説明

画像処理装置

【課題】スケーリングに際して、画質劣化を改善すると共に、透明領域や非転送色領域が侵食されることを防止する。
【解決手段】フィルタマスク領域を有するスケーリング元画像の前記フィルタマスク領域を判定するフィルタマスク領域判定部11と、前記スケーリング元画像中の画素を用いた補間処理によって生成される補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域外の画素である場合には、前記フィルタマスク領域外の画素を参照画素とし、前記補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域内の画素である場合には、前記フィルタマスク領域内の画素を参照画素とする参照画素選択部12と、前記参照画素選択部によって選択された参照画素を用いて補間処理を行い前記スケーリング元画像をスケーリング処理してスケーリング画像を生成する補間画素生成部15とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明領域又は非転送色を含む画像に対するスケーリング処理等に好適な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置として、液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等のフラットパネルが採用されるようになってきた。フラットパネルにおいては、各画素毎に対応する映像信号を供給することで画像表示を行っている。従って、入力映像信号の画素数やアスペクト比が表示画面の画素数やアスペクト比と異なる場合には、入力映像信号に対する補間処理等によって、映像信号の画素数及びアスペクト比をフラットパネルと一致させるスケーリング処理が必要である。スケーリング処理では、画素間に新たな画素を生成する技術(補間という)を用いることによって、画像の拡大及び縮小(画素数の増加及び減少)を実現している。
【0003】
補間処理は、画像の所定範囲の複数画素(参照画素)を用いて、新たな1画素(補間画素)を生成するものであり、スケーリング処理は、この補間処理を行うことで、新たな画像を生成する。
【0004】
ところで、複数の画像を重ね合わせて表示する場合等においては、画像を半透明表示することがある。この場合には、各画像を構成する各画素は、輝度及び色度に基づく画素値だけでなく、透明度の情報も有する。このような透明度の情報を有する画素によって構成された画像に対してスケーリング処理する場合において、参照画像中に完全透明(透明度が100%)な画素が含まれることがある。この場合には、実際には透明に表示される画素の画素値が補間処理に用いられることになり、生成された補間画素による画像は、画質が低くくなることがある。
【0005】
そこで、特許文献1においては、参照画素に完全透明な画素が含まれている場合には、完全透明な画素を近い位置の完全透明でない画素(透明度が100%未満の画素)に置き換えて、新たな1画素を生成することにより、画質の劣化を改善する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、本来使われるべき完全透明な複数の参照画素が完全透明でない1つの参照画素に置き換えられることがあり、参照画素数が多い補間処理によって画質が劣化することがあるという問題があった。
【0007】
ところで、所定の画像中の所定の領域に他の画像を転送(コピー)する転送処理を行うために、当該所定の領域内の各画素を透明度100%にすることがある。このように画素の透明度が100%の所定の領域(以下、透明領域という)を有する画像に対してスケーリング処理を行う場合に、特許文献1の技術を採用すると、当該透明領域の境界近傍において、透明度が100%でない画素による補間が行われて、透明領域内の画素が透明度100%でない画素に置き換えられてしまい、結果的に透明領域が狭くなってしまうことがあるという問題もあった。
【特許文献1】特開2003−187245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、補間処理に用いる参照画素数を変化させることで画質劣化を抑制しながらスケーリング処理を行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の画像処理装置は、フィルタマスク領域を有するスケーリング元画像の前記フィルタマスク領域を判定するフィルタマスク領域判定部と、前記スケーリング元画像中の画素を用いた補間処理によって生成される補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域外の画素である場合には、前記フィルタマスク領域外の画素を参照画素とし、前記補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域内の画素である場合には、前記フィルタマスク領域内の画素を参照画素とする参照画素選択部と、前記参照画素選択部によって選択された参照画素を用いて補間処理を行い前記スケーリング元画像をスケーリング処理してスケーリング画像を生成する補間画素生成部とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補間処理に用いる参照画素数を変化させることで画質劣化を抑制しながらスケーリング処理を行うことができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像処理装置を示すブロック図である。
【0013】
参照画素選択部12には、スケーリング処理の対象となる元画像(スケーリング元画像)が入力される。この元画像には、フィルタマスク領域が設定されている。
【0014】
フィルタマスク領域は、その領域内の画素の画素値を無効にすることを認める領域である。例えば、フィルタマスク領域としては、透明度が100%又は所定の透明度以上の画素のみからなる領域が考えられる。また、フィルタマスク領域としては、所定の画像中に他の画像を転送(コピー)する転送処理において転送が許可されない他の画像中の領域が考えられる。なお、転送処理においては、所定の画像中において、所定の色のみを転送しないこともあり、この場合にはこの色を非転送色という。
【0015】
図2はこのような転送処理及び非転送色を説明するための説明図である。
【0016】
画像21は、転送処理を行う画像であり、背景(白地)に木の絵柄24を有する。そして、背景及び木の絵柄24の一部を含む領域にフィルタマスク領域25が設定されている。フィルタマスク領域は非転送色(図2では右下がり斜線)で表示されている。画像22は、転送処理を行う無地の画像であり、非転送色以外の所定の色を有する。フィルタマスク領域25に対応する画像22中の領域26についても非転送色以外の色(図2では網線)で表示されている。
【0017】
これらの画像21,22を転送して、画像22上に画像21を表示した画像23を得る。画像23には、画像21のフィルタマスク領域25を除き、白地の背景部分と木の絵柄24とが転送されて表示される。フィルタマスク領域25は非転送色の領域であり、この領域は、画像22の領域26の色が表示される。即ち、この場合には、非転送色は透明度が100%であることと等価である。
【0018】
フィルタマスク領域判定部11にはフィルタマスク領域を示すフィルタマスク領域判定信号が入力される。フィルタマスク領域判定部11は、スケーリング元画像の入力画素データがフィルタマスク領域の画素であるか否かの判定結果を参照画素選択部12に出力する。
【0019】
参照画素選択部12は、スケーリング元画像の画素データが順次入力され、補間処理に用いる参照画素を選択する。この場合には、参照画素選択部12はフィルタマスク領域の画素であるか否かの判定結果を用いて、参照画素を選択する。
【0020】
図3及び図4は参照画素選択部12による参照画素の選択方法を説明するための説明図である。図3及び図4において斜線部はフィルタマスク領域内の画素のうち最も補間画素Tに近い画素であることを示している。
【0021】
図3及び図4は12個の画素A〜Lを参照画素として1つの補間画素Tを生成する例を示している。即ち、参照画素選択部12は補間画素Tに対して所定の位置関係を有する12の参照画素A〜Lを選択する。画素A〜Lがいずれもフィルタマスク領域内の画素でない場合には、参照画素選択部12は、図3(a)に示すように、全ての画素A〜Lを参照画素として選択する。
【0022】
図4(a)はこのような例を示している。画素A〜Lはいずれもフィルタマスク領域RF内の画素ではなく、全ての画素A〜Lが参照画素として選択される。
【0023】
画素A〜Lにフィルタマスク領域内の画素が含まれる場合には、参照画素選択部12は、画素A〜Lを参照画素の候補の画素列とし、画素A〜Lのうちフィルタマスク領域内の画素の画素位置に応じて参照画素を選択する。即ち、補間画素Tが画素A〜Lによる画素列の中央の位置の画素であるものとすると、画素A〜Lのうち、フィルタマスク領域内の画素の画素位置よりも補間画素T側に位置する画素の数だけ、補間画素Tから両側に均等の数の画素を参照画素とする。なお、参照画素の候補の画素列中の複数の位置にフィルタマスク領域中の画素が存在する場合でも、フィルタマスク領域の画素のうち最も補間画素Tに近い画素の画素位置のみによって選択する参照画素を決定する。
【0024】
例えば、図3(b)の例では、画素A〜Lのうち左端の画素A又は右端の画素Lがフィルタマスク領域の画素であるので、これらのいずれの場合においても、画素B〜Kまでの10画素を参照画素とする。図4(b)はこのような例を示している。画素Lはフィルタマスク領域RF内の画素であり、この場合には、画素B〜Kが参照画素として選択される。
【0025】
同様に、図4(c)に示すように、画素A〜Lのうちの画素K,Lがフィルタマスク領域RF内の画素の場合には、図3(c)に示すように、画素C〜Jまでの8画素を参照画素とする。なお、画素Bがフィルタマスク領域の画素である場合においても、画素C〜Jまでの8画素が参照画素として選択される。
【0026】
同様に、フィルタマスク領域の画素のうち最も補間画素Tに近い画素の画素位置が画素J(図4(d)参照)又は画素Cの場合には、参照画素選択部12は、図3(d)に示すように、画素D〜Iまでの6画素を参照画素とする。また、フィルタマスク領域の画素のうち最も補間画素Tに近い画素の画素位置が画素I(図4(e)参照)又は画素Dの場合には、参照画素選択部12は、図3(e)に示すように、画素E〜Hまでの4画素を参照画素とする。また、フィルタマスク領域の画素のうち最も補間画素Tに近い画素の画素位置が画素H(図4(f)参照)又は画素Eの場合には、参照画素選択部12は、図3(f)に示すように、画素F,Gの2画素を参照画素とする。
【0027】
また、フィルタマスク領域の画素のうち最も補間画素Tに近い画素の画素位置が画素G(図4(g)参照))又は画素Fの場合、即ち、補間画素Tの画素位置に対応する位置、つまり参照画素の候補の画素列の中央の位置において、フィルタマスク領域の画素が存在する場合には、参照画素選択部12は、図3(g)に示すように、画素F,Gの2画素のいずれか一方を参照画素とする。この場合には、後述する補間位相生成部13の出力を用いることで、参照画素選択部12は、補間画素Tの画素位置が画素F,Gの2画素のうちのいずれかの画素を選択して補間画素を決定する。
【0028】
スケーリング処理のスケーリング倍率とスケーリング元画像の画素数によっては、補間画素の画素位置と元の参照画素の画素位置とにずれが生じることがある。図4(g)はこの場合の例を示しており、補間画素Tが破線に示す画素位置の場合には、補間位相生成部13の出力によって、参照画素選択部12は画素Fを参照画素として選択し、補間画素Tが実線に示す画素位置の場合には、補間位相生成部13の出力によって、参照画素選択部12は画素Gを参照画素として選択する。
【0029】
画素A〜Lのうち画素F〜Lがフィルタマスク領域内の画素となった場合には、参照画素選択部12は画素F又はGの画素を参照画素として選択する。即ち、画素A〜Lの画素列の中央の2画素がいずれもフィルタマスク領域内の画素となった場合には、参照画素はフィルタマスク領域内の画素となり、補間画素Tはフィルタマスク領域内の画素に基づいて生成されることになる。
【0030】
即ち、本実施の形態においては、参照画素選択部12は、フィルタマスク領域外の補間画素を生成する場合には、フィルタマスク領域外の参照画素のみを用い、フィルタマスク領域内の補間画素を生成する場合には、フィルタマスク領域内の参照画素のみを用いるように、参照画素を選択する。
【0031】
補間位相生成部13は、参照画素選択部12から参照画素の候補の情報が与えられる。補間位相生成部13はスケーリング元画像の画素数及びスケーリング倍率に基づいて、補間画素の画素位置と参照画素の画素位置との位置関係(補間位相)を求める。補間位相生成部13は、求めた位相差の情報を参照画素選択部12に出力する。参照画素選択部12は、入力された位相差の情報を用いることで、上述したように、補間位相生成部13から補間画素と参照画素の候補の画素との位置関係に基づいて、参照画素候補のうちのいずれの参照画素を選択するかを決定する。
【0032】
参照画素選択部12は選択した参照画素を補間画素生成部15及びフィルタ係数選択部14に供給する。フィルタ係数選択部14は、参照画素を用いた補間演算の係数(フィルタ係数)を記憶した図示しないメモリを有しており、入力された参照画素に応じて、このメモリからフィルタ係数を読み出して補間画素生成部15に出力する。なお、フィルタ係数は補間画素Tの画素位置に近い程大きな係数となるように設定されている。なお、フィルタ係数セレクト部14は、補間位相生成部13の出力を用い、選択したフィルタ係数を位相差に応じて補正して補間画素生成部15に与えるようになっている。なお、位相差に応じて補正されたフィルタ係数がメモリに格納されている場合には、フィルタ係数セレクト部14は参照画素及び位相差に基づくフィルタ係数を選択して補間画素生成部15に出力すればよい。
【0033】
補間画素生成部15は、参照画素の画素値にフィルタ係数を乗算して、総和を補間画素の画素値として出力する。こうして、補間が行われたスケーリング画像が得られる。
【0034】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図5乃至図9の説明図を参照して説明する。図5はフィルタマスク領域32を有する画像31をスケーリング倍率2倍でスケーリングして、画像35を得る場合のスケーリング処理を示している。画像35内のフィルタマスク領域36もスケーリング処理されている。
【0035】
本実施の形態におけるスケーリング処理を説明する前に、一般的なスケーリング処理について説明する。図6は一般的なスケーリング処理を説明するためのものであり、各画素を丸印にて示している。図6の各画素は図5の領域33の画素を示している。図6の上側の丸印は参照画素となる画素列を示し、下側の丸印は補間画素の画素列を示している。図6の例は水平方向の4つの参照画素から8つの補間画素を生成する例、即ち、水平方向に2倍にスケーリング処理する例を示している。
【0036】
いま、左から順に配列された画素A〜Kのうちの画素D〜G画素を参照画素として用いて、左から順に配列する画素1〜8を生成するものとする。図6の参照画素と補間画素とを結ぶ線分は、各補間画素と補間処理に用いる参照画素との対応を示している。図6の例は左から5画素の画素A〜Eがフィルタマスク領域32外の画素で、左から6画素以降の画素F〜K(符号省略)がフィルタマスク領域32内の画素である。
【0037】
補間画素1,2については、フィルタマスク領域32外の画素を用いて補間処理が行われている。また、画素6〜8(符号省略)については、フィルタマスク領域32内の画素を用いて補間処理が行われている。しかし、補間画素3〜5については、フィルタマスク領域32内外の画素を用いて補間処理が行われている。例えば、フィルタマスク領域32の画素が非転送色で、フィルタマスク領域32以外の画素が非転送色以外の色(転送色)である場合には、補間画素3〜5は、転送色と非転送色とによって補間されることになり、スケーリング処理後の画像は、図6の斜線部に示すように、境界が不明瞭となる。
【0038】
図9はこの場合におけるスケーリング画像を示す説明図である。図9に示すように、スケーリング後の画像35はフィルタマスク領域36の周辺に、非転送色の漏込みにより画質劣化部分(斜線部)が生じる。
【0039】
次に、上述した特許文献1によるスケーリング処理を説明する。図7は特許文献1の技術を適用した場合のスケーリング処理を説明するためのものであり、図7の丸印及び丸印同士を結ぶ線分は、図6と同様のものである。
【0040】
特許文献1においては、透明度が100%の参照画素については、透明度が100%未満の隣接する参照画素を代えて用いる。従って、補間画素3については参照画素Fに代えて参照画素Eを用いて補間処理を行い、補間画素4については参照画素F,Gに代えて参照画素Eを用いて補間処理を行い、補間画素5については参照画素F〜Hに代えて参照画素Eを用いて補間処理を行う。
【0041】
この結果、補間画素5については透明度が100%未満の画素となる。即ち、この場合には、透明度が100%の画素によるフィルタマスク領域36の領域が小さくなったことと等価となる。
【0042】
これに対し、図8は第1の実施の形態におけるスケーリング処理を示している。図8の丸印及び丸印同士を結ぶ線分は、図6と同様のものである。
【0043】
本実施の形態においては、参照画素の候補の画素列のうちフィルタマスク領域に含まれる画素の補間画素側に配置された画素であって、補間画素から水平方向の両側に略同数の画素を参照画素として用いる。
【0044】
例えば、参照画素選択部12は、図8の補間画素2については、フィルタマスク領域32の画素を含まない4つの画素B〜Eを用いた補間処理によって生成するのに対し、補間画素3については、フィルタマスク領域32の画素Fを1つ含む4つの画素C〜Fのうち、両側の1画素ずつを除いた2つの画素D,Eを用いた補間処理によって生成する。同様に、補間画素4については、フィルタマスク領域32の画素F,Gを2つ含む4つの画素D〜Gのうち、画素Eを用いた補間処理によって生成される。
【0045】
また、参照画素の候補の画素列の中央の画素がフィルタマスク領域内の画素である場合には、この画素を参照画素とする。例えば、補間画素5については、4つの画素E〜Hのうち、フィルタマスク領域32中の画素Fを用いた補間処理によって生成される。同様にして、補間画素6〜8は、夫々フィルタマスク領域32の画素G〜Iを用いた補間処理によって生成される。
【0046】
この結果、補間画素5〜8についてはフィルタマスク領域32内の画素によって補間処理が行われて、スケーリング画像が得られる。これにより、スケーリング後の画像35内のフィルタマスク領域36はフィルタマスク領域32をスケーリング倍率に従って拡大又は縮小したものとなる。
【0047】
このように、本実施の形態においては、スケーリング処理の補間処理においては、補間画素がフィルタマスク領域以外の画素である場合には、フィルタマスク領域以外の画素のみを参照画素として補間画素が生成され、補間画素がフィルタマスク領域内の画素である場合には、フィルタマスク領域内の画素のみを参照画素として補間画素が生成される。これにより、フィルタマスク領域の境界部分において画質が劣化することを防止すると共に、フィルタマスク領域がフィルタマスク領域以外の画素を用いた補間処理によって侵食されてサイズが小さくなることを防止することができる。また、本実施の形態においては、フィルタマスク領域以外の補間画素の補間処理にフィルタマスク領域内の画素を用いないので、フィルタマスク領域が非転送色又は透明度が100%の画素によって構成されている場合でも、これらの画素を用いて画質が劣化することを防止することができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
図10は本発明の第2の実施の形態に係る画像処理装置を示すブロック図である。本実施の形態は、フィルタマスク領域が矩形領域である場合に有効なスケーリング方法を示すものである。図10において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施の形態は参照画素選択部12に代えて参照画素選択部18を採用した点が第1の実施の形態と異なる。参照画素選択部18には、境界線延長信号が入力される。境界線延長信号はフィルタマスク領域の境界線の延長線に隣接する画素領域であって、上述した図3の処理によって補間画素の生成に用いられる参照画素を増減させる領域を示す信号である。
【0050】
参照画素選択部18は、参照画素選択部12と同様に、フィルタマスク領域判定信号に基づいて参照画素を選択すると共に、境界線延長信号によって示される領域については、フィルタマスク領域判定信号に基づく参照画素の選択と同様の選択方法を採用する。
【0051】
図11は参照画素の選択方法を示す説明図である。図11(a)はフィルタマスク領域42を有する画像41を示し、図11(b)は第1の実施の形態の手法によって画像41を水平方向に2倍にスケーリング処理して得られる画像45を示している。画像45は水平方向に2倍にスケーリングされたフィルタマスク領域46を有する。
【0052】
領域47は、フィルタマスク領域46以外の領域の補間画素の生成に際して、図3の処理によって用いられる参照画素の画素数が増減された領域を示している。この領域47においては、水平方向に、参照画素の画素数が…8,6,4,2,1個に減らされか又は、1,2,4,6,8,…個と増やされて補間処理が行われている。補間画素の生成に用いられる参照画素の画素数が異なることによって、補間画素によるスケーリング画像の画質は領域47において変化すると考えられる。この場合でも、水平方向については参照画素の画素数が漸次変化するので、画質の変化は目立たない。しかし、垂直方向については領域47との境界線48(太線)の位置において画質の変化が目立ってしまう。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、図11(c)に示すように、領域47を垂直方向に延長した領域49については、同一水平位置の補間画素の生成に用いる参照画素の画素数を領域47と同様に変化させる。即ち、参照画素選択部18は、境界線延長信号によって、領域49を判断し、領域47と同様に選択する参照画素を求める。これにより、境界線48における画質の変化が目立つことはない。
【0054】
しかし、領域47,49において、垂直方向には画質の変化は目立たないが、領域49においては、太線に示す境界線50において水平方向の画質の変化が目立ってしまう。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、図11(d)に示すように、領域49を水平方向に延長した領域51については、境界線50において領域49と線対象となるように、参照画素の画素数を変化させる。即ち、領域51,49においては、参照画素数は漸次減少し漸次増加するか、又は、漸次増加し漸次減少する。これにより、境界線50における画質の変化が目立つことを防止することができる。なお、このような参照画素の選択についても、参照画素選択部18が境界線延長信号を用いることで決定する。
【0056】
こうして、本実施の形態においては、フィルタマスク領域の境界線延長近傍において、参照画素の変化により画質の変化が目立つことを防止することができる。
【0057】
なお、図11はスケーリング処理を水平方向にのみ施した場合の例である。図12はスケーリング処理を垂直方向にのみ施した場合の例を示している。
【0058】
図12(a)はフィルタマスク領域62を有する画像61を示し、図11(b)は第1の実施の形態の手法によって画像61を垂直方向に2倍にスケーリング処理して得られる画像65を示している。画像65は垂直方向に2倍にスケーリングされたフィルタマスク領域66を有する。
【0059】
領域67は、フィルタマスク領域66以外の領域の補間画素の生成に際して、図3の処理によって用いられる参照画素の画素数が増減された領域を示している。この領域67においては、垂直方向に、参照画素の画素数が…8,6,4,2,1個に減らされか又は、1,2,4,6,8,…個と増やされて補間処理が行われている。補間画素の生成に用いられる参照画素の画素数が異なることによって、補間画素によるスケーリング画像の画質は領域67において変化すると考えられる。この場合でも、垂直方向については参照画素の画素数が漸次変化するので、画質の変化は目立たない。しかし、水平方向については領域67との境界線68(太線)の位置において画質の変化が目立ってしまう。
【0060】
そこで、この場合には、図12(c)に示すように、領域67を水平方向に延長した領域69については、同一垂直位置の補間画素の生成に用いる参照画素の画素数を領域67と同様に変化させる。即ち、参照画素選択部18は、境界線延長信号によって、領域69を判断し、領域67と同様に選択する参照画素を求める。これにより、境界線68における画質の変化が目立つことはない。
【0061】
しかし、領域67,69において、水平方向には画質の変化は目立たないが、領域69においては、太線に示す境界線70において垂直方向の画質の変化が目立ってしまう。
【0062】
そこで、本実施の形態においては、図12(d)に示すように、領域69を垂直方向に延長した領域71については、境界線70において領域69と線対象となるように、参照画素の画素数を変化させる。即ち、領域71,69においては、参照画素数は漸次減少し漸次増加するか、又は、漸次増加し漸次減少する。これにより、境界線70における画質の変化が目立つことを防止することができる。なお、このような参照画素の選択についても、参照画素選択部18が境界線延長信号を用いることで決定する。
【0063】
こうして、図12の例では垂直方向にスケーリングする場合でも、フィルタマスク領域の境界近傍において、参照画素の変化により画質の変化が目立つことを防止することができる。
【0064】
他の構成、作用及び効果は第1の実施の形態と同様である。
【0065】
なお、上記実施の形態においては、参照画素の候補のうち中央の画素がフィルタマスク領域に含まれる画素である場合には、補間位相に基づいていずれか一方の画素を参照画素として選択したが、補間位相を求めることなく、予め一方の画素を参照画素として選択するように決めておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図2】転送処理及び非転送色を説明するための説明図。
【図3】参照画素選択部12による参照画素の選択方法を説明するための説明図。
【図4】参照画素選択部12による参照画素の選択方法を説明するための説明図。
【図5】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図。
【図6】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図。
【図7】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図。
【図8】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図。
【図9】第1の実施の形態の動作を説明するための説明図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図11】第2の実施の形態における参照画素の選択方法を示す説明図。
【図12】第2の実施の形態における参照画素の選択方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0067】
11…フィルタマスク領域判定部、12…参照画素選択部、13…補間位相生成部、14…フィルタ係数選択部、15…補間画素生成部、18…参照画素生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタマスク領域を有するスケーリング元画像の前記フィルタマスク領域を判定するフィルタマスク領域判定部と、
前記スケーリング元画像中の画素を用いた補間処理によって生成される補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域外の画素である場合には、前記フィルタマスク領域外の画素を参照画素とし、前記補間画素が前記フィルタマスク領域に対応する領域内の画素である場合には、前記フィルタマスク領域内の画素を参照画素とする参照画素選択部と、
前記参照画素選択部によって選択された参照画素を用いて補間処理を行い前記スケーリング元画像をスケーリング処理してスケーリング画像を生成する補間画素生成部と
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記スケーリング元画像の画素数及びスケーリング倍率に基づいて、前記参照画素と前記補間画素との位置関係を示す位相情報を生成する補間位相生成部を具備し、
前記参照画素選択部は、前記フィルタマスク領域の境界近傍の画素については、前記位相情報に基づいて前記フィルタマスク領域内の画素を参照画素とするか前記フィルタマスク領域外の画素を参照画素とするかを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補間位相生成部からの位相情報に基づいて前記補間処理に用いるフィルタ係数を補正して前記補間画素生成部に与えるフィルタ係数選択部を具備したことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記参照画素選択部は、前記参照画素の候補の画素列中に前記フィルタマスク領域中の画素が含まれる場合には、前記参照画素の候補の画素列の中央から前記フィルタマスク領域中の画素までの画素数に基づいて、前記参照画素の候補の画素列の中央から参照画素を選択し、前記参照画素の候補の画素列の中央の画素が前記フィルタマスク領域中の画素である場合には、前記中央の画素を参照画素に選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記参照画素選択部は、前記フィルタマスク領域の境界線の延長線近傍の領域については、前記延長線を境界として一方を前記フィルタマスク領域、他方を前記フィルタマスク領域以外の領域として、前記参照画素の選択を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−122453(P2009−122453A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296959(P2007−296959)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390010308)東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社 (192)
【Fターム(参考)】