説明

産業用加熱システムとその制御方法

【課題】外気や加熱室排気の温度が変化しても最適条件で運転することができる産業用加熱システムを提供する。
【解決手段】本発明の産業用加熱システムは、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と、加熱室の排気又は加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して第1の熱交換器に供給する圧縮機と、を有するヒートポンプ装置と、第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、圧縮機及びボイラ装置を駆動制御する制御装置と、を有し、制御装置は、圧縮機の入口温度に対して、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータが最小となる圧縮機の出口温度を設定した検定曲線を用いて圧縮機の出力を制御し、圧縮機の出口温度と、加熱室の入口温度とに基づいてボイラ装置の出力を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用加熱システムとその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用加熱システムとして、ヒートポンプとボイラとを組み合わせた蒸気供給システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−308164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボイラとヒートポンプを組み合わせた加熱システムでは、外気や加熱室排気の温度によってヒートポンプの性能(COP)が変化するため、システム全体を最適化した状態で運転することが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、外気や加熱室排気の温度が変化しても最適条件で運転することができる産業用加熱システムとその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の産業用加熱システムは、外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室に供給する産業用加熱システムであって、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と、前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機と、を有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、前記圧縮機及び前記ボイラ装置を駆動制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記圧縮機の入口温度に対して、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を設定した検定曲線を用いて前記圧縮機の出力を制御し、前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の産業用加熱システムは、外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室に供給する産業用加熱システムであって、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と、前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機と、を有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、前記圧縮機及び前記ボイラ装置を駆動制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記圧縮機の出口温度を設定するパラメータ設定動作と、前記圧縮機の入口温度及び設定した前記出口温度に基づいて前記圧縮機の圧力及び消費動力を計算する圧縮機演算動作と、前記第1の熱交換器の伝熱計算により、前記第1の熱交換器の作動媒体の出口温度と、前記第1の熱交換器の出口における前記加熱空気の温度とを計算する熱交換器演算動作と、前記圧縮機の消費動力に基づいて前記ヒートポンプ装置の一次エネルギーを算出するヒートポンプエネルギー演算動作と、前記第1の熱交換器から出力される前記加熱空気を前記加熱室の入口温度にまで昇温するために必要な前記ボイラ装置の一次エネルギーを算出するボイラエネルギー演算動作と、前記ヒートポンプ装置及び前記ボイラ装置のそれぞれの一次エネルギーに基づいて、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを算出する目標パラメータ算出動作と、を前記圧縮機の出口温度を変化させつつ繰り返し実行することにより、前記目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を探索し、当該探索動作により取得された前記圧縮機の出口温度に基づいて前記圧縮機の出力を制御するヒートポンプ装置制御動作と、取得された前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するボイラ装置制御動作と、を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用加熱システムの制御方法は、加熱対象物を収容する加熱室と、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機とを有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、を有する産業用加熱システムの制御方法であって、前記圧縮機の入口温度に対して、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を設定した検定曲線を用いて前記圧縮機の出力を制御するステップと、前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用加熱システムの制御方法は、加熱対象物を収容する加熱室と、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機とを有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、を有する産業用加熱システムの制御方法であって、前記圧縮機の出口温度を設定するパラメータ設定ステップと、前記圧縮機の入口温度及び設定した前記出口温度に基づいて前記圧縮機の圧力及び消費動力を計算する圧縮機演算ステップと、前記第1の熱交換器の伝熱計算により、前記第1の熱交換器の作動媒体の出口温度と、前記第1の熱交換器の出口における前記加熱空気の温度とを計算する熱交換器演算ステップと、前記圧縮機の消費動力に基づいて前記ヒートポンプ装置の一次エネルギーを算出するヒートポンプエネルギー演算ステップと、前記第1の熱交換器から出力される前記加熱空気を前記加熱室の入口温度にまで昇温するために必要な前記ボイラ装置の一次エネルギーを算出するボイラエネルギー演算ステップと、前記ヒートポンプ装置及び前記ボイラ装置のそれぞれの一次エネルギーに基づいて、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを算出する目標パラメータ算出ステップと、を前記圧縮機の出口温度を変化させつつ繰り返し実行することにより、前記目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を探索し、当該探索動作により取得された前記圧縮機の出口温度に基づいて前記圧縮機の出力を制御するヒートポンプ装置制御ステップと、取得された前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するボイラ装置制御ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外気や加熱室排気の温度が変動した場合でも、一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを最小にした状態で運転可能な産業用加熱システムが提供される。
また本発明によれば、外気や加熱室排気の温度が変動した場合でも、一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを最小にした状態で運転条件を設定することができる産業用加熱システムの制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る加熱システムを示す概略図。
【図2】制御装置70に備えられる検定曲線の一例を示すグラフ。
【図3】加熱システムの一次エネルギーを計算した結果を示すグラフ。
【図4】加熱システムの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る加熱システムを示す概略図である。
加熱システム(産業用加熱システム)S1は、図1に示すように、加熱室12と、圧縮機14と、動力回収機16と、第1の熱交換器18と、第2の熱交換器19と、ボイラ装置BLRと、制御装置70とを備えている。圧縮機14と動力回収機16と第1の熱交換器18とがヒートポンプ装置HPが構成する。制御装置70は、加熱システムS1の全体を統括的に制御する。
なお、加熱システムS1の構成は、設計要求に応じて適宜変更可能である。
【0014】
加熱システムS1において、外気(系外の空気)を取り入れる吸気部Aに、第1の熱交換器18の低温側入口部183が接続されている。第1の熱交換器18の低温側出口部184に、第2の熱交換器19の高温側入口部191が接続されている。第2の熱交換器19の高温側出口部192に加熱室12の入口部121が接続されている。加熱室12の出口部122に圧縮機14の入口部が接続され、圧縮機14の出口部には第1の熱交換器18の高温側入口部181が接続されている。第1の熱交換器18の高温側出口部182には動力回収機16の入口部が接続され、動力回収機16の出口部は、排気を系外に排出する排気部Bに接続されている。
【0015】
加熱室12内に、加熱対象物120が収容される。加熱システムS1は、第1の熱交換器18から加熱室12に供給される加熱空気を加熱室12内で加熱対象物120に接触させ、加熱対象物120を加熱する。
加熱対象物120は、産業部品や産業材料である。例えば、加熱室12において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が乾燥処理される。あるいは、加熱室12において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が熱処理(例えば、熱硬化処理など)される。なお、汚泥、紙、木材、樹脂、薬剤、薬品、砂、家庭ごみ、産業ごみ、工芸品、工芸材料、電気部品、電気機器、塗装物、産業用衣類、機械部品、機械製品、食料、食材、食料品など、様々な物体を加熱対象物120とすることができる。
【0016】
加熱室12には、必要に応じて不図示の移送装置を設けることができる。一例において、移送装置は、コンベア、搬送車、搬送ロボットなどの様々な形態を有することができる。移送装置によって、加熱対象物120が加熱室12内に搬入/搬出される。代替的又は追加的に、加熱室12は、加熱後の加熱対象物120の取り出しのために、ゲート式、旋回式などの形態を有する搬出部を備えることができる。上記搬出部は、必要に応じて加熱した加熱対象物120に化学処理などの所定の処理を行う機構を有することができる。
【0017】
本実施形態において、移送装置は、加熱室12内で加熱対象物120を移動させる機能を有していてもよい。また加熱室12に、不図示の脱水装置をさらに設け、それによって加熱対象物120を脱水することもできる。脱水の際、加熱対象物120の必要に応じて凝集剤を添加することができる。脱水は、遠心式、加圧式、圧搾式、振動式など、対象物に応じて様々な形態が適用可能である。脱水により、加熱対象物120の容量が減少する。また、加熱室12は、必要に応じて、加熱室12に入る前の加熱対象物120に熱を与える予熱室をさらに有することができる。
【0018】
圧縮機14は、加熱室12から排出される加熱空気を圧縮し、第1の熱交換器18に対して供給する。圧縮に伴い、加熱空気の温度が上昇する。圧縮機14は、遠心圧縮機、軸流圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、空気圧縮に適するものが好ましく適用される。圧縮機14には図示略の駆動源から動力が供給される。圧縮機14の圧縮比(圧力比)は、加熱システムS1の仕様に応じて適宜に設定される。
【0019】
動力回収機16は、例えばタービン発電機である。タービン発電機としては、ブレード式、スクリュー式など、空気流れに適するものが好ましく適用される。動力回収機16は、第1の熱交換器18から排出された空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。本実施形態の場合、動力回収機16で回収した動力は、圧縮機14で使用される。
動力回収機16からの排気は、本実施形態の場合、排気部Bの排気管を介して外部に放出される。排気部Bの排気管には、必要に応じて、ポンプなどの流体駆動部、バルブなどの流量制御部(不図示)、フィルタなどの排出ガス処理装置を設けることもできる。
【0020】
第1の熱交換器18は、低温側流路18aと高温側流路18bとを有する。低温側流路18aには、吸気部Aで取り込まれた外気が供給される。高温側流路18bには、加熱室12から排出され、圧縮機14で圧縮されるとともに昇温された加熱空気が供給される。これにより、低温側流路18aを流通する外気が高温側流路18bを流通する加熱空気との熱交換によって加熱される。
【0021】
第2の熱交換器19は、低温側流路19aと、高温側流路19bとを有する。低温側流路19aには、第1の熱交換器18で生成された加熱空気が供給される。高温側流路19bには、ボイラ装置BLRで生成された蒸気が供給される。ボイラ装置BLRは、蒸気ボイラであり、公知のボイラ装置を単独又は複数組み合わせて用いることができる。
【0022】
第2の熱交換器19では、低温側流路19aを流通する加熱空気が、蒸気との熱交換によってさらに加熱される。昇温された加熱空気は、高温側出口部192を介して排出され、加熱室12へ供給される。加熱空気の加熱に用いられた後の蒸気はドレンDRNに排出される。
【0023】
以上の構成を備えた加熱システムS1において、吸気部Aから取り入れられた外気(例えば20℃)は、第1の熱交換器18に供給される。第1の熱交換器18に導入された外気は、作動媒体との熱交換により加熱されて加熱空気(例えば130℃)となり、第2の熱交換器19に供給される。第2の熱交換器19では、ボイラ装置BLRから供給される蒸気により加熱空気がさらに昇温され(例えば150℃)、加熱室12に供給される。加熱室12では、供給された加熱空気と加熱対象物120との接触により、加熱対象物120が加熱され、所望の熱処理、乾燥処理等が実施される。
【0024】
加熱処理に用いられた後、加熱室12の出口部122から排出された加熱空気(例えば100℃)は、圧縮機14に供給される。圧縮機14で圧縮され昇温された加熱空気(例えば140℃)は、第1の熱交換器18の高温側入口部181に供給され、第1の熱交換器18において外気を加熱する作動媒体として用いられる。第1の熱交換器18の高温側出口部182から排出された加熱空気(例えば30℃)は、動力回収機16に供給される。
【0025】
動力回収機16では、導入された加熱空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。動力回収機16で回収された動力は、圧縮機14の駆動源に供給され、圧縮機14の動力として利用される。動力回収機16から排出された空気(例えば15℃)は、排気部Bから外部へ排出される。
【0026】
[制御装置]
次に、本実施形態の加熱システムS1に備えられた制御装置について説明する。
本実施形態の加熱システムS1では、制御装置70により、ヒートポンプ装置HPとボイラ装置BLRの出力比が適切に制御され、加熱システムS1全体の一次エネルギーを最小化した状態で運転することができる。そして、制御装置70の形態としては、検定曲線を用いて上記出力比を設定する構成と、加熱システムS1の各部の温度情報等に基づいた演算処理により上記出力比を設定する構成とが挙げられる。以下、検定曲線を用いる構成を第1形態、演算処理を用いる構成を第2形態として説明する。
【0027】
<制御装置の第1形態>
図2は、制御装置70に備えられる検定曲線の一例を示すグラフである。図2のグラフの横軸は圧縮機入口温度、縦軸は圧縮機出口温度である。
図2に示す検定曲線は、加熱システムS1の一次エネルギーが最小となるときの圧縮機14の入口温度と出口温度の関係を示すものとして作成されている。第1形態の制御装置は、図2に示す検定曲線に基づいてヒートポンプ装置HP及びボイラ装置BLRを制御し、一次エネルギーが最小化された状態で加熱システムS1を運転する。
【0028】
具体的には、制御装置70において、圧縮機14の入口温度Tcmpinを用いた検定曲線の参照が行われ、設定すべき出口温度Tcmpoutが取得される。そして、制御装置70は、この出口温度Tcmpoutに一致するように圧縮機14の運転条件(回転数等)を調整することでヒートポンプ装置HPの出力を制御する。また、圧縮機14の運転条件を設定した後に生成される加熱空気の温度Thpoutを、加熱室12の入口温度(入口部121における加熱空気の設定温度)にまで昇温するために必要な熱量を供給するように、ボイラ装置BLRの出力(蒸気流量等)を制御する。
上記の動作により、ヒートポンプ装置HPとボイラ装置BLRの出力比が、加熱システムS1全体で一次エネルギーを最小化するように設定され、加熱システムS1の運転条件が最適化される。
【0029】
図2に示す検定曲線の作成手順について以下に詳細に説明する。
検定曲線の作成は、圧縮機14の入口温度に対して複数の出口温度を設定し、設定した出口温度毎に加熱システムS1の一次エネルギーを算出することで、上記入口温度に対して一次エネルギーが最小となる出口温度を探索する過程を、複数の入口温度に対して実行することにより行う。以下、さらに具体的に説明する。
【0030】
(1)まず、圧縮機14の入口温度Tcmpinを取得する。
入口温度Tcmpinは、圧縮機14の入口部に温度計を設置して計測してもよいし、加熱室12の出口部122に設置した温度計により加熱室12の排気温度を測定し、かかる排気温度からの温度低下分(図1では0℃)を差し引いて求めてもよい。なお、吸気部Aから取り入れられる外気の温度も取得する。
【0031】
(2)次に、圧縮機14の出口温度Tcmpout(設定値)を設定する。例えば、出口温度Tcmpoutの設定範囲における最小値に設定する。このときの設定値は上記設定範囲内で任意に設定することができる。
【0032】
(3)次に、設定した出口温度Tcmpoutにおける圧縮機14の圧力pcmpin[kPa]を求める。圧力pcmpinは直接計測してもよいが、圧縮機14の効率ηcmpが既知であれば、入口温度Tcmpin、出口温度Tcmpout(設定値)を用いた目標値探索計算により求めることができる。
【0033】
まず、圧力pcmpinを仮の値に設定し、下記式(a)〜(c)の物性計算式により、圧縮機14の入口部におけるエンタルピーhcmpin[kJ/kg]、エントロピーscmpin[kJ/kg/K]、及び断熱圧縮後のエンタルピーhad[kJ/kg]を求める。その後、上記の値及び圧縮機14の効率ηcmpと、式(d)、(e)から、圧縮機14の出口部におけるエンタルピーhcmpout[kJ/kg]、出口温度Tcmpout(計算値)を算出する。
【0034】
【数1】

【0035】
次いで、上記(a)〜(e)により求めた出口温度Tcmpout(計算値)を、先のステップ2で設定した出口温度Tcmpout(設定値)と比較する。比較の結果、出口温度Tcmpout(計算値)と出口温度Tcmpout(設定値)とが一致していれば、次のステップ4へ移行する。
【0036】
一方、出口温度Tcmpout(計算値)が出口温度Tcmpout(設定値)よりも大きい場合には、圧力pcmpinを下げた仮定値を再設定し、式(a)〜(e)による再計算を実施する。また、出口温度Tcmpout(計算値)が出口温度Tcmpout(設定値)よりも小さい場合には、圧力pcmpinを上げた仮定値を再設定し、式(a)〜(e)による再計算を実施する。これにより、圧力pcmpinを正しく算出することができる。
【0037】
(4)次に、第1の熱交換器18の伝熱計算を実施し、第1の熱交換器18の高温側空気の温度Ttbnin(高温側出口部182から排出される加熱空気の温度;動力回収機16の入口温度)と、低温側空気の温度Thpout(低温側出口部184から排出される加熱空気の温度;ヒートポンプ装置HPの出口温度)を計算する。これらの計算には、例えば下記(f)を用いることができる。式(f)において、Wは熱交換量、Kは熱貫流率、Aは伝熱面積、Tは平均対数温度差である。
【0038】
【数2】

【0039】
(5)次に、動力回収機16の出口部におけるエンタルピーhtbnout[kJ/kg]を計算する。計算は、下記式(g)〜(j)を用いて実施することができる。
なお、本実施形態では、第1の熱交換器における圧力損失がなく、動力回収機16の出口側は大気であるから、ptbnin=pcmpout、ptbnout=pamb(大気圧)として計算を実施することができる。
【0040】
【数3】

【0041】
式(g)(h)では、動力回収機16の入口部における圧力ptbnin、温度Ttbninを用いた物性計算により、動力回収機16の入口部におけるエンタルピーhtbnin[kJ/kg]及びエントロピーstbnin[kJ/kg/K]を求める。また式(i)では、動力回収機16の出口部における圧力ptbnout[kPa]と、上記エントロピーstbninを用いた物性計算により、断熱膨張後のエンタルピーhad[kJ/kg]を求める。そして、式(j)により、上記エンタルピーhtbnin、had、及び動力回収機16の効率ηtbnを用いて、動力回収機16の出口部におけるエンタルピーhtbnout[kJ/kg]を求めることができる。
【0042】
(6)次に、下記式(k)により、圧縮機14の消費動力と動力回収機16の回収動力とを用いて、ヒートポンプ装置HPの動力を計算する。式(k)において、Whp[kJ/kg]はヒートポンプ装置HPの動力、Gairは空気の質量流量である。
なお、ヒートポンプ装置HP中に無視できない熱損失や圧力損失がある場合には、下記式(k)に繰り入れて計算を実施する。
【0043】
【数4】

【0044】
(7)次に、下記式(l)により、ヒートポンプ装置HPの発電効率ηelecを用いて、ヒートポンプ装置HPにおける電力の一次エネルギーEelec[kJ/kg]を計算する。
【0045】
【数5】

【0046】
(8)次に、下記式(m)により、ヒートポンプ装置HPの出口部(第1の熱交換器18の低温側出口部184)における加熱空気の温度Thpoutである加熱空気を、加熱室12の入口部121における入口温度(加熱プロセスの設定温度)にまで昇温するのに必要な熱量を計算する。式(m)において、Wsteamは第2の熱交換器19において必要な熱量、hprocin[kJ/kg]は加熱室12の入口部121におけるエンタルピー、ηsteamは第2の熱交換器19における加熱効率である。
【0047】
【数6】

【0048】
(9)に次に、下記式(n)、(o)により、ボイラ装置BLRにおける一次エネルギー(燃料投入量)を計算する。式(n)、(o)において、Wfuel[kJ/kg]はボイラ装置BLRから供給すべき熱量(燃料投入量)、ηboilerはボイラ装置BLRの効率、Efuel[kJ/kg]はボイラ装置BLRの一次エネルギーである。
【0049】
【数7】

【0050】
(10)次に、下記式(p)により、加熱システムS1全体の一次エネルギーを計算する。
【0051】
【数8】

【0052】
以上のステップ1〜10により、圧縮機14の出口温度Tcmpoutを設定したときの加熱システムS1全体の一次エネルギーを計算することができる。そしてこの計算を、複数の出口温度Tcmpoutについて実施することで、圧縮機14の出力(ヒートポンプ装置HPの出力)を変化させたときの加熱システム全体の一次エネルギーの変化の態様(一次エネルギー曲線)を取得することができる。
【0053】
図3は、上記の一次エネルギー計算を、圧縮機14の入口温度Tcmpinが70℃、80℃、90℃、100℃である場合について、それぞれ出口温度Tcmpoutを130℃、140℃、150℃、160℃に設定して一次エネルギーを計算した結果を示すグラフである。
【0054】
図3に示すように、例えば圧縮機14の入口温度Tcmpinと出口温度Tcmpoutをパラメータとして演算を実行することで、出口温度Tcmpoutを変えたときの加熱システムS1の一次エネルギーを算出することができる。そして、図3におけるプロットをカーブフィッティングした一次エネルギー曲線を見ると、いずれの曲線も極小値を有しており、一次エネルギーが最小となる最適な出口温度Tcmpout、すなわち圧縮機14とボイラ装置BLRの最適な出力比が存在することがわかる。
【0055】
下記表1に、図3において一次エネルギーが最小となるとき(破線の丸印を付して示す位置)の入口温度と出口温度を示す。このようにして得られた表1の関係から、図2に示した検定曲線を得ることができる。図2に示したグラフは、表1に示す入口温度と出口温度をプロットするとともに、二次関数でカーブフィッティングした検定曲線である。なお、検定曲線の作成方法は、複数のプロットをカーブフィッティングする方法に限られず、プロット間を補完する方法で作成することもできる。
【0056】
【表1】

【0057】
以上に説明した第1の形態の制御装置70によれば、圧縮機14の入口温度Tcmpinに対して加熱システムS1の一次エネルギーを最小とする出口温度Tcmpoutを設定した検定曲線を備えているので、外気の温度や加熱室12の出口部122における排気温度が変動したときに、設定すべき出口温度Tcmpoutを容易かつ迅速に取得することができる。そして、かかる出口温度に基づいてヒートポンプ装置HPの出力を制御するとともに、加熱室12の設定入口温度となるようにボイラ装置BLRの出力を制御することで、一次エネルギー最小の運転状態を容易に得ることができる。
【0058】
<制御装置の第2形態>
先の第1形態では、一次エネルギーが最小となる入口温度Tcmpinと出口温度Tcmpoutとの関係を予め設定した検定曲線を用いる場合について説明したが、制御装置70が、上記検定曲線の作成と同様の演算処理を実行する演算装置を備える構成とすることもできる。
すなわち、圧縮機14の入口温度Tcmpinが与えられたときに、先に示したステップ1〜10の演算を実行することにより、加熱システムS1の一次エネルギーが最小となる出口温度Tcmpoutを探索する目標値探索計算を実施する演算装置を備えた構成である。
【0059】
このように制御装置70における演算処理によって最適な出口温度Tcmpoutを算出する構成とした場合にも、かかる出口温度Tcmpoutに基づいてヒートポンプ装置HPの出力を制御し、加熱室12の設定入口温度に昇温するための不足熱量をボイラ装置BLRで賄うようにボイラ装置BLRの出力を制御することで、一次エネルギー最小の状態で加熱システムS1を運転することができる。
第2形態のように演算装置を備えた構成とすることで、入口温度Tcmpinに対してより正確に出口温度Tcmpoutを計算することができ、より最適な状態で加熱システムS1を運転することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態で説明した運転条件の最適化動作は、外気の温度又は加熱室12の排気温度が変動する度に行うことが好ましい。かかる最適化動作を実行するためのしきい値となる温度の変動幅は、1℃〜10℃程度の範囲内で適宜設定することができる。
【0061】
また本実施形態では、加熱システムS1の一次エネルギーを最小化する出口温度Tcmpoutを設定する場合について説明したが、最適な運転状態を得るための目標パラメータとしては、一次エネルギーの他に、運転コスト又はCO排出量を用いることができる。
【0062】
目標パラメータとして運転コストを用いる場合には、ステップ7においてヒートポンプ装置HPの一次エネルギーから電力コストを算出するとともに、ステップ9においてボイラ装置BLRの一次エネルギーから燃料コストを算出する。そして、ステップ10においてこれらの電力コストと燃料コストを合算したものを運転コストとし、この運転コストを最小化するための出口温度Tcmpoutを探索すればよい。
【0063】
一方、目標パラメータとしてCO排出量を用いる場合には、ステップ7においてヒートポンプ装置HPの一次エネルギーからCO排出量を算出するとともに、ステップ9においてボイラ装置BLRの一次エネルギーからCO排出量を算出する。そして、ステップ10において合計のCO排出量を最小化するための出口温度Tcmpoutを探索すればよい。
【0064】
また本実施形態では、圧縮機14の入口温度Tcmpinから、設定すべき出口温度Tcmpoutを取得する検定曲線あるいは演算装置を備えた構成について説明したが、設定すべきパラメータを変更することもできる。例えば、出口温度Tcmpoutに代えて、第1の熱交換器18の低温側出口部184における加熱空気の温度Thpoutや、圧縮機14の出口部における圧力pcmpoutを用いてもよい。これらのパラメータもヒートポンプ装置HPの出力を示すものであるため、出口温度Tcmpoutと同様に用いることができる。
【0065】
また本実施形態では、加熱室12に供給される加熱空気の温度が150℃であるとして説明したが、これに限られるものではない。加熱室12に供給される加熱空気の温度は、例えば、約90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180℃以上とすることができる。
【0066】
(変形例)
上記実施形態では、動力回収機16を備えた構成としたが、熱交換器を用いて排熱を回収する方式のヒートポンプを備えた構成としてもよい。図4は、排熱回収型のヒートポンプ装置HPを備えた加熱システム(産業用加熱システム)S2を示す図である。
【0067】
図4に示す加熱システムS2は、圧縮機14と、第1の熱交換器18と、膨張弁21と、第3の熱交換器20とを配管を介して接続した作動媒体回路を有するヒートポンプ装置HPと、第2の熱交換器19と、ボイラ装置BLRと、加熱室12と、制御装置70と、を有する。
第3の熱交換器20は、加熱室12の排気が流通する高温側流路20aと、ヒートポンプ装置HPの作動媒体が流通する低温側流路20bとを有する。加熱室12の排気は、高温側入口部203を介して高温側流路20aに導入され、高温側出口部204から外部へ排出される。作動媒体は、低温側入口部201を介して低温側流路20bに導入され、低温側出口部202から外部へ排出される。
【0068】
外気を取り入れる吸気部Aは、第1の熱交換器18の低温側入口部183に接続されている。第1の熱交換器18の低温側出口部184は第2の熱交換器19の高温側入口部191に接続されている。第2の熱交換器19の高温側出口部192は、加熱室12の入口部121に接続されている。加熱室12の出口部122は、第3の熱交換器20の高温側入口部203に接続されている。第3の熱交換器20の高温側出口部204は排気部Bに接続されている。
【0069】
ヒートポンプ装置HPにおいて、圧縮機14で圧縮された作動媒体(空気でなくてもよい)は、第1の熱交換器18の高温側入口部181から第1の熱交換器18内に導入され、高温側流路18bを流通する間に外気との熱交換される。高温側出口部182から排出された作動媒体は、膨張弁21で断熱膨張された後、第3の熱交換器20の低温側入口部201から内部へ導入され、低温側流路20bを流通する間に、加熱室12の排気と熱交換される。低温側出口部202から排出された作動媒体は圧縮機14へ供給される。
【0070】
上記構成を備えた本例の加熱システムS2は、加熱室12の排気から熱を汲み上げて外気を加熱するヒートポンプ装置HPを備えた排熱回収型の加熱システムである。このような構成とした場合にも、先の実施形態の加熱システムS1と同様に、加熱対象物120の加熱用途に好適に用いることができる。また、制御装置70によってヒートポンプ装置HPとボイラ装置BLRの出力比が適切に制御されるため、加熱システムS2の一次エネルギー(あるいは運転コスト又はCO排出量)が最小の状態で運転することができる。
【0071】
本実施形態の場合、ヒートポンプ装置HPの作動媒体回路が、吸気部Aから排気部Bまでの空気流路と分離されているので、ヒートポンプ装置HPの構成部材の動作不具合が生じにくくなる。例えば、加熱室12の排気は加熱対象物120の構成成分や付着成分を含んでいる場合があり、特に腐食性物質を含んでいる場合には、圧縮機14の不具合の原因となる可能性がある。これに対して、本実施形態の構成では、圧縮機14には密閉系の作動媒体のみが流入するので、上記のような不具合は生じない。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
12…加熱室、14…圧縮機、18…第1の熱交換器、19…第2の熱交換器、20…第3の熱交換器、70…制御装置、HP…ヒートポンプ装置、S1,S2…加熱システム(産業用加熱システム)、120…加熱対象物、BLR…ボイラ装置、Tcmpin…入口温度、Tcmpout…出口温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室に供給する産業用加熱システムであって、
取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と、前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機と、を有するヒートポンプ装置と、
前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、前記圧縮機及び前記ボイラ装置を駆動制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記圧縮機の入口温度に対して、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を設定した検定曲線を用いて前記圧縮機の出力を制御し、
前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御することを特徴とする産業用加熱システム。
【請求項2】
外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室に供給する産業用加熱システムであって、
取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と、前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機と、を有するヒートポンプ装置と、
前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、前記圧縮機及び前記ボイラ装置を駆動制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記圧縮機の出口温度を設定するパラメータ設定動作と、
前記圧縮機の入口温度及び設定した前記出口温度に基づいて前記圧縮機の圧力及び消費動力を計算する圧縮機演算動作と、
前記第1の熱交換器の伝熱計算により、前記第1の熱交換器の作動媒体の出口温度と、前記第1の熱交換器の出口における前記加熱空気の温度とを計算する熱交換器演算動作と、
前記圧縮機の消費動力に基づいて前記ヒートポンプ装置の一次エネルギーを算出するヒートポンプエネルギー演算動作と、
前記第1の熱交換器から出力される前記加熱空気を前記加熱室の入口温度にまで昇温するために必要な前記ボイラ装置の一次エネルギーを算出するボイラエネルギー演算動作と、
前記ヒートポンプ装置及び前記ボイラ装置のそれぞれの一次エネルギーに基づいて、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを算出する目標パラメータ算出動作と、
を前記圧縮機の出口温度を変化させつつ繰り返し実行することにより、前記目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を探索し、当該探索動作により取得された前記圧縮機の出口温度に基づいて前記圧縮機の出力を制御するヒートポンプ装置制御動作と、
取得された前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するボイラ装置制御動作と、
を実行することを特徴とする産業用加熱システム。
【請求項3】
前記制御装置は、外気温又は前記加熱室の出口温度が変化したときに、前記ヒートポンプ装置及び前記ボイラ装置の出力制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用加熱システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記圧縮機の出口温度、出口圧力、又は前記第1の熱交換器から出力される前記加熱空気の温度を調整パラメータとして前記圧縮機の出力制御を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の産業用加熱システム。
【請求項5】
加熱対象物を収容する加熱室と、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機とを有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、を有する産業用加熱システムの制御方法であって、
前記圧縮機の入口温度に対して、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を設定した検定曲線を用いて前記圧縮機の出力を制御するステップと、
前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するステップと、
を有することを特徴とする産業用加熱システムの制御方法。
【請求項6】
加熱対象物を収容する加熱室と、取り入れた外気を加熱する第1の熱交換器と前記加熱室の排気又は前記加熱室の排熱を回収した作動媒体を圧縮して前記第1の熱交換器に供給する圧縮機とを有するヒートポンプ装置と、前記第1の熱交換器で生成された加熱空気を加熱する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器に作動媒体として蒸気を供給するボイラ装置と、を有する産業用加熱システムの制御方法であって、
前記圧縮機の出口温度を設定するパラメータ設定ステップと、
前記圧縮機の入口温度及び設定した前記出口温度に基づいて前記圧縮機の圧力及び消費動力を計算する圧縮機演算ステップと、
前記第1の熱交換器の伝熱計算により、前記第1の熱交換器の作動媒体の出口温度と、前記第1の熱交換器の出口における前記加熱空気の温度とを計算する熱交換器演算ステップと、
前記圧縮機の消費動力に基づいて前記ヒートポンプ装置の一次エネルギーを算出するヒートポンプエネルギー演算ステップと、
前記第1の熱交換器から出力される前記加熱空気を前記加熱室の入口温度にまで昇温するために必要な前記ボイラ装置の一次エネルギーを算出するボイラエネルギー演算ステップと、
前記ヒートポンプ装置及び前記ボイラ装置のそれぞれの一次エネルギーに基づいて、当該産業用加熱システムの一次エネルギー、運転コスト、及びCO排出量から選ばれる一つの目標パラメータを算出する目標パラメータ算出ステップと、
を前記圧縮機の出口温度を変化させつつ繰り返し実行することにより、前記目標パラメータが最小となる前記圧縮機の出口温度を探索し、当該探索動作により取得された前記圧縮機の出口温度に基づいて前記圧縮機の出力を制御するヒートポンプ装置制御ステップと、
取得された前記圧縮機の出口温度と、前記加熱室の入口温度とに基づいて前記ボイラ装置の出力を制御するボイラ装置制御ステップと、
を有することを特徴とする産業用加熱システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−184902(P2012−184902A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49629(P2011−49629)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)