説明

生物学的活性化合物および紫外線保護剤の懸濁液を含有するマイクロカプセル

【課題】紫外線に感受性の生物学的活性物質を含有するマイクロカプセルおよびそれらの調製方法を提供すること。
【解決手段】本発明により、有機液体を含むマイクロカプセルが提供される。この有機液体を含むマイクロカプセルは、該有機液体が、紫外線感受性の生物学的活性物質および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有し、該微粒子状紫外線保護剤が、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体中に懸濁され完全に分散されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景および先行技術)
本発明は、特許文献1に記述の発明の改良に関し、特に、生物学的活性化合物を含み、懸濁した紫外線保護剤をさらに含むマイクロカプセルの製造の改良に関する。
【0002】
特許文献1で指摘したように、殺虫用の生物学的活性化合物のマイクロカプセルを調製するために、種々の様式のマイクロカプセル化方法が使用されているものの、液体に懸濁した固体生物学的活性殺虫剤を含むマイクロカプセルを製造する適切な方法は、以前には知られていなかった。これにはいくつかの理由があり、特に、以下のような難点があった。
【0003】
1.水非混和性液体にて、生物学的活性固体の安定な懸濁液を製造する必要がある。分散剤または界面活性剤を使用するなら、それらは、このマイクロカプセルを製造する際に使用するさらなる分散のプロセスを妨害してはならない。
【0004】
2.固体の懸濁液は、安定でよく分散した小滴、好ましくは、水に分散した有機相懸濁液の非常に小さい小滴を生成するように、水に分散しなければならない。これには、高いせん断力を必要とし、これは、小滴を破壊するか、および/または固体を懸濁液から放出させる傾向がある。
【0005】
3.1種またはそれ以上の界面活性剤が存在すると、分散した小滴系を不安定にし、転相を生じ得る。
【0006】
4.懸濁した固体は、特に、乳化界面活性剤を使用するとき、水相に移動する傾向がある。
【0007】
特許文献1は、液体に懸濁した固体生物学的活性化合物のマイクロカプセル化処方物を製造する方法を記述している。この生成物は、本質的に3段階の工程により、製造される。第一工程では、この固体生物学的活性物質は、例えば、粉砕工程により、必要な粒径で製造される。第二工程では、この固体生物学的活性化合物は、有機液体(好ましくは、この固体に対する貧溶媒で水に非混和性のもの)に懸濁される。しかしながら、この液体は、このマイクロカプセル化工程で使用するプレポリマーを溶解するのに充分に極性でなければならない。あるいは、この固体をまず液体に懸濁し、次いで粉砕してもよい。第三工程では、この水非混和性相の水相における物理的分散体が調製される。
【0008】
ある種の生物学的活性物質は、紫外線または化学線により悪影響を受ける。たとえマイクロカプセル化しても、このカプセル内の活性物質は、依然として、光の存在下にて劣化される場合がある。マイクロカプセル化物質に紫外線保護を与えるために多くの方法が提案されている。例えば、非特許文献1は、カプセル化したウイルス試料を紫外線から保護する際の、セルロース、炭素、アルミニウム粉末および酸化アルミニウムの使用を開示する。この著者は、このマイクロカプセルを調製する方法を記述していない。特許文献2は、重合体マトリックス内に含まれているウイルスに紫外線保護を与えるための、カーボンブラックおよび他の紫外線吸収剤(例えば、金属フレーク、金属酸化物粒子、金属硫化物および他の一般的に使用される顔料)の使用を記述している。特許文献3および特許文献4は、カプセル化したウイルスを保護するための、多くの有機染料および他の日光遮光剤(例えば、ベンゾフェノン、PABAおよびベンジル(benzil)(またはそれらの混合物))の使用を開示している。特許文献5は、核酸およびタンパク様物質から構成されるコアセルベートマイクロビーズ中での、マイクロカプセル化病原性ウイルス物質、細菌物質または真菌物質の製造を開示しており、ここで、このマイクロビーズ構造自体が、UV保護剤である。最後に、特許文献6は、他のタイプのマイクロカプセルを開示しており、ここで、このカプセル化剤(この場合、リグニン)自体もまた、日光遮断剤として役立つ。
【特許文献1】国際公開第95/13698号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3,541,203号明細書
【特許文献3】米国特許第4,844,896号明細書
【特許文献4】米国特許第4,948,586号明細書
【特許文献5】米国特許第4,328,203号明細書
【特許文献6】国際公開第92/19102号パンフレット
【非特許文献1】Ignoffoら、J. Economic Entomology、(1971年)64、p.850
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 有機液体を含むマイクロカプセルであって、該有機液体が、紫外線感受性の生物学的活性物質および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有し、該微粒子状紫外線保護剤が、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体中に懸濁され完全に分散されている、マイクロカプセル。
(項目2) 前記生物学的活性物質が、前記液体に懸濁されている、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目3) 前記生物学的活性物質が、前記液体に溶解されているか、または前記液体を構成する、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目4) 前記紫外線保護剤の粒径が、約0.01〜約2ミクロンである、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目5) 前記紫外線保護剤の粒径が、約0.02〜約0.5ミクロンである、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目6) 前記紫外線保護剤が、二酸化チタンである、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目7) 前記紫外線保護剤が、二酸化チタンおよび酸化亜鉛の混合物である、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目8) 前記生物学的活性物質が、ピレスロイドを含有する、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目9) 前記生物学的活性物質が、ラムダ−シハロトリンを含有する、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目10) 前記カプセル壁が、ポリ尿素から形成されている、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目11) 前記カプセル壁が、尿素−ホルムアルデヒド重合体から形成されている、項目1に記載のマイクロカプセル。
(項目12) 紫外線感受性の生物学的活性物質および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有する液体を含むマイクロカプセルを調製する方法であって、該微粒子状紫外線保護剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体中に懸濁され完全に分散され、該方法が、(a)約0.01〜約2ミクロンの平均粒径を有する該保護剤の有機液体懸濁液を調製する工程であって、該有機液体は、水に非混和性であり、紫外線感受性の生物学的活性物質を含有し、ここで、該保護剤は、該液体に完全に分散される、工程;(b)該懸濁液を、保護コロイドおよび必要に応じて界面活性剤を含有する水に導入する工程であって、該界面活性剤は、該有機液体から該水中に該保護剤を抽出することなく、該有機液体を該水中で小滴として維持でき、該有機液体は、溶液中にて、1種またはそれ以上のプレポリマーを含み、該プレポリマーは、反応して、該有機液体と水との界面にて、重合体を形成し得る、工程;(c)高せん断下にて、該水相における該有機液体の懸濁液を混合して、水中油型乳濁液を形成する工程;および(d)該有機液体/水の界面にて、重合反応が起こって該マイクロカプセルを形成するように、必要なら、該水中油型乳濁液の温度および/またはpHを調整する工程、を包含する、方法。
(項目13) 前記生物学的活性物質が、前記液体に懸濁した固体である、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記生物学的活性物質が、約0.01〜約50ミクロンの平均粒径を有する、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記生物学的活性物質が、前記液体に溶解されている、項目12に記載の方法。
(項目16) 前記有機液体の小滴の粒径が、前記水に分散した後、約1〜約30ミクロンである、項目12に記載の方法。
(項目17) 前記プレポリマーが、前記有機液体に溶解した1種またはそれ以上の有機ポリイソシアネートを含有し、これが、加熱したとき、イソシアネートが加水分解してアミンとなり、次に該アミンが他のイソシアネートと反応して、ポリ尿素を形成することにより、ポリ尿素を形成する、項目12に記載の方法。
(項目18) 前記プレポリマーが、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートとトルエンジイソシアネート異性体混合物との混合物である、項目17に記載の方法。
(項目19) 前記プレポリマーが、尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーであり、そのメチロール基の約50〜98%がC-C10アルコールでエーテル化されており、前記有機液体/水の界面にて、固体重合体を形成する、項目12に記載の方法。
(項目20) 前記プレポリマーのメチロール基の約70〜90%が、n-ブタノールでエーテル化されている、項目19に記載の方法。
(項目21) 前記紫外線保護剤の粒子が、分散剤によって、前記液体中に完全に分散される、項目12に記載の方法。
(項目22) 前記分散剤が、非イオン界面活性剤である、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記マイクロカプセルが、約1〜200ミクロンの平均粒径を有する、項目12に記載の方法。
(項目24) 前記生物学的活性物質が、ピレスロイドを含有する、項目12に記載の方法。
(項目25) 前記生物学的活性物質が、ラムダ−シハロトリンを含有する、項目12に記載の方法。
【0010】
本発明は、マイクロカプセルおよびそれらの調製方法を包含し、特に、以下の[1]および[2]を包含する:[1]液体を含むマイクロカプセルであって、該液体は、紫外線感受性の生物学的活性化合物および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有し、該微粒子状紫外線保護剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体中に懸濁され完全に分散されている;[2]紫外線感受性の生物学的活性化合物を含むマイクロカプセルを調製する方法であって、該マイクロカプセルは、液体および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有し、該微粒子状紫外線保護剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体に懸濁され完全に分散されており、該方法は、以下の(a)、(b)、(c)および(d)の工程を包含する:(a)約0.01〜2ミクロンの平均粒径を有する紫外線保護剤の有機液体懸濁液を調製する工程であって、この有機液体は、水に非混和性であり、紫外線感受性の生物学的活性物質を含み、ここで、この保護剤は、液体中に完全に分散される;(b)工程(a)の懸濁液を、保護コロイドおよび必要に応じて界面活性剤を含む水に導入する工程であって、この界面活性剤は、有機液体から水中に固体を抽出することなく、有機液体を水中で小滴として維持でき、この有機液体は、溶液中にて、1種またはそれ以上のプレポリマーを含み、このプレポリマーは、反応して、有機液体と水との界面にて、重合体を形成し得る;(c)高せん断下にて、水相における有機液体の懸濁液を混合して、水中油型乳濁液を形成する工程;および(d)有機液体/水の界面にて重合反応が起こってマイクロカプセルを形成するように、必要なら、水中油型乳濁液の温度および/またはpHを調整する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
一般に、本発明は、マイクロカプセルを製造するために、WO95/13698に記述のプロセスを使用する。この技術をここで記述する。この親出願では、生物学的活性固体の液体懸濁液を含むマイクロカプセルを製造する技術を使用した。本発明では、この技術を、固体紫外線保護剤物質の液体懸濁液を調製するために使用し、この液体は、生物学的活性物質を含有する。「含有する」とは、この生物学的活性物質もまた、この液体に懸濁した固体の形状であるか、またはこの液体に溶解されているか、またはそれ自体、この紫外線保護剤を懸濁する液体を構成し得ることを意味する。他の実施態様では、マイクロカプセルは、固体生物学的活性化合物の液体懸濁液を含み得、この液体は、第二の生物学的活性化合物(例えば、第二の生物学的活性化合物は、この液体であるか、またはこの液体に溶解している)を含有し、また、完全に分散した微粒子状紫外線保護剤を含む。
【0012】
本発明で保護される生物学的活性物質は、紫外線により劣化または分解を受ける公知のもののいずれかであり得る。このような化合物のうち、著名なものには、ピレスロイドおよびピレスリンがある。このピレスロイドの多くは、紫外線により劣化を受け易いことが知られており、これには、ペルメトリン、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、シフルトリン(cyfluthrin)、レスメトリン(resmethrin)、アレトリン(allethrin)、エトフェンプロクス、およびラムダ−シハロトリン(lambda-cyhalothrin)が含まれる。紫外線により劣化または分解を受け易いことが公知の他の生物学的活性物質には、除草剤であるトリフルラリン、イオキシニル(ioxynil)およびナプロパミド(napropamide)、殺虫剤であるピリミホス・メチルおよびクロロピリホス(chlorpyrifos)、および殺真菌剤であるアゾキシストロビン(azoxystrobin)が挙げられる。本発明のマイクロカプセルは、2種またはそれ以上の紫外線感受性の生物学的活性物質を含み得る。
【0013】
本発明で使用する液体は、それ自体、紫外線により劣化を受け易い液状生物学的活性物質、または通常そのような劣化を受けにくい(しかし、光感受性の第二の生物学的活性物質が懸濁されている)生物学的活性物質、または紫外線感受性物質を懸濁または溶解する水非混和性の有機溶媒であり得る。いずれの場合でも、この液体は、マイクロカプセル壁を形成するのに使用するプレポリマー(1種または複数種)を溶解するのに充分に極性であるべきである。
【0014】
溶媒としては、適切な例には、(マイクロカプセルのタイプに依存して)、芳香族炭化水素(例えば、キシレンまたはナフタレン)、脂肪族溶媒(例えば、脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン)、アルキルエステル(酢酸アルキルおよびフタル酸アルキルを包含する)、ケトン(例えば、シクロヘキサノンまたはアセトフェノン)、塩素化炭化水素、および植物油がある。溶媒は、上記溶媒の2種またはそれ以上の混合物であり得る。
【0015】
マイクロカプセル壁に好ましい物質は、一般的に使用される任意のものであり得る。2つの例として、米国特許第4,285,720号に記述のように形成したポリ尿素、または米国特許第4,956,129号に記述の尿素−ホルムアルデヒド重合体がある。
【0016】
本発明で使用する紫外線保護剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、または二酸化チタンおよび酸化亜鉛の混合物である。一般に、紫外線保護剤は、有機相に関して、約0.1〜約50重量%の量、好ましくは、約1〜約10重量%の量で使用される。二酸化チタンおよび酸化亜鉛の混合物は、これらの2種の物質を約1:10〜約10:1の重量比で含む。
【0017】
この方法は、以下の工程を包含する:
工程1:好ましい粒径を有する紫外線保護剤を得る工程。保護剤は、所望の粒径で、市販されている場合がある。もし、市販されていなければ、粉砕工程により、適切に処理される。保護剤の好ましい平均粒径は、約0.01〜2ミクロン、好ましくは、約0.02〜0.5ミクロンである。マイクロカプセルが液体に懸濁した固体生物学的活性物質を含むのであれば、その物質は、約0.01〜約50ミクロン、好ましくは、約1〜約10ミクロンの平均粒径を有するべきである。
【0018】
工程2:紫外線保護剤を、有機液体に懸濁する工程。この液体は、水に非混和性であるが、このマイクロカプセル化工程で使用するプレポリマーを溶解するのに充分に極性でなければならない。紫外線保護剤もまた、この液体に完全に分散されなければならず、すなわち、凝集していない個々の粒子に分散されなければならない。
【0019】
この分散は、好ましくは、分散剤によって行われ、この分散剤は、保護剤固体を液体中に保持できるが、懸濁液を水に分散するときには、固体が水に抽出されるのを妨げる。さらに、懸濁液を水に添加するとき、分散剤は、転相を起こさせないようにしなければならない。すなわち、水が有機液体中に取り込まれて油中水型乳濁液を形成しないようにしなければならない。
【0020】
分散剤の正確な選択は、紫外線保護剤の性質および有機液体のタイプに依存する。好ましい分散剤には、立体障害により作用し、保護剤/有機液体の界面でのみ活性であり、かつ乳化剤としては作用しない、ある種の非イオン性界面活性剤がある。このような分散剤は、適切には、(a)液体への親和性が強い重合体鎖および(b)固体に強く吸収する基から構成される。このような分散剤の例には、ICIグループ会社から入手できるHypermer系列およびAtlox系列(これには、Hypermer PS1、Hypermer PS2、Hypermer PS3、Atlox LP1、Atlox LP2、Atlox LP4、Atlox LP5、Atlox LP6、およびAtlox 4912が含まれる);およびGAFから入手できるAgrimer重合体(例えば、Agrimer AL-216およびAL-220)がある。
【0021】
一般に、使用する分散剤の濃度範囲は、有機相を基準にして、約0.01〜約10重量%であるが、これより高い濃度の分散剤もまた、使用し得る。
【0022】
マイクロカプセルがまた、懸濁した固体生物学的活性物質も含むなら、それを懸濁し分散することに関して、紫外線保護剤について上で述べたものと同じ考えが適用される。
【0023】
あるいは、上記工程1および2の操作は、上記の粒径より大きな粒径を有する紫外線保護剤を有機液体に懸濁させ分散させて、次いで粉砕工程(媒体粉砕)を行って、この保護剤の粒径を上記粒径に低下させることにより、変更してもよい。
【0024】
いずれにしても、厳密にはどのように行ったとしても、紫外線保護剤は、有機相に完全に分散しなければならない。
【0025】
工程3:水相における水非混和性相の物理的分散体を調製する工程。適切な分散体を得るために、撹拌しながら、有機相を水相に添加する。有機相を水相に分散するために、適切な分散手段が使用される。この手段は、約1〜約200ミクロンの範囲内の所望の小滴(および対応するマイクロカプセル粒子)の平均サイズを得るような、任意の高せん断装置であり得る。好ましくは、この平均小滴サイズは、約1〜約30ミクロン、最も好ましくは、約2〜約20ミクロンである。一旦、適切な小滴サイズが得られると、分散手段は中断される。このプロセスの残りでは、穏やかな撹拌のみが必要である。水非混和性(有機液体)相は、固体紫外線保護剤を含有し、そして必要に応じて、固体生物学的活性物質(これは、カプセル化される液体中に懸濁し、工程1および2で上で記述のように調製される)も含有する。水相は、水および「保護コロイド」と呼ばれる物質から構成される。好ましくは、水相は、さらに、界面活性剤を含む。
【0026】
一般に、水相中の界面活性剤は、約12〜約16のHLB範囲(これは、安定な水中油型乳濁液を形成するのに充分に高い)を有するアニオン界面活性剤または非イオン界面活性剤であり得る。1種より多い界面活性剤を使用するなら、これらの界面活性剤を組み合わせたときの全体のHLB値が12〜16の範囲である限り、個々の界面活性剤は、12未満または16より高い値を有していてもよい。適切な界面活性剤には、線状アルコールのポリエチレングリコールエーテル、エトキシ化ノニルフェノール、ナフタレンスルホネート、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのブロック共重合体、およびアニオン/非イオンブレンドが挙げられる。好ましくは、界面活性剤の疎水性部分は、有機液体と類似の化学特性を有する。それゆえ、有機液体が芳香族溶媒のとき、界面活性剤は、適切には、エトキシ化ノニルフェノールである。
【0027】
特に好ましい界面活性剤には、Union Carbideから入手できるTergitol NP7、Tergitol XD、Tergitol NP40およびTergitol 15-S-20、およびWitcoから入手できるWitconate 90がある。
【0028】
一般に、このプロセスにおける界面活性剤の濃度範囲は、水相を基準にして約0.01〜約10.0重量%であるが、これより高い濃度の界面活性剤もまた、使用できる。
【0029】
水相(連続相)中に存在する保護コロイドは、油滴の表面に強く吸収されなければならない。適切なコロイド形成物質には、1種またはそれ以上の、ポリアクリレート、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルアルコールおよびメチルビニルエーテル/マレイン酸のグラフト共重合体(加水分解されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸;米国特許第4,448,929号を参照せよ;この内容は、本明細書中で参考として援用される)、およびリグノスルホン酸アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。しかしながら、好ましくは、保護コロイドは、リグノスルホン酸アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選択され、最も好ましくは、リグノスルホン酸ナトリウムである。
【0030】
有機液体の全ての小滴の表面を完全に覆うことができるように、充分なコロイドが存在しなければならない。使用する保護コロイドの量は、種々の要因(例えば、分子量、相溶性など)に依存する。保護コロイドは、有機相の添加前に水相に添加し得、または有機相の添加後に、この系全体またはその分散体に添加し得る。保護コロイドは、一般に、約0.1〜約10.0重量%の量で、水相中に存在する。
【0031】
水相で使用するいずれの界面活性剤も、保護コロイドを有機液体の小滴の表面から置換してはならない。
【0032】
生物学的活性固体を含有する水非混和性液体の小滴の好ましい平均粒径は、1〜200ミクロン、好ましくは、1〜30ミクロン、さらに好ましくは、2〜20ミクロンである。粒径は、このマイクロカプセルの最終用途に従って、撹拌速度および時間を調整することにより、および使用する界面活性剤の選択およびその量により、調整できる。
【0033】
マイクロカプセルを得るために、有機液体および/または水は、有機液体と水との界面にて反応して重合体を形成できる、1種またはそれ以上の物質を含まなければならない。
【0034】
米国特許第4,285,720号に記述のプロセスでは、有機相中にポリイソシアネートが溶解され(すなわち、上記手順の工程2)、水/有機液体の界面にてこのプレポリマーの加水分解により重合が起こり、アミンが形成され、このアミンは次いで加水分解されていないモノマーと反応して、ポリ尿素マイクロカプセル壁を形成する。単一の化合物または2種以上のポリイソシアネートの混合物が使用できる。このポリイソシアネートのうち、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびトルエンジイソシアネート異性体混合物が好ましい。ポリメチレンポリフェニルイソシアネートとトルエンジイソシアネート異性体混合物との混合物が、特に好ましい。
【0035】
このプロセスで使用する有機ポリイソシアネートの量は、形成されるマイクロカプセルの壁含量を決定する。一般に、ポリイソシアネート(または、それから形成されるマイクロカプセル壁)の含量は、マイクロカプセルの約2.0〜約75.0重量%を構成する。最も好ましくは、壁は、マイクロカプセルの約4〜約15重量%を構成する。
【0036】
分散体は、縮合反応が起こって小滴の有機相と水相との間の界面にてポリ尿素を形成する間、約20℃〜約90℃、好ましくは、約40℃〜約60℃の温度範囲で維持される。
【0037】
マイクロカプセルを形成する他の適切な系は、米国特許第4,956,129号に記述されており、ここで、重合体は、エーテル化した尿素−ホルムアルデヒドプレポリマー(そのメチロール基の50〜98%がC-C10アルコールでエーテル化されている)から形成される。このプレポリマーが有機相に添加される。このプレポリマーの自己縮合は、低いpHで、熱作用下にて起こる。
【0038】
マイクロカプセルを形成するために、二相混合物の温度は、約20℃〜約90℃、好ましくは、約40℃〜約90℃、最も好ましくは、約40℃〜約60℃の値まで上げられる。系に依存して、pH値は、適切なレベルに調整され得る。本発明の目的上、pH 2が適当である。
【0039】
以下は、本発明の組成物の調製の実施例である。以下の実施例で使用した成分は、以下である:
・ラムダ−シハロトリン、工業等級(88%純度);
・Solvesso 200芳香族溶媒(Exxonから入手可能);
・二酸化チタン−実施例1および2:USP328−0.3ミクロンの粒径、Whittaker、Clark & Daniels Ltd.から入手;実施例3:Tiosorb UFO2、0.02ミクロンの粒径、Tioxide Specialities Ltd.から入手;
・Hypermer LP1、Hypermer LP5およびAtlox 4912分散剤(ICIから入手可能);
・Reax 100M保護コロイド(リグノスルホン酸のナトリウム塩、40重量%水溶液、Westvaco Chemicalsから入手可能);
・Kelzan(キサンタンガム、Monsantoから入手可能);
・Proxel GXL(殺生物剤、ICIから入手可能)。
【0040】
これらの成分の量は、実施例で示す。
【実施例】
【0041】
(一般的な手順)
ラムダ−シハロトリンのSolvesso 200溶媒の溶液を調製した。分散剤を添加し、続いて、二酸化チタンを添加して、得られた懸濁液を、高せん断撹拌機を用いて撹拌した。二酸化チタンをよく分散した後、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートを添加して、有機相を完成した。
【0042】
この相を、高せん断撹拌機で撹拌しつつ、水相に導入して、水中油型乳濁液を形成した。小滴の平均サイズは、3.0±1ミクロン(実施例1および2)および約12ミクロン(実施例3)であった。次いで、温度を、30分間にわたって50℃まで上げ、この間、穏やかな撹拌を維持し、次いで、50℃で3時間維持した。得られたマイクロカプセルの懸濁液を、室温まで冷却した。実施例1および2では、(マイクロカプセルの水性懸濁液の特性を改良するために)、追加成分を添加し、pHを硫酸で5.0に調整した。
【0043】
(実施例1)
(組成)
【0044】
【数1】

(実施例2)
(組成)
【0045】
【数2】

(実施例3)
(組成)
【0046】
【数3】

(保護効果の測定)
(ガラススライド評価)
実施例1(本発明に従って、表1では、実施例1bとして示す)のように調製した二酸化チタン含有マイクロカプセル試料を、ガラススライドに塗り付け、3日目まで、キセノンランプ(日光に似せた)に暴露した。同様に調製した同一量のマイクロカプセルではあるが、以下に示すように、異なる紫外線保護剤を含有する点(実施例1a)、同様に二酸化チタンを含有するが分散剤を含まない点(実施例1c)、水相だけで二酸化チタンを使用して調製した点(実施例1d)または紫外線保護剤がない点(実施例1e)で、本発明のものとは異なるものを用いて、比較試験を行った。これらのマイクロカプセルを分析して、紫外線の暴露開始時点における処方物中に存在するラムダ−シハロトリンの量、および1日および3日の暴露後に存在する量を測定した。
【0047】
以下の表1の結果から分かるように、本発明に従って製造したマイクロカプセル(実施例1b)は、紫外線によるラムダ−シハロトリンの劣化に対して、最高の保護を与えた。1日の暴露後も、ラムダ−シハロトリンのほとんどは依然として存在していたのに対して、比較マイクロカプセルでは、残留しているラムダ−シハロトリンの量は、最初の量のおよそ1/4からほぼ1/6の範囲であった。3日の暴露後でも、本発明のマイクロカプセルは、依然として、最初に存在していたラムダ−シハロトリンのほぼ半分を含有していた。
【0048】
【表1】

(ワタにおける葉での残留性)
実施例1bとして上で示した物質の試料を、同じ量のラムダ−シハロトリンを含有するが二酸化チタンも分散剤も含まずに同様に調製したマイクロカプセルと比較して、試験した。
【0049】
全てのマイクロカプセル試料を水で希釈し、そして1ヘクタールあたり50gのラムダ−シハロトリンの施用割合で、ワタの木に噴霧した。
【0050】
このワタから葉の試料を取り、以下のように処理し、各処理、各時間に対して、2回の反復試験を行った。
【0051】
各反復試験は、3枚のよく暴露した葉を切り取り、それらをガラスびんに入れ、アセトン500 mlを加え、このびんを閉じ、そして30〜45秒間よく振とうした。次いで、これらの葉を、注意深く、しかし素早く取り出し、乾燥しつつ平らに伸ばし、透明プラスチックシートに挟み、そして複写した。これらの葉を処分し、それらのサイズを、画像分析装置を用いて、その複写物から測定した。
【0052】
次いで、この試料に、移動相2 mlを添加し、びんの内容物を激しく振とうし、次いで、濾過して、逆相高圧液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0053】
施用後、24時間、48時間、72時間、96時間および190時間で、試料を取った。図1は、試験した2個の処方物(一方は、本発明のものであり、他は、二酸化チタンおよび分散剤を含まない類似物である)のラムダ−シハロトリン保持の比較をグラフ形状で示しており、本発明の生成物におけるラムダ−シハロトリン保護が、保護剤のないカプセルと比較して、立証される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、試験した2個の処方物(一方は、本発明のものであり、他は、二酸化チタンおよび分散剤を含まない類似物である)のラムダ−シハロトリン保持の比較をグラフ形状で示しており、本発明の生成物におけるラムダ−シハロトリン保護が、保護剤のないカプセルと比較して、立証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機液体を含むマイクロカプセルであって、該有機液体が、紫外線感受性の生物学的活性物質および効果的な量の微粒子状紫外線保護剤を含有し、該微粒子状紫外線保護剤が、二酸化チタン、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択され、そして該液体中に懸濁され完全に分散されている、マイクロカプセル。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39468(P2007−39468A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294980(P2006−294980)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【分割の表示】特願平8−532244の分割
【原出願日】平成8年4月18日(1996.4.18)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】