田植機
【課題】駆動用アクチュエータにより整地装置を駆動する田植機を提供する。
【解決手段】
走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしている。
【解決手段】
走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地装置を装備した田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の一形態として、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部に整地装置を取り付けたものがある。そして、前記整地装置は、左右方向に伸延する回転軸の外周に整地ローターを同心的に取り付けて構成し、上記回転軸を、伝動機構部を介して走行部に設けた原動機部に連動連結している。また、上記伝動機構部には、原動機部からの動力を入力側伝動シャフトを介して入力する入力軸と、同入力軸からの動力を出力側伝動シャフトを介して整地装置の回転軸に出力する出力軸と、同出力軸と前記入力軸との間に介設した中間軸と、同中間軸に設けたクラッチ機構とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにして、上記田植機では、走行部や植付部とは別に、整地装置を単独で伝動機構部を介して駆動させることも、また、同伝動機構部のクラッチ機構を介して作動停止させることもできるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−202531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記田植機の整地装置は、整地ローターが常時一定の回転速度で回転するように構成されているために、圃場の条件、例えば、田面上に張られている水の深度(水深)が大きい深田、水の深度(水深)が小さい浅田、機体が回行される畝近傍の枕地等によっては、回転速度を変えた方が整地効率が良くなるにも拘わらずそれができないという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に記載の発明は、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の本発明では、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしている。
【0011】
このように、アクチュエータ(例えば、電動モータ)により整地ローターの回転速度を可変となしているため、圃場の条件によって適宜回転速度を変えることにより、整地効率を良好に確保ないしは向上させることができる。例えば、田面上に張られている水の深度(水深)が大きい深田では、走行部の車輪のスリップ率(スリップし易さ)が高くなるため、整地ローターの回転速度は少なくして、その回転速度が走行部の速度よりも遅くなるように設定することができる。車速水の深度(水深)が小さい浅田では、適宜整地ローターの回転速度は多くして、その回転速度が走行部の速度よりも早くなるように設定することができる。機体が回行される畝近傍の枕地では、走行部の車輪による泥土の持ち上げが多いため、整地ローターの回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしている。
【0013】
このように、整地ローターの回転速度を走行部の走行速度に応じて変更することにより、整地作業能率を向上させることができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、請求項3記載の本発明では、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしている。
【0015】
このように、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしているため、前記(1)に記載した深田と浅田のように、植付圃場の水深に応じて効率の良い整地作業を行うことができる。
【0016】
(4)請求項4記載の本発明では、整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしている。
【0017】
このように、整地ローターは検出負荷に応じて回転速度を変更するようにしているため、例えば、田面の凸部において負荷を検出した場合には、整地ローターの回転速度を多くして整地性能を増大させることにより、整地作業性を良好に確保することができる。また、負荷が検出されない場合には、適宜整地ローターの回転速度を少なくすることにより省エネルギー化を図ることができる。その結果、整地効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[1.田植機の全体構成]
以下、本発明に係る田植機Aの実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すAは、本発明に係る田植機であり、この田植機Aは、走行部1の後方に昇降機構3を介して植付部2を昇降自在に連結している。
【0019】
走行部1は、図1に示すように、機体フレーム10の前部に原動機部11を配設し、この原動機部11の後方に運転部12を配設すると共に、機体フレーム10の前部下方にフロントアクスルケース(図示せず)を介して左右一対の前車輪13,13を取り付ける一方、機体フレーム10の後部にリヤアクスルケース14を介して左右一対の後車輪15,15を取り付けている。16は、運転部12に設けたハンドル、17は、運転部12に設けた運転席である。
【0020】
そして、機体フレーム10には、原動機部11の後下方でかつフロントアクスルケースの上方に位置させてトランスミッション部20を配設しており、同トランスミッション部20は、原動機部11に伝動ベルト(図示せず)を介して連動連結する一方、フロントアクスルケースに連動連設し、同トランスミッション部20に伝動シャフト21を介して前記リヤアクスルケース14を連動連結している。
【0021】
このようにして、原動機部11から動力を伝動ベルト→トランスミッション部20→フロントアクスルケース及びトランスミッション部20→伝動シャフト21→リヤアクスルケース14に伝達して、前・後車輪13,13,15,15の四輪駆動が行えるようにしている。
【0022】
植付部2は、図1に示すように、植付伝動ケース25と、後述する縦横のフレーム部材とを備える植付フレーム26と、同植付フレーム26に苗載台27を植付伝動ケース25の上方にて左右往復移動自在に取り付け、植付伝動ケース25の後部に設けた植付爪28により苗載台27上に載置した苗マットから苗株を切削して植付圃場Gに植え付けるようにしている。なお、植付部2の下方には、複数のフロート29が設けられる。
【0023】
昇降機構3は、図2及び図3に示すように、走行部1の機体フレーム10の後部に設けた立ち上がりフレーム形成体30と、植付部2の植付フレーム26との間に介設しており、トップリンク31とロワリンク32と、同ロワリンク32を昇降させる昇降シリンダ(図示せず)とを具備している。このようにして、昇降シリンダによりロワリンク32とトップリンク31を介して植付部2を昇降させることができるようにしている。
【0024】
[2.整地装置の構成]
そして、本発明に係る田植機Aは、植付部2に整地装置4を取り付けている。整地装置4は、図1に示すように、植付部2の直前方に配置した整地本体35を具備している。
【0025】
整地本体35は、図1に示されるように、植付部2の植付フレーム26に取り付けられた昇降支持機枠38と、昇降支持機枠38の下端部間に横架した左・右側回転軸39,39と、各回転軸39,39の外周に同心的に取り付けられた整地ローター50とを備えている。その整地ローター50及び回転軸39,39は、昇降支持機枠38を上下動させることにより、植付圃場Gの面に対して接地、離隔可能に構成している。
【0026】
整地ローター50は、図2及び図3に示すように、一定の厚みを有する断面正六角形状の板状体40aとし、その中心には回転軸39の断面形状に合致した正六角形状の穴が開口されている。しかも、断面正六角形状の整地ローター50の外周面40cの平坦面には外周角端に突出するように先端鋸歯状の均平板40Pが取付けられている。また、均平板40Pと均平板40Pとの間には、凹状空間部40Sが形成されている。
【0027】
昇降支持機枠38は、回動支軸43を備えている。回動支軸43は、左右方向に延在するものであり、この回動支軸43の左右両端部には、回動軸駆動用モータP,Pが配設されている。そして、各回動軸駆動用モータP,Pの駆動軸(図示せず)には回動軸43a,43aが連動連結され、回動軸駆動用モータP,Pの駆動軸の回転により回動軸43a,43aが回動自在に配設されている。
【0028】
そして、前記回動軸43a,43aには、図5に示すように、下方に延びる左右一対の昇降アーム44,44が設けられている。そして、各昇降アーム44,44の先端部には、上下方向に伸延するリンク45,45の上端が連結されており、リンク45,45の下端には、上下方向に伸延する左右一対の整地体支持ロッド46,46の上端部が連結されている。
【0029】
また、左右一対の整地体支持ロッド46,46は、植付フレーム26との間に取り付けられた左右一対の第1リンク部材47a,47a及び第2リンク部材47b、47bによって、その中途部を上下方向に摺動自在に枢支されている。
【0030】
第1リンク部材47a,47aは、一端を植付フレーム26の第1植付フレーム側枢支部26Aに揺動自在に枢支するとともに、他端を整地体支持ロッド46,46の中途部に配設した枢支片46Sの第1整地体支持ロッド側枢支部46Aに揺動自在に枢支している。
【0031】
第2リンク部材47b、47bは、一端を植付フレーム26の第2植付フレーム側枢支部26Bに揺動自在に枢支するとともに、他端を、整地体支持ロッド46,46の第2整地体ロッド側枢支部46Bに揺動自在に枢支している。
【0032】
そして、第1リンク部材47a,47aと、第2リンク部材47b、47bとは、平行リンクを形成しており、植付フレーム26と、整地体支持ロッド46との間で整地体支持ロッド46,46の上下動を可能とするとともに、同整地体支持ロッド46,46が機体の前後方向へ揺動するのを規制している。
【0033】
また、整地体支持ロッド46,46は、下端部にて左・右側回転軸39,39の各中途部を枢支している。さらに、回動支軸43の中央部には、前方に向けて延びる昇降操作レバー48の基端部がレバー支持体49を介して取り付けられている。したがって、昇降操作レバー48を上下方向に回動させることによって、回動支軸43、回動軸43a、昇降アーム44,44、リンク45,45および左右一対の整地体支持ロッド46,46を介して整地装置4の整地ローター50を昇降させることができる。
【0034】
または、回動支軸43の回動支軸43の左右両端部に設けられた回動軸駆動用モータP,Pを駆動させて、回動軸43a,43aを回動させることにより、昇降アーム44,44、リンク45,45および左右一対の整地体支持ロッド46,46を介して整地装置4の整地ローター50を昇降させることができる。
【0035】
[3.整地装置の駆動用アクチュエータ]
上記のような構成において、本発明の要旨は、整地装置4に駆動用のアクチュエータを連動連結したことにあり、以下に整地装置4の駆動用のアクチュエータの構成について詳細に説明する。
【0036】
前記した整地装置4は、左右方向に伸延した回転軸39,39に、同回転軸39,39の外周に同心的に整地ローター50を取り付けている。そして、その回転軸39,39に、整地ローター50の駆動用のアクチュエータとしての電動モータMを取り付けている。
【0037】
具体的には、図2及び図3に示すように、回転軸39,39の中央に、その内部に整地ローター用の電動モータMを備えたモータ取付体51を配設している。そのモータ取付体51は、左右の整地体支持ロッド46,46の中途部に設けられた保護カバー55、55間に支持片54を取り付け、その支持片54に取付片56を取り付けることにより固定されている。なお、モータ取付体51の取付位置は、回転軸39の中央に限定されるものではなく、回転軸39の端部に設けてもよい。または、機体フレーム10の中央に取り付けて、伝動軸を介して回転軸39を回転自在としてもよい。
【0038】
前記モータ取付体51は略円筒形状を有し、そのモータ取付体51の中に整地ローター駆動用の電動モータMが内蔵されている。そして、電動モータMのモータ回転軸52と整地ローター50の回転軸39とが連動連結している。
【0039】
このように、電動モータMのモータ回転軸52と整地ローター50の回転軸39とを連動連結しているので、電動モータMのモータ回転軸52を回転させることにより、前記整地ローター50の回転軸39を回転自在に設けることができる。また、電動モータMのモータ回転軸52は正回転及び逆回転させることができるので、これにより回転軸39を正回転及び逆回転させると共に、整地ローター50を正回転及び逆回転させることができる。
【0040】
電動モータMは、整地ローター50の回転軸39を所定回転速度で回転するものであれば、その大きさ、トルク容量、最大回転速度などは限定されない。電動モータMの電力は、機体フレーム10前方に配設されたバッテリ及び発電機から、ハーネスなどを通して供給される。
【0041】
このように、電動モータMで整地ローター50のモータ回転軸52を回転自在に設けているので、従来のエンジンからの動力を受けて、整地ローター50のモータ回転軸52を回転させるのにエンジンから伸延する伝動部材などを設ける必要がなく、機体の最低地上高を高い位置に保持することができる。また、原動機部11からの前記伝動部材が無くなるので、スペースの有効化を図ることができ、コストを低減することができる。
【0042】
また、電動モータMには、回転時に回転負荷がかかるのを検出する負荷検出器が前記モータ取付体51内の電動モータMに近接して設けられている。モータ回転軸52の回転速度及び回転トルクなどを検出することにより、電動モータMにかかる負荷を検出するようにしている。この負荷検出器としては、電動モータMの回転時に所定量の電流が流れるのを検出する電流検出器53、又は回転軸39に所定量以上のトルクがかかるのを検出するトルクリミッターなどが挙げられる。
【0043】
また、図1に示すように、機体フレーム10の所定位置に車速センサー61を設けている。そして、その車速センサー61によって検出される車速により、前記電動モータMの回転速度を制御することもできる。
【0044】
また、図4に示すように、電動モータMの駆動を制御するコントローラ60が、機体フレーム10の所定箇所に配設されている。図4に示すように、コントローラ60の入力側には、車速センサー61、硬度検出器63及び圃場選択スイッチ62が設けられている。また、出力側には、整地ローター50用の電動モータM及び回動軸駆動用モータPが設けられている。
【0045】
すなわち、コントローラ60は、車速センサー61で検出される車速に応じて、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。また、硬度検出器63によって検出される圃場の硬度によって、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。さらに、圃場選択スイッチ62によって選択される植付圃場Gの状況に応じて、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。
【0046】
[4.整地装置の昇降用アクチュエータ]
前記のように、昇降操作レバー48を手動で回動操作することにより、整地装置4を昇降させることができ、または、回動軸駆動用モータPを駆動して回動軸43aを回動することにより整地装置4を昇降させることができるが、本実施形態における田植機Aは、昇降用のアクチュエータを用いて整地装置4を自動で昇降させることができる。すなわち、昇降用モータNにより昇降操作レバー48を操作して整地本体35の昇降位置を切替可能としている。
【0047】
前記昇降操作レバー48は、図5及び図6に示すように、略箱形状を有するレバー支持体49を介して取り付けられている。そのレバー支持体49の上板部には、昇降操作レバー48のレバー本体75を挿通する略矩形のレバー挿通孔74が設けられている。また、前記レバー支持体49の上板部76の下方には、高さ調節ガイド板72が摺動自在に設けられている。
【0048】
前記高さ調節ガイド板72は、平面視して右側端部が前記レバー挿通孔74に対して張り出している。その高さ調節ガイド板72の右側端部には所定間隔を有して複数個のノッチ部73が設けられている。また、レバー本体75の中途部には、係合片78が取り付けられ、その係合片78は前記ノッチ部73に係合されている。
【0049】
そして、レバー支持体49の下方には整地装置4を昇降させる昇降用アクチュエータとしての昇降用モータNが配設されている。昇降用モータNの回転軸(図示せず)にはその表面に雄ネジが形成されたガイド軸71が連結されており、昇降用モータNの回転軸の回転によりガイド軸71を回転自在としている。
【0050】
さらに、前記高さ調節ガイド板72の下部には略円筒形状の移動子77が設けられ、移動子77のレバー挿通孔74の内面には雌ネジが形成されている。そして、前記移動子77の挿通孔には、前記ガイド軸71が挿通される。
【0051】
昇降用モータNの回転軸を回転させると、ガイド軸71が前後に回転し、ガイド軸71を挿通している移動子77が、ガイド軸71の回転に伴って、前後に移動する。これにより、移動子77を連結している高さ調節ガイド板72が前後方向に摺動自在としている。
【0052】
そして、高さ調節ガイド板72が前後方向に摺動することにより、高さ調節ガイド板72に設けられたノッチ部73に係合している係合片78を介して、昇降操作レバー48のレバー本体75が前後方向に摺動自在となる。このようにして、昇降用アクチュエータにより整地装置4を自動的に昇降可能としている。
【0053】
以上のように、整地装置4は、昇降操作レバー48の手動操作、回動軸駆動用モータPの駆動による操作、昇降用モータNによる操作によって昇降可能としている。これらは、例えば、整地ローター50の高さ調節などを手動操作で行い、整地装置4を整地作業位置から整地対象面より上方に離隔した非整地作業位置に位置変更させる場合には回動軸駆動用モータPの駆動による操作で行い、圃場の硬度によって整地ローター50の高さ調整を行う場合には昇降用モータNによる操作で行うように使い分けることができる。
【0054】
[5.異物詰まり時の整地ローターの制御]
次に、異物詰まり時の整地ローターの制御について説明する。整地ローター50は、車輪13,13,15,15と同じ回転方向に回転しながら、植付圃場Gの整地を行う。そして、植付圃場G内に木片Sや小石等の異物があると、整地作業時にその木片S等が整地ローター50に詰まってしまう場合がある。具体的には、図7に示すように、整地ローター50の背面側に保護カバー55が設けられており、前記走行方向に回転しながら走行させると、保護カバー55と整地ローター50本体との箇所で異物が詰まってしまう。または、図3に示す凹状空間部40Sの中に詰まることもある。
【0055】
そこで、本実施形態における田植機Aは、異物詰まりを電動モータMの駆動時の負荷により検出するようにしている。すなわち、異物詰まりを起こすと、整地ローター50の回転に負荷がかかることになる。その負荷がかかったことを負荷検出器である電流検出器53で検出するようにしている。
【0056】
そして、前記電流検出器53で所定負荷を検出することにより、コントローラ60が整地ローター50の回転を停止する制御を行う。なお、前記電流検出器53の代わりに、トルクリミッターを用いて、所定トルクを超えたときに電動モータMを停止させるようにすることもできる。
【0057】
このように、整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合には、同整地ローター50を緊急停止させることができて、整地ローター50の構成部材の損傷を防止することができると共に、整地作業能率を良好に確保することができる。
【0058】
また、本実施形態における田植機Aは、電動モータMの回転軸を逆回転させることにより、整地ローター50を逆回転させることができる。そして、前記のように、整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合においても、負荷を検出することにより、コントローラ60の指令により整地ローター50を停止した後に逆回転させるようにしている。
【0059】
このように、整地ローター50を電動モータMにより逆回転可能となすことにより、前記のような整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合でも、整地ローター50を逆回転させることができ、整地ローター50に挟まった異物を迅速かつ確実に振り落として取り除くことができる。従って、速やかに整地ローター50を元の状態に復帰させることができて、同整地ローター50による整地作業を続行することができる。その結果、整地作業能率を向上させることができる。
【0060】
しかも、整地ローター50や回転軸39に過剰な負荷が作用するのを回避することができるため、ローター本体等の構成部材の損傷等を防止することができる。従って、この点からも整地作業能率を良好に確保することができると共に、整地装置4の寿命を確保さらには延命化することができる。
【0061】
また、整地ローター50は検出負荷に応じて整地作業位置から非整地作業位置に位置変更させることができる。例えば、所定以上の過負荷を検出した場合には、整地ローター50を、植付圃場Gを整地する整地対象面に接地させた整地作業位置から前記整地対象面から上方に離隔した非整地作業位置に位置変更させるようにしているので、過剰な負荷によって整地ローター50が損傷等されるのを防止することができる。
【0062】
すなわち、コントローラ60は、前記異物詰まりを検出すると、図3に示すように、前記昇降用アクチュエータの各回動軸駆動用モータP,Pを駆動させて回動軸43a,43aを(イ)の方向に回動させて、リンク45,45を(ロ)の方向に折りたたみ、整地体支持ロッド46,46を上方に移動させることにより、整地ローター50自体を整地対象面から離隔して上昇させるようにしている。
【0063】
このように、整地ローター50を検出負荷に応じて整地作業位置から非整地作業位置に位置変更させることができるので、作業途中での整地ローター50の修理やメンテナンス等の手間を低減させることができて、結果的には、作業能率を向上させることができる。
【0064】
[6.アクチュエータによる整地ローターの制御]
植付圃場Gから道路を隔てた別の植付圃場Gに移動する場合には、整地ローター50に付着している泥土を取除く必要が生じる。もし、泥土を落とさないで移動した場合には、道路にその泥土が落下することなく景観上好ましくなく、また道路を通行する車や人にも付着させてしまう。
【0065】
そこで、作業終了後や圃場間移動時には、圃場出口において整地ローター50を逆回転させることにより、付着泥土等を確実に振り落として取り除くことができる。その結果、道路等に付着泥土等を落とした場合の後作業の手間を解消することができて、この点からも作業能率を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態における田植機Aは、植付部2が植付圃場面から離隔して上昇すると、電動モータMにより整地ローター50を逆回転させるようにしている。
【0067】
このように、植付部2が上昇されて植付圃場G面から離隔して上昇した場合、例えば、機体を畝近傍で回行させた際には植付部2を植付圃場面から離隔して上昇させるが、この場合に電動モータMにより整地ローター50が逆回転されて、付着泥土等が振り落とされるようにしている。そのため、機体を回行させる度に整地ローター50の付着泥土等が自動的に取り除かれて、同整地ローター50の整地機能が良好に確保される。その結果、整地作業効率を向上させることができる。
【0068】
前記のように作業終了後や圃場間移動時には、圃場出口において整地ローター50の付着泥土等をできるだけ取り除いて、道路等に付着泥土等を落とさないようにする必要があるが、植付部2が植付圃場面から上方に離隔した状態となるため、整地ローター50の付着泥土等は自動的に取り除かれる。そのため、道路等に付着泥土等を落とした場合の後作業の手間を解消することができて、この点からも作業能率を向上させることができる。
【0069】
[7.植付圃場の状況に応じた整地ローターの制御]
次に、植付圃場Gの状況に応じた整地ローター50の制御方法について説明する。植付圃場Gの状況の例として、「標準」、「深水」、又は「枕地」等の3つの場合がある。
【0070】
すなわち、「標準」とは、本実施形態における田植機Aが植付作業を行う場合に特別な制御を実行せずに行える浅田を意味している。図8に示すように、この「標準」の植付圃場Gは、田面上に張られている水の深度が略1cm程度である。
【0071】
また、「深水」とは、田面上に張られている水Wの深度が大きい深田を意味している。すなわち、図9に示すように、田面上に張られている水Wの深度が略5cm程度である。このような深田では走行中での走行部1の車輪13,13,15,15のスリップ率(スリップし易さ)が高い。
【0072】
さらに、「枕地」とは、畦の近傍に位置する圃場の端部であり、圃場内で均平作業等を行う作業機を回向させる箇所である。かかる「枕地」では上記標準と比較して植付圃場Gの水量が少ない場合や植付圃場Gの中央部分と比較して植付圃場Gの状況が悪い(凹凸が多い等)場合がある。
【0073】
なお、通常の田植機Aは、図10に示すように、植付圃場Gの水の深さに応じて植付深さを一定にする圃場選択スイッチ62が運転部12のハンドル16横に設けられている。その圃場選択スイッチ62は、操作者が知り得た植付圃場Gの水Wの深さの状況に応じて設定入力するための切替式のスイッチである。すなわち、田植機Aに該植付圃場Gの状況に応じた作業が行えるように設定するためのスイッチである。そして、植付圃場Gの状況に合わせて、圃場選択スイッチ62を選択することにより、植付深さが一定になるようにしている。
【0074】
しかし、従来の田植機は、上記異なる植付圃場Gの状況であっても、常に整地ローター50の回転速度は一定であった。例えば深田の場合、整地ローター50を通常時と同じ回転速度で回転させると、その回転で水流を発生させて植え付ける苗に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0075】
そこで、本実施形態における田植機Aは、圃場選択スイッチ62の選択により、上記3つの植付圃場Gの状況に合わせて、前記整地ローター50の回転速度をアクチュエータを用いて変更できるようにした。
【0076】
すなわち、図9に示すような浅田の場合においては、前記圃場選択スイッチ62を「標準」に設定すれば、通常の回転速度で整地ローター50を回転させるようにしている。なお、整地ローター50の回転速度は田植機Aの車速の略1.5倍に設定している。そして、浅田の場合にはスリップ率は低くなるので、図11に示すグラフのように、車速に対する整地ローター50の回転速度を略1.5倍よりも大きくするようにしている。
【0077】
図10に示すような深田の場合においては、前記圃場選択スイッチ62を「深水」に設定すると、電動モータMの回転速度及び整地ローター50の回転速度を通常時に比べて落とすようにしている。深田の場合にはスリップ率が高くなるので、図11に示すグラフのように、車速に対する整地ローター50の回転速度を略1.5倍よりも小さくするようにしている。
【0078】
また、昇降用モータN(昇降用アクチュエータ)駆動させて昇降操作レバー48を自動的に操作することにより、整地ローター50全体を上昇させるようにしている。これにより、整地ローター50の回転によって生じる水による植付の悪影響を改善することができる。
【0079】
さらに、枕地の場合では、水面よりも泥の持ち上げ部分が多いので、整地能力を高める必要がある。そこで、前記圃場選択スイッチ62を「枕地」に設定すると、前記「通常」の場合に比べて、電動モータMの回転速度を高めて、整地ローター50の回転速度を高めている。このようにして、枕地の場合では、整地ローター50の回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【0080】
以上のように、電動モータMの回転速度を可変となすことにより整地ローター50の回転速度を可変となしているため、植付圃場Gの条件によって適宜回転速度を変えることにより、整地効率を良好に確保ないしは向上させることができる。
【0081】
[8.車速同調制御]
本実施形態における田植機Aは、車速に同調して整地ローター50の回転速度を変更可能としている。具体的には、図1に示すように、機体フレーム10の所定箇所に田植機Aの走行速度を検出する車速センサー61を設けている。また、コントローラ60は、車速センサー61で検出する車速の結果に基づいて、電動モータMの回転速度を変化するように制御を行う。
【0082】
前記電動モータMの回転速度を可変とすることにより、整地ローター50の回転速度を可変とすることができる。例えば、前記のようなスリップ率の高い深田の場合には、車速が遅くなるので、整地ローター50の回転速度も落とすように制御を行う。このようにして、車速に応じて整地ローター50の回転速度を変更可能としている。
【0083】
[8.植付圃場の硬度検出]
さらに、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの土質に応じて整地ローター50の制御を行うことができる。ここで、植付圃場Gの土質は、水と土との比重の差により、硬質の植付圃場Gまたは軟質の植付圃場Gがある。
【0084】
植付圃場Gの硬度は、例えば、特開2002−125423号公報に記載のような、フロート29に設けられた硬度検出器63により行うことができる。すなわち、図12に示すように、センター側のフロート29の上部にポテンショメータ式の硬度検出器63を配設し、また、その基端側を前記硬度検出器63に取り付け、その先端側をフロート29の下方に位置するようにしたセンサーアーム65を配設している。このセンサーアーム65は、中途部において先端部が上方に向かって折り曲げられている。
【0085】
そして、前記センサーアーム65の沈み込み量により、前記硬度検出器63で硬度の違いを検出するようにしている。すなわち、センサーアーム65の沈み込み量が大きい場合には、軟質の植付圃場Gであることを検出する。逆に、センサーアーム65の沈み込み量が小さい場合には、硬質の植付圃場Gであることを検出するようにしている。
【0086】
そして、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの硬度に応じてコントローラ60が整地ローター50の回転速度を制御できるようにしている。以下、植付圃場Gの状況に応じた整地ローター50の制御方法について説明する。
【0087】
まず、植付圃場Gの面の硬度が大きい(硬質の)場合について説明する。植付圃場Gの面の硬度が大きいと、フロート29から下方に伸延するセンサーアーム65の沈み込みの量が小さくなる。この沈み込み量が小さいことによって、コントローラ60は植付圃場Gの硬度が大きいことを検出する。そして、コントローラ60は、硬度が高いことを検出することにより、電動モータMの回転速度を軟度の植付圃場Gの場合に比べて回転速度を増大させるようにしている。
【0088】
そして、図13に示すように、電動モータMの回転速度を増大させることにより、整地ローター50の回転速度が増大させることになる。このようにして、硬度の植付圃場Gの場合、整地ローター50の回転速度を増大させることにより、整地能力を増大させるようにしている。
【0089】
また、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの面の硬度を検出することにより、同硬度の大きさに逆比例させて整地ローター50を植付圃場Gの整地対象面に大きく又は小さく進入させることもできる。すなわち、植付圃場Gの面の硬度が大きい(硬質の)場合には整地ローター50を昇降用アクチュエータにより下降させて植付圃場Gの整地対象面に大きく(深く)進入させることにより、整地性能を増大させる。場合によっては整地ローター50の回転速度も増大させることができる。
【0090】
これに対して、植付圃場Gの面の硬度が小さい(軟質の)場合には、昇降用アクチュエータにより整地ローター50を上昇させて植付圃場G面に小さく(浅く)接地させることにより、整地性能を減少させる。場合によっては、図13に示すように、整地ローター50の回転速度も減少させることができる。このように、植付圃場Gの整地対象面の硬度の大きさに比例させて整地ローター50を植付圃場Gの整地対象面に大きく又は小さく接地させることにより、整地作業効率を向上させることができる。
【0091】
また、植付圃場Gの土質の硬度は、電動モータMにかかる負荷により検出することができる。すなわち、土質が硬い植付圃場Gにおいては、整地ローター50が泥水や泥土から受ける抵抗が大きい。この際、アクチュエータの検出負荷は大きくなる。その場合には、前記昇降用モータNを駆動させて整地ローター50を上昇させて浅い水深位置において回転(整地作動)させことにより、整地ローター50による泥押し、植付圃場Gの面の荒れを回避することができる。
【0092】
これに対して、土質が軟らかい植付圃場Gのように、アクチュエータの検出負荷が小さい場合には、上記とは反対に、整地ローター50を深位置まで下降位置させることにより、整地効率を良好に確保することができる。
【0093】
[9.仕様変更]
さらに、本実施形態における田植機Aの整地装置4は、前記走行部1の走行速度に比例して整地ローター50の回転速度を変化させる標準仕様と、整地ローター50を前記非整地作業位置に配置する不使用仕様と、前記標準仕様よりも整地ローター50の回転速度を多くする特別仕様のいずれかを選択可能としている。
【0094】
前記仕様の選択は、運転部12の操作パネルに設けた仕様変更スイッチにより行うことができる。このように、植付圃場Gの条件によって、標準仕様と不使用仕様と特別仕様を適宜選択することにより、効率の良い整地作業を行うことができる。
【0095】
例えば、植付圃場Gの水深が浅くも深くもない通常の場合には、標準仕様を採用することができる。通常の場合には、車速センサー61で検出する車速に基づいて、整地ローター50の回転速度を制御しながら整地作業を行うようにしている。
【0096】
また、植付圃場Gの水深が深い深水の場合は不使用仕様を採用して、整地ローター50を整地対象面から上方に離隔した非作業位置に配置するようにする。これにより、整地ローター50が水を介して既に植え付けた苗に作用して植付姿勢に悪影響を与えるのを回避することができる。
【0097】
さらに、機体を回行させる畝近傍の枕地では特別仕様を採用して、整地性能を増大させることができる。枕地の場合では、水面よりも泥の持ち上げ部分が多いので、整地能力を高める必要がある。そこで、前記圃場選択スイッチ62を「枕地」に設定すると、前記通常仕様の場合に比べて、電動モータMの回転速度を高めて、整地ローター50の回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の実施の形態における田植機の全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態における田植機の整地装置周辺の主要な構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態における田植機の整地装置を昇降させる昇降機構の構成を示す平面図である。
【図7】この発明の実施の形態における田植機の整地ローターに異物が挟まった状態を示す側面図である。
【図8】この発明の実施の形態における田植機の浅田の整地ローターの状態を示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態における田植機の深田での整地ローターの状態を示す側面図である。
【図10】この発明の実施の形態における田植機の操作パネルの構成を示す平面図である。
【図11】この発明の実施の形態における田植機の整地ローターの植付圃場の深さとスリップ率またはローターの回転速度の関係を示すグラフである。
【図12】この発明の実施の形態における田植機の硬度センサーの構成を示す側面図である。
【図13】この発明の実施の形態における田植機の異なる植付圃場での整地ローターの状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0099】
A 田植機
M 電動モータ
G 植付圃場
1 走行部
2 植付部
11 整地装置
12 整地ローター
13 回転軸
14 機体フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地装置を装備した田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の一形態として、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部に整地装置を取り付けたものがある。そして、前記整地装置は、左右方向に伸延する回転軸の外周に整地ローターを同心的に取り付けて構成し、上記回転軸を、伝動機構部を介して走行部に設けた原動機部に連動連結している。また、上記伝動機構部には、原動機部からの動力を入力側伝動シャフトを介して入力する入力軸と、同入力軸からの動力を出力側伝動シャフトを介して整地装置の回転軸に出力する出力軸と、同出力軸と前記入力軸との間に介設した中間軸と、同中間軸に設けたクラッチ機構とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにして、上記田植機では、走行部や植付部とは別に、整地装置を単独で伝動機構部を介して駆動させることも、また、同伝動機構部のクラッチ機構を介して作動停止させることもできるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−202531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記田植機の整地装置は、整地ローターが常時一定の回転速度で回転するように構成されているために、圃場の条件、例えば、田面上に張られている水の深度(水深)が大きい深田、水の深度(水深)が小さい浅田、機体が回行される畝近傍の枕地等によっては、回転速度を変えた方が整地効率が良くなるにも拘わらずそれができないという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に記載の発明は、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の本発明では、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしている。
【0011】
このように、アクチュエータ(例えば、電動モータ)により整地ローターの回転速度を可変となしているため、圃場の条件によって適宜回転速度を変えることにより、整地効率を良好に確保ないしは向上させることができる。例えば、田面上に張られている水の深度(水深)が大きい深田では、走行部の車輪のスリップ率(スリップし易さ)が高くなるため、整地ローターの回転速度は少なくして、その回転速度が走行部の速度よりも遅くなるように設定することができる。車速水の深度(水深)が小さい浅田では、適宜整地ローターの回転速度は多くして、その回転速度が走行部の速度よりも早くなるように設定することができる。機体が回行される畝近傍の枕地では、走行部の車輪による泥土の持ち上げが多いため、整地ローターの回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしている。
【0013】
このように、整地ローターの回転速度を走行部の走行速度に応じて変更することにより、整地作業能率を向上させることができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、請求項3記載の本発明では、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしている。
【0015】
このように、整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしているため、前記(1)に記載した深田と浅田のように、植付圃場の水深に応じて効率の良い整地作業を行うことができる。
【0016】
(4)請求項4記載の本発明では、整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしている。
【0017】
このように、整地ローターは検出負荷に応じて回転速度を変更するようにしているため、例えば、田面の凸部において負荷を検出した場合には、整地ローターの回転速度を多くして整地性能を増大させることにより、整地作業性を良好に確保することができる。また、負荷が検出されない場合には、適宜整地ローターの回転速度を少なくすることにより省エネルギー化を図ることができる。その結果、整地効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[1.田植機の全体構成]
以下、本発明に係る田植機Aの実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すAは、本発明に係る田植機であり、この田植機Aは、走行部1の後方に昇降機構3を介して植付部2を昇降自在に連結している。
【0019】
走行部1は、図1に示すように、機体フレーム10の前部に原動機部11を配設し、この原動機部11の後方に運転部12を配設すると共に、機体フレーム10の前部下方にフロントアクスルケース(図示せず)を介して左右一対の前車輪13,13を取り付ける一方、機体フレーム10の後部にリヤアクスルケース14を介して左右一対の後車輪15,15を取り付けている。16は、運転部12に設けたハンドル、17は、運転部12に設けた運転席である。
【0020】
そして、機体フレーム10には、原動機部11の後下方でかつフロントアクスルケースの上方に位置させてトランスミッション部20を配設しており、同トランスミッション部20は、原動機部11に伝動ベルト(図示せず)を介して連動連結する一方、フロントアクスルケースに連動連設し、同トランスミッション部20に伝動シャフト21を介して前記リヤアクスルケース14を連動連結している。
【0021】
このようにして、原動機部11から動力を伝動ベルト→トランスミッション部20→フロントアクスルケース及びトランスミッション部20→伝動シャフト21→リヤアクスルケース14に伝達して、前・後車輪13,13,15,15の四輪駆動が行えるようにしている。
【0022】
植付部2は、図1に示すように、植付伝動ケース25と、後述する縦横のフレーム部材とを備える植付フレーム26と、同植付フレーム26に苗載台27を植付伝動ケース25の上方にて左右往復移動自在に取り付け、植付伝動ケース25の後部に設けた植付爪28により苗載台27上に載置した苗マットから苗株を切削して植付圃場Gに植え付けるようにしている。なお、植付部2の下方には、複数のフロート29が設けられる。
【0023】
昇降機構3は、図2及び図3に示すように、走行部1の機体フレーム10の後部に設けた立ち上がりフレーム形成体30と、植付部2の植付フレーム26との間に介設しており、トップリンク31とロワリンク32と、同ロワリンク32を昇降させる昇降シリンダ(図示せず)とを具備している。このようにして、昇降シリンダによりロワリンク32とトップリンク31を介して植付部2を昇降させることができるようにしている。
【0024】
[2.整地装置の構成]
そして、本発明に係る田植機Aは、植付部2に整地装置4を取り付けている。整地装置4は、図1に示すように、植付部2の直前方に配置した整地本体35を具備している。
【0025】
整地本体35は、図1に示されるように、植付部2の植付フレーム26に取り付けられた昇降支持機枠38と、昇降支持機枠38の下端部間に横架した左・右側回転軸39,39と、各回転軸39,39の外周に同心的に取り付けられた整地ローター50とを備えている。その整地ローター50及び回転軸39,39は、昇降支持機枠38を上下動させることにより、植付圃場Gの面に対して接地、離隔可能に構成している。
【0026】
整地ローター50は、図2及び図3に示すように、一定の厚みを有する断面正六角形状の板状体40aとし、その中心には回転軸39の断面形状に合致した正六角形状の穴が開口されている。しかも、断面正六角形状の整地ローター50の外周面40cの平坦面には外周角端に突出するように先端鋸歯状の均平板40Pが取付けられている。また、均平板40Pと均平板40Pとの間には、凹状空間部40Sが形成されている。
【0027】
昇降支持機枠38は、回動支軸43を備えている。回動支軸43は、左右方向に延在するものであり、この回動支軸43の左右両端部には、回動軸駆動用モータP,Pが配設されている。そして、各回動軸駆動用モータP,Pの駆動軸(図示せず)には回動軸43a,43aが連動連結され、回動軸駆動用モータP,Pの駆動軸の回転により回動軸43a,43aが回動自在に配設されている。
【0028】
そして、前記回動軸43a,43aには、図5に示すように、下方に延びる左右一対の昇降アーム44,44が設けられている。そして、各昇降アーム44,44の先端部には、上下方向に伸延するリンク45,45の上端が連結されており、リンク45,45の下端には、上下方向に伸延する左右一対の整地体支持ロッド46,46の上端部が連結されている。
【0029】
また、左右一対の整地体支持ロッド46,46は、植付フレーム26との間に取り付けられた左右一対の第1リンク部材47a,47a及び第2リンク部材47b、47bによって、その中途部を上下方向に摺動自在に枢支されている。
【0030】
第1リンク部材47a,47aは、一端を植付フレーム26の第1植付フレーム側枢支部26Aに揺動自在に枢支するとともに、他端を整地体支持ロッド46,46の中途部に配設した枢支片46Sの第1整地体支持ロッド側枢支部46Aに揺動自在に枢支している。
【0031】
第2リンク部材47b、47bは、一端を植付フレーム26の第2植付フレーム側枢支部26Bに揺動自在に枢支するとともに、他端を、整地体支持ロッド46,46の第2整地体ロッド側枢支部46Bに揺動自在に枢支している。
【0032】
そして、第1リンク部材47a,47aと、第2リンク部材47b、47bとは、平行リンクを形成しており、植付フレーム26と、整地体支持ロッド46との間で整地体支持ロッド46,46の上下動を可能とするとともに、同整地体支持ロッド46,46が機体の前後方向へ揺動するのを規制している。
【0033】
また、整地体支持ロッド46,46は、下端部にて左・右側回転軸39,39の各中途部を枢支している。さらに、回動支軸43の中央部には、前方に向けて延びる昇降操作レバー48の基端部がレバー支持体49を介して取り付けられている。したがって、昇降操作レバー48を上下方向に回動させることによって、回動支軸43、回動軸43a、昇降アーム44,44、リンク45,45および左右一対の整地体支持ロッド46,46を介して整地装置4の整地ローター50を昇降させることができる。
【0034】
または、回動支軸43の回動支軸43の左右両端部に設けられた回動軸駆動用モータP,Pを駆動させて、回動軸43a,43aを回動させることにより、昇降アーム44,44、リンク45,45および左右一対の整地体支持ロッド46,46を介して整地装置4の整地ローター50を昇降させることができる。
【0035】
[3.整地装置の駆動用アクチュエータ]
上記のような構成において、本発明の要旨は、整地装置4に駆動用のアクチュエータを連動連結したことにあり、以下に整地装置4の駆動用のアクチュエータの構成について詳細に説明する。
【0036】
前記した整地装置4は、左右方向に伸延した回転軸39,39に、同回転軸39,39の外周に同心的に整地ローター50を取り付けている。そして、その回転軸39,39に、整地ローター50の駆動用のアクチュエータとしての電動モータMを取り付けている。
【0037】
具体的には、図2及び図3に示すように、回転軸39,39の中央に、その内部に整地ローター用の電動モータMを備えたモータ取付体51を配設している。そのモータ取付体51は、左右の整地体支持ロッド46,46の中途部に設けられた保護カバー55、55間に支持片54を取り付け、その支持片54に取付片56を取り付けることにより固定されている。なお、モータ取付体51の取付位置は、回転軸39の中央に限定されるものではなく、回転軸39の端部に設けてもよい。または、機体フレーム10の中央に取り付けて、伝動軸を介して回転軸39を回転自在としてもよい。
【0038】
前記モータ取付体51は略円筒形状を有し、そのモータ取付体51の中に整地ローター駆動用の電動モータMが内蔵されている。そして、電動モータMのモータ回転軸52と整地ローター50の回転軸39とが連動連結している。
【0039】
このように、電動モータMのモータ回転軸52と整地ローター50の回転軸39とを連動連結しているので、電動モータMのモータ回転軸52を回転させることにより、前記整地ローター50の回転軸39を回転自在に設けることができる。また、電動モータMのモータ回転軸52は正回転及び逆回転させることができるので、これにより回転軸39を正回転及び逆回転させると共に、整地ローター50を正回転及び逆回転させることができる。
【0040】
電動モータMは、整地ローター50の回転軸39を所定回転速度で回転するものであれば、その大きさ、トルク容量、最大回転速度などは限定されない。電動モータMの電力は、機体フレーム10前方に配設されたバッテリ及び発電機から、ハーネスなどを通して供給される。
【0041】
このように、電動モータMで整地ローター50のモータ回転軸52を回転自在に設けているので、従来のエンジンからの動力を受けて、整地ローター50のモータ回転軸52を回転させるのにエンジンから伸延する伝動部材などを設ける必要がなく、機体の最低地上高を高い位置に保持することができる。また、原動機部11からの前記伝動部材が無くなるので、スペースの有効化を図ることができ、コストを低減することができる。
【0042】
また、電動モータMには、回転時に回転負荷がかかるのを検出する負荷検出器が前記モータ取付体51内の電動モータMに近接して設けられている。モータ回転軸52の回転速度及び回転トルクなどを検出することにより、電動モータMにかかる負荷を検出するようにしている。この負荷検出器としては、電動モータMの回転時に所定量の電流が流れるのを検出する電流検出器53、又は回転軸39に所定量以上のトルクがかかるのを検出するトルクリミッターなどが挙げられる。
【0043】
また、図1に示すように、機体フレーム10の所定位置に車速センサー61を設けている。そして、その車速センサー61によって検出される車速により、前記電動モータMの回転速度を制御することもできる。
【0044】
また、図4に示すように、電動モータMの駆動を制御するコントローラ60が、機体フレーム10の所定箇所に配設されている。図4に示すように、コントローラ60の入力側には、車速センサー61、硬度検出器63及び圃場選択スイッチ62が設けられている。また、出力側には、整地ローター50用の電動モータM及び回動軸駆動用モータPが設けられている。
【0045】
すなわち、コントローラ60は、車速センサー61で検出される車速に応じて、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。また、硬度検出器63によって検出される圃場の硬度によって、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。さらに、圃場選択スイッチ62によって選択される植付圃場Gの状況に応じて、整地ローター50の回転速度を制御するようにしている。
【0046】
[4.整地装置の昇降用アクチュエータ]
前記のように、昇降操作レバー48を手動で回動操作することにより、整地装置4を昇降させることができ、または、回動軸駆動用モータPを駆動して回動軸43aを回動することにより整地装置4を昇降させることができるが、本実施形態における田植機Aは、昇降用のアクチュエータを用いて整地装置4を自動で昇降させることができる。すなわち、昇降用モータNにより昇降操作レバー48を操作して整地本体35の昇降位置を切替可能としている。
【0047】
前記昇降操作レバー48は、図5及び図6に示すように、略箱形状を有するレバー支持体49を介して取り付けられている。そのレバー支持体49の上板部には、昇降操作レバー48のレバー本体75を挿通する略矩形のレバー挿通孔74が設けられている。また、前記レバー支持体49の上板部76の下方には、高さ調節ガイド板72が摺動自在に設けられている。
【0048】
前記高さ調節ガイド板72は、平面視して右側端部が前記レバー挿通孔74に対して張り出している。その高さ調節ガイド板72の右側端部には所定間隔を有して複数個のノッチ部73が設けられている。また、レバー本体75の中途部には、係合片78が取り付けられ、その係合片78は前記ノッチ部73に係合されている。
【0049】
そして、レバー支持体49の下方には整地装置4を昇降させる昇降用アクチュエータとしての昇降用モータNが配設されている。昇降用モータNの回転軸(図示せず)にはその表面に雄ネジが形成されたガイド軸71が連結されており、昇降用モータNの回転軸の回転によりガイド軸71を回転自在としている。
【0050】
さらに、前記高さ調節ガイド板72の下部には略円筒形状の移動子77が設けられ、移動子77のレバー挿通孔74の内面には雌ネジが形成されている。そして、前記移動子77の挿通孔には、前記ガイド軸71が挿通される。
【0051】
昇降用モータNの回転軸を回転させると、ガイド軸71が前後に回転し、ガイド軸71を挿通している移動子77が、ガイド軸71の回転に伴って、前後に移動する。これにより、移動子77を連結している高さ調節ガイド板72が前後方向に摺動自在としている。
【0052】
そして、高さ調節ガイド板72が前後方向に摺動することにより、高さ調節ガイド板72に設けられたノッチ部73に係合している係合片78を介して、昇降操作レバー48のレバー本体75が前後方向に摺動自在となる。このようにして、昇降用アクチュエータにより整地装置4を自動的に昇降可能としている。
【0053】
以上のように、整地装置4は、昇降操作レバー48の手動操作、回動軸駆動用モータPの駆動による操作、昇降用モータNによる操作によって昇降可能としている。これらは、例えば、整地ローター50の高さ調節などを手動操作で行い、整地装置4を整地作業位置から整地対象面より上方に離隔した非整地作業位置に位置変更させる場合には回動軸駆動用モータPの駆動による操作で行い、圃場の硬度によって整地ローター50の高さ調整を行う場合には昇降用モータNによる操作で行うように使い分けることができる。
【0054】
[5.異物詰まり時の整地ローターの制御]
次に、異物詰まり時の整地ローターの制御について説明する。整地ローター50は、車輪13,13,15,15と同じ回転方向に回転しながら、植付圃場Gの整地を行う。そして、植付圃場G内に木片Sや小石等の異物があると、整地作業時にその木片S等が整地ローター50に詰まってしまう場合がある。具体的には、図7に示すように、整地ローター50の背面側に保護カバー55が設けられており、前記走行方向に回転しながら走行させると、保護カバー55と整地ローター50本体との箇所で異物が詰まってしまう。または、図3に示す凹状空間部40Sの中に詰まることもある。
【0055】
そこで、本実施形態における田植機Aは、異物詰まりを電動モータMの駆動時の負荷により検出するようにしている。すなわち、異物詰まりを起こすと、整地ローター50の回転に負荷がかかることになる。その負荷がかかったことを負荷検出器である電流検出器53で検出するようにしている。
【0056】
そして、前記電流検出器53で所定負荷を検出することにより、コントローラ60が整地ローター50の回転を停止する制御を行う。なお、前記電流検出器53の代わりに、トルクリミッターを用いて、所定トルクを超えたときに電動モータMを停止させるようにすることもできる。
【0057】
このように、整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合には、同整地ローター50を緊急停止させることができて、整地ローター50の構成部材の損傷を防止することができると共に、整地作業能率を良好に確保することができる。
【0058】
また、本実施形態における田植機Aは、電動モータMの回転軸を逆回転させることにより、整地ローター50を逆回転させることができる。そして、前記のように、整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合においても、負荷を検出することにより、コントローラ60の指令により整地ローター50を停止した後に逆回転させるようにしている。
【0059】
このように、整地ローター50を電動モータMにより逆回転可能となすことにより、前記のような整地作業中に植付圃場G内の木片S等の異物が整地ローター50に挟まった場合でも、整地ローター50を逆回転させることができ、整地ローター50に挟まった異物を迅速かつ確実に振り落として取り除くことができる。従って、速やかに整地ローター50を元の状態に復帰させることができて、同整地ローター50による整地作業を続行することができる。その結果、整地作業能率を向上させることができる。
【0060】
しかも、整地ローター50や回転軸39に過剰な負荷が作用するのを回避することができるため、ローター本体等の構成部材の損傷等を防止することができる。従って、この点からも整地作業能率を良好に確保することができると共に、整地装置4の寿命を確保さらには延命化することができる。
【0061】
また、整地ローター50は検出負荷に応じて整地作業位置から非整地作業位置に位置変更させることができる。例えば、所定以上の過負荷を検出した場合には、整地ローター50を、植付圃場Gを整地する整地対象面に接地させた整地作業位置から前記整地対象面から上方に離隔した非整地作業位置に位置変更させるようにしているので、過剰な負荷によって整地ローター50が損傷等されるのを防止することができる。
【0062】
すなわち、コントローラ60は、前記異物詰まりを検出すると、図3に示すように、前記昇降用アクチュエータの各回動軸駆動用モータP,Pを駆動させて回動軸43a,43aを(イ)の方向に回動させて、リンク45,45を(ロ)の方向に折りたたみ、整地体支持ロッド46,46を上方に移動させることにより、整地ローター50自体を整地対象面から離隔して上昇させるようにしている。
【0063】
このように、整地ローター50を検出負荷に応じて整地作業位置から非整地作業位置に位置変更させることができるので、作業途中での整地ローター50の修理やメンテナンス等の手間を低減させることができて、結果的には、作業能率を向上させることができる。
【0064】
[6.アクチュエータによる整地ローターの制御]
植付圃場Gから道路を隔てた別の植付圃場Gに移動する場合には、整地ローター50に付着している泥土を取除く必要が生じる。もし、泥土を落とさないで移動した場合には、道路にその泥土が落下することなく景観上好ましくなく、また道路を通行する車や人にも付着させてしまう。
【0065】
そこで、作業終了後や圃場間移動時には、圃場出口において整地ローター50を逆回転させることにより、付着泥土等を確実に振り落として取り除くことができる。その結果、道路等に付着泥土等を落とした場合の後作業の手間を解消することができて、この点からも作業能率を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態における田植機Aは、植付部2が植付圃場面から離隔して上昇すると、電動モータMにより整地ローター50を逆回転させるようにしている。
【0067】
このように、植付部2が上昇されて植付圃場G面から離隔して上昇した場合、例えば、機体を畝近傍で回行させた際には植付部2を植付圃場面から離隔して上昇させるが、この場合に電動モータMにより整地ローター50が逆回転されて、付着泥土等が振り落とされるようにしている。そのため、機体を回行させる度に整地ローター50の付着泥土等が自動的に取り除かれて、同整地ローター50の整地機能が良好に確保される。その結果、整地作業効率を向上させることができる。
【0068】
前記のように作業終了後や圃場間移動時には、圃場出口において整地ローター50の付着泥土等をできるだけ取り除いて、道路等に付着泥土等を落とさないようにする必要があるが、植付部2が植付圃場面から上方に離隔した状態となるため、整地ローター50の付着泥土等は自動的に取り除かれる。そのため、道路等に付着泥土等を落とした場合の後作業の手間を解消することができて、この点からも作業能率を向上させることができる。
【0069】
[7.植付圃場の状況に応じた整地ローターの制御]
次に、植付圃場Gの状況に応じた整地ローター50の制御方法について説明する。植付圃場Gの状況の例として、「標準」、「深水」、又は「枕地」等の3つの場合がある。
【0070】
すなわち、「標準」とは、本実施形態における田植機Aが植付作業を行う場合に特別な制御を実行せずに行える浅田を意味している。図8に示すように、この「標準」の植付圃場Gは、田面上に張られている水の深度が略1cm程度である。
【0071】
また、「深水」とは、田面上に張られている水Wの深度が大きい深田を意味している。すなわち、図9に示すように、田面上に張られている水Wの深度が略5cm程度である。このような深田では走行中での走行部1の車輪13,13,15,15のスリップ率(スリップし易さ)が高い。
【0072】
さらに、「枕地」とは、畦の近傍に位置する圃場の端部であり、圃場内で均平作業等を行う作業機を回向させる箇所である。かかる「枕地」では上記標準と比較して植付圃場Gの水量が少ない場合や植付圃場Gの中央部分と比較して植付圃場Gの状況が悪い(凹凸が多い等)場合がある。
【0073】
なお、通常の田植機Aは、図10に示すように、植付圃場Gの水の深さに応じて植付深さを一定にする圃場選択スイッチ62が運転部12のハンドル16横に設けられている。その圃場選択スイッチ62は、操作者が知り得た植付圃場Gの水Wの深さの状況に応じて設定入力するための切替式のスイッチである。すなわち、田植機Aに該植付圃場Gの状況に応じた作業が行えるように設定するためのスイッチである。そして、植付圃場Gの状況に合わせて、圃場選択スイッチ62を選択することにより、植付深さが一定になるようにしている。
【0074】
しかし、従来の田植機は、上記異なる植付圃場Gの状況であっても、常に整地ローター50の回転速度は一定であった。例えば深田の場合、整地ローター50を通常時と同じ回転速度で回転させると、その回転で水流を発生させて植え付ける苗に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0075】
そこで、本実施形態における田植機Aは、圃場選択スイッチ62の選択により、上記3つの植付圃場Gの状況に合わせて、前記整地ローター50の回転速度をアクチュエータを用いて変更できるようにした。
【0076】
すなわち、図9に示すような浅田の場合においては、前記圃場選択スイッチ62を「標準」に設定すれば、通常の回転速度で整地ローター50を回転させるようにしている。なお、整地ローター50の回転速度は田植機Aの車速の略1.5倍に設定している。そして、浅田の場合にはスリップ率は低くなるので、図11に示すグラフのように、車速に対する整地ローター50の回転速度を略1.5倍よりも大きくするようにしている。
【0077】
図10に示すような深田の場合においては、前記圃場選択スイッチ62を「深水」に設定すると、電動モータMの回転速度及び整地ローター50の回転速度を通常時に比べて落とすようにしている。深田の場合にはスリップ率が高くなるので、図11に示すグラフのように、車速に対する整地ローター50の回転速度を略1.5倍よりも小さくするようにしている。
【0078】
また、昇降用モータN(昇降用アクチュエータ)駆動させて昇降操作レバー48を自動的に操作することにより、整地ローター50全体を上昇させるようにしている。これにより、整地ローター50の回転によって生じる水による植付の悪影響を改善することができる。
【0079】
さらに、枕地の場合では、水面よりも泥の持ち上げ部分が多いので、整地能力を高める必要がある。そこで、前記圃場選択スイッチ62を「枕地」に設定すると、前記「通常」の場合に比べて、電動モータMの回転速度を高めて、整地ローター50の回転速度を高めている。このようにして、枕地の場合では、整地ローター50の回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【0080】
以上のように、電動モータMの回転速度を可変となすことにより整地ローター50の回転速度を可変となしているため、植付圃場Gの条件によって適宜回転速度を変えることにより、整地効率を良好に確保ないしは向上させることができる。
【0081】
[8.車速同調制御]
本実施形態における田植機Aは、車速に同調して整地ローター50の回転速度を変更可能としている。具体的には、図1に示すように、機体フレーム10の所定箇所に田植機Aの走行速度を検出する車速センサー61を設けている。また、コントローラ60は、車速センサー61で検出する車速の結果に基づいて、電動モータMの回転速度を変化するように制御を行う。
【0082】
前記電動モータMの回転速度を可変とすることにより、整地ローター50の回転速度を可変とすることができる。例えば、前記のようなスリップ率の高い深田の場合には、車速が遅くなるので、整地ローター50の回転速度も落とすように制御を行う。このようにして、車速に応じて整地ローター50の回転速度を変更可能としている。
【0083】
[8.植付圃場の硬度検出]
さらに、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの土質に応じて整地ローター50の制御を行うことができる。ここで、植付圃場Gの土質は、水と土との比重の差により、硬質の植付圃場Gまたは軟質の植付圃場Gがある。
【0084】
植付圃場Gの硬度は、例えば、特開2002−125423号公報に記載のような、フロート29に設けられた硬度検出器63により行うことができる。すなわち、図12に示すように、センター側のフロート29の上部にポテンショメータ式の硬度検出器63を配設し、また、その基端側を前記硬度検出器63に取り付け、その先端側をフロート29の下方に位置するようにしたセンサーアーム65を配設している。このセンサーアーム65は、中途部において先端部が上方に向かって折り曲げられている。
【0085】
そして、前記センサーアーム65の沈み込み量により、前記硬度検出器63で硬度の違いを検出するようにしている。すなわち、センサーアーム65の沈み込み量が大きい場合には、軟質の植付圃場Gであることを検出する。逆に、センサーアーム65の沈み込み量が小さい場合には、硬質の植付圃場Gであることを検出するようにしている。
【0086】
そして、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの硬度に応じてコントローラ60が整地ローター50の回転速度を制御できるようにしている。以下、植付圃場Gの状況に応じた整地ローター50の制御方法について説明する。
【0087】
まず、植付圃場Gの面の硬度が大きい(硬質の)場合について説明する。植付圃場Gの面の硬度が大きいと、フロート29から下方に伸延するセンサーアーム65の沈み込みの量が小さくなる。この沈み込み量が小さいことによって、コントローラ60は植付圃場Gの硬度が大きいことを検出する。そして、コントローラ60は、硬度が高いことを検出することにより、電動モータMの回転速度を軟度の植付圃場Gの場合に比べて回転速度を増大させるようにしている。
【0088】
そして、図13に示すように、電動モータMの回転速度を増大させることにより、整地ローター50の回転速度が増大させることになる。このようにして、硬度の植付圃場Gの場合、整地ローター50の回転速度を増大させることにより、整地能力を増大させるようにしている。
【0089】
また、本実施形態における田植機Aは、植付圃場Gの面の硬度を検出することにより、同硬度の大きさに逆比例させて整地ローター50を植付圃場Gの整地対象面に大きく又は小さく進入させることもできる。すなわち、植付圃場Gの面の硬度が大きい(硬質の)場合には整地ローター50を昇降用アクチュエータにより下降させて植付圃場Gの整地対象面に大きく(深く)進入させることにより、整地性能を増大させる。場合によっては整地ローター50の回転速度も増大させることができる。
【0090】
これに対して、植付圃場Gの面の硬度が小さい(軟質の)場合には、昇降用アクチュエータにより整地ローター50を上昇させて植付圃場G面に小さく(浅く)接地させることにより、整地性能を減少させる。場合によっては、図13に示すように、整地ローター50の回転速度も減少させることができる。このように、植付圃場Gの整地対象面の硬度の大きさに比例させて整地ローター50を植付圃場Gの整地対象面に大きく又は小さく接地させることにより、整地作業効率を向上させることができる。
【0091】
また、植付圃場Gの土質の硬度は、電動モータMにかかる負荷により検出することができる。すなわち、土質が硬い植付圃場Gにおいては、整地ローター50が泥水や泥土から受ける抵抗が大きい。この際、アクチュエータの検出負荷は大きくなる。その場合には、前記昇降用モータNを駆動させて整地ローター50を上昇させて浅い水深位置において回転(整地作動)させことにより、整地ローター50による泥押し、植付圃場Gの面の荒れを回避することができる。
【0092】
これに対して、土質が軟らかい植付圃場Gのように、アクチュエータの検出負荷が小さい場合には、上記とは反対に、整地ローター50を深位置まで下降位置させることにより、整地効率を良好に確保することができる。
【0093】
[9.仕様変更]
さらに、本実施形態における田植機Aの整地装置4は、前記走行部1の走行速度に比例して整地ローター50の回転速度を変化させる標準仕様と、整地ローター50を前記非整地作業位置に配置する不使用仕様と、前記標準仕様よりも整地ローター50の回転速度を多くする特別仕様のいずれかを選択可能としている。
【0094】
前記仕様の選択は、運転部12の操作パネルに設けた仕様変更スイッチにより行うことができる。このように、植付圃場Gの条件によって、標準仕様と不使用仕様と特別仕様を適宜選択することにより、効率の良い整地作業を行うことができる。
【0095】
例えば、植付圃場Gの水深が浅くも深くもない通常の場合には、標準仕様を採用することができる。通常の場合には、車速センサー61で検出する車速に基づいて、整地ローター50の回転速度を制御しながら整地作業を行うようにしている。
【0096】
また、植付圃場Gの水深が深い深水の場合は不使用仕様を採用して、整地ローター50を整地対象面から上方に離隔した非作業位置に配置するようにする。これにより、整地ローター50が水を介して既に植え付けた苗に作用して植付姿勢に悪影響を与えるのを回避することができる。
【0097】
さらに、機体を回行させる畝近傍の枕地では特別仕様を採用して、整地性能を増大させることができる。枕地の場合では、水面よりも泥の持ち上げ部分が多いので、整地能力を高める必要がある。そこで、前記圃場選択スイッチ62を「枕地」に設定すると、前記通常仕様の場合に比べて、電動モータMの回転速度を高めて、整地ローター50の回転速度を多くして、整地性能を増大させるように設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の実施の形態における田植機の全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態における田植機の整地装置周辺の主要な構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態における田植機の整地装置の構成を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態における田植機の整地装置を昇降させる昇降機構の構成を示す平面図である。
【図7】この発明の実施の形態における田植機の整地ローターに異物が挟まった状態を示す側面図である。
【図8】この発明の実施の形態における田植機の浅田の整地ローターの状態を示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態における田植機の深田での整地ローターの状態を示す側面図である。
【図10】この発明の実施の形態における田植機の操作パネルの構成を示す平面図である。
【図11】この発明の実施の形態における田植機の整地ローターの植付圃場の深さとスリップ率またはローターの回転速度の関係を示すグラフである。
【図12】この発明の実施の形態における田植機の硬度センサーの構成を示す側面図である。
【図13】この発明の実施の形態における田植機の異なる植付圃場での整地ローターの状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0099】
A 田植機
M 電動モータ
G 植付圃場
1 走行部
2 植付部
11 整地装置
12 整地ローター
13 回転軸
14 機体フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、
整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、
上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしたことを特徴とする請求項1記載の田植機。
【請求項3】
整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の田植機。
【請求項4】
整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の田植機。
【請求項1】
走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、同植付部の前方に整地装置を取り付けた田植機において、
整地装置は、左右方向に伸延する回転軸と、同回転軸の外周に同心的に取り付けた整地ローターとを具備し、
上記回転軸に駆動用のアクチュエータを連動連設して、同アクチュエータにより回転軸を介して整地ローターの回転速度を可変となしたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
整地ローターの回転速度は前記走行部の走行速度に応じて変更するようにしたことを特徴とする請求項1記載の田植機。
【請求項3】
整地ローターの回転速度は植付圃場の水深に応じて変更するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の田植機。
【請求項4】
整地作業時のアクチュエータの負荷を検出可能として、同検出負荷に応じて整地ローターの回転速度を変更するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−136699(P2010−136699A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317606(P2008−317606)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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