後の決定は、5ケース(男性3人及び女性2人)のみに対して行われた。
【0126】
その調査に参加したボランティアの特徴は、以下に与えられる(平均値±SD):
【0127】
【表9】

【0128】
集めた日に全てのサンプルを分析した;ケースの半分は、5μlから10μlまで連続して評価され、他の半分は、逆に連続させて評価された。
【0129】
尿の試験体を脱イオン水によって1:5の比に希釈した。
【0130】
その結果を表7に示す。
【0131】
【表10】

【0132】
従って、本発明の方法によれば、吸光度を読み取り、6.500の係数を乗じた後、その対応する濃度をランベルト・ベールの法則によりμmol/lビタミンC当量の単位で算出することによって、サンプルの抗酸化力の決定が達成された。
【0133】
例2.本発明の方法のサンプル用としての唾液量の標準化
分析されるべき生物学的液体が唾液である場合、その分析的複雑さを考慮して、その収集の標準化の妥当性を考察した。まず第一に、歯磨き粉及び/又は糸ようじ及び/又は口腔洗浄液を用いた毎日の口腔衛生処置の後で、この収集を行った。前述の衛生手順の少なくとも1時間後に唾液を集めた。
【0134】
従って、気楽に座りながら、幾つかの適切に準備された親水性コットンを300±30mgの量で60秒間噛むように被験者に頼んで、唾液を集めた。
【0135】
被験者は、平均してわずか60±2回の咀嚼を達成した。歯間でのコットンの過剰な圧縮はなかったが、噛んでいる間、口内で動かした。
【0136】
咀嚼が終わった後、そのコットンを適切な容器に集め、その重量は、容器重量とコットン重量の合計(風袋)によって表された。風袋を差し引いた後、唾液流量/minを表す液体の程度を評価した。本発明の方法の最適条件下では、前述の流量が1.2±0.2ml/minであった。
【0137】
得られた量が前述の値の領域内にない場合は、少なくとも5分の間隔後に、咀嚼を調節することによって所望の量に達するまで、唾液の収集を繰り返す必要があった;即ち、低い流量の場合には咀嚼を増大したり、高い流量の場合にはそれを低減した。流量が非常に低かったら、これはまれであるものの起こり得る事象であるが、同一量のコットンを用いてもよい。但し、3%クエン酸溶液の滴(45μl)を加える。このようにして、唾液流量<0.5ml/minの被験者のほぼ100%が、唾液流量を、評価に適したレベルまで、即ち0.70〜1.5ml/minの間に増大させることができた。
【0138】
唾液サンプルの遠心分離後の決定は、800rpmで遠心分離されなかったサンプルと常に同一であった。従って、唾液の有機堆積物が唾液中に表れていたら、遠心分離は有用であるに違いない。
【0139】
本発明の方法によって先に得られた結果を、唾液の特定ケースにおけるサンプリング用の手段と共に考慮すると、上記方法の高い繰り返し性及び再現性は、以下に示す例3〜6において実証されるように、達成された。
【0140】
例3.本発明の方法に従う唾液抗酸化力の決定に対する唾液流量の影響
外見上健康である男女(男5人及び女5人)の被験者10人を選択した。この点において、合否判定基準は、彼らが、非喫煙者であり、避妊を含めたどんな治療もしておらず、どんな栄養補助食品も取っていないことを要求した。
【0141】
上記被験者は、試験前のまる1日過剰の食物と、更には過度の体操とを避けるように言われ、自身が前の晩から絶食したことを示す必要があった。
【0142】
試験は、25℃の制御温度にて行われた。被験者は、唾液の流量及び抗酸化力の評価前に30分間安静状態で保たれた。
【0143】
唾液流量の測定は、以下に示す方法に従って行われた。
【0144】
座った被験者は、300±30mgの小さな四角い親水性コットンを噛む必要があった。そのコットンを歯の間で過度に押し付けることなく1分間噛むことが必要であったが、それを口内で動かすことは可能であった。唾液をコットン中に流すのに、1分当たり約60回の咀嚼のリズムを維持することが必要であった。
【0145】
1分後に、コットンを口から吐き出し、既知重量の適切なプラスチック容器に集めた。全体の重さを量り、容器風袋及びコットン重量の差し引きが唾液の重量を与え、それ故に、その流量が決定された。
【0146】
各種被験者の唾液を作る能力のより正確な決定を得るため、この評価を10分後に繰り返した。
【0147】
唾液流量に応じて、被験者は、咀嚼の回数及び唾液の活性化を変更するように求められた。流量が0.70ml/min未満である場合、被験者は、咀嚼の回数及び唾液を作るための努力を増加させるように求められた。流量が1.50ml/minよりずっと高い(例えば3ml/minを超える)場合、被験者は、咀嚼を減らすように求められた。
【0148】
唾液流量が低すぎる場合、その量を増加させるため、クエン酸溶液(3%水溶液45μl)を加えることができたが、そのテスト被験者は、誰もそれを必要としなかった。
【0149】
各被験者は、実際のテストを開始する前の日に行われる3回のならし試験を受けた。
【0150】
そのプロトコルは、5つの異なる唾液流量、つまり
・0.3〜0.60ml/min;
・0.6〜0.9ml/min;
・0.91〜1.3ml/min;
・1.31〜1.8ml/min;及び
・1.81〜2.5ml/min
の評価からなる。
【0151】
この区別された唾液流量を作るための能力は、合否判定基準と考えられた:実際には、15人の被験者を選別することによって、10人の被験者を導き出した。拒絶ケースは、不十分な生産(3人の被験者)又は唾液流量を十分に刺激する上での困難(2人の被験者)(即ち、流量を求められた範囲に変更できない)のためである。
【0152】
ならし試験後、同一の被験者に対し、データの繰り返し性を決定する目的で、その試験を1日に3回繰り返した(1、3及び5)。
【0153】
評価初日のセッションは、「流量1、2、3、4、5」と表示され、後日のセッションは、流量6(3日目)及び流量7(5日目)と表示された。
【0154】
実際の評価の初日は、5つの唾液流量すべての抗酸化力を試験したが、後日(2日及び5日)における他の2つ試験は、(以下で分かるように)試験に理想的と考えられる流量値のみ、即ち1〜1.5ml/minを評価した。
【0155】
本発明の方法を用い、それ故に唾液10μlの量に対して行うことによって、唾液の総抗酸化力を決定した。
【0156】
全てのデータを、その平均及び分散パラメータ(SDつまり標準偏差)を計算することによって、統計的に分析して、相互依存データのスチューデントのt−検定及び直交対比の分散分析に基づき、比較を行った。
【0157】
10人の被験者の特徴を以下に与える:
【0158】
【表11】

【0159】
全ての被験者は、その試験を首尾よく完了した。異なる流量を監視する初日における唾液流量及びビタミンCのμmol/ml単位としての相対濃度の測定を以下の表8に与える。
【0160】
また、「流量×試験」の積も算出した。これは、総酸化能力(TC)の一つの表現である。10μlを用いて全測定を行い、その値は、ビタミンCのμmol/lとして表現された。データの検査は、平均流量が0.75ml/min〜1.14ml/minに及ぶ場合、その試験値が実質的に合っていることを示した。0.70ml/min未満の又は1.50ml/minを超える流量は、両方の場合で著しく(t−検定p<0.05)、高い又は低い濃度を示した。従って、0.75ml/min〜1.5ml/minの唾液流量を維持することによって、ビタミンCのμmol/ml単位として得られる濃度が、ほんのわずかしか変化しないと結論を出すことができる。
【0161】
【表12】

【0162】
1.10ml/min〜1.44ml/minの中間流量(流量3、流量4)では、総抗酸化能力量が増大したことが分かった。これは、中程度の流量が、唾液抗酸化力評価の標準化に最適であるという事実を更に裏付けた。
【0163】
現在の例との関連で、唾液流量及び相対総抗酸化能力の評価を2回以上、つまり3日及び5日後に決定した(それぞれ流量6及び流量7)。
【0164】
その結果は、表9に示されており、1、3及び5日目の刺激流量について獲得した値の間で、注目に値する著しい変化(ANOVA p>0.05)がなかったことを実証し、それ故に、本発明の方法の高い再現性が確認された。
【0165】
【表13】

【0166】
例4.本発明の方法とBAP試験間の唾液及び血漿に関する比較
この例では、本発明の方法とBAP試験間での比較を行った。先に述べたように、BAP試験は、血漿又は血清の抗酸化力を評価するために発明され、専ら使用されている。
【0167】
できる限り一定で重要な比較を行うため、同一被験者に由来し、同時に集められた同一のサンプルに関し、2つの方法を比較した。
【0168】
12人の被験者(男6人及び女6人)を選んだが、その内の10人は、先の例と同じ人であった。試験したケースの1つでは、10回の連続した決定後に変動係数(%CV)を決定できるのに十分な唾液及び血液を採取した。
【0169】
現在の比較は、先の例の後の期間で行われた。
【0170】
合否判定基準は、先の例と同一であった。被験者の一般的特徴を以下に示す:
【0171】
【表14】

【0172】
唾液の収集については、例2で与えた方法に従った。
【0173】
2つの試験、即ちBAP及び本発明の方法は、同一サンプルに関し連続して決定された。再び同一サンプルを用いて、1mlまで低減した総サンプル量[20]でのDick及びTabatabaiの方法[19]を適用することにより、リン酸塩の量も決定した。前述の決定については、(少なくとも10分で分けられた)2つの刺激セッションに亘って唾液の収集を繰り返すことが、時々必要であった(その量が1mlをやや上回る場合)。これが(たった2回の場合でのみ)起きた場合、2つの唾液収集物を混合した。リン酸塩評価用の血液を上腕静脈から集め、5mlの量をチューブに採取し、血清の分離のため直ちに遠心分離を行った。BAP及び本発明の方法による唾液及び血清両方の決定を収集の午前中に行った。BAP及び本発明の方法による決定を同一サンプルに関して行ったので、その直接比較は、最大の重要性を有しており、それは、他のすべての変化するものから独立している。
【0174】
全てのデータを処理し、平均値及びSD値を計算した;2種類の試験間での違いを評価するため、スチューデントのt−検定を適用した。様々な値の中で、相関係数も計算した。
【0175】
結果
全被験者が研究を完了し、BAP及び本発明の方法の値を、血液及び唾液のリン酸塩含有量と共に表10に示す。
【0176】
注目すべきことは、両方の方法が、液体のFe3+を還元する能力及びビタミンCのμmol/l単位の両方を測定したが、BAP試験によって、本発明の方法よりずっと高い値が得られた(平均して唾液では57%及び血清では30%の差である)。
【0177】
全てのケースにおいて、サンプル量を10μlから5μlに低減することにより、BAP決定を行うことが必要であることが分かった。10μlの場合、前述のBAP試験について述べた線形性の上限である>3000μmol/mlの値が得られたためである。
【0178】
【表15】

【0179】
10回の連続した決定における%CV測定は、それぞれ唾液が3.3%で、血清が2.9%であった[10回の決定の平均値±SDは、唾液が3794±126.7で、血清が1513±44.0であった]。
【0180】
相互関係に関して、血清リン酸塩と唾液リン酸塩間の関係の存在が示された。研究の目的で最も重要な値は、血清及び唾液両方の決定におけるBAPとリン酸塩間の直接的で著しい妨害の実験的証拠であった。
【0181】
好都合なことに、この妨害は、本発明の方法について観察されず、その結果は、リン酸塩の存在から驚くほど有利に独立したものであり、それ故に、前述の方法に用いた成分の適切な選択のため、非常に信頼できる抗酸化力値を提供する。
【0182】
この事実は、診断目的で、特には、分析されるべき生物学的液体が唾液である場合に極めて重要であって、ここでは、エナメルの再石灰化と脱塩間のバランスが、実に50mg/dlを超えるリン酸塩レベルを生成できるが、これに比べて、BAPは、実際の唾液の抗酸化力を決定する際に全く信頼できないことが証明され、実際には、その結果が57%の差で過大評価された。
【0183】
血清に関しては、平均リン酸塩量が、通常の条件下で4.5mg/dlを超えなかった。それにもかかわらず、BAPにより決定された総抗酸化力の値は、実に33%の差で過大評価されたことが分かった。
【0184】
上記のことから、本発明の試薬に無機ジルコニウム塩を選択することは、驚くべきことであり、有利なことであることが明らかである。
【0185】
例5.本発明の方法とBAP試験間での尿に関する比較
例4と同様に、この例では、BAP試験で得られる結果と、本発明の方法で得られる結果の尿に関する比較を行った。
【0186】
この目的では、例4と同一の被験者を採用した。
【0187】
尿を13.30に集めた;被験者は、午前中の7.30に膀胱を空にするよう要求された。その後、7.30以降の全尿を適切な容器に集め、冷蔵庫に保つ必要があった。12.30に、試験者は、収集容器に注ぎ、膀胱を空にした。このようにして、6時間で生じた量の尿を得た。
【0188】
2つの試験に従う尿の抗酸化力の決定は、尿サンプルを1:5の割合(1+4)に希釈し、10μlの相対体積を用いることによって行われた。
【0189】
尿中のリン酸塩の評価は、血漿及び唾液に使用されるものと同一の方法を適用することによって達成された[19]。1つのケースでは、本発明の方法に従って尿の抗酸化力の%CVを決定するため、10回の連続した決定を尿サンプルに行った。
【0190】
全てのデータに関して、平均値及び分散パラメータを計算し、また、2つの試験に由来する尿のリン酸塩濃度間の相互関係を決定した。
【0191】
結果
全ての被験者は、同一の分析研究所において研究を首尾よく終えた。
【0192】
2つの試験を用いた尿サンプルの分析を1:5に希釈したサンプルに関して行った。その分析には、10μlを用いた。同じ午後に、リン酸塩分析も行った。
【0193】
その結果を表11に与える。
【0194】
【表16】

【0195】
データを研究することによって、本発明の方法に従う値は、BAPと明らかに異なり、BAPの平均値は、尿中の高いリン酸塩含有量のため、実際に本発明の方法のものを110%の差で超えるという結果になった。実際、BAP試験値とリン酸塩間の相互関係(r=0.706,p<0.05)から推定されるように、この場合もやはり、BAP試験に対するリン酸塩による著しい妨害が確認された。
【0196】
しかしながら、本発明に関する限り、抗酸化力の実測値とサンプル中に存在するリン酸塩量の間に相互関係がないことが、驚くほど有利に確認された。
【0197】
尿に関する本発明の方法の%CVは、3.7%であることが分かった[1820±66.7に等しい平均値±SDから得られた]。
【0198】
例6.本発明に従う唾液の抗酸化力の遠心分離前後での評価
この例では、定期点検のため歯科医院によく行く20人の被験者を評価した(男10人及び女10人)。
【0199】
プロテーゼを備えた被験者も含むが、歯周病又は歯の腫瘍を患う患者は排除された。
【0200】
唯一の要件は、観察期間前に、朝食若しくは昼食又はあらゆる食料品若しくは飲料を摂取した後で、歯磨き粉及び/又は糸ようじを用いて歯を予め掃除することであった。
【0201】
10.00〜19.00時の同じ日の間に試験を行った。
【0202】
試験した被験者の一般的な特徴を以下に与える:
【0203】
【表17】

【0204】
唾液の収集は、先の例2において説明した方法論に従った。
【0205】
相互依存的データのt−検定は、差異が統計的に有意であるかを決定するため、遠心分離の前後で得られた値に適用された。唾液5μlに関して決定を行い、その値に2を掛けた。
【0206】
その結果を表12に示す。
【0207】
【表18】

【0208】
平均値及び統計分析の結果として、本発明の方法に用いた成分、具体的にはジルコニウム塩が、驚くほど有利に、リン酸塩の沈殿を引き起こさなかったが、それらを溶液中に維持しつつそれらの存在を効果的にマスクしたため、遠心分離前後で得られた値の間には、有意な違いがなかった。
【0209】
例7.正常な被験者と歯周病を患う被験者間の比較におけるTAS評価
現在の例では、一見健康な被験者を、異なる臨床度合いの歯周病を患う被験者と比較することによって、唾液の抗酸化力のレベルを評価した。
【0210】
100人の被験者が、観察下に置かれ、それぞれ50人の被験者の2つのグループに細分された。
【0211】
全被験者は、歯科衛生のために同一の口腔外科をしばしば訪れた。
【0212】
それ故に、6カ月に1度の又は年に1度の歯科検診を簡単に行うそれらの被験者と、様々な度合いの歯周病の治療を受ける被験者とを特定することが可能であった。
【0213】
歯周病のレベルは、1〜4の半量子スケールを用いて区別されたが、それによれば、1は「軽度」レベルを示し、4は「重度」レベルを示す。重症度は、主に、歯列四半分の疾患を患う数と、歯ぐきの損傷(歯ぐきの陥没及び歯ぐきの炎症)度合いから決定された。
【0214】
また、歯周病を患う被験者は、他の関連した病変、主に高血圧及び/又は脂質異常症があった;患者は、治療が少なくとも2ヶ月間確立された治療制御下にある場合のみ、認められた。一見健康な被験者の合否判定基準は、他のどんな病変又は現在の薬理学的若しくは補助的治療も容認しなかった。
【0215】
全被験者は、試験前の晩から絶食した。通常の自主的な衛生手順(歯磨き粉を用いた歯のブラッシング)の少なくとも1時間後で、他のあらゆる歯科チェックを受ける前に、唾液の抗酸化力について被験者をテストした。例2に示された方法論に従い、気楽に座った被験者から25℃の温度にて唾液を集めた。
【0216】
体積が1〜1.5mlの必要とされた量でなかった場合、少なくとも10分の休息後に唾液の収集を繰り返した。
【0217】
そのデータに関する平均値及び分散パラメータを計算した;また、グループ間の差異を明確に示すため、スチューデントのt−検定を適用した。加えて、本発明の方法の結果と歯周病の重症度間の相関係数を決定した。
【0218】
被験者の一般的な特徴を以下に示す:
【0219】
【表19】

【0220】
これらの歯周病を患う被験者は、健康な被験者より著しく若いことに注目した。
【0221】
唾液の抗酸化力値、相対唾液流量及び歯周病程度の評価を表13に与える。
【0222】
【表20】

【0223】
実際のところ、唾液流量は歯周病を患う被験者間で有意に異ならなかったが、これら後者の唾液流量試験は、不十分な生産のため、しばしば繰り返す必要があることが分かった。
【0224】
2つのグループ間における年齢の有意な差を考慮して、年齢の統計分析を補正したが、歯周病を患う被験者において唾液の抗酸化力が低下したことを示したように、それでもやはり、唾液流量の差は、有意であることが分かった。
【0225】
更に、歯周病の重症度と相対的な唾液の抗酸化力値の間における反比例の相互関係に注目した(「r」−0.554 p<0.05)。これは、表3に関連して先に示され解説されたように、実験的証拠を裏付けた。
【0226】
例8.本発明の方法に従う特定の食物及び飲み物の抗酸化力の評価
異なる量のリン酸塩を含有できる一連の食物及び飲み物の抗酸化力を決定するため、本発明の方法を用いた。
【0227】
各製品について、異なる出所の5バッチを試験し、全サンプルについて、収集の同じ日に評価を行い、次いで、後日同時に行った。
【0228】
その結果を表14に与える。
【0229】
【表21】

【0230】
a ヴェルデッロレモン[種類:Scelgobio(登録商標)−イタリア産 Cat.II サイズコード4/5]
b ブラッドオレンジ[種類:Mariarosa−イタリア産 Cat.I サイズコード6]
c パルプ用トマト[イタリア産]
d ブルーベリー[種類:Vitalberry−チリ産 Cat.I]
e ラズベリー[種類:Natberry Maroc−モロッコ産 Cat.I]
f キャンティクラシコ[生産者:Cecchi−イタリア産]
g ソアーヴェカディス[生産者:Cantina di Soave−イタリア産]
h ロゼサレント[生産者:Al Tralcio Antico−イタリア産]
i トーニーポート[生産者:Offley−ポルトガル産]
l ドレハー[生産者:Dreher−イタリア産]
m ピノネログラッパ[生産者:La Versa−イタリア産]
n フンダドール[生産者:Pedro Domecq−スペイン産]
o ネスプレッソ[種類:Roma−イタリア産]
p Twinings(登録商標)[種類:アールグレイ−UK産]
【0231】
ネスプレッソ自動機械を用いて用意されたコーヒーは、カフェRomaタイプの品質のものであった。5つの異なるコーヒーを30mlの量で用意した。
【0232】
紅茶に関し、Twinings(登録商標)ティーバッグを用いた[クラシックアールグレイ];水150ml中に1つのティーバッグを3分間浸出させることによってサンプルを調製した。その水は、沸騰させた2分後に用いた。
【0233】
上記果物及びトマトは、あらゆる果物及び野菜を代表するものであり、脱イオン水を用いて1:5の割合に希釈し、均質にした。次いで、全サンプルを800rpmにて2分間遠心分離し、上澄み10μlについての決定を行った。
【0234】
その決定が6000μmol/lを超えたら(例えばコーヒー及びレモン)、5μlを用いて測定を繰り返し、その値に2を掛けた。
【0235】
また、表14は、食物ポーションの総抗酸化力値を示す。驚くほどに、それらデータから、白ワイン(ソアーヴェ)及びロゼワイン(サレント)の抗酸化値が赤ワイン(キャンティ)と有意に異ならないという結果になる。分析した食物の中でも、オレンジ、コーヒー及びレモンは、最も高い抗酸化力を持つものである。
【0236】
上記詳細な説明及び先に与えた例から、本発明の試薬及び方法によって達成される利点が明らかである。特に、前述の試薬は、生物学的及び植物性液体のサンプル中におけるリン酸塩の存在をマスクできるようにし、それ故に、前述のリン酸塩を溶液中に維持しつつ、即ち、専用の分離工程を不利に招くであろう沈殿物を回避しつつ、同時に、前述のリン酸塩が抗酸化力の決定を妨げることを有利に回避する。前述の利点は、上記方法を実施する実用性及び費用有効性の観点から特に評価される。本発明の前述の方法は、前述の試薬を含むキットのおかげでもやはり、生物学的及び植物性液体の抗酸化力を、信頼でき、再現可能で、繰り返し可能で、経済的に都合のよい方法で評価できるようにし、それ故に、上述した既知の方法の不利、特にはBAP試験に関して述べた不利を克服する。
【0237】
書誌参照
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18) Celi P, Sullivan M, Evans D. The stability of the reactive oxygen metabolites (d-ROMs) and biological antioxidant potential (BAP) tests on stored horse blood, Vet J 2010;183:217-218.
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21) Benzie IFF, Strain JJ. The ferric reducing ability of plasma (FRAP) as a measure of “antioxidant power”: The FRAP assay. Anal Biochem 1996;239:70-76.
22) Composizione degli alimenti- Aggiornamento 2000 Istituto Nazionale di Ricerca per gli Alimenti e la Nutrizione Ed EDRA Medical Publishing & New Media.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための試薬であって、少なくとも1つの無機ジルコニウム塩及び少なくとも1つの適した溶媒を含む試薬。
【請求項2】
前記無機ジルコニウム塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
前記無機ジルコニウム塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の試薬。
【請求項4】
前記無機ジルコニウム塩がZrClである、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
前記少なくとも1つの適した溶媒が水・アルコール混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の試薬。
【請求項6】
生物学的及び植物性液体の抗酸化力を決定するための方法であって、
a)チオシアン酸塩アルコール溶液を提供する工程と;
b)請求項1〜5のいずれかに記載の試薬を少なくとも1つ加える工程と;
c)第二鉄塩水溶液を加える工程と;
d)このようにして得られた溶液の吸光度を測定する工程と;
e)生物学的又は植物性液体のサンプルを加える工程と;
f)前記サンプルを含有する溶液の吸光度を測定する工程と;
g)工程f)での吸光度から工程d)での吸光度を引く工程と;
h)このようにして得られた吸光度値をビタミンCの標準較正曲線にプロットし、ランベルト・ベールの法則に従い、試験中の液体の抗酸化力の値をビタミンC当量として得る工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記第二鉄塩が、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩及び硝酸塩からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第二鉄塩が硝酸塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試薬b)の無機ジルコニウム塩と前記第二鉄塩が、20:1〜5:1のモル比にある、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的又は植物性液体のサンプルと工程c)後に得られる溶液が、1:250〜1:50の体積比にある、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的又は植物性液体が、唾液、血清、血漿、尿、涙、汗、果物に由来する液体、野菜、食物、ワイン、ビール、飲み物、コーヒー又は紅茶である、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法を実施するためのキットであって、
i)請求項1〜5のいずれかに記載の少なくとも1つの試薬;
ii)少なくとも1つのチオシアン酸塩アルコール溶液;
iii)少なくとも1つの第二鉄塩水溶液;及び
iv)抗酸化力の決定を行うための指示を含む図解入りの小冊子
を含むキット。
【請求項13】
前記i)少なくとも1つの試薬と、前記ii)少なくとも1つのチオシアン酸塩アルコール溶液とが、単一の溶液(1)である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記図解入りの小冊子が、生物学的又は植物性液体サンプルを集めるための指示を更に含む、請求項12又は13に記載のキット。
【請求項15】
前記生物学的液体が唾液であり、サンプル収集のための更なる指示は、前記収集が唾液流量0.70〜1.50ml/minの条件下で行われることを記載する、請求項14に記載のキット。

【公表番号】特表2013−520665(P2013−520665A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554333(P2012−554333)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052669
【国際公開番号】WO2011/104267
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512132413)コル.コン.インターナショナル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【Fターム(参考)】