画像処理装置及び画像処理プログラム
【課題】処理対象画像における局所領域の状態に応じた濃度変換処理を行う画像処理装置及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】処理対象画像において対象画素及び対象画素を含む局所領域を設定する。局所ヒストグラム作成部11は、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。分散値算出部12は、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。濃度変換部13は、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う。画素値変換部14は、対象画素の値と、濃度変換部13で濃度変換処理を施して得た値と、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素について変換後の画素値を算出する。例えば分散値が小さいほど対象画素の値に近づけ、分散値が大きいほど濃度変換処理後の値に近づける。
【解決手段】処理対象画像において対象画素及び対象画素を含む局所領域を設定する。局所ヒストグラム作成部11は、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。分散値算出部12は、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。濃度変換部13は、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う。画素値変換部14は、対象画素の値と、濃度変換部13で濃度変換処理を施して得た値と、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素について変換後の画素値を算出する。例えば分散値が小さいほど対象画素の値に近づけ、分散値が大きいほど濃度変換処理後の値に近づける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理の一つとして、局所領域の濃度ヒストグラムを用いた濃度変換処理が行われている。一般的には、局所領域の濃度ヒストグラムを作成し、その濃度ヒストグラムの一端から累積値を求めてゆき、この累積値の変化を変換関数として用いて画素値の変換を行う。
【0003】
図11は、ヒストグラムを用いた濃度変換処理の基本例の説明図である。図11(A)に示したヒストグラムの例では、各濃度の頻度値の差が、図11(C)に示す例に比べて小さい場合を示している。局所領域内で濃度にばらつきがある場合である。このような場合には、累積値を求めると図11(B)に示している増加関数が得られる。この関数を濃度変換に用いると、頻度値が他の濃度よりも大きい部分では濃度変化が広げられ、頻度値が他の濃度よりも小さい部分では濃度変化が狭められて、濃度変換処理が実現される。
【0004】
図11(C)に示した例では、ある濃度に頻度値が集中している場合を示している。例えばある特定の色が広がっている場合などがこの例に当たる。このような場合には、頻度値の累積値を求めると図11(D)に示す関数が得られる。この関数を濃度変換に用いると、頻度値が集中している濃度について、変換後の濃度範囲が変換前の濃度範囲に比べて広がる。例えば色むらや雑音成分が存在して階調変化が存在すると、それらが強調されてしまう過強調が生じる。
【0005】
例えば非特許文献1では、ヒストグラムの頻度値のうち、予め決められた閾値を超える頻度値については、閾値を超えた頻度値を各濃度の頻度に分散させ、ヒストグラムの頻度値分布を平滑化する。これにより、平滑化しない場合に比べて、累積値の関数の傾きが小さくなり、過強調が緩和される。この技術では、閾値の大きさによって平滑化の度合いが変化し、強調処理の度合いが決まる。例えば、閾値を小さくして強く平滑化すると必要な強調処理が行われなくなり、閾値を大きくして弱く平滑化すると上述の過強調が残ることになる。
【0006】
このほかのヒストグラムを使用した濃度変換処理の技術として、例えば特許文献1では、ヒストグラムの頻度値を累積して得た関数と、人間の視覚特性を表す関数とを合成した関数を濃度変換処理に用いている。また特許文献2では、エッジ部分でヒストグラムを分けて濃度変換処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−118752号公報
【特許文献2】特開2009−010636号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小林直樹,斎藤英雄,中島真人、「自然画像表示のための高速な局所的コントラスト強調」、電子情報通信学会論文誌D−II、1994年3月、Vol.J77−D−II、No.3、p.502−509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、処理対象画像における局所領域の状態に応じた濃度変換処理を行う画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う濃度変換手段と、元の画素値と前記濃度変換手段で処理を施した画素値と前記分散値算出手段で算出した分散値に応じて変換後の画素値を算出する画素値変換手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを前記分散値算出手段で算出した分散値に応じた閾値により平坦化して濃度変換処理を行う濃度変換手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記分散値算出手段が、前記局所領域における輝度及び彩度の分散値を算出することを特徴とする画像処理装置である。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1に記載の発明によれば、処理対象画像における局所領域の分散値に応じてヒストグラムによる濃度変換結果を調整することができる。
【0015】
本願請求項2に記載の発明によれば、処理対象画像における局所領域の分散値に応じたヒストグラムの平坦化による濃度変換処理を行うことができる。
【0016】
本願請求項3に記載の発明によれば、輝度とともに彩度方向への色の広がりも考慮して濃度変換処理または濃度変換結果の調整を行うことができる。
【0017】
本願請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
【図4】分散値と重みの関係の一例の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。
【図8】閾値を制御する関数の一例の説明図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
【図10】、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【図11】ヒストグラムを用いた濃度変換処理の基本例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図中、11は局所ヒストグラム作成部、12は分散値算出部、13は濃度変換部、14は画素値変換部である。以下に示す構成では、与えられた処理対象画像の各画素を順に対象画素として処理して行く。また、対象画素を含む予め決められた大きさの領域を局所領域とする。なお、処理は例えばYCrCbやLABなどの輝度成分や明度成分が存在する色空間の色信号について、その輝度成分や明度成分に対して行うものとする。以下の説明では一例として輝度成分を扱うものとして説明する。例えばRGBやCMYなどの色空間の色信号であれば、輝度成分や明度成分が存在する色空間の色信号に変換してから処理を行えばよい。もちろん、他の成分に対して処理を行ってもよい。
【0020】
局所ヒストグラム作成部11は、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。
【0021】
分散値算出部12は、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。分散値の算出方法は周知であり、図1に示した例では局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用い、平均値とヒストグラムの輝度値及び頻度値から算出すればよい。もちろん、局所領域の各画素の輝度値を用いて分散値を算出してもよいことは言うまでもない。
【0022】
濃度変換部13は、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う。この濃度変換処理には、ヒストグラムを使用する公知の手法を使用すればよい。例えば、非特許文献1に記載されている技術を用いるとよい。
【0023】
画素値変換部14は、対象画素の値と、濃度変換部13で濃度変換処理を施して得た値と、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素について変換後の画素値を算出する。例えば分散値が小さいほど対象画素の値に近づけ、分散値が大きいほど濃度変換処理後の値に近づけるとよい。なお、分散値が予め決めておいた値以上では濃度変換処理後の値を変換後の画素値として出力するとよい。分散値が小さいほど輝度の広がりが少ない領域であると考えられ、その場合にはヒストグラムを用いた濃度変換処理では過強調となる場合がある。そのため、この場合には変換後の値を対象画素の値に近づける。分散値がある程度あれば、輝度の広がりがあってヒストグラムを用いた濃度変換処理でも過強調とはならないので、変換処理後の値を濃度変換処理後の値とし、あるいは濃度変換処理後の値に近づければよい。
【0024】
濃度変換部13において行われるヒストグラムを用いた濃度変換処理の一例について説明しておく。ここでは、非特許文献1に記載されている方法を応用して使用するものとする。局所ヒストグラム作成部11で作成されたヒストグラムは、輝度毎の頻度値として配列Yh[i]に格納されているものとする。最大輝度値をMgとし、iは0以上Mg以下である。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。まずヒストグラムを平滑化するために使用する閾値Thを算出する。この閾値は予め決めておいてもよいし、例えば、
Th=(sum/Mg)・thp …(1)
により決定してもよい。ここで、sumは局所領域の各画素における輝度値の総計である。また、thpは閾値Thを制御する係数であり、1より大きいと閾値Thの値が大きくなり、この係数を用いない場合に比べて強調度合いは強まる。また、1より小さいと閾値Thの値が小さくなり、この係数を用いない場合に比べて強調度合いは弱まる。
【0026】
次に、S51で算出した閾値Th以上の頻度値を算出する。S52で繰り返しのための変数iを0とし、各輝度値に分散させる頻度値を記憶するための変数Cを0に初期化しておく。S53において配列Yhのi番目の要素であるYh[i]の頻度値が閾値Thより大きいか否かを判断する。Yh[i]の頻度値が閾値Thより大きい場合には、S54において、閾値Thを超える頻度値、すなわちYh[i]−Thの値を変数Cに加算し、S55において、Yh[i]は上限の閾値Thの値とする。S54の処理で、変数Cには閾値Thを超える頻度値が累積されて行くことになる。なお、S53でYh[i]の頻度値が閾値Th以下であった場合には、そのままS56へ進む。
【0027】
S56において、繰り返しの変数iの値が最大輝度値であるMg以上となったか否かを判定し、iの値がMgより小さければ、S57において変数iの値に1を加算してS53へ戻り、次の配列Yhの要素(次の輝度値の頻度値)についての処理を行う。
【0028】
iの値がMg以上となったら、S58において、変数Cに累積されている頻度値を各輝度値に分散させる際の割り当て値を算出する。そのためには、変数Cの値を最大輝度値Mg+1(輝度値の階調数)で除算すればよい。すなわち、
C=C/(Mg+1)
により割り当て値を算出すればよい。なお、この式では演算結果を再び変数Cに格納するものとしているが、これに限られるものではない。
【0029】
S59において、配列Yhの各要素に対して、変数Cに格納してある割り当て値をそれぞれ加算する。なお、この処理は0以上Mg以下の各iについて、繰り返して行うことになる。
【0030】
S60からS64までの処理では、累積ヒストグラムから変換関数の表を作成する。変数Rは累積値を格納するものであり、配列LUT[i]は変換関数の表を格納するものであって、iは0以上Mg(輝度最大値)以下である。S60において、繰り返しの回数を計数する変数iを0に、また累積値を格納する変数Rを0に、それぞれ初期化しておく。S61において、まず、ここまでの累積値Rを算出する。この処理は、配列Yhのi番目の要素であるYh[i]の値を変数Rに加えて新たな変数Rの値とすればよい。さらに、配列LUTのi番目の要素であるLUT[i]の値を算出する。この算出方法としては、
LUT[i]=Mg・R/sum …(2)
により求めればよい。なお、sumは総累積値である。これにより、総累積値に対する累積値の割合で輝度のレンジを分割し、LUT[i]にその輝度値を格納することになる。
【0031】
S62において繰り返しの変数iの値が最大輝度値であるMg以上となったか否かを判定し、iの値がMgより小さければ、S63において変数iの値に1を加算してS60へ戻り、次の累積値及び変換関数の表の要素の値を算出する。
【0032】
iの値がMg以上となったら、S64において、対象画素の輝度値を、配列LUT[i]に格納されている変換関数の表を用いて変換する。すなわち、対象画素の輝度値をY、変換後の輝度値をY’とすると、
Y’=LUT[Y] …(3)
で求めればよい。
【0033】
このようにして、ヒストグラムを用いた輝度に対する変換処理が行われることになる。もちろん、上述の処理は一例であって、公知の種々の変形を行ってもよい。
【0034】
以下、具体例を用いながら第1の実施の形態の動作の一例について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。図3(A)には与えられた処理対象画像と局所領域、対象画素の関係を示しており、処理対象画像中の画素を対象画素として○印に×を付して示し、その対象画素を含む局所領域に斜線を付して示している。局所領域の大きさは予め設定しておけばよい。なお、以下の説明では、ある対象画素についての処理について示しているが、このような処理を、処理対象画像中の各画素を順に対象画素として繰り返して行くことになる。
【0035】
局所ヒストグラム作成部11では、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。図3(B)に、作成されたヒストグラムの一例を示している。
【0036】
分散値算出部12では、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。例えば図3(B)に示したヒストグラムではいくつかのピークはあるが、輝度範囲の全体にわたって広がっており、算出される分散値は後述する輝度値に偏りがある場合に比べて大きな値となる。
【0037】
一方、濃度変換部13では例えば図2に示した処理などによって、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いた濃度変換処理を行う。閾値Thとヒストグラムとの関係を図3(C)に示しており、閾値Thより大きい斜線を施した部分の頻度値が図2のS52からS57の処理で変数Cに累積されてゆく。そしてS58、S59の処理で変数Cに累積された頻度値が各輝度値の頻度値に分散される。分散された後のヒストグラムを図3(D)に示しており、斜線を施した部分が、変数Cに累積された頻度値から分散された部分である。
【0038】
さらに、図2のS60からS64の処理で累積ヒストグラムが作成され、変換関数の表が作成される。作成された変換関数の概要を図3(E)に示している。この変換関数を用い、対象画素の輝度を変換する。図3(E)の横軸に示したYが対象画素の輝度であり、縦軸に示したY’が変換後の輝度となる。
【0039】
画素値変換部14は、対象画素の輝度値Yと、ヒストグラムを用いて得られた対象画素の輝度値Y’を用い、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素の変換後の画素値を算出する。例えば、対象画素の変換後の輝度値をd、重みをrとして、
d=(1−r)・Y+r・Y’ …(4)
によって求めるとよい。ここで、重みrは分散値Vの関数とすればよい。
【0040】
図4は、分散値と重みの関係の一例の説明図である。上述の(4)式の重みrは、例えば分散値Vと図4に示す関係で設定しておくとよい。この例では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合には重みrを1として、ヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’が変換後の画素値dとなるようにする。また、予め決めておいた値より小さい場合には、その予め決めておいた値から離れるに従って重みrの値が小さくなり、変換後の画素値dがヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’からもともとの対象画素の値Yに近づくようにしている。分散値が小さくなればなるほど、輝度値の偏りが大きいことを示しており、それによってヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’は過強調になっていることが考えられる。そのため、重みrによって輝度値Y’の影響を減らして過強調を抑えている。
【0041】
図5は、本発明の第1の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。この具体例では、局所領域における輝度が偏っている場合を示している。例えば、局所領域内の輝度に変化がない場合などがこの例に該当する。図3に示した具体例と異なる点について主に説明する。
【0042】
図5(A)には、局所領域の画素値から局所ヒストグラム作成部11が作成したヒストグラムの一例を示している。図3(B)に示したヒストグラムと比べて輝度値の分布が偏在していることが分かる。そのため、分散値算出部12で算出される分散値は、図3に示したヒストグラムの場合に比べて小さい値となる。
【0043】
図5(B)及び図5(C)は、図3(C)及び図3(D)に対応するものであり、それぞれ、ヒストグラムと閾値Thとの関係と、閾値Thを超えた頻度値を各輝度値の頻度値に分散した後のヒストグラムをそれぞれ示している。さらに、図5(C)に示したヒストグラムから作成される変換関数を図5(D)に示している。図3(E)に示した例に比べて傾きが急峻な部分が存在し、この部分で輝度が過強調される。図5(D)では、変換前の輝度の範囲aが、変換後の輝度の範囲bに拡張されることになる。そのため、色むらや雑音成分が存在すると、それが誇張されて変換されることになる。
【0044】
このような場合には、分散値算出部12で算出した分散値が、図3に示した例の場合に比べて小さくなっている。そのため、図4に示した分散値と重みの関係から重みも図3に示した例に比べて小さくなる。これにより、(4)式から画素値変換部14で変換された後の輝度値Y’の重みが低下して変換前の対象画素の輝度値Yの重みが大きくなり、変換後の輝度値dは変換前の対象画素の輝度値に近づいて過強調が抑えられる。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。上述の第1の実施の形態と異なる部分について主に説明してゆく。この第2の実施の形態では、分散値算出部12で算出した分散値を、濃度変換部13でヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う際に用いる例を示している。なお、この第2の実施の形態では、画素値変換部14を設けず、濃度変換部13で変換された値を、対象画素の変換後の値とする。
【0046】
濃度変換部13では、基本的には局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて、図2に示した処理によって濃度変換処理を行う。この濃度変換処理においてヒストグラムを平坦化する際に用いる閾値を、分散値算出部12で算出した分散値に応じた関数により算出する。
【0047】
図7は、本発明の第2の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。図7に示した処理の流れでは、図2に示した例におけるS51の処理が異なっている。すなわち、図2のS51に対応する図7のS71において、ヒストグラムを平滑化するために使用する閾値Thを算出する。その際に、例えば(1)式で閾値Thを制御する係数thpを、分散値算出部12で算出した分散値の関数とする。具体例としては、分散値をVとすると、閾値Thを
Th=(sum/Mg)・thp(V) …(1’)
により決定すればよい。ここで、sumは局所領域の各画素における輝度値の総計である。
【0048】
図8は、閾値を制御する関数の一例の説明図である。第1の実施の形態でも述べたが、関数thp(V)の値が1より大きいと閾値Thの値が大きくなり強調度合いは強まり、1より小さいと閾値Thの値が小さくなり強調度合いは弱まる。図8に示す例では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合には関数thp(V)の値を予め決めた上限値とし、分散値が予め決めておいた値より小さくなるに従って、関数thp(V)の値も上限値から小さくなる関数としている。これにより、局所領域の輝度の分散値が小さいほど強調度合いは弱まって過強調が抑えられることになる。もちろん、関数thp(V)の形状は図8に限られるものでないことは言うまでもない。
【0049】
なお、図7に示したS52以降の処理は第1の実施の形態で説明したので、ここでは重複する説明を省略する。
【0050】
図9は、本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。この例では、本発明の第1の実施の形態において用いた図5に示した具体例を用いる。なお、処理対象の画像と局所領域の関係などについては図3に示した通りであり、図3及び図5に示した具体例と異なる点について主に説明する。
【0051】
図9(A)には、局所領域の画素値から局所ヒストグラム作成部11が作成したヒストグラムの一例を示しており、図5(A)に示したものである。
【0052】
図9(B)にはヒストグラムと閾値Thとの関係を示している。図9(B)では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合に関数thp(V)の上限値を用いて算出された閾値Thを破線で示しており、この具体例で算出された閾値Thを実線で示している。この例では分散値が予め決めておいた値よりも小さく、従って関数thp(V)の値も上限値よりも小さくなって、閾値Thも小さく設定されたものとしている。このように閾値Thが設定されることによって、破線で示した閾値を用いる場合に比べて閾値Thを超える頻度値が増加し、多くの頻度値を分散させることになる。従って、図9(C)に示した閾値Thを超えた頻度値を各輝度値の頻度値に分散した後のヒストグラムは、図5(C)に示した例に比べて凹凸の量が減少する。
【0053】
さらに、図9(C)に示したヒストグラムから作成される変換関数を図9(D)に示している。図5(D)に示した例に比べて傾きが緩やかになり、閾値Thを分散値Vで変更しない場合に比べて強調度合いが弱く、過強調が抑えられている。従って、図9(D)に示した変換関数を用いて対象画素の輝度値を変換すれば、過強調されることなく濃度変換処理が行われることになる。
【0054】
図10は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、21はプログラム、22はコンピュータ、31は光磁気ディスク、32は光ディスク、33は磁気ディスク、34はメモリ、41はCPU、42は内部メモリ、43は読取部、44はハードディスク、45はインタフェース、46は通信部である。
【0055】
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム21によって実現してもよい。その場合、そのプログラム21およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部43に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部43にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク31,光ディスク32(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク33,メモリ34(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0056】
これらの記憶媒体にプログラム21を格納しておき、例えばコンピュータ22の読取部43あるいはインタフェース45にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム21を読み出し、内部メモリ42またはハードディスク44(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態で説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム21をコンピュータ22に転送し、コンピュータ22では通信部46でプログラム21を受信して内部メモリ42またはハードディスク44に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行することによって実現してもよい。
【0057】
コンピュータ22には、このほかインタフェース45を介して様々な装置と接続してもよい。例えば処理対象画像を読み込む読取装置が、このインタフェース45を介して接続されていてもよい。また、処理後の画像を出力する表示手段や画像形成手段、利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。処理対象の画像はハードディスク44あるいはインタフェース45を介して記憶媒体に記憶されていてもよいし、通信部46を介して通信路を通じ他の装置から受け取ってもよい。処理後の画像についても、ハードディスク44あるいはインタフェース45を介して記憶媒体に記憶させるほか、通信部46を介して通信路を通じ他の装置へ転送してもよい。
【0058】
もちろん、部分的にハードウェアによって構成することもできるし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の各実施の形態で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11…局所ヒストグラム作成部、12…分散値算出部、13…濃度変換部、14…画素値変換部、21…プログラム、22…コンピュータ、31…光磁気ディスク、32…光ディスク、33…磁気ディスク、34…メモリ、41…CPU、42…内部メモリ、43…読取部、44…ハードディスク、45…インタフェース、46…通信部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理の一つとして、局所領域の濃度ヒストグラムを用いた濃度変換処理が行われている。一般的には、局所領域の濃度ヒストグラムを作成し、その濃度ヒストグラムの一端から累積値を求めてゆき、この累積値の変化を変換関数として用いて画素値の変換を行う。
【0003】
図11は、ヒストグラムを用いた濃度変換処理の基本例の説明図である。図11(A)に示したヒストグラムの例では、各濃度の頻度値の差が、図11(C)に示す例に比べて小さい場合を示している。局所領域内で濃度にばらつきがある場合である。このような場合には、累積値を求めると図11(B)に示している増加関数が得られる。この関数を濃度変換に用いると、頻度値が他の濃度よりも大きい部分では濃度変化が広げられ、頻度値が他の濃度よりも小さい部分では濃度変化が狭められて、濃度変換処理が実現される。
【0004】
図11(C)に示した例では、ある濃度に頻度値が集中している場合を示している。例えばある特定の色が広がっている場合などがこの例に当たる。このような場合には、頻度値の累積値を求めると図11(D)に示す関数が得られる。この関数を濃度変換に用いると、頻度値が集中している濃度について、変換後の濃度範囲が変換前の濃度範囲に比べて広がる。例えば色むらや雑音成分が存在して階調変化が存在すると、それらが強調されてしまう過強調が生じる。
【0005】
例えば非特許文献1では、ヒストグラムの頻度値のうち、予め決められた閾値を超える頻度値については、閾値を超えた頻度値を各濃度の頻度に分散させ、ヒストグラムの頻度値分布を平滑化する。これにより、平滑化しない場合に比べて、累積値の関数の傾きが小さくなり、過強調が緩和される。この技術では、閾値の大きさによって平滑化の度合いが変化し、強調処理の度合いが決まる。例えば、閾値を小さくして強く平滑化すると必要な強調処理が行われなくなり、閾値を大きくして弱く平滑化すると上述の過強調が残ることになる。
【0006】
このほかのヒストグラムを使用した濃度変換処理の技術として、例えば特許文献1では、ヒストグラムの頻度値を累積して得た関数と、人間の視覚特性を表す関数とを合成した関数を濃度変換処理に用いている。また特許文献2では、エッジ部分でヒストグラムを分けて濃度変換処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−118752号公報
【特許文献2】特開2009−010636号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小林直樹,斎藤英雄,中島真人、「自然画像表示のための高速な局所的コントラスト強調」、電子情報通信学会論文誌D−II、1994年3月、Vol.J77−D−II、No.3、p.502−509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、処理対象画像における局所領域の状態に応じた濃度変換処理を行う画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う濃度変換手段と、元の画素値と前記濃度変換手段で処理を施した画素値と前記分散値算出手段で算出した分散値に応じて変換後の画素値を算出する画素値変換手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを前記分散値算出手段で算出した分散値に応じた閾値により平坦化して濃度変換処理を行う濃度変換手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記分散値算出手段が、前記局所領域における輝度及び彩度の分散値を算出することを特徴とする画像処理装置である。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1に記載の発明によれば、処理対象画像における局所領域の分散値に応じてヒストグラムによる濃度変換結果を調整することができる。
【0015】
本願請求項2に記載の発明によれば、処理対象画像における局所領域の分散値に応じたヒストグラムの平坦化による濃度変換処理を行うことができる。
【0016】
本願請求項3に記載の発明によれば、輝度とともに彩度方向への色の広がりも考慮して濃度変換処理または濃度変換結果の調整を行うことができる。
【0017】
本願請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
【図4】分散値と重みの関係の一例の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。
【図8】閾値を制御する関数の一例の説明図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
【図10】、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【図11】ヒストグラムを用いた濃度変換処理の基本例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図中、11は局所ヒストグラム作成部、12は分散値算出部、13は濃度変換部、14は画素値変換部である。以下に示す構成では、与えられた処理対象画像の各画素を順に対象画素として処理して行く。また、対象画素を含む予め決められた大きさの領域を局所領域とする。なお、処理は例えばYCrCbやLABなどの輝度成分や明度成分が存在する色空間の色信号について、その輝度成分や明度成分に対して行うものとする。以下の説明では一例として輝度成分を扱うものとして説明する。例えばRGBやCMYなどの色空間の色信号であれば、輝度成分や明度成分が存在する色空間の色信号に変換してから処理を行えばよい。もちろん、他の成分に対して処理を行ってもよい。
【0020】
局所ヒストグラム作成部11は、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。
【0021】
分散値算出部12は、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。分散値の算出方法は周知であり、図1に示した例では局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用い、平均値とヒストグラムの輝度値及び頻度値から算出すればよい。もちろん、局所領域の各画素の輝度値を用いて分散値を算出してもよいことは言うまでもない。
【0022】
濃度変換部13は、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う。この濃度変換処理には、ヒストグラムを使用する公知の手法を使用すればよい。例えば、非特許文献1に記載されている技術を用いるとよい。
【0023】
画素値変換部14は、対象画素の値と、濃度変換部13で濃度変換処理を施して得た値と、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素について変換後の画素値を算出する。例えば分散値が小さいほど対象画素の値に近づけ、分散値が大きいほど濃度変換処理後の値に近づけるとよい。なお、分散値が予め決めておいた値以上では濃度変換処理後の値を変換後の画素値として出力するとよい。分散値が小さいほど輝度の広がりが少ない領域であると考えられ、その場合にはヒストグラムを用いた濃度変換処理では過強調となる場合がある。そのため、この場合には変換後の値を対象画素の値に近づける。分散値がある程度あれば、輝度の広がりがあってヒストグラムを用いた濃度変換処理でも過強調とはならないので、変換処理後の値を濃度変換処理後の値とし、あるいは濃度変換処理後の値に近づければよい。
【0024】
濃度変換部13において行われるヒストグラムを用いた濃度変換処理の一例について説明しておく。ここでは、非特許文献1に記載されている方法を応用して使用するものとする。局所ヒストグラム作成部11で作成されたヒストグラムは、輝度毎の頻度値として配列Yh[i]に格納されているものとする。最大輝度値をMgとし、iは0以上Mg以下である。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。まずヒストグラムを平滑化するために使用する閾値Thを算出する。この閾値は予め決めておいてもよいし、例えば、
Th=(sum/Mg)・thp …(1)
により決定してもよい。ここで、sumは局所領域の各画素における輝度値の総計である。また、thpは閾値Thを制御する係数であり、1より大きいと閾値Thの値が大きくなり、この係数を用いない場合に比べて強調度合いは強まる。また、1より小さいと閾値Thの値が小さくなり、この係数を用いない場合に比べて強調度合いは弱まる。
【0026】
次に、S51で算出した閾値Th以上の頻度値を算出する。S52で繰り返しのための変数iを0とし、各輝度値に分散させる頻度値を記憶するための変数Cを0に初期化しておく。S53において配列Yhのi番目の要素であるYh[i]の頻度値が閾値Thより大きいか否かを判断する。Yh[i]の頻度値が閾値Thより大きい場合には、S54において、閾値Thを超える頻度値、すなわちYh[i]−Thの値を変数Cに加算し、S55において、Yh[i]は上限の閾値Thの値とする。S54の処理で、変数Cには閾値Thを超える頻度値が累積されて行くことになる。なお、S53でYh[i]の頻度値が閾値Th以下であった場合には、そのままS56へ進む。
【0027】
S56において、繰り返しの変数iの値が最大輝度値であるMg以上となったか否かを判定し、iの値がMgより小さければ、S57において変数iの値に1を加算してS53へ戻り、次の配列Yhの要素(次の輝度値の頻度値)についての処理を行う。
【0028】
iの値がMg以上となったら、S58において、変数Cに累積されている頻度値を各輝度値に分散させる際の割り当て値を算出する。そのためには、変数Cの値を最大輝度値Mg+1(輝度値の階調数)で除算すればよい。すなわち、
C=C/(Mg+1)
により割り当て値を算出すればよい。なお、この式では演算結果を再び変数Cに格納するものとしているが、これに限られるものではない。
【0029】
S59において、配列Yhの各要素に対して、変数Cに格納してある割り当て値をそれぞれ加算する。なお、この処理は0以上Mg以下の各iについて、繰り返して行うことになる。
【0030】
S60からS64までの処理では、累積ヒストグラムから変換関数の表を作成する。変数Rは累積値を格納するものであり、配列LUT[i]は変換関数の表を格納するものであって、iは0以上Mg(輝度最大値)以下である。S60において、繰り返しの回数を計数する変数iを0に、また累積値を格納する変数Rを0に、それぞれ初期化しておく。S61において、まず、ここまでの累積値Rを算出する。この処理は、配列Yhのi番目の要素であるYh[i]の値を変数Rに加えて新たな変数Rの値とすればよい。さらに、配列LUTのi番目の要素であるLUT[i]の値を算出する。この算出方法としては、
LUT[i]=Mg・R/sum …(2)
により求めればよい。なお、sumは総累積値である。これにより、総累積値に対する累積値の割合で輝度のレンジを分割し、LUT[i]にその輝度値を格納することになる。
【0031】
S62において繰り返しの変数iの値が最大輝度値であるMg以上となったか否かを判定し、iの値がMgより小さければ、S63において変数iの値に1を加算してS60へ戻り、次の累積値及び変換関数の表の要素の値を算出する。
【0032】
iの値がMg以上となったら、S64において、対象画素の輝度値を、配列LUT[i]に格納されている変換関数の表を用いて変換する。すなわち、対象画素の輝度値をY、変換後の輝度値をY’とすると、
Y’=LUT[Y] …(3)
で求めればよい。
【0033】
このようにして、ヒストグラムを用いた輝度に対する変換処理が行われることになる。もちろん、上述の処理は一例であって、公知の種々の変形を行ってもよい。
【0034】
以下、具体例を用いながら第1の実施の形態の動作の一例について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。図3(A)には与えられた処理対象画像と局所領域、対象画素の関係を示しており、処理対象画像中の画素を対象画素として○印に×を付して示し、その対象画素を含む局所領域に斜線を付して示している。局所領域の大きさは予め設定しておけばよい。なお、以下の説明では、ある対象画素についての処理について示しているが、このような処理を、処理対象画像中の各画素を順に対象画素として繰り返して行くことになる。
【0035】
局所ヒストグラム作成部11では、局所領域の各画素の輝度に従ってヒストグラムを作成する。図3(B)に、作成されたヒストグラムの一例を示している。
【0036】
分散値算出部12では、局所領域における輝度または輝度と彩度について、分散値を算出する。例えば図3(B)に示したヒストグラムではいくつかのピークはあるが、輝度範囲の全体にわたって広がっており、算出される分散値は後述する輝度値に偏りがある場合に比べて大きな値となる。
【0037】
一方、濃度変換部13では例えば図2に示した処理などによって、局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いた濃度変換処理を行う。閾値Thとヒストグラムとの関係を図3(C)に示しており、閾値Thより大きい斜線を施した部分の頻度値が図2のS52からS57の処理で変数Cに累積されてゆく。そしてS58、S59の処理で変数Cに累積された頻度値が各輝度値の頻度値に分散される。分散された後のヒストグラムを図3(D)に示しており、斜線を施した部分が、変数Cに累積された頻度値から分散された部分である。
【0038】
さらに、図2のS60からS64の処理で累積ヒストグラムが作成され、変換関数の表が作成される。作成された変換関数の概要を図3(E)に示している。この変換関数を用い、対象画素の輝度を変換する。図3(E)の横軸に示したYが対象画素の輝度であり、縦軸に示したY’が変換後の輝度となる。
【0039】
画素値変換部14は、対象画素の輝度値Yと、ヒストグラムを用いて得られた対象画素の輝度値Y’を用い、分散値算出部12で算出した分散値に応じて、対象画素の変換後の画素値を算出する。例えば、対象画素の変換後の輝度値をd、重みをrとして、
d=(1−r)・Y+r・Y’ …(4)
によって求めるとよい。ここで、重みrは分散値Vの関数とすればよい。
【0040】
図4は、分散値と重みの関係の一例の説明図である。上述の(4)式の重みrは、例えば分散値Vと図4に示す関係で設定しておくとよい。この例では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合には重みrを1として、ヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’が変換後の画素値dとなるようにする。また、予め決めておいた値より小さい場合には、その予め決めておいた値から離れるに従って重みrの値が小さくなり、変換後の画素値dがヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’からもともとの対象画素の値Yに近づくようにしている。分散値が小さくなればなるほど、輝度値の偏りが大きいことを示しており、それによってヒストグラムを用いて得られた輝度値Y’は過強調になっていることが考えられる。そのため、重みrによって輝度値Y’の影響を減らして過強調を抑えている。
【0041】
図5は、本発明の第1の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。この具体例では、局所領域における輝度が偏っている場合を示している。例えば、局所領域内の輝度に変化がない場合などがこの例に該当する。図3に示した具体例と異なる点について主に説明する。
【0042】
図5(A)には、局所領域の画素値から局所ヒストグラム作成部11が作成したヒストグラムの一例を示している。図3(B)に示したヒストグラムと比べて輝度値の分布が偏在していることが分かる。そのため、分散値算出部12で算出される分散値は、図3に示したヒストグラムの場合に比べて小さい値となる。
【0043】
図5(B)及び図5(C)は、図3(C)及び図3(D)に対応するものであり、それぞれ、ヒストグラムと閾値Thとの関係と、閾値Thを超えた頻度値を各輝度値の頻度値に分散した後のヒストグラムをそれぞれ示している。さらに、図5(C)に示したヒストグラムから作成される変換関数を図5(D)に示している。図3(E)に示した例に比べて傾きが急峻な部分が存在し、この部分で輝度が過強調される。図5(D)では、変換前の輝度の範囲aが、変換後の輝度の範囲bに拡張されることになる。そのため、色むらや雑音成分が存在すると、それが誇張されて変換されることになる。
【0044】
このような場合には、分散値算出部12で算出した分散値が、図3に示した例の場合に比べて小さくなっている。そのため、図4に示した分散値と重みの関係から重みも図3に示した例に比べて小さくなる。これにより、(4)式から画素値変換部14で変換された後の輝度値Y’の重みが低下して変換前の対象画素の輝度値Yの重みが大きくなり、変換後の輝度値dは変換前の対象画素の輝度値に近づいて過強調が抑えられる。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。上述の第1の実施の形態と異なる部分について主に説明してゆく。この第2の実施の形態では、分散値算出部12で算出した分散値を、濃度変換部13でヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う際に用いる例を示している。なお、この第2の実施の形態では、画素値変換部14を設けず、濃度変換部13で変換された値を、対象画素の変換後の値とする。
【0046】
濃度変換部13では、基本的には局所ヒストグラム作成部11で作成したヒストグラムを用いて、図2に示した処理によって濃度変換処理を行う。この濃度変換処理においてヒストグラムを平坦化する際に用いる閾値を、分散値算出部12で算出した分散値に応じた関数により算出する。
【0047】
図7は、本発明の第2の実施の形態における濃度変換部13における処理の一例を示す流れ図である。図7に示した処理の流れでは、図2に示した例におけるS51の処理が異なっている。すなわち、図2のS51に対応する図7のS71において、ヒストグラムを平滑化するために使用する閾値Thを算出する。その際に、例えば(1)式で閾値Thを制御する係数thpを、分散値算出部12で算出した分散値の関数とする。具体例としては、分散値をVとすると、閾値Thを
Th=(sum/Mg)・thp(V) …(1’)
により決定すればよい。ここで、sumは局所領域の各画素における輝度値の総計である。
【0048】
図8は、閾値を制御する関数の一例の説明図である。第1の実施の形態でも述べたが、関数thp(V)の値が1より大きいと閾値Thの値が大きくなり強調度合いは強まり、1より小さいと閾値Thの値が小さくなり強調度合いは弱まる。図8に示す例では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合には関数thp(V)の値を予め決めた上限値とし、分散値が予め決めておいた値より小さくなるに従って、関数thp(V)の値も上限値から小さくなる関数としている。これにより、局所領域の輝度の分散値が小さいほど強調度合いは弱まって過強調が抑えられることになる。もちろん、関数thp(V)の形状は図8に限られるものでないことは言うまでもない。
【0049】
なお、図7に示したS52以降の処理は第1の実施の形態で説明したので、ここでは重複する説明を省略する。
【0050】
図9は、本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。この例では、本発明の第1の実施の形態において用いた図5に示した具体例を用いる。なお、処理対象の画像と局所領域の関係などについては図3に示した通りであり、図3及び図5に示した具体例と異なる点について主に説明する。
【0051】
図9(A)には、局所領域の画素値から局所ヒストグラム作成部11が作成したヒストグラムの一例を示しており、図5(A)に示したものである。
【0052】
図9(B)にはヒストグラムと閾値Thとの関係を示している。図9(B)では、分散値Vが予め決めておいた値より大きい場合に関数thp(V)の上限値を用いて算出された閾値Thを破線で示しており、この具体例で算出された閾値Thを実線で示している。この例では分散値が予め決めておいた値よりも小さく、従って関数thp(V)の値も上限値よりも小さくなって、閾値Thも小さく設定されたものとしている。このように閾値Thが設定されることによって、破線で示した閾値を用いる場合に比べて閾値Thを超える頻度値が増加し、多くの頻度値を分散させることになる。従って、図9(C)に示した閾値Thを超えた頻度値を各輝度値の頻度値に分散した後のヒストグラムは、図5(C)に示した例に比べて凹凸の量が減少する。
【0053】
さらに、図9(C)に示したヒストグラムから作成される変換関数を図9(D)に示している。図5(D)に示した例に比べて傾きが緩やかになり、閾値Thを分散値Vで変更しない場合に比べて強調度合いが弱く、過強調が抑えられている。従って、図9(D)に示した変換関数を用いて対象画素の輝度値を変換すれば、過強調されることなく濃度変換処理が行われることになる。
【0054】
図10は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、21はプログラム、22はコンピュータ、31は光磁気ディスク、32は光ディスク、33は磁気ディスク、34はメモリ、41はCPU、42は内部メモリ、43は読取部、44はハードディスク、45はインタフェース、46は通信部である。
【0055】
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム21によって実現してもよい。その場合、そのプログラム21およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部43に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部43にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク31,光ディスク32(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク33,メモリ34(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0056】
これらの記憶媒体にプログラム21を格納しておき、例えばコンピュータ22の読取部43あるいはインタフェース45にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム21を読み出し、内部メモリ42またはハードディスク44(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態で説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム21をコンピュータ22に転送し、コンピュータ22では通信部46でプログラム21を受信して内部メモリ42またはハードディスク44に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行することによって実現してもよい。
【0057】
コンピュータ22には、このほかインタフェース45を介して様々な装置と接続してもよい。例えば処理対象画像を読み込む読取装置が、このインタフェース45を介して接続されていてもよい。また、処理後の画像を出力する表示手段や画像形成手段、利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。処理対象の画像はハードディスク44あるいはインタフェース45を介して記憶媒体に記憶されていてもよいし、通信部46を介して通信路を通じ他の装置から受け取ってもよい。処理後の画像についても、ハードディスク44あるいはインタフェース45を介して記憶媒体に記憶させるほか、通信部46を介して通信路を通じ他の装置へ転送してもよい。
【0058】
もちろん、部分的にハードウェアによって構成することもできるし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の各実施の形態で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11…局所ヒストグラム作成部、12…分散値算出部、13…濃度変換部、14…画素値変換部、21…プログラム、22…コンピュータ、31…光磁気ディスク、32…光ディスク、33…磁気ディスク、34…メモリ、41…CPU、42…内部メモリ、43…読取部、44…ハードディスク、45…インタフェース、46…通信部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う濃度変換手段と、元の画素値と前記濃度変換手段で処理を施した画素値と前記分散値算出手段で算出した分散値に応じて変換後の画素値を算出する画素値変換手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを前記分散値算出手段で算出した分散値に応じた閾値により平坦化して濃度変換処理を行う濃度変換手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記分散値算出手段は、前記局所領域における輝度及び彩度の分散値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを用いて濃度変換処理を行う濃度変換手段と、元の画素値と前記濃度変換手段で処理を施した画素値と前記分散値算出手段で算出した分散値に応じて変換後の画素値を算出する画素値変換手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
処理対象画像における局所領域のヒストグラムを作成する局所ヒストグラム作成手段と、前記局所領域の分散値を算出する分散値算出手段と、前記局所ヒストグラム作成手段で作成したヒストグラムを前記分散値算出手段で算出した分散値に応じた閾値により平坦化して濃度変換処理を行う濃度変換手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記分散値算出手段は、前記局所領域における輝度及び彩度の分散値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−58872(P2012−58872A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199549(P2010−199549)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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