説明

画像処理装置、符号化装置、復号装置及びプログラム

【課題】動画像のコンポーネント信号を修正する画像処理装置、符号化装置、復号装置及
びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の画像処理装置1は、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像
フォーマットの画像信号における第1のコンポーネント信号について修正するために、第
2のコンポーネント信号及び/又は第3のコンポーネント信号を正規化して前記第1のコ
ンポーネント信号の教師信号を生成する教師信号生成手段(3−8)と、前記第1のコン
ポーネント信号と前記教師信号とを比較して得られる差分値が予め定めた閾値以下である
場合に、前記教師信号に基づいて該第1のコンポーネント信号を修正する修正手段(9)
とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関し、特に、非可逆な符号化方式によって符号化され、符号
化劣化を生じた画像信号を修正する画像処理装置、符号化装置、復号装置及びプログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
画像信号を構成するコンポーネント信号の相互の相関を用いた信号補間技術として、単
板原色のイメージセンサにおける画素補間方式の高精度化技術が報告されている(例えば
、非特許文献1参照)。このようなイメージセンサにおける画像信号の補間技術は、RG
B色空間におけるRGB信号(R:赤色信号、G:緑色信号、B:青色信号)の補間を目
的としているため、符号化による信号劣化について想定されていない。
【0003】
また、YUV色空間におけるYUV信号のサンプリング周波数の違いに着目した信号補
間技術として、フォーマットカラー画像の色差成分補間技術が報告されている(例えば、
非特許文献2参照)。この技術では、輝度(Y)信号のサンプリング周波数の高さを利用
して色差信号(U信号=B−Y,V信号=R−Y)の補間信号を生成することによって高
精度な補間を行う。このようなYUV信号のサンプリング周波数の違いに着目した信号補
間技術も、YUV信号の補間を目的としているため、符号化による信号劣化について想定
されていない。
【0004】
これらの信号補間技術は、非可逆な符号化方式(例えば、MPEG−2,H.264等
)によって画像信号の符号化を行うにあたり、符号化前の画像信号に対する補間に適して
いるが、符号化後の画像信号に対する補間には適していない。例えば、非可逆な符号化処
理によってYUV信号を符号化すると、輝度信号の劣化に伴い、輝度信号を基準とする色
差信号にもこの輝度信号の劣化が伝播することになる。また、これらの信号補間技術は、
輝度信号自体の劣化を低減する処理ではないため、輝度信号の劣化を低減することもない

【0005】
また、符号化の劣化を低減するために、さまざまなデブロッキングフィルタ(例えば、
H.264等におけるデブロッキングフィルタ)があるが、これらのデブロッキングフィ
ルタは、画像信号成分のそれぞれを視覚的に劣化が目立たないように独立して処理するも
のであり、元の画像信号に対する符号化後の劣化を低減させることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】久野、杉浦、「単板原色イメージセンサにおける画素補間方式の高精度化」、映像情報メディア学会誌、Vol.61、No.7、2007年7月1日、pp.1006〜1016
【非特許文献2】杉田、田口、「YUV4:2:0フォーマットカラー画像の色差成分補間法」、電子情報通信学会論文誌、Vol.J88−A、No.6、2005年6月1日、pp.751〜760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
量子化による直交変換係数の劣化は、逆量子化及び逆直交変換により画素の劣化として
ブロック歪やモスキートノイズなどの劣化となって知覚される。また、画素ブロックごと
の劣化の程度が異なるため、隣接する符号化ブロックの境界において、その差が顕著な妨
害となってブロック歪が検知されることがある。このような場合に、動画像のコンポーネ
ント信号間の相関を利用することで更にブロック歪みを改善する余地がある。
【0008】
非可逆な符号化方式(例えば、MPEG−2,H.264等)にて、画像を小領域単位
で符号化する場合、例えばMPEG−2では、4:2:0フォーマットであれば、輝度信
号の画素ブロック16×16画素に対応する色差信号は8×8画素であり、信号間でサン
プリング周波数が異なる。例えば、MPEG−2に代表される画像符号化処理では、この
ようにサンプリング周波数が異なる信号を共通のサイズ8×8画素ブロックで処理を行う
。つまり、輝度信号を4つの8×8画素ブロックに分割し、色差信号も8×8画素ブロッ
クで符号化を行うため、符号化処理を施す8×8画素ブロックの占める範囲が輝度信号と
色差信号で異なることになる。
【0009】
本発明の目的は、上述のような問題に鑑みて、例えばサンプリング周波数の異なる又は同一の色空間の信号成分であっても、画像信号を修正することが可能な画像処理装置、符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様の画像処理装置は、動画像のコンポーネント信号(例えば、YUV信
号)を修正する画像処理装置であって、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フ
ォーマットの画像信号における第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)について修
正するために、第2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポー
ネント信号(例えば、V信号)を正規化して第1のコンポーネント信号の教師信号を生成
する教師信号生成手段と、前記第1のコンポーネント信号と前記教師信号とを比較して得
られる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、前記教師信号に基づいて該第1のコン
ポーネント信号を修正する修正手段と、を備えることを特徴とする。尚、コンポーネント
信号は、RGB,YCbCr,LUV,Lab,XYZなどの如何なる色空間のものでも
よい。
【0011】
本発明の第2態様の画像処理装置は、動画像のコンポーネント信号(例えば、YUV信
号)を修正する画像処理装置であって、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フ
ォーマットの画像信号における第2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は
第3のコンポーネント信号(例えば、V信号)について修正するために、第1のコンポー
ネント信号を正規化して第2のコンポーネント信号及び/又は第3のコンポーネント信号
の教師信号を生成する教師信号生成手段と、前記第2のコンポーネント信号及び/又は第
3のコンポーネント信号と前記教師信号とを比較して得られる差分値が予め定めた閾値以
下である場合に、前記教師信号に基づいて該第2のコンポーネント信号及び/又は第3の
コンポーネント信号を修正する修正手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1態様又は第2態様の画像処理装置において、前記動画像のコンポーネント
信号が、異なるサンプリングレートのコンポーネント信号を含む場合に、前記教師信号生
成手段は、画像信号における輝度信号(例えば、Y信号)のコンポーネント信号を、該輝
度信号に対応する色差信号(例えば、U信号,V信号)のサンプリングレートまでダウン
コンバートして色差信号の教師信号を生成する輝度信号ダウンコンバート手段と、前記画
像信号における色差信号のコンポーネント信号を、該色差信号に対応する輝度信号のサン
プリングレートまでアップコンバートして輝度信号の教師信号を生成する色差信号アップ
コンバート手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第1態様又は第2態様の画像処理装置において、前記動画像のコンポーネント
信号は、所定の色空間の各コンポーネント信号、該コンポーネント信号の直交変換係数、
及びこれらの信号を併合した組合せを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第3態様の画像処理装置は、サンプリング周波数の異なる色空間の信号
成分からなる画像信号を相互に修正する画像処理装置であって、非可逆な符号化方式を経
て得られる所定の画像フォーマットの画像信号の直交変換係数について、前記画像信号に
おける輝度信号を、該輝度信号に対応する色差信号のサンプリングレートまでダウンコン
バートする輝度信号ダウンコンバート部と、前記輝度信号ダウンコンバート部から得られ
る輝度信号の直交変換係数の各成分を、この輝度信号に対応する各色差信号の直交変換係
数の値を基準にして正規化し、色差信号の教師信号として生成する第1正規化処理部と、
前記画像信号の直交変換係数について、前記画像信号における色差信号を、該色差信号に
対応する輝度信号のサンプリングレートまでアップコンバートする色差信号アップコンバ
ート部と、前記色差信号アップコンバート部から得られる各色差信号の直交変換係数の各
成分を、各色差信号に対応する輝度信号の直交変換係数の値を基準にして正規化し、輝度
信号の教師信号として生成する第2正規化処理部と、色差信号及び輝度信号の各直交変換
係数について、それぞれの前記教師信号と比較し、比較して得られる差分値が予め定めた
閾値以下である場合に、元の直交変換係数の値の正負符号を保持して、この教師信号の直
交変換係数に基づいて色差信号及び輝度信号の直交変換係数を修正する修正部と、前記修
正部から供給される、輝度信号及び色差信号の修正された直交変換係数に対して逆直交変
換を施し、修正した画像信号を生成する逆直交変換部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第4態様の画像処理装置は、サンプリング周波数の異なる色空間の信号
成分からなる画像信号を相互に修正する画像処理装置であって、非可逆な符号化方式を経
て得られる所定の画像フォーマットの画像信号に対して直交変換を施し、輝度信号及び色
差信号のそれぞれの直交変換係数を生成する第1直交変換部と、前記画像信号における輝
度信号を、該輝度信号に対応する色差信号のサンプリングレートまでダウンコンバートす
る輝度信号ダウンコンバート部と、前記輝度信号ダウンコンバート部によって生成したダ
ウンコンバート後の輝度信号に対して直交変換を施し、ダウンコンバート後の輝度信号の
直交変換係数を生成する第2直交変換部と、前記第2直交変換部から得られる輝度信号の
直交変換係数の各成分を、この輝度信号に対応する各色差信号の直交変換係数の値を基準
にして正規化し、正規化した2種類の輝度信号の直交変換係数を、前記第1直交変換部か
ら出力される、当該2種類の輝度信号にそれぞれ対応する各色差信号の教師信号として生
成する第1正規化処理部と、前記画像信号における色差信号を、該色差信号に対応する輝
度信号のサンプリングレートまでアップコンバートする色差信号アップコンバート部と、
前記色差信号アップコンバート部から得られるアップコンバートした色差信号に対して直
交変換を施し、アップコンバート後の色差信号の直交変換係数を生成する第3直交変換部
と、前記第3直交変換部から得られる各色差信号の直交変換係数の各成分を、各色差信号
に対応する輝度信号の直交変換係数の値を基準にして正規化し、正規化した各色差信号の
直交変換係数に基づく係数を、前記第1直交変換部から出力される、当該色差信号にそれ
ぞれ対応する輝度信号の教師信号として生成する第2正規化処理部と、色差信号及び輝度
信号の各直交変換係数について、それぞれの前記教師信号と比較し、比較して得られる差
分値が予め定めた閾値以下である場合に、元の直交変換係数の値の正負符号を保持して、
この教師信号の直交変換係数に基づいて色差信号及び輝度信号の直交変換係数を修正する
修正部と、前記修正部から供給される、輝度信号及び色差信号の修正された直交変換係数
に対して逆直交変換を施し、修正した画像信号を生成する逆直交変換部と、を備えること
を特徴とする。
【0016】
また、本発明の第4態様の画像処理装置において、前記第1直交変換部、第2直交変換
部、及び第3直交変換部は、同一種類の直交変換処理からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第4態様の画像処理装置において、前記修正部は、色差信号については
、前記第1正規化処理部によって生成された教師信号の絶対値と前記第1直交変換部から
の色差信号の直交変換係数の絶対値の差分の絶対値を計算し、この差分の絶対値が予め定
めた閾値以下である場合に、前記第1直交変換部からの元の直交変換係数の値の正負符号
を保持して、この教師信号の直交変換係数に基づいて色差信号の直交変換係数を修正し、
修正された色差信号の直交変換係数を生成するとともに、輝度信号については、前記第2
正規化処理部によって生成された教師信号の絶対値と前記第1直交変換部からの輝度信号
の直交変換係数の絶対値の差分の絶対値を計算し、この差分の絶対値が予め定めた閾値以
下である場合に、前記第1直交変換部からの元の直交変換係数の値の正負符号を保持して
、この教師信号の直交変換係数に基づいて輝度信号の直交変換係数を修正し、修正された
輝度信号の直交変換係数を生成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第4態様の画像処理装置において、前記第1正規化処理部は、前記第1
直交変換部から出力される各色差信号の直交変換係数のうち直流成分を除く各成分の絶対
値の最大値を検出するとともに、検出したこの最大値の成分座標を特定し、この特定した
各色差信号の直交変換係数の成分座標に対応する、前記第2直交変換部から得られる輝度
信号の直交変換係数の成分座標を特定し、この特定した輝度信号の直交変換係数の値に対
する前記特定した色差信号の直交変換係数の値の比を前記第2直交変換部から得られる輝
度信号の直交変換係数の各成分に乗じて正規化するか、又は前記第1直交変換部から出力
された各色差信号の直交変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値と対応する前記第2直
交変換部から出力される輝度信号の直交変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値の比を
前記第2直交変換部から出力される輝度信号の直交変換係数に乗じて正規化することを特
徴とする。
【0019】
また、本発明の第4態様の画像処理装置において、前記第2正規化処理部は、前記第1
直交変換部から出力される輝度信号の直交変換係数のうち直流成分を除く各成分の絶対値
の最大値を検出するとともに、検出したこの最大値の成分座標を特定し、この特定した輝
度信号の直交変換係数の成分座標に対応する、前記第3直交変換部から得られる各色差信
号の直交変換係数の成分座標を特定し、この特定した色差信号の直交変換係数の値に対す
る前記特定した輝度信号の直交変換係数の値の比を前記第3直交変換部から得られる各色
差信号の直交変換係数の各成分に乗じて正規化するか、又は前記第1直交変換部から出力
された輝度信号の直交変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値と対応する前記第3直交
変換部から出力される各色差信号の直交変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値の比を
前記第3直交変換部から出力される各色差信号の直交変換係数に乗じて正規化することを
特徴とする。
【0020】
また、本発明の符号化装置は、本発明の第1態様〜第4態様のいずれかの画像処理装置
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の復号装置は、本発明の第1態様〜第4態様のいずれかの画像処理装置を
備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、動画像のコンポーネント信号(例えば、YUV信号)を修正する画像
処理装置として構成するコンピュータに、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像
フォーマットの画像信号における第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)について
修正するために、第2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポ
ーネント信号(例えば、V信号)を正規化して前記第1のコンポーネント信号の教師信号
を生成するステップと、前記第1のコンポーネント信号と前記教師信号とを比較して得ら
れる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、この教師信号に基づいて前記第1のコン
ポーネント信号を修正するステップと、を実行させるためのプログラムとしても特徴付け
られる。
さらに、本発明は、動画像のコンポーネント信号を修正する画像処理装置として構成す
るコンピュータに、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォーマットの画像信
号における第2のコンポーネント信号及び/又は第3のコンポーネント信号について修正
するために、第1のコンポーネント信号を正規化して第2のコンポーネント信号及び/又
は第3のコンポーネント信号の教師信号を生成するステップと、前記第2のコンポーネン
ト信号及び/又は第3のコンポーネント信号と前記教師信号とを比較して得られる差分値
が予め定めた閾値以下である場合に、この教師信号に基づいて該第2のコンポーネント信
号及び/又は第3のコンポーネント信号を修正するステップと、を実行させるためのプロ
グラムとしても特徴付けられる。
【0023】
また、本発明は、サンプリング周波数の異なる色空間の信号成分からなる画像信号を相
互に修正する画像処理装置として構成するコンピュータに、(a)非可逆な符号化方式を
経て得られる所定の画像フォーマットの画像信号に対して直交変換を施し、輝度信号及び
色差信号のそれぞれの直交変換係数を生成するステップと、(b)前記画像信号における
輝度信号を、該輝度信号に対応する色差信号のサンプリングレートまでダウンコンバート
するステップと、(c)前記ステップ(b)によって生成したダウンコンバート後の輝度
信号に対して直交変換を施し、ダウンコンバート後の輝度信号の直交変換係数を生成する
ステップと、(d)前記ステップ(c)を経て得られる輝度信号の直交変換係数の各成分
を、該輝度信号に対応する各色差信号の直交変換係数の値を基準にして正規化し、正規化
した2種類の輝度信号の直交変換係数を、前記第1直交変換部から出力される、当該2種
類の輝度信号にそれぞれ対応する各色差信号の教師信号として生成するステップと、(e
)前記画像信号における色差信号を、該色差信号に対応する輝度信号のサンプリングレー
トまでアップコンバートするステップと、(f)前記ステップ(e)を経て得られるアッ
プコンバートした色差信号に対して直交変換を施し、アップコンバート後の色差信号の直
交変換係数を生成するステップと、(g)前記ステップ(f)を経て得られる各色差信号
の直交変換係数の各成分を、各色差信号に対応する輝度信号の直交変換係数の値を基準に
して正規化し、正規化した各色差信号の直交変換係数に基づく係数を、前記第1直交変換
部から出力される、当該色差信号にそれぞれ対応する輝度信号の教師信号として生成する
ステップと、(h)色差信号及び輝度信号の各直交変換係数について、それぞれの前記教
師信号と比較し、比較して得られる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、元の直交
変換係数の値の正負符号を保持して、この教師信号の直交変換係数に基づいて色差信号及
び輝度信号の各直交変換係数を修正するステップと、(i)前記ステップ(h)を経て得
られる、輝度信号及び色差信号の修正された直交変換係数に対して逆直交変換を施し、修
正した画像信号を生成するステップと、を実行させるためのプログラムとしても特徴付け
られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、非可逆な符号化方式で符号化された画像信号であっても、画像劣化の
少ない画像として修正することができ、この修正した画像を例えば表示装置に表示すると
、本発明を適用しない場合と比較して画像劣化をより低減させることができるようになる

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による実施例1の画像処理装置のブロック図である。
【図2】本発明による実施例1の画像処理装置の動作を示す図である。
【図3】本発明による実施例1の画像処理装置における動作として、(a)は、4:2:0フォーマットにおける色差信号のU信号及びV信号を、ダウンコンバートした輝度信号Yに基づいて修正する様子を示しており、(b)は、4:2:0フォーマットにおける輝度信号Yを、アップコンバートした色差信号のU信号又はV信号に基づいて修正する様子を示す図である。
【図4】本発明による実施例1の画像処理装置における動作として、(a)は、4:2:2フォーマットにおける色差信号のU信号及びV信号を、ダウンコンバートした輝度信号Yに基づいて修正する様子を示しており、(b)は、4:2:2フォーマットにおける輝度信号Yを、アップコンバートした色差信号のU信号又はV信号に基づいて修正する様子を示す図である。
【図5】本発明による実施例1の画像処理装置を、動画像用の復号装置(例としてH.264復号装置)に適用した場合における例を示す図である。
【図6】本発明による実施例1の画像処理装置の詳細なブロック図である。
【図7】本発明に係る実施例2における動画像用の符号化装置(例としてH.264復号装置)を示す図である。
【図8】本発明に係る実施例2における動画像用の復号装置(例としてH.264復号装置)を示す図である。
【図9】本発明による実施例1の画像処理装置の変形例を示すブロック図である。
【図10】従来からの動画像用の符号化装置(例としてH.264符号化装置)の構成例を示す図である。
【図11】(a)は、フレーム画像における4:2:2フォーマットの信号例を示す図であり、(b)は、フレーム画像における4:2:0フォーマットの信号例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による実施例1の画像処理装置について説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の画像処理装置1は、従来からの動画像用の符号化装置によって符号化された
画像信号を復号した後、復号した画像信号を修正する装置である。まず、本発明の理解の
ために、従来からの動画像用の符号化装置(例としてH.264符号化装置)の構成例を
図10に示す。
【0028】
[符号化装置]
一般的に動画像の符号化では動き補償予測、直交変換、量子化、可変長符号化によって
画像を符号化する。動き補償予測を用いる符号化方式の場合、復号された画像を予測に用
いるため符号化装置内に復号装置を内包している。
【0029】
従来からの符号化装置111は、並べ替え部12と、減算部13と、直交変換部14と
、量子化部15と、可変長符号化部16と、逆量子化部17と、逆直交変換部18と、切
替スイッチ19と、フレーム内予測部20と、フレームメモリ21と、動き補償予測部2
2と、加算部23とを備える。尚、フレーム内予測部20は、いわゆるイントラ予測を行
う機能を有するが本願の主題ではないので、その説明は割愛する。以下、動き補償予測を
行う例について説明する。
【0030】
並べ替え部12は、画素ごとの画素値の並びとして構成される画像信号(例えばイメー
ジセンサ出力)についてフレーム画像として並べ替えを行って、フレーム画像を構成する
入力画像信号を減算部13及び動き補償予測部22に送出する。
【0031】
動き補償予測部22は、並べ替え部12から供給される入力画像信号に対して、フレー
ムメモリ21から取得する参照画像を用いて動きベクトル検出を行い、得られた動きベク
トルを用いて動き補償を行い、その結果得られた予測画像を切替スイッチ19を介して減
算部13及び加算部23に出力する。動きベクトルの情報は、可変長符号化部16に送出
される。
【0032】
減算部13は、並べ替え部12からの入力画像信号と、動き補償予測部22からの予測
画像との差分信号を生成して直交変換部14に送出する。
【0033】
直交変換部14は、減算部13から供給される差分信号に対して小領域の画素ブロック
ごとに直交変換(例えば、DCT)を施し、量子化部15に送出する。
【0034】
量子化部15は、直交変換部14から供給される小領域の画素ブロックに対応する量子
化テーブルを選択して量子化処理を行い、可変長符号化部16及び逆量子化部17に送出
する。
【0035】
可変長符号化部16は、量子化部15から供給される量子化信号についてスキャニング
を行って可変長符号化処理を施しビットストリームを生成するとともに、動き補償予測部
22から供給される動きベクトルの情報も可変長符号化を施して出力する。
【0036】
逆量子化部17は、量子化部15から供給される量子化信号について逆量子化処理を行
って逆直交変換部18に出力する。
【0037】
逆直交変換部18は、逆量子化部17から供給される直交変換係数に対して逆直交変換
(例えば、IDCT)を施し、加算部23に出力する。
【0038】
加算部23では、逆直交変換部18から得られる逆直交変換した信号と、動き補償予測
部22を経て画像処理装置1から得られる予測画像とを加算処理して復号画像を生成し、
フレームメモリ21に格納する。
【0039】
尚、切替スイッチ19は、画面内予測と画面間予測の切り替えに用いられる。
【0040】
次に、画像符号化で用いられる一般的な画像フォーマットについて説明する。一般に、
画像符号化では、人間の知覚における輝度及び色差に対する感度の違いから、異なる画素
サイズの信号の組み合わせで1フレームの画像フレームを構成する。このような画像フォ
ーマットとして、図11(a)に示すように、フレーム画像Fにおける画素S1について
、4:2:2フォーマット(水平方向にて、輝度信号(Y)の画素数1に対してU信号及
びV信号のそれぞれの画素数が1/2)や、図11(b)に示すように、フレーム画像F
における画素S2について、4:2:0フォーマット(水平及び垂直方向にて、輝度信号
の画素数1に対してU信号及びV信号のそれぞれの画素数が1/2)などがある。
【0041】
このような画像信号を、MPEGなどの代表的なブロック符号化では、輝度信号と色差
信号の区別なく一定の画素数ごとに符号化を行う。このため、輝度信号及び色差信号の符
号化ブロックの占める画像範囲は異なることになり、符号化劣化の生じる範囲も異なるこ
とになる。
【0042】
輝度信号及び色差信号が表現する各サンプリング数の違いは、輝度信号と色差信号のサ
ンプリング周波数が異なることを意味する。例えば、4:2:2フォーマットの場合、1
6×16画素の輝度信号で構成される画像範囲に対応する2つの色差信号(U信号及びV
信号)は、それぞれ8×16画素で構成される。従って、4:2:2フォーマットの場合
、水平方向にて、輝度信号に対して色差信号のサンプリング周波数は半分になる。同様に
、4:2:0フォーマットの場合、水平及び垂直方向にて、輝度信号に対して色差信号の
サンプリング周波数は半分になる。
【0043】
本発明による一実施例の画像処理装置は、このサンプリング周波数の違いを利用して、
輝度信号及び色差信号の符号化劣化の性質の違いによって生じる信号劣化を低減する装置
である。
【0044】
図1に、本発明による一実施例の画像処理装置のブロック図を示す。画像処理装置1は
、例えば非可逆な符号化方式で符号化された画像信号を復号するデコーダ(図示せず)か
ら出力される所定の画像フォーマットのYUV信号(例えば、サンプリング周波数が異な
る輝度信号及び色差信号からなる)を入力し、このサンプリング周波数の違いを利用して
、輝度信号及び色差信号の符号化劣化を抑制しつつ、当該所定の画像フォーマットに従う
新たなYUV信号(修正された輝度信号及び色差信号)を生成する。
【0045】
前述したように、符号化処理の最小単位となる1つの輝度信号の画素ブロック(8×8
画素)と1つの色差信号の画素ブロック(8×8画素)は、輝度信号と色差信号のサンプ
リング数の違いから表現される画像範囲は異なる。量子化による劣化は、8×8画素の画
素ブロックごとに異なり、それぞれのブロックの劣化の傾向は無相関であるから、特に画
素ブロックの境界において視覚的に顕著な劣化が生じうる。
【0046】
しかしながら、符号化後の色差信号の面積が、符号化後の輝度信号の面積に比べ水平(
又は水平及び垂直)に2倍の面積であることを考慮すれば、この色差信号から、対応する
輝度信号の隣接画素ブロック間の信号の相関を知ることができる。また、輝度信号のサン
プリング数は色差信号に比べて多く、高解像度であるため、符号化劣化を含む輝度信号を
色差信号のサンプリングレートまでダウンコンバートして劣化を低減させ、この劣化低減
させた輝度信号を色差信号の教師信号とすることによって色差信号の復元を行うことがで
きる。従って、輝度信号及び色差信号の相互の相関比較のためには、輝度信号及び色差信
号のサンプリングレートを同一にするのが好適である。
【0047】
以下、図1を参照して、本実施例の画像処理装置1について詳細に説明する。
【0048】
[画像処理装置の構成]
画像処理装置1は、第1直交変換部2と、輝度信号ダウンコンバート部3と、第2直交
変換部4と、第1正規化処理部5と、色差信号アップコンバート部6と、第3直交変換部
7と、第2正規化処理部8と、修正部9と、逆直交変換部10とを備える。
【0049】
第1直交変換部2は、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォーマットの画
像信号(前述したデコーダ出力)における輝度信号及び色差信号のそれぞれに対して直交
変換を施し、得られた輝度信号及び色差信号のそれぞれの直交変換係数を修正部9に送出
するとともに、色差信号の直交変換係数については第1正規化処理部5に送出し、輝度信
号の直交変換係数については第2正規化処理部8に送出する。この直交変換処理は、当該
非可逆な符号化方式の符号化手順における直交変換処理とすることができる。例えば、こ
の直交変換処理は、MPEG−2,H.264等の符号化方式のDCT(離散コサイン変
換)や整数精度DCTとすることができるが、画像処理装置1内で共通に用いるものであ
ればよく、予め規定した任意の符号化方式の同一種類の直交変換処理を用いることができ
る。
【0050】
輝度信号ダウンコンバート部3は、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォ
ーマットの画像信号(前述したデコーダ出力)における輝度信号を、この輝度信号に対応
する色差信号のサンプリングレートまでダウンコンバートして第2直交変換部4に送出す
る。例えば、入力される画像信号が4:2:2フォーマットのYUV信号である場合に、
輝度信号ダウンコンバート部3は、入力される輝度信号を、水平方向について1/2倍に
ダウンコンバートし、ダウンコンバートした輝度信号を第2直交変換部4に送出する。或
いは又、入力される画像信号が、4:2:0フォーマットのYUV信号である場合に、輝
度信号ダウンコンバート部3は、入力される輝度信号を、水平及び垂直方向について1/
2倍にダウンコンバートし、ダウンコンバートした輝度信号を第2直交変換部4に送出す
る。ダウンコンバートに用いるフィルタ処理は、入力される輝度信号を対応する色差信号
のサンプリングレートまでダウンコンバートするものであれば、既知のダウンコンバータ
フィルタを用いることができるが、位相遅れを生じさせず周波数特性だけを変更する高次
のフィルタ係数を有するフィルタが望ましい。輝度信号ダウンコンバート部3内に遅延調
整機能を設けてもよい。
【0051】
第2直交変換部4は、輝度信号ダウンコンバート部3から入力されるダウンコンバート
した輝度信号に対して、第1直交変換部2で用いる直交変換処理と同様の直交変換を施し
、得られたダウンコンバート後の輝度信号の直交変換係数を第1正規化処理部5に送出す
る。
【0052】
第1正規化処理部5は、第2直交変換部4から得られる輝度信号の直交変換係数の各成
分を、この輝度信号に対応する各色差信号の直交変換係数の値を基準にして正規化し、正
規化した2種類の輝度信号の直交変換係数を、第1直交変換部2から出力される、当該2
種類の輝度信号にそれぞれ対応する各色差信号の教師信号として生成する。より具体的に
は、第1正規化処理部5は、第1直交変換部2から出力される各色差信号の直交変換係数
のうち直流成分である(0,0)成分を除く各成分の絶対値の最大値を検出するとともに
、検出したこの最大値の成分座標を特定し、この特定した各色差信号の直交変換係数の成
分座標に対応する、第2直交変換部4から得られる輝度信号の直交変換係数の成分座標を
特定し、この特定した輝度信号の直交変換係数の値に対する前記特定した色差信号の直交
変換係数の値の比を第2直交変換部4から得られる輝度信号の直交変換係数の各成分に乗
じて正規化するか、又は第1直交変換部2から出力された各色差信号の直交変換係数の絶
対値の平均値又は二乗平均値と対応する第2直交変換部4から出力される輝度信号の直交
変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値の比を第2直交変換部4から出力される輝度信
号の直交変換係数に乗じて正規化し、正規化した2種類の輝度信号の直交変換係数を、第
1直交変換部2から出力される、当該2種類の輝度信号にそれぞれ対応する各色差信号の
教師信号として修正部9に送出する。正規化処理の具体例は後述する。
【0053】
色差信号アップコンバート部6は、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォ
ーマットの画像信号(前述したデコーダ出力)における色差信号を、この色差信号に対応
する輝度信号のサンプリングレートまでアップコンバートして第3直交変換部7に送出す
る。例えば、入力される画像信号が4:2:2フォーマットのYUV信号である場合に、
色差信号アップコンバート部6は、入力される色差信号を、水平方向について2倍にアッ
プコンバートし、アップコンバートした色差信号を第3直交変換部7に送出する。また、
入力される画像信号が、4:2:0フォーマットのYUV信号である場合に、色差信号ア
ップコンバート部6は、入力される色差信号を、水平及び垂直方向について2倍にアップ
コンバートし、アップコンバートした色差信号を第3直交変換部7に送出する。アップコ
ンバートに用いるフィルタ処理は、入力される色差信号を対応する輝度信号のサンプリン
グレートまでアップコンバートするものであれば、既知のアップコンバータフィルタを用
いることができるが、位相遅れを生じさせず周波数特性だけを変更する高次のフィルタ係
数を有するフィルタが望ましい。色差信号アップコンバート部6内に遅延調整機能を設け
てもよい。
【0054】
第3直交変換部7は、色差信号アップコンバート部6から入力されるアップコンバート
した色差信号に対して、対応する輝度信号の画素ブロックに分割し、それぞれの画素ブロ
ックを順次第1直交変換部2で用いる直交変換処理と同様の直交変換を施し、得られたア
ップコンバート後の色差信号の直交変換係数を第2正規化処理部8に送出する。これによ
り、輝度信号と色差信号との間で同一サイズの直交変換ブロックを処理することができる
ようになる。
【0055】
第2正規化処理部8は、第3直交変換部7から得られる各色差信号の直交変換係数の各
成分を、各色差信号に対応する輝度信号の直交変換係数の値を基準にして正規化し、正規
化した各色差信号の直交変換係数に基づく係数を、第1直交変換部2から出力される、当
該色差信号にそれぞれ対応する輝度信号の教師信号として生成する。より具体的には、第
2正規化処理部8は、第1直交変換部2から出力される輝度信号の直交変換係数のうち直
流成分である(0,0)成分を除く各成分の絶対値の最大値を検出するとともに、検出し
たこの最大値の成分座標を特定し、この特定した輝度信号の直交変換係数の成分座標に対
応する、第3直交変換部7から得られる各色差信号の直交変換係数の成分座標を特定し、
この特定した色差信号の直交変換係数の値に対する前記特定した輝度信号の直交変換係数
の値の比を第3直交変換部7から得られる各色差信号の直交変換係数の各成分に乗じて正
規化するか、又は第1直交変換部2から出力された輝度信号の直交変換係数の絶対値の平
均値又は二乗平均値と対応する第3直交変換部7から出力される各色差信号の直交変換係
数の絶対値の平均値又は二乗平均値の比を第3直交変換部7から出力される各色差信号の
直交変換係数に乗じて正規化し、正規化した各色差信号の直交変換係数に基づく係数を、
第1直交変換部2から出力される、当該色差信号にそれぞれ対応する輝度信号の教師信号
として修正部9に送出する。正規化処理の具体例は後述する。尚、各色差信号の直交変換
係数に基づく係数とは、各色差信号の直交変換係数のいずれか一方の大きいほうを選択す
るか、又は各色差信号の直交変換係数の絶対値の平均値又は二乗平均値とするなど、正規
化して得られる各色差信号の直交変換係数に相関するように生成される直交変換係数とす
ることができることを意味する。
【0056】
修正部9は、色差信号及び輝度信号の各直交変換係数について、それぞれの前記教師信
号と比較し、比較して得られる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、元の直交変換
係数の値の正負符号を保持して、この教師信号の直交変換係数に基づいて修正する修正処
理を行う。より具体的には、修正部9は、色差信号については、第1正規化処理部5によ
って生成された教師信号(輝度信号についてダウンコンバートした直交変換係数)の絶対
値と第1直交変換部2からの色差信号の直交変換係数の絶対値の差分の絶対値を計算し、
この差分の絶対値が予め定めたU信号用の閾値α[v][u]又はV信号用の閾値α[v]
[u]以下である場合に、第1直交変換部2からの元の直交変換係数の値の正負符号を保持
して、この教師信号の直交変換係数に基づいてこれら色差信号の直交変換係数を修正し、
修正された色差信号の直交変換係数を逆直交変換部10に送出するとともに、輝度信号に
ついては、第2正規化処理部8によって生成された教師信号(色差信号についてアップコ
ンバートした直交変換係数)の絶対値と第1直交変換部2からの輝度信号の直交変換係数
の絶対値の差分の絶対値を計算し、この差分の絶対値が予め定めたY信号用の閾値α[
v][u]以下である場合に、第1直交変換部2からの元の直交変換係数の値の正負符号を
保持して、この教師信号の直交変換係数に基づいて輝度信号の直交変換係数を修正し、修
正された輝度信号の直交変換係数を逆直交変換部10に送出する。尚、この教師信号の直
交変換係数に基づく修正処理は、直交変換係数の直流成分である(0,0)成分に対して
は行わない。また、この教師信号の直交変換係数に基づく修正処理は、教師信号の直交変
換係数への置き換えや、教師信号の直交変換係数の重み付け平均した値への振幅調整など
を含む。
【0057】
逆直交変換部10は、修正部9から供給される修正処理後の輝度信号及び色差信号の修
正された直交変換係数に対して逆直交変換を施し、修正した画像信号(YUV信号)を生
成する。修正した画像信号(YUV信号)を表示装置(図示せず)に表示させることで、
非可逆な符号化方式で符号化された画像信号であっても、画像劣化の少ない画像として修
正されていることが確認できる。
【0058】
以下、図2〜図4を参照して、本実施例の画像処理装置1の動作を説明する。
【0059】
[画像処理装置の動作]
図2に、本発明による一実施例の画像処理装置の動作を示す。以下、所定の画像フォー
マットのYUV信号(サンプリング周波数が異なる輝度信号及び色差信号のコンポーネン
ト信号)が入力される場合について説明する。
【0060】
ステップS1にて、画像処理装置1には、非可逆な符号化方式で符号化された画像信号
を復号するデコーダ(図示せず)から出力される所定の画像フォーマットのYUV信号(
サンプリング周波数が異なる輝度信号及び色差信号のコンポーネント信号)が入力される

【0061】
まず、輝度信号ダウンコンバート部3によって、非可逆な符号化方式を経て得られる所
定の画像フォーマットの画像信号における輝度信号を、この輝度信号に対応する色差信号
のサンプリングレートまでダウンコンバートするとともに(ステップS2)、色差信号ア
ップコンバート部6によって、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォーマッ
トの画像信号における色差信号を、この色差信号に対応する輝度信号のサンプリングレー
トまでアップコンバートする(ステップS3)。
【0062】
次に、第1直交変換部2によって、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォ
ーマットの画像信号における元の輝度信号及び色差信号のそれぞれに対して直交変換を施
し、輝度信号及び色差信号のそれぞれの直交変換係数を生成するとともに(ステップS4
)、第2直交変換部4によって、輝度信号ダウンコンバート部3から入力されるダウンコ
ンバートした輝度信号に対して、第1直交変換部2で用いる直交変換処理と同様の直交変
換を施し、ダウンコンバート後の輝度信号の直交変換係数を生成し(ステップS5)、第
3直交変換部7によって、色差信号アップコンバート部6から入力されるアップコンバー
トした色差信号に対して、第1直交変換部2で用いる直交変換処理と同様の直交変換を施
し、アップコンバート後の色差信号の直交変換係数を生成する(ステップS6)。
【0063】
つまり、第2直交変換部4及び第3直交変換部7によって、例えば、4:2:2フォー
マットのYUV信号の場合には、輝度信号に対して1つの8×8画素ブロックのDCT係
数と、色差信号に対して4つの8×8画素ブロックのDCT係数の組が得られる。
【0064】
次に、第1正規化処理部5によって、第2直交変換部4から得られる輝度信号の直交変
換係数の各成分を、この輝度信号に対応する各色差信号の直交変換係数の値を基準にして
正規化処理を施し、正規化した2種類の輝度信号の直交変換係数を、第1直交変換部2か
ら出力される、当該2種類の輝度信号にそれぞれ対応する各色差信号の教師信号として生
成するとともに(ステップS7)、第2正規化処理部8によって、第3直交変換部7から
得られる各色差信号の直交変換係数の各成分を、各色差信号に対応する輝度信号の直交変
換係数の値を基準にして正規化処理を施し、正規化した各色差信号の直交変換係数に基づ
く係数を、第1直交変換部2から出力される、当該色差信号にそれぞれ対応する輝度信号
の教師信号として生成する(ステップS8)。
【0065】
ここで、例えば色差信号に対する輝度信号からの教師信号の生成手順として、二通りを
説明する。
【0066】
(第1の例)
以下の式に示すとおり、各色差信号の直交変換係数の各成分座標(u,v)(ただし、
直流成分である(0,0)成分を除く)における値のうち絶対値の最大値となる成分座標
が(a,b)で与えられる場合に、U信号に対する教師信号T_U[v][u],V信号に対
する教師信号T_V[v][u]は、各色差信号の直交変換係数U[b][a](又はV[b][a]
)に対応する成分座標の輝度信号の直交変換係数Y[b][a]を基準にした比によって、ダ
ウンコンバートした輝度信号の直交変換係数Y[v][u]の各成分を正規化することにより
得ることができる。
T_U[v][u]=Y[v][u]*U[b][a]/Y[b][a]
T_V[v][u]=Y[v][u]*V[b][a]/Y[b][a]
ここで、u,vは、8×8画素ブロックであれば0〜7。ここでの正規化係数は、U[
b][a]/Y[b][a]又はV[b][a]/Y[b][a]で与えられる。
【0067】
輝度信号に対する教師信号T_Y[v][u]も同様のやり方で得ることができる。例えば
、以下の式に示すとおり、輝度信号の直交変換係数の各成分座標(u,v)(ただし、直
流成分である(0,0)成分を除く)における値のうち絶対値の最大値となる成分座標が
(a,b)で与えられる場合に、輝度信号用の教師信号T_Y[v][u]は、この輝度信号
の直交変換係数Y[b][a]に対応する成分座標の色差信号の直交変換係数U[b][a](又
はV[b][a])を基準にした比によって、アップコンバートした色差信号の直交変換係数
U[v][u](又はV[v][u])の各成分を正規化することにより得ることができる。
T_Y[v][u]=U[v][u]*Y[b][a]/U[b][a]、又は
=V[v][u]*Y[b][a]/V[b][a]
ここでの正規化係数は、Y[b][a]/U[b][a]又はY[b][a]/V[b][a]で与えられ
る。
尚、輝度信号は、色差信号に対し複数の直交変換ブロックで構成されるので、例えば4
:2:0フォーマットの場合、アップコンバートされた色差信号を4つに分割し、輝度信
号の直交変換ブロックに対するブロックごとに正規化を行う。
【0068】
尚、或る輝度信号に対する教師信号T_Y[v][u]としては2つ得られるため、これら
の2つの教師信号のうちの絶対値の大きいほうを教師信号とするか、又は絶対値の平均値
(又は二乗平均値)の大きいほうを教師信号とするか、又は2つの教師信号のうち相関の
高いほうを教師信号とするか、又は事前に予め定められた選択基準で選択したものと教師
信号とすることができるが、画像処理装置1の利用目的に応じて随意適したやり方で教師
信号を算出することができる。
【0069】
(第2の例)
第1の例では、教師信号を生成するために、直交変換係数の絶対値の最大値を検出して
正規化する例について説明したが、直交変換係数の絶対値の平均値(又は二乗平均値)に
基づいて正規化する例は、以下のとおりである。
【0070】
例えば、輝度信号の直交変換係数の二乗平均値によって、色差信号に対する教師信号を
生成する場合、この輝度信号の直交変換係数Y[v][u]を、色差信号の直交変換係数をU
[v][u],V[v][u]として、以下に示すC言語による記述例のようにして正規化係数を
求めて教師信号を生成することができる。
<C言語による記述例>
Tmp[Y]=0; //Y信号の交流エネルギー保存用バッファ
Tmp[U]=0; //U信号の交流エネルギー保存用バッファ
Tmp[V]=0; //V信号の交流エネルギー保存用バッファ
for(v=0; v<8; v++){
for(u=0; u<8; u++){
tmp[U]+=(U[v][u]* U [v][u]);
tmp[V]+=(V[v][u]* V [v][u]);
tmp[Y]+=(Y[v][u]* Y [v][u]);
}
}
NU=pow (tmp[U]/tmp[Y], 0.5); //U信号用の正規化係数NU
NV=pow (tmp[V]/tmp[Y], 0.5); //V信号用の正規化係数NV
【0071】
尚、輝度信号は、複数の直交変換ブロックで構成されるので、教師信号も対応するブロ
ック(例えば、4:2:0フォーマットの場合、アップコンバートされた色差信号で生成
される教師信号を4つに分割した4つの直交変換ブロック)で生成される。
【0072】
再び図2を参照するに、修正部9によって、輝度信号については、第2正規化処理部8
によって生成された教師信号(色差信号についてアップコンバートした直交変換係数)の
絶対値と第1直交変換部2からの輝度信号の直交変換係数の絶対値の差分の絶対値を計算
し、この差分の絶対値が予め定めたY信号用の閾値α[v][u]以下であれば、第1直交
変換部2からの元の直交変換係数の値の正負符号を保持して、この教師信号の直交変換係
数に基づく修正処理を行うとともに(ステップS9,S10)、色差信号については、第
1正規化処理部5によって生成された教師信号(輝度信号についてダウンコンバートした
直交変換係数)の絶対値と第1直交変換部2からの色差信号の直交変換係数の絶対値の差
分の絶対値を計算し、この差分の絶対値が予め定めたU信号用の閾値α[v][u]又はV
信号用の閾値α[v][u]以下であれば、第1直交変換部2からの元の直交変換係数の値
の正負符号を保持して、この教師信号の直交変換係数に基づく修正処理を行う(ステップ
S11,S12)。ただし、この教師信号の直交変換係数に基づく修正処理は、直交変換
係数の直流成分である(0,0)成分に対しては行わない。また、この教師信号の直交変
換係数に基づく修正処理は、教師信号の直交変換係数への置き換えや、教師信号の直交変
換係数の重み付け平均した値への振幅調整などを含む。
【0073】
例えば、修正部9におけるU信号についての修正処理のC言語による記述例は以下に示
すとおりである。尚、Y信号及びV信号についても同様な記述とすることができる。
【0074】
<修正処理のC言語による記述例>
for(v=0; v<8; v++){
for(u=0; u<8; u++){
if(!(v==0&&u==0)){//v=0且つu=0の場合は処理しない。
m=(U[v][u]<0? -1: 1);// U[v][u]が正ならばm=1、負ならばm=−1。
tmp=fabs(T_U[v][u]); //教師信号の絶対値をtmpに保存。
U[v][u]= (fabs(U[v][u]*m-tmp)>αU[v][u]? U[v][u]: m*tmp) // U[v][u]の
絶対値とtmpの差がαU[v][u]より大きければU [v][u]は変更しない。U [v][u]の絶対値と
tmpの差がαU[v][u]以下であれば正負符号を保持して修正(本例では置き換え)。
}
}
}
【0075】
次に、逆直交変換部10によって、修正部9から供給される、輝度信号及び色差信号の
修正された直交変換係数に対して逆直交変換を施し、修正した画像信号(YUV信号)を
生成する(ステップS13)。尚、このようにして修正された輝度信号は、サンプリング
レートの低い色差信号によって修正されるため、全体的にぼけた信号となることがある。
そこで、修正された輝度信号を全て書き換えるのではなく、劣化が顕著に現れやすい各画
素ブロックの最外周の画素(例えば、予め規定した画素位置の1ないし2画素)を置き換
えるようにして、デブロッキングフィルタとして動作するように構成することもできる。
【0076】
図3及び図4は、この画像処理装置1における一連の処理動作を模式的に示した図であ
る。図3(a)は、4:2:0フォーマットにおける色差信号のU信号及びV信号を、ダ
ウンコンバートした輝度信号Yに基づいて修正する様子を示しており、図3(b)は、4
:2:0フォーマットにおける輝度信号Yを、アップコンバートした色差信号のU信号又
はV信号に基づいて修正する様子を示している。図4(a)は、4:2:2フォーマット
における色差信号のU信号及びV信号を、ダウンコンバートした輝度信号Yに基づいて修
正する様子を示しており、図4(b)は、4:2:2フォーマットにおける輝度信号Yを
、アップコンバートした色差信号のU信号又はV信号に基づいて修正する様子を示してい
る。
【0077】
これにより、本実施例の画像処理装置1によれば、非可逆な符号化方式で符号化された
画像信号であっても、画像劣化の少ない画像として修正することができ、符号化に起因し
て生じていた画像劣化をより低減させることができるようになる。
【0078】
尚、MPEG−2やMPEG−4AVC/H.264など多くの符号化方式における直
交変換としてDCTが用いられているが、本実施例の画像処理装置によれば、一般的に用
いられている画像信号の輝度信号と色差信号のサンプリング周波数の違いを利用するもの
であるから、任意の符号化方式に適用することができる。特に、非可逆な符号化方式によ
って劣化した画像を入力して、その符号化方式による劣化を回復させることを目的とする
場合には、入力に用いた符号化方式と同じ直交変換を用いることによって、より劣化低減
の効果を発揮することになる。
【0079】
以下、本実施例の画像処理装置1を、動画像用の復号装置に適用した場合について説明
する。
【0080】
本実施例の画像処理装置1を、動画像用の復号装置31aに適用した場合における例を
図5に示す。尚、以下の説明において同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明す
る。
【0081】
本実施例に係る復号装置31aは、可変長復号部32と、逆量子化部33と、逆直交変
換部34と、加算部35と、画像処理装置1と、フレームメモリ36と、動き補償予測部
37と、並べ替え部38と、画面内予測と画面間予測の切り替えに用いる切替スイッチ3
9とを備える。尚、本実施例に係る復号装置31aは、既知の復号装置(例えば、MPE
G−2,H.264用の復号装置)に対して、本実施例の画像処理装置1が追加されたも
のである。
【0082】
可変長復号部32は、符号化されたビットストリームを入力して、可変長復号処理を施
し逆量子化部33に送出するとともに、動きベクトルの情報を復号して動き補償予測部3
7に送出する。また、可変長復号部32は、この量子化情報を画像処理装置1内の修正部
9に送出する。
【0083】
逆量子化部33は、可変長復号部32から供給される量子化信号に対して逆量子化処理
を施して動き補償した差分信号の直交変換係数を取得し、逆直交変換部34に送出する。
【0084】
逆直交変換部34は、逆量子化部33から供給される差分信号の直交変換係数に対して
、逆直交変換(例えば、IDCT)を施し、得られる当該差分信号を加算部35に送出す
る。
【0085】
動き補償予測部37は、フレームメモリ36から得られる参照画像と可変長復号部32
から得られる動きベクトルとを用いて予測画像を生成し、切替スイッチ39を介して加算
部35に出力する。
【0086】
加算部35は、逆直交変換部34から得られる当該差分信号と、動き補償予測部37か
ら供給される予測画像とを加算して画像信号を復元し、復元した画像信号を本実施例に係
る復号装置31aにおける画像処理装置1に送出する。
【0087】
復号装置31aにおける画像処理装置1は、加算部35から得られる画像信号を上述し
たように符号化劣化を抑制した修正後の画像信号を生成し、フレームメモリ36に格納す
るとともに、並べ替え部38に送出する。
【0088】
並べ替え部38は、画像処理装置1から得られる修正後の画像信号を表示信号として並
べ替えを行う。
【0089】
ここで、図5における画像処理装置1の構成例を図6に示す。図6に示す画像処理装置
1の構成は、図1に示す画像処理装置1と同様であり、更なる詳細な説明は省略するが、
修正部9が、修正処理に用いるY信号用の閾値α[v][u](又はU信号用の閾値α[
v][u]又はV信号用の閾値α[v][u])として、量子化部15から得られる量子化範
囲内の値である、量子化値q[v][u]の半値(=q[v][u]/2)を用いた例であるが、
量子化値q[v][u]の値以下の任意の値を設定することができる。
【0090】
即ち、復号装置31aに適用した画像処理装置1における修正部9では、例えば色差信
号の場合、生成された教師信号と色差信号の元の直交変換係数の絶対値とを比較し、符号
化方式に依存する量子化範囲内に差分量が収まる場合は、色差信号の元の直交変換係数の
値の正負符号を保持して、この教師信号の直交変換係数に基づいて元の直交変換係数を修
正する。輝度信号の場合も同様に、修正部9は、生成された教師信号と輝度信号の元の直
交変換係数の絶対値とを比較し、符号化方式に依存する量子化範囲内に教師信号が収まる
場合は、輝度信号の元の直交変換係数の値の正負符号を保持して、この教師信号の直交変
換係数に基づいて元の直交変換係数を修正する。
【0091】
本例における修正部9におけるU信号についての修正処理を、C言語による記述例とし
て以下のように示すことができる。尚、Y信号及びV信号についても同様である。
【0092】
<修正処理のC言語による記述例>
for(v=0; v<8; v++){
for(u=0; u<8; u++){
if(!(v==0&&u==0)){//v=0且つu=0の場合は処理しない。
m=(U[v][u]<0? -1: 1);// U [v][u]が正ならばm=1、負ならばm=−1。
tmp=fabs(T_ U[v][u]); //教師信号の絶対値をtmpに保存。
U[v][u]= (fabs(U[v][u]*m-tmp)>q[v][u]/2? U[v][u]: m*tmp) // U[v][u]の
絶対値とtmpの差がq[v][u]/2より大きければU[v][u]は変更しない。U[v][u]の絶対値とtm
pの差がq[v][u]/2以下であれば正負符号を保持して修正(例えば、置き換え)。
}
}
}
【0093】
このように、本実施例の画像処理装置1を復号装置に適用すれば、既存の符号化装置に
よって符号化された、例えばサンプリング周波数の異なる色空間の信号成分からなる画像
信号を復号した場合であっても、その画像信号の劣化を低減するように修正することがで
きる。
【0094】
次に、図7を参照して、実施例1の画像処理装置1を動画像用の符号化装置に適用した
場合について、実施例2として説明する。尚、以下の説明において同様な構成要素には同
一の参照番号を付して説明する。
【実施例2】
【0095】
[符号化装置]
実施例2の符号化装置11は、図1に示す画像処理装置1と、並べ替え部12と、減算
部13と、直交変換部14と、量子化部15と、可変長符号化部16と、逆量子化部17
と、逆直交変換部18と、切替スイッチ19と、フレーム内予測部20と、フレームメモ
リ21と、動き補償予測部22と、加算部23とを備える。尚、本実施例に係る符号化装
置11は、既知の符号化装置(例えば、MPEG−2,H.264用の符号化装置)に対
して、図1に示す画像処理装置1が追加されたものである。フレーム内予測部20は、い
わゆるイントラ予測を行う機能を有するが本願の主題ではないので、その説明は割愛する
。以下、動き補償予測を行う例について説明する。
【0096】
並べ替え部12は、画素ごとの画素値の並びとして構成される画像信号(例えばイメー
ジセンサ出力)についてフレーム画像として並べ替えを行って、フレーム画像を構成する
入力画像信号を減算部13及び動き補償予測部22に送出する。
【0097】
動き補償予測部22は、並べ替え部12から供給される入力画像信号に対して、フレー
ムメモリ21から画像処理装置1を経て取得する参照画像を用いて動きベクトル検出を行
い、得られた動きベクトルを用いて動き補償を行い、その結果得られた予測画像を画像処
理装置1に出力する。動きベクトルの情報は、可変長符号化部16に送出される。
【0098】
減算部13は、並べ替え部12からの入力画像信号と、動き補償予測部22を経て得ら
れる画像処理装置1からの予測画像との差分信号を生成して直交変換部14に送出する。
【0099】
直交変換部14は、減算部13から供給される差分信号に対して小領域の画素ブロック
ごとに直交変換(例えば、DCT)を施し、量子化部15に送出する。
【0100】
量子化部15は、直交変換部14から供給される小領域の画素ブロックに対応する量子
化テーブルを選択して量子化処理を行い、可変長符号化部16及び逆量子化部17に送出
する。
【0101】
可変長符号化部16は、量子化部15から供給される量子化信号についてスキャニング
を行って可変長符号化処理を施しビットストリームを生成するとともに、動き補償予測部
22から供給される動きベクトルの情報も可変長符号化を施して出力する。
【0102】
逆量子化部17は、量子化部15から供給される量子化信号について逆量子化処理を行
って逆直交変換部18に出力する。
【0103】
逆直交変換部18は、逆量子化部17から供給される直交変換係数に対して逆直交変換
(例えば、IDCT)を施し、加算部23に出力する。
【0104】
加算部23では、逆直交変換部18から得られる逆直交変換した信号と、動き補償予測
部22を経て画像処理装置1から得られる予測画像とを加算処理して復号画像を生成し、
フレームメモリ21に格納する。
【0105】
尚、切替スイッチ19は、画面内予測と画面間予測の切り替えに用いられる。
【0106】
続いて、図8を参照して、図1に示す画像処理装置1を、動画像用の復号装置に適用し
た場合について説明する。
【0107】
[復号装置]
実施例2に係る復号装置31bは、可変長復号部32と、逆量子化部33と、逆直交変
換部34と、加算部35と、画像処理装置1と、フレームメモリ36と、動き補償予測部
37と、並べ替え部38と、画面内予測と画面間予測の切り替えに用いる切替スイッチ3
9とを備える。尚、本実施例に係る復号装置31bは、既知の復号装置(例えば、MPE
G−2,H.264用の復号装置)に対して、そのフィードバックループ内に本実施例の
画像処理装置1が追加されたものである。
【0108】
可変長復号部32は、符号化されたビットストリームを入力して、可変長復号処理を施
し逆量子化部33に送出するとともに、動きベクトルの情報を復号して動き補償予測部3
7に送出する。また、可変長復号部32は、量子化情報を画像処理装置1内の修正部9に
送出する。
【0109】
逆量子化部33は、可変長復号部32から供給される量子化信号に対して逆量子化処理
を施して動き補償した差分信号の直交変換係数を取得し、逆直交変換部34に送出する。
【0110】
逆直交変換部34は、逆量子化部33から供給される差分信号の直交変換係数に対して
、逆直交変換(例えば、IDCT)を施し、得られる当該差分信号を加算部35に送出す
る。
【0111】
動き補償予測部37は、フレームメモリ36から得られる参照画像と可変長復号部32
から得られる動きベクトルとを用いて予測画像を生成し、画像処理装置1に出力する。
【0112】
復号装置31bにおける画像処理装置1は、動き補償予測部37から得られる予測画像
の信号から、上述したように符号化劣化を抑制した修正後の画像信号を生成し、切替スイ
ッチ39を介して加算部35に送出する。
【0113】
加算部35は、逆直交変換部34から得られる当該差分信号と、画像処理装置1から供
給される予測画像の信号とを加算して画像信号を復元し、復元した画像信号を並べ替え部
38に送出する。
【0114】
並べ替え部38は、加算部35から得られる画像信号を表示信号として並べ替えを行う

【0115】
このように、実施例2の符号化装置11や復号装置31bに示すように、図1に示す画
像処理装置1をMPEG符号化方式に適用することができる。尚、実施例2の符号化装置
11や復号装置31bにおいても、例えばサンプリング周波数の異なる色空間の信号成分
からなる画像信号を復号した場合であっても、その画像信号の劣化を低減するように修正
することができる。
【0116】
以上のように、本発明に係る画像処理装置1は、動画像のコンポーネント信号を修正す
る装置として、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォーマットの画像信号に
おける第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)について修正するために、第2のコ
ンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポーネント信号(例えば、V
信号)を正規化して第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)の教師信号を生成する
教師信号生成機能と、第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)とこの生成した教師
信号とを比較して得られる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、当該教師信号に基
づいて第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)を修正する修正処理機能とを有する

【0117】
更に、本発明に係る画像処理装置1は、動画像のコンポーネント信号を修正する装置と
して、非可逆な符号化方式を経て得られる所定の画像フォーマットの画像信号における第
2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポーネント信号(例え
ば、V信号)について修正するために、第1のコンポーネント信号(例えば、Y信号)を
正規化して第2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポーネン
ト信号(例えば、V信号)の教師信号を生成する教師信号生成機能と、第2のコンポーネ
ント信号(例えば、U信号)及び/又は第3のコンポーネント信号(例えば、V信号)と
この生成した教師信号とを比較して得られる差分値が予め定めた閾値以下である場合に、
当該教師信号に基づいて第2のコンポーネント信号(例えば、U信号)及び/又は第3の
コンポーネント信号(例えば、V信号)を修正する修正処理機能とを有する。
【0118】
更に、本発明の一態様として、各実施例の画像処理装置1をコンピュータとして構成さ
せることができる。コンピュータに、前述した画像処理装置1の各構成要素を実現させる
ためのプログラムは、コンピュータの内部又は外部に備えられる記憶部に記憶される。そ
のような記憶部は、外付けハードディスクなどの外部記憶装置、或いはROM又はRAM
などの内部記憶装置で実現することができる。コンピュータに備えられる制御部は、中央
演算処理装置(CPU)などの制御で実現することができる。即ち、CPUが、各構成要
素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、記憶部から読み込
んで、各構成要素の機能をコンピュータ上で実現させることができる。ここで、各構成要
素の機能をハードウェアの一部で実現しても良い。
【0119】
また、この処理内容を記述したプログラムを、例えばDVD又はCD−ROMなどの可
搬型記録媒体の販売、譲渡、貸与等により流通させることができるほか、そのようなプロ
グラムを、例えばネットワーク上にあるサーバの記憶部に記憶しておき、ネットワークを
介してサーバから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、流通させる
ことができる。
【0120】
また、そのようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記
録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶部に記憶
することができる。また、このプログラムの別の実施態様として、コンピュータが可搬型
記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することと
してもよく、更に、このコンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、
受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。
【0121】
以上、具体例を挙げて本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明の特許請求の範囲か
ら逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であることは当業者に明らかであ
る。特に、正規化部における正規化処理は、教師信号による修正処理における信号間の相
関をとるためのレベル調整を行うものであればよい。
【0122】
例えば、仮に画像処理装置に入力される信号のサンプリングレートが同一であれば、輝
度信号ダウンコンバート部及び色差信号アップコンバート部をバイパスすることもできる

【0123】
また、本発明の画像処理装置は、図9に示すように、直交変換処理を用いることなく構
成することも可能である。更に、本発明の画像処理装置は、第1〜第3のコンポーネント
信号は、それぞれYUV信号に限定するものではなく、直交変換係数を入力して、直交変
換処理を省略した構成とすることもできる。また、コンポーネント信号は、RGB,YC
bCr,LUV,Lab,XYZなどの如何なる色空間のものでもよい。従って、画像処
理装置に入力される動画像のコンポーネント信号は、所定の色空間の各コンポーネント信
号、該コンポーネント信号の直交変換係数、及びこれらの信号を併合した組合せを含む。
【0124】
更に、修正部9を、画像信号における各コンポーネント信号、及び/又は、これらの直
交変換係数の信号を比較して修正する修正手段として構成すればよく、各コンポーネント
信号が入力されてサンプリングレートを変換した信号について修正処理を行うことや、各
コンポーネント信号が入力されてサンプリングレートを変換した信号の直交変換係数につ
いて修正処理を行うことや、各コンポーネント信号の直交変換係数の信号が入力されてサ
ンプリングレートを変換した信号について量子化した後に修正処理を行うことや、これら
の併用の構成とするなどの様々な変形例が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、例えばサンプリング周波数の異なる色空間の信号成分からなる画像信
号であっても画像信号の劣化が低減するように、該画像信号を修正することができるので
、非可逆な符号化方式による符号化処理を扱う画像信号を利用する任意の用途に有用であ
る。
【符号の説明】
【0126】
1 画像処理装置
2 第1直交変換部
3 輝度信号ダウンコンバート部
4 第2直交変換部
5 第1正規化処理部
6 色差信号アップコンバート部
7 第3直交変換部
8 第2正規化処理部
9 修正部
10 逆直交変換部
11 符号化装置
12 並べ替え部
13 減算部
14 直交変換部
15 量子化部
16 可変長符号化部
17 逆量子化部
18 逆直交変換部
19 切替スイッチ
20 フレーム内予測部
21 フレームメモリ
22 動き補償予測部
23 加算部
31a,31b 復号装置
32 可変長復号部
33 逆量子化部
34 逆直交変換部
35 加算部
36 フレームメモリ
37 動き補償予測部
38 並べ替え部
39 切替スイッチ
111 符号化装置
131 輝度信号ダウンコンバート部
161 色差信号アップコンバート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンポーネント信号のサンプリング周波数と、第2コンポーネント信号のサンプリング周波数とが同一である画像信号を処理する画像処理装置であって、
前記第2コンポーネント信号から、前記第1コンポーネント信号の教師信号を取得する取得手段と、
前記第1コンポーネント信号と前記第2コンポーネント信号との差分を用いて前記第2コンポーネント信号を符号化して符号化第2コンポーネント信号を生成する、
或いは、前記教師信号を用いて、符号化第2コンポーネント信号を復号化して前記第1コンポーネント信号を生成する生成手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置を備えることを特徴とする、符号化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置を備えることを特徴とする、復号装置。
【請求項4】
第1コンポーネント信号のサンプリング周波数と、第2コンポーネント信号のサンプリング周波数とが同一である画像信号を処理する画像処理装置として構成するコンピュータに、
前記第2コンポーネント信号から、前記第1コンポーネント信号の教師信号を取得するステップと、
前記第1コンポーネント信号と前記第2コンポーネント信号との差分を用いて前記第2コンポーネント信号を符号化して符号化第2コンポーネント信号を生成する、
或いは、前記教師信号を用いて、符号化第2コンポーネント信号を復号化して前記第1コンポーネント信号を生成するステップと、を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−102523(P2013−102523A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12687(P2013−12687)
【出願日】平成25年1月25日(2013.1.25)
【分割の表示】特願2010−23119(P2010−23119)の分割
【原出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】