説明

画像処理システム

【課題】画像処理システムにおいて、デコーダが外部同期から内部同期へ動作モードを変更することによる画像の乱れを防止する。
【解決手段】信号処理装置には、電源オフを検知する電源オフ検知手段を備えて、この電源オフ検知手段により電源オフ(R(リバース)信号)が検知された時には、カメラからの映像信号がデコーダに入力されなくなる前に、エンコーダからの映像信号出力を停止する制御手段を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理システムに係り、特に電源オフ時の画像乱れを防止する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、駐車時の運転を支援するために、画像処理システムを搭載しているものがある。この画像処理システムは、駐車後退動作時に、車両後部に取り付けた撮像手段(バックカメラ)により撮像された映像を処理して、運転者の運転操作を支援するものである。
このような画像処理システムにおいては、電源の投入や、チャンネルの変更に伴い、画像乱れを防止する処理が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−55584号公報
【特許文献2】特開2003−333446号公報
【0004】
特許文献1に係る信号処理装置は、電源投入時に出力のデジタル値が定まらないことによる画面乱れをなくす手法であって、電源投入直後から画像乱れの生じるシステム初期化等の一定期間は、外部入力ではなく、内部の画像信号発生手段により発生させた画像信号を選択することにより画像の乱れをなくするものである。
特許文献2に係る放送受信装置および方法は、チャンネル切り換え時の画面の乱れを防止するものであって、チャンネル切り換え後の映像が安定するまで、チャンネル切り換え前の映像を静止画として表示し、放送により受信する映像が受信状態が変化することにより、過渡的に変化することを抑制するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、車両に搭載されたバックカメラでは、通常のシフト操作によりリバース(Rレンジ)を選択した際、表示手段として、例えば、カーナビゲーションシステムのモニタの画面にカメラの映像を映すものであるが、電源投入(Rレンジの選択)時には、カメラへの電源投入とカーナビゲーションシステムの表示画面切り換えが同時期に行われる。
通常、カーナビゲーションシステムの画面の切り換えの方がカメラの電源投入から映像が安定するまでの時間に比べて長いため、カメラの電源投入時の過渡的な画面の乱れは、カーナビゲーションシステムの画面には現れない。
また、上記と同様に、カーナビゲーションシステムのメーカーにより、電源投入時に入力映像信号の安定(同期補足等)を確認することにより、画面の乱れを生じさせない対策をとることが可能である。
更に、電源オフ時(RレンジからDレンジ等への切り換え)には、バックカメラの電源断とカーナビゲーションシステムの画面切り換えが行われる。この際、カーナビゲーションシステムの画面切り換えがバックカメラの電源断(信号出力停止)より以前に行われれば、画面に乱れは生じない。
一般には、モニタを一番初めに切り換えることができれば良いと考えられる。しかし、カーナビゲーションシステムに接続されるカメラは、さまざまなメーカー、機種が存在するため対応は、困難である。
つまり、電源投入時に、カーナビゲーションシステムにバックカメラの映像を表示する際には、入力される映像信号の安定を確認して表示することで画面の乱れを回避できるが、電源断時は、映像信号が途切れることによる画面の乱れを回避することは困難であった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、カメラに接続された信号処理装置からの映像出力信号をモニタの画面に表示する際、電源断等の過渡域での画面の乱れを防止、つまり、信号処理装置からの映像信号出力を電源断時に乱れないようにする画像処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、カメラを設け、このカメラから出力された映像信号を入力するデコーダとこのデコーダで処理した映像信号を出力するエンコーダとを備えた信号処理装置を設け、前記エンコーダから出力される映像信号を映像として表示するモニタを設けた画像処理システムにおいて、電源オフを検知する電源オフ検知手段を備えて、この電源オフ検知手段により電源オフが検知された時には、前記カメラからの映像信号が前記デコーダに入力されなくなる前に、前記エンコーダからの映像信号出力を停止する制御手段を前記信号処理装置に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の画像処理システムは、カメラに接続された信号処理装置からの映像出力信号をモニタの画面に表示する際、電源断等の過渡域での画面の乱れを防止、つまり、信号処理装置からの映像信号出力を電源断時に乱れないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は画像処理のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2はエンコーダからの映像信号出力を停止する制御ブロック図である。(実施例)
【図3】図3はエンコーダへの入力データを黒レベルとすることで画面表示を停止する制御ブロック図である。(実施例)
【図4】図4は画像処理システムの構成図である。(実施例)
【図5】図5は横帯状の映像乱れを示す図である。(実施例)
【図6】図6はエンコーダの出力を停止した状態(リセット状態)を示す図である。(実施例)
【図7】図7は第1のR信号のチャタリングに対する反応を示す図である。(実施例)
【図8】図8は図7のチャタリング部の拡大図である。(実施例)
【図9】図9は第2のR信号のチャタリングに対する反応を示す図である。(実施例)
【図10】図10はR信号に対して10msecのパルス幅弁別器を用いた図である。(実施例)
【図11】図11はR信号に対して20msecのパルス幅弁別器を用いた図である。(実施例)
【図12】図12は垂直同期信号に同期させた状態を示す図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、カメラに接続された信号処理装置からの映像出力信号をモニタの画面に表示する際、電源断等の過渡域での画面の乱れを防止、つまり、信号処理装置からの映像信号出力を電源断時に乱れないようにする目的を、電源オフが検知された時には、カメラからの映像信号がデコーダに入力されなくなる前に、エンコーダからの映像信号出力を停止して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図12は、この発明の実施例を示すものである。
図4において、1は車両に搭載される画像処理システムである。
この画像処理システム1には、カメラ(バックカメラ等)2を設け、このカメラ2から出力される映像信号が入力されるデコーダ3とこのデコーダ3で処理した映像信号を出力するエンコーダ4とを備えた信号処理装置5を設け、エンコーダ4から出力される映像信号を映像として表示するモニタ6を設けている。このモニタ6は、ナビゲーションシステムの表示手段等からなる。そして、この画像処理システム1では、カメラ2の映像信号を画像処理してその映像をモニタ6に表示する。
信号処理装置5には、電源オフを検知する電源オフ検知手段7を備えて、この電源オフ検知手段7により電源オフ(R(リバース)信号)が検知された時には、カメラ2からの映像信号がデコーダ3に入力されなくなる前に、エンコーダ4からの映像信号出力を停止する制御手段8を設ける。また、この制御手段8は、CPU(中央演算処理装置)9、メモリ(記憶装置)10を備える。
前記電源オフ検知手段7は、電源オフ信号のパルス幅を弁別して予め設定されたパルス幅よりも短い場合に、電源オフとしない。
また、前記制御手段8は、垂直同期信号の立下りに同期してエンコーダ4からの映像出力を停止する。
【0012】
このため、図2に示すように、エンコーダ4からの映像信号出力を停止する場合に、制御手段8は、前記電源オフ検知手段7として、R信号受信部11と垂直同期信号受信部12とパルス幅弁別器13と立下り検出回路14とを備えるとともに、エンコーダ制御信号生成回路15を備える。
また、図3に示すように、エンコーダ4への入力データを黒レベルとすることで画面表示を停止する場合には、制御手段8は、前記電源オフ検知手段7として、R信号受信部11と垂直同期信号受信部12とパルス幅弁別器13と立下り検出回路14とを備えるとともに、エンコーダ制御信号生成回路15を備え、さらに、このデータセレクト回路16と輝度・カラーデータ部17と黒レベルデータ部18とを備える。
【0013】
以下に、この発明の実施例に至るまでについて、その背景から説明する。
一般に、画像処理システム1は、電源オフ時に、カメラ2の電源断、システム自体の電源断、カーナビゲーションシステムの画面切り替えが略同時に起こるが、それぞれに若干の時間差があり、この時間差によって画面の乱れが生じるものである。
デコーダ3は、通常、カメラ2の同期信号に同期して動作する(電源投入時に同期を捕捉)。そして、カメラ2からの映像信号が途絶えると、カメラ2に同期できなくなるため、デコーダ3の内部同期モードで動作する。ここで、カメラ2に同期していた時とデコーダ3の内部同期とでは、動作タイミングが異なるため、その切り換え時に画像乱れが生じる。
具体的には、図5に示すように、例えば、R信号のオフ時に画面の上下幅1/4〜1/3程度の横帯状の映像乱れが発生する。この場合、映像信号の特徴としては、垂直同期信号の間が1フィールドであり、隣接するフィールドでは波形が大きく変化しない(1/60秒での映像変化は小さい)。波形確認にあっては、R信号のオフ後も、40msec間映像信号を出力し続け、そして、R信号オフ後30msec以降の映像信号の乱れが、映像乱れの原因となっている。
これは、電源断後も、電源部のコンデンサに蓄積された電荷により信号処理装置5が短時間稼動し続けることに起因する。同様に、カメラ2も、電源断時に直ちに映像出力を停止するわけではない。
また、上記と同様に、カーナビゲーションシステム側の映像信号入力部には、ビデオデコーダが存在し、外部同期(信号処理装置、カメラ等からの信号に同期)から内部同期モードに切り替わる際の画像乱れが生じるものである。
【0014】
そこで、第1に、電源断を検知後、直ちに(カメラ2からの映像信号が途絶えるよりもはやく)、信号処理装置5のエンコーダ4の出力を停止(リセット状態保持、又は黒レベル出力)することで、映像の乱れを回避する。
具体的には、図6に示すように、R信号のオフ時に、映像信号が乱れる前に、映像信号の出力が停止される。
しかし、車載システムにおいて、R信号の電源を用いて電源断又は映像出力停止を行う場合、R信号のノイズ、チャタリングにより映像信号が乱れる可能性がある。R信号にはチャタリング等のノイズが含まれるため対策が必要である。
例えば、図7に示すように、第1のR信号のチャタリングに対する反応として、模擬的に作成したチャタリングをR信号に付加して計測した結果、チャタリングには反応していないことが明確である。図8には、そのチャタリング部の拡大を示し、50μsec程度のチャタリングには、反応していない。一方で、図9に示すように、第2のR信号のチャタリングに対する反応として、ミリ秒オーダーのチャタリングには反応している。
【0015】
このため、第2に、R信号受信部11にパルス幅弁別器13を接続し、R信号が設定時間(閾値)経過後に、信号を受信する。
例えば、図10に示すように、R信号に対して10msecのパルス幅弁別器13を用いた場合には、10msec以下ではチャタリングには反応しない。これは、図5の状態から20msec程度まで延長可能と考えられる。また、図11に示すように、R信号に対して20msecのパルス幅弁別器13を用いた場合には、映像信号の途中で信号出力が止まるが、垂直同期信号部分での映像信号を停止すれば、画面の乱れを垂直基線期間に固定可能となる。
そして、以上のような対策をとっても、エンコーダ4の出力を停止するタイミングが不定のため、エンコーダ4の出力停止時の画面乱れを回避することはできない。
【0016】
そこで、第3に、電源オフ時の画面ちらつき位置の固定のため、パルス幅弁別器13を通過し、最初の垂直同期信号の立下りで、エンコーダ4からの映像出力を停止する。
これにより、カーナビゲーションシステムヘ送る映像信号オフのタイミングを映像信号の垂直基線期間に固定し、画面上に現れないようにする。
例えば、図12に示すように、信号処理装置5の電源断からエンコーダ4の信号出力停止まで25msec(1フイールド)のシステムの場合には、垂直同期信号の周期が15msecなので、パルス幅弁別器13を5msecとすれば、パルス幅弁別器を通過した電源断信号(R信号)を受信してから最大20msec(5msec+15msec)でエンコーダ4の出力を停止することができる。これは、R信号のオフ後の20msecは、映像信号の出力が安定しているとし、また、パルス幅弁別器13は5msec以上としている場合である。
そして、このように垂直同期信号と同期して映像信号を停止することで、映像が乱れるポイントを垂直基線期間に固定することができる。
このため、信号処理装置5、特にエンコーダ4の電源は、電源断後、パルス幅弁別器13の閾値と垂直同期信号の周期を足した時間よりも長く保持されるよう設定する必要がある。
【0017】
次に、エンコーダ4からの映像出力を停止する場合の制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、プロクラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、R信号がオンからオフに変化したか否かを判断し(ステップA02)、このステップA02がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA02がYESの場合には、R信号のオフ時間を閾値以上になったか否かを判断し(ステップA03)、このステップA03がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA03がYESの場合には、エンコーダ4からの映像出力を停止する準備を行い(ステップA04)、そして、垂直同期信号の立下りエッジを検出したか否かを判断し(ステップA05)、このステップA05がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA05がYESの場合には、エンコーダ4からの映像出力を停止し(リセット状態保持等を実行)(ステップA06)、プログラムをエンドとする(ステップA07)。
【0018】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に記載の発明において、信号処理装置5は、電源オフを検知する電源オフ検知手段7を備えて、この電源オフ検知手段7により電源オフ(R(リバース)信号)が検知された時には、カメラ2からの映像信号がデコーダ3に入力されなくなる前に、エンコーダ4からの映像信号出力を停止する制御手段8を備える。
これにより、デコーダ3が外部同期から内部同期へ動作モードを変更することによる画像の乱れを防止することができる。
請求項2に記載の発明において、電源オフ検知手段7は、電源オフ信号のパルス幅を弁別して予め設定されたパルス幅よりも短い場合に、電源オフとしない。
これにより、電源オフ信号のチャタリングやノイズの影響を受けにくくすることができる。
請求項3に記載の発明において、制御手段8は、垂直同期信号の立下りに同期してエンコーダ4からの映像出力を停止する。
これにより、モニタ6ヘ出力する映像信号停止のタイミングを、垂直基線期間に固定するため、両面の乱れがモニタ6の画面に現れないようにすることができる。
【0019】
なお、この発明では、エンコーダの後段にはアンプが設置される場合が多く、この場合、映像信号の停止は、エンコーダをリセット状態にしなくても、アンプをディセーブル状態としても良い。
また、別途にスイッチを準備し、スイッチの切り換えにより映像信号と黒レベル信号とを切り換えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明の画像処理システムは、各種車両に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 画像処理システム
2 カメラ
3 デコーダ
4 エンコーダ
5 信号処理装置
6 モニタ
7 電源オフ検知手段
8 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを設け、このカメラから出力された映像信号を入力するデコーダとこのデコーダで処理した映像信号を出力するエンコーダとを備えた信号処理装置を設け、前記エンコーダから出力される映像信号を映像として表示するモニタを設けた画像処理システムにおいて、電源オフを検知する電源オフ検知手段を備えて、この電源オフ検知手段により電源オフが検知された時には、前記カメラからの映像信号が前記デコーダに入力されなくなる前に、前記エンコーダからの映像信号出力を停止する制御手段を前記信号処理装置に設けたことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記電源オフ検知手段は、電源オフ信号のパルス幅を弁別して予め設定されたパルス幅よりも短い場合に、電源オフとしないことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記信号処理装置の前記制御手段は、垂直同期信号の立下りに同期して前記エンコーダからの映像出力を停止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−217085(P2012−217085A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81905(P2011−81905)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】