説明

用紙加湿装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】用紙の紙種、坪量、または通紙環境に対する用紙の含水量の制御を行い、各条件に適した水分を用紙へ安定供給することにより、定着装置から排出される用紙のカール、波打ちを解消する。
【解決手段】ニップを形成する加湿ローラ対、及び該加湿ローラ対に水を供給する給水手段を有し、ニップに用紙を通過させることにより、用紙を加湿する用紙加湿装置において、ニップを通過する用紙の種類に対応して、加湿ローラの線速を可変に設定することにより用紙の含水量を可変に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙を加湿する用紙加湿装置、及び用紙加湿装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置、即ち、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの機能を有する複合機においては、定着工程において、用紙から水分が奪われる結果、用紙がカールしたり波打ち状に変形することが問題となる。この問題を解決する手段として、定着処理後の用紙を加湿することが提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では水蒸気を用紙に吹き付けるのに対して、特許文献2には、ローラ対でニップを形成し、ローラに水を供給しつつ、ニップに用紙を通して加湿する方法が開示されている。
【0004】
特許文献3に記載されたシート処理装置は、第1の積載トレイに積載されるシート束枚数が所定枚数以上の場合、シート束を少数枚に分けて束排出ローラにより第1の積載トレイに排出後、第2積載トレイに移送し、シート束の枚数に達したときに、次のシート束を少数枚に分けた状態で、且つ、シート積載位置を変えて第1の積載トレイに排出させる事で、第2の積載トレイにオフセットした状態で整合性よくシートを積載するものである。
【0005】
特許文献4に記載されたシート処理装置は、第1通路を経由して送り込まれたシートを送込ローラで下流側に送り込む途中で、送込ローラを逆回転させるとともに、切替部材で通路を切り替えて、スイッチバックしたシートの後端と次に送り込まれてきたシートの先端との衝突を避けて第2通路に一旦送り込み、次いで送込ローラを正転させて第2通路に送り込まれているシートと次に送り込まれてきたシートとを纏めて中綴じコンパイラトレイに送り込むものである。
【0006】
特許文献5に記載された定着後シート調整装置は、加湿剤付与ローラ、ニップ圧調整アセンブリ及びコントローラを含む制御システムである。
【特許文献1】特開2000−118849号公報
【特許文献2】米国特許第5,264,899号明細書
【特許文献3】特開平10−194569号公報
【特許文献4】特開2006−8384号公報
【特許文献5】米国特許第6,052,553号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された用紙加湿装置に類似のものとして、本出願人は特願2004ー184848号において、ローラ対の一方のローラに水を供給する用紙加湿装置を提案した。前記の特願の用紙加湿装置は特許文献2よりも更に構造が簡単であり、小型になって、画像形成装置に組み込むのにより適している。
【0008】
特許文献1、2及び特願2004ー184848号には、用紙加湿装置のみが記載されている。また、特許文献3、4には複数枚の用紙の重ね合わせ搬送手段が記載されている。特許文献5には、用紙の紙種、坪量、環境等の条件別にニップ量を可変にして加湿量制御を行っていない。また、ローラ対を回転させ、ニップによって用紙に水分を供給しているが、ローラ回転速度の可変による加湿量制御を行っていない。
【0009】
加熱定着装置から排出された用紙を用紙加湿装置により加湿する事で、用紙の波打ちを低減する事ができる。しかし、用紙の加湿によって用紙の腰(剛性)が大幅に低減する。このため用紙排出手段や、画像形成装置に接続された用紙後処理装置において、ジャム等の用紙搬送不良が多発し信頼性が低下する。
【0010】
本発明は、加湿ローラ対を用いた用紙加湿における上述の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は、下記の発明により達成される。
【0012】
1. ニップを形成する加湿ローラ対、及び該加湿ローラ対に水を供給する給水手段を有し、前記ニップに用紙を通過させることにより、用紙を加湿する用紙加湿装置において、
前記ニップを通過する用紙の種類に対応して、前記加湿ローラ対の線速を可変に設定することにより用紙の含水量を可変に制御することを特徴とする用紙加湿装置。
【0013】
2. 用紙に画像を形成する画像形成装置本体と、
前記1に記載の用紙加湿装置と、
前記用紙加湿装置から排出された用紙に後処理を行う用紙後処理装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
前記1の発明により、用紙加湿装置の加湿ローラ対の線速を可変にする事で、用紙の紙種、坪量、または通紙環境に対する用紙の含水量の制御を行い、各条件に適した水分を用紙へ安定供給することにより、加熱定着装置から排出される用紙のカール、波打ちが解消され、平面性のよい用紙が得られる。
【0015】
前記2の発明により、画像形成装置本体、用紙加湿装置、用紙後処理装置を接続配置した画像形成装置において、画像形成装置本体の加熱定着装置から排出される用紙に対して用紙加湿装置によって用紙のカール、波打ち等が解消され、平面性の良い用紙が用紙後処理装置に送り込まれ、後処理後に高品質の冊子が作製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、実施の形態により本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体図であり、該画像形成装置は画像形成装置本体A、用紙加湿装置B、及び用紙後処理装置(フィニッシャ)FSから構成される。
【0018】
[画像形成装置本体]
画像形成装置本体Aは、自動原稿搬送装置1及び画像読取部2を上部に有し、下部がプリンタ部で構成される。
【0019】
プリンタ部において、3は用紙Sを収納する用紙収納部である。感光体4に対して、帯電、露光及び現像を行う電子写真プロセスにより、感光体4上にトナー像を形成するプリンタエンジン5において、用紙Sに画像が形成され、形成された画像は定着装置6において定着される。定着装置6は熱源6aが内蔵された加熱ローラ6bと加圧ローラ6cで用紙Sを搬送するニップを形成し、用紙Sを搬送しつつ加熱・加圧してトナーを溶融し、画像を用紙Sに定着する。
【0020】
用紙Sは用紙収納部3から第1給紙手段3aにより給送され、第2給紙手段3bにおいて一時停止した後に給紙されて画像形成が行われ、画像形成された用紙Sは、排紙ローラ8により排紙口から排出される。
【0021】
用紙Sの搬送経路としては、用紙収納部3からプリンタエンジン5までの給紙路7、プリンタエンジン5から定着装置6、排紙ローラ8を経て排紙口に至る搬送路9a及び反転搬送を行う裏面用搬送路9bが設けられる。
【0022】
画像形成モードとしては、片面フェースダウン排紙モード、片面フェースアップ排紙モード及び両面モードがあり、片面フェースダウン排紙モードでは、片面に画像が形成され、定着装置6を通過した用紙Sは、反転処理により表裏反転した後に、排紙ローラ8で搬送されて排出される。
【0023】
片面フェースアップ排紙モードでは、片面に画像形成され、搬送路9aを搬送された用紙Sは、そのまま排紙ローラ8により搬送され排出される。
【0024】
両面モードにおいては、片面に画像形成され、定着装置6を通過した用紙Sは、下方に走行して裏面用搬送路9bに進行し、表裏反転した後に、給紙路7に再給紙される。
【0025】
再給紙された用紙Sの裏面にプリンタエンジン5において裏面画像が形成され、裏面画像形成された用紙Sは定着装置6を通過し、排紙ローラ8により搬送されて排出される。
【0026】
10は操作部であり、画像形成装置本体部Aにおける各種のモード及び用紙後処理装置FSを用いた出力モードの設定を操作部10における操作で設定することができる。
【0027】
画像形成装置本体Aに配置された制御手段C1は、通信手段C4を介して用紙加湿装置Bの制御手段C2、及び用紙後処理装置FSの制御手段C3に接続されている。
【0028】
画像形成装置本体Aから排出された用紙Sは、用紙加湿装置Bを経て用紙後処理装置(フィニッシャ)FSに搬送される。用紙加湿装置Bについては、後に説明する。
【0029】
[用紙後処理装置]
用紙後処理装置FSは、画像形成装置本体Aから排出される用紙Sに対して各種の後処理装置を行うもので、穿孔折り機、平綴じ機、中綴じ機、糊付け製本機、断裁機等を総称する。
【0030】
用紙後処理装置FSの一実施の形態として糊付け製本機を代表として説明する。
【0031】
糊付け製本機は、用紙導入手段21、排紙手段22、用紙束収納手段23、用紙束搬送手段24、糊塗布手段25、表紙供給手段26、表紙断裁手段27、表紙外装手段(くるみ製本手段)28、整合手段29を備えている。これらの各手段は、糊付け製本機本体内のほぼ垂直方向に縦列配置されている。
【0032】
用紙導入手段21に導入された用紙Sは、切替ゲート200によって排紙手段22と用紙束収納手段23の何れかに分岐される。
【0033】
排紙手段22への用紙搬送が設定されると、切替ゲート200は用紙束搬送手段24への用紙搬送路201を遮断し、排紙手段22への用紙搬送路202を開放する。排紙手段22の用紙搬送路202を通過する用紙Sは、上方に搬送され、用紙後処理装置FSの最上部の固定排紙台221に収納される。
【0034】
切替ゲート200によって用紙搬送方向下流側の図示左方に分岐されて搬送される用紙Sは、用紙束収納手段23の所定位置に収納され順次積載されて、幅整合及び縦整合されて所定枚数の用紙Sから成る用紙束Saが形成される。
【0035】
用紙束収納手段23の用紙載置台231上に積載された用紙束Saは、斜め下方に搬送された後、用紙束搬送手段24の把持手段241によって把持され、用紙束Saを把持したまま用紙束Saに糊塗布処理をする面(背部)を下側になるように旋回されて所定位置に停止される。
【0036】
糊塗布手段25は、糊塗布ローラ251、糊容器252、糊容器252を支持して糊付け製本機の背面側の初期位置から前面側の糊塗布位置に移動可能な移動体253等を備えている。
【0037】
表紙供給手段26に収納された表紙Kは、表紙断裁手段27を経由する用紙搬送路261を通過して表紙外装手段28に搬送された後、表紙Kの後端部が表紙断裁手段27によって所定長に断裁される。表紙Kの断裁長は、用紙Sの進行方向の2枚分の長さに用紙束Saの背部の厚さを加えた長さである。
【0038】
表紙外装手段28は、表紙供給手段26から供給された表紙Kを受容して搬送し、所定位置に停止させた後、整合手段29により幅方向の位置決めを行う。表紙外装手段28は、昇降手段281により移動筐体282を上方位置に移動させ、上昇位置において、加圧部材283上に載置された表紙Kの中央部は、用紙束Saの糊塗布面Nに圧接して接着される。
【0039】
用紙束Saの背部に対向する加圧部材283の下降と、表紙外装手段28の上部に配置された左右対称な一対の折曲部材284の移動とにより、用紙束Saの糊塗布面Nの側縁に沿って表紙Kを折り曲げ、用紙束Saの表裏面に表紙Kを装着した用紙束Saが形成される。
【0040】
表紙Kの折り曲げ工程の終了後、昇降手段281の下降駆動によって表紙外装手段28が下降して待避した後、整合手段29の退避と共に表紙Kの幅方向外側に退避していた排出ベルト285が用紙束Saの下方の幅方向内側まで移動して停止する。その後、把持手段241による挟持が解除されると、用紙束Saは下降し、用紙束Saの下方の背部が排出ベルト285の上面に当接する位置に停止する。回動する排出ベルト285は、用紙束Saに表紙Kを貼着してくるみ製本処理された冊子を装置外に排出する。
【0041】
[用紙加湿装置]
図2は、本発明の実施の形態における用紙加湿装置Bの断面図である。
【0042】
用紙加湿装置Bは、用紙導入部100、加湿部110及びバイパス搬送部120を備えている。
【0043】
画像形成装置本体Aの画像形成部により画像形成された用紙Sは、定着装置6、排紙ローラ8を経て排出され、用紙加湿装置Bの用紙導入部100に導入されて搬送ローラ101に挟持されて搬送される。
【0044】
搬送ローラ101の用紙搬送方向下流側に配置されたは切替ゲート102は、下方の用紙加湿搬送路103に用紙Sを搬送するか、または、上方のバイパス搬送路104に用紙Sを搬送するかを選択して切り替える。
【0045】
用紙加湿搬送路103に導入される用紙Sは、搬送ローラ105,106に挟持されて搬送され、加湿部110に送り込まれる。
【0046】
加湿部110内に搬入された用紙Sは、搬送ローラR1,R2に挟持されてUターン状に搬送され、圧接して回転する一対の加湿ローラ111A,111Bにより挟持されて水分が付与されて加湿された後、搬送路116を通過して搬送ローラR3,R4によって挟持、搬送され、搬送路107を通過して、バイパス搬送部120の搬送ローラ121に送り込まれる。
【0047】
112A,112Bは給水ローラ、113A,113Bは規制ローラ、114A,114Bは給水槽、115は貯水槽、116は搬送路、117A、117Bはファンである。
【0048】
加湿部110の詳細は、図3において詳述する。
【0049】
バイパス搬送部120の搬送ローラ121には、バイパス搬送路104を通過する用紙S、又は加湿部110から排出され搬送路107を通過する用紙Sが導入される。搬送ローラ121によって搬送される用紙Sは、搬送路122を通過し、搬送ローラ123,124、排紙ローラ125によって搬送され、機外に排出される。
【0050】
また、バイパス搬送部120には、用紙Sのカールを矯正するデカール手段126,127が配置されている。デカール手段126,127はそれぞれ複数のローラ群により構成され、これらのローラ群によって挟持されて通過する事によりカールが矯正される。
【0051】
搬送ローラ123により搬送される用紙Sは、切替ゲート128による搬送路切り替えによってデカール手段126を通過してカールが矯正され、更に、切替ゲート129による搬送路切り替えによってデカール手段127を通過してカールが矯正される。
【0052】
[加湿部]
図3は加湿部110の断面図である。
【0053】
図において、111A、111Bは用紙Sに水を付与し、用紙Sを加湿するローラ対を形成する加湿ローラであり、ともに金属、硬質樹脂等の剛性体からなる軸芯111Aa,111Baの上に多孔質ウレタンゴム等からなる多孔質層111Ab,111Bbが形成されたものである。
【0054】
多孔質層111Ab、111Bbは、その表面から水の供給を受けるとともに、用紙Sに対して水分を付与し加湿する多孔質の表面を形成する。
【0055】
112Aは加湿ローラ111Aに接触して水Wを供給する給水手段としての給水ローラであり、金属、硬質樹脂等の剛性体からなる軸芯112Aa及び軸芯112Aa上に形成された多孔質ウレタンゴム等からなる多孔質層112Abからなるローラで構成される。
【0056】
給水ローラ112Bも給水ローラ112Aと同様に、軸芯112Ba、多孔質層112Bbにより構成されている。
【0057】
給水ローラ112A,112Bは、起動時に、加湿ローラ111A,111Bに対して迅速な給水を行うために、前記のように多孔質層112Ab、112Bbを設けることが好ましいが、多孔質層を設けることは必ずしも必要ではなく、水を吸収せず、表面に水を保持することが出来る親水性の表面を持った材料、たとえば、金属や親水化処理した樹脂又はソリッドなゴムからなるローラを用いることもできる。
【0058】
113A,113Bは規制手段を構成する規制ローラであり、丸棒状の金属、硬質樹脂等の剛体からなる規制部材である。規制ローラ113Aは給水ローラ112Aに圧接し、規制ローラ113Bは給水ローラ112Bに圧接して、多孔質層112Ab,112Bbに含まれる水分を抑制し、用紙Sに供給する水分の量を規制する。すなわち、規制ローラ113A,113Bはそれぞれ加湿ローラ111A,111Bの多孔質層112Ab,112Bbに圧接し、多孔質層112Ab,112Bbを変形させて、多孔質層112Ab,112Bbに含まれる水をスクイズする。これによって用紙Sに付与される水の量が規制され、用紙Sが適度に加湿され、過剰な加湿による用紙Sのベタツキ等が防止される。規制ローラ113A,113Bの接触圧を調節することにより、適度な加湿が可能となる。
【0059】
搬送路116の両側に配置されたファン117A,117Bは、加湿ローラ111A,111Bにより加湿されて搬送される用紙Sの両面に送風して、用紙Sの表面に付着した過剰の水Wを乾燥、除去して、用紙Sを適切な含水状態に保持する。これにより、加湿処理後に搬送される用紙Sによる搬送ローラ、ガイド板等の搬送手段への水Wの付着が防止され、過剰な水W付着による用紙Sのベタツキによって発生する用紙搬送不良や装置部材の作動不良、寿命低下等の問題が解消される。
【0060】
加湿ローラ111A,111Bは図示しないモータにより駆動されて矢印のように駆動回転し、給水ローラ112A,112B及び規制ローラ113A,113Bを従動回転させる。
【0061】
加湿ローラ111A,111Bにより搬送される用紙Sは、加湿ローラ111A,111B間のニップNPにおいて、多孔質層からしみ出した水で加湿される。用紙Sに供給される水の量は、規制ローラ113A,113Bでスクイズすることにより、適量に規制される。規制ローラ113A,113Bが給水ローラ112A,112Bに圧接する圧力は適切に設定される。即ち、画像形成装置本体Aの操作部10における用紙Sの紙種設定や、湿度・温度を検知する環境センサの出力に基づいて、制御手段が規制ローラ113A,113Bの給水ローラ112A,112Bの線速や圧接圧力を適切に設定する事が好ましい。
【0062】
また、加湿ローラ111A,111B間のニップNPを開放して、加湿処理を行わないモードを設定することが出来る構成も実施可能である。
【0063】
給水槽114A内に収容された水Wには給水ローラ112Aが浸漬する。給水槽114B内に収容された水Wには給水ローラ112Bが浸漬する。
【0064】
給水槽114A,114Bと、下方に配置された貯水槽115とは、図示しない給水管及び給水ポンプにより接続され、貯水槽115内の水Wが給水槽114A,114Bに補給される。
【0065】
用紙Sの種類、厚さ、用紙加湿装置Bに導入される用紙Sの含水率の如何によっては、加湿処理しても、用紙Sにカールが出る場合がある。また、波打ちが発生する場合もある。カールや波打ちが起こる可能性がある場合には、切替ゲート128,129を図示しないソレノイドにより作動させ、用紙Sをデカール手段126,127の湾曲搬送路に進行させる。従って、用紙Sの含水率はその厚み方向に均一になり、カールや波打ちが十分に防止される。
【0066】
このような波打ちのおそれがない場合に、切り替えゲート128,129を初期位置に設定して、用紙Sを直進させ、処理効率を上げることができる。
【0067】
切替ゲート128,129の操作は、操作部10における紙種の設定や、湿度・温度を検知する環境センサの出力に基づいて行うのが好ましい。
【0068】
また、加湿処理を行わない時には、加湿ローラ111A,111B間のニップNPを開放状態にして、加湿ローラ111A,111Bの変形を防止することが出来る構成も可能である。
【0069】
[加湿部の駆動手段]
図4は、加湿部110の駆動手段の正面図である。
【0070】
モータM1を駆動源とする第1駆動手段は、歯車G1O、中間歯車G11を介して、加湿ローラ111Aの一端に固定された歯車G12を回転させる。また、中間歯車G11は、中間歯車G13を回転させ、中間歯車G13を固定した貫通軸J1の他端に固定した中間歯車11と対称の中間歯車G11’、及び加湿ローラ111Aの他端に固定された歯車G12と対称の歯車G12’を回転させる。したがって、モータM1の駆動によって、上記の歯車を介して加湿ローラ111Aの両端部が駆動回転される。
【0071】
モータM2を駆動源とする第2駆動手段は歯車G2O、中間歯車G21、G22を介して、給水ローラ112Aの一端に固定された歯車G23を回転させる。また、中間歯車G21は、中間歯車G24、G25を介して、給水ローラ112Bの一端に固定された歯車G26を回転させる。また、中間歯車G21は、中間歯車G21を固定した貫通軸J2の他端に固定した中間歯車21と対称の中間歯車G21’、及び歯車列を介して給水ローラ112Aの他端に固定された歯車G23と対称の歯車G23’、及び給水ローラ112Bの他端に固定された歯車G26と対称の歯車G26’を回転させる。したがって、モータM2の駆動によって、上記の歯車を介して給水ローラ112A、112Bの両端部が駆動回転される。
【0072】
モータM3を駆動源とする第3駆動手段は、歯車G3O、中間歯車G31を介して、規制ローラ113Bの一端に固定された歯車G32を回転させる。また、中間歯車G31は、中間歯車G33を回転させ、ベルトBe、中間歯車G34を介して規制ローラ113Aの一端に固定された歯車G35を回転させる。また、中間歯車G33は、中間歯車G33を固定した貫通軸J3の他端に固定した中間歯車33と対称の中間歯車G33’、及び歯車列を介して規制ローラ113Aの他端に固定された歯車G35と対称の歯車G35’、及び規制ローラ113Bの他端に固定された歯車G32と対称の歯車G32’を回転させる。したがって、モータM3の駆動によって、上記の歯車を介して規制ローラ113A、113Bの両端部が駆動回転される。
【0073】
図5は用紙加湿装置Bの加湿ローラ111A,111Bの制御を示すブロック図である。
【0074】
図1に示す画像形成装置本体Aに配置された制御手段C1は、通信手段C4を介して用紙加湿装置Bの制御手段C2を作動させる。
【0075】
操作部10において、普通紙、上質紙、光沢コート紙等の紙種を選択設定する。また、操作部10において、厚手紙、通常紙、薄手紙等の用紙坪量を選択設定する。また、場合によっては環境温湿度を設定する。これらの操作を行ったのち、用紙加湿制御の決定を入力する。
【0076】
制御手段C1,C2は、モータM1を駆動源とする第1駆動手段、モータM2を駆動源とする第2駆動手段、モータM3を駆動源とする第3駆動手段のオン、オフ、及びニップNPを通過する用紙Sの紙種、坪量、環境温湿度等に対応して加湿ローラ111A,111Bの線速を可変に設定することにより用紙Sの含水量を可変に制御する。
【0077】
図6は、光沢コート紙を通紙したときの、加湿ローラ111A,111Bの線速と、含水率の関係を示すグラフである。
【0078】
加湿処理を行わない場合、即ち、用紙加湿装置Bのバイパス搬送部120を通過する場合には、線分aに示すように、線速4〜1000mm/Sに亘って含水率はほぼ一定である。
【0079】
加湿処理を行う場合、即ち、用紙加湿装置Bの加湿部110を通過する場合には、線分bに示すように、線速40mm/Sから1000mm/Sに亘る間に、含水率は約4%から約8%に増大する。
【0080】
含水率の測定は以下の工程により行われる。
【0081】
(1) 温度20℃、湿度50%RHの環境下に用紙Sを一昼夜放置する。
【0082】
(2) 放置した用紙Sの質量w1を測定する。
【0083】
(3) 放置した用紙Sを90℃の乾燥箱内に収容して2時間乾燥する。
【0084】
(4) この用紙Sを取り出して、乾燥後の質量w2を測定する。
【0085】
(5) 式(w1−w2)/w1×100=含水率(%)によって含水率を算出する。
【0086】
図7は、加湿ローラ111A,111Bの線速と、含水率の関係を示すグラフである。
【0087】
加湿ローラ111A,111Bの線速を400mm/sと800mm/sの2種に設定して、用紙Sの各含水率を測定した。
【0088】
線分aはPPC用の普通紙(64g/m2)の場合の線速を400mm/sと800mm/sにおける含水率を示す。線分bは上質紙(81.4g/m2)の場合の線速における400mm/sと800mm/sにおける各含水率を示す。線分cは光沢コート紙(81.4g/m2)における各含水率を示す。
【0089】
加湿ローラ111A,111Bの線速を可変にする事で、用紙Sの紙種、坪量、または通紙環境に対する最適の線速により用紙Sの含水量の制御を行い、各条件に適した水分を用紙Sへ安定供給することにより、定着装置6から排出される用紙Sのカール、波打ちが解消され、平面性のよい用紙が得られる。また、用紙Sへの水分供給過多による搬送性能の低下を抑制させることができる。
【0090】
本発明の実施の形態では、複写機に用紙加湿装置Bと用紙後処理装置FSとを接続した画像形成装置について説明したが、軽印刷機、プリンタ、ファクシミリ、デジタル複合機等の画像形成装置本体Aに用紙加湿装置Bと用紙後処理装置FSとを接続した画像形成装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体図。
【図2】本発明の実施の形態における用紙加湿装置の断面図。
【図3】加湿部の断面図。
【図4】加湿部の駆動手段の正面図。
【図5】用紙加湿装置の加湿の制御を示すブロック図。
【図6】光沢コート紙を通紙したときの、加湿ローラの線速と含水率の関係を示すグラフ。
【図7】加湿ローラの線速と含水率の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0092】
6 定着装置
10 操作部
103 用紙加湿搬送路
104 バイパス搬送路
110 加湿部
111A,111B 加湿ローラ
112A,112B 給水ローラ
113A,113B 規制ローラ
114A,114B 給水槽
115 貯水槽
120 バイパス搬送部
23 用紙束収納手段
24 用紙束搬送手段
25 糊塗布手段
26 表紙供給手段
28 表紙外装手段(くるみ製本手段)
A 画像形成装置本体
B 用紙加湿装置
C1,C2,C3 制御手段
FS 用紙後処理装置(フィニッシャ)
M1,M2,M3 モータ
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップを形成する加湿ローラ対、及び該加湿ローラ対に水を供給する給水手段を有し、前記ニップに用紙を通過させることにより、用紙を加湿する用紙加湿装置において、
前記ニップを通過する用紙の種類に対応して、前記加湿ローラ対の線速を可変に設定することにより用紙の含水量を可変に制御することを特徴とする用紙加湿装置。
【請求項2】
用紙に画像を形成する画像形成装置本体と、
請求項1に記載の用紙加湿装置と、
前記用紙加湿装置から排出された用紙に後処理を行う用紙後処理装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−279551(P2007−279551A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108398(P2006−108398)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】