画像処理方法及び画像処理装置
【課題】熱可逆記録媒体に対して、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも該繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制した画像処理方法及び画像処理装置の提供。
【解決手段】本発明の画像処理方法は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
【解決手段】本発明の画像処理方法は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可逆記録媒体への画像処理方法及び画像処理装置に関し、特に、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能な画像処理方法及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、単に「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある。)への画像形成及び画像消去は、加熱源を媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行なわれている。該加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、記録媒体がフィルムや紙などフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかしながら、記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、媒体の表面に凹凸が生じると、サーマルヘッド等を用いて画像形成及び消去することが困難になる。更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が出てきた。
【0003】
そこで、記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や、離れたところから記録媒体に対して画像の形成及び消去を行う方法として、レーザを用いる方法が考えられる。
レーザを用いて何らかのパターンを記録し消去する従来技術の代表例としては、CD−RWやDVD−RW等の光ディスクが挙げられる。これらは、Te、Se、In、Ag等の無機材料における結晶状態と非結晶状態との変化による光反射性の違いにより、記憶情報としてパターンを形成するものである。この結晶状態と非結晶状態との変化は、レーザ照射により材料が融解した後の冷却速度の違いにより生ずるものである。
これに対して、熱可逆記録媒体は、媒体を何度まで加熱したかという加熱温度の違いにより発色と消色とに変化するものである。即ち、上記光ディスクでは、画像形成も画像消去も、まず同じように材料の融解温度まで加熱する必要があり、その後の冷却速度を制御することによりパターンが形成されるが、熱可逆記録媒体では、画像形成の場合と画像消去の場合とでは、その後の冷却速度に拘らずレーザ照射の加熱により媒体が何度に到達したかによって画像形成と消去とが決まってくるものであり、同じレーザを照射して何らかのパターンを形成し消去するのであっても、そのプロセス、メカニズムが全く異なるものである。
また、光ディスクの結晶状態と非結晶状態との光反射性の違いは、レーザを照射し反射性の違いを電子的に検知するのには充分であるが、目視ではかすかに読み取れる程度であり全く不充分なものであった。
【0004】
熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから記録媒体に画像の形成及び消去を行うレーザを用いた方法が、例えば特許文献3に記載されている。これは、物流ラインに用いる搬送用容器に可逆性感熱記録媒体を使用し非接触記録を行なうものであり、書込みはレーザを用いて行い、消去は熱風、温水、赤外線ヒータなどを用いて行うことが開示されている。
レーザを用いた印字及び記録方式としては、例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7に開示されている。
前記特許文献4に記載の技術は、熱可逆記録媒体上に、光熱変換シートを配置した後、該光熱変換シートにレーザ光を照射して、発生する熱により該熱可逆記録媒体上に、画像の形成及び消去のいずれかを行うことを含む、改良された画像記録消去方法であり、その明細書中には、レーザ光の照射条件を制御することにより、画像の形成と消去との両方を行なうことが可能であることが開示されている。即ち、光照射時間、照射光度、焦点、及び光強度分布のうちの少なくとも一つを制御することにより、前記熱可逆記録媒体の第1の特定温度と第2の特定温度とに加熱温度を制御したり、加熱後の冷却速度を変化させることにより画像の形成及び消去を全面又は部分的に行うことが可能となることが記載されている。
前記特許文献5には、2つのレーザ光を使用し、一方を楕円形や長円形レーザとして消去を行ない、他方を円形レーザで記録する方法、2つのレーザの複合として記録する方法、及び、2つのレーザをそれぞれ変形させてそれぞれの複合として記録する方法が記載されている。これらの方法によれば、2つのレーザを用いることで、1つのレーザで記録するよりも高濃度の画像記録が実現できるようになる。
また、前記特許文献6に記載の技術は、レーザ記録時と消去時とにおいて、1つのミラーの表裏を利用し、光路差やミラー形状の違いによってレーザ光の光束形状を変更させるものである。これにより簡単な光学系で光スポットの大きさを変えることや焦点をぼかすことが可能となる。
更に、前記特許文献7には、ラベル状の可逆性感熱記録媒体のレーザ吸収率を50%以上、印字時の照射エネルギーが5.0〜15.0mJ/mm2、かつレーザ吸収率と印字照射エネルギーとの積が3.0〜14.0mJ/mm2であり、消去時のレーザ吸収率と印字照射エネルギーとの積を、1.1〜3.0倍とすることにより、消去後の残像画像を実質的に完全に消去できることが開示されている。
一方、レーザを用いた消去方法としては、例えば、特許文献8に、レーザ光のエネルギー、レーザ光の照射時間、及びパルス幅走査速度を、レーザ記録時の25%以上65%以下となるようにして消去することにより、明瞭なコントラストの画像の高耐久性な可逆性感熱記録媒体への記録を実現する方法が提案されている。
【0005】
しかし、上述したような方法により、レーザによる印字と消去とを行うことができるものの、印字時にレーザ制御を実施していないため、記録時に線が重なり合う箇所にて局所的な熱ダメージが発生するという問題や、ベタ画像を記録する時に発色濃度が低下するという問題があった。
これらの問題を解決することを目的として、印字エネルギーを制御する方法が、特許文献9及び特許文献10に開示されている。
前記特許文献9には、レーザ照射エネルギーを描画点毎に制御し、記録ドットが重なり合うように印字する場合や折り返して印字する場合に、その部分に付与するエネルギーを低下させる、また、直線印字を行なう場合に所定間隔ごとにエネルギーを低下させることにより、局所的な熱ダメージを軽減して可逆性感熱記録媒体の劣化を防止することが記載されている。
また、前記特許文献10では、レーザ描画の際に変角点の角度Rに応じて、照射エネルギーに対して、次式、|cos0.5R|k(0.3<k<4)を掛け合わせることでエネルギーを減らす工夫を行なっている。これによりレーザで記録する際に線画の重なる部分に過剰なエネルギーが掛かることを防ぎ、媒体の劣化を減少させることができる、あるいはエネルギーを下げ過ぎずにコントラストを維持することが可能となる。
また、発色濃度の低下を防ぐ方法として、特許文献11には、レーザで重ね書きを行なう場合に、前に記録していた画像が消去されてしまうことを防ぐために、副走査のドット配列ピッチをビーム発色半径の2倍以上にし、消色半径とビーム発色半径との和以下にすることで発色濃度の低下と消去跡の発生とをなくすことが提案されている。
【0006】
このように、上述した方法では、レーザ記録時の重なり合いにより、熱可逆記録媒体に過剰な熱エネルギーをかけない工夫をしている。しかし、高出力レーザを用いて高濃度印字と均一な消去とを繰り返し行うと、レーザ描画部分で重なりが発生するだけでなく、直線画像部分においても熱可逆記録媒体が徐々に劣化する現象が発現する。これは、照射するレーザ光のエネルギー分布がガウス分布となるため、中央部分のエネルギーが極端に高くなってしまうことが原因である。記録線画像の中心部分は過剰に加熱され、熱可逆記録媒体の変形跡や気泡の発生が観察され、特に高温に加熱されたレーザ光中心部分に相当する媒体部分においては、発色及び消色特性を担う材料自身が熱分解を起こし、充分な能力を発揮できなくなってしまう。よって、高濃度で均一な画像形成と均一な画像消去とを充分に行なうことができず、繰り返し消去印字を行っても劣化の少ない画像記録方法としては不充分である。
更に、上述したRF−IDタグと組み合わせた熱可逆記録媒体やコンテナや容器に貼り付けて使用する場合には、媒体表面に凹凸が発生し、該凹凸のためにレーザの焦点位置が一定とならず、過剰なエネルギーが熱可逆媒体に掛かる場合や消去を実施するエネルギーを加えた場合でも発色温度まで上昇したり、逆に消去が不充分で消し残りが発生したりするという問題もある。
【0007】
また、書き換えはできないが、金属やプラスチックなどに直接ロット番号や型番などを記録する方法として、いわゆるレーザマーカーが知られている。このレーザマーカーは、金属やプラスチックをレーザのエネルギーで融解や分解することによって、それらの表面を傷つけて痕を付けて画像を形成するものであり、そのためにはレーザを集光し、レーザ照射部の中心部のエネルギーを高くする必要があった。
しかし、熱により透明度又は色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体では、通常のレーザマーカーと同様にレーザを集光して画像を形成すると、レーザ照射部の中心部は温度が上がりすぎてしまい、画像の形成と消去とを繰り返すと、その部分が劣化し、繰返し回数が低下することとなる。また、中心部の温度を上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり画像コントラストの低下や画像形成に時間がかかってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特開2004−265249号公報
【特許文献3】特開2000−136022号公報
【特許文献4】特許第3350836号公報
【特許文献5】特許第3446316号公報
【特許文献6】特開2002−347272号公報
【特許文献7】特開2004−195751号公報
【特許文献8】特開2003−246144号公報
【特許文献9】特開2003−127446号公報
【特許文献10】特開2004−345273号公報
【特許文献11】特開2004−1264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱可逆記録媒体に対して、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制した画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下であることを特徴とする画像処理方法である。
<2> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であることを特徴とする画像処理方法である。
<3> 画像消去工程におけるレーザ光の照射スポット径が、画像形成工程におけるレーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍である前記<2>に記載の画像処理方法である。
<4> 樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、
前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする画像処理方法である。
<5> 熱可逆記録媒体における有機低分子物質が、樹脂中に粒子状に分散されてなり、該熱可逆記録媒体の透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する前記<4>に記載の画像処理方法である。
<6> 融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の有機低分子物質が、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤との発色混合物であり、
前記熱可逆記録媒体の色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する前記<4>に記載の画像処理方法である。
<7> 第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが、60秒間以内の間隔で行われる前記<4>から<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<8> 画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である前記<2>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度の1.03倍以下である前記<1>及び<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度よりも小さい前記<9>に記載の画像処理方法である。
<11> 前記<1>、<8>、<9>、及び<10>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
<12> 光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである前記<11>に記載の画像処理装置である。
【0011】
本発明の画像処理方法は、第1の態様では、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を形成する画像形成工程、及び前記熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
該画像処理方法では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるレーザ光が、前記熱可逆記録媒体に照射される。このため、従来のガウス分布のレーザ光を用いた場合と異なり、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化が抑制され、画像のサイズを小さくすることなく、高コントラストの画像が形成される。
【0012】
本発明の画像処理方法は、第2の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
該画像処理方法では、前記画像消去工程において、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4となるように、前記レーザ光が照射されて、前記熱可逆記録媒体における、隣接する第1の画像消去領域及び前記第2の画像消去領域に位置する画像が消去される。その結果、前記熱可逆記録媒体に形成された画像が、均一に、かつ短時間で消去される。
【0013】
本発明の画像処理方法は、第3の態様では、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、画像を形成する画像形成工程、及び、該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
該画像処理方法においては、前記画像形成工程において、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光が照射される。その結果、前記第1の画像形成領域へのレーザ光の照射領域と、前記第2の画像形成領域へのレーザ光の照射領域との重なり部分(境界部)にて、前記第1の画像形成領域に形成された画像が消去されることなく、高コントラストで均一性の良好な画像が得られる。
【0014】
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有する。
該画像処理装置においては、前記レーザ光出射手段が、レーザ光を出射する。前記光照射強度調整手段が、前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の光照射強度を変化させる。その結果、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となる。このように光照射強度が調整されたレーザ光を用いて、前記熱可逆記録媒体に画像を形成すると、画像の繰返し形成及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、熱可逆記録媒体に対して、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制した画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
本発明の前記画像処理方法においては、画像の形成及び消去の両方を行う態様、画像の形成のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
【0017】
<画像形成工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における前記画像形成工程は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に画像を形成する工程である。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する工程である。
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の形成及び消去を行うことができる。
なお、本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像形成工程により画像の形成を行うが、画像の形成及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像形成工程により画像を形成した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0018】
また、本発明の前記画像処理方法では、後述するように、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となっていればよく、前記画像形成工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている場合には、前記画像消去工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっていなくてもよく、レーザ光以外の熱源を用いてもよい。熱源の中でも、レーザ光を照射して加熱する場合、一本のレーザ光を走査して所定の面積全体に照射するのに時間を要することから、短時間で消去する場合には、赤外線ランプ、ヒートローラー、ホットスタンプ、ドライヤーなどを用いて加熱することにより消去するのが好ましい。また、物流ラインに用いる搬送用容器として発砲スチロール箱に前記熱可逆記録媒体を装備させた場合、該発泡スチロール箱自体が加熱されると溶融してしまうため、レーザ光を照射して前記熱可逆記録媒体のみを局所的に加熱することにより消去するのが好ましい。
また、前記画像消去工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている場合には、前記画像形成工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっていなくてもよく、例えば、熱源として、サーマルヘッドなどのレーザ光以外のものを用いてもよい。
【0019】
本発明の前記画像処理方法は、第1の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射される前記レーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
また、本発明の前記画像処理方法は、第2の態様では、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
更に、本発明の前記画像処理方法は、第3の態様では、前記熱可逆記録媒体が、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
【0020】
−第1の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第1の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射される前記レーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面(以下、「レーザ光の進行方向直交断面」と称することがある。)における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となるように、前記熱可逆記録媒体に対して前記レーザ光が照射される。
従来、レーザを用いて何らかのパターンを形成する場合には、レーザ光の進行方向直交断面の光分強度布はガウス分布となっており、光照射の中心部は周辺部に比して光照射強度が極端に強いものであった。このガウス分布のレーザ光を前記熱可逆記録媒体に照射すると、前記中心部では温度が上がりすぎて画像の形成と消去とを繰り返すとその部分が劣化し、繰り返し回数が低下することとなり、また中心部の温度を劣化する温度まで上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり、画像コントラストの低下や画像形成に時間がかかってしまうという問題があった。
そこで、本発明の前記画像処理方法では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光の進行方向直交断面の光分強度布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となるようにすることにより、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら画像のサイズを小さくすることなく、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性の向上を実現している。
【0021】
〔光強度分布における中心部及び周辺部〕
前記レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面の光強度分布における「中心部」は、該光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線において、下に凸の2つの最大ピークのピーク頂部に挟まれた領域に対応する部位を意味し、「周辺部」は、前記「中心部」を除く領域に対応する部位を意味する。
「中心部の光照射強度」は、前記中心部における光強度分布が曲線で表される場合には、そのピーク頂部であって、かつ光強度分布曲線の形状が上に凸であるときにはピークトップにおける光照射強度を、前記光強度分布曲線の形状が下に凸であるときにはピークボトムにおける光照射強度を、それぞれ意味する。また、前記光強度分布曲線が、上に凸及び下に凸の両方の形状を有する場合には、中心部内のより中央に近い部位に位置するピーク頂部の光照射強度を意味する。
また、前記中心部における光強度分布が直線で表される場合には、該直線の最高部における光照射強度を意味するが、この場合、前記中心部において、前記光照射強度は一定である(前記中心部における光強度分布が水平線で表される)のが好ましい。
一方、「周辺部の光照射強度」は、前記周辺部における光強度分布が、曲線及び直線のいずれで表される場合にも、その最高部における光照射強度を意味する。
【0022】
以下、前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を、図1A〜図1Eに示す。なお、図1A〜図1Eにおいて、それぞれ上側から順に、光強度分布を表す曲線、該光強度分布を表す曲線を1回微分した微分曲線(X’)、及び前記光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線(X’’)を表す。
図1A〜図1Dは、本発明の前記画像処理方法に用いられるレーザ光の光強度分布を示しており、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている。
一方、図1Eは、通常のレーザ光の光強度分布を示しており、該光強度分布は、ガウス分布しており、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度に比して、極端に強くなっている。
【0023】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布において、前記中心部と前記周辺部との光照射強度の関係としては、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下であることが必要であり、該同等以下とは、1.05倍以下であることを意味し、1.03倍以下が好ましく、1.0倍以下がより好ましく、前記中心部の光照射強度は、前記周辺部の光照射強度よりも小さい、即ち、1.0倍未満であるのが特に好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の1.05倍以下であると、前記中心部での温度上昇による前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。
一方、前記中心部の光照射強度の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記周辺部の光照射強度に対して0.1倍以上が好ましく、0.3倍以上がより好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の0.1倍未満であると、前記レーザ光の照射スポットにおける前記熱可逆記録媒体の温度が充分に上がらず、前記周辺部に比して前記中心部の画像濃度が低下したり、充分に消去できなくなったりすることがある。
【0024】
前記レーザ光を出射するレーザとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられる。
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を測定する方法としては、前記レーザ光が、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等から出射され、近赤外領域の波長を有する場合には、CCD等を用いたレーザビームプロファイラを用いて行うことができる。また、例えば、CO2レーザから出射され、遠赤外領域の波長を有する場合には、前記CCDを使用することができないため、ビームスプリッタとパワーメータとを組合せたもの、高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザなどを用いて行うことができる。
【0025】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光照射強度調整手段を好適に用いることができる。
前記光照射強度調整手段としては、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などが好ましい。また、フィルタ、マスクなどを用いる場合、前記レーザ光の中心部を物理的にカットすることにより光照射強度を調整することができる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記レンズとの間の距離を、焦点距離からずらすことにより光照射強度を調整することも可能であり、更に、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
なお、前記光照射強度調整手段による、光照射強度の調整方法については、後述する本発明の画像処理装置の説明において詳述する。
【0026】
−第2の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第2の態様では、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
該レーザ光照射位置の間隔が小さくなるほど、均一な温度に加熱され、画像を均一に消去することができるが、広範囲に形成された画像を消去する場合、長時間を要することとなる。一方、前記レーザ光照射位置の間隔が大きくなるほど、広範囲に形成された画像を消去することが可能となるので、短時間で消去を行うことができるが、前記レーザ光照射位置の間隔が大きくなり過ぎると、加熱が不均一となり消去不良が発生することがある。
本態様においては、隣接する前記第1の画像消去領域及び前記第2の画像消去領域への前記レーザ光照射位置の間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であるので、画像を均一に、かつ短時間で消去することができる。
【0027】
〔照射スポット径〕
一般に、レーザ光の出力ビームの進行方向直交断面の光強度分布は、略ガウス分布(ガウスビームの光強度分布)しており、該ガウスビームは、進行方向直交断面の光強度分布の形が、ビームの伝達位置によらず同一形状をしていることが大きな特徴である。該光強度分布は、下記式1で表され、中心強度の1/e2となる径が、照射スポット径(又はスポットサイズ、ビーム径等)と呼ばれ、図2Aに示すように、該照射スポット径に全光量の86.5%が含まれるが、図2Bに示すような光強度分布を有する前記画像処理方法の第1の態様では、中心強度の1/e2になる径ではなく、全光量の86.5%が含まれる径を、照射スポット径とする。
<式1>
I=2P/πw2・exp(−2r2/w2)・・・式1
前記式1中、rは、レーザ中心からの距離を表し、wは、レーザビームの半径(中心強度の1/e2)を表し、Pは、レーザのパワーを表す。
【0028】
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔としては、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、1/10以上が好ましく、1/8以上がより好ましい。また、上限としては、1/5以下が好ましい。
前記画像消去領域へのレーザ光照射位置の間隔を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するガルバノメータの一方を動かす間隔を制御する方法などが挙げられる。
ここで、画像消去後の画像消去領域の画像濃度としては、例えば、マクベス濃度計(RD914)を用いて測定した画像濃度が、前記熱可逆記録媒体が温度に依存して透明度が可逆的に変化する場合、1.60以上であるのが好ましく、前記熱可逆記録媒体が温度に依存して色調が可逆的に変化する場合、0.09以下であるのが好ましい。この場合、画像が完全に消去されたと認められる。なお、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて測定する。
【0029】
また、前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍であるのが好ましい。
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径が、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して38倍を超えると、一定の温度まで加熱するために必要なレーザ出力が大きくなり、装置の大型化を招くことがある。また、該レーザ出力を大きくすることなく一定の温度まで加熱するために走査速度を遅くすると、画像の消去に時間がかかることとなる。
【0030】
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、大きくなるほど、広範囲に形成された画像を均一に、しかも短時間で消去することができる点で好ましく、その下限としては、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して1.5倍以上がより好ましく、2倍以上が更に好ましく、3倍以上が特に好ましい。
一方、前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径の上限としては、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して35倍以下がより好ましく、20倍以下が更に好ましい。
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、具体的には、1.7〜6.9mmが好ましく、2.0〜6.0mmがより好ましい。一方、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径は、0.18〜1.5mmが好ましい。
【0031】
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径を、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍に変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、fθレンズ又は前記熱可逆記録媒体をレーザ光照射方向に動かすことにより、画像形成用及び画像消去用のレーザ光の照射スポット径を変化させる方法、スキャンニングユニット、fθレンズ等の光学系を2系統備え、同一の光共振器を用いて光路を切り替える方法、画像形成用と画像消去用との2つの記録装置を用いて行う方法、などが挙げられる。
【0032】
本発明の前記画像処理方法の前記第2の態様においても、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるのが好ましい。この場合、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
また、前記レーザ光の走査速度を上昇させても、前記熱可逆記録媒体が均一に加熱されるため、更に短時間で画像を消去することができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、上述した通りである。
【0033】
−第3の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第3の態様では、前記熱可逆記録媒体が、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
【0034】
前記画像形成工程において、前記レーザ光を走査させて画像を形成する場合、1回の走査により形成可能な線幅よりも太い線幅を形成する必要があるときには、1回目の走査により形成した線と隣接する部分に、2回あるいはそれ以上の回数でレーザ光を走査させることが必要となる。その際、1回目の走査により画像が形成された後、該画像と隣接する部分に2回目の走査をすると、1回目の走査位置と2回目の走査位置との間に画像形成温度よりも低い画像消去温度領域が発生し、1回目の走査で形成した画像の一部を消去してしまい、画像均一性及び画像濃度が低下するという問題があった。これは温度の違いで画像の形成と消去とを行なう熱可逆記録媒体の原理的な問題であった。
そこで、本発明者等は、前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを鋭意検討した結果、画像形成のために1回目の走査によりレーザ光を照射し、該熱可逆記録媒体を加熱して可逆性感熱記録層(記録層)中の前記有機低分子物質を融解した後、該有機低分子物質が結晶化する前に、1回目の走査により形成した画像と隣接する部分に、2回目の走査によりレーザ光を照射すると、前記1回目の走査と前記2回目の走査とによる前記レーザ光の照射領域の境界部にて、前記1回目の走査により形成した画像が消去されず、濃度が高く均一性の良好な画像が得られることを見出し、本発明の前記画像処理方法の第3の形態を完成するに至った。
【0035】
<画像形成及び消去メカニズム>
前記画像形成及び消去メカニズムには、温度に依存して透明度が可逆的に変化する態様と、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様とがある。
前記透明度が可逆的に変化する態様では、前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子が、前記樹脂中に粒子状に分散されてなり、前記透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する。
前記透明度の変化の視認は、下記現象に由来する。即ち、(1)透明状態の場合、樹脂母材中に分散された前記有機低分子物質の粒子と、前記樹脂母材とは隙間なく密着しており、また、前記粒子内部にも空隙が存在しないため、片側から入射した光は散乱することなく反対側に透過し、透明に見える。一方、(2)白濁状態の場合、前記有機低分子物質の粒子は、前記有機低分子物質の微細な結晶で形成されており、該結晶の界面又は前記粒子と前記樹脂母材との界面に隙間(空隙)が生じ、片側から入射した光は前記空隙と前記結晶との界面、あるいは前記空隙と前記樹脂との界面において屈折し散乱するため、白く見える。
【0036】
まず、図3Aに、前記樹脂中に前記有機低分子物質が分散されてなる可逆性感熱記録層(以下、「記録層」と称することがある。)を有する熱可逆記録媒体について、その温度−透明度変化曲線の一例を示す。
前記記録層は、例えば、T0以下の常温では、白濁不透明状態(A)である。これを加熱していくと、温度T1から徐々に透明になり始め、温度T2〜T3に加熱すると透明(B)となり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明(D)のままである。これは、温度T1付近から前記樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれて該樹脂が収縮し、該樹脂と前記有機低分子物質粒子との界面、あるいは前記粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T2〜T3では、前記有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を、前記有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されると比較的高温で結晶化し、その際、前記樹脂がまだ軟化状態にあるため、結晶化に伴う粒子の堆積変化に前記樹脂が追随し、前記空隙が生じず、透明状態が維持されるためであると考えられる。
更にT4以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態(C)になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態になることなく、最初の白濁不透明状態(A)に戻る。これは、温度T4以上で前記有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、T0より少し高い温度で結晶化し、その際、前記樹脂が結晶化に伴う体積変化に追随することができず、空隙が発生するためであると考えられる。
ただし、図3Aに示す温度−透明度変化曲線は、前記樹脂、前記有機低分子物質等の種類を変えると、その種類に応じて、各状態の透明度に変化が生じることがある。
【0037】
また、透明状態と白濁状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の透明度変化メカニズムを図3Bに示す。
図3Bでは、1つの長鎖低分子粒子と、その周囲の高分子とを取り出し、加熱及び冷却に伴う空隙の発生及び消失変化を図示している。白濁状態(A)では、高分子と低分子粒子との間(又は粒子内部)に空隙が生じ、光散乱状態となっている。これを加熱し、前記高分子の軟化点(Ts)を超えると、空隙は減少して透明度が増加する。更に加熱し、前記低分子粒子の融点(Tm)近くになると、該低分子粒子の一部が溶融し、溶融した低分子粒子の体積膨張のため、空隙に前記低分子粒子が充満して空隙が消失し、透明状態(B)となる。ここから冷却すると、融点直下で前記低分子粒子は結晶化し、空隙は発生せず、室温でも透明状態(D)が維持される。
次に、前記低分子粒子の融点以上に加熱すると、溶融した低分子粒子と周囲の高分子との屈折率にズレが生じ、半透明状態(C)となる。ここから室温まで冷却すると前記低分子粒子は過冷却現象を生じ高分子の軟化点以下で結晶化し、このとき前記高分子はガラス状態となっているため、前記低分子粒子の結晶化に伴う体積減少に、周囲の高分子が追随できず、空隙が発生して元の白濁状態(A)に戻る。
以上より、前記有機低分子物質が結晶化する前に画像消去温度に加熱されても、前記有機低分子物質は溶融状態であるため、過冷却状態となり、前記樹脂が前記有機低分子物質の結晶化に伴う体積変化に追随できず、空隙が発生するため、白濁状態になると考えられる。
【0038】
次に、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様では、融解前の前記有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある。)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図4Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる可逆性感熱記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図4Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図4Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
以上より、前記顕色剤が融解して前記ロイコ染料と形成した前記発色混合物が結晶化する前に、画像消去温度に加熱されると、前記ロイコ染料と前記顕色剤との分離が妨げられ、結果として、発色状態を維持すると考えられる。
【0039】
前記第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、前記第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが行われる間隔(時間間隔)としては、特に制限はなく、前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができるが、60秒間以内が好ましく、10秒間以内がより好ましく、1.0秒間以内が更に好ましく、0.1秒間以内が特に好ましい。
前記間隔(時間間隔)が、60秒間を超えると、前記有機低分子物質が結晶化してしまい、前記第1の画像形成領域に形成された画像と、前記第2の画像形成領域に形成された画像との境界部に、画像濃度の低い部分が発生し、均一な画像が得られないことがある。
【0040】
前記有機低分子物質が融解しており、かつ結晶化前の状態であることを確認する方法、及び前記有機低分子物質が融解した後、結晶化するまでの時間の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直線画像を形成した後、所定時間後に該直線画像に対して垂直方向に重なるように直線画像を形成し、これらの交点部が消去されているかどうかを判断することにより行うことができる。該交点部が消去されている場合、前記有機低分子物質が結晶化していると認められる。
前記交点部が消去されているとは、例えば、マクベス濃度計(RD914)を用い、前記交点部を含む直線画像の画像濃度を連続的に測定し、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、画像濃度が1.2以上、前記熱可逆記録媒体の色調が可逆的に変化する態様では、画像濃度が0.5以下であることを意味する。なお、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて測定する。
また、前記熱可逆記録媒体をX線解析することにより、結晶化しているかどうかを確認することもできる。前記有機低分子物質が結晶化している場合、前記有機低分子物質の種類に応じて独自の結晶構造を示し、X線解析によりその結晶構造に対応する散乱ピークを検出することができる。該散乱ピーク位置については、前記有機低分子物質単独のX線解析を行なうことにより、容易に確認することができる。また、X線解析装置によっては、温度を変化させながら測定することも可能であるので、前記有機低分子物質を加熱溶融させた後、該有機低分子物質の結晶化の過程を確認することができる。
【0041】
前記レーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。
前記走査速度が、300mm/s未満であると、前記有機低分子物質が結晶化してしまい、前記第1の画像形成領域に形成された画像と、前記第2の画像形成領域に形成された画像との境界部に、画像濃度の低い部分が発生し画像濃度の不均一が生じることがある。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。
前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなることがある。
【0042】
また、本発明の前記画像処理方法の前記第3の態様においても、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるのが好ましい。この場合、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、上述した通りである。
【0043】
[熱可逆記録媒体]
本発明の前記画像処理方法に用いられる前記熱可逆記録媒体は、支持体と、可逆性感熱記録層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、中間層、アンダーコート層、バック層、光熱変換層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0044】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0046】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000μmが好ましく、50〜1,000μmがより好ましい。
【0047】
−可逆性感熱記録層−
前記可逆性感熱記録層(以下、単に「記録層」と称することがある。)は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料は、温度変化により、目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。この場合、目に見える変化は、色の状態の変化と形状の変化とに分けられる。該色の状態の変化は、例えば、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化に起因し、前記熱可逆記録媒体は、実際には、これらの変化の組合せにより色の状態が変化する。
【0048】
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリマーを2種以上混合し、その相溶状態の違いで透明及び白濁に変化するもの(特開昭61−258853号公報参照)、液晶高分子の相変化を利用したもの(特開昭62−66990号公報参照)、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となるもの、等が挙げられる。
これらの中でも、温度制御しやすく、高コントラストが得られる点で、前記第一の特定温度と第二の特定温度とで色の状態が変化するものが特に好ましい。
例えば、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後、冷却することにより第二の色の状態となるもの、更に前記第二の特定温度よりも高い第三の特定温度以上で加熱するもの等が挙げられる。
【0049】
これらの例としては、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特開昭55−154198号公報参照)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報等参照)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特開平3−169590号公報参照)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特開平2−188293号、特開平2−188294号公報等参照)などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂母材と該樹脂母材中に分散させた高級脂肪酸等の有機低分子物質とからなる熱可逆記録媒体は、第二の特定温度及び第一の特定温度が比較的低く、低エネルギーでの消去印字が可能な点で有利である。また、発消色メカニズムが、樹脂の固化と有機低分子物質の結晶化とに依存する物理変化であるため、耐環境性に強い特性がある。
また、後述するロイコ染料と可逆性顕色剤とを用いた、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色する熱可逆記録媒体は、透明状態と発色状態とを可逆的に示し、発色状態では、黒、青、その他の色を示すため、高コントラストな画像を得ることができる。
【0050】
前記画像処理方法の第3の態様で用いられる熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質(樹脂母材中に分散され、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの)としては、前記録層中で、熱により多結晶から単結晶に変化するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に、融点30〜200℃程度のものを使用することができ、融点50〜150℃のものが好適である。
このような有機低分子物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノール又はハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ若しくはジカルボン酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和又は不飽和ハロゲン脂肪酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリールカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸及びそれらのエステル、アミン又はアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの化合物の炭素数としては、10〜60が好ましく、10〜38がより好ましく、10〜30が特に好ましい。エステル中のアルコール基部分は、飽和していてもよいし飽和していなくてもよく、ハロゲン置換されていてもよい。
また、前記有機低分子物質は、その分子中に、酸素、窒素、硫黄及びハロゲンから選択される少なくとも1種、例えば、−OH、−COOH、−CONH−、−COOR、−NH−、−NH2、−S−、−S−S−、−O−、ハロゲン原子等を含んでいるのが好ましい。
更に具体的には、これらの化合物としては、例えば、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル等の高級脂肪酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、前記画像処理方法の第3の態様で用いられる有機低分子物質としては、高級脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0052】
前記熱可逆記録媒体を透明化することができる温度範囲の幅を拡げるためには、上述した各種有機低分子物質を適宜組み合わせて使用してもよいし、該有機低分子物質と融点の異なる他の材料とを組み合わせて使用してもよい。これらは、例えば、特開昭63−39378号、特開昭63−130380号等の公報、特願昭63−14754号、特許第2615200号等の明細書に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0053】
前記樹脂母材は、前記有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える。このため、該樹脂母材としては、透明性が高く、機械的安定性を有し、かつ成膜性の良好な樹脂であるのが好ましい。
このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン;塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート若しくはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコン樹脂;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記記録層における、前記有機低分子物質と前記樹脂(樹脂母材)との割合は、質量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8がより好ましい。
前記樹脂の比率が、2:1よりも小さいと、前記有機低分子物質を前記樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となることがあり、1:16よりも大きくなると、前記有機低分子物質の量が少ないため、前記記録層の不透明化が困難になることがある。
【0055】
前記記録層には、前記有機低分子物質及び前記樹脂のほか、透明画像の形成を容易にするために、高沸点溶剤、界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。
前記高沸点溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、オレイン酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0056】
前記界面活性剤及びその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール高級脂肪酸エステル;多価アルコール高級アルキルエーテル;多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級アルコール、高級アルキルフェノール、高級脂肪酸高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、油脂又はポリプロピレングリコールの低級オレフィンオキサイド付加物;アセチレングリコール;高級アルキルベンゼンスルホン酸のNa、Ca、Ba又はMg塩;高級脂肪酸、芳香族カルボン酸、高級脂肪酸スルホン酸、芳香族スルホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノ−若しくはジ−エステルのCa、Ba又はMg塩;低度硫酸化油;ポリ長鎖アルキルアクリレート;アクリル系オルゴマー;ポリ長鎖アルキルメタクリレート;長鎖アルキルメタクリレート−アミン含有モノマー共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;オレフィン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0057】
前記記録層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の2成分を溶解した溶液、又は、前記樹脂母材の溶液(溶剤としては、前記有機低分子物質から選択される少なくとも1種を不溶なもの)に前記有機低分子物質を微粒子状に分散させた分散液を、例えば、前記支持体上に塗布及び乾燥させることにより行うことができる。
前記記録層の作製用溶剤としては、特に制限はなく、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。なお、前記分散液を使用した場合はもちろん、前記溶液を使用した場合も、得られる記録層中では前記有機低分子物質は微粒子として析出し、分散状態で存在する。
【0058】
前記画像処理方法の第3の態様で用いられる熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質は、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなり、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するものであってもよい。
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0059】
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行なうことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は、11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0060】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【0061】
【化1】
【化2】
前記一般式(1)及び(2)中、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0062】
前記可逆性顕色剤は、消色促進剤として、分子中に、−NHCO−基、及び−OCONH−基を少なくとも1つ有する化合物を併用するのが好ましい。この場合、消色状態を形成する過程において、前記消色促進剤と前記可逆性顕色剤との間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上する。
【0063】
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記一般式(3)〜(9)で表わされる化合物などが好適に挙げられる。
【0064】
【化3】
前記一般式(3)〜(9)において、前記R1、前記R2、及び前記R4は、炭素数7〜22の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、又は不飽和アルキル基を表す。前記R3は、炭素数1〜10のメチレン基を表す。前記R5は、炭素数4〜10の3価の官能基を表す。
【0065】
前記ロイコ染料と、前記可逆性顕色剤との混合割合としては、使用する化合物の組合せにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、概ねモル比で、前記ロイコ染料1に対して前記可逆性顕色剤が0.1〜20であるのが好ましく、0.2〜10がより好ましい。
前記可逆性顕色剤が、0.1未満である場合、及び20を超える場合には、発色状態の濃度が低下することがある。
また、前記消色促進剤を添加する場合、その添加量は、前記可逆性顕色剤に対して0.1〜300質量%が好ましく、3〜100質量%がより好ましい。
なお、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤とは、マイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0066】
前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなる場合、前記可逆性感熱記録層は、これらの成分以外に、バインダー樹脂、架橋剤等を含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
【0067】
前記バインダー樹脂としては、前記支持体上に前記記録層を結着することができれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から適宜選択した1種又は2種以上の樹脂を混合して用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線等によって硬化可能な樹脂が好ましく、イソシアネート系化合物等を架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が特に好適である。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等の架橋剤と反応する基を有する樹脂、又は水酸基、カルボキシル基等を有するモノマーとそれ以外のモノマーとを共重合させた樹脂、などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0068】
前記アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、カルボン酸基を有する不飽和単量体、水酸基を有する不飽和単量体、及びその他のエチレン性不飽和単量体とを用い、公知の溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等に従って合成することができる。
【0069】
前記水酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4−ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが挙げられる。これらの中でも、第1級水酸基を有するモノマーを使用すると、塗膜のワレ抵抗性や耐久性が良好なことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0070】
前記記録層中における前記ロイコ染料と前記バインダー樹脂との混合割合(質量比)としては、前記ロイコ染料1に対して、0.1〜10が好ましい。
前記バインダー樹脂が、0.1未満であると、前記記録層の熱強度が不足することがあり、10を超えると、発色濃度が低下することがある。
【0071】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0072】
前記イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はこれらのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、又はブロック化イソシアネート類等が挙げられる。
【0073】
前記架橋剤の前記バインダー樹脂に対する添加量としては、前記バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する前記架橋剤の官能基の比で、0.01〜2が好ましい。
前記官能基の比が、0.01未満であると、熱強度が不足することがあり、2を超えると、発色及び消色特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0074】
更に、架橋促進剤として、この種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記架橋促進剤としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン類、有機スズ化合物等の金属化合物などが挙げられる。
前記熱架橋した場合の前記熱硬化性樹脂のゲル分率としては、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0075】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0076】
前記記録層におけるその他の成分としては、塗布特性や発色及び消色特性を改善したり制御するための各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0077】
前記界面活性剤、前記可塑剤等は、画像の形成を容易にする観点から用いられる。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。
【0078】
前記記録層を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を、溶媒中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(2)前記バインダー樹脂のみを溶解した溶媒に、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記バインダー樹脂と前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。
なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。また、前記記録層用塗布液は分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各々単独で溶媒中に分散させて混ぜ合わせてもよく、加熱溶解した後、急冷又は徐冷することによって材料を析出させてもよい。
【0079】
前記記録層の作製方法における、(1)又は(2)において用いる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤の種類等によって異なり、一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0080】
前記記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した前記支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等の公知の方法を用いて行うことができる。
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、1μm未満であると、発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、20μmを超えると、層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、所望の発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0081】
−保護層−
前記保護層は、前記記録層を保護する目的で、該記録層上に設けられるのが好ましい。
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数層に形成してもよいが、露出している層の最表面に設けるのが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0082】
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、などが好適に挙げられる、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るものの、同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
【0083】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマー;各種単官能又は多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマー;などが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することにより、樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0084】
前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが必要である。
前記光重合開始剤は、ラジカル反応型とイオン反応型とに大別でき、更に、該ラジカル反応型は、光開裂型と水素引抜き型とに分けられる。
【0085】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシシカルボニル)オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記光重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の水素引抜きタイプの光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果を有するものが好ましく、例えば、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系、などが挙げられる。具体的には、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
前記光重合開始剤及び前記光重合促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0088】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線の照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行なうことができ、該紫外線照射装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものなどが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。
前記光源から出射される光の波長としては、特に制限はなく、前記記録層に含まれる光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を適宜決定すればよい。
【0089】
また、良好な搬送性の確保を目的として、重合性基を有するシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シリコーンオイル等の滑剤などを添加することができる。
これらの添加量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましい。
前記添加量は、わずかでも効果を発現することはできるが、0.01質量%未満であると、添加による効果が得られ難くなることがあり、50質量%を超えると、下層との接着性に問題が生じる場合がある。
また、前記保護層中には、有機紫外線吸収剤を含有していてもよく、その含有量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.5〜10質量%が好ましい。
【0090】
更に、搬送性を向上させるために、無機フィラー、有機フィラーなどを添加してもよい。
前記無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、静電気対策として、導電性フィラーを用いるのが好ましく、該導電性フィラーとしては、針状のものを用いるのがより好ましい。
前記導電性フィラーとしては、アンチモンドープ酸化スズで表面が被覆されている酸化チタンが特に好適に挙げられる。
前記無機フィラーの粒径としては、例えば、0.01〜10.0μmが好ましく、0.05〜8.0μmがより好ましい。
前記無機フィラーの添加量としては、前記保護層のバインダー樹脂1質量部に対し、0.001〜2質量部が好ましく、0.005〜1質量部がより好ましい。
【0091】
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0092】
前記熱硬化性樹脂は、架橋されているのが好ましい。従って、該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の、硬化剤と反応する基を有しているものが好ましく、水酸基を有しているポリマーが特に好ましい。
前記保護層の強度を向上させるためには、充分な塗膜強度が得られる点で、前記熱硬化性樹脂の水酸基価が、10以上であるのが好ましく、30以上がより好ましく、40以上が更に好ましい。充分な塗膜強度を付与することにより、繰返し消去及び印字を行っても、前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えることができる。
前記硬化剤としては、例えば、前記記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に使用することができる。
【0093】
また、前記保護層は、添加剤として、従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
更に、紫外線吸収構造を有するポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することがある。)を用いてもよい。
ここで、前記紫外線吸収構造を有するポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。
前記紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられる。これらの中でも、耐光性が良好な点で、ベゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収構造を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルとからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルとからなる共重合体、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノンとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとスチレンとメタクリル酸メチルとメタクリル酸プロピルとからなる共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。なお、前記紫外線硬化樹脂を用いる場合には、塗布して乾燥を行なった後、紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件等については上述の通りである。
【0095】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1.5〜6μmが更に好ましい。
前記厚みが、0.1μm未満であると、前記熱可逆記録媒体の保護層としての機能を充分に発揮することができず、熱による繰返し履歴により、すぐに劣化し、繰返し使用することができなくなることがあり、20μmを超えると、前記保護層の下層にある記録層に充分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像の印字と消去とが充分にできなくなることがある。
【0096】
−中間層−
前記中間層は、前記記録層と前記保護層との接着性向上、前記保護層の塗布による前記記録層の変質防止、前記保護層中の添加剤の前記記録層への移行の防止、などを目的として、両者の間に設けられるのが好ましい。この場合、発色画像の保存性を改善することができる。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0097】
前記中間層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層におけるバインダー樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネー ト、ポリアミドなどが挙げられる。
【0098】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機系化合物及び無機系化合物のいずれをも用いることができる。
【0099】
前記有機系化合物(有機系紫外線吸収剤)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、ケイ皮酸系の紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系が好ましい。
前記ベンゾトリアゾール系の中でも、水酸基を隣接する嵩高い官能基で保護したものが特に好ましく、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が好適に挙げられる。また、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の共重合した高分子に、このような紫外線吸収能を有する骨格のものをペンダントしてもよい。
前記有機系紫外線吸収剤の含有量としては、前記中間層の樹脂成分全質量に対し、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
【0100】
前記無機系化合物(無機系紫外線吸収剤)としては、平均粒径100nm以下の金属系化合物が好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の金属酸化物又はこれらの複合酸化物;硫化亜鉛、硫酸バリウム等の金属硫化物又は硫酸化合物;チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイド等の金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウム等の金属窒化物;などが挙げられる。これらの中でも、金属酸化物系超微粒子が好ましく、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムがより好ましい。なお、これらの表面は、シリコーン、ワックス、有機シラン、又はシリカ等で処理されていてもよい。
前記無機系紫外線吸収剤の含有量としては、体積分率で、1〜95%が好ましい。
【0101】
なお、前記有機系及び無機系紫外線吸収剤は、前記記録層に含有させてもよい。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いるものと同様のものを好適に使用することができる。
前記中間層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。
【0102】
−アンダー層−
印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は前記支持体と前記記録層との接着性の改善や前記支持体への前記記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体との間に、アンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、中空粒子を少なくとも含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0103】
前記中空粒子としては、例えば、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。
前記空隙粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製)、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜80質量%が好ましい。
【0104】
前記アンダー層のバインダー樹脂としては、前記記録層、又は前記紫外線吸収構造を有するポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましく、12〜24μmが更に好ましい。
【0105】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために、前記支持体の前記記録層を設ける面と反対側に、バック層を設けてもよい。
前記バック層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0106】
前記バック層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂については、前記記録層、前記保護層、及び前記中間層で用いられるものと同様なものを好適に用いることができる。また、前記フィラー、前記導電性フィラー、前記滑剤についても同様である。
【0107】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、レーザ光を吸収し発熱する機能を有する。
前記光熱変換層は、レーザ光を吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700〜1,500nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。繰返し印字及び消去を繰り返すためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、前記記録層中に混ぜ込んでもよい。この場合、前記記録層は、前記光熱変換層を兼ねることとなる。
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましい。
【0108】
−接着層及び粘着層−
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0109】
前記接着層及び前記粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。また、剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように前記接着層又は前記粘着層を設けることにより、前記記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカード等の厚手の基板の全面若しくは一部に、前記記録層を貼ることができる。これにより、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、前記熱可逆記録媒体の利便性が向上する。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手カードにも好適である。
【0110】
−着色層−
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0111】
前記着色層は、カラー印刷層とすることができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0112】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用していてもよい。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0113】
−熱可逆記録媒体の形状及び用途−
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、印字する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0114】
−熱可逆記録部材 RF−IDとの組合せ例−
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0115】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適な例としては、RF−IDタグが挙げられる。
図5は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行なっている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行なう。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行なう。
【0116】
前記RF−IDタグは、ラベル状又はカード状に加工されており、該RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。前記RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼るのが好ましい。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0117】
前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとを組み合わせた前記熱可逆記録部材の工程管理での使い方の一例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行なうためのリーダ・ライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行なう制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去印字を行なうことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【0118】
(画像処理装置)
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光照射手段と、光照射強度調整手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
【0119】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段としては、レーザ光を照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)など、通常用いられるレーザが挙げられる。
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視領域から赤外領域が好ましく、画像コントラストが向上する点で、近赤外領域から遠赤外領域がより好ましい。
前記可視領域では、前記熱可逆記録媒体の画像形成及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加剤が着色するため、コントラストが低下することがある。
【0120】
前記CO2レーザから出射されるレーザ光の波長は、遠赤外領域の10.6μmであり、前記熱可逆記録媒体が該レーザ光を吸収するため、前記熱可逆記録媒体に対する画像の形成及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加物を添加することが不要となる。また、該添加物は、近赤外領域の波長を有するレーザ光を用いても、若干ではあるが、可視光をも吸収することがあるため、該添加物が不要となる前記CO2レーザは、画像コントラストの低下を防ぐことができるという利点がある。
【0121】
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記LDから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、現状の熱可逆記録媒体は、その波長領域のレーザ光を吸収しないため、レーザ光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料の添加が必要となるが、波長が短いため高精細画像の形成が可能であるという利点がある。
また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像の形成及び消去速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記LDはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。
【0122】
−光照射強度調整手段−
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の光照射強度を変化させる機能を有する。
前記光照射強度調整手段の配置態様としては、前記レーザ光照射手段における前記レーザ光出射面に配置される限り特に制限はなく、前記レーザ光照射手段との距離等については、目的に応じて適宜選択することができる。
【0123】
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる機能を有するのが好ましい。画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、本発明の上記画像処理方法の説明において上述した通りである。
【0124】
前記光照射強度調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、例えば、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などを好適に使用することができ、また、物理的にフィルタ、マスク等で前記レーザ光の中心部をカットすることにより光照射強度を調整することもできる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
更に、前記熱可逆記録媒体とfθレンズとの間の距離を調整することにより、前記中心部の光照射強度を、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させることもできる。即ち、前記熱可逆記録媒体と前記fθレンズとの間の距離を、焦点距離からずらしていくと、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布が、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が低下した分布に変化させることができる。
更にレーザ光源として、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
【0125】
前記光照射強度調整手段として、非球面ビームシェイパーを用いた、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
例えば、強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せを用いる場合には、図6Aに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、2枚の非球面レンズを配設する。そして、1枚目の非球面レンズL1により、目的とする位置(距離l)にて、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図6Aでは、フラットトップ形状)となるように、強度変換する。その後、強度変換されたビーム(レーザ光)を平行伝搬させるために、2枚目の非球面レンズL2で位相の補正を行う。その結果、前記ガウス分布した光強度分布を変化させることができる。
また、図6Bに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、強度変換レンズLのみを配設してもよい。この場合、ガウス分布した入射ビーム(レーザ光)について、強度の強い部分(内部)は、X1に示すように、ビームを拡散させ、逆に強度の弱い部分(外部)は、X2に示すように、ビームを収束させることにより、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図6Bでは、フラットトップ形状)となるように変換することができる。
更に、前記光照射強度調整手段として、ファイバーカップリングした半導体レーザとレンズとの組合せによる、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
ファイバーカップリングした半導体レーザでは、レーザ光がファイバー中を反射を繰り返しながら伝搬していくため、ファイバー端より出射するレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布とは異なり、前記ガウス分布と前記フラットトップ形状との中間に相当するような光強度分布となる。このような光強度分布を、前記フラットトップ形状となるように、ファイバー端に集光光学系として複数枚の凸レンズ及び/又は凹レンズを組み合わせたものを取り付ける。すると、前記熱可逆記録媒体までの距離が、焦点距離である場合には、前記フラットトップ形状が得られるが、該焦点距離から若干位置がずれると、得られるレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布となり、更に、前記熱可逆記録媒体までの距離が、焦点距離から大きく異なる位置では、図1Dに示すような、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度よりも小さい光強度分布となる。このときの前記中心部の光照射強度は、前記熱可逆記録媒体までの距離を変化させることにより容易に調整することができる。
【0126】
本発明の前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段及び前記光強度調整手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
ここで、図7に、本発明の画像処理装置の一例を、レーザ照射ユニットを中心に示す。
【0127】
図7に示す画像処理装置は、出力40WのCO2レーザを有するレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)の光路中に、前記光照射強度調整手段として、レーザ光の中心部をカットするマスク(不図示)を組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を、前記周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が変化するように調整可能としている。
なお、レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分の仕様は、可能レーザ出力範囲:0.1〜40W、照射距離可動範囲:特に限定なし、スポット径範囲:0.18〜10mm、スキャンスピード範囲:max 12,000mm/s、照射距離範囲:110mm×110mm、焦点距離:185mmである。
【0128】
前記発振器ユニットは、レーザ発振器10、ビームエキスパンダ12、スキャンニングユニット15、及びfθレンズ16等などで構成されている。
前記レーザ発振器10は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット15は、ガルバノメータ14と、該ガルバノメータ14に取り付けられたミラー14Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器10から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ14に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー14Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体S上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記fθレンズ16は、前記ガルバノメータ14に取り付けられたミラー14Aによって等角速度で回転走査されたレーザ光を、前記熱可逆記録媒体の平面上で等速度運動させるレンズである。
【0129】
前記電源制御ユニットは、放電用電源(CO2レーザの場合)又はレーザ媒質を励起する光源の駆動電源(YAGレーザなど)、ガルバノメータの駆動電源、ペリチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
【0130】
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の形成又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作成及び編集を行なうユニットである。
【0131】
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を当然に有している。
【0132】
本発明の前記画像処理方法及び前記画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高いコントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。このため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び記録を行うことができる。
また、前記画像処理装置は、レーザ光の光照射強度を変化させる前記光照射強度調整手段を有しているので、画像の繰返し形成及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0134】
(実施例1)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して色調が可逆的(透明状態−発色状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0135】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0136】
−アンダー層−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱及び乾燥して、膜厚20μmのアンダー層を形成した。
【0137】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価:200)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0138】
(可逆性顕色剤)
【化4】
【0139】
(消色促進剤)
【化5】
【化6】
【0140】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、下記構造式(4)で表されるフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX565)0.2質量部、光熱変換材料(日本触媒社製、イーエクスカラーIR−14)0.03重量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
【0141】
【化7】
【0142】
次に、得られた記録層用塗布液を、前記アンダー層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、膜厚約11μmの記録層を形成した。
【0143】
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、及び前記記録層が形成された支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、膜厚約2μmの中間層を形成した。
【0144】
−保護層−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌して平均粒径が約3μmになるまで分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、前記記録層、及び前記中間層が形成された支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmの保護層を形成した。
【0145】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体における、これらの層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmのバック層を形成した。
以上により、熱可逆記録媒体を作製した。
【0146】
<画像形成工程>
レーザとして、集光光学系f100を装備した140Wのファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置(イエナオプティック社製、NBT−S140mkII、中心波長:808nm、光ファイバコア径:600μm、NA:0.22)を用い、レーザ出力12W、照射距離91.4mm、スポット径約0.6mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、レーザ出力が0.01%以下となるように、NDフィルター(「NG10」;デューマオプトロニクス社製)を5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図8に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Bで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.05倍となっていることが判った。
【0147】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力15W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
このとき、同様にしてレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図10に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.6倍となっていることが判った。
【0148】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0149】
(実施例2)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力25W、照射距離88.0mm、スポット径2.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、図9に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.7倍となっていることが判った。
【0150】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、実施例1と同様の条件にて、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0151】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0152】
(実施例3)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力35W、照射距離86.0mm、スポット径3.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、図10に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.6倍となっていることが判った。
【0153】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、実施例1と同様の条件にて、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0154】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0155】
(実施例4)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例1において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0156】
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ光の光路中に、該レーザ光の中心部をカットするマスクを組み込んだ。そして、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.5倍となるように調整した。
次いで、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力6.5W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
【0157】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に形成された前記画像を消去した。
【0158】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0159】
(実施例5)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して透明度が可逆的(透明状態−白濁状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0160】
−支持体−
支持体として、厚み175μmの透明PETフィルム(東レ社製、ルミラー175−T12)を用いた。
【0161】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン社製、M110)26質量部を、メチルエチルケトン210質量部に溶解させた樹脂溶解液中に、下記構造式(5)で表される有機低分子物質3質量部、及びベヘン酸ドコシル7質量部を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)を用い48時間分散し、均一な分散液を調製した。
【0162】
(有機低分子物質)
【化8】
【0163】
次に、得られた分散液に、光熱変換材料(日本触媒社製、イーエクスカラーIR−14)0.07重量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネート2298−90T)4質量部を添加し、感熱記録層液を調製した。
次に、前記支持体(磁気記録層を有するPETフィルムの接着層)上に、得られた感熱記録層液を塗布し、加熱及び乾燥した後、更に65℃環境下に24時間保存して樹脂を架橋させ、約10μm厚の感熱記録層を設けた。
【0164】
−保護層−
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75%酢酸ブチル溶液10質量部(大日本インキ化学工業社製、ユニディックC7−157)、及びイソプロピルアルコール10質量部よりなる溶液を、ワイヤーバーで前記感熱記録層上に塗布し、加熱及び乾燥した後、80w/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約3μm厚の保護層を形成した。
以上により、熱可逆記録媒体を作製した。
【0165】
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力20W、照射距離88.0mm、スポット径2.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光した。レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、実施例2と同様、図9に示す光強度分布曲線が得られ、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.7倍となっていることが判った。
【0166】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力12W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0167】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0168】
(実施例6)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力10.4W、照射距離195mm、線幅0.5mm、スポット径約0.9mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.04倍となるような光強度分布であった。
【0169】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0170】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0171】
(実施例7)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力16.0W、照射距離200mm、線幅0.7mm、スポット径約1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.03倍となるような光強度分布であった。
【0172】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0173】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて200回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0174】
(実施例8)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力7.5W、照射距離195mm、線幅0.5mm、スポット径約1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例5で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、実施例6と同様な光強度分布であった。
【0175】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力13W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0176】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて200回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0177】
(実施例9)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4と同様にして、直線状の画像を形成した。
【0178】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃にて1秒間加熱して画像を消去した。
【0179】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0180】
(比較例1)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例1のファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力12W、照射距離92.0mm、スポット径約0.6mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図11に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Eで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.3倍となっていることが判った。
【0181】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃で1秒間加熱して画像を消去した。
【0182】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、30回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0183】
(比較例2)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力4.7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、ハイパワー用ビームビームアナライザLPK−CO2−16(spiricon社製)を用いて測定したところ、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.25倍となるような光強度分布であった。
【0184】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃で1秒間加熱して画像を消去した。
【0185】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、50回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0186】
(比較例3)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
比較例2の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、比較例2と同様にして、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.25倍となるような光強度分布であった。
【0187】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力2.0W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード2,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.01mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を20本走査して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、前記画像形成工程と同様な光強度分布であった。
【0188】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、50回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0189】
(実施例10)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力4.7W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、実施例4で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0190】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の17倍)、スキャンスピード4,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/10に相当する0.30mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を34本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、図12に示すように、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの画像の消去時間は、0.53秒間であった。
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であり、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができた。
【0191】
(実施例11)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例6と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0192】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード3,200mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/7に相当する0.43mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を23本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.51秒間であった。
【0193】
(実施例12)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0194】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/5に相当する0.60mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を17本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.43秒間であった。
【0195】
(実施例13)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0196】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,400mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/4に相当する0.75mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を14本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.38秒間であった。
【0197】
(実施例14)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0198】
<画像消去工程>
その後、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、実施例13の画像消去工程と同様にして、10mm×50mmの範囲内にレーザ光を照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.38秒間であった。
【0199】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と均一でかつ短時間での消去とを行うことができた。
【0200】
(実施例15)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0201】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離204mm、スポット径1.6mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の9倍)、スキャンスピード8,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.20mm間隔で、線状かつ平行にレーザ光を50本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.63秒間であった。
【0202】
(実施例16)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0203】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離207mm、スポット径1.8mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の10倍)、スキャンスピード7,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.23mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を45本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は0.55秒間であった。
【0204】
(実施例17)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0205】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離265mm、スポット径6.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の33倍)、スキャンスピード1,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.75mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を14本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.53秒間であった。
【0206】
(実施例18)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0207】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離279mm、スポット径7.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の38.9倍)、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.88mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を12本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.71秒間であった。
【0208】
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であるため、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0209】
(実施例19)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力14W、照射距離200mm、スポット径1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0210】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離200mm、スポット径1.3mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の1.0倍)、スキャンスピード11,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.16mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を63本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.63秒間であった。
【0211】
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であるため、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0212】
(実施例20)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例5において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、実施例5と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0213】
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力3.2W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、作製した熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0214】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力17W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,400mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/5に相当する0.60mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を17本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は1.60であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.43秒間であった。
【0215】
(比較例4)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0216】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード6,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/15に相当する0.20mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を50本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は0.68秒間であり、長時間を要した。このため、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であり、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0217】
(比較例5)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0218】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード1,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/2に相当する1.5mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を7本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.13であり、図13に示すように、画像を完全に消去できなかった。また、このときの消去時間は0.27秒間であった。
【0219】
(実施例21)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様のレーザ条件で、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、60秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、60秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は1.53であり、図14に示すように、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0220】
(実施例22)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4の画像形成工程と同様のレーザ条件で、実施例21と同様に、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、60秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、60秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、これらのレーザ光の照射領域の交点部に消去された部分は、実施例21と同様に存在していなかった。
【0221】
(比較例6)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例21において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、90秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例21と同様にして画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、実施例21と同様のレーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、90秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は0.10であり、図15に示すように、該交点部に消去された部分があった。
【0222】
(実施例23)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例10の熱可逆記録媒体において、記録層における前記可逆性顕色剤を、下記構造式(6)で表される可逆性顕色剤に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0223】
(可逆性顕色剤)
【化9】
【0224】
<画像形成工程>
得られた熱可逆記録媒体に対して、実施例10の前記レーザマーカーを用いて画像を形成した。レーザ出力3.5W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、連続で0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査をした後、0.1秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は1.60であり、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0225】
(比較例7)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例23において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、0.2秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例23と同様にして、画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、実施例23と同様のレーザ条件で、線状に1回目のレーザ走査をした後、0.2秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は0.10であり、該交点部に消去された部分があった。
【0226】
(実施例24)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例20の熱可逆記録媒体に対して、実施例20の前記レーザマーカーを用いて画像を形成した。レーザ出力3.2W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、連続で0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査をした後、0.1秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0227】
(比較例8)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例24において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、0.2秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例24と同様にして、画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、0.2秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、該交点部に消去された部分があった。
【0228】
(実施例25)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応した応用例である。
<ラベルの作製>
前記熱可逆記録媒体としてのラベルを、以下のようにして作製した。
まず、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記アンダー層及び前記記録層を順次形成した。
【0229】
−中間層−
紫外線吸収性ポリマーの40質量%溶液(大塚化学株式会社製、PUVA−60MK−40K、水酸基価:60)20質量部、キシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、D−110N)3.2質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)23質量部からなる組成物を、ボールミルにて充分に撹拌して紫外線吸収構造を有するポリマー含有層塗布液を調製した。
次に、得られた紫外線吸収構造を有するポリマー含有層塗布液を、前記アンダー層、及び前記記録層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、50℃にて24時間加熱して、膜厚2μmの紫外線吸収構造を有するポリマー含有層(中間層)を形成した。
【0230】
−保護層−
次いで、作製した中間層上に、実施例4と同様にして保護層を形成した。
【0231】
−粘着層−
次に、アクリル系粘着剤(東洋インキ製造社製、BPS−1109)50質量部と、イソシアネート(三井武田ケミカル社製、D−170N)2質量部とからなる組成物を、充分に撹拌し、粘着層塗布液を調製した。
得られた粘着層塗布液を、前記アンダー層、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体の、これらが形成されていない側の面上に、ワイヤーバーにて塗布し、90℃にて2分間乾燥して、膜厚約20μmの粘着層を形成した。
以上により、熱可逆記録ラベルを作製した。
【0232】
<画像形成工程及び画像消去工程>
得られた熱可逆記録ラベルを、50mm×100mmのサイズにカットし、プラスチックの箱に貼り付け、実施例4と同様にして、画像の形成及び消去を行なったところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0233】
(実施例26)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応した応用例である。
<タグ(カンバン)の作製>
前記熱可逆記録媒体としてのタグ(カンバン)を、以下のようにして作製した。
まず、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層を順次形成し、上面用シートを作製した。
次いで、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記バック層のみを形成し、下面用シートを作製した。
得られた上面用シート及び下面用シートを、それぞれ210mm×85mmのサイズにカットし、これらのシートの間に、RF−IDのインレット(DNP社製)、及びインレット周囲用スペーサーとしてPETGシート(三菱樹脂社製)を挟み込み、粘着テープ(日東電工社製)にて貼り合わせて、厚み500μmのRF−ID入り熱可逆記録タグ(カンバン)を作製した。
【0234】
<画像形成工程及び画像消去工程>
得られたRF−ID入り熱可逆記録タグをプラスチックの箱に取り付けて、実施例4と同様にして、画像の形成及び消去を行なったところ,均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0235】
(実験例1)
実施例10と同様にして、10mm×50mmの範囲に直線状の画像を形成した。次いで、レーザ照射条件を、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mmに固定し、レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)を、0.075mm(1/40)〜1.5mm(1/2)の範囲内で適宜変化させて、画像の消去を行なった。このときの画像消去時間と、レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)との関係を、図16に示す。
なお、マクベス濃度計RD914を用いて、画像消去領域の画像濃度を測定したところ、前記レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)が、1.0mm(1/3)以上では、画像が完全に消去されていなかった。
【0236】
(実験例2)
実施例10と同様にして、レーザ光の照射スポット径0.18mmの条件で、10mm×50mmの範囲に直線状の画像を形成した。次いで、レーザ照射条件を、レーザ出力32Wに固定し、レーザ光の照射スポット径を、0.6〜8.0mmの範囲内で適宜変化させて、画像の消去を行なった。このときの画像消去時間と、レーザ光の照射スポット径との関係を、図17に示す。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができ、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1A】図1Aは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1B】図1Bは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1C】図1Cは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1D】図1Dは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1E】図1Eは、通常のレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布(ガウス分布)における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度を示す概略説明図である。
【図2A】図2Aは、光強度分布がガウス分布であるレーザ光のスポット径を説明するための概略図である。
【図2B】図2Bは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光のスポット径を説明するための概略図である。
【図3A】図3Aは、熱可逆記録媒体の透明−白濁特性を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、熱可逆記録媒体の透明−白濁変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図4A】図4Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図5】図5は、RF−IDタグの一例を示す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図6B】図6Bは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、実施例1の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図9】図9は、実施例2及び実施例5の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図10】図10は、実施例1の画像消去工程及び実施例3の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図11】図11は、比較例1の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布(ガウス分布)を示す概略説明図である。
【図12】図12は、実施例10における画像消去後の熱可逆記録媒体を示す写真である。
【図13】図13は、比較例5における画像消去後の熱可逆記録媒体を示す写真である。
【図14】図14は、実施例21において形成した、交差した線状の画像の交点部を示す写真である。
【図15】図15は、比較例6において形成した、交差した線状の画像の交点部を示す写真である。
【図16】図16は、実験例1における、画像消去時間とレーザ光の照射位置間隔(対スポット径比)との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、実験例2における、画像消去時間とレーザ光の照射スポット径との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0239】
10 レーザ発振器
12 ビームエキスパンダ
14 ガルバノメータ
14A ミラー
15 スキャニングユニット
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
S 熱可逆記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可逆記録媒体への画像処理方法及び画像処理装置に関し、特に、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能な画像処理方法及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、単に「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある。)への画像形成及び画像消去は、加熱源を媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行なわれている。該加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、記録媒体がフィルムや紙などフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかしながら、記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、媒体の表面に凹凸が生じると、サーマルヘッド等を用いて画像形成及び消去することが困難になる。更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が出てきた。
【0003】
そこで、記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や、離れたところから記録媒体に対して画像の形成及び消去を行う方法として、レーザを用いる方法が考えられる。
レーザを用いて何らかのパターンを記録し消去する従来技術の代表例としては、CD−RWやDVD−RW等の光ディスクが挙げられる。これらは、Te、Se、In、Ag等の無機材料における結晶状態と非結晶状態との変化による光反射性の違いにより、記憶情報としてパターンを形成するものである。この結晶状態と非結晶状態との変化は、レーザ照射により材料が融解した後の冷却速度の違いにより生ずるものである。
これに対して、熱可逆記録媒体は、媒体を何度まで加熱したかという加熱温度の違いにより発色と消色とに変化するものである。即ち、上記光ディスクでは、画像形成も画像消去も、まず同じように材料の融解温度まで加熱する必要があり、その後の冷却速度を制御することによりパターンが形成されるが、熱可逆記録媒体では、画像形成の場合と画像消去の場合とでは、その後の冷却速度に拘らずレーザ照射の加熱により媒体が何度に到達したかによって画像形成と消去とが決まってくるものであり、同じレーザを照射して何らかのパターンを形成し消去するのであっても、そのプロセス、メカニズムが全く異なるものである。
また、光ディスクの結晶状態と非結晶状態との光反射性の違いは、レーザを照射し反射性の違いを電子的に検知するのには充分であるが、目視ではかすかに読み取れる程度であり全く不充分なものであった。
【0004】
熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから記録媒体に画像の形成及び消去を行うレーザを用いた方法が、例えば特許文献3に記載されている。これは、物流ラインに用いる搬送用容器に可逆性感熱記録媒体を使用し非接触記録を行なうものであり、書込みはレーザを用いて行い、消去は熱風、温水、赤外線ヒータなどを用いて行うことが開示されている。
レーザを用いた印字及び記録方式としては、例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7に開示されている。
前記特許文献4に記載の技術は、熱可逆記録媒体上に、光熱変換シートを配置した後、該光熱変換シートにレーザ光を照射して、発生する熱により該熱可逆記録媒体上に、画像の形成及び消去のいずれかを行うことを含む、改良された画像記録消去方法であり、その明細書中には、レーザ光の照射条件を制御することにより、画像の形成と消去との両方を行なうことが可能であることが開示されている。即ち、光照射時間、照射光度、焦点、及び光強度分布のうちの少なくとも一つを制御することにより、前記熱可逆記録媒体の第1の特定温度と第2の特定温度とに加熱温度を制御したり、加熱後の冷却速度を変化させることにより画像の形成及び消去を全面又は部分的に行うことが可能となることが記載されている。
前記特許文献5には、2つのレーザ光を使用し、一方を楕円形や長円形レーザとして消去を行ない、他方を円形レーザで記録する方法、2つのレーザの複合として記録する方法、及び、2つのレーザをそれぞれ変形させてそれぞれの複合として記録する方法が記載されている。これらの方法によれば、2つのレーザを用いることで、1つのレーザで記録するよりも高濃度の画像記録が実現できるようになる。
また、前記特許文献6に記載の技術は、レーザ記録時と消去時とにおいて、1つのミラーの表裏を利用し、光路差やミラー形状の違いによってレーザ光の光束形状を変更させるものである。これにより簡単な光学系で光スポットの大きさを変えることや焦点をぼかすことが可能となる。
更に、前記特許文献7には、ラベル状の可逆性感熱記録媒体のレーザ吸収率を50%以上、印字時の照射エネルギーが5.0〜15.0mJ/mm2、かつレーザ吸収率と印字照射エネルギーとの積が3.0〜14.0mJ/mm2であり、消去時のレーザ吸収率と印字照射エネルギーとの積を、1.1〜3.0倍とすることにより、消去後の残像画像を実質的に完全に消去できることが開示されている。
一方、レーザを用いた消去方法としては、例えば、特許文献8に、レーザ光のエネルギー、レーザ光の照射時間、及びパルス幅走査速度を、レーザ記録時の25%以上65%以下となるようにして消去することにより、明瞭なコントラストの画像の高耐久性な可逆性感熱記録媒体への記録を実現する方法が提案されている。
【0005】
しかし、上述したような方法により、レーザによる印字と消去とを行うことができるものの、印字時にレーザ制御を実施していないため、記録時に線が重なり合う箇所にて局所的な熱ダメージが発生するという問題や、ベタ画像を記録する時に発色濃度が低下するという問題があった。
これらの問題を解決することを目的として、印字エネルギーを制御する方法が、特許文献9及び特許文献10に開示されている。
前記特許文献9には、レーザ照射エネルギーを描画点毎に制御し、記録ドットが重なり合うように印字する場合や折り返して印字する場合に、その部分に付与するエネルギーを低下させる、また、直線印字を行なう場合に所定間隔ごとにエネルギーを低下させることにより、局所的な熱ダメージを軽減して可逆性感熱記録媒体の劣化を防止することが記載されている。
また、前記特許文献10では、レーザ描画の際に変角点の角度Rに応じて、照射エネルギーに対して、次式、|cos0.5R|k(0.3<k<4)を掛け合わせることでエネルギーを減らす工夫を行なっている。これによりレーザで記録する際に線画の重なる部分に過剰なエネルギーが掛かることを防ぎ、媒体の劣化を減少させることができる、あるいはエネルギーを下げ過ぎずにコントラストを維持することが可能となる。
また、発色濃度の低下を防ぐ方法として、特許文献11には、レーザで重ね書きを行なう場合に、前に記録していた画像が消去されてしまうことを防ぐために、副走査のドット配列ピッチをビーム発色半径の2倍以上にし、消色半径とビーム発色半径との和以下にすることで発色濃度の低下と消去跡の発生とをなくすことが提案されている。
【0006】
このように、上述した方法では、レーザ記録時の重なり合いにより、熱可逆記録媒体に過剰な熱エネルギーをかけない工夫をしている。しかし、高出力レーザを用いて高濃度印字と均一な消去とを繰り返し行うと、レーザ描画部分で重なりが発生するだけでなく、直線画像部分においても熱可逆記録媒体が徐々に劣化する現象が発現する。これは、照射するレーザ光のエネルギー分布がガウス分布となるため、中央部分のエネルギーが極端に高くなってしまうことが原因である。記録線画像の中心部分は過剰に加熱され、熱可逆記録媒体の変形跡や気泡の発生が観察され、特に高温に加熱されたレーザ光中心部分に相当する媒体部分においては、発色及び消色特性を担う材料自身が熱分解を起こし、充分な能力を発揮できなくなってしまう。よって、高濃度で均一な画像形成と均一な画像消去とを充分に行なうことができず、繰り返し消去印字を行っても劣化の少ない画像記録方法としては不充分である。
更に、上述したRF−IDタグと組み合わせた熱可逆記録媒体やコンテナや容器に貼り付けて使用する場合には、媒体表面に凹凸が発生し、該凹凸のためにレーザの焦点位置が一定とならず、過剰なエネルギーが熱可逆媒体に掛かる場合や消去を実施するエネルギーを加えた場合でも発色温度まで上昇したり、逆に消去が不充分で消し残りが発生したりするという問題もある。
【0007】
また、書き換えはできないが、金属やプラスチックなどに直接ロット番号や型番などを記録する方法として、いわゆるレーザマーカーが知られている。このレーザマーカーは、金属やプラスチックをレーザのエネルギーで融解や分解することによって、それらの表面を傷つけて痕を付けて画像を形成するものであり、そのためにはレーザを集光し、レーザ照射部の中心部のエネルギーを高くする必要があった。
しかし、熱により透明度又は色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体では、通常のレーザマーカーと同様にレーザを集光して画像を形成すると、レーザ照射部の中心部は温度が上がりすぎてしまい、画像の形成と消去とを繰り返すと、その部分が劣化し、繰返し回数が低下することとなる。また、中心部の温度を上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり画像コントラストの低下や画像形成に時間がかかってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特開2004−265249号公報
【特許文献3】特開2000−136022号公報
【特許文献4】特許第3350836号公報
【特許文献5】特許第3446316号公報
【特許文献6】特開2002−347272号公報
【特許文献7】特開2004−195751号公報
【特許文献8】特開2003−246144号公報
【特許文献9】特開2003−127446号公報
【特許文献10】特開2004−345273号公報
【特許文献11】特開2004−1264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱可逆記録媒体に対して、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制した画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下であることを特徴とする画像処理方法である。
<2> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であることを特徴とする画像処理方法である。
<3> 画像消去工程におけるレーザ光の照射スポット径が、画像形成工程におけるレーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍である前記<2>に記載の画像処理方法である。
<4> 樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、
前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする画像処理方法である。
<5> 熱可逆記録媒体における有機低分子物質が、樹脂中に粒子状に分散されてなり、該熱可逆記録媒体の透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する前記<4>に記載の画像処理方法である。
<6> 融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の有機低分子物質が、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤との発色混合物であり、
前記熱可逆記録媒体の色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する前記<4>に記載の画像処理方法である。
<7> 第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが、60秒間以内の間隔で行われる前記<4>から<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<8> 画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である前記<2>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度の1.03倍以下である前記<1>及び<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度よりも小さい前記<9>に記載の画像処理方法である。
<11> 前記<1>、<8>、<9>、及び<10>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
<12> 光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである前記<11>に記載の画像処理装置である。
【0011】
本発明の画像処理方法は、第1の態様では、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を形成する画像形成工程、及び前記熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
該画像処理方法では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるレーザ光が、前記熱可逆記録媒体に照射される。このため、従来のガウス分布のレーザ光を用いた場合と異なり、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化が抑制され、画像のサイズを小さくすることなく、高コントラストの画像が形成される。
【0012】
本発明の画像処理方法は、第2の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
該画像処理方法では、前記画像消去工程において、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4となるように、前記レーザ光が照射されて、前記熱可逆記録媒体における、隣接する第1の画像消去領域及び前記第2の画像消去領域に位置する画像が消去される。その結果、前記熱可逆記録媒体に形成された画像が、均一に、かつ短時間で消去される。
【0013】
本発明の画像処理方法は、第3の態様では、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、画像を形成する画像形成工程、及び、該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
該画像処理方法においては、前記画像形成工程において、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光が照射される。その結果、前記第1の画像形成領域へのレーザ光の照射領域と、前記第2の画像形成領域へのレーザ光の照射領域との重なり部分(境界部)にて、前記第1の画像形成領域に形成された画像が消去されることなく、高コントラストで均一性の良好な画像が得られる。
【0014】
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有する。
該画像処理装置においては、前記レーザ光出射手段が、レーザ光を出射する。前記光照射強度調整手段が、前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の光照射強度を変化させる。その結果、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となる。このように光照射強度が調整されたレーザ光を用いて、前記熱可逆記録媒体に画像を形成すると、画像の繰返し形成及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、熱可逆記録媒体に対して、高濃度で均一な画像の形成及び短時間で画像の均一な消去を行うことにより、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制した画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
本発明の前記画像処理方法においては、画像の形成及び消去の両方を行う態様、画像の形成のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
【0017】
<画像形成工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における前記画像形成工程は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に画像を形成する工程である。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する工程である。
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の形成及び消去を行うことができる。
なお、本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像形成工程により画像の形成を行うが、画像の形成及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像形成工程により画像を形成した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0018】
また、本発明の前記画像処理方法では、後述するように、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となっていればよく、前記画像形成工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている場合には、前記画像消去工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっていなくてもよく、レーザ光以外の熱源を用いてもよい。熱源の中でも、レーザ光を照射して加熱する場合、一本のレーザ光を走査して所定の面積全体に照射するのに時間を要することから、短時間で消去する場合には、赤外線ランプ、ヒートローラー、ホットスタンプ、ドライヤーなどを用いて加熱することにより消去するのが好ましい。また、物流ラインに用いる搬送用容器として発砲スチロール箱に前記熱可逆記録媒体を装備させた場合、該発泡スチロール箱自体が加熱されると溶融してしまうため、レーザ光を照射して前記熱可逆記録媒体のみを局所的に加熱することにより消去するのが好ましい。
また、前記画像消去工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている場合には、前記画像形成工程において前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっていなくてもよく、例えば、熱源として、サーマルヘッドなどのレーザ光以外のものを用いてもよい。
【0019】
本発明の前記画像処理方法は、第1の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射される前記レーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である。
また、本発明の前記画像処理方法は、第2の態様では、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
更に、本発明の前記画像処理方法は、第3の態様では、前記熱可逆記録媒体が、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
【0020】
−第1の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第1の態様では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射される前記レーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面(以下、「レーザ光の進行方向直交断面」と称することがある。)における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となるように、前記熱可逆記録媒体に対して前記レーザ光が照射される。
従来、レーザを用いて何らかのパターンを形成する場合には、レーザ光の進行方向直交断面の光分強度布はガウス分布となっており、光照射の中心部は周辺部に比して光照射強度が極端に強いものであった。このガウス分布のレーザ光を前記熱可逆記録媒体に照射すると、前記中心部では温度が上がりすぎて画像の形成と消去とを繰り返すとその部分が劣化し、繰り返し回数が低下することとなり、また中心部の温度を劣化する温度まで上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり、画像コントラストの低下や画像形成に時間がかかってしまうという問題があった。
そこで、本発明の前記画像処理方法では、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光の進行方向直交断面の光分強度布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となるようにすることにより、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら画像のサイズを小さくすることなく、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性の向上を実現している。
【0021】
〔光強度分布における中心部及び周辺部〕
前記レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面の光強度分布における「中心部」は、該光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線において、下に凸の2つの最大ピークのピーク頂部に挟まれた領域に対応する部位を意味し、「周辺部」は、前記「中心部」を除く領域に対応する部位を意味する。
「中心部の光照射強度」は、前記中心部における光強度分布が曲線で表される場合には、そのピーク頂部であって、かつ光強度分布曲線の形状が上に凸であるときにはピークトップにおける光照射強度を、前記光強度分布曲線の形状が下に凸であるときにはピークボトムにおける光照射強度を、それぞれ意味する。また、前記光強度分布曲線が、上に凸及び下に凸の両方の形状を有する場合には、中心部内のより中央に近い部位に位置するピーク頂部の光照射強度を意味する。
また、前記中心部における光強度分布が直線で表される場合には、該直線の最高部における光照射強度を意味するが、この場合、前記中心部において、前記光照射強度は一定である(前記中心部における光強度分布が水平線で表される)のが好ましい。
一方、「周辺部の光照射強度」は、前記周辺部における光強度分布が、曲線及び直線のいずれで表される場合にも、その最高部における光照射強度を意味する。
【0022】
以下、前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を、図1A〜図1Eに示す。なお、図1A〜図1Eにおいて、それぞれ上側から順に、光強度分布を表す曲線、該光強度分布を表す曲線を1回微分した微分曲線(X’)、及び前記光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線(X’’)を表す。
図1A〜図1Dは、本発明の前記画像処理方法に用いられるレーザ光の光強度分布を示しており、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている。
一方、図1Eは、通常のレーザ光の光強度分布を示しており、該光強度分布は、ガウス分布しており、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度に比して、極端に強くなっている。
【0023】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布において、前記中心部と前記周辺部との光照射強度の関係としては、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下であることが必要であり、該同等以下とは、1.05倍以下であることを意味し、1.03倍以下が好ましく、1.0倍以下がより好ましく、前記中心部の光照射強度は、前記周辺部の光照射強度よりも小さい、即ち、1.0倍未満であるのが特に好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の1.05倍以下であると、前記中心部での温度上昇による前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。
一方、前記中心部の光照射強度の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記周辺部の光照射強度に対して0.1倍以上が好ましく、0.3倍以上がより好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の0.1倍未満であると、前記レーザ光の照射スポットにおける前記熱可逆記録媒体の温度が充分に上がらず、前記周辺部に比して前記中心部の画像濃度が低下したり、充分に消去できなくなったりすることがある。
【0024】
前記レーザ光を出射するレーザとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられる。
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を測定する方法としては、前記レーザ光が、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等から出射され、近赤外領域の波長を有する場合には、CCD等を用いたレーザビームプロファイラを用いて行うことができる。また、例えば、CO2レーザから出射され、遠赤外領域の波長を有する場合には、前記CCDを使用することができないため、ビームスプリッタとパワーメータとを組合せたもの、高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザなどを用いて行うことができる。
【0025】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光照射強度調整手段を好適に用いることができる。
前記光照射強度調整手段としては、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などが好ましい。また、フィルタ、マスクなどを用いる場合、前記レーザ光の中心部を物理的にカットすることにより光照射強度を調整することができる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記レンズとの間の距離を、焦点距離からずらすことにより光照射強度を調整することも可能であり、更に、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
なお、前記光照射強度調整手段による、光照射強度の調整方法については、後述する本発明の画像処理装置の説明において詳述する。
【0026】
−第2の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第2の態様では、前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4である。
該レーザ光照射位置の間隔が小さくなるほど、均一な温度に加熱され、画像を均一に消去することができるが、広範囲に形成された画像を消去する場合、長時間を要することとなる。一方、前記レーザ光照射位置の間隔が大きくなるほど、広範囲に形成された画像を消去することが可能となるので、短時間で消去を行うことができるが、前記レーザ光照射位置の間隔が大きくなり過ぎると、加熱が不均一となり消去不良が発生することがある。
本態様においては、隣接する前記第1の画像消去領域及び前記第2の画像消去領域への前記レーザ光照射位置の間隔が、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であるので、画像を均一に、かつ短時間で消去することができる。
【0027】
〔照射スポット径〕
一般に、レーザ光の出力ビームの進行方向直交断面の光強度分布は、略ガウス分布(ガウスビームの光強度分布)しており、該ガウスビームは、進行方向直交断面の光強度分布の形が、ビームの伝達位置によらず同一形状をしていることが大きな特徴である。該光強度分布は、下記式1で表され、中心強度の1/e2となる径が、照射スポット径(又はスポットサイズ、ビーム径等)と呼ばれ、図2Aに示すように、該照射スポット径に全光量の86.5%が含まれるが、図2Bに示すような光強度分布を有する前記画像処理方法の第1の態様では、中心強度の1/e2になる径ではなく、全光量の86.5%が含まれる径を、照射スポット径とする。
<式1>
I=2P/πw2・exp(−2r2/w2)・・・式1
前記式1中、rは、レーザ中心からの距離を表し、wは、レーザビームの半径(中心強度の1/e2)を表し、Pは、レーザのパワーを表す。
【0028】
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔としては、前記レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、1/10以上が好ましく、1/8以上がより好ましい。また、上限としては、1/5以下が好ましい。
前記画像消去領域へのレーザ光照射位置の間隔を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するガルバノメータの一方を動かす間隔を制御する方法などが挙げられる。
ここで、画像消去後の画像消去領域の画像濃度としては、例えば、マクベス濃度計(RD914)を用いて測定した画像濃度が、前記熱可逆記録媒体が温度に依存して透明度が可逆的に変化する場合、1.60以上であるのが好ましく、前記熱可逆記録媒体が温度に依存して色調が可逆的に変化する場合、0.09以下であるのが好ましい。この場合、画像が完全に消去されたと認められる。なお、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて測定する。
【0029】
また、前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍であるのが好ましい。
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径が、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して38倍を超えると、一定の温度まで加熱するために必要なレーザ出力が大きくなり、装置の大型化を招くことがある。また、該レーザ出力を大きくすることなく一定の温度まで加熱するために走査速度を遅くすると、画像の消去に時間がかかることとなる。
【0030】
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、大きくなるほど、広範囲に形成された画像を均一に、しかも短時間で消去することができる点で好ましく、その下限としては、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して1.5倍以上がより好ましく、2倍以上が更に好ましく、3倍以上が特に好ましい。
一方、前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径の上限としては、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径に対して35倍以下がより好ましく、20倍以下が更に好ましい。
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径は、具体的には、1.7〜6.9mmが好ましく、2.0〜6.0mmがより好ましい。一方、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径は、0.18〜1.5mmが好ましい。
【0031】
前記画像消去工程における前記レーザ光の照射スポット径を、前記画像形成工程における前記レーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍に変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、fθレンズ又は前記熱可逆記録媒体をレーザ光照射方向に動かすことにより、画像形成用及び画像消去用のレーザ光の照射スポット径を変化させる方法、スキャンニングユニット、fθレンズ等の光学系を2系統備え、同一の光共振器を用いて光路を切り替える方法、画像形成用と画像消去用との2つの記録装置を用いて行う方法、などが挙げられる。
【0032】
本発明の前記画像処理方法の前記第2の態様においても、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるのが好ましい。この場合、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
また、前記レーザ光の走査速度を上昇させても、前記熱可逆記録媒体が均一に加熱されるため、更に短時間で画像を消去することができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、上述した通りである。
【0033】
−第3の態様−
本発明の前記画像処理方法における前記第3の態様では、前記熱可逆記録媒体が、樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射する。
【0034】
前記画像形成工程において、前記レーザ光を走査させて画像を形成する場合、1回の走査により形成可能な線幅よりも太い線幅を形成する必要があるときには、1回目の走査により形成した線と隣接する部分に、2回あるいはそれ以上の回数でレーザ光を走査させることが必要となる。その際、1回目の走査により画像が形成された後、該画像と隣接する部分に2回目の走査をすると、1回目の走査位置と2回目の走査位置との間に画像形成温度よりも低い画像消去温度領域が発生し、1回目の走査で形成した画像の一部を消去してしまい、画像均一性及び画像濃度が低下するという問題があった。これは温度の違いで画像の形成と消去とを行なう熱可逆記録媒体の原理的な問題であった。
そこで、本発明者等は、前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを鋭意検討した結果、画像形成のために1回目の走査によりレーザ光を照射し、該熱可逆記録媒体を加熱して可逆性感熱記録層(記録層)中の前記有機低分子物質を融解した後、該有機低分子物質が結晶化する前に、1回目の走査により形成した画像と隣接する部分に、2回目の走査によりレーザ光を照射すると、前記1回目の走査と前記2回目の走査とによる前記レーザ光の照射領域の境界部にて、前記1回目の走査により形成した画像が消去されず、濃度が高く均一性の良好な画像が得られることを見出し、本発明の前記画像処理方法の第3の形態を完成するに至った。
【0035】
<画像形成及び消去メカニズム>
前記画像形成及び消去メカニズムには、温度に依存して透明度が可逆的に変化する態様と、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様とがある。
前記透明度が可逆的に変化する態様では、前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子が、前記樹脂中に粒子状に分散されてなり、前記透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する。
前記透明度の変化の視認は、下記現象に由来する。即ち、(1)透明状態の場合、樹脂母材中に分散された前記有機低分子物質の粒子と、前記樹脂母材とは隙間なく密着しており、また、前記粒子内部にも空隙が存在しないため、片側から入射した光は散乱することなく反対側に透過し、透明に見える。一方、(2)白濁状態の場合、前記有機低分子物質の粒子は、前記有機低分子物質の微細な結晶で形成されており、該結晶の界面又は前記粒子と前記樹脂母材との界面に隙間(空隙)が生じ、片側から入射した光は前記空隙と前記結晶との界面、あるいは前記空隙と前記樹脂との界面において屈折し散乱するため、白く見える。
【0036】
まず、図3Aに、前記樹脂中に前記有機低分子物質が分散されてなる可逆性感熱記録層(以下、「記録層」と称することがある。)を有する熱可逆記録媒体について、その温度−透明度変化曲線の一例を示す。
前記記録層は、例えば、T0以下の常温では、白濁不透明状態(A)である。これを加熱していくと、温度T1から徐々に透明になり始め、温度T2〜T3に加熱すると透明(B)となり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明(D)のままである。これは、温度T1付近から前記樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれて該樹脂が収縮し、該樹脂と前記有機低分子物質粒子との界面、あるいは前記粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T2〜T3では、前記有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を、前記有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されると比較的高温で結晶化し、その際、前記樹脂がまだ軟化状態にあるため、結晶化に伴う粒子の堆積変化に前記樹脂が追随し、前記空隙が生じず、透明状態が維持されるためであると考えられる。
更にT4以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態(C)になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態になることなく、最初の白濁不透明状態(A)に戻る。これは、温度T4以上で前記有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、T0より少し高い温度で結晶化し、その際、前記樹脂が結晶化に伴う体積変化に追随することができず、空隙が発生するためであると考えられる。
ただし、図3Aに示す温度−透明度変化曲線は、前記樹脂、前記有機低分子物質等の種類を変えると、その種類に応じて、各状態の透明度に変化が生じることがある。
【0037】
また、透明状態と白濁状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の透明度変化メカニズムを図3Bに示す。
図3Bでは、1つの長鎖低分子粒子と、その周囲の高分子とを取り出し、加熱及び冷却に伴う空隙の発生及び消失変化を図示している。白濁状態(A)では、高分子と低分子粒子との間(又は粒子内部)に空隙が生じ、光散乱状態となっている。これを加熱し、前記高分子の軟化点(Ts)を超えると、空隙は減少して透明度が増加する。更に加熱し、前記低分子粒子の融点(Tm)近くになると、該低分子粒子の一部が溶融し、溶融した低分子粒子の体積膨張のため、空隙に前記低分子粒子が充満して空隙が消失し、透明状態(B)となる。ここから冷却すると、融点直下で前記低分子粒子は結晶化し、空隙は発生せず、室温でも透明状態(D)が維持される。
次に、前記低分子粒子の融点以上に加熱すると、溶融した低分子粒子と周囲の高分子との屈折率にズレが生じ、半透明状態(C)となる。ここから室温まで冷却すると前記低分子粒子は過冷却現象を生じ高分子の軟化点以下で結晶化し、このとき前記高分子はガラス状態となっているため、前記低分子粒子の結晶化に伴う体積減少に、周囲の高分子が追随できず、空隙が発生して元の白濁状態(A)に戻る。
以上より、前記有機低分子物質が結晶化する前に画像消去温度に加熱されても、前記有機低分子物質は溶融状態であるため、過冷却状態となり、前記樹脂が前記有機低分子物質の結晶化に伴う体積変化に追随できず、空隙が発生するため、白濁状態になると考えられる。
【0038】
次に、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様では、融解前の前記有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある。)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図4Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる可逆性感熱記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図4Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図4Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
以上より、前記顕色剤が融解して前記ロイコ染料と形成した前記発色混合物が結晶化する前に、画像消去温度に加熱されると、前記ロイコ染料と前記顕色剤との分離が妨げられ、結果として、発色状態を維持すると考えられる。
【0039】
前記第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、前記第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが行われる間隔(時間間隔)としては、特に制限はなく、前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができるが、60秒間以内が好ましく、10秒間以内がより好ましく、1.0秒間以内が更に好ましく、0.1秒間以内が特に好ましい。
前記間隔(時間間隔)が、60秒間を超えると、前記有機低分子物質が結晶化してしまい、前記第1の画像形成領域に形成された画像と、前記第2の画像形成領域に形成された画像との境界部に、画像濃度の低い部分が発生し、均一な画像が得られないことがある。
【0040】
前記有機低分子物質が融解しており、かつ結晶化前の状態であることを確認する方法、及び前記有機低分子物質が融解した後、結晶化するまでの時間の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直線画像を形成した後、所定時間後に該直線画像に対して垂直方向に重なるように直線画像を形成し、これらの交点部が消去されているかどうかを判断することにより行うことができる。該交点部が消去されている場合、前記有機低分子物質が結晶化していると認められる。
前記交点部が消去されているとは、例えば、マクベス濃度計(RD914)を用い、前記交点部を含む直線画像の画像濃度を連続的に測定し、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、画像濃度が1.2以上、前記熱可逆記録媒体の色調が可逆的に変化する態様では、画像濃度が0.5以下であることを意味する。なお、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて測定する。
また、前記熱可逆記録媒体をX線解析することにより、結晶化しているかどうかを確認することもできる。前記有機低分子物質が結晶化している場合、前記有機低分子物質の種類に応じて独自の結晶構造を示し、X線解析によりその結晶構造に対応する散乱ピークを検出することができる。該散乱ピーク位置については、前記有機低分子物質単独のX線解析を行なうことにより、容易に確認することができる。また、X線解析装置によっては、温度を変化させながら測定することも可能であるので、前記有機低分子物質を加熱溶融させた後、該有機低分子物質の結晶化の過程を確認することができる。
【0041】
前記レーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。
前記走査速度が、300mm/s未満であると、前記有機低分子物質が結晶化してしまい、前記第1の画像形成領域に形成された画像と、前記第2の画像形成領域に形成された画像との境界部に、画像濃度の低い部分が発生し画像濃度の不均一が生じることがある。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。
前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなることがある。
【0042】
また、本発明の前記画像処理方法の前記第3の態様においても、前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下であるのが好ましい。この場合、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、上述した通りである。
【0043】
[熱可逆記録媒体]
本発明の前記画像処理方法に用いられる前記熱可逆記録媒体は、支持体と、可逆性感熱記録層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、中間層、アンダーコート層、バック層、光熱変換層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0044】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0046】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000μmが好ましく、50〜1,000μmがより好ましい。
【0047】
−可逆性感熱記録層−
前記可逆性感熱記録層(以下、単に「記録層」と称することがある。)は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料は、温度変化により、目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。この場合、目に見える変化は、色の状態の変化と形状の変化とに分けられる。該色の状態の変化は、例えば、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化に起因し、前記熱可逆記録媒体は、実際には、これらの変化の組合せにより色の状態が変化する。
【0048】
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリマーを2種以上混合し、その相溶状態の違いで透明及び白濁に変化するもの(特開昭61−258853号公報参照)、液晶高分子の相変化を利用したもの(特開昭62−66990号公報参照)、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となるもの、等が挙げられる。
これらの中でも、温度制御しやすく、高コントラストが得られる点で、前記第一の特定温度と第二の特定温度とで色の状態が変化するものが特に好ましい。
例えば、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後、冷却することにより第二の色の状態となるもの、更に前記第二の特定温度よりも高い第三の特定温度以上で加熱するもの等が挙げられる。
【0049】
これらの例としては、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特開昭55−154198号公報参照)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報等参照)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特開平3−169590号公報参照)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特開平2−188293号、特開平2−188294号公報等参照)などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂母材と該樹脂母材中に分散させた高級脂肪酸等の有機低分子物質とからなる熱可逆記録媒体は、第二の特定温度及び第一の特定温度が比較的低く、低エネルギーでの消去印字が可能な点で有利である。また、発消色メカニズムが、樹脂の固化と有機低分子物質の結晶化とに依存する物理変化であるため、耐環境性に強い特性がある。
また、後述するロイコ染料と可逆性顕色剤とを用いた、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色する熱可逆記録媒体は、透明状態と発色状態とを可逆的に示し、発色状態では、黒、青、その他の色を示すため、高コントラストな画像を得ることができる。
【0050】
前記画像処理方法の第3の態様で用いられる熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質(樹脂母材中に分散され、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの)としては、前記録層中で、熱により多結晶から単結晶に変化するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に、融点30〜200℃程度のものを使用することができ、融点50〜150℃のものが好適である。
このような有機低分子物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノール又はハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ若しくはジカルボン酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和又は不飽和ハロゲン脂肪酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリールカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸及びそれらのエステル、アミン又はアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの化合物の炭素数としては、10〜60が好ましく、10〜38がより好ましく、10〜30が特に好ましい。エステル中のアルコール基部分は、飽和していてもよいし飽和していなくてもよく、ハロゲン置換されていてもよい。
また、前記有機低分子物質は、その分子中に、酸素、窒素、硫黄及びハロゲンから選択される少なくとも1種、例えば、−OH、−COOH、−CONH−、−COOR、−NH−、−NH2、−S−、−S−S−、−O−、ハロゲン原子等を含んでいるのが好ましい。
更に具体的には、これらの化合物としては、例えば、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル等の高級脂肪酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、前記画像処理方法の第3の態様で用いられる有機低分子物質としては、高級脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0052】
前記熱可逆記録媒体を透明化することができる温度範囲の幅を拡げるためには、上述した各種有機低分子物質を適宜組み合わせて使用してもよいし、該有機低分子物質と融点の異なる他の材料とを組み合わせて使用してもよい。これらは、例えば、特開昭63−39378号、特開昭63−130380号等の公報、特願昭63−14754号、特許第2615200号等の明細書に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0053】
前記樹脂母材は、前記有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える。このため、該樹脂母材としては、透明性が高く、機械的安定性を有し、かつ成膜性の良好な樹脂であるのが好ましい。
このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン;塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート若しくはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコン樹脂;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記記録層における、前記有機低分子物質と前記樹脂(樹脂母材)との割合は、質量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8がより好ましい。
前記樹脂の比率が、2:1よりも小さいと、前記有機低分子物質を前記樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となることがあり、1:16よりも大きくなると、前記有機低分子物質の量が少ないため、前記記録層の不透明化が困難になることがある。
【0055】
前記記録層には、前記有機低分子物質及び前記樹脂のほか、透明画像の形成を容易にするために、高沸点溶剤、界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。
前記高沸点溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、オレイン酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0056】
前記界面活性剤及びその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール高級脂肪酸エステル;多価アルコール高級アルキルエーテル;多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級アルコール、高級アルキルフェノール、高級脂肪酸高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、油脂又はポリプロピレングリコールの低級オレフィンオキサイド付加物;アセチレングリコール;高級アルキルベンゼンスルホン酸のNa、Ca、Ba又はMg塩;高級脂肪酸、芳香族カルボン酸、高級脂肪酸スルホン酸、芳香族スルホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノ−若しくはジ−エステルのCa、Ba又はMg塩;低度硫酸化油;ポリ長鎖アルキルアクリレート;アクリル系オルゴマー;ポリ長鎖アルキルメタクリレート;長鎖アルキルメタクリレート−アミン含有モノマー共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;オレフィン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0057】
前記記録層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の2成分を溶解した溶液、又は、前記樹脂母材の溶液(溶剤としては、前記有機低分子物質から選択される少なくとも1種を不溶なもの)に前記有機低分子物質を微粒子状に分散させた分散液を、例えば、前記支持体上に塗布及び乾燥させることにより行うことができる。
前記記録層の作製用溶剤としては、特に制限はなく、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。なお、前記分散液を使用した場合はもちろん、前記溶液を使用した場合も、得られる記録層中では前記有機低分子物質は微粒子として析出し、分散状態で存在する。
【0058】
前記画像処理方法の第3の態様で用いられる熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質は、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなり、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するものであってもよい。
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0059】
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行なうことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は、11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0060】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【0061】
【化1】
【化2】
前記一般式(1)及び(2)中、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0062】
前記可逆性顕色剤は、消色促進剤として、分子中に、−NHCO−基、及び−OCONH−基を少なくとも1つ有する化合物を併用するのが好ましい。この場合、消色状態を形成する過程において、前記消色促進剤と前記可逆性顕色剤との間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上する。
【0063】
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記一般式(3)〜(9)で表わされる化合物などが好適に挙げられる。
【0064】
【化3】
前記一般式(3)〜(9)において、前記R1、前記R2、及び前記R4は、炭素数7〜22の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、又は不飽和アルキル基を表す。前記R3は、炭素数1〜10のメチレン基を表す。前記R5は、炭素数4〜10の3価の官能基を表す。
【0065】
前記ロイコ染料と、前記可逆性顕色剤との混合割合としては、使用する化合物の組合せにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、概ねモル比で、前記ロイコ染料1に対して前記可逆性顕色剤が0.1〜20であるのが好ましく、0.2〜10がより好ましい。
前記可逆性顕色剤が、0.1未満である場合、及び20を超える場合には、発色状態の濃度が低下することがある。
また、前記消色促進剤を添加する場合、その添加量は、前記可逆性顕色剤に対して0.1〜300質量%が好ましく、3〜100質量%がより好ましい。
なお、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤とは、マイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0066】
前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなる場合、前記可逆性感熱記録層は、これらの成分以外に、バインダー樹脂、架橋剤等を含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
【0067】
前記バインダー樹脂としては、前記支持体上に前記記録層を結着することができれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から適宜選択した1種又は2種以上の樹脂を混合して用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線等によって硬化可能な樹脂が好ましく、イソシアネート系化合物等を架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が特に好適である。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等の架橋剤と反応する基を有する樹脂、又は水酸基、カルボキシル基等を有するモノマーとそれ以外のモノマーとを共重合させた樹脂、などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0068】
前記アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、カルボン酸基を有する不飽和単量体、水酸基を有する不飽和単量体、及びその他のエチレン性不飽和単量体とを用い、公知の溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等に従って合成することができる。
【0069】
前記水酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4−ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが挙げられる。これらの中でも、第1級水酸基を有するモノマーを使用すると、塗膜のワレ抵抗性や耐久性が良好なことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0070】
前記記録層中における前記ロイコ染料と前記バインダー樹脂との混合割合(質量比)としては、前記ロイコ染料1に対して、0.1〜10が好ましい。
前記バインダー樹脂が、0.1未満であると、前記記録層の熱強度が不足することがあり、10を超えると、発色濃度が低下することがある。
【0071】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0072】
前記イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はこれらのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、又はブロック化イソシアネート類等が挙げられる。
【0073】
前記架橋剤の前記バインダー樹脂に対する添加量としては、前記バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する前記架橋剤の官能基の比で、0.01〜2が好ましい。
前記官能基の比が、0.01未満であると、熱強度が不足することがあり、2を超えると、発色及び消色特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0074】
更に、架橋促進剤として、この種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記架橋促進剤としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン類、有機スズ化合物等の金属化合物などが挙げられる。
前記熱架橋した場合の前記熱硬化性樹脂のゲル分率としては、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0075】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0076】
前記記録層におけるその他の成分としては、塗布特性や発色及び消色特性を改善したり制御するための各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0077】
前記界面活性剤、前記可塑剤等は、画像の形成を容易にする観点から用いられる。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。
【0078】
前記記録層を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を、溶媒中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(2)前記バインダー樹脂のみを溶解した溶媒に、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記バインダー樹脂と前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。
なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。また、前記記録層用塗布液は分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各々単独で溶媒中に分散させて混ぜ合わせてもよく、加熱溶解した後、急冷又は徐冷することによって材料を析出させてもよい。
【0079】
前記記録層の作製方法における、(1)又は(2)において用いる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤の種類等によって異なり、一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0080】
前記記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した前記支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等の公知の方法を用いて行うことができる。
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、1μm未満であると、発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、20μmを超えると、層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、所望の発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0081】
−保護層−
前記保護層は、前記記録層を保護する目的で、該記録層上に設けられるのが好ましい。
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数層に形成してもよいが、露出している層の最表面に設けるのが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0082】
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、などが好適に挙げられる、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るものの、同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
【0083】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマー;各種単官能又は多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマー;などが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することにより、樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0084】
前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが必要である。
前記光重合開始剤は、ラジカル反応型とイオン反応型とに大別でき、更に、該ラジカル反応型は、光開裂型と水素引抜き型とに分けられる。
【0085】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシシカルボニル)オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記光重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の水素引抜きタイプの光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果を有するものが好ましく、例えば、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系、などが挙げられる。具体的には、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
前記光重合開始剤及び前記光重合促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0088】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線の照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行なうことができ、該紫外線照射装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものなどが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。
前記光源から出射される光の波長としては、特に制限はなく、前記記録層に含まれる光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を適宜決定すればよい。
【0089】
また、良好な搬送性の確保を目的として、重合性基を有するシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シリコーンオイル等の滑剤などを添加することができる。
これらの添加量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましい。
前記添加量は、わずかでも効果を発現することはできるが、0.01質量%未満であると、添加による効果が得られ難くなることがあり、50質量%を超えると、下層との接着性に問題が生じる場合がある。
また、前記保護層中には、有機紫外線吸収剤を含有していてもよく、その含有量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.5〜10質量%が好ましい。
【0090】
更に、搬送性を向上させるために、無機フィラー、有機フィラーなどを添加してもよい。
前記無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、静電気対策として、導電性フィラーを用いるのが好ましく、該導電性フィラーとしては、針状のものを用いるのがより好ましい。
前記導電性フィラーとしては、アンチモンドープ酸化スズで表面が被覆されている酸化チタンが特に好適に挙げられる。
前記無機フィラーの粒径としては、例えば、0.01〜10.0μmが好ましく、0.05〜8.0μmがより好ましい。
前記無機フィラーの添加量としては、前記保護層のバインダー樹脂1質量部に対し、0.001〜2質量部が好ましく、0.005〜1質量部がより好ましい。
【0091】
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0092】
前記熱硬化性樹脂は、架橋されているのが好ましい。従って、該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の、硬化剤と反応する基を有しているものが好ましく、水酸基を有しているポリマーが特に好ましい。
前記保護層の強度を向上させるためには、充分な塗膜強度が得られる点で、前記熱硬化性樹脂の水酸基価が、10以上であるのが好ましく、30以上がより好ましく、40以上が更に好ましい。充分な塗膜強度を付与することにより、繰返し消去及び印字を行っても、前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えることができる。
前記硬化剤としては、例えば、前記記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に使用することができる。
【0093】
また、前記保護層は、添加剤として、従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
更に、紫外線吸収構造を有するポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することがある。)を用いてもよい。
ここで、前記紫外線吸収構造を有するポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。
前記紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられる。これらの中でも、耐光性が良好な点で、ベゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収構造を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルとからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルとからなる共重合体、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノンとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとスチレンとメタクリル酸メチルとメタクリル酸プロピルとからなる共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。なお、前記紫外線硬化樹脂を用いる場合には、塗布して乾燥を行なった後、紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件等については上述の通りである。
【0095】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1.5〜6μmが更に好ましい。
前記厚みが、0.1μm未満であると、前記熱可逆記録媒体の保護層としての機能を充分に発揮することができず、熱による繰返し履歴により、すぐに劣化し、繰返し使用することができなくなることがあり、20μmを超えると、前記保護層の下層にある記録層に充分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像の印字と消去とが充分にできなくなることがある。
【0096】
−中間層−
前記中間層は、前記記録層と前記保護層との接着性向上、前記保護層の塗布による前記記録層の変質防止、前記保護層中の添加剤の前記記録層への移行の防止、などを目的として、両者の間に設けられるのが好ましい。この場合、発色画像の保存性を改善することができる。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0097】
前記中間層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層におけるバインダー樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネー ト、ポリアミドなどが挙げられる。
【0098】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機系化合物及び無機系化合物のいずれをも用いることができる。
【0099】
前記有機系化合物(有機系紫外線吸収剤)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、ケイ皮酸系の紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系が好ましい。
前記ベンゾトリアゾール系の中でも、水酸基を隣接する嵩高い官能基で保護したものが特に好ましく、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が好適に挙げられる。また、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の共重合した高分子に、このような紫外線吸収能を有する骨格のものをペンダントしてもよい。
前記有機系紫外線吸収剤の含有量としては、前記中間層の樹脂成分全質量に対し、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
【0100】
前記無機系化合物(無機系紫外線吸収剤)としては、平均粒径100nm以下の金属系化合物が好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の金属酸化物又はこれらの複合酸化物;硫化亜鉛、硫酸バリウム等の金属硫化物又は硫酸化合物;チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイド等の金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウム等の金属窒化物;などが挙げられる。これらの中でも、金属酸化物系超微粒子が好ましく、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムがより好ましい。なお、これらの表面は、シリコーン、ワックス、有機シラン、又はシリカ等で処理されていてもよい。
前記無機系紫外線吸収剤の含有量としては、体積分率で、1〜95%が好ましい。
【0101】
なお、前記有機系及び無機系紫外線吸収剤は、前記記録層に含有させてもよい。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いるものと同様のものを好適に使用することができる。
前記中間層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。
【0102】
−アンダー層−
印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は前記支持体と前記記録層との接着性の改善や前記支持体への前記記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体との間に、アンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、中空粒子を少なくとも含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0103】
前記中空粒子としては、例えば、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。
前記空隙粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製)、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜80質量%が好ましい。
【0104】
前記アンダー層のバインダー樹脂としては、前記記録層、又は前記紫外線吸収構造を有するポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましく、12〜24μmが更に好ましい。
【0105】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために、前記支持体の前記記録層を設ける面と反対側に、バック層を設けてもよい。
前記バック層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0106】
前記バック層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂については、前記記録層、前記保護層、及び前記中間層で用いられるものと同様なものを好適に用いることができる。また、前記フィラー、前記導電性フィラー、前記滑剤についても同様である。
【0107】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、レーザ光を吸収し発熱する機能を有する。
前記光熱変換層は、レーザ光を吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700〜1,500nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。繰返し印字及び消去を繰り返すためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、前記記録層中に混ぜ込んでもよい。この場合、前記記録層は、前記光熱変換層を兼ねることとなる。
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましい。
【0108】
−接着層及び粘着層−
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0109】
前記接着層及び前記粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。また、剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように前記接着層又は前記粘着層を設けることにより、前記記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカード等の厚手の基板の全面若しくは一部に、前記記録層を貼ることができる。これにより、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、前記熱可逆記録媒体の利便性が向上する。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手カードにも好適である。
【0110】
−着色層−
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0111】
前記着色層は、カラー印刷層とすることができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0112】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用していてもよい。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0113】
−熱可逆記録媒体の形状及び用途−
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、印字する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0114】
−熱可逆記録部材 RF−IDとの組合せ例−
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0115】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適な例としては、RF−IDタグが挙げられる。
図5は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行なっている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行なう。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行なう。
【0116】
前記RF−IDタグは、ラベル状又はカード状に加工されており、該RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。前記RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼るのが好ましい。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0117】
前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとを組み合わせた前記熱可逆記録部材の工程管理での使い方の一例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行なうためのリーダ・ライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行なう制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去印字を行なうことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【0118】
(画像処理装置)
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光照射手段と、光照射強度調整手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
【0119】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段としては、レーザ光を照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)など、通常用いられるレーザが挙げられる。
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視領域から赤外領域が好ましく、画像コントラストが向上する点で、近赤外領域から遠赤外領域がより好ましい。
前記可視領域では、前記熱可逆記録媒体の画像形成及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加剤が着色するため、コントラストが低下することがある。
【0120】
前記CO2レーザから出射されるレーザ光の波長は、遠赤外領域の10.6μmであり、前記熱可逆記録媒体が該レーザ光を吸収するため、前記熱可逆記録媒体に対する画像の形成及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加物を添加することが不要となる。また、該添加物は、近赤外領域の波長を有するレーザ光を用いても、若干ではあるが、可視光をも吸収することがあるため、該添加物が不要となる前記CO2レーザは、画像コントラストの低下を防ぐことができるという利点がある。
【0121】
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記LDから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、現状の熱可逆記録媒体は、その波長領域のレーザ光を吸収しないため、レーザ光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料の添加が必要となるが、波長が短いため高精細画像の形成が可能であるという利点がある。
また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像の形成及び消去速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記LDはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。
【0122】
−光照射強度調整手段−
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の光照射強度を変化させる機能を有する。
前記光照射強度調整手段の配置態様としては、前記レーザ光照射手段における前記レーザ光出射面に配置される限り特に制限はなく、前記レーザ光照射手段との距離等については、目的に応じて適宜選択することができる。
【0123】
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる機能を有するのが好ましい。画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
なお、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布における、前記中心部の光照射強度と前記周辺部の光照射強度との関係の詳細については、本発明の上記画像処理方法の説明において上述した通りである。
【0124】
前記光照射強度調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、例えば、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などを好適に使用することができ、また、物理的にフィルタ、マスク等で前記レーザ光の中心部をカットすることにより光照射強度を調整することもできる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
更に、前記熱可逆記録媒体とfθレンズとの間の距離を調整することにより、前記中心部の光照射強度を、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させることもできる。即ち、前記熱可逆記録媒体と前記fθレンズとの間の距離を、焦点距離からずらしていくと、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布が、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が低下した分布に変化させることができる。
更にレーザ光源として、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
【0125】
前記光照射強度調整手段として、非球面ビームシェイパーを用いた、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
例えば、強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せを用いる場合には、図6Aに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、2枚の非球面レンズを配設する。そして、1枚目の非球面レンズL1により、目的とする位置(距離l)にて、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図6Aでは、フラットトップ形状)となるように、強度変換する。その後、強度変換されたビーム(レーザ光)を平行伝搬させるために、2枚目の非球面レンズL2で位相の補正を行う。その結果、前記ガウス分布した光強度分布を変化させることができる。
また、図6Bに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、強度変換レンズLのみを配設してもよい。この場合、ガウス分布した入射ビーム(レーザ光)について、強度の強い部分(内部)は、X1に示すように、ビームを拡散させ、逆に強度の弱い部分(外部)は、X2に示すように、ビームを収束させることにより、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図6Bでは、フラットトップ形状)となるように変換することができる。
更に、前記光照射強度調整手段として、ファイバーカップリングした半導体レーザとレンズとの組合せによる、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
ファイバーカップリングした半導体レーザでは、レーザ光がファイバー中を反射を繰り返しながら伝搬していくため、ファイバー端より出射するレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布とは異なり、前記ガウス分布と前記フラットトップ形状との中間に相当するような光強度分布となる。このような光強度分布を、前記フラットトップ形状となるように、ファイバー端に集光光学系として複数枚の凸レンズ及び/又は凹レンズを組み合わせたものを取り付ける。すると、前記熱可逆記録媒体までの距離が、焦点距離である場合には、前記フラットトップ形状が得られるが、該焦点距離から若干位置がずれると、得られるレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布となり、更に、前記熱可逆記録媒体までの距離が、焦点距離から大きく異なる位置では、図1Dに示すような、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度よりも小さい光強度分布となる。このときの前記中心部の光照射強度は、前記熱可逆記録媒体までの距離を変化させることにより容易に調整することができる。
【0126】
本発明の前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段及び前記光強度調整手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
ここで、図7に、本発明の画像処理装置の一例を、レーザ照射ユニットを中心に示す。
【0127】
図7に示す画像処理装置は、出力40WのCO2レーザを有するレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)の光路中に、前記光照射強度調整手段として、レーザ光の中心部をカットするマスク(不図示)を組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を、前記周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が変化するように調整可能としている。
なお、レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分の仕様は、可能レーザ出力範囲:0.1〜40W、照射距離可動範囲:特に限定なし、スポット径範囲:0.18〜10mm、スキャンスピード範囲:max 12,000mm/s、照射距離範囲:110mm×110mm、焦点距離:185mmである。
【0128】
前記発振器ユニットは、レーザ発振器10、ビームエキスパンダ12、スキャンニングユニット15、及びfθレンズ16等などで構成されている。
前記レーザ発振器10は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット15は、ガルバノメータ14と、該ガルバノメータ14に取り付けられたミラー14Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器10から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ14に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー14Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体S上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記fθレンズ16は、前記ガルバノメータ14に取り付けられたミラー14Aによって等角速度で回転走査されたレーザ光を、前記熱可逆記録媒体の平面上で等速度運動させるレンズである。
【0129】
前記電源制御ユニットは、放電用電源(CO2レーザの場合)又はレーザ媒質を励起する光源の駆動電源(YAGレーザなど)、ガルバノメータの駆動電源、ペリチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
【0130】
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の形成又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作成及び編集を行なうユニットである。
【0131】
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を当然に有している。
【0132】
本発明の前記画像処理方法及び前記画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高いコントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。このため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び記録を行うことができる。
また、前記画像処理装置は、レーザ光の光照射強度を変化させる前記光照射強度調整手段を有しているので、画像の繰返し形成及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0134】
(実施例1)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して色調が可逆的(透明状態−発色状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0135】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0136】
−アンダー層−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱及び乾燥して、膜厚20μmのアンダー層を形成した。
【0137】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価:200)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0138】
(可逆性顕色剤)
【化4】
【0139】
(消色促進剤)
【化5】
【化6】
【0140】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、下記構造式(4)で表されるフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX565)0.2質量部、光熱変換材料(日本触媒社製、イーエクスカラーIR−14)0.03重量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
【0141】
【化7】
【0142】
次に、得られた記録層用塗布液を、前記アンダー層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、膜厚約11μmの記録層を形成した。
【0143】
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、及び前記記録層が形成された支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、膜厚約2μmの中間層を形成した。
【0144】
−保護層−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌して平均粒径が約3μmになるまで分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、前記記録層、及び前記中間層が形成された支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmの保護層を形成した。
【0145】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体における、これらの層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmのバック層を形成した。
以上により、熱可逆記録媒体を作製した。
【0146】
<画像形成工程>
レーザとして、集光光学系f100を装備した140Wのファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置(イエナオプティック社製、NBT−S140mkII、中心波長:808nm、光ファイバコア径:600μm、NA:0.22)を用い、レーザ出力12W、照射距離91.4mm、スポット径約0.6mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、レーザ出力が0.01%以下となるように、NDフィルター(「NG10」;デューマオプトロニクス社製)を5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図8に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Bで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.05倍となっていることが判った。
【0147】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力15W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
このとき、同様にしてレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図10に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.6倍となっていることが判った。
【0148】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0149】
(実施例2)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力25W、照射距離88.0mm、スポット径2.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、図9に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.7倍となっていることが判った。
【0150】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、実施例1と同様の条件にて、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0151】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0152】
(実施例3)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力35W、照射距離86.0mm、スポット径3.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光し、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、図10に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.6倍となっていることが判った。
【0153】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、実施例1と同様の条件にて、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0154】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0155】
(実施例4)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例1において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0156】
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ光の光路中に、該レーザ光の中心部をカットするマスクを組み込んだ。そして、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.5倍となるように調整した。
次いで、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力6.5W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
【0157】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に形成された前記画像を消去した。
【0158】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0159】
(実施例5)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して透明度が可逆的(透明状態−白濁状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0160】
−支持体−
支持体として、厚み175μmの透明PETフィルム(東レ社製、ルミラー175−T12)を用いた。
【0161】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン社製、M110)26質量部を、メチルエチルケトン210質量部に溶解させた樹脂溶解液中に、下記構造式(5)で表される有機低分子物質3質量部、及びベヘン酸ドコシル7質量部を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)を用い48時間分散し、均一な分散液を調製した。
【0162】
(有機低分子物質)
【化8】
【0163】
次に、得られた分散液に、光熱変換材料(日本触媒社製、イーエクスカラーIR−14)0.07重量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネート2298−90T)4質量部を添加し、感熱記録層液を調製した。
次に、前記支持体(磁気記録層を有するPETフィルムの接着層)上に、得られた感熱記録層液を塗布し、加熱及び乾燥した後、更に65℃環境下に24時間保存して樹脂を架橋させ、約10μm厚の感熱記録層を設けた。
【0164】
−保護層−
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75%酢酸ブチル溶液10質量部(大日本インキ化学工業社製、ユニディックC7−157)、及びイソプロピルアルコール10質量部よりなる溶液を、ワイヤーバーで前記感熱記録層上に塗布し、加熱及び乾燥した後、80w/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約3μm厚の保護層を形成した。
以上により、熱可逆記録媒体を作製した。
【0165】
実施例1の前記ファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力20W、照射距離88.0mm、スポット径2.0mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このとき、実施例1と同様にして、レーザ出力が0.01%以下となるように、前記NDフィルターを5枚用いて減光した。レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、実施例2と同様、図9に示す光強度分布曲線が得られ、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.7倍となっていることが判った。
【0166】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力12W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の前記画像を消去した。
【0167】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0168】
(実施例6)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力10.4W、照射距離195mm、線幅0.5mm、スポット径約0.9mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.04倍となるような光強度分布であった。
【0169】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0170】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0171】
(実施例7)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力16.0W、照射距離200mm、線幅0.7mm、スポット径約1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.03倍となるような光強度分布であった。
【0172】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0173】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて200回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0174】
(実施例8)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカーを用い、レーザ出力7.5W、照射距離195mm、線幅0.5mm、スポット径約1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例5で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、実施例6と同様な光強度分布であった。
【0175】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力13W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
【0176】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて200回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0177】
(実施例9)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4と同様にして、直線状の画像を形成した。
【0178】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃にて1秒間加熱して画像を消去した。
【0179】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0180】
(比較例1)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例1のファイバカップリング式高出力半導体レーザ装置を用い、レーザ出力12W、照射距離92.0mm、スポット径約0.6mmとなるように調整した。そして、XYステージの送り速度1,200mm/sで、実施例1で作製した前記熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図11に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図1Eで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.3倍となっていることが判った。
【0181】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃で1秒間加熱して画像を消去した。
【0182】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、30回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0183】
(比較例2)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力4.7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、実施例4で作製した熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射し、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、ハイパワー用ビームビームアナライザLPK−CO2−16(spiricon社製)を用いて測定したところ、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.25倍となるような光強度分布であった。
【0184】
<画像消去工程>
続いて、熱傾斜試験機(東洋精機社製TYPE HG−100)を用い、1kgf/cm2の圧力で140℃で1秒間加熱して画像を消去した。
【0185】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、50回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0186】
(比較例3)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
比較例2の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、比較例2と同様にして、直線状の画像を形成した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.25倍となるような光強度分布であった。
【0187】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力2.0W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード2,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.01mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を20本走査して、前記熱可逆記録媒体に形成された直線状の画像を消去した。
このときのレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布は、前記画像形成工程と同様な光強度分布であった。
【0188】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて繰り返したところ、50回で直線画像の中心部に消去できない部分が発生した。
【0189】
(実施例10)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力4.7W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、実施例4で作製した前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0190】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の17倍)、スキャンスピード4,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/10に相当する0.30mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を34本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、図12に示すように、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの画像の消去時間は、0.53秒間であった。
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であり、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができた。
【0191】
(実施例11)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例6と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0192】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード3,200mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/7に相当する0.43mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を23本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.51秒間であった。
【0193】
(実施例12)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0194】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/5に相当する0.60mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を17本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.43秒間であった。
【0195】
(実施例13)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0196】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,400mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/4に相当する0.75mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を14本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.38秒間であった。
【0197】
(実施例14)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0198】
<画像消去工程>
その後、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、実施例13の画像消去工程と同様にして、10mm×50mmの範囲内にレーザ光を照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.38秒間であった。
【0199】
前記画像形成工程及び前記画像消去工程を、上記条件にて300回繰り返したところ、均一な画像の形成と均一でかつ短時間での消去とを行うことができた。
【0200】
(実施例15)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0201】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離204mm、スポット径1.6mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の9倍)、スキャンスピード8,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.20mm間隔で、線状かつ平行にレーザ光を50本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.63秒間であった。
【0202】
(実施例16)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0203】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離207mm、スポット径1.8mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の10倍)、スキャンスピード7,500mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.23mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を45本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は0.55秒間であった。
【0204】
(実施例17)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0205】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離265mm、スポット径6.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の33倍)、スキャンスピード1,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.75mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を14本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.53秒間であった。
【0206】
(実施例18)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0207】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離279mm、スポット径7.0mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の38.9倍)、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.88mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を12本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.71秒間であった。
【0208】
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であるため、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0209】
(実施例19)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力14W、照射距離200mm、スポット径1.3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0210】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離200mm、スポット径1.3mm(前記画像形成工程における画像形成時のスポット径の1.0倍)、スキャンスピード11,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、0.16mm間隔で線状かつ平行にレーザ光を63本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。また、このときの画像消去時間は0.63秒間であった。
【0211】
続いて、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であるため、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0212】
(実施例20)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例5において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、実施例5と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0213】
<画像形成工程>
出力40WのCO2レーザを備えたレーザマーカー(サンクス(株)社製、LP−440)を用い、レーザ出力3.2W、照射距離185mm、スポット径0.18mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、作製した熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0214】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力17W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード2,400mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/5に相当する0.60mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を17本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて背面に黒色紙(O.D.2.0)を敷いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は1.60であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は、完全に消去可能であった。また、このときの消去時間は、0.43秒間であった。
【0215】
(比較例4)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0216】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード6,000mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/15に相当する0.20mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を50本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.09であり、前記熱可逆記録媒体に形成された画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は0.68秒間であり、長時間を要した。このため、前記画像形成工程において画像が形成された熱可逆記録媒体を、プラスチックの箱に取り付け、コンベア上に載せて13m/分の搬送速度で移動させながら、前記画像消去工程における消去条件にて画像を消去したところ、前記熱可逆記録媒体の移動時間が0.59秒間であり、10mm×50mmの範囲の画像を完全に消去することができなかった。
【0217】
(比較例5)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第2の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様にして、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射し、直線状の画像を10mm×50mmの範囲に形成した。
【0218】
<画像消去工程>
その後、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mm、スキャンスピード1,600mm/sとなるように調整した。そして、直線状にレーザ光を走査し、その走査方向と略直交する方向において、スポット径の1/2に相当する1.5mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を7本走査して、10mm×50mmの範囲内に照射した。マクベス濃度計RD914を用いて画像濃度を測定したところ、画像消去領域の濃度は0.13であり、図13に示すように、画像を完全に消去できなかった。また、このときの消去時間は0.27秒間であった。
【0219】
(実施例21)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例10の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例10と同様のレーザ条件で、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、60秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、60秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は1.53であり、図14に示すように、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0220】
(実施例22)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例4の前記レーザマーカー及び前記熱可逆記録媒体を用い、実施例4の画像形成工程と同様のレーザ条件で、実施例21と同様に、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、60秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、60秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、これらのレーザ光の照射領域の交点部に消去された部分は、実施例21と同様に存在していなかった。
【0221】
(比較例6)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例21において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、90秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例21と同様にして画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、実施例21と同様のレーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、90秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は0.10であり、図15に示すように、該交点部に消去された部分があった。
【0222】
(実施例23)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例10の熱可逆記録媒体において、記録層における前記可逆性顕色剤を、下記構造式(6)で表される可逆性顕色剤に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0223】
(可逆性顕色剤)
【化9】
【0224】
<画像形成工程>
得られた熱可逆記録媒体に対して、実施例10の前記レーザマーカーを用いて画像を形成した。レーザ出力3.5W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、連続で0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査をした後、0.1秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は1.60であり、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0225】
(比較例7)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例23において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、0.2秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例23と同様にして、画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、実施例23と同様のレーザ条件で、線状に1回目のレーザ走査をした後、0.2秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査した。これらのレーザ光の照射領域の交点部の画像濃度を、マクベス濃度計RD914を用いて測定したところ、画像濃度は0.10であり、該交点部に消去された部分があった。
【0226】
(実施例24)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対応する実施例である。
<画像形成工程>
実施例20の熱可逆記録媒体に対して、実施例20の前記レーザマーカーを用いて画像を形成した。レーザ出力3.2W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整した。そして、線状にレーザ光を100mm走査し、その走査方向と略直交する方向において、連続で0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した。このとき、1本目のレーザ光の照射領域に対して2本目のレーザ光の照射領域が、該2本目のレーザ光の照射領域に対して3本目のレーザ光の照射領域が、それぞれ重なるように走査した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなることなく、100mm×0.5mm幅の均一な画像を形成することができた。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査をした後、0.1秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、該交点部に消去された部分は存在していなかった。
【0227】
(比較例8)
本比較例は、本発明の前記画像処理方法の第3の態様に対する比較例である。
<画像形成工程>
実施例24において、線状にレーザ光を100nm走査した後、その走査方向と略直交する方向において、0.2秒間の間隔にて、0.15mm間隔となるように、線状かつ平行にレーザ光を3本走査した以外は、実施例24と同様にして、画像を形成した。その結果、レーザ光の照射領域の重なり部分(レーザ光走査の間)で画像濃度が薄くなる部分が存在し、均一な画像を形成することができなかった。
また、前記レーザ条件で、線状に1回目のレーザ光を走査した後、0.2秒間後に、1回目のレーザ光の走査方向とは垂直方向に、同様のレーザ条件で、1回目のレーザ光の照射領域と重なるように、線状に2回目のレーザ光を走査したところ、該交点部に消去された部分があった。
【0228】
(実施例25)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応した応用例である。
<ラベルの作製>
前記熱可逆記録媒体としてのラベルを、以下のようにして作製した。
まず、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記アンダー層及び前記記録層を順次形成した。
【0229】
−中間層−
紫外線吸収性ポリマーの40質量%溶液(大塚化学株式会社製、PUVA−60MK−40K、水酸基価:60)20質量部、キシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、D−110N)3.2質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)23質量部からなる組成物を、ボールミルにて充分に撹拌して紫外線吸収構造を有するポリマー含有層塗布液を調製した。
次に、得られた紫外線吸収構造を有するポリマー含有層塗布液を、前記アンダー層、及び前記記録層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、50℃にて24時間加熱して、膜厚2μmの紫外線吸収構造を有するポリマー含有層(中間層)を形成した。
【0230】
−保護層−
次いで、作製した中間層上に、実施例4と同様にして保護層を形成した。
【0231】
−粘着層−
次に、アクリル系粘着剤(東洋インキ製造社製、BPS−1109)50質量部と、イソシアネート(三井武田ケミカル社製、D−170N)2質量部とからなる組成物を、充分に撹拌し、粘着層塗布液を調製した。
得られた粘着層塗布液を、前記アンダー層、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体の、これらが形成されていない側の面上に、ワイヤーバーにて塗布し、90℃にて2分間乾燥して、膜厚約20μmの粘着層を形成した。
以上により、熱可逆記録ラベルを作製した。
【0232】
<画像形成工程及び画像消去工程>
得られた熱可逆記録ラベルを、50mm×100mmのサイズにカットし、プラスチックの箱に貼り付け、実施例4と同様にして、画像の形成及び消去を行なったところ、均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0233】
(実施例26)
本実施例は、本発明の前記画像処理方法の第1の態様に対応した応用例である。
<タグ(カンバン)の作製>
前記熱可逆記録媒体としてのタグ(カンバン)を、以下のようにして作製した。
まず、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層を順次形成し、上面用シートを作製した。
次いで、実施例4と同様にして、実施例4で用いた前記支持体上に、前記バック層のみを形成し、下面用シートを作製した。
得られた上面用シート及び下面用シートを、それぞれ210mm×85mmのサイズにカットし、これらのシートの間に、RF−IDのインレット(DNP社製)、及びインレット周囲用スペーサーとしてPETGシート(三菱樹脂社製)を挟み込み、粘着テープ(日東電工社製)にて貼り合わせて、厚み500μmのRF−ID入り熱可逆記録タグ(カンバン)を作製した。
【0234】
<画像形成工程及び画像消去工程>
得られたRF−ID入り熱可逆記録タグをプラスチックの箱に取り付けて、実施例4と同様にして、画像の形成及び消去を行なったところ,均一な画像の形成と消去とを行うことができた。
【0235】
(実験例1)
実施例10と同様にして、10mm×50mmの範囲に直線状の画像を形成した。次いで、レーザ照射条件を、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径3.0mmに固定し、レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)を、0.075mm(1/40)〜1.5mm(1/2)の範囲内で適宜変化させて、画像の消去を行なった。このときの画像消去時間と、レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)との関係を、図16に示す。
なお、マクベス濃度計RD914を用いて、画像消去領域の画像濃度を測定したところ、前記レーザ光の照射位置間隔(対照射スポット径比)が、1.0mm(1/3)以上では、画像が完全に消去されていなかった。
【0236】
(実験例2)
実施例10と同様にして、レーザ光の照射スポット径0.18mmの条件で、10mm×50mmの範囲に直線状の画像を形成した。次いで、レーザ照射条件を、レーザ出力32Wに固定し、レーザ光の照射スポット径を、0.6〜8.0mmの範囲内で適宜変化させて、画像の消去を行なった。このときの画像消去時間と、レーザ光の照射スポット径との関係を、図17に示す。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高コントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができ、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1A】図1Aは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1B】図1Bは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1C】図1Cは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1D】図1Dは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図1E】図1Eは、通常のレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布(ガウス分布)における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度を示す概略説明図である。
【図2A】図2Aは、光強度分布がガウス分布であるレーザ光のスポット径を説明するための概略図である。
【図2B】図2Bは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光のスポット径を説明するための概略図である。
【図3A】図3Aは、熱可逆記録媒体の透明−白濁特性を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、熱可逆記録媒体の透明−白濁変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図4A】図4Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図5】図5は、RF−IDタグの一例を示す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図6B】図6Bは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、実施例1の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図9】図9は、実施例2及び実施例5の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図10】図10は、実施例1の画像消去工程及び実施例3の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図11】図11は、比較例1の画像形成工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布(ガウス分布)を示す概略説明図である。
【図12】図12は、実施例10における画像消去後の熱可逆記録媒体を示す写真である。
【図13】図13は、比較例5における画像消去後の熱可逆記録媒体を示す写真である。
【図14】図14は、実施例21において形成した、交差した線状の画像の交点部を示す写真である。
【図15】図15は、比較例6において形成した、交差した線状の画像の交点部を示す写真である。
【図16】図16は、実験例1における、画像消去時間とレーザ光の照射位置間隔(対スポット径比)との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、実験例2における、画像消去時間とレーザ光の照射スポット径との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0239】
10 レーザ発振器
12 ビームエキスパンダ
14 ガルバノメータ
14A ミラー
15 スキャニングユニット
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
S 熱可逆記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
画像消去工程におけるレーザ光の照射スポット径が、画像形成工程におけるレーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍である請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、
前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
熱可逆記録媒体における有機低分子物質が、樹脂中に粒子状に分散されてなり、該熱可逆記録媒体の透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の有機低分子物質が、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤との発色混合物であり、
前記熱可逆記録媒体の色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項7】
第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが、60秒間以内の間隔で行われる請求項4から6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である請求項2から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度の1.03倍以下である請求項1及び8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度よりも小さい請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
請求項1、8、9及び10のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項1】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像消去工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像消去領域における画像を消去した後、該第1の画像消去領域と隣接する第2の画像消去領域における画像を消去することを含み、
前記第1の画像消去領域へのレーザ光照射位置と、前記第2の画像消去領域へのレーザ光照射位置との間隔が、レーザ光の照射スポット径の1/12〜1/4であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
画像消去工程におけるレーザ光の照射スポット径が、画像形成工程におけるレーザ光の照射スポット径の1.2〜38倍である請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
樹脂と有機低分子物質とを少なくとも含んでなり、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像形成工程が、前記レーザ光を走査させて、第1の画像形成領域に画像を形成した後、該第1の画像形成領域と隣接する第2の画像形成領域に画像を形成することを含み、
前記第1の画像形成領域に位置する前記有機低分子物質が融解した後であって、該有機低分子物質が結晶化する前に、該第1の画像形成領域の一部に重なるように前記第2の画像形成領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
熱可逆記録媒体における有機低分子物質が、樹脂中に粒子状に分散されてなり、該熱可逆記録媒体の透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の有機低分子物質が、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤との発色混合物であり、
前記熱可逆記録媒体の色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項7】
第1の画像形成領域へのレーザ光の照射と、第2の画像形成領域へのレーザ光の照射とが、60秒間以内の間隔で行われる請求項4から6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である請求項2から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度の1.03倍以下である請求項1及び8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度よりも小さい請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
請求項1、8、9及び10のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである請求項11に記載の画像処理装置。
【図16】
【図17】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−69605(P2007−69605A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215760(P2006−215760)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]