説明

画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法

【課題】光通信装置の周囲に複数の人物が居る場合に、該光通信装置と所定の通信先装置と各人物の位置関係に基づいて、該光通信装置の所持者候補を選択する。
【解決手段】本願の画像処理装置は、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理装置であって、前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出部と、前記検出部において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像に基づいて光通信装置の所持者を特定する画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法に関し、より具体的には、光通信中の前記光通信装置の周囲に複数の人物が居る場合に、該光通信装置と各人物を上方から撮像装置で撮影し、撮影された画像を解析して、所定の位置に設置した通信先装置等の基準位置に対する、該光通信装置と各人物の位置関係に基づいて、該光通信装置の所持者候補を選択できる画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の発光パターン(可視光だけでなく不可視光による発光パターンも含む)によって情報伝達を実現する光通信の技術が知られている。このような光通信は、光ファイバー等の伝送媒体を必要としないため、様々な場所で簡便に利用することができる。
【0003】
光通信を受信する受信デバイスとしては、光の点滅のみを検出可能な受光センサー以外に、画像を撮影可能な撮像装置を用いることができる。撮像装置を光通信の受信デバイスとして用いた場合、光通信で情報を送信する送信者の顔や姿を撮像装置で撮影しながら、光通信で送信される情報を復号することができる。
【0004】
このように送信者の顔等を撮影しながら光通信を実行する技術の応用として、光通信に用いられる光の発光位置の近傍に送信者に関する情報を表示する技術が提案されている。この提案では、正面から撮影された映像を解析し、発光位置の近傍に映っている人物を送信者であると特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−199569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術を応用することで、光通信の送信者の属性に応じた広告情報等の提供を行うことが考えられる。その場合、映像を解析することで送信者を特定し、更に当該送信者の属性を特定する必要がある。
【0007】
しかし、上述の従来技術では正面からの映像からの判断を行っているために、画像中に複数の人物が写っている場合、それら人物の位置関係によっては、画像中の誰が送信者であるかを正しく識別することが難しい場合があった。例えば、撮像装置から見て複数の人物が前後に重なって位置している場合には、発光位置に最も近い人物が必ずしも送信者ではない場合があったが、これを把握することは困難であった。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、光通信中の光通信装置の周囲に複数の人物が居る場合に、該光通信装置と所定の基準位置と各人物の位置関係に基づいて、該装置の所持者を特定することができる画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する画像処理装置は、一つの態様において、個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理装置であって、前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出部と、前記検出部において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法の一つの態様によれば、光通信装置の周囲に複数の人物が居る場合に、該光通信装置と通信先装置の位置と各人物の位置関係に基づいて、該光通信装置の所持者候補を選択できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施例に係る広告管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施例に係る広告管理システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】図3は、携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、光通信によって送信される信号の発光パターンの一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施例に係る広告管理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、広告表示スケジュールの一例を示す図である。
【図7】図7は、配信情報選択条件の一例を示す図である。
【図8】図8は、視聴者属性データの一例を示す図である。
【図9】図9は、光通信の復号処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、天井側の撮像装置によって撮影された画像データの一例を示す図である。
【図11】図11は、壁側の撮像装置によって撮影された画像データの一例を示す図である。
【図12】図12は、壁側の他の撮像装置によって撮影された画像データの一例を示す図である。
【図13】図13は、顔領域特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、発光位置情報の一例を示す図である。
【図15】図15は、頭部領域情報の一例を示す図である。
【図16】図16は、顔領域情報の一例を示す図である。
【図17】図17は、撮像装置と頭部領域の対応付けの一例を示す図である。
【図18】図18は、視聴者追跡処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】図19は、画像処理プログラムを実行するコンピュータを示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例では、本願の開示する画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法を広告管理システムに適用した例を示すが、本願の開示する画像処理プログラム、画像処理装置および画像処理方法は、この実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
まず、本実施例に係る広告管理システム(広告情報提供システム)1について説明する。広告管理システム1は、エレベータに乗った人物に対して広告を表示する。そして、広告管理システム1は、広告に興味をもった人物に対して広告に関するさらに詳細な情報を提供するとともに、その人物の属性情報を取得して記録する。広告管理システム1によって取得された属性情報は、マーケティング等のための重要な資料として活用される。
【0014】
図1は、広告管理システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、広告管理システム1は、広告管理装置10と、撮像装置20a〜20cと、表示装置30a〜30bとを有する。
【0015】
撮像装置20a〜20cは、エレベータ内の空間を撮影して、複数の静止画像(フレーム)を含む動画像データ(以下、「画像データ」という。)を生成する。具体的には、撮像装置20aは、エレベータの入り口の上方に設置されており、エレベータの入口側から奥側を見る視点でエレベータ内の空間を撮影する。撮像装置20bは、エレベータの奥の上方に設置されており、エレベータの奥側から入口側を見る視点でエレベータ内の空間を撮影する。
【0016】
撮像装置20cは、エレベータの天井に下向きに設定されており、エレベータ内を見下ろす視点でエレベータ内の空間を撮影する。なお、撮像装置20a〜20cは、防犯用の監視カメラ等の他の役割を兼ねていてもよい。
【0017】
表示装置30a〜30bは、エレベータに乗っている人物に対して広告等を表示する。表示装置30aは、エレベータの入り口の上方に設置されており、表示装置30bは、エレベータの奥の上方に設置されている。なお、以下の説明では、撮像装置20a〜20cを撮像装置20と総称することがあり、表示装置30a〜30bを表示装置30と総称することがある。
【0018】
広告管理装置10は、広告の表示や、それに興味をもった人物の属性情報の取得等の各種処理を実行する装置であり、本願の開示する画像処理装置としての機能を含む。広告管理装置10は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク50を介して撮像装置20a〜20cおよび表示装置30a〜30bと接続されている。
【0019】
また、広告管理装置10は、インターネット60を介して無線通信業者の無線基地局70とも接続されている。このため、広告管理装置10は、インターネット60と無線基地局70を介して、エレベータに乗っている人物Pが所持する携帯端末装置40と通信をすることができる。
【0020】
携帯端末装置40は、携帯可能な情報処理装置であり、例えば、携帯電話端末である。携帯端末装置40は、無線基地局70との間で無線通信を行う無線通信装置としての機能に加えて、光通信によって情報を送信する光通信装置としての機能を有する。広告管理システム1においては、携帯端末装置40が光通信によって送信する信号を撮像装置20aや撮像装置20bが受信し、受信された信号を広告管理装置10が復号する。
【0021】
次に、図1に示した広告管理システム1の動作について説明する。図2は、広告管理システム1の動作を示すシーケンス図である。図2に示すように、広告管理装置10は、広告コンテンツを表示装置30へ送信し(ステップS01)、表示装置30は、送信された広告コンテンツを表示する(ステップS02)。表示装置30に表示される広告コンテンツには、「この広告で紹介した商品についてもっとお知りになりたい方は、横の撮像装置へ向けてメールアドレスを送信して下さい」といったメッセージが含まれる。
【0022】
エレベータに乗っている人物Pは、広告で紹介された商品に興味をもつと、撮像装置20へ向けて携帯端末装置40をかざし、携帯端末装置40に割り当てられているメールアドレスを光通信で送信するための所定の操作を携帯端末装置40に対して行う。その結果、携帯端末装置40から撮像装置20へ向けてメールアドレスが光通信で送信される(ステップS03)。
【0023】
撮像装置20は、エレベータ内の空間を撮影した画像データを広告管理装置10へ送る(ステップS04)。広告管理装置10は、撮像装置20によって撮影された画像データを時系列に参照しながら発光点の発光パターンを解析することによって復号処理を実行し、送信されたメールアドレスを取得する(ステップS05)。
【0024】
続いて、広告管理装置10は、後述する顔領域特定処理を実行して、光通信中に撮影された画像データから光通信を実行した送信者の顔領域を取得する(ステップS06)。顔領域とは、人物の顔面部分の領域である。そして、広告管理装置10は、取得した顔領域を解析して送信者の年齢や性別等の属性情報を取得する(ステップS07)。ここで取得された属性情報は、送信されたメールアドレスと対応づけて所定の記憶部に記録される。
【0025】
続いて、広告管理装置10は、広告コンテンツ毎に予め用意されている配信情報の中から属性情報に応じたものを取得し(ステップS08)、取得された配信情報をステップS05で取得したメールアドレス宛に電子メールとして送信する(ステップS09)。送信された電子メールは、インターネット60と無線基地局70を介して、携帯端末装置40へ送信される。
【0026】
このように、広告に興味をもった人物にメールアドレスを光通信によって送信させることにより、エレベータ内のような公共の場所にいる人物に対して広告に関する詳細な情報を個別に送信して、広告の効果を向上させることができる。また、光通信中に撮影された画像データから送信者の顔領域を抽出して送信者の年齢等を解析することにより、広告に興味をもった人物に対して年齢等に応じた情報を送信することが可能となり、広告の効果をさらに向上させることができる。
【0027】
また、広告管理装置10は、ステップS06で取得した顔領域の移動を追跡し、顔画像が画像データ外へ移動した場合には、送信者がエレベータを降りたと判断して、そのときの階数を取得する(ステップS10)。エレベータを降りた階数は、送信者の勤務先や、買い物をしようとしている店を知る手掛かりとなる。そして、広告管理装置10は、取得された階数を属性情報の一部として、送信されたメールアドレスと対応付けて所定の記憶部に記録する(ステップS11)。
【0028】
このように、広告に興味をもった人物の属性情報を記録しておくことにより、広告の効果の評価やマーケティングに有用な情報を得ることができる。
【0029】
次に、図1に示した携帯端末装置40の構成について説明する。図3は、携帯端末装置40の構成を示すブロック図である。図3に示すように、携帯端末装置40は、ユーザインターフェース部401、メールアドレス送信部402、符号化部403、発光制御部404、発光部405、無線通信部406、メール送受信部407、WEBブラウザ408とを有する。
【0030】
ユーザインターフェース部401は、利用者の操作を受け付けるボタン等の入力デバイスと、文字や画像を表示する液晶パネル等の表示デバイスとを含む。なお、ユーザインターフェース部401は、タッチパネルのように、入力と表示の両方を担当するデバイスを含んでいてもよい。
【0031】
メールアドレス送信部402は、ユーザインターフェース部401において所定の操作が行われた場合に、予め携帯端末装置40に割り当てられているメールアドレスを符号化部403へ出力して、そのメールアドレスを光通信によって送信するように指示する。符号化部403は、指示されたメールアドレスを光通信で送信するための符号化処理を実行する。
【0032】
発光制御部404は、メールアドレスを符号化することによって得られた発光パターンに従って発光部405を発光させる。発光部405は、LED等の発光デバイスを含み、発光制御部404の制御に従って、発光デバイスを点灯させたり、点灯を中止させたりする。なお、着信通知用のランプやユーザインターフェース部401の液晶パネル等を光通信のための発光デバイスとして利用することもできる。
【0033】
無線通信部406は、無線基地局70との間の無線通信を実現する。メール送受信部407は、無線通信部406によって実現される無線通信を通じて電子メールの送受信を行うとともに、ユーザインターフェース部401において受け付けられた操作に応じて、電子メールの表示や編集を行う。WEBブラウザ408は、ユーザインターフェース部401において受け付けられた操作に応じて、無線通信を通じてWEBページを取得し、ユーザインターフェース部401に表示させる。
【0034】
ここで、携帯端末装置40の光通信によって送信される信号の発光パターンの一例を図4に示す。図4に示すように、メールアドレスを光通信で送信する場合、まず、送信準備信号が送信される。送信準備信号は、光通信の開始を示す信号であり、短い周期で点滅を繰り返す発光パターンを含む。
【0035】
送信準備信号に続いて、送信開始信号が送信される。送信開始信号は、送信対象の情報の送信の開始を示す信号であり、例えば、発光が一定時間継続する発光パターンを含む。
【0036】
送信開始信号に続いて、符号化されたメールアドレスに対応する発光パターンが送信される。図4に示した例では、文字コード毎に発光時間と非発光時間の組合せが予め定義されており、この定義に従ってメールアドレスを符号化した発光パターンが送信されている。なお、発光時間と非発光時間の組合せのみでなく、発光する光の強度や色等を組み合わせて各文字コードに対応する発光パターンを定義することとしてもよい。また、発光が所定期間継続したら1、発光が所定期間なければ0というようにビット単位で発行パターンを定義することとしてもよい。
【0037】
符号化されたメールアドレスの送信が完了すると、送信終了信号が送信される。送信終了信号は、光通信の終了を示す信号であり、例えば、発光が一定時間継続する発光パターンを含む。
【0038】
次に、図1に示した広告管理装置10の構成について説明する。図5は、広告管理装置10の構成を示すブロック図である。図5に示すように、広告管理装置10は、ネットワークインターフェース部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。ネットワークインターフェース部110は、インターネット60等を介する通信を実現する。
【0039】
記憶部120は、各種情報を記憶する記憶デバイスであり、広告データ121と、広告表示スケジュール122と、画像データ123と、配信情報124と、配信情報選択条件125と、視聴者属性データ126とを記憶する。
【0040】
広告データ121は、表示装置30に表示される広告コンテンツを含むデータである。広告データ121に含まれる広告コンテンツには、上述したように、メールアドレスを光通信で送信することを求めるものがある。
【0041】
広告表示スケジュール122は、どの広告をいつ表示すべきかを示す定義が格納されたデータである。広告表示スケジュール122の一例を図6に示す。図6に示すように、広告表示スケジュール122は、表示時刻、広告ID、広告データ名といった項目を有する。表示時刻は、広告の表示を開始する時刻と終了する時刻である。広告IDは、広告を識別するための識別番号である。広告データ名は、広告コンテンツが格納されたデータファイルの名称である。
【0042】
図6に示した広告表示スケジュール122の1行目は、「CM001」という識別番号で識別される広告の表示を「9:00:00(9時0分0秒)」に開始して、「9:00:30(9時0分30秒)」に終了すべきことを示している。また、この1行目のレコードは、「CM001」という識別番号で識別される広告のコンテンツが「CM001.mpeg」という名称のデータファイルに格納されていることを示している。
【0043】
画像データ123は、撮像装置20によって撮影された画像データである。配信情報124は、広告に興味をもった人物へ個別に配信される情報である。
【0044】
配信情報選択条件125は、光通信によってメールアドレスが送信された場合にどの配信情報を選択して送信するべきかを示す条件が格納されたデータである。配信情報選択条件125の一例を図7に示す。図7に示すように、配信情報選択条件125は、広告ID、年齢、性別、配信情報名といった項目を有する。広告IDは、広告を識別するための識別番号である。年齢および性別は、メールアドレスの送信者の年齢および性別である。配信情報名は、送信すべき配信情報の名称である。
【0045】
図7に示した配信情報選択条件125の1〜3行目は、「CM001」という識別番号で識別される広告の表示中にメールアドレスが送信された場合にどの配信情報を選択して送信するべきかを示す条件である。具体的には、1行目は、送信者の年齢が「10〜29」の範囲で性別が「女性」の場合、「CM001−F1.txt」という名称の配信情報を送信すべきことを示している。また、2行目は、送信者の年齢が上記の範囲外で性別が「女性」の場合、「CM001−F2.txt」という名称の配信情報を送信すべきことを示している。また、3行目は、送信者の年齢に関わらず性別が「男性」の場合、「CM001−M.txt」という名称の配信情報を送信すべきことを示している。
【0046】
視聴者属性データ126は、メールアドレスの送信者について取得された属性情報が格納されるデータである。図8に視聴者属性データ126の一例を示す。図8に示すように、視聴者属性データ126は、メールアドレス、年齢、性別、階数、広告ID、発光時間、画像ID、顔領域といった項目を有する。
【0047】
メールアドレスは、光通信によって送信されたメールアドレスである。年齢および性別は、メールアドレスの送信者の年齢および性別の解析結果である。階数は、メールアドレスの送信者がエレベータを降りた階数である。広告IDは、メールアドレスが送信されていたときに表示されていた広告を識別するための識別番号である。
【0048】
発光時間は、光通信でメールアドレスを送信するための送信準備信号が検出された時刻である。画像IDは、メールアドレスの送信者の年齢および性別を解析するために用いられた画像データを識別するための識別番号である。顔領域は、画像IDで識別される画像データにおいて特定された送信者の顔領域であり、顔領域の左上の座標と幅と高さを示す。
【0049】
図8に示した視聴者属性データ126の1行目は、「suzuki@example1.com」というメールアドレスの送信者は、年齢が「40」才、性別が「男性」と解析され、「19F」でエレベータを降りたことを示している。また、1行目は、メールアドレスの送信時に表示されていた広告が、「CM001」という識別番号で識別される広告であることを示している。
【0050】
また、1行目は、送信者の年齢および性別を解析するために用いられた画像データが、「N1−081201090021−11」という識別番号で識別される画像であることを示している。また、1行目は、その画像においてX=「302」、Y=「436」を左上の座標とし、幅が「183」で高さが「196」の領域が、送信者の顔領域として特定されたことを示している。
【0051】
制御部130は、広告管理装置10を全体制御する制御部であり、広告表示制御部131と、画像取得部132と、復号部133と、顔領域特定部134と、顔領域検出部134aと、頭部領域検出部134bと、頭部領域選択部134cと、位置変換部134dと、追跡部135と、階数取得部136と、属性解析部137と、情報配信部138と、メール送信部139とを有する。
【0052】
広告表示制御部131は、広告表示スケジュール122に定義されたスケジュールに従って表示装置30に広告データ121を表示させる。画像取得部132は、撮像装置20から画像データを取得し、取得した画像データを画像データ123として記憶部120に記憶させる。
【0053】
復号部133は、画像取得部132によって取得される画像データに含まれる発光点の発光パターンを復号してメールアドレスを取得する。メールアドレスを取得するため、復号部133は、まず、送信準備信号を検出する。送信準備信号の検出は、画像データ123を参照して、すなわち、該画像データに含まれるある時点のフレーム(静止画像)について、過去一定期間に撮影された各フレームとの差分の和を算出した結果に基づいて行われる。
【0054】
図4に示したように、送信準備信号は、点滅を短い期間で繰り返す発光パターンを含むため、送信準備信号の発光点に相当するピクセルでは、過去一定期間のフレーム間差分の和が他のピクセルと比較して大きな値となる。このため、過去一定期間のフレーム間差分の和を閾値判定することにより、そのピクセルに相当する位置で送信準備信号が送信されているか否かを判定することができる。
【0055】
時刻tにおける座標(x,y)のピクセルのNフレーム前までのフレーム間差分の和であるD(x,y,t)は、以下の式(1)によって算出することができる。
【0056】
【数1】

【0057】
ここで、P(x,y,t)は、時刻tにおける座標(x,y)のピクセルのRGB各画素の画素値の平均値である。なお、P(x,y,t)は、時刻tにおける座標(x,y)のピクセルのRGB各画素の画素値の最大値であってもよい。
【0058】
復号部133は、こうして送信準備信号が送信されていることと、その発光点とを検出すると、画像取得部132によって取得される画像を監視して、その発光点において送信開始信号が検出されるのを待つ。そして、復号部133は、送信開始信号が検出されると、送信開始信号の終了時以降の発光点の発光パターンを符号化されたメールアドレスとみなして、発光点で送信終了信号が検出されるまで復号する。
【0059】
顔領域特定部134は、本実施例に係る画像処理方法を実行して、復号部133によって検出された送信開始信号の送信者の顔領域を特定する。顔領域特定部134による送信者の顔領域の特定は、顔領域検出部134a、頭部領域検出部134b、頭部領域選択部134cおよび位置変換部134dの処理結果に基づいて行われる。
【0060】
なお、送信者の顔領域の特定対象の画像データは、復号部133で送信準備信号が検出されたときに撮影された画像データであることが好ましいが、送信準備信号の検出後、光通信が終了するまでのいずれかの時点で撮影された画像データであってもよい。
【0061】
顔領域検出部134aは、送信者の顔領域の特定対象の画像データから、その画像データに含まれる各人物の顔領域を検出する。画像データからの顔領域の検出は、公知の顔認識技術を用いることによって実現することができる。
【0062】
頭部領域検出部134bは、送信者の顔領域の特定対象の画像データが撮影されたときに撮像装置20cによって撮影された画像データから、その画像データに含まれる各人物の頭部領域(人物領域)を検出する。頭部領域とは、人物の頭部部分の領域である。ここで、検出される頭部領域は、人物の頭部と推定される部分がいずれかの角度で写っている部分であればよく、顔面が含まれることを要しない。画像データからの頭部領域の検出は、例えば、公知の顔認識技術を応用することによって実現される。
【0063】
頭部領域選択部134cは、頭部領域検出部134bによって検出された頭部領域の中から、送信者と発光点と光通信による通信先装置である撮像装置との位置関係に関する以下の2つの基準を満たすものを、メールアドレスの送信者の頭部領域である可能性があるものとして、光通信の受信に用いられる撮像装置20毎に選択(特定)する。
【0064】
頭部領域選択部134cによる選択の第1の基準は、光通信の発光点からの距離が閾値より小さいことである。第1の基準で用いられる閾値は、光通信が行われる場合に送信者と携帯端末装置40が取り得る距離の最大値に基づいて決定される。光通信が行われる場合に送信者と携帯端末装置40が取り得る距離の最大値としては、例えば、一般的な人間の腕の長さが用いられる。
【0065】
頭部領域選択部134cによる選択の第2の基準は、光通信の受信に用いられる通信先装置である撮像装置20から見て、光通信の発光点よりも遠方に位置していることである。送信者が光通信を実行する場合、送信先の撮像装置20の方向に顔を向け、携帯端末装置40を顔より前方に保持するはずであり、頭部よりも後方に発光点が位置することはないと考えられることが第2の基準の根拠である。
【0066】
位置変換部134dは、頭部領域選択部134cによって選択された各頭部領域の位置を、撮像装置20aおよび20bによって撮影された画像データにおける位置へ変換する。位置の変換方式は、撮像装置20の位置関係や画像の解像度等に基づいて、変換前後の画像中に共通して存在する物の位置のX軸方向とY軸方向の少なくとも一方が一致するように予め決定される。
【0067】
顔領域特定部134は、位置変換部134dによって変換された頭部領域の位置と、顔領域検出部134aによって検出された顔領域の位置とを比較し、位置の差が予め定義された誤差の範囲内の組合せがあれば、その組み合わせの頭部領域と顔領域とは同一位置に存在すると判断し、該顔領域を送信者の顔領域と特定する。なお、誤差の範囲の組合せが複数あった場合は、発光位置に最も近い組合せが、送信者の顔領域を含む組合せと判定される。ここで、発光位置に最も近い組合せを見つける場合、顔領域と発光点の距離と、頭部領域と発光点の距離のうち、いずれか一方を重く評価してもよいし、双方を均等に評価してもよい。
【0068】
このように、光通信の受信に用いられる撮像装置とは異なる方向から撮影された画像から送信者のものと推定される頭部領域を取得し、その頭部領域の位置に基づいて送信者の顔領域を特定することにより、高い精度で送信者の顔領域を検出することができる。
【0069】
追跡部135は、顔領域特定部134によって送信者のものと特定された顔領域と頭部領域の少なくとも一方の移動を追跡する。追跡部135による追跡は、追跡対象がエレベータ内の空間を出たと判定されるまで継続する。頭部領域等の追跡は、公知の追跡技術を用いて実現することができる。
【0070】
階数取得部136は、エレベータの現在の階数を取得する。階数の取得は、例えば、エレベータの運用監視装置から取得することができる。
【0071】
属性解析部137は、顔領域特定部134によって送信者のものと判定された顔領域を解析して年齢や性別等の属性情報を取得し、復号部133によって復号されたメールアドレス等とともに視聴者属性データ126に記録する。画像データ中の顔領域から年齢や性別等の属性情報を取得する処理は、公知の画像解析技術を用いて実現することができる。
【0072】
また、属性解析部137は、追跡部135によって追跡対象がエレベータ内の空間を出たと判定された場合に、その時点のエレベータの階数を階数取得部136から取得する。そして、属性解析部137は、取得された階数を、復号部133によって復号されたメールアドレスと対応づけて視聴者属性データ126に記録する。
【0073】
情報配信部138は、配信情報124から、復号部133によって送信準備信号が検出されたときに表示されていた広告に対応し、属性解析部137によって取得された属性情報に該当するものを取得する。ここで、復号部133によって送信準備信号が検出されたときに表示されていた広告の広告IDは、復号部133によって送信準備信号が検出された時刻が表示時刻に含まれる行を広告表示スケジュール122から検索することによって取得できる。
【0074】
そして、情報配信部138は、取得した情報をメールで送信するようにメール送信部139に指示する。メール送信部139は、送信を指示された情報を、復号部133によって復号されたメールアドレス宛にメールで送信する。
【0075】
次に、広告管理装置10の動作について説明する。図9は、光通信の復号処理の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すように、復号部133は、画像取得部132から画像データを取得する(ステップS101)。そして、復号部133は、同一の撮像装置20によって撮影された過去一定期間の画像データを画像データ123から取得し、フレーム間差分の和をピクセル毎に演算する(ステップS102)。
【0076】
ここで、フレーム間差分の和が閾値を超えるピクセルがなかった場合、すなわち、送信準備信号が送信されていない場合(ステップS103否定)、復号部133は、ステップS101から処理手順を再開する。
【0077】
一方、フレーム間差分の和が閾値を超えるピクセルがあった場合(ステップS103肯定)、復号部133は、フレーム間差分の和が最大のピクセルを発光点として選択する(ステップS104)。そして、復号部133は、選択したピクセルの過去一定時間の発光パターンを取得する(ステップS105)。
【0078】
ここで、送信開始信号の終わりが検出された場合は(ステップS106肯定)、復号部133は、送信終了信号を検出するまでメールアドレスを復号する(ステップS107)。一方、送信開始信号の終わりが検出されない場合は(ステップS106否定)、復号部133は、ステップS105から処理手順を再開する。
【0079】
なお、復号処理は、撮像装置20毎に繰り返して実行される。そのため、ある撮像装置20に対応する復号処理で送信準備信号が検出された場合、他の撮像装置20に対応する復号処理で送信準備信号を所定の期間検出しないようにしてもよい。このようにすることにより、送信されたメールアドレスが各撮像装置20に対応する復号処理で重複して復号されることを防止することができる。
【0080】
また、各撮像装置20に対応する復号処理で送信準備信号が所定の期間内に検出された場合、それぞれの復号処理で得られた発光パターンを合成してメールアドレスを復号することとしてもよい。このように発光パターンを合成することにより、光通信中に光がある方向で遮断された場合でも、その影響を軽減することができる。
【0081】
続いて、図10〜12に示す画像データの例を参照しながら顔領域特定処理の処理手順について説明する。
【0082】
図10は、送信準備信号の検出時に天井側の撮像装置20cによって撮影された画像データの一例を示す図である。図10に示す画像データ81は、図中下方が撮像装置20aの設置位置に相当し、図中上方が撮像装置20bの設置位置に相当する。そして、画像データ81は、図中左上を原点として、図中右へ行くほどX座標の値が大きくなり、図中下方へ行くほどY座標の値が大きくなるように座標が設定されている。図10には、人物P1〜P3の頭部と、光通信の発光点81dが写っている。
【0083】
図11は、壁側の撮像装置20aによって撮影された画像データの一例を示す図である。図11に示す画像データ82は、画像データ81と同じタイミングで撮影された画像データである。そして、画像データ82は、図中左上を原点として、図中右へ行くほどX座標の値が大きくなり、図中下方へ行くほどY座標の値が大きくなるように座標が設定されている。図11には、後ろ向きに立っている人物P1と、正面を向いて立っている人物P2およびP3と、光通信の発光点82cとが写っている。
【0084】
図12は、壁側の撮像装置20bによって撮影された画像データの一例を示す図である。図12に示す画像データ83は、画像データ81と同じタイミングで撮影された画像データである。そして、画像データ83は、図中左上を原点として、図中右へ行くほどX座標の値が大きくなり、図中下方へ行くほどY座標の値が大きくなるように座標が設定されている。図12には、正面を向いて立っている人物P1と、後ろ向きに立っている人物P2およびP3と、光通信の発光点83bとが写っている。
【0085】
図13は、顔領域特定処理の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、復号部133によって送信準備信号が検出されるたびに、顔領域特定部134によって実行される。
【0086】
図13に示すように、顔領域特定部134は、検出された送信準備信号の発光位置に関する情報を復号部133から取得する(ステップS201)。取得される発光位置情報の一例を図14に示す。図14に示すように、発光位置を示す座標は、撮像装置20毎に取得される。これらの座標は、画像データ81〜83内の発光点の座標に対応する。
【0087】
続いて、顔領域特定部134は、送信準備信号の検出時に各撮像装置20によって撮影された画像データを取得する(ステップS202)。ここでは、画像データ81〜83が取得されたものとする。
【0088】
続いて、顔領域特定部134は、壁側から撮影された各画像データから顔領域を抽出する処理を顔領域検出部134aに実行させる(ステップS203)。ステップS203では、画像データ82から、正面を向いている人物P2の顔領域82aと、同じく正面を向いている人物P3の顔領域82bとが検出される。また、画像データ83から、正面を向いている人物P1の顔領域83aが検出される。検出された各顔領域の左上座標、幅、高さの組合せは、図16に示すように、それぞれユニークな識別番号である顔領域IDを割り当てられ、撮影された撮像装置と対応づけて管理される。
【0089】
続いて、顔領域特定部134は、天井側から撮影された画像データから頭部領域を抽出する処理を頭部領域検出部134bに実行させる(ステップS204)。ステップS204では、画像データ81から、人物P1の頭部領域81aと、人物P2の頭部領域81bと、人物P3の頭部領域81cとが検出される。検出された各頭部領域の左上座標、幅、高さの組合せは、図15に示すように、それぞれユニークな識別番号である頭部領域IDを割り当てられて管理される。
【0090】
続いて、顔領域特定部134は、撮像装置20に対して光通信を実行している可能性のある人物の頭部領域を壁側の撮像装置20毎に選択する処理を頭部領域選択部134cに実行させる。そして、顔領域特定部134は、選択された頭部領域を、光通信の送信先と想定される撮像装置20と対応づけて記憶する(ステップS205)。
【0091】
ステップS205では、画像データ81から、撮像装置20aに対して光通信を実行している可能性のある人物の頭部領域として、頭部領域81aおよび81bが選択される。これらの頭部領域の中心と発光点81dの距離が閾値Th1より小さいので第1の基準が満たされ、これらの頭部領域の中心のY座標が発光点81dのY座標であるY1よりも小さいので第2の基準も満たされるためである。
【0092】
また、画像データ81から、撮像装置20bに対して光通信を実行している可能性のある人物の頭部領域として、頭部領域81cが選択される。頭部領域81cの中心と発光点81dの距離が閾値Th1より小さいので第1の基準が満たされ、頭部領域81cの中心のY座標が発光点81dのY座標であるY1よりも大きいので第2の基準も満たされるためである。
【0093】
こうして選択された頭部領域は、図17に示すように、光通信の送信先と想定される映像装置と対応づけて記憶される。具体的には、頭部領域81aの頭部領域IDである「HEAD01」および頭部領域81bの頭部領域IDである「HEAD02」は、撮像装置20aと対応づけられる。そして、頭部領域81cの頭部領域IDである「HEAD03」は、撮像装置20bと対応づけられる。
【0094】
続いて、顔領域特定部134は、選択された頭部領域のうち未取得のものを1つ取得する(ステップS206)。そして、未取得の頭部領域を取得できた場合は(ステップS207否定)、顔領域特定部134は、その頭部領域の中心のX座標を壁側から撮影された各画像データの座標へ変換する処理を位置変換部134dに実行させる(ステップS208)。
【0095】
ステップS206で頭部領域81bが選択されたとすると、その中心のX座標であるX1は、以下のように変換される。X1を画像データ82の座標へ変換する場合、画像データ82のX座標の方向は、頭部領域81bを含む画像データ81と同一であるので、解像度の相違に応じた係数を乗じることにより変換が完了する。一方、X1を画像データ83の座標へ変換する場合、画像データ83のX座標の方向と画像データ81と反対であるので、座標を図中右上を原点としたものに置き換えた後に、解像度の相違に応じた係数を乗じることとなる。
【0096】
続いて、顔領域特定部134は、中心の座標と変換後の座標の距離が閾値よりも小さい顔領域を、ステップS206で選択された頭部領域と対応づけて記憶された撮像装置によって撮影された画像データから検出された顔領域の中から選択する(ステップS210)。ここで用いられる閾値は、誤差を吸収するためものである。
【0097】
ステップS206で頭部領域81aが選択された場合について考える。頭部領域81aと対応づけてステップS205で記憶されたのは撮像装置20aであり、撮像装置20aによって撮影された画像データ82からは、顔領域82aおよび82bが検出されている。しかし、頭部領域81aの中心のX座標を画像データ82のX座標へ変換した位置にいるのは、後ろ向きに立っている人物P1であり、変換後のX座標付近では顔領域は検出されていない。このため、頭部領域81aに対応する顔領域は選択されない。
【0098】
また、ステップS206で頭部領域81cが選択された場合について考える。頭部領域81cと対応づけてステップS205で記憶されたのは撮像装置20bであり、撮像装置20bによって撮影された画像データ83からは、顔領域83aが検出されている。しかし、頭部領域81cの中心のX座標を画像データ83のX座標へ変換した位置にいるのは、後ろ向きに立っている人物P3であり、変換後のX座標付近では顔領域は検出されていない。このため、頭部領域81cに対応する顔領域は選択されない。
【0099】
ステップS206で頭部領域81bが選択された場合について考える。頭部領域81bと対応づけてステップS205で記憶されたのは撮像装置20aであり、撮像装置20aによって撮影された画像データ82からは、顔領域82aおよび82bが検出されている。そして、頭部領域81aの中心のX座標を画像データ82のX座標へ変換した位置には正面を向いて立っている人物P2がおり、変換後のX座標の値は、顔領域82aの中心のX座標とほぼ一致する。このため、頭部領域81bに対応する顔領域として、顔領域82aが選択される。
【0100】
ステップS209で顔領域を選択できた場合(ステップS210肯定)、顔領域特定部134は、選択された顔領域を、ステップS206で選択した頭部領域と対応づけて送信者の領域の候補として記憶し(ステップS211)、ステップS206から処理手順を再開する。一方、ステップS209で顔領域を選択できなかった場合(ステップS210否定)、顔領域特定部134は、ステップS206から処理手順を再開する。
【0101】
こうして、顔領域特定部134は、未取得の頭部領域がなくなるまで頭部領域と顔領域の照合を行う。そして、ステップS205で選択された頭部領域をすべて取得し、未取得のものがなくなったならば(ステップS207肯定)、頭部領域と顔領域の照合を終了する。
【0102】
続いて、顔領域特定部134は、送信者の領域の候補として記憶している頭部領域と顔領域の組合せが複数ある場合は(ステップS212肯定)、発光位置との距離が最小の組合せを候補として選択する(ステップS213)。
【0103】
続いて、顔領域特定部134は、送信者の領域の候補として記憶している頭部領域と顔領域の組合せがあれば(ステップS214肯定)、候補に含まれる頭部領域と顔領域を送信者のものと特定する(ステップS215)。一方、顔領域特定部134は、送信者の領域の候補として記憶している頭部領域と顔領域の組合せがなければ(ステップS214否定)、送信者の頭部領域と顔領域を特定することはできないと判断する(ステップS216)。
【0104】
図10〜12に示した例では、頭部領域81bと顔領域82aの組合せのみが候補として選択されるため、頭部領域81bと顔領域82aが送信者のものと特定される。この特定結果は適正である。
【0105】
図18は、視聴者追跡処理の処理手順を示すフローチャートである。視聴者追跡処理は、顔領域特定部134によって送信者の顔領域と頭部領域が特定されるたびに、追跡部135等によって実行される。
【0106】
図18に示すように、追跡部135は、送信者、すなわち、広告に興味をもってメールアドレスを送信した視聴者のものと特定された頭部領域の移動を追跡する(ステップS301)。この追跡は、頭部領域がエレベータ内の空間の外へ出たと判定されるまで実行される。
【0107】
そして、頭部領域が画像データの外周部分から外部へ消える等して、頭部領域がエレベータ内の空間の外へ出たと判定されたならば(ステップS302肯定)、階数取得部136が現在の階数を取得する(ステップS303)。そして、属性解析部137が、取得された階数を復号されたメールアドレスと対応づけて視聴者属性データ126に記憶させる(ステップS304)。
【0108】
なお、図1に示した広告管理システム1の構成は、要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができる。例えば、広告管理システム1を、エレベータ内で表示される広告を管理するためではなく、電車内や街頭で表示される広告を管理するように変形することができる。
【0109】
また、広告管理システム1では天井側1台と壁側2台という計3台の撮像装置を用いているが、撮影対象の空間を異なる角度から撮影する撮像装置が複数設置されていれば、撮像装置の台数と設置位置は問わない。
【0110】
なお、上記では携帯端末装置40から撮像装置20へ向けてメールアドレスが光通信で送信される場合を例に挙げ説明したが、天井の撮像装置30cにより撮影した画像81から、送信準備信号を検出することができる場合がある。
【0111】
したがって、必ずしも上記のように、広告コンテンツ内で、携帯端末を撮像装置へ向けてメールアドレスを送信するよう促さなくてもよい。
【0112】
たとえば、広告コンテンツにおいて、撮像装置以外の予め定められた所定の基準位置(例えば任意の壁面に貼付したポスターの位置など)に向けて、光信号を発信するよう促した場合にも、送信者と発光点と所定の基準位置との位置関係に基づいて、端末の所持者を特定することができる。
【0113】
すなわち、この場合、前記頭部領域選択部134cによる前記第2の基準は、予め定められた所定の基準位置(ポスターの位置)からみて、頭部領域が光通信の発光点よりも遠方に位置していること、となる。
【0114】
また、さらに、天井の撮像装置30cにより、服装、髪型等の人物の特徴をも認識することとすれば、壁側の撮像装置を省略したシステム構成とても、携帯対端末装置の所持者に対し、その特徴に応じた広告等の情報を送信することが可能である。
【0115】
前記広告管理装置10の機能の全部もしくは一部は、ソフトウェアとして実装し、これをコンピュータで実行することによって同等の機能を実現することもできる。以下に、広告管理装置10の顔領域特定に関する機能をソフトウェアとして実装した画像処理プログラム1071を実行するコンピュータの一例を示す。
【0116】
図19は、画像処理プログラム1071を実行するコンピュータ1000を示す機能ブロック図である。このコンピュータ1000の各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置1020と、各種情報を表示するモニタ1030と、記録媒体からプログラム等を読み取る媒体読取り装置1040と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行うネットワークインターフェース装置1050と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1060と、ハードディスク装置1070とは、バス1080で接続されている。
【0117】
そして、ハードディスク装置1070には、図1に示した顔領域特定部134と同様の機能を有する画像処理プログラム1071と、図1に示した画像データ123に対応する画像処理用データ1072とが記憶される。なお、画像処理用データ1072を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0118】
そして、CPU1010が画像処理プログラム1071をハードディスク装置1070から読み出してRAM1060に展開することにより、画像処理プログラム1071は、画像処理プロセス1061として機能するようになる。そして、画像処理プロセス1061は、画像処理用データ1072から読み出した情報等を適宜RAM1060上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0119】
なお、上記の画像処理プログラム1071は、必ずしもハードディスク装置1070に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0120】
上述してきたように、本実施例では、異なる方向から撮影して得られた情報に基づいて顔領域の候補を絞り込むこととしたので、壁側に設置された撮像装置で撮影された画像中から光通信の送信者の顔領域を精度よく特定することができる。
【0121】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0122】
(付記1)個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理プログラムであって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出手順と、
前記検出手順において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【0123】
(付記2)前記人物領域特定手順は、前記所定の位置から見て前記発光位置よりも遠方に位置し、かつ、前記発光位置との距離が閾値よりも小さい人物領域を、前記光通信装置の所持者の人物領域として特定することを特徴とする付記1に記載の画像処理プログラム。
【0124】
(付記3)前記所定の空間を前記撮像装置とは別の方向から撮影する第2の撮像装置によって撮影された、第2の画像に含まれる人物の顔領域を検出する顔領域検出手順と、
前記顔領域検出手順において該第2の画像内で検出された顔領域のうち、前記人物領域選択手順において前記画像内で特定された人物領域と同一位置に存在すると判断されるものを、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の顔領域として特定する顔領域特定手順と
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記1または2記載の画像処理プログラム。
【0125】
(付記4)前記顔領域特定手順によって特定された顔領域を解析して、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の属性情報を取得する属性解析手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記3に記載の画像処理プログラム。
【0126】
(付記5)前記復号手順によって復号された情報に含まれる前記光通信装置の識別情報に基づいて、前記光通信装置に対して、前記属性解析手順によって解析された属性情報に応じた情報を送信する送信手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記4に記載の画像処理プログラム。
【0127】
(付記6)個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理装置であって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出部と、
前記検出部において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【0128】
(付記7)前記人物領域特定部は、前記所定の位置から見て前記発光位置よりも遠方に位置し、かつ、前記発光位置との距離が閾値よりも小さい人物領域を、前記光通信装置の所持者の人物領域として特定することを特徴とする付記6に記載の画像処理装置。
【0129】
(付記8)前記所定の空間を前記撮像装置とは別の方向から撮影する第2の撮像装置によって撮影された、第2の画像に含まれる人物の顔領域を検出する顔領域検出部と、
前記顔領域検出部において該第2の画像内で検出された顔領域のうち、前記人物領域選択部において前記画像内で特定された人物領域と同一位置に存在すると判断されるものを、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の顔領域として特定する顔領域特定部と
をさらに備えたことを特徴とする付記6または7記載の画像処理装置。
【0130】
(付記9)前記顔領域特定部によって特定された顔領域を解析して、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の属性情報を取得する属性解析部をさらに備えたことを特徴とする付記8に記載の画像処理装置。
【0131】
(付記10)前記復号部によって復号された情報に含まれる前記光通信装置の識別情報に基づいて、前記光通信装置に対して、前記属性解析部によって解析された属性情報に応じた情報を送信する送信部をさらに備えたことを特徴とする付記9に記載の画像処理装置。
【0132】
(付記11)個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理方法であって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定工程と
を含んだことを特徴とする画像処理方法。
【0133】
(付記12)前記人物領域特定工程は、前記所定の位置から見て前記発光位置よりも遠方に位置し、かつ、前記発光位置との距離が閾値よりも小さい人物領域を、前記光通信装置の所持者の人物領域として特定することを特徴とする付記11に記載の画像処理方法。
【0134】
(付記13)前記所定の空間を前記撮像装置とは別の方向から撮影する第2の撮像装置によって撮影された、第2の画像に含まれる人物の顔領域を検出する顔領域検出工程と、
前記顔領域検出工程において該第2の画像内で検出された顔領域のうち、前記人物領域選択工程において前記画像内で特定された人物領域と同一位置に存在すると判断されるものを、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の顔領域として特定する顔領域特定工程と
をさらに含んだことを特徴とする付記11または12記載の画像処理方法。
【0135】
(付記14)前記顔領域特定工程によって特定された顔領域を解析して、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の属性情報を取得する属性解析工程をさらに含んだことを特徴とする付記13に記載の画像処理方法。
【0136】
(付記15)前記復号工程によって復号された情報に含まれる前記光通信装置の識別情報に基づいて、前記光通信装置に対して、前記属性解析工程によって解析された属性情報に応じた情報を送信する送信工程をさらに含んだことを特徴とする付記14に記載の画像処理方法。
【符号の説明】
【0137】
1 広告管理システム
10 広告管理装置
110 ネットワークインターフェース部
120 記憶部
121 広告データ
122 広告表示スケジュール
123 画像データ
124 配信情報
125 配信情報選択条件
126 視聴者属性データ
130 制御部
131 広告表示制御部
132 画像取得部
133 復号部
134 顔領域特定部
134a 顔領域検出部
134b 頭部領域検出部
134c 頭部領域選択部
134d 位置変換部
135 追跡部
136 階数取得部
137 属性解析部
138 情報配信部
139 メール送信部
20a〜20c 撮像装置
30a〜30b 表示装置
40 携帯端末装置
401 ユーザインターフェース部
402 メールアドレス送信部
403 符号化部
404 発光制御部
405 発光部
406 無線通信部
407 メール送受信部
408 WEBブラウザ
50 ネットワーク
60 インターネット
70 無線基地局
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 入力装置
1030 モニタ
1040 媒体読取り装置
1050 ネットワークインターフェース装置
1060 RAM
1061 画像処理プロセス
1070 ハードディスク装置
1071 画像処理プログラム
1072 画像処理用データ
1080 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理プログラムであって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出手順と、
前記検出手順において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項2】
前記人物領域特定手順は、前記所定の位置から見て前記発光位置よりも遠方に位置し、かつ、前記発光位置との距離が閾値よりも小さい人物領域を、前記光通信装置の所持者の人物領域として特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理プログラム。
【請求項3】
前記所定の空間を前記撮像装置とは別の方向から撮影する第2の撮像装置によって撮影された、第2の画像に含まれる人物の顔領域を検出する顔領域検出手順と、
前記顔領域検出手順において該第2の画像内で検出された顔領域のうち、前記人物領域選択手順において前記画像内で特定された人物領域と同一位置に存在すると判断されるものを、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の顔領域として特定する顔領域特定手順と
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理プログラム。
【請求項4】
前記顔領域特定手順によって特定された顔領域を解析して、前記光通信装置を用いて光信号を送信した人物の属性情報を取得する属性解析手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項3に記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
前記復号手順によって復号された情報に含まれる前記光通信装置の識別情報に基づいて、前記光通信装置に対して、前記属性解析手順によって解析された属性情報に応じた情報を送信する送信手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項4に記載の画像処理プログラム。
【請求項6】
個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理装置であって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出部と、
前記検出部において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
個人の属性に応じた適切な情報を該個人の光通信装置に送信する広告情報提供システムにおいて、撮像装置で撮影された画像を解析して光通信装置の所持者を特定する画像処理方法であって、
前記光通信装置とその所持者が存在する所定の空間を撮影する前記撮像装置によって撮影された前記画像を解析して、前記光通信装置が送信した光信号と、前記光通信装置の所持者の候補となり得る複数の人物領域を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記画像中に検出された複数の人物領域の中から、前記画像における前記光信号の発光位置と予め定められた所定の基準位置と各人物領域との位置関係に基づいて、前記光通信装置の所持者の人物領域を特定する人物領域特定工程と
を含んだことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−238196(P2010−238196A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88386(P2009−88386)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】