説明

画像処理装置

【課題】節電モードにある画像処理装置において、ユーザが入力操作したとき、処理が実行されるまでに時間がかかり、不利益を被るユーザに対して、処理に対する課金額を自動的に割り引く。
【解決手段】画像処理装置が節電モードにあるとき、ユーザが、コピーの実行のために入力操作を行う。画像処理装置は、実行中の節電モードを確認し、通常モードに復帰させるためのウォーミングアップを開始する。これと同時に、通常モードに復帰するまでの待機時間の計測を開始する。画像処理装置は、ウォーミングアップが完了して、通常モードに復帰すると、コピーを開始する。画像処理装置は、計測した待機時間に基づいて、標準課金額よりも低い課金額を設定する。待機時間が長いほど、課金額は低く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを処理したときに課金する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置は、画像データの処理を行っていない待機状態のとき、電力消費が少ない節電モードとなる。そして、画像処理装置は、画像データの処理を実行するときに、節電モードから通常モードに復帰する。ところで、コンビニエンスストアなどに設置される画像処理装置では、利用したユーザに課金して、画像データの処理に関するサービスを提供する。そのため、画像処理装置は、ユーザへのサービスの観点から常に通常モードとされ、すぐに処理が実行可能となっている。しかし、省エネの観点からすると、無駄に電力が消費され、このような状況は避けるべきである。待機中の画像処理装置は節電モードとなることが好ましい。
【0003】
ここで、画像処理装置における課金システムとして、特許文献1には、課金対象処理のうち、省エネ化に貢献する設定がされている場合、課金を減額することが記載されている。特許文献2には、印刷処理に時間がかかった場合、処理時間に応じて安い課金額を設定することが記載されている。特許文献3には、画像処理装置が故障した場合、ユーザへの課金に対して、故障時間に応じて課金を減額することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−191436号公報
【特許文献2】特開2003−345200号公報
【特許文献3】特開2008−199545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
待機中の画像処理装置において、ユーザが入力操作したとき、画像処理装置は、節電モードから通常モードに復帰してから、処理を実行する。復帰するまでの間、ユーザはしばらく待たなければならない。上記の課金システムにおいては、ユーザが節電モードにある画像処理装置を使用するとき、ユーザが受ける時間的な不利益を考慮した課金が行われるようにはなっていない。そこで、本発明は、省エネのために節電モードとなったときのユーザの不利益を鑑み、課金額を割り引くようにした画像処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像データの処理を実行するときの通常モードと、処理を実行していない待機状態のときのモードであって、通常モードよりも少ない電力を消費する節電モードとを有し、節電モード中に入力操作があったときに、通常モードに復帰してから処理を実行する画像処理装置であって、処理を実行したときに課金額を決める制御部を備え、制御部は、節電モード中に入力操作があったとき、通常モード時に入力操作があったときの標準課金額よりも低くなるように、課金額を変更するものである。
【0007】
画像処理装置が通常モードにあれば、入力操作があると、すぐに処理が実行される。画像処理装置が節電モードにあると、通常モードに復帰するまでに、ユーザを待たせる時間が発生する。そのため、制御部は、入力操作があったとき、節電モード中であることを確認すると、通常モードに復帰させるとともに、標準課金額よりも低い課金額を設定する。そして、制御部は、低い課金額に基づいて、実行した処理に対する課金を行う。
【0008】
制御部は、節電モードから通常モードに復帰するまでの時間に基づいて、標準課金額よりも低い課金額を設定する。制御部は、復帰するまでの待機時間を計測し、待機時間に応じて課金額を設定する。したがって、待機時間が長いほど、低い課金額が設定される。
【0009】
節電モードには、待機状態のときに一部の機能を低下させる機能別の節電モードが複数ある。制御部は、画像処理装置の動作状況に応じて1つあるいは複数の機能別の節電モードを実行し、制御部は、入力操作されたときの前記節電モードに応じて課金額を設定する。画像処理装置は、動作状況に応じて1つあるいは複数の機能別の節電モードを実行する。各節電モードによって、通常モードに復帰するまでの時間が異なる。そこで、制御部は、入力操作されたときの機能別の節電モードを特定し、特定された機能別の節電モードに応じて、課金額を設定する。通常モードに復帰するまでに長く時間がかかる節電モードの場合、低い課金額が設定される。
【0010】
制御部は、複数の機能別の節電モードを実行しているとき、入力操作により実行する処理に応じて、復帰させる必要のある機能別の節電モードを特定して、特定の節電モードを通常モードに復帰させ、当該節電モードに応じて課金額を設定する。
【0011】
画像処理装置では、コピー処理、スキャン処理、プリント処理などのいずれかの処理を行うとき、実行中の複数の機能別の節電モードのうち、処理に関係する特定の節電モードだけを通常モードに復帰させ、他の節電モードを継続しても、処理の実行に差し支えない場合がある。そこで、制御部は、入力操作に基づいて実行する処理を判別して、復帰させる機能別の節電モードを特定する。そして、特定された節電モードに応じて、課金額を設定する。この場合でも、通常モードに復帰するまでの時間が長い節電モードでは、低い課金額が設定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、画像処理装置が節電モードにあるとき、ユーザが処理を実行させようと操作しても、処理が開始される時間がかかるので、このような待機時間を考慮して、標準課金額よりも低い課金額が設定される。これによって、ユーザは時間を浪費されるといった不利益を受けるが、課金額を自動的に割り引くことにより、ユーザの不利益に対する代償とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像処理装置の概略構成を示すブロック図
【図2】処理を実行するときの課金額設定のためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の画像処理装置を図1に示す。画像処理装置は、コピー、プリント、スキャン、ファクシミリ通信、データ通信といった各処理を実行するMFPとされ、コンビニエンスストアなどの不特定多数のユーザが利用可能な場所に設置されている。
【0015】
画像処理装置は、スキャナ1、印刷部2、通信部3、記憶部4、操作部5、制御部6を備えている。スキャナ1は、原稿から画像データを読み取る。印刷部2は、入力された画像データを用紙に印刷する。通信部3は、ネットワークを通じて他の画像処理装置やホスト装置などの外部機器と通信を行う。また、通信部3は、電話回線に接続されたモデムを有し、モデムを介してファクシミリ通信を行う。さらに、通信部3は、メモリカード、USBメモリ、ICカード等の記憶媒体と有線あるいは無線による通信を行う。
【0016】
記憶部4は、スキャナ1あるいは通信部3を通じて入力された画像データを記憶する。操作部5は、操作キーと表示パネルを有し、各処理を実行するための入力を行う。表示パネルはタッチパネルを有し、操作画面等を表示するとともに、画面上から入力を行える。
【0017】
制御部6は、CPU、ROM、RAMからなり、ユーザの入力操作にしたがって各部を制御して、指示された処理を実行する。例えば、プリント処理では、印刷部2は、通信部3を通じて入力された画像データの印刷を実行する。コピー処理の場合、スキャナ1が原稿を読み取って、画像データが入力されると、印刷部2は、画像データを用紙に印刷する。プリント処理の場合、通信部3を通じてホスト装置等からの画像データが入力されると、印刷部2は、画像データを用紙に印刷する。スキャン処理の場合、スキャナ1が原稿を読み取ると、入力された画像データが記憶部4に保存される、あるいは通信部3が外部機器に画像データを送信する。ファクシミリ送信処理の場合、スキャナ1あるいは通信部3から画像データが入力されると、通信部3は、指定された宛先に画像データを送信する。また、ファクシミリ受信処理の場合、通信部3を通じてファクシミリ装置から画像データを受信すると、印刷部2は、入力された画像データを用紙に印刷する。データ通信の場合、通信部3が外部機器とデータの送受信を行う。
【0018】
画像処理装置は、各処理を実行するときの通常モードと、処理を実行していないときに一部の機能を低下させて通常モードよりも少ない電力を消費する節電モードとを有し、処理を実行していない待機状態のときに節電モードとなる。制御部6は、画像処理装置の動作状況に応じて、通常モードあるいは節電モードを切り替える。制御部6は、処理中は通常モードを実行し、処理が終了して、一定時間経過すると、通常モードから節電モードに移行する。また、制御部6は、節電モードにあるとき、操作部5から入力操作があったとき、あるいは通信部3を通じて受信したとき、節電モードから通常モードに移行する。
【0019】
節電モードとして、低下させる機能毎に節電モードが存在する。定着ヒータをオフする、あるいは定着ヒータを所定の温度まで下げる節電モード、スキャナランプを消灯する、あるいはスキャナランプの光量を下げる節電モード、メイン制御基板への通電をオフにする節電モードのように複数の機能別の節電モードがある。これらの機能別の節電モードを総称して、節電モードとする。制御部6は、画像処理装置の動作状況に応じて複数の機能別の節電モードを組み合わせて、節電モードを実行する。待機時間が長くなるほど、実行される機能別の節電モードが増えていく。
【0020】
そして、画像処理装置では、実行した処理に応じて課金する課金システムを搭載している。制御部6は、処理を実行したときに課金額を決める。すなわち、コピーやプリントなどによって印刷したとき、印刷枚数毎に一定額を課金する。
【0021】
ところで、画像処理装置が節電モードにあるとき、ユーザがコピー等の処理の実行のために入力操作を行うと、制御部6は、節電モードから通常モードに切り替える。このとき、通常モードに復帰するまでに時間がかかる。この間、ユーザは、何もできず、待たされる。ユーザにとっては、時間が浪費され、不利益を受ける。
【0022】
そこで、画像処理装置の制御部6は、節電モード時に入力操作があったとき、通常モード時に入力操作があったときの標準課金額よりも低い課金額を設定する。制御部6は、内蔵のタイマによって、節電モードから通常モードに復帰するまでの時間を計測し、この時間に応じて課金額を設定する。復帰するまでに時間がかかって、ユーザの待機時間が長くなるほど、課金額は低く設定される。
【0023】
例えば、ユーザがコピーを指示する。図2に示すように、制御部6は、現在のモードを確認する(S1)。通常モードの場合、制御部6は、コピーを開始して、入力された画像データを印刷し(S5)、コピー料金単価を表示する(S6)。例えば、コピー1枚の料金が10円と表示される。制御部6は、コピー枚数をカウントし、枚数に応じた料金を課金する。
【0024】
画像処理装置が節電モードであるときに、ユーザの入力操作があると、制御部6は、通常モードに切り替え、ウォームアップを開始するとともに、時間の計測を開始する(S2)。例えば、定着ローラが所定の温度に達すると、ウォームアップは完了し、通常モードに復帰したことになる(S3)。制御部6は、タイマを停止して、計測した待機時間を記憶する(S4)。
【0025】
画像処理装置が通常モードになると、制御部6は、コピーを開始して、印刷を行う(S5)。このとき、制御部6は、待機時間に応じて課金額を設定し、表示パネルにコピー料金単価を表示する(S6)。例えば、待機時間が120秒以上、180秒未満の場合、コピー1枚の料金が8円とされる。待機時間が180秒以上の場合、コピー1枚の料金が7円とされる。待機時間が120秒未満の場合、標準のコピー料金である10円とされる。なお、この料金および料金を決めるための基準の待機時間は、任意に設定可能とされる。待機時間が長いほど料金が安くなるように、課金額が設定されていればよい。
【0026】
このように、待機時間が長くなるほど低い課金額が設定され、ユーザへの課金は少なくなる。処理を依頼したユーザは多少待たされるという不利益を受けても、金額が安くなるという利益を受けることにより、この不利益を相殺することができる。
【0027】
ここで、画像処理装置における節電モードには、待機状態のときに一部の機能を低下させる機能別の複数の節電モードを含んでいる。実行される機能別の節電モードが状況に応じて異なる。すなわち、時間の経過とともに段階的にそれぞれの節電モードが実行される。処理が終了して、一定時間経過すると、まず第1の節電モードが実行される。このときの第1の節電モードとして、すぐに通常モードに復帰できるように、スキャナランプに対する節電モードが実行される。この後、何も処理が実行されずに、時間が経過すると、第2の節電モードとして、定着ヒータに対する節電モードも実行される。さらに時間が経過すると、第3の節電モードとして、制御基板に対する節電モードも実行される。このモードでは、制御プログラムを起動するため、復帰するまでの時間が最もかかる。
【0028】
そこで、待機時間の代わりに、入力操作されたときに実行されている機能別の節電モードに応じて課金額を設定してもよい。制御部6は、節電モードの実行中に、入力操作があったとき、現在実行中の機能別の節電モードを確認する。そして、確認した節電モードに応じて課金額を設定する。例えば、第1の節電モードであれば、コピー1枚の標準課金額が10円のとき、9円とする。第2の節電モードであれば、8円、第3の節電モードであれば、7円とする。実行される機能別の節電モードが増えるほど、通常モードに復帰するまでの時間が長くなるので、課金額はより低く設定される。
【0029】
また、複数の節電モードを実行しているとき、実行しようとする処理によっては、復帰させる必要のない節電モードがある。例えば、スキャン処理あるいはファクシミリ送信処理を行うとき、印刷は行わないので、定着ヒータに対する第2の節電モードを継続したまま、スキャンランプに対する第1の節電モードが復帰される。プリント処理を行うとき、原稿の読み取りは行わないので、スキャンランプに対する第1の節電モードを継続したまま、定着ヒータに対する第2の節電モードが復帰される。コピー処理を行うとき、定着ヒータに対する第2の節電モードおよびスキャンランプに対する第1の節電モードが復帰される。このように、実行する処理によって、各節電モードから通常モードに復帰するまでの時間が異なる。そこで、実行する処理に応じて課金額を設定してもよい。
【0030】
制御部6は、ユーザの入力操作により実行する処理を判別するとともに、現在実行中の節電モードを確認して、動作状況を判断し、動作状況に応じて復帰させる機能別の節電モードを特定する。そして、特定された節電モードに応じて課金額を設定する。例えば、スキャン処理あるいはファクシミリ送信処理が実行されるとき、制御部6は、スキャナランプに対する第1の節電モードを特定し、これに応じた課金額を設定する。プリント処理が実行されるとき、制御部6は、定着ヒータに対する第2の節電モードを特定し、これに応じた課金額を設定する。コピー処理が実行されるとき、制御部6は、スキャナランプに対する第1の節電モードおよび定着ヒータに対する第2の節電モードを特定し、2つの節電モードのうち、復帰するまでに長く時間がかかる節電モードに応じた課金額を設定する。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。画像処理装置は、MFPに限らず、コピー機、プリンタ、ファクシミリ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 スキャナ
2 印刷部
3 通信部
4 記憶部
5 操作部
6 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データの処理を実行するときの通常モードと、処理を実行していない待機状態のときのモードであって、通常モードよりも少ない電力を消費する節電モードとを有し、節電モード中に入力操作があったときに、通常モードに復帰してから処理を実行する画像処理装置であって、処理を実行したときに課金額を決める制御部を備え、制御部は、節電モード中に入力操作があったとき、通常モード時に入力操作があったときの標準課金額よりも低くなるように、課金額を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
制御部は、節電モードから通常モードに復帰するまでの時間に基づいて、標準課金額よりも低い課金額を設定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
節電モードには、待機状態のときに一部の機能を低下させる機能別の節電モードが複数あり、制御部は、画像処理装置の動作状況に応じて1つあるいは複数の機能別の節電モードを実行し、制御部は、入力操作されたときの前記節電モードに応じて課金額を設定することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
制御部は、複数の機能別の節電モードを実行しているとき、入力操作により実行する処理に応じて、復帰させる必要のある機能別の節電モードを特定して、特定の機能別の節電モードを通常モードに復帰させ、当該節電モードに応じて課金額を設定することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
制御部は、節電モードから通常モードに復帰するまでの時間が長くなるほど、低い課金額に設定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−282096(P2010−282096A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136582(P2009−136582)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】