説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】補助演算処理部で処理されるデータサイズに依らず処理全体の高速化を図ること。
【解決手段】メインメモリを用いて複数の画像処理を実行するCPUと、ローカルメモリを内在しハーフトーン処理を実行するDSPと、を備え、DSPがメインメモリを用いてハーフトーン処理を実行するために要する第1想定処理時間と、DSPがローカルメモリを用いてハーフトーン処理を実行するために要する第2想定処理時間と、を算出し、第1想定処理時間と第2想定処理時間とのうち短い時間でのハーフトーン処理において用いるメモリを、DSPがハーフトーン処理を実行する際に用いるメモリとして設定する画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MFP(Multi Function Peripheral)やプリンタ等の画像形成装置においては、一層の低価格化が求められており、コストを低く抑えることを重視した製品の開発の必要性が高まっている。コストを低く抑えるための一手法として、画像形成装置に搭載するCPU(Central Processing Unit)として、安価なものを採用する手法がある。しかし、安価なCPUは、一般に演算性能が低いため、画像形成装置の動作の低速化等の性能低下が生じてしまう。
【0003】
そこで、1回の命令で複数のデータに対する処理を同時に行うSIMD(Single Instruction/Multiple Data)演算が可能なDSP(Digital Signal Processor)等の補助演算処理部を用いて、CPUで行っていた処理の一部をDSPに行わせ、処理の高速化を実現する方法が考案されている。
【0004】
しかし、DSPを用いて処理を行う場合、DSPで行う処理とは別に、DSPの起動及び終了処理、DSP内のローカルメモリへのプログラム及びデータ転送等のDSPを用いるための準備処理が必要となる。そのため、DSP内のローカルメモリに転送するプログラムやデータ等が大量の場合には転送時間が増加するため、CPUが行っていた処理をDSPによる処理に単に置き換えるだけでは、処理の高速化を図ることが実現できないばかりか、処理時間が長くなり低速化する場合がある。
【0005】
そこで、DSPを用いた処理の効率化を図るために、CPUが複数の実行順リストから1つの実行順リストを選択し、DSPは選択された実行順リストに従って実行順序でプログラムをローカルメモリに転送して画像処理を実施する画像処理装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−65654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、画像処理に必要なデータやプログラムをローカルメモリに転送する必要があるため、転送時間による処理速度の低下を解消することはできず、DSPを用いることによる処理の高速化が期待できない状況が発生する。
【0008】
本発明の課題は、上記問題に鑑みて、補助演算処理部で処理されるデータサイズに依らず処理全体の高速化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、第1記憶部を用いて複数の画像処理を実行する主演算処理部と、第2記憶部を内在し、前記複数の画像処理とは異なる予め設定された画像処理を実行する補助演算処理部とを備え、前記主演算処理部は、前記補助演算処理部が前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第1の時間と、前記補助演算処理部が前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間での前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部が前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定すること、を特徴とする画像処理装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記複数の画像処理は、ページ記述言語形式のデータから中間言語形式のデータをバンド単位で生成する解析処理、当該中間言語形式のデータに対してイメージデータを生成するラスタライズ処理、を含み、前記予め設定された画像処理は、前記イメージデータに対して実行される処理であり、前記主演算処理部は、前記第1の時間及び前記第2の時間をバンド単位で算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間の前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部がバンド単位で前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定すること、を特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記主演算処理部は、前記第1の時間及び前記第2の時間を、1バンド内の中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出すること、を特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の画像処理装置において、前記補助演算処理部は、前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行する場合、1つの前記中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行し、前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行する場合、1バンド分の前記中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行すること、を特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、第1記憶部を用いて複数の画像処理を実行する主演算処理部と、第2記憶部を内在して前記複数の画像処理とは異なる予め設定された画像処理を実行する補助演算処理部と、を備えるコンピュータを、前記補助演算処理部が前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第1の時間と、前記補助演算処理部が前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間での前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部が前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定する手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、5に記載の発明によれば、第1の時間と第2の時間とのうち短い時間での予め設定された画像処理において用いる記憶部を、補助演算処理部が予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定することができる。そのため、補助演算処理部が内在する第2記憶部へのデータ転送量の増大による処理時間の増加を防止でき、補助演算処理部で処理されるデータサイズに依らず、処理全体の高速化を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られるのは勿論のこと、バンド単位で補助演算処理部が予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部を設定することができるため、バンド単位で予め設定された画像処理に要する時間を短縮することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2と同様の効果を得られるのは勿論のこと、第1の時間及び第2の時間を、1バンド内の中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3と同様の効果を得られるのは勿論のこと、補助演算処理部が、第1記憶部を用いて予め設定された画像処理を実行する場合には、1つの中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行でき、第2記憶部を用いて予め設定された画像処理を実行する場合には、1バンド分の中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像処理装置を含むネットワーク構成図である。
【図2】画像処理装置の主要構成図である。
【図3】ジョブデータに基づいて印刷データを生成する処理のフローチャートである。
【図4】描画処理のフローチャートである。
【図5】第1起動通知が入力された場合のハーフトーン処理のフローチャートである。
【図6】第2起動通知が入力された場合のハーフトーン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1に、本実施の形態における画像処理装置1を含むネットワーク構成図を示す。
【0020】
複数の画像処理装置1は、ネットワーク回線3を介して複数の外部装置2と通信可能に接続されている。
ネットワーク回線3は、画像処理装置1及び外部装置2によるネットワークを構成する。ネットワーク回線3は、画像処理装置1及び外部装置2を通信可能に接続するものであればその形態を問わない。例えば、ネットワーク回線3は、イーサネット(登録商標)、同軸ケーブル、光ファイバー等の有線接続回線や、無線通信を実現するための各種規格等、そのいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。また、ネットワーク回線3は、LAN(Local Area Network)、インターネット、その他のネットワーク規模を問わない。
【0021】
図2に、画像処理装置1の主要構成図を示す。図1に示す複数の画像処理装置1は、全て同じ構成によるものであり、以下一つの画像処理装置1について説明する。
本実施の形態における画像処理装置1は、読取対象原稿(以下、原稿と称す)から画像を読み取り、読み取った画像を処理対象紙としての枚葉紙等の記録媒体(以下、用紙と称す)に画像形成するコピー機能や、パーソナルコンピュータ等の外部装置2からジョブデータを受信し、受信したジョブデータに基づいて用紙上に画像を形成して出力するプリンタ機能等を備えた画像形成装置としての機能も有する。
【0022】
図2に示すように、画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、メインメモリ12、ROM(Read Only Memory)13、ストレージデバイス14、操作表示部15、プリント部16、通信部17、DSP(Digital Signal Processor)18等を備え、各部は、バス19により接続されている。
【0023】
CPU11は、ROM13内に格納されている各種処理プログラムやデータをメインメモリ12やストレージデバイス14に展開し、当該プログラムに基づいて画像処理装置1の各部の動作を集中制御する主演算処理部として機能する。例えば、操作表示部15や、通信部17と接続された外部装置2から入力される指示信号に従って、コピーモード、プリントモード、スキャナモードを切り替え、各モードに対する処理プログラムを読み出して、複写、印刷、画像データの読取等の各種制御を行う。
【0024】
また、CPU11は、メインメモリ12、ROM13又はストレージデバイス14との協働により、ポストスクリプト(登録商標)やPCL等の画像データ(以下、PDLデータと称す。)や、PDF(Portable Document Format)やXPS(XML Paper Specification)等の画像データ(以下、PDLデータ及びPDF,XPL等の画像データを総称してページ記述言語データと称す)に基づいて、形式の異なる複数のデータの生成及び保存を行う。
【0025】
詳しくは、CPU11は、まず、解析処理を行う。解析処理では、ページ記述言語データが解釈され、当該ページ記述言語データと印刷用のデータ(以下、印刷データと称す)との間の中間言語形式のデータ(以下、DLデータと称す)がバンド単位で生成され、メインメモリ12内に保存される。
【0026】
1ページ分の印刷内容は、複数のバンドによって構成されている。
各バンドは、複数のラインの組によって構成されており、バンドを構成するライン数がバンド幅と称される。ラインとは、画像を構成する画素を所定の一方向(例えば、画像の主走査方向)に配列した画素の集合であり、この一方向に配列された画素数がページ幅と称される。このラインの方向と直交する一方向(例えば、画像の副走査方向)にライン数だけラインを並べて組み合わせることで1バンド分の画像が構成される。
【0027】
DLデータは、ページ記述言語データに含まれるオブジェクト(テキスト(Text)、グラフィックス(Graphics)、イメージ(Image)等)の特徴に応じた種類毎、色毎に生成される画像データである。例えば、DLデータの種類としては、テキストやグラフィックスのDLデータとしてはベクタ形式のデータ、イメージのDLデータとしてはイメージ形式のデータ、を挙げることができる。従って、一つのバンド内には、1又は複数のDLデータが含まれることとなる。
【0028】
更にCPU11は、DSP18と協働して、生成したDLデータに対してラスタライズ処理、ハーフトーン処理等の描画処理を行なって印刷データを生成し、当該印刷データをメインメモリ12に保存する。印刷データは、プリント部16による画像形成処理が可能となるデータであり、例えば、ビットマップ形式等の画像データである。
【0029】
ラスタライズ処理は、CPU11により実行され、DLデータがビットマップ形式の画像データに変換されることによりイメージデータが生成される。
【0030】
ハーフトーン処理は、CPU11が実行する画像処理とは異なる予め設定された画像処理であり、DSP18により実行される。ハーフトーン処理では、イメージデータと、当該イメージデータのオブジェクトの種類や色情報等に応じて個別に設けられたハーフトーンテーブルと、に基づいて、中間階調が表現された印刷データが生成される。
【0031】
また、本実施の形態のCPU11は、メインメモリ12、ROM13又はストレージデバイス14との協働により、バンド単位で第1想定処理時間と第2想定処理時間とを算出する。そして、CPU11は、第1想定処理時間と第2想定処理時間とを比較する。CPU11は、当該比較結果に応じて、第1想定処理時間と第2想定処理時間とのうち短い時間でのハーフトーン処理において用いるメモリ(記憶部)を、DSP18がハーフトーン処理を実行する際に用いるメモリとして設定し、ハーフトーン処理をDSP18に実行させる。
【0032】
第1想定処理時間は、生成された1バンド分のイメージデータに対して、DSP18がメインメモリ12を用いてハーフトーン処理を実行するために要する時間(第1の時間)である。また、第2想定処理時間は、生成された1バンド分のイメージデータに対して、DSP18がローカルメモリ18Aを用いてハーフトーン処理を実行するために要する時間(第2の時間)である。
【0033】
メインメモリ12は、画像形成に係るデータ等、各種プログラムで処理されたデータ等を一時的に記憶し、主に、CPU11が複数の画像処理を実行する際に用いる第1記憶部として機能する。メインメモリ12として、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)又はフラッシュメモリなどの読み書き可能な揮発性又は不揮発性記憶媒体を用いることができる。
【0034】
ROM13は、画像形成に係る各種処理プログラム、画像形成に係るデータ、各種プログラムで処理されたデータ等を記憶する。また、ROM13は、CPU11及びメインメモリ12との協働により本実施の形態の各処理を実現させるためのプログラムやデータを記憶している。ROM13に替えて、例えば、磁気的、光学的記憶媒体又は半導体メモリ等の読み出し可能な不揮発性の記憶媒体を用いてもよい。また、このROM13は、制御基板等に固定的に設けられるもの、若しくは着脱自在に装着するものであっても良い。
【0035】
ストレージデバイス14は、オペレーションプログラムや各種のアプリケーションプログラム及びジョブデータ等の各種データを所定のアドレスと対応付けて記憶する。ストレージデバイス14に替えて、例えば、HDDやCF(Compact Flash)等の読み書き可能な不揮発性の記憶媒体を用いてもよい。
【0036】
操作表示部15は、赤外線式や静電式のタッチパネル及びハードキーから構成される。タッチパネルは、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成される表示部に重畳して設けられる。表示部には、画像処理装置1の各種操作画面や各種操作案内が表示される。
【0037】
プリント部16は、電子写真プロセス等により各種の画像形成を行う公知の画像形成機構から構成されるものであり、各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の印刷データに基づく画像を用紙等に形成して出力する。
【0038】
通信部17は、画像処理装置1を外部の通信回線(例えば、ネットワーク回線3)と接続させて、外部装置2との通信を可能とする。通信部17は、例えばNIC(Network Interface Card)等であり、通信回線の種類に応じた接続を可能とする装置を用いることができる。
【0039】
DSP18は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成され、ハーフトーン処理を行うことが可能なハードウェアであり、補助演算処理部として機能する。DSP18は、第2記憶部として機能するローカルメモリ18Aを内在し、CPU11からの指示に従って、メインメモリ12又はローカルメモリ18A内の記憶領域を用いてデータの読み出しや予め設定された画像処理を行う。本実施の形態では、DSPが実行する処理としてハーフトーン処理を用いて説明するが、これに限らない。
なお、DSP18は、画像処理装置1に対して着脱可能に設けられてもよく、また、複数のDSP18を一つの画像処理装置1に対して設けてもよい。
【0040】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図3に、受信したジョブデータに基づいて印刷データを生成する処理のフローチャートを示す。図3に示す処理は、CPU11と画像処理装置1内の各部との協働により実行されるものである。
【0041】
まず、外部装置2から送信されたジョブデータが通信部17によって受信され(ステップS1)、受信されたジョブデータ対して解析処理が施される(ステップS2)。
【0042】
ステップS2の解析処理では、ジョブデータに含まれるページ記述言語データに基づいてDLデータがバンド単位でオブジェクト毎(種類毎)に生成され、当該生成されたDLデータがメインメモリ12の記憶領域に格納される。この解析処理は、CPU11が解析処理を行うためのプログラム、データ等をROM13又はストレージデバイス14から読み出してメインメモリ12に展開して実行するものである。
【0043】
また、1バンド分のDLデータの生成中に、当該1バンド内の各DLデータに関するサイズ関連パラメータが取得され、メインメモリに格納される。具体的には、各DLデータが生成される際に、生成されたDLデータのサイズ、種類、解像度及び色情報等が取得され、1バンド毎にメインメモリに格納される。
従って、各バンドのサイズ関連パラメータには、バンド内のDLデータのデータサイズに係る情報や、当該バンドに基づく画像の解像度、バンド内に含まれるDLデータの数、バンド内に含まれる各DLデータの種類、DLデータの色数等の情報が含まれている。
DLデータのデータサイズに係る情報としては、例えば、1バンド分のページ幅及びバンド幅、各DLデータのサイズ等である。
【0044】
1ページ分のDLデータの生成が完了したか否か、即ち、メインメモリ内に1ページ分の印刷内容に対応した分のDLデータが格納されたか否かが判別される(ステップS3)。1ページ分のDLデータの生成が完了していない場合(ステップS3;NO)、ステップS2の処理に戻る。なお、1ページ分の印刷内容とは、例えば所定サイズ(例えばA4)の用紙1ページ分の印刷内容等を指す。
【0045】
1ページ分のDLデータの生成が完了した場合(ステップS3;YES)、各DLデータに描画処理が施される(ステップS4)。
【0046】
ステップS4の描画処理では、DLデータに基づいてラスタライズ処理、ハーフトーン処理等の各種画像処理が行われ、印刷データが生成される。
本実施の形態における描画処理の詳細については、図4を参照して後述する。
【0047】
1ページ分の印刷データの生成が完了したか否か、即ち、メインメモリ内に1ページ分の印刷データが格納されたか否かが判別される(ステップS5)。1ページ分の印刷データの生成が完了していない場合(ステップS5;NO)、ステップS4の処理に戻る。
【0048】
1ページ分の印刷データの生成が完了した場合(ステップS5;YES)、当該印刷データがプリント部16に出力され、1ページ分の画像形成処理が実行される(ステップS6)。プリント部16により、印刷データに基づく画像が用紙に形成され出力される。
プリント部16への印刷データの出力が終了すると、出力された印刷データに係る各種データ等の不要なデータがメインメモリから削除される(ステップS7)。
【0049】
受信したジョブデータに含まれる全ページに対する印刷データの出力が完了したか否かが判別される(ステップS8)。全ページに対する印刷データの出力が完了していない場合(ステップS8;NO)、ステップS2の処理に戻り、全ページに対する印刷データの出力が完了した場合(ステップS8;YES)、本処理が終了される。このように、受信したジョブデータによる印刷内容が複数ページに渡る場合、ページ数に応じてステップS2の解析処理以降の処理が繰り返される。
【0050】
図4に、ステップS4において実行される描画処理のフローチャートを示す。
図4に示す描画像処理は、CPU11と画像処理装置内の各部との協働により実行されるものである。
【0051】
まず、CPU11は、1バンド分のDLデータのサイズ関連パラメータに基づいて、当該バンドにおける第1想定処理時間と第2想定処理時間とを算出する(ステップS11)。
【0052】
第1想定処理時間は、DSP18がメインメモリ12を用いてハーフトーン処理を実行するために要する時間である。DSP18がメインメモリ12を用いてハーフトーン処理を実行する場合には、1バンドを構成する複数のDLデータそれぞれに基づいて生成されたイメージデータ毎にハーフトーン処理が実行される。そのため、CPU11は、サイズ関連パラメータに基づいて、一つのバンドに含まれる複数のDLデータそれぞれに基づいて生成されたイメージデータ毎のハーフトーン処理に要する時間を算出し、当該算出した時間の合計時間を第1想定処理時間として算出する。
【0053】
第2想定処理時間は、DSP18がローカルメモリ18Aを用いてハーフトーン処理を実行するために要する時間である。DSP18がローカルメモリ18Aを用いてハーフトーン処理を実行する場合には、1バンドを構成するイメージデータに対してハーフトーン処理が実行される。そのため、CPU11は、サイズ関連パラメータに基づいて、1バンド分のイメージデータや各種データ及び必要なプログラムをローカルメモリ18Aに転送する等のDSPの準備処理に要する時間と、1つのバンドを構成するDLデータに基づいて生成されたイメージデータのハーフトーン処理に要する時間と、を算出し、当該算出した時間の合計時間を第2想定処理時間として算出する。
【0054】
CPU11は、算出した第1想定処理時間と第2想定処理時間とを比較し、当該比較結果に応じて、DSP18がハーフトーン処理を実行する際に使用するメモリとして、メインメモリ12又はローカルメモリ18Aのうちいずれか一方を設定する(ステップS12)。
【0055】
ステップS12では、第1想定処理時間が第2想定処理時間よりも短い場合、DSPがハーフトーン処理を実行する際に使用するメモリとしてメインメモリ12が設定され、
第2想定処理時間が第1想定処理時間以下の場合、DSPがハーフトーン処理を実行する際に使用するメモリとしてローカルメモリ18Aが設定される。
【0056】
本実施の形態では、DLデータのデータサイズに係る情報(サイズ関連パラメータ)により算出される第1想定処理時間と第2想定処理時間との比較結果に基づいて、DSPが使用するメモリを設定する例を用いて説明するが、これに限らない。
例えば、当該比較結果に加えて、解像度、1バンド内のDLデータの数、1バンド内のDLデータの種類、1バンド内のDLデータの色数(カラープレーン)等に基づいてDSPが使用するメモリを設定してもよい。
【0057】
そして、CPU11は、ステップS11において第1、第2想定処理時間を算出したバンドに含まれる一つのDLデータに対してラスタライズ処理を施し、イメージデータを生成し、生成したイメージデータをメインメモリに格納する(ステップS13)。
【0058】
ステップS13後、CPU11は、ステップS12で設定したメモリはローカルメモリか、それともメインメモリかを判別する(ステップS14)。
【0059】
ステップS12で設定したメモリがローカルメモリである場合(ステップS14;ローカルメモリ)、CPU11は、1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了したか否かを判別する(ステップS15)。1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了していない場合(ステップS15;NO)、CPU11は、ステップS13の処理に戻る。
【0060】
1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了した場合(ステップS15;YES)、1バンド分のイメージデータが生成される。CPU11は、DSP18のローカルメモリ18Aへ、ハーフトーン処理を実行するプログラム、1バンド分のイメージデータ、各種必要なデータ等を転送し、DSP18を用いてハーフトーン処理を実行するためのローカルメモリの使用準備処理を行い(ステップS16)、ローカルメモリの使用準備処理が完了すると、DSP18に対して第1起動通知を出力する(ステップS17)。
【0061】
CPU11は、DSP18からハーフトーン処理の終了通知が入力されると、ローカルメモリ18Aに格納されている印刷データをメインメモリへコピーする(ステップS18)。
【0062】
ステップS12で設定したメモリがメインメモリ12である場合(ステップS14;メインメモリ)、CPU11は、DSP18に対してハーフトーン処理をメインメモリ12上で実行する指示を通知し(ステップS19)、DSP18に対して第2起動通知を出力する(ステップS20)。
【0063】
ステップS21後、CPU11は、1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了したか否かを判別する(ステップS21)。1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了していない場合(ステップS21;NO)、CPU11は、ステップS13の処理に戻る。
【0064】
1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了した場合(ステップS21;YES)、CPU11は、ステップS22の処理に進む。
【0065】
ステップS18後又はステップS21後、CPU11は、印刷データが1ページ分生成されたか否か、即ち、メインメモリ内に1ページ分の印刷データが格納されたか否かを判別する(ステップS22)。1ページ分の印刷データの生成が完了していない場合(ステップS22;NO)、CPU11は、ステップS11の処理に戻る。1ページ分の印刷データの生成が完了した場合(ステップS22;YES)、CPU11は、本処理を終了する。
このように、複数のバンドから1ページが構成される場合、バンド数に応じてステップS11以降の処理が繰り返される。
【0066】
図5に、第1起動通知が入力されたDSP18において実行されるハーフトーン処理のフローチャートを示す。
【0067】
DSP18は、CPU11から第1起動通知が入力されると、ローカルメモリ18Aに格納されたプログラム及び各種データ等を用いて、1バンド分のイメージデータに対してハーフトーン処理を施し、1バンド分の印刷データを生成し、ローカルメモリ18A内に格納する(ステップS31)。
【0068】
DSP18は、1バンド分の印刷データを生成すると、CPU11へハーフトーン処理の終了通知を出力し(ステップS32)、本処理を終了する。
【0069】
図6に、第2起動通知が入力されたDSP18において実行されるハーフトーン処理のフローチャートを示す。
【0070】
DSP18は、CPU11から第2起動通知が入力されると、メインメモリにアクセスし(ステップS41)、メインメモリに展開されているプログラム及び各種データ等を用いて、一つのDLデータ分のイメージデータに対してハーフトーン処理を施し、一つのDLデータ分の印刷データを生成し、メインメモリ12に格納する(ステップS42)。
【0071】
DSP18は、一つのDLデータ分の印刷データを生成すると、CPU11へハーフトーン処理の終了通知を出力し(ステップS43)、本処理を終了する。
【0072】
以上のように、本実施の形態によれば、メインメモリを用いた場合とローカルメモリを用いた場合とでのDSP18がハーフトーン処理を実行するために要する時間(第1想定処理時間、第2想定処理時間)のうち短い時間でのハーフトーン処理において用いるメモリを、DSP18がハーフトーン処理を実行する際に用いるメモリとして設定することができる。
そのため、DSP18が内在するローカルメモリへのデータ転送量の増大による処理時間の増加を防止でき、DSP18で処理されるデータサイズに依らず、処理全体の高速化を図ることができる。
【0073】
また、第1想定処理時間及び第2想定処理時間を、1バンド内のDLデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出することができ、バンド単位でDSP18がハーフトーン処理を実行する際に用いるメモリを設定することができるため、バンド単位でハーフトーン処理に要する時間を短縮することができる。
【0074】
更に、DSP18が、メインメモリ12を用いてハーフトーン処理を実行する場合には、1つのDLデータに対して生成されたイメージデータに対して実行でき、ローカルメモリ18Aを用いてハーフトーン処理を実行する場合には、1バンド分のDLデータに対して生成されたイメージデータに対して実行することができる。
そのため、DSP18が内在するローカルメモリ18Aを用いる場合には、ハーフトーン処理を1バンド分のイメージデータまとめて実行でき、メインメモリ12を用いる場合には、ハーフトーン処理をイメージデータ毎に実行できるため、ハーフトーン処理を実行する際に使用する各メモリを使用するための準備時間やのアクセス時間のムダを低減することができ、使用するメモリに応じてハーフトーン処理の時間効率を高めることができる。
【0075】
以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として、ROM13を使用した例を開示したが、この例に限定されない。
その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0076】
また、本発明は、上記実施の形態の内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 画像処理装置
2 外部装置
3 ネットワーク回線
11 CPU
12 メインメモリ
13 ROM
14 ストレージデバイス
15 操作表示部
16 プリント部
17 通信部
18 DSP
18A ローカルメモリ
19 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1記憶部を用いて複数の画像処理を実行する主演算処理部と、
第2記憶部を内在し、前記複数の画像処理とは異なる予め設定された画像処理を実行する補助演算処理部と、
を備え、
前記主演算処理部は、
前記補助演算処理部が前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第1の時間と、前記補助演算処理部が前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間での前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部が前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の画像処理は、ページ記述言語形式のデータから中間言語形式のデータをバンド単位で生成する解析処理、当該中間言語形式のデータに対してイメージデータを生成するラスタライズ処理、を含み、
前記予め設定された画像処理は、前記イメージデータに対して実行される処理であり、
前記主演算処理部は、
前記第1の時間及び前記第2の時間をバンド単位で算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間の前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部がバンド単位で前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記主演算処理部は、
前記第1の時間及び前記第2の時間を、
1バンド内の中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補助演算処理部は、
前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行する場合、1つの前記中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行し、前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行する場合、1バンド分の前記中間言語形式のデータに対して生成されたイメージデータに対して実行すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
第1記憶部を用いて複数の画像処理を実行する主演算処理部と、第2記憶部を内在して前記複数の画像処理とは異なる予め設定された画像処理を実行する補助演算処理部と、を備えるコンピュータを、
前記補助演算処理部が前記第1記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第1の時間と、前記補助演算処理部が前記第2記憶部を用いて前記予め設定された画像処理を実行するために要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間と前記第2の時間とのうち短い時間での前記予め設定された画像処理において用いる記憶部を、前記補助演算処理部が前記予め設定された画像処理を実行する際に用いる記憶部として設定する手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−18550(P2012−18550A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155345(P2010−155345)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】