説明

産業排水の処理方法及び処理装置

【課題】処理薬剤の使用量を必要最小限に抑えつつ、処理対象成分を確実に処理して、経済的に産業排水を処理することが可能な産業排水の処理方法及び産業排水の処理装置を提供する。
【解決手段】産業排水中の前記処理対象成分の濃度を測定する処理対象成分濃度測定装置12と、処理対象成分濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データ取得手段と、産業排水の流量及び排水時間のデータ取得手段11と、処理薬剤を前記産業排水に添加する処理薬剤添加手段と、共存成分の濃度に基づいて処理対象成分の測定濃度を補正し、該補正された濃度と前記産業排水の流量及び排水時間とに基づいて処理薬剤の添加量を算出する演算装置20と、演算装置20からの信号を受けて処理薬剤を前記算出された添加量で添加する制御装置30とを含む処理装置を用いて排水処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の生産設備から排出される産業排水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業において限りある水資源の節約および地球環境保全の観点から産業排水の再利用が積極的に行われている。また、生産している製品により様々な薬品が使用されているため、排水処理が必須である。
【0003】
例えば、半導体製造工場では半導体のエッチング処理のため大量のフッ酸が使用されており、フッ素イオンを含んだ産業排水が大量に排出される。
【0004】
フッ素イオンを含む産業排水の処理は、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩を加えて排水中のフッ素イオンを不溶化させた後、固液分離して排水中からフッ素を除去する方法が、従来より行われている。
【0005】
フッ素イオンの排出基準値は8mg/L以下であるので、各メーカーではこの基準値を超えないような排水処理を実施している。
【0006】
特許文献1には、フッ素含有水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして沈殿分離する方法において、該フッ素含有水中のフッ素イオン量及びカルシウムと難溶性塩を生成するフッ素イオン以外のイオンの量に基いて、前記カルシウム塩の添加量を設定することを特徴とするフッ素含有水の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−212574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
産業排水中に含まれるフッ素イオンなどの処理対象成分の濃度を正確に把握できれば、処理薬剤の使用量を最適化できる。例えば、フッ素イオンを測定する測定器として、フッ素イオンを選択的に透過するフッ化ランタンを用いたイオン電極方式による測定器がある。この測定器は、低価格で、取り扱いが容易であり、排水処理の監視に広く用いられているが、排水中の陰イオンや金属イオン等の共存成分の影響を受け易く、実際の濃度と、測定濃度とで乖離が生じることが多かった。イオンクロマトグラフなどの精密分析であれば、処理対象成分の濃度を正確に測定できるが、測定に時間や手間を要するため、処理対象成分の濃度に変動が生じた場合、速やかに対応することができなかった。このため、従来より、処理薬剤を過剰に添加して排水基準値を満たすように処理しており、処理薬剤の消費コストや、汚泥処理コストが嵩む問題があった。
【0009】
よって、本発明の目的は、処理薬剤の使用量を必要最小限に抑えつつ、処理対象成分を確実に処理して、経済的に産業排水を処理することが可能な産業排水の処理方法及び産業排水の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の産業排水の処理方法は、産業排水中に含まれる処理対象成分を、処理薬剤によって処理して排水する産業排水の処理方法において、前記産業排水中の前記処理対象成分の濃度を測定する工程と、前記処理対象成分濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データを取得する工程と、前記共存成分の濃度に基づいて前記処理対象成分の測定濃度を補正した補正濃度を求める工程と、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得する工程と、前記処理対象成分の補正濃度と前記産業排水の流量及び排水時間に基づいて、前記処理薬剤の添加量を算出する工程と、前記処理薬剤を前記算出された添加量で添加する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の産業排水の処理方法によれば、産業排水中の処理対象成分の測定濃度を、該測定結果に影響を与える共存成分の濃度に基づいて補正し、その補正濃度と産業排水の流量及び排水時間に基づいて処理薬剤の添加量を算出し、処理薬剤を算出された添加量で添加することにより、処理薬剤の使用量を必要最小限に抑えつつ、処理対象成分を確実に処理して、経済的な排水処理が可能となる。
【0012】
本発明の産業排水の処理方法の前記共存成分の濃度データを取得する工程は、前記産業排水の元となる水溶液の配合データ及び/又は前記共存成分の測定データを取得することによりなされ、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得する工程は、前記産業排水を生じる生産工程のプロセスデータを取得することによってなされることが好ましい。この態様によれば、産業排水の元となる水溶液の配合データ及び/又は共存成分の測定データを取得することにより、変動しやすい成分については測定データによって求め、変動しにくい成分については配合データから求めることができるので、共存成分の濃度を簡易迅速に求めることができる。また、産業排水を生じる生産工程のプロセスデータを取得することにより、産業排水の流量及び排水時間を簡易迅速に求めることができる。
【0013】
本発明の産業排水の処理方法の前記補正濃度を求める工程は、共存成分毎に予め補正率を求めておき、各共存成分の濃度にそれぞれの補正率を掛けて該共存成分に起因する誤差量を算出し、各共存成分に起因する誤差量の合計量を算出し、この合計量を前記測定濃度に対して補正することによってなされることが好ましい。この態様によれば、共存成分毎に予め補正率を求めておくことにより、共存成分に起因する補正量を迅速に求めることができる。
【0014】
本発明の産業排水の処理方法は、前記処理対象成分が、フッ素イオンであり、前記処理薬剤がカルシウム塩であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の産業排水の処理装置は、産業排水中に含まれる処理対象成分を、処理薬剤によって処理して排水する産業排水の処理装置において、前記産業排水中の前記処理対象成分の濃度を測定する処理対象成分濃度測定装置と、前記処理対象成分濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データ取得手段と、前記産業排水の流量及び排水時間のデータ取得手段と、前記処理薬剤を前記産業排水に添加する処理薬剤添加手段と、前記共存成分の濃度に基づいて前記処理対象成分の測定濃度を補正し、該補正された濃度と前記産業排水の流量及び排水時間とに基づいて前記処理薬剤の添加量を算出する演算装置と、該演算装置からの信号を受けて前記処理薬剤を前記算出された添加量で添加する制御装置とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の産業排水の処理装置の前記共存成分の濃度データ取得手段は、前記産業排水の元となる水溶液の配合データベース及び/又は前記共存成分の測定装置からなり、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得手段は、前記産業排水を生じる生産工程のプロセスデータベースからなることが好ましい。
【0017】
本発明の産業排水の処理装置は、前記共存成分毎に予め補正率を求めた補正データベースを更に有し、前記演算装置は、各共存成分の濃度に、前記補正データベースから得られるそれぞれの補正率を掛けて該共存成分に起因する誤差量を算出し、各共存成分に起因する誤差量の合計量を算出し、この合計量を前記処理対象成分の測定濃度に対して補正することにより、前記補正された濃度を得ることが好ましい。
【0018】
本発明の産業排水の処理装置は、前記産業排水が半導体製造工程のエッチング処理で生じる、フッ素イオンを含有する排水であり、前記処理薬剤がカルシウム塩であり、前記処理対象成分濃度測定装置は、フッ素イオンを選択的に透過するフッ化ランタンを用いたイオン電極方式による簡易型フッ化物イオン濃度計であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、産業排水中の処理対象成分の測定濃度を、該測定結果に影響を与える共存成分の濃度に基づいて補正し、その補正濃度と産業排水の流量及び排水時間に基づいて処理薬剤の添加量を算出し、処理薬剤を算出された添加量で添加することにより、処理薬剤の使用量を必要最小限に抑えつつ、処理対象成分を確実に処理して、経済的な排水処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の産業排水の処理装置の概略構成図である。
【図2】同排水処理装置における演算装置でのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の産業排水の処理装置の実施形態を説明する。ただし、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
図1,2には、半導体製造設備1の半導体製造工程のエッチング処理で生じる、フッ素イオンを含有する産業排水の処理に適用した一実施形態が示されている。したがって、この実施形態では、フッ素イオンが、本発明における処理対象成分に該当する。なお、産業排水としては、半導体製造設備から排出されるものに限らず、例えば液晶製造、太陽電池製造、金属表面加工等の生産設備から排出される産業排水の処理にも適用することができる。
【0023】
図1に示すように、この産業排水処理装置は、半導体製造設備1の排水処理に適用されるものである。半導体製造設備1は、エッチング処理工程及び洗浄処理工程を行い、フッ素イオンを含む産業排水が、配管L1を通して装置外に流出される。
【0024】
半導体製造設備1には、原料及び洗浄液の配合組成などを記憶させた配合データベース10が設けられている。また、該設備におけるプロセスデータ信号を送信するプロセスデータ信号送信器11が設けられている。このプロセスデータ信号としては、例えば、排水を生じる各処理の処理時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水量等が挙げられる。
【0025】
配管L1は、フッ素イオン濃度計12が設置され、原水タンク3に連結している。この実施形態では、フッ素イオン濃度計12が、本発明における処理対象成分濃度測定装置に相当する。フッ素イオン濃度計としては、連続して測定できるものであればよく、排水処理において従来一般的に用いられているものを用いることができる。例えば、フッ素イオンを選択的に透過するフッ化ランタンを用いたイオン電極方式による簡易型フッ化物イオン濃度計は、安価で取り扱い性が良いため、好ましく用いることができる。
【0026】
原水タンク3から、配管L2が伸びて、沈殿槽4に接続している。配管L2には、カルシウム塩タンク5内のカルシウム塩が、ポンプP1を介して流入するようになっている。カルシウム塩の添加量は、演算装置20により算出された添加量となるように、演算装置20からの信号を受けて、制御装置30によってポンプP1を制御することによって調整されるようになっている。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が用いられる。この実施形態では、カルシウム塩が、本発明における処理薬剤に相当する。
【0027】
沈殿槽4には、凝集剤タンク6内の凝集剤が、ポンプP2を介して流入するようになっている。凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム等が挙げられる。沈殿槽4の底部には、配管L3が設けられており、底部に沈降した汚泥は、配管L3を通して系外に排出される。また、沈殿槽4の上部側壁には、配管L4が設けられており、上澄水が下水放流される。
【0028】
次に、上記した処理装置を用いて半導体製造設備1の半導体製造工程のエッチング処理で生じる、フッ素イオンを含有する産業排水を処理する場合を例に挙げて、本発明の産業排水の処理方法の一実施形態を説明する。
【0029】
半導体製造設備1から排出される産業排水を、配管L1を通して原水タンクに一時的に貯留する。
【0030】
配管L1を流通する産業排水のフッ素イオン濃度は、フッ素イオン濃度計12で測定し、演算装置20に入力する。
【0031】
また、半導体製造設備1におけるプロセスデータ信号を、プロセスデータ信号送信器11から演算装置20に入力する。
【0032】
また、フッ素イオン濃度計12におけるフッ素イオン濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データを配合データベース10から取得して、演算装置20に入力する。共存成分の濃度データとしては、配合データベース10の他に、半導体製造設備1から排出される産業排水の一部を取出して分析した測定値を用いてもよい。なお、共存成分の濃度データは、生産工程で使用される原料及び洗浄液が決められていれば、殆ど変動しないと考えられるため、産業排水の分析は毎回行う必要がなく、使用原料の変更や、製品変更があった場合にのみ測定すればよい。更に、共存成分の濃度データとして、一部の共存成分のみ、産業排水を分析した測定値を用い、その他の成分については配合データベース10の値を用いてもよい。
【0033】
原水タンク3に貯留した産業排水は、配管L2から引き抜き、カルシウム塩を添加して沈殿槽4に送液する。
【0034】
カルシウム塩の添加量は、演算装置20により算出された添加量となるように、演算装置20からの信号を受けて、制御装置30によってポンプP1を制御することによって調整する。以下、演算装置20で行われるカルシウム塩の添加量の算出処理について、図2を用いて説明する。
【0035】
この演算装置20は、フッ素イオン濃度算出部21と、処理薬剤添加量算出部22とを備える。
【0036】
フッ素イオン濃度算出部21では、共存成分毎に予め補正率を求めた補正データベースを参照して、各共存成分の濃度に、それぞれの補正率を掛けて誤差量を算出し、各共存成分に起因する誤差量の合計量と、フッ素イオン濃度計12の測定値とを合計することにより、補正されたフッ素イオン濃度、すなわち、推定される真のフッ素イオン濃度を算出する。すなわち、下式(1),(2)の演算を行って、推定される真のフッ素イオン濃度を算出する。
【0037】
(各共存成分に起因する誤差量の合計量)
=(成分Aの濃度×成分Aの補正率)+(成分Aの濃度×成分Aの補正率)・・・+(成分Aの濃度×成分Aの補正率) ・・・(1)
(真のフッ素イオン濃度)=(フッ素イオン濃度計11の測定値)+(各共存成分に起因する誤差量の合計量) ・・・(2)
【0038】
ここで、補正データベースの補正率は、共存する成分の濃度Xiにより、フッ素濃度計12による測定値が、真のフッ素イオン濃度に対して影響を受ける値(真の濃度−測定値)をXFとしたとき、Xf/Xiで求めることができる。
【0039】
例えば、簡易型フッ化物イオンセンサ(東亜DKK製)における、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの補正率は、表1に示すような値を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
例えば、カルシウムイオンを1mol含む場合においては、フッ素イオン濃度計11の測定値に対して、1mol(カルシウムイオン濃度)×1(補正率)=1molを、誤差量として加える。また、マグネシウムイオンを1mol含む場合においては、フッ素イオン濃度計11の測定値に対して、1mol(マグネシウムイオン濃度)×0.1(補正率)=0.1molを誤差量として加える。また、リン酸イオンを1mol含む場合においては、フッ素イオン濃度計11の測定値に対して、1mol(リン酸イオン濃度)×(−0.001)(補正率)=−0.001molを誤差量として加える。すなわち、各共存成分の濃度に、それぞれの補正率を掛けて、共存成分に起因する誤差量を算出し、その合計量を測定濃度に対して補正することによって、真の濃度を算出することができる。ただし、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどの陰イオンは、極めて誤差量が小さいので、これらの濃度が低い産業排水の場合は、実質的には無視してもよい。
【0042】
なお、共存成分の濃度は、配合データベース10だけでなく、例えば、カルシウムなどのように製造工程中に変動し易い成分については、実際に産業排水中の当該成分濃度を測定した値を用いてもよい。
【0043】
処理薬剤添加量算出部22には、フッ素イオン濃度算出部21での算出結果と、プロセスデータ信号送信器11からのプロセスデータ信号が入力され、これらのデータに基づいてカルシウム塩の添加量を算出する。すなわち、算出されたフッ素イオン濃度と、産業排水の流量及び排水時間に基づいて、添加すべきカルシウム塩の量を算出する。
【0044】
このようにして演算装置20で算出した添加量を、制御装置30に入力する。制御装置30では、演算装置20により算出された添加量となるようにポンプP1を制御し、カルシウム塩の添加量を調整する。
【0045】
こうして、所定量のカルシウム塩が添加された産業排水を、沈殿槽4に送液し、ここで、ポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を添加して、カルシウムイオンとフッ素インとが反応して生成したフッ化カルシウムを凝集沈殿させる。
【0046】
沈殿槽4の底部に設けられた配管L3から汚泥を排出するとともに、上部側壁に設けられた配管L4から上澄水を排出して下水放流する。
【0047】
このように、本発明によれば、産業排水中の処理対象成分(この実施形態では、フッ素イオン)の測定濃度を、該測定結果に影響を与える共存成分(この実施形態では、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなど)の濃度に基づいて補正して、真の処理対象成分の濃度を求め、該濃度データに基づいて、処理対象成分の処理に必要な処理薬剤(この実施形態ではカルシウム塩)の添加量を算出するので、処理薬剤の使用量を必要最小限に抑えつつ、処理対象成分を確実に処理できる。
【実施例】
【0048】
以下の表2に示す共存成分を含有する産業排水A,Bについて、簡易型フッ化物イオンセンサ(東亜DKK製)で測定した値(補正前の値)、本発明の方法により該フッ素イオン濃度を共存成分に起因する誤差量を補正して算出した値(補正後の値)、イオンクロマトグラフ法により測定した値(分析値)を表3にまとめて記す。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
上記結果から明らかなように、簡易型フッ化物イオンセンサ(東亜DKK製)で測定したフッ素イオン濃度を、共存成分に起因する誤差量を補正することで、分析値に極めて近い値が得られた。
【符号の説明】
【0052】
1:半導体製造設備
3:原水タンク
4:沈殿槽
5:カルシウム塩タンク
6:凝集剤タンク
11:プロセスデータ信号送信器
12:フッ素イオン濃度計
20:演算装置
21:フッ素イオン濃度算出部
22:処理薬剤添加量算出部
30:制御装置
L1〜L4:配管
P1、P2:ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業排水中に含まれる処理対象成分を、処理薬剤によって処理して排水する産業排水の処理方法において、前記産業排水中の前記処理対象成分の濃度を測定する工程と、前記処理対象成分濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データを取得する工程と、前記共存成分の濃度に基づいて前記処理対象成分の測定濃度を補正した補正濃度を求める工程と、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得する工程と、前記処理対象成分の補正濃度と前記産業排水の流量及び排水時間に基づいて、前記処理薬剤の添加量を算出する工程と、前記処理薬剤を前記算出された添加量で添加する工程とを含むことを特徴とする産業排水の処理方法。
【請求項2】
前記共存成分の濃度データを取得する工程は、前記産業排水の元となる水溶液の配合データ及び/又は前記共存成分の測定データを取得することによりなされ、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得する工程は、前記産業排水を生じる生産工程のプロセスデータを取得することによってなされる、請求項1記載の産業排水の処理方法。
【請求項3】
前記補正濃度を求める工程は、共存成分毎に予め補正率を求めておき、各共存成分の濃度にそれぞれの補正率を掛けて該共存成分に起因する誤差量を算出し、各共存成分に起因する誤差量の合計量を算出し、この合計量を前記測定濃度に対して補正することによってなされる、請求項1又は2記載の産業排水の処理方法。
【請求項4】
前記処理対象成分が、フッ素イオンであり、前記処理薬剤がカルシウム塩である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の産業排水の処理方法。
【請求項5】
産業排水中に含まれる処理対象成分を、処理薬剤によって処理して排水する産業排水の処理装置において、前記産業排水中の前記処理対象成分の濃度を測定する処理対象成分濃度測定装置と、前記処理対象成分濃度の測定結果に影響を与える共存成分の濃度データ取得手段と、前記産業排水の流量及び排水時間のデータ取得手段と、前記処理薬剤を前記産業排水に添加する処理薬剤添加手段と、前記共存成分の濃度に基づいて前記処理対象成分の測定濃度を補正し、該補正された濃度と前記産業排水の流量及び排水時間とに基づいて前記処理薬剤の添加量を算出する演算装置と、該演算装置からの信号を受けて前記処理薬剤を前記算出された添加量で添加する制御装置とを含むことを特徴とする産業排水の処理装置。
【請求項6】
前記共存成分の濃度データ取得手段は、前記産業排水の元となる水溶液の配合データベース及び/又は前記共存成分の測定装置からなり、前記産業排水の流量及び排水時間のデータを取得手段は、前記産業排水を生じる生産工程のプロセスデータベースからなる、請求項5記載の産業排水の処理装置。
【請求項7】
前記共存成分毎に予め補正率を求めた補正データベースを更に有し、前記演算装置は、各共存成分の濃度に、前記補正データベースから得られるそれぞれの補正率を掛けて該共存成分に起因する誤差量を算出し、各共存成分に起因する誤差量の合計量を算出し、この合計量を前記処理対象成分の測定濃度に対して補正することにより、前記補正された濃度を得る、請求項5又は6記載の産業排水の処理装置。
【請求項8】
前記産業排水が半導体製造工程のエッチング処理で生じる、フッ素イオンを含有する排水であり、前記処理薬剤がカルシウムであり、前記処理対象成分濃度測定装置は、フッ素イオンを選択的に透過するフッ化ランタンを用いたイオン電極方式による簡易型フッ化物イオン濃度計である、請求項5〜7のいずれか1つに記載の産業排水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−250219(P2012−250219A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127072(P2011−127072)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】