説明

男性用尿取り体

【課題】男性陰部の周囲に密着するとともに、強度にも優れた男性用尿取り体を提供する。
【解決手段】1枚あたり50〜200g/m2の不織布シートを1枚又は2枚以上重ねて熱成型してなるカップ状の外装体2と、液透過性のトップシート6と、外装体とトップシートの間に配置される吸収層4とを備えた男性用尿取り体20であって、外装体の長手方向中央Ceがその隣接部Adより狭幅になっていて、かつ該外装体の側縁に着用者の肌と接触する平坦部2sが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肌着内に装着され、男性陰部を収容する男性用尿取り体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的な生理用ナプキンとして、シート状の細長い吸収体の側部に弾性体を設け、この弾性体によってナプキンを弓状に湾曲させて着用者との密着性を向上させるものが開示されている(特許文献1参照)。又、男性用の尿取り体や失禁ガードとして、一方に膨出するカップ状をなし、男性の肌着内に装着して着用者の陰部を当該カップ内に収容し、カップ内に配置された吸収体により尿を吸収するものが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平05-71262号公報
【特許文献2】特表平07-504103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生理用ナプキンを男性用尿取り体として用いたものは、ブリーフに装着することを前提として設計されている。しかしながら、最近では男性用肌着として、ブリーフの他にトランクスやボクサータイプ等が普及しており、これらの肌着へ生理用ナプキン状の尿取り体を装着することは難しい。また、これらの生理用ナプキンは、男性陰部に最適にフィットするとはいい難く、さらに、これらパッドを肌着に密着させる必要があるのでムレ易いという問題もある。
一方、特許文献2記載の技術のように男性陰部を覆うカップを備えた場合、トランクス等の肌着への装着は容易となるものの、カップが柔軟なポリエチレンフォームからなるため、着用時の着用者の動きによりケースが破断したり、肌とカップの間に隙間が生じて尿漏れが生じることがある。
従って本発明は、男性陰部の周囲に密着するとともに、強度にも優れた男性用尿取り体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の男性用尿取り体は、1枚あたり50〜200g/m2の不織布シートを1枚又は2枚以上重ねて熱成型してなるカップ状の外装体と、液透過性のトップシートと、前記外装体と前記トップシートの間に配置される吸収層とを備えた男性用尿取り体であって、前記外装体の長手方向中央がその隣接部より狭幅になっていて、かつ該外装体の側縁に着用者の肌と接触する平坦部が設けられている。
不織布シートの1枚あたりの目付けを50〜200g/m2とすると、外装体に良好な弾力性と復元性を付与することができ、外装体を男性陰部の周囲に密着させ易いと共に、復元性(強度)にも優れる。
【0006】
前記外装体は複数枚の不織布シートを重ねて形成され、少なくともそのうち2枚の不織布シートの間に液不透過性フィルムが介装されていてもよい。
液不透過性フィルムが外装体の全面に形成された場合、外装体自身を液体不透過性とすることができる。
【0007】
前記外装体と前記吸収層との間に液不透過性のバックシートが介装されていてもよい。
このようにすると、吸収層からの尿が外装体に滲み出すことがない。
【0008】
前記液不透過性フィルム、又は前記バックシートは、前記外装体の一部を覆っていてもよい。
このようにすると、外装体のうち液不透過性フィルム又はバックシートの存在しない部位は、通気性が高く、ムレにくい構造とすることができる。
【0009】
前記不織布シートはスパンボンド法により形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、男性陰部の周囲に密着するとともに、強度にも優れた男性用尿取り体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る男性用尿取り体の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】男性用尿取り体の側面図である。
【図4】男性用尿取り体の上面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る男性用尿取り体の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る男性用尿取り体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る男性用尿取り体について説明する。本発明の第1の実施形態に係る男性用尿取り体は、肌着(下着)内に装着され、男性陰部を収容して尿や分泌物を吸収するものである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る男性用尿取り体の外観を示す斜視図である。図1において、男性用尿取り体20は、カップ状の外装体2と、外装体2の凹部側(内面)に積層された液透過性のトップシート6と、外装体2とトップシート6の間に配置される吸収層4と、外装体2の凸部側(外面)の中央に貼付された接着体(両面テープ)8とを備えている。外装体2は、不織布シートを1枚又は2枚以上重ねて熱成型してなる。又、外装体2の側縁には、着用者の肌と接触する平坦部2sが設けられている
ここで、図1の右方向Fに着用者の腹が位置し、左方向に着用者の股が位置し、かつ外装体2の凹部に男性陰部を収容しつつ、男性用尿取り体20が装着される。この際、接着体8を肌着の内側に接着し、男性用尿取り体20を肌着内に固定する。
【0013】
外装体2に用いる不織布シートの1枚あたりの目付けを50〜200g/m2とする。このようにすると、不織布シートを熱成型した際に外装体2に良好な弾力性と復元性を付与することができ、外装体2を男性陰部の周囲に密着させ易いと共に、復元性(強度)にも優れる。不織布シートの1枚あたりの目付けが50g/m2未満であると外装体2の復元性が低下し、1枚あたりの目付けが200g/m2を超えると外装体2の弾力性が低下する。なお、所定枚数の不織布シートを積層した後、モールド内にこの積層シートを導入し、熱成型することで、カップ状に加工することができる。
不織布シートがスパンボンド法により形成されたものであると、引裂き強度や表面強度の点から好ましい。スパンボンド法により形成された不織布シートとしては、撥水性と良好な風合いとが得られるポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリエステル製の不織布シートが挙げられる。
外装体2を複数枚の不織布シートを重ねて形成し、少なくともそのうち2枚の不織布シートの間に液不透過性フィルムを介装していてもよい。液不透過性フィルムが外装体2の全面に形成された場合、外装体2自身を液体不透過性とすることができ、必要に応じてバックシートを不要とすることができる。
【0014】
トップシート6は、液透過性の不織布であればよく、着用者の皮膚に接するため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない材料から形成されていることが好ましい。
吸収層4は、木材パルプフラッフのような、フラッフのウェブの親水性繊維マトリックスを、公知の高吸水性樹脂(SAP)の粒子と混合して形成すればよい。又、吸収層4表面にエンボスを施すと、尿等の拡散をコントロールすると共に、着用者の体型に応じて吸収層4が容易に変形するので好ましい。また、SAPをシート状としたいわゆるSAPシートを使用してもよい。
フラッフとしては、木材パルプフラッフの代わりに合成繊維、ポリマー繊維などを使用してもよい。又、木材パルプフラッフとしては、嵩が低く、解繊装置の所要動力(パルプをフラッフ化する際の解繊機の消費電力)が抑えられるトリートメントパルプを用いることもできる。
吸収層4を薄くするためには、SAPの配合比を高くすることが一般的であるが、尿吸収の初期段階ではフラッフの役割が大きく、SAPが多過ぎてフラッフが少ないと初期吸収性が劣る。このため、吸収層4中のSAPの含有割合を50質量%未満とすることが好ましい。
【0015】
又、後述するバックシート9は、吸収層4内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよく、ポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができるが、着用中にカサカサした音がしやすく、柔らかさを付与するよう、バックシート9にマイクロエンボスを施したり、プラスチックフィルムの外側に不織布を貼合わせたクロスライクバックシートを用いることもできる。
又、透湿性のフィルムを用いてムレを低減することが好ましい。
液不透過性フィルム、及び後述するサイドシート10は、バックシート9と同様の材料から形成することができ、撥水性の不織布から形成してもよい。
【0016】
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。外装体2は略半円状に湾曲し、吸収層4は外装体2の凹部のほぼ底面に配置されている。又、この実施形態では、トップシート6と、液不透過性のバックシート9との間に吸収層4が介装され、バックシート9が外装体2の凹部側に固定されている。
【0017】
図3は、図1のG方向から見た、男性用尿取り体20の側面図である。図3の左右方向が図1の左右方向に一致し、この方向を男性用尿取り体20の長手方向とする。外装体2の側縁が長手方向両端から中央に向かってなだらかに凹み、外装体2の側縁の両端を結ぶ線Lに対し、外装体2の側縁の中央部はΔHだけ低くなっている。
このようにすると、外装体2の側縁の輪郭が、男性の陰部の周囲の輪郭に近くなり、男性用尿取り体20が男性陰部の周囲に密着し易くなる。
【0018】
図4は、男性用尿取り体20の上面図である。図4の左右方向が図1の左右方向に一致している。外装体2は長手方向にやや細長い楕円状の輪郭をなし、外装体2の長手方向中央Ceの外縁は、その両隣接部Adの外縁を結ぶ線Lに対してΔWだけ内側に凹んでいる。つまり、外装体2の長手方向中央Ceがその両隣接部Adより狭幅になっている。
又、この実施形態では、図2で説明したように、吸収層4は外装体2の凹部のほぼ底面に長手方向に沿って配置され、トップシート6及びバックシート9は吸収層4よりやや外側に、外装体2の凹部の底面から外装体2の凹部の側壁まで広がって形成されている。但し、トップシート6及びバックシート9は外装体2の全面に形成されておらず、外装体2の側壁上部及び外装体2の底面の長手方向端部は、バックシート9が形成されずに外装体2のみからなる。
このような構成とすると、外装体2のうちバックシート9の存在しない部位は、通気性が高く、ムレにくい構造とすることができる。
外装体2を複数枚の不織布シートを重ねて形成し、そのうち2枚の不織布シートの間に液不透過性フィルムを介装させた場合においても、液不透過性フィルムを外装体2の全面に形成させないことで、同様に外装体2の通気性を向上させることができる。
なお、この実施形態では、外装体2の長手方向端部のうち、着用者の股に対向する端部Eの外縁はやや尖っていて、端部Eの側縁における平坦部が、着用者の会陰部近傍に密着し易くなっている。一方、外装体2の長手方向端部のうち、着用者の腹に対向する端部の外縁は半円状に丸みを帯びていて、着用者の動きを円滑にし、着用者の腹に外装体2の端部が食い込んだり擦れることを防止する。
【0019】
図5は、トップシート6の幅方向両側縁から、撥水性の不織布からなるサイドシート10を立ち上がらせた第2の実施形態を示す、図1のII−II線に沿う断面図である。サイドシート10の上端縁には適宜弾性体が配設されており、サイドシート10がトップシート6から立ち上がった状態の形状を保持している。そして、着用者が男性用尿取り体20を装着した際、サイドシート10は着用者の陰部の側部を覆って尿等の横漏れを防止する。
【0020】
図6は、第3の実施形態に係る男性用尿取り体21の上面図である。第3の実施形態に係る男性用尿取り体21は、上面から見たときに外装体2xの外縁の形状が異なること以外は、第1の実施形態に係る男性用尿取り体と同一である。
又、図6の左右方向が図1の左右方向に一致している。第3の実施形態において、外装体2xは長手方向にやや細長い楕円状の輪郭をなしているが、外装体2の長手方向中央Cexの外縁は、その両隣接部Adxの外縁を結ぶ線L1、L2とほぼ一直線上に並び、中央Cexの凹みが少ない。又、外装体2xの外縁は、着用者の股に対向する端部Exに向かって漸次幅狭に尖っていて、端部Eの外縁は丸みを帯びている。
なお、この実施形態においても、端部Exの側縁に平坦部が設けられ、着用者の会陰部近傍に密着し易くなっている。一方、外装体2の長手方向端部のうち、着用者の腹に対向する端部の外縁は半円状に丸みを帯びていて、着用者の動きを円滑にし、着用者の腹に外装体2の端部が食い込んだり擦れることを防止する。
【0021】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
【0023】
1枚あたりの目付けが80g/m2であり、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布シート2枚を用意し、これらのシート間に25μmのポリエチレンフィルムを積層したものを熱成型し、図1〜図4に示すカップ状の外装体2を成型した。この外装体2の凹部(内面)に、目付けが25g/m2のポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維からなるエアースルータイプのトップシート6及び目付けが20g/m2のポリエチレン製通気性バックシート9で吸収層4を挟んだ構造体を、バックシート9が外装体2の凹部側になるようにして外装体2に接着した。さらに、外装体2の凸部(外面)中央に両面テープ8を貼付し、図1〜図4に示す男性用尿取り体20を作製した。
この男性用尿取り体20を複数人の男性モニターに装着し、装着感を評価したところ、男性陰部の周囲への密着性が高く、強度にも優れ、陰部のムレも少ないことが判明した。
【符号の説明】
【0024】
2、2x 外装体
2s (外装体の側縁の)平坦部
4 吸収層
6 トップシート
8 接着体
9 バックシート
10 サイドシート
20、21 男性用尿取り体
Ce、Cex 外装体の長手方向中央
Ad、Adx (外装体の長手方向中央の)隣接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚あたり50〜200g/m2の不織布シートを1枚又は2枚以上重ねて熱成型してなるカップ状の外装体と、液透過性のトップシートと、前記外装体と前記トップシートの間に配置される吸収層とを備えた男性用尿取り体であって、
前記外装体の長手方向中央がその隣接部より狭幅になっていて、かつ該外装体の側縁に着用者の肌と接触する平坦部が設けられている男性用尿取り体。
【請求項2】
前記外装体は複数枚の不織布シートを重ねて形成され、少なくともそのうち2枚の不織布シートの間に液不透過性フィルムが介装されている請求項1記載の男性用尿取り体。
【請求項3】
前記外装体と前記吸収層との間に液不透過性のバックシートが介装されている請求項1又は2記載の男性用尿取り体。
【請求項4】
前記液不透過性フィルム、又は前記バックシートは、前記外装体の一部を覆っている請求項2又は3記載の男性用尿取り体。
【請求項5】
前記不織布シートはスパンボンド法により形成されたものである請求項1〜4のいずれか記載の男性用尿取り体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62225(P2011−62225A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212671(P2009−212671)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】