説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 画像のディテール部における画質改善に適した画像処理装置及び画像処理方法を提供すること。
【解決手段】 本画像処理装置は、画像データに基づき、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成する強調画像生成手段10と、画像データの局所分散値に基づき、強調画像を修正するための修正画像を生成する修正画像生成手段20と、強調画像に修正画像を乗じ、強調画像を修正する強調画像修正手段30と、強調画像修正手段により修正された修正強調画像と、画像データとを合成する合成手段40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な手段により取得された画像データ(元画像)に対し、画像内における特定の領域を強調する強調処理を施し、画質の改善を行う方法が知られている。例えば、元画像と元画像の平滑画像との差分から強調画像を生成し、当該強調画像を元画像に加算することで画像内のエッジ部分の強調を行う方法(アンシャープマスキング)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−317255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像強調処理は、画像内におけるエッジ部分の強調を行うことができるが、画像のディテール部分(エッジ部分及び背景部分のいずれにも相当しない領域)の強調を行うことが難しかった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、画像のディテール部分における画質改善に適した画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、画像データに基づき、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成する強調画像生成手段と、前記画像データの局所分散値に基づき、前記強調画像を修正するための修正画像を生成する修正画像生成手段と、前記強調画像に前記修正画像を乗じ、前記強調画像を修正する強調画像修正手段と、前記強調画像修正手段により修正された修正強調画像と、前記画像データとを合成する合成手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記修正画像生成手段は、前記画像データの局所分散値に基づき、前記画像データの分散画像を生成する分散画像処理手段と、前記分散画像に対し、前記局所分散値が所定値を超えるまでは強調強度が徐々に増加し、前記局所分散値が所定値を超えた後は強調強度が徐々に減少する分散関数による処理を施す分散画像処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記強調画像生成手段は、前記画像データの平滑画像を生成する平滑画像生成手段と、前記画像データから前記平滑画像を減算する減算手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記分散画像処理手段は、前記画像データの種類に基づき、前記分散関数を変更可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、画像データに基づき、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成するステップと、前記画像データの局所分散値に基づき、前記強調画像を修正するための修正画像を生成するステップと、前記強調画像に前記修正画像を乗じ、前記強調画像を修正するステップと、前記強調画像修正手段により修正された修正強調画像と、前記画像データとを合成するステップと、を有することを特徴とする画像処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、画像のディテール部分における画質を改善することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、強調画像を修正するための修正画像を生成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、画像データの種類に応じた強調処理を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、画像のディテール部分における画質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、画像処理装置の機能ブロック図である。
【図2】図2は、画像の領域の区分けを説明するための概念図である。
【図3】図3は、強調関数及び分散関数を示すグラフである。
【図4】図4は、修正画像の概念図である。
【図5】図5は、分散関数のバリエーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1は、画像処理装置の機能ブロック図である。画像処理装置に入力された元画像データは、強調画像生成手段10及び修正画像生成手段20に入力される。
【0018】
強調画像生成手段10は、元画像の特定領域を強調するための強調画像を生成するための手段であり、平滑画像生成手段12及び減算手段14を含む。平滑画像生成手段12は、元画像データに基づき、元画像を非先鋭化した(なまらせた)平滑画像を生成する。平滑画像には、元画像の低周波成分が多く含まれ、高周波成分がカットされている。減算手段14は、元画像データから平滑画像を減算することで、元画像のエッジ部分を強調した強調画像を生成する。強調画像は、元画像から低周波成分が除かれた画像であり、画像のエッジ部分に相当する高周波成分が多く含まれている。
【0019】
修正画像生成手段20は、元画像データの局所分散値に基づき、上記の強調画像を修正する修正画像を生成するための手段であり、分散画像生成手段22及び分散画像処理手段24を含む。局所分散値とは、画像データを所定の大きさの領域(ウィンドウ)にて走査した際の、各ウィンドウに含まれる画素の分散値を意味する。分散画像生成手段22は、各画素の局所分散値を画素値とする分散画像を生成する。分散画像処理手段24は、局所分散値に対し所定の強調強度を有する分散関数を用いて上記の分散画像を処理することにより、修正画像を生成する。
【0020】
強調画像修正手段30は、強調画像生成手段10により生成された強調画像に、修正画像生成手段20により生成された修正画像を乗じることで、強調画像の修正を行う。合成手段40は、強調画像修正手段30により修正された強調画像を元画像に加算する。これらの処理については後段で詳述する。
【0021】
図1における各ブロックの機能は、例えば所定のプログラムをCPU(Central Processing Unit)等の演算装置に実行させることにより実現することができる。また、平滑画像生成手段12は例えばローパスフィルタにより実現することができる。
【0022】
図2は、画像の領域の区分けを説明するための概念図である。オブジェクトの例として、ワインボトル50及びグラス52が描かれている。画像内は所定サイズのウィンドウ(Window)にて走査され、一画素ごとにウィンドウの局所分散値が算出されている。符号Backgroundで示される領域は、オブジェクトの背景領域であり、符号Edgeで示される線は、オブジェクトと背景との境界である画像のエッジ部分に相当する。また、符号Detailで示される領域は、オブジェクトの内側部分の領域であり、背景及びエッジのいずれにも相当しない領域である。
【0023】
背景、エッジ、及びディテールの領域の区分けは、画像データの局所分散値に基づいて行われる。背景部分は画像の鮮鋭度が低い領域であり、局所分散値は小さい。エッジ部分は画像の鮮鋭度が高い領域であり、局所分散値は大きい。ディテール部分は背景部分に比べると鮮鋭度が高いが、エッジ部分に比べると鮮鋭度が低く、局所分散値は両者の値の間である。
【0024】
図3は、強調関数及び分散関数を示すグラフである。図3(a)は強調画像生成手段10により生成される強調関数(図1のA)を、図3(b)は修正画像生成手段20により生成される分散関数(同B)を、図3(c)は強調画像修正手段30により修正された強調関数(同C)をそれぞれ示す。
【0025】
図3(a)に示すように、強調関数は、元画像と平滑画像との差分の増加に対し、強調強度が一次的に増加する単調増加関数である。元画像と平滑画像との画素値が等しい場合は、強調強度は0となる。
【0026】
図3(b)に示すように、分散関数は、局所分散値に応じて強調強度が変化する関数である。グラフは上に凸の形状を有し、局所分散値が所定値Xを超えるまでは強調強度が徐々に増加し、局所分散値が所定値Xを超えた後は強調強度が徐々に減少する。図示するように、分散関数では背景部分及びエッジ部分の強調強度が低く、ディテール部分の強調強度が高く設定されている。
【0027】
図3(c)に示す修正後の強調関数は、図3(a)の強調関数に図3(b)の分散関数を乗じたものである。従って、図3(a)のグラフのうち、局所分散値が中程度であるディテール部分に相当する領域の強調強度が増加し、それ以外の領域の強調強度が減少している。
【0028】
合成手段40は、図3(c)に示す修正後の強調関数に基づく強調画像を、元画像データに対し加算する。これにより、元画像のディテール部分がより強く強調され、それ以外の領域の強調が抑制された画像データを得ることができる。
【0029】
図4は、修正画像生成手段20により生成される分散関数に基づく修正画像の概念図である。元画像データは、図2と同じものを使用している。図中において、斜線のハッチで示された領域(ディテール部分)が、上述の画像処理により強調される領域である。
【0030】
実施例1に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、元画像の特定領域(エッジ部分)を強調するための強調画像を、元画像の局所分散値に基づき生成された修正画像により修正する。修正画像を生成するための分散関数は、局所分散値が中程度の領域に強調強度のピークが来るように設定する。これにより、元画像のディテール部分を強調した画像データを得るとともに、エッジ部分における過度な強調に伴うリンギングや、背景部分におけるノイズ成分の強調を抑制することができる。
【0031】
図5は、分散関数のバリエーションを示すグラフである。図2で示した分散関数は、実際には強調される画像の種類に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、生体の組織のようにディテール部分がある程度鮮明な画像の場合には、強調強度のピークを低く設定し、強調度合いを小さくすることが好ましい。反対に、ガラスや金属のようにディテール部分があまり鮮明でない画像の場合には、強調強度のピークを高く設定し、強調度合いを大きくすることが好ましい。この他にも、ピークの位置をずらしたりグラフの傾きを変えたりするなどして、分散関数の形を変更してもよい。
【0032】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 強調画像生成手段
12 平滑画像生成手段
14 減算手段
20 修正画像生成手段
22 分散画像生成手段
24 分散画像処理手段
30 強調画像修正手段
40 合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づき、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成する強調画像生成手段と、
前記画像データの局所分散値に基づき、前記強調画像を修正するための修正画像を生成する修正画像生成手段と、
前記強調画像に前記修正画像を乗じ、前記強調画像を修正する強調画像修正手段と、
前記強調画像修正手段により修正された修正強調画像と、前記画像データとを合成する合成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記修正画像生成手段は、
前記画像データの局所分散値に基づき、前記画像データの分散画像を生成する分散画像処理手段と、
前記分散画像に対し、前記局所分散値が所定値を超えるまでは強調強度が徐々に増加し、前記局所分散値が所定値を超えた後は強調強度が徐々に減少する分散関数による処理を施す分散画像処理手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記強調画像生成手段は、
前記画像データの平滑画像を生成する平滑画像生成手段と、
前記画像データから前記平滑画像を減算する減算手段と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記分散画像処理手段は、前記画像データの種類に基づき、前記分散関数を変更可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像データに基づき、画像の特定領域を強調するための強調画像を生成するステップと、
前記画像データの局所分散値に基づき、前記強調画像を修正するための修正画像を生成するステップと、
前記強調画像に前記修正画像を乗じ、前記強調画像を修正するステップと、
前記強調画像修正手段により修正された修正強調画像と、前記画像データとを合成するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate