説明

産業車両用稼働管理装置

【課題】複数の産業車両について運用状態に関する情報を総合的に評価することによって、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を効率的に図ることが可能な産業車両用稼働管理装置を提供する。
【解決手段】産業車両用稼働管理装置(100)は、走行部と作業部とを有する複数の産業車両について稼働状態を管理するための装置である。特に、第1〜第4のパラメータ算出部(113〜116))によって算出された産業車両の運用状態の程度を示すパラメータに基づいて、産業車両の利用態様の傾向を、予め定められた複数の類型のうち、いずれかに分類する第1の類型分類部(117)と第2の類型分類部(118)とを備えたことを特徴とする。これを利用して保守計画(120)含む産業車両用稼働管理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を走行させるための走行部と走行以外の作業を行わせるための作業部とを有する複数の産業車両の各々について稼働状態を管理するための産業車両用稼働管理装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場などの特定領域内においてフォークリフトなどの産業車両を複数稼働させるような場合、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を図ることにより、産業車両を合理的に運用することが要請される。このような要請に対して、各産業車両の運用状態を平準化することによって、車両間に生じる運用状態のバラツキを低減させるという対策が有効である。
【0003】
このような産業車両の運用状態の平準化に関する技術として、例えば特許文献1には、産業車両の運用状態を示すパラメータとして稼働時間を用いた稼働時間平準化検討装置が開示されている。特許文献1では、記憶した各産業車両の稼働時間をグラフ表示することによって、各産業車両の稼働時間帯を可視化している。これにより、従来にはないような合理的な方法で複数の産業車両の稼働時間に関する稼働時間情報を表現することで、稼働時間の平準化の検討を円滑に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−102435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では稼働時間というパラメータのみによって産業車両の運用状態の平準化を図っている。しかしながら、稼働時間は産業車両の運用状態を示す数あるパラメータの中の一つに過ぎず、これに基づいて、常に各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を図ることできない場合がある。例えば、各産業車両間に生じる運用状態のバラツキによって消耗度合いにもバラツキが生じる。すると、消耗度合いの進んだ車両は不具合発生を未然に防ぐためにメンテナンスの実施内容や実施時期を変更する必要があり、それに伴いメンテナンス費用も増大する傾向がある。複数台の産業車両を運用する際には、稼働時間に加えて、このような運用状態に関する情報を総合的に評価することによって、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化をより精度よく図ることが重要である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の産業車両について運用状態に関する情報を総合的に評価することによって、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を効率的に図ることが可能な産業車両用稼働管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る産業車両用稼働管理装置は上記課題を解決するために、車両を走行させるための走行部と走行以外の作業を行わせるための作業部とを有する複数の産業車両の各々について稼働状態を管理するための産業車両用稼働管理装置において、過去に前記産業車両にかかったメンテナンス費用を取得するメンテナンス費用取得部と、前記産業車両の走行部及び作業部の少なくとも一方が稼働していた稼働時間を計測する稼働時間計測部と、前記メンテナンス費用取得部によって取得したメンテナンス費用に基づいて、前記産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータを算出する第1のパラメータ算出部と、前記稼働時間計測部によって計測された稼働時間に基づいて、前記産業車両の稼働率を示すパラメータを算出する第2のパラメータ算出部と、前記第1のパラメータ算出部、及び前記第2のパラメータ算出部が算出した各パラメータに基づいて、前記産業車両の利用態様の傾向を、予め定められた複数の類型のうち、いずれかに分類する第1の類型分類部と、前記第1の類型分類部が分類した類型を表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1のパラメータ算出部において産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータを算出すると共に、第2のパラメータ算出部において産業車両の稼働率を示すパラメータを算出することによって、これらのパラメータに基づいて産業車両の稼働状態の傾向を、予め定められた類型のいずれかに分類することで、複数の産業車両について運用状態に関する情報を総合的に評価することができる。これにより、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化をより精度よく図ることが可能となる。
【0009】
好ましくは、前記第1のパラメータ算出部は、前記産業車両が最後に点検されてから経過した期間と、その期間内に前記メンテナンス費用取得部によって取得されたメンテナンス費用の合計とに基づいて、前記期間内における単位期間当たりのメンテナンス費用を、前記産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータとして算出するとよい。この態様では、単位期間当たりのメンテナンスコストを算出することによって産業車両の消耗度合の程度を的確に評価することができる。
【0010】
また前記第2のパラメータ算出部は、前記産業車両が最後に点検されてから経過した期間と、その期間内における前記産業車両の稼働時間とに基づいて、前記期間内における前記産業車両の稼働率を算出するとよい。この態様によれば、産業車両が最後に点検されてから経過した期間における産業車両の稼働時間の割合から、産業車両の稼働率を的確に評価することができる。
【0011】
本発明の他の態様では、前記産業車両の走行部の稼働状態を計測する走行状態計測部と、前記産業車両の作業部の稼働状態を計測する作業状態計測部と、前記走行状態計測部の計測結果に基づいて、前記産業車両の走行距離を示すパラメータを算出する第3のパラメータ算出部と、前記作業状態計測部の計測結果に基づいて、前記産業車両の作業部の稼働時間である作業時間を示すパラメータを算出する第4のパラメータ算出部と、前記第3のパラメータ算出部、及び前記第4のパラメータ算出部が算出した各パラメータに基づいて、前記産業車両の利用形態の傾向を、予め定められた類型のうち、いずれかの類型に分類する第2の類型分類部とを更に備えたことを特徴とする。この態様によれば、第3のパラメータ算出部及び第4のパラメータ算出部で算出されたパラメータに基づいて、第2の類型分類部において各産業車両の利用態様をより詳細に分類することができるので、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を更に精度よく図ることが可能となる。
【0012】
この場合、前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型に応じて、前記産業車両の保守計画を策定する保守計画策定部を更に備えており、前記保守計画策定部は、前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型に応じて予め記憶された保守計画パターンから、前記各産業車両の類型に応じた保守計画パターンを選択することにより、保守計画を策定するとよい。この態様によれば、第1の類型分類部及び第2の類型分類部で分類された類型に対応する保守計画パターンに基づいて保守計画を策定できるので、各産業車両の運用状態に応じた保守計画を考慮しつつ、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化を図ることができる。
【0013】
また、前記保守計画策定部は、前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型毎に故障リスクの高低を設定し、該設定した故障リスクに応じて保守計画を策定するとよい。この態様によれば、類型毎に設定された故障リスクの高低に応じた保守計画を策定することによって、個別のフォークリフトの稼働状態に適したメンテナンスを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のパラメータ算出部において産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータを算出すると共に、第2のパラメータ算出部において産業車両の稼働率を示すパラメータを算出することによって、これらのパラメータに基づいて産業車両の稼働状態の傾向を、予め定められた類型のいずれかに分類することで、複数の産業車両について運用状態に関する情報を総合的に評価することができる。これにより、各産業車両の作業効率や車両台数等の最適化をより精度よく図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る産業車両用稼働管理装置の利用環境を示す概念図である。
【図2】サーバの構成を示すブロック図である。
【図3】第1の類型分類部に記憶された分類基準の一例である。
【図4】第2の類型分類部に記憶された分類基準の一例である。
【図5】計画基本情報格納部に格納された保守計画パターンの一例である。
【図6】サーバの動作フローを示すフローチャート図である。
【図7】第1の類型分類部による各フォークリフトの分類例である。
【図8】第2の類型分類部による各フォークリフトの分類例である。
【図9】各フォークリフトに設けられた車載コンピュータにおける処理内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0017】
図1は本発明に係る産業車両用稼働管理装置100(以下、「稼働管理装置100」と称する)の利用環境を示す概念図である。稼働管理装置100は、産業車両として世界各地で利用されている複数のフォークリフト200a、b、c、・・・(以下、「フォークリフト200」と総称する)の稼働管理を行う。各フォークリフト200は、例えば工場や倉庫、ホームセンター等の倉庫型小売店、貨物駅、港湾等の作業現場で利用されている。フォークリフト200には、該フォークリフト200が荷役作業のために動作した荷役作業時間を計測する作業時間計測部、フォークリフト200の走行距離を計測する走行距離計測部、フォークリフト200の稼働時間を計測する稼働時間計測部、及び通信アンテナ201が設けられている。
【0018】
尚、フォークリフト200a、b、c、・・・は、いずれも同じ構成要素を有しており、以後の説明では、フォークリフト200が有する構成要素がいずれのフォークリフト200の構成要素であるかを区別する場合には、各構成要素を有するフォークリフト200と同じ添え字(a、b、c、・・・)を各構成要素の末尾に付して区別する。また、以後の説明において、添え字が付されていない構成要素の機能及び動作は、同じ符号が付されたいずれの構成要素の機能及び動作を示すこととする。
【0019】
稼働管理装置100は、サーバ110、複数の車載コンピュータ130a、b、c、・・・(以下、「車載コンピュータ130」と総称する)、複数の中継装置150a、b、c、・・・(以下、「中継装置150」と総称する)、及び通信回線170を備える。尚、通信回線170は、インターネット等のコンピュータネットワーク、通信事業者のコアネットワーク、及び種々のローカルネットワークであってもよい。
【0020】
また、車載コンピュータ130にはオペレータによって入力可能な入力部が設けられている。ここで、入力部は例えばキーボードやマウスなどの各種入力用デバイスである。車載コンピュータ130のオペレータは、当該入力部を操作することによって、当該車載コンピュータ130が搭載されたフォークリフト200にかかったメンテナンス費用を入力する。このようなメンテナンス費用の入力は、オペレータが定期的又は不定期的に車載コンピュータ130に設けられた入力部を操作することによって行われる。
【0021】
尚、このようなオペレータによる入力は、車載コンピュータ130に設けられた入力部の他に、サーバ110に設けられた入力部によって行われてもよい。また車載コンピュータ130やサーバ110に、携帯電話などのモバイル通信機器、或いは、メモリカードやUSBメモリなどの記録媒体を接続することによって入力が行われるように構成してもよい。
【0022】
サーバ110は、各フォークリフト200の稼働管理を行う。具体的には、サーバ110は、通信回線170を介して各中継装置150と電気的に接続されている。そして、サーバ110は、各フォークリフト200の荷役作業時間、走行距離、稼働時間、及びメンテナンス費用を示す情報を各中継装置150から受信すると、これら情報に基づいて、各フォークリフト200の稼働管理を行う。
【0023】
車載コンピュータ130は、フォークリフト200に搭載されており、フォークリフト200の各種情報を中継装置150に送信する。車載コンピュータ130は、車両内に設けられた作業時間計測部、走行距離計測部、稼働時間計測部、及び入力部とそれぞれデータケーブルを介して電気的に接続されており、通信アンテナ201と通信ケーブルを介して電気的に接続されている。そして、車載コンピュータ130は、作業時間計測部、走行距離計測部、稼働時間計測部、及び入力部からそれぞれ出力されたデータを取得すると、それらのデータを、通信アンテナ201を介して中継装置150に無線送信する。
【0024】
中継装置150は、各車載コンピュータ130から送信されたデータをサーバ110に転送する。各中継装置150は、各フォークリフト200が利用されている作業現場にそれぞれ設けられており、その作業現場で利用されている各車載コンピュータ130から送信されたデータを受信すると、そのデータを記憶し、記憶したデータを所定時間間隔でサーバ110に送信する。
【0025】
このような稼働管理装置100において、フォークリフト200のエンジンが始動すると、フォークリフト200に設けられた稼働時間計測部は、フォークリフト200の稼働時間の測定を開始する。そして、フォークリフト200のエンジンが停止すると、稼働時間計測部は、フォークリフト200の稼働時間を示すデータを車載コンピュータ130に出力する。稼働時間計測部は、フォークリフト200が稼働する度に、このような処理を繰り返す。
【0026】
また、フォークリフト200が走行を開始すると、フォークリフト200に設けられている走行距離計測部は、フォークリフト200の走行距離の計測を開始する。そして、フォークリフト200の走行が停止すると、走行距離計測部は、フォークリフト200の走行距離を示すデータを車載コンピュータ130に出力する。走行距離計測部は、フォークリフト200が走行する度に、このような処理を繰り返す。
【0027】
また、フォークリフト200が荷役作業を開始すると、フォークリフト200に設けられている作業時間計測部は、フォークリフト200の荷役作業時間の計測を開始する。そして、フォークリフト200の荷役作業が終了すると、作業時間計測部は、フォークリフト200の荷役作業を行った時間を示すデータを車載コンピュータ130に出力する。作業時間計測部は、フォークリフト200が荷役作業を繰り返す度に、このような処理を繰り返す。
【0028】
車載コンピュータ130は、稼働時間計測部、走行距離計測部、作業時間計測部、及び入力部からそれぞれ出力されたデータを受信すると、そのデータを中継装置150に送信する。中継装置150は、車載コンピュータ130からデータを受信すると、そのデータを記憶し、所定時間間隔でサーバ110に送信する。
【0029】
尚、本実施例では各フォークリフト200の稼働管理をサーバ110にて統括的に行うとして説明を進めるが、各フォークリフト200に搭載された車載コンピュータ130においてこれらサーバ機能を単独で備えるように構成していてもよい。
【0030】
尚、本実施例では、説明が煩雑になることを防ぐために、稼働管理装置100が一のサーバ110を備える構成について説明するが、複数のサーバ110を備えてもよい。
【0031】
図2は、サーバ110の構成を示すブロック図である。サーバ110は、データ受信部111、データ格納部112、第1のパラメータ算出部113、第2のパラメータ算出部114、第3のパラメータ算出部115、第4のパラメータ算出部116、第1の類型分類部117、第2の類型分類部118、保守基本情報格納部119、保守計画策定部120、情報格納部121、出力要求受付部122、及び情報出力部123を有する。以下に、各構成要素の機能及び動作について説明する。
【0032】
データ受信部111は、フォークリフト200に設けられた作業時間計測部、走行距離計測部、及び稼働時間計測部によってそれぞれ計測されたデータ値、並びに入力部から取得したメンテナンス費用に関する情報を受信し、データ格納部112に格納する。
【0033】
第1のパラメータ算出部113は、フォークリフト200の消耗度合の程度を示すパラメータを示すパラメータとして、単位期間当たりのメンテナンス費用を算出する。具体的には、第1のパラメータ算出部113は、データ格納部112からメンテナンス費用に関するデータを読み出し、該読み出したデータとフォークリフト200が最後に点検されてから経過した期間とに基づいて、単位期間当たりのメンテナンス費用を算出する。そして、第1のパラメータ算出部113は、単位期間当たりのメンテナンス費用を第1の類型分類部117に送る。
【0034】
第2のパラメータ算出部114は、フォークリフト200の稼働率を算出する。具体的には、第2のパラメータ算出部114は、データ格納部112から稼働時間に関するデータを読み出し、該読み出したデータとフォークリフト200が最後に点検されてから経過した期間とに基づいて、フォークリフト200の稼働率を算出する。そして、第2のパラメータ算出部114は、算出したパラメータを示すデータを第1の類型分類部117に送る。
【0035】
第3のパラメータ算出部115は、データ格納部112からフォークリフト200の荷役作業時間に関するデータを算出する。また、第4のパラメータ算出部116は、データ格納部112からフォークリフト200の走行距離に関するデータを算出する。そして、第3のパラメータ算出部115及び第4のパラメータ算出部116は、これらのデータを第2の類型分類部118に送る。
【0036】
第1の類型分類部117は、第1のパラメータ算出部113及び第2のパラメータ算出部114から受信したパラメータ(単位期間当たりのメンテナンス費用及び稼働率)に基づいて、フォークリフト200の利用形態の傾向を、「再配置型」、「廃車型」、「継続保有型」、「入替型」のうち、いずれかの類型に分類する。このような類型への分類基準は、第1の類型分類部117が備えるメモリ(図不示)に記憶されている。
【0037】
ここで図3は第1の類型分類部117に記憶された分類基準の一例である。まず「再配置型」は、単位期間当たりのメンテナンス費用が0〜A(¥/年)であり、且つ、稼働率が仮に0〜50(%)である類型として規定されている。要するに、「再配置型」は、フォークリフト200の老朽化が進んでいないためメンテナンス費用が低いものの、稼働率が低く有効利用されていないため、使用方法を再検討することが管理上合理的である類型である。尚、この分類基準における単位期間当たりのメンテナンス費用、及び、稼働率のそれぞれについての閾値は、対象となるフォークリフトの機種、型番などによって適宜設定するとよい。尚、上記Aは任意の正数である。
【0038】
また、「廃車型」は、単位期間当たりのメンテナンス費用がA〜(¥/年)であり、且つ、稼働率が仮に0〜50(%)である類型として規定されている。要するに、「廃車型」は、老朽化の進んでメンテナンス費用が高くなっているに加えて稼働率が低く、無駄に配置されている車両であるため、廃車にすることが管理上合理的である類型である。
【0039】
また、「継続保有型」は、単位期間当たりのメンテナンス費用が0〜A(¥/年)であり、且つ、稼働率が仮に50〜(%)である類型として規定されている。要するに、「継続保有型」は、稼働率が高く有効利用されており、老朽化も進んでいないためメンテナンス費用が低い。そのため、現状を維持することが管理上合理的である類型である。
【0040】
また、「入替型」は、単位期間当たりのメンテナンス費用がA〜(¥/年)であり、且つ、稼働率が仮に50〜(%)である類型として規定されている。要するに、「入替型」は、稼働率が高く頻繁に利用されているものの、老朽化が進んでメンテナンス費用が高くなっているため、新車に入れ替えることが管理上合理的である類型である。
【0041】
再び図2に戻って、第2の類型分類部118は、第3のパラメータ算出部115及び第4のパラメータ算出部116から受信したパラメータ(荷役作業時間及び走行距離)に基づいて、フォークリフト200の利用形態の傾向を、「低稼働型」、「積載型」、「走行型」、「高稼働型」のうち、いずれかの類型に分類する。このような類型への分類基準は、第2の類型分類部118が備えるメモリ(図不示)に記憶されている。
【0042】
ここで図4は第2の類型分類部118に記憶された分類基準の一例である。まず「低稼働型」は、荷役作業時間が0〜B(時間/年)であり、且つ、走行距離が0〜C(km/年)である類型として規定されている。要するに、「低稼働型」は、荷役作業を行う頻度も走行する頻度も低い類型である。また、「積載型」は、荷役作業時間がB〜(時間/年)であり、且つ、走行距離が0〜C(km/年)である類型として規定されている。要するに、「積載型」は、走行する頻度よりも荷役作業作業を行う頻度が高い類型である。また、「走行型」は、荷役作業時間が0〜B(時間/年)であり、且つ、走行距離がC〜(km/年)である類型として規定されている。要するに、「走行型」は、荷役作業を行う頻度よりも走行する頻度が高い類型である。また、「高稼働型」は、荷役作業時間がB〜(時間/年)であり、且つ、走行距離がC〜(km/年)である類型として規定されている。要するに「高稼働型」は、荷役作業を行う頻度も走行する頻度も高い類型である。尚、この分類基準における荷役作業時間、及び、走行距離のそれぞれについての閾値は、対象となるフォークリフトの機種、型番などによって適宜設定するとよい。尚、上記B及びCは任意の正数である。
【0043】
このように第1の類型分類部117及び第2の類型分類部118において分類された類型に関する情報は、保守計画策定部120及び情報格納部121に送信される。
【0044】
保守計画策定部120は、第1の類型分類部117及び第2の類型分類部118から取得した類型に関する情報に基づいて、フォークリフト200の保守計画を策定する。計画基本情報格納部119には、保守計画の基本的な情報として、第1の類型分類部117及び第2の類型分類部118において分類された類型に対応する保守計画パターンがそれぞれ格納されている。保守計画策定部120は計画基本情報格納部119にアクセスすることにより、第1の類型分類部117及び第2の類型分類部118から取得した類型に対応する保守計画パターンを読み出し、保守計画の策定を行う。
【0045】
ここで図5は計画基本情報格納部119に格納された保守計画パターンの一例である。この例では、第2の類型分類部118によって分類される類型である「低稼働型」、「積載型」、「走行型」、「高稼働型」の各々について、点検項目及び点検時期が規定されている。図5では点検項目に対応する点検時期をa、b、c、・・・と簡略的に記載している。点検時期の具体的な設定については適宜行うとよい。好ましい例を参考に説明すると、稼働率の低い「低稼働型」は稼働率の高い「高稼働型」に比べて消耗度合いが少ないと考えられるため、各点検項目の実施時期は長くなるように設定するとよい。また「積載型」では、「低稼働型」に比べて荷役作業に供する部位(例えば荷物の積載を行うアーム部など)の消耗度合いが多くなると考えられるため、荷役作業に関連する点検項目の実施時期をその他の点検項目に比べて短くなるように設定するとよい。また、また「走行型」では、「低稼働型」に比べて走行に供する部位(例えばエンジンやタイヤなど)の消耗度合いが多くなると考えられるため、走行に関連する点検項目の実施時期をその他の点検項目に比べて短くなるように設定するとよい。
【0046】
このように保守計画策定部120において策定された保守計画に関する情報は、情報格納部121に送信される。
【0047】
情報格納部121には、上述したように、第1の類型分類部117及び第2の類型分類部118において分類された類型に関する情報、並びに、保守計画策定部120において策定された保守計画に関する情報が格納されている。この格納された情報は、出力要求受付部122が、情報格納部114に格納された各種情報を出力するよう要求する旨の入力を受け付けることによって、情報出力部123を介してディスプレイなどの表示手段に出力される。
【0048】
図6は、サーバ110の動作フローを示すフローチャート図である。まずサーバ110のデータ受信部111は、各フォークリフト200に設けられた中径装置150からメンテナンス費用、荷役作業時間、走行距離、及び稼働時間に関する情報を取得する(ステップS101)。取得した各種情報はデータ格納部112に格納された後、各パラメータ算出部において対応するパラメータの算出に用いられる(ステップS102)。
【0049】
そして、第1の類型分類部117において図3に示す類型基準に基づいた分類が行われ、各フォークリフト200は「再配置型」、「廃車型」、「継続保有型」、「入替型」のうちいずれかの類型に分類される(ステップS103)。ここで図7に、第1の類型分類部117による各フォークリフト200の分類例を概念的に示す。図7の縦軸は、第1のパラメータ算出部113で算出されたパラメータである単位期間当たりのメンテナンス費用を示しており、横軸は第2のパラメータ算出部114で算出されたパラメータである稼働率を示している。この分類図は、図3に示す類型基準を反映しており、単位期間当たりのメンテナンス費用が閾値(図3及び図7におけるA)より大きいか否か、又は、稼働率が閾値(図3及び図7における50%)より大きいか否かによって、「再配置型」、「廃車型」、「継続保有型」、「入替型」のいずれかの類型に分類する。
【0050】
続いて、第2の類型分類部118において図4に示す類型基準に基づいた分類が行われ、各フォークリフト200は「低稼働型」、「積載型」、「走行型」、「高稼働型」のうちいずれかの類型に分類される(ステップS104)。ここで図8に、第2の類型分類部118による各フォークリフト200の分類例を概念的に示す。図8の縦軸は、第3のパラメータ算出部115で算出されたパラメータである走行距離を示しており、横軸は第4のパラメータ算出部116で算出されたパラメータである荷役作業時間を示している。この分類図は、図4に示す類型基準を反映しており、走行距離が閾値(図4及び図8におけるC)より大きいか否か、又は、荷役作業時間が閾値(図4及び図8におけるB)より大きいか否かによって、「低稼働型」、「積載型」、「走行型」、「高稼働型」のいずれかの類型に分類する。
【0051】
続いて、保守計画策定部120はステップS103及びS104での分類結果に応じて、計画基本情報格納部119から各フォークリフト200の類型に対応する保守計画パターンを抽出して保守計画を策定する(ステップS105)。
【0052】
そして、出力要求受付部122にキーボードなどの入力手段から出力を要求する指示を受け付けると(ステップS106)、情報出力部123は情報格納部121に格納された各フォークリフト200の類型、及び保守計画に関する情報をディスプレイなどの表示部に出力する(ステップS107)。
【0053】
尚、ディスプレイの表示部には、図7及び図8に示したように、各フォークリフト200に対応するデータ点を黒塗りドットでグラフ上にプロットした形で、各フォークリフト200の類型を表示するとよい。これにより、サーバ110のオペレータは、各フォークリフト200の利用態様のバラツキをグラフ上で視覚的に表現することができ、フォークリフト200の稼働管理を容易に行うことができる。
【0054】
サーバ110は、中継装置150から送信されたデータを受信する度に、ステップS101〜S107の処理を繰り返し実行する。
【0055】
次に各フォークリフト200に設けられた車載コンピュータ130側における処理内容について図9を参照して説明する。図9は、各フォークリフト200に設けられた車載コンピュータ130における処理内容を示すフローチャート図である。
【0056】
まずフォークリフト200のイグニッションキーがONにされることにより車両が起動すると(ステップS201)、車載コンピュータ130は予め指定されたセルフチェックプログラムを読み出し、セルフチェックを実行する(ステップS202)。このセルフチェックプログラムは車両条件に応じて複数パターン用意されており、後述するように車両条件に応じて適切なパターンが選択されるようになっている。
【0057】
続いて車載コンピュータ130は、ステップS202においてセルフチェックを実行した結果、異常の有無を判定する(ステップS203)。ここで異常があると判定された場合(ステップS203:YES)、車載コンピュータ130は車両を緊急停止し(ステップS210)、処理を終了する(END)。
【0058】
一方、異常がないと判定された場合(ステップS203:NO)、セルフチェックを終了してフォークリフト200の運転を開始する(ステップS204)。そして、車載コンピュータ130は、オペレータによって入力部が操作されることによって入力されたメンテナンス費用、作業時間計測部によって計測された荷役作業時間、走行距離計測部によって計測された走行距離、稼働時間計測部によって計測された稼働時間を取得する(ステップS205)。そして、これら取得した各種データに基づいて、上述の第1の類型分類を行うことによって、フォークリフト200の類型を分類する(ステップS206)。
【0059】
車載コンピュータ130は、ステップS206における分類の結果、各車両の類型が「廃車型」又は「入替型」であるか否かを判定する(ステップS207)。その結果、「再配置型」又は「継続保有型」であるフォークリフト200については、故障リスクを「低」に設定する(ステップS208)。一方、「再配置型」又は「継続保有型」でないフォークリフト200、即ち、「廃車型」又は「入替型」のフォークリフト200については、故障リスクを「高」に設定する(ステップS209)。「廃車型」又は「入替型」であるフォークリフト200については、後々に廃車又は入替などの然るべき措置を施す必要があるものの、実際にその措置を実施するまでにはある程度の期間を要する。そのため、実施するまでの期間は、故障リスクが高い状態で産業車両を稼働させる必要がある。このような事情に鑑みて、ステップS208及びステップS209では、「再配置型」又は「継続保有型」に比べて「廃車型」又は「入替型」に分類されたフォークリフト200について、故障リスクを高く設定する。
【0060】
続いて、車載コンピュータ130は上述の第2の類型分類を行うことによって、フォークリフト200の類型を更に綿密に分類する(ステップS210)。ステップS210では、ステップS208及びS209にて設定された故障リスクの高低に基づいて、各フォークリフト200が属する分類を更に詳細に絞り込む。特に、故障リスクが「高」に設定されたフォークリフト200については、第2の類型分類において積載型であるか、走行型であるかを分類することによって、フォークリフト200の車体のうち故障が生じる可能性の高い部位(即ち、メンテナンスを入念に行う必要があると想定される部位)を特定することができる。
【0061】
そして車載コンピュータ130はステップS207及びS210における分類結果に基づいて、類型に応じたセルフチェックプログラムが選択される(ステップS211)。このセルフチェックプログラムは、第1及び第2の類型分類に基づく各フォークリフト200が属する類型を反映するように選択される。本実施例では特に、故障リスクの高低に基づいて類型を二段階に渡って細分化して分類しているため、故障が生じる可能性の高い部位がメンテナンス時に効果的に保守されるような内容のセルフチェックプログラムを選択することができる。このように選択されたセルフチェックプログラムは、車両を停止させた後も(ステップS212)、メモリに記憶され続けられ、次回車両の起動時に実行される(ステップS201及びS202)。
【0062】
具体例で説明すると、積載型に分類されたフォークリフト200については、荷役作業の際に駆動されるリフト駆動部が酷使されていると考えられるため、特にリフト駆動部について重点的にメンテナンスを行うセルフチェックプログラムを選定するとよい。一方、走行型に分類されたフォークリフト200については、走行時に使用される内燃機関、走行用モータ、トランスミッションなどの駆動機構やタイヤなどが酷使されていると考えられるため、特にこれらの部位について重点的にメンテナンスを行うセルフチェックプログラムを選定するとよい。
【0063】
このようなセルフチェックプログラムの選択は、上述のサーバ110側における保守計画の策定方法に倣って、車載コンピュータ130の然るべきメモリ等に、類型に対応して予め記憶されたセルフチェックプログラムの候補が用意されており、ステップS208における類型に応じたセルフチェックプログラムが選択されるようになっている。
【0064】
尚、本実施例では各フォークリフト200に対して、分類された類型に応じたセルフチェックプログラムが選択されるように構成しているが、分類された類型のうちメンテナンスの必要性が少ないと考えられる類型については、メンテナンス自体が不要としてセルフチェックプログラムを省略してもよい。この場合、車載コンピュータ130の処理負担を軽減することができる点で、有効である。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、フォークリフト200の稼働状態の傾向を、予め定められた類型のいずれかに分類することで、複数のフォークリフト200について運用状態に関する情報を総合的に評価することができる。これにより、各フォークリフト200の作業効率や車両台数等の最適化をより精度よく図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両を走行させるための走行部と走行以外の作業を行わせるための作業部とを有する複数の産業車両の各々について稼働状態を管理するための産業車両用稼働管理装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
100 稼働管理装置
110 サーバ
111 データ受信部
112 データ格納部
113 第1のパラメータ算出部
114 第2のパラメータ算出部
115 第3のパラメータ算出部
116 第4のパラメータ算出部
117 第1の類型分類部
118 第2の類型分類部
119 計画基本情報格納部
120 保守計画策定部
121 情報格納部
122 出力要求受付部
123 情報出力部
130 車載コンピュータ
150 中継装置
170 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させるための走行部と走行以外の作業を行わせるための作業部とを有する複数の産業車両の各々について稼働状態を管理するための産業車両用稼働管理装置において、
過去に前記産業車両にかかったメンテナンス費用を取得するメンテナンス費用取得部と、
前記産業車両の走行部及び作業部の少なくとも一方が稼働していた稼働時間を計測する稼働時間計測部と、
前記メンテナンス費用取得部によって取得したメンテナンス費用に基づいて、前記産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータを算出する第1のパラメータ算出部と、
前記稼働時間計測部によって計測された稼働時間に基づいて、前記産業車両の稼働率を示すパラメータを算出する第2のパラメータ算出部と、
前記第1のパラメータ算出部、及び前記第2のパラメータ算出部が算出した各パラメータに基づいて、前記産業車両の利用態様の傾向を、予め定められた複数の類型のうち、いずれかに分類する第1の類型分類部と、
前記第1の類型分類部が分類した類型を表示する表示部と
を備えたことを特徴とする産業車両用稼働管理装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータ算出部は、前記産業車両が最後に点検されてから経過した期間と、その期間内に前記メンテナンス費用取得部によって取得されたメンテナンス費用の合計とに基づいて、前記期間内における単位期間当たりのメンテナンス費用を、前記産業車両の消耗度合の程度を示すパラメータとして算出することを特徴とする請求項1に記載の産業車両用稼働管理装置。
【請求項3】
前記第2のパラメータ算出部は、前記産業車両が最後に点検されてから経過した期間と、その期間内における前記産業車両の稼働時間とに基づいて、前記期間内における前記産業車両の稼働率を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の産業車両用稼働管理装置。
【請求項4】
前記産業車両の走行部の稼働状態を計測する走行状態計測部と、
前記産業車両の作業部の稼働状態を計測する作業状態計測部と、
前記走行状態計測部の計測結果に基づいて、前記産業車両の走行距離を示すパラメータを算出する第3のパラメータ算出部と、
前記作業状態計測部の計測結果に基づいて、前記産業車両の作業部の稼働時間である作業時間を示すパラメータを算出する第3のパラメータ算出部と、
前記第3のパラメータ算出部、及び前記第4のパラメータ算出部が算出した各パラメータに基づいて、前記産業車両の利用形態の傾向を、予め定められた類型のうち、いずれかの類型に分類する第2の類型分類部と
を更に備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の産業車両用稼働管理装置。
【請求項5】
前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型に応じて、前記産業車両の保守計画を策定する保守計画策定部を更に備えており、
前記保守計画策定部は、前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型に応じて予め記憶された保守計画パターンから、前記各産業車両の類型に応じた保守計画パターンを選択することにより、保守計画を策定することを特徴とする請求項4に記載の産業車両用稼働管理装置。
【請求項6】
前記保守計画策定部は、前記第1の類型分類部、及び前記第2の類型分類部がそれぞれ分類した類型毎に故障リスクの高低を設定し、該設定した故障リスクに応じて保守計画を策定することを特徴とする請求項5に記載の産業車両用稼働管理装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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