説明

画像処理装置

【課題】文書に含まれる図面等の幾何特性を変えることなく、文書の印刷時に情報の埋め込みを行う。
【解決手段】形状の異なる文字を文字展開する第1の情報埋込方式により埋め込まれた第1の情報と、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する第2の情報埋込方式により埋め込まれた第2の情報とを含む文書原稿を読み取って画像データに変換する変換手段と、前記第2の情報を前記第2の情報埋込方式に対応する第2の情報抽出方式により抽出する第2の情報抽出手段と、前記第2の情報抽出手段により前記第2の情報の抽出が行われた後に、前記第2の情報埋込方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元する復元手段と、前記復元手段による復元が行われた後に、前記第1の情報を前記第1の情報埋込方式に対応する第1の情報抽出方式により抽出する第1の情報抽出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷した文書に埋め込まれた情報を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ的に機微な文書には、出力者情報等をマーキングしておき、漏洩事故が起きたときには漏洩元を特定したい等の社会的要請が高くなってきている。かかる要請に応えることのできる技術として、文書の印刷時に再生可能な情報埋め込みを同時に行い、スキャン時にその情報を取り出して様々な用途に利用するマーキング技術(情報埋込技術)が種々提案されている(特許文献1等を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した情報埋込技術を用いて機器を制御する場合、埋め込まれた情報の抽出を高速に行う必要がある。例えば、抽出情報に基づいて複写の許可・不許可やその他の機能の制限等を行う場合、即座に情報抽出が行えなければ、使い勝手が非常に悪いものとなってしまう。
【0004】
しかし、高速に情報抽出が行える情報埋込方式では、一般に埋め込める情報量が少なく、セキュリティ管理のための書誌情報等を埋め込むのは困難である。反面、充分な情報量を埋め込める情報埋込方式では、一般に情報抽出に時間がかかり、高速処理は困難である。
【0005】
そこで、埋め込める情報量は少ないが高速に情報抽出が行える情報埋込方式と、低速ではあるが充分な情報量を埋め込める情報埋込方式とを組み合わせ、機器の制御は前者の抽出情報により行い、セキュリティ管理のための情報は後者の抽出情報から得ることが考えられる。
【0006】
しかしながら、異なる情報埋込方式を同時に適用することで、一方の情報抽出の精度が低下するという問題がある。特に、形状の異なる文字を文字展開する情報埋込方式(低速)と展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する情報埋込方式(高速)とを同時に適用した場合、後者による変形が前者の情報抽出精度に大きく影響する。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、低速ではあるが埋め込める情報量の多い情報埋込方式と高速ではあるが埋め込める情報量の少ない情報埋込方式とを組み合わせることで機器の制御等に適用しやすい情報抽出技術を提供するとともに、情報抽出の精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、請求項1に記載されるように、形状の異なる文字を文字展開する第1の情報埋込方式により埋め込まれた第1の情報と、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する第2の情報埋込方式により埋め込まれた第2の情報とを含む文書原稿を読み取って画像データに変換する変換手段と、前記第2の情報を前記第2の情報埋込方式に対応する第2の情報抽出方式により抽出する第2の情報抽出手段と、前記第2の情報抽出手段により前記第2の情報の抽出が行われた後に、前記第2の情報埋込方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元する復元手段と、前記復元手段による復元が行われた後に、前記第1の情報を前記第1の情報埋込方式に対応する第1の情報抽出方式により抽出する第1の情報抽出手段とを備える画像処理装置を要旨としている。
【0009】
また、請求項2に記載されるように、請求項1に記載の画像処理装置において、前記復元手段は、前記第2の情報抽出手段の情報抽出結果と矛盾しない変形部分のみを選択的に復元するようにすることができる。
【0010】
また、請求項3に記載されるように、請求項1または2のいずれか一項に記載の画像処理装置において、前記復元手段は、前記第2の情報抽出手段の情報抽出結果に矛盾しない変形部分を、変形として検出できなかったものについても復元するようにすることができる。
【0011】
また、請求項4に記載されるように、形状の異なる文字を文字展開する第1の情報埋込方式により埋め込まれた第1の情報と、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する第2の情報埋込方式により埋め込まれた第2の情報とを含む文書原稿を読み取って画像データに変換する変換工程と、前記第2の情報を前記第2の情報埋込方式に対応する第2の情報抽出方式により抽出する第2の情報抽出工程と、前記第2の情報抽出工程により前記第2の情報の抽出が行われた後に、前記第2の情報埋込方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元する復元工程と、前記復元工程による復元が行われた後に、前記第1の情報を前記第1の情報埋込方式に対応する第1の情報抽出方式により抽出する第1の情報抽出工程とを備える画像処理方法として構成することができる。
【0012】
また、請求項5に記載されるように、請求項4に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムとして構成することができる。
【0013】
また、請求項6に記載されるように、請求項5に記載の画像処理プログラムを記録したプログラム記録媒体として構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像処理装置にあっては、低速ではあるが埋め込める情報量の多い情報埋込方式と高速ではあるが埋め込める情報量の少ない情報埋込方式とを組み合わせることで機器の制御等に適用しやすい情報抽出技術を提供するとともに、情報抽出の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図2】フォント辞書のデータ構造例を示す図である。
【図3】エンコードテーブルのデータ構造例を示す図である。
【図4】アウトラインフォントを構成するベクトルの例を示す図(その1)である。
【図5】アウトラインフォントを構成するベクトルの例を示す図(その2)である。
【図6】輪郭方式による情報の埋め込みの例を示す図である。
【図7】実施形態の処理例を示すフローチャートである。
【図8】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その1)である。
【図9】実施形態のより詳細な処理例を示すフローチャート(その1)である。
【図10】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その2)である。
【図11】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その3)である。
【図12】実施形態のより詳細な処理例を示すフローチャート(その2)である。
【図13】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その4)である。
【図14】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その5)である。
【図15】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その6)である。
【図16】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その7)である。
【図17】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その8)である。
【図18】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その9)である。
【図19】輪郭部の変形の復元の例を示す図(その10)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0017】
<構成>
図1は本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【0018】
図1において、MFP(Multi Function Printer)等の画像処理装置1はネットワーク2に接続されている。ネットワーク2には、他にPC(Personal Computer)3やスキャナ4やプリンタ5が接続されている。
【0019】
画像処理装置1は、システムバス101に接続されたキーボード102、CPU(Central Processing Unit)103、メモリ104、ディスプレイ105、HDD(Hard Disk Drive)106、スキャナエンジン107、プリンタエンジン108、ネットワークI/F(Interface)109、第1情報抽出部110、第2情報抽出部114、輪郭変形修正部118を備えている。
【0020】
キーボード102は、ユーザ操作を受け付ける入力装置である。
【0021】
CPU103は、画像処理装置1の全体の制御を行う処理部である。
【0022】
メモリ104は、CPU103の動作のための作業領域としてプログラムやデータを一時的に保存する記憶装置である。
【0023】
ディスプレイ105は、ユーザに情報を提示する表示装置である。
【0024】
HDD106は、プログラムやデータを永続的に保存する記憶装置である。
【0025】
スキャナエンジン107は、文書原稿を読み込み、画像データに変換する入力装置である。なお、スキャナエンジン107に代えて、ネットワーク2に接続されたスキャナ4を用いることもできる。
【0026】
プリンタエンジン108は、文書を用紙等に印刷する出力装置である。なお、プリンタエンジン108に代えて、ネットワーク2に接続されたプリンタ5を用いることもできる。
【0027】
ネットワークI/F109は、ネットワーク2を介してPC3やプリンタ5やスキャナ4等と通信を行う通信装置である。
【0028】
第1情報抽出部110は、形状の異なる文字を展開する情報埋込方式(フォント方式)によって埋め込まれた情報を抽出する部分である。なお、第1情報抽出部110は独立したユニットを想定しているが、CPU103およびメモリ104上で動作するプログラムにより実現することもできる。この場合、プログラムはHDD106に格納され、実行時にメモリ104にロードされてCPU103により実行される。
【0029】
ここで、フォント方式は、第1に、文書に含まれる図面等の幾何特性を変えることなく情報埋め込みを行うために、図面等の寸法や注意書き等の印刷時に展開対象となる文字(画像ではなく、文字コードにより表現される文字)に情報を埋め込み、デザインとしての文字には埋め込まないものとしている。デザインとしての文字に厳密な意味がある場合は既に画像として扱われていると考えてよい。従って、印刷時に展開される文字は寸法や注意書き等の文字である。そこで、文字の展開時に埋め込み情報によって形状の異なる文字画像として展開するようにすることで、デザインとしての文字は変形されずに、情報を埋め込むことができる。第2に、情報埋め込みの処理を可能な限り高速に実現するために、予めフォントデータとして文字形状を複数通り保持している。これにより、情報を埋め込む際の処理量が埋め込まない場合と殆ど変わらないものとすることができる。
【0030】
第1情報抽出部110は、文字抽出部111とベクトル化部112と復号部113とを備えている。
【0031】
文字抽出部111は、文書原稿の画像データから文字を抽出する部分である。
【0032】
ベクトル化部112は、文字抽出部111が抽出した文字をベクトル化する部分である。ベクトル化は文字の輪郭を3次ベジェ曲線等のベクトル(ベクトル群)に変換するものである。
【0033】
復号部113は、ベクトル化部112によるベクトル化の結果から、埋め込まれた情報(第1情報)である文字コードや制御コードを復号する部分である。復号時には誤り訂正を併せて行う。後述する第2情報抽出部114の誤り訂正部116も利用してもよい。
【0034】
図2と図3は復号部113での復号に使用されるフォント辞書とエンコードテーブルの例を示している。
【0035】
図2に示すフォント辞書は、印刷やディスプレイ表示に利用するフォントデータを保持するものであり、「フォント名(フォント種)」「文字コード」「ベクトル」「始点」「制御点#1」「制御点#2」「終点」等の項目を有している。「ベクトル」は、「フォント名」および「文字コード」により特定される1つの文字の輪郭を構成する3次ベジェ曲線等のベクトルの識別子である。なお、ここでは便宜上、文字の輪郭(アウトライン)ではなく、文字の中心部を通る曲線を表わすベクトルについて示している。実際の文字との対応関係については後述する。「始点」は、各ベクトルの描画開始位置座標を示す。「制御点#1」「制御点#2」は、各ベクトルの曲線を特徴付ける位置座標を示す。「終点」は、各ベクトルの描画終了位置座標を示す。
【0036】
図3に示すエンコードテーブルは、印刷対象の文書に含まれる印刷時展開対象の文字への情報埋め込みのためのルールや埋め込み可能な情報量を保持するものであり、「フォント名」「文字コード」「情報量」「コード」「使用ベクトル」等の項目を有している。「情報量」は、「フォント名」および「文字コード」により特定される1つの文字に埋め込める情報量を示す。「コード」は、埋め込む情報の内容を示す。「使用ベクトル」は、該当する「コード」を埋め込んだ文字の描画に使用するベクトル(図2のフォント辞書の「ベクトル」の組み合わせ)を示す。
【0037】
図4はアウトラインフォントを構成するベクトルの例を示す図である。なお、便宜上、文字の輪郭ではなく、文字の中心部を通る曲線を表わすベクトルについて示している。また、3次ベジェ曲線を用いた場合を例とするが、Bスプライン等の他の曲線を利用することもできる。制御方法はほぼ同様である。
【0038】
図4(a)は、文字「3」(16進表示での文字コード:「33」)についての例であり、文字を4つのベクトルV1、V2,V3,V4に分割し、夫々のベクトルV1、V2,V3,V4を始点、終点、制御点#1、制御点#2の4点の座標で表現している。ベクトルV1の始点がVC1−1、終点がVC1−4、制御点がVC1−2およびVC1−3である。ベクトルV2の始点がVC2−1(=VC1−4)、終点がVC2−4、制御点がVC2−2およびVC2−3である。ベクトルV3の始点がVC3−1(=VC2−4)、終点がVC3−4、制御点がVC3−2およびVC3−3である。ベクトルV4の始点がVC4−1(=VC3−4)、終点がVC4−4、制御点がVC4−2およびVC4−3である。
【0039】
図4(b)は、図4(a)の文字を変形した例である。この例では、ベクトルV2をベクトルV2'、ベクトルV3をベクトルV3'に、制御点を移動することで変形している。ベクトルV2',V3'を使うと、文字「3」を展開する際には、以下のようなベクトルの選択肢が存在する。
(1) V1→V2→V3→V4
(2) V1→V2'→V3→V4
(3) V1→V2→V3'→V4
(4) V1→V2'→V3'→V4
つまり、4通り(2bit)の情報を埋め込むことが可能である。
【0040】
図2のフォント辞書および図3のエンコードテーブルにおける文字コード「33」の内容は、図4(b)に示したベクトル等に対応している。すなわち、図2のフォント辞書のフォント名「xxx」の文字コード「33」に対応する「ベクトル」は、図4(b)のベクトルV1、V2、V2'、V3、V3'、V4であり、「始点」「制御点#1」「制御点#2」「終点」はそれぞれのベクトルの始点、制御点(2個)、終点である。
【0041】
図3のエンコードテーブルのフォント名「xxx」の文字コード「33」に対応する「情報量」は、図4(b)について説明したように4通りのベクトルの組み合わせが存在するため、「2bit」となっている。「コード」は、2bit分の情報の組み合わせとして「00」「01」「10」「11」が設定されている。「使用ベクトル」は、図4(b)について説明した4通りのベクトルの組み合わせがコードに対応して設定されている。
【0042】
図5はアウトラインフォントを構成するベクトルの他の例を示す図である。
【0043】
図5(a)は、文字「4」(16進表示での文字コード:「34」)についての例であり、文字を3つのベクトルv1、v2,v3に分割し、夫々のベクトルv1、v2,v3を始点、終点、制御点#1、制御点#2の4点の座標で表現している。ベクトルv1の始点がvc1−1、終点がvc1−4、制御点がvc1−2およびvc1−3である。ベクトルv2の始点がvc2−1(=vc1−4)、終点がvc2−4、制御点がvc2−2およびvc2−3である。ベクトルv3の始点がvc3−1(=vc2−4)、終点がvc3−4、制御点がvc3−2およびvc3−3である。
【0044】
図5(b)は、図5(a)の文字を変形した例である。この例では、ベクトルv1をベクトルv1'に始点を移動することで変形している。ベクトルv1'を使うと、文字「4」を展開する際には、以下のようなベクトルの選択肢が存在する。
(1) v1→v2→v3
(2) v1'→v2→v3
つまり、2通り(1bit)の情報を埋め込み可能である。
【0045】
図2のフォント辞書および図3のエンコードテーブルにおける文字コード「34」の内容は、図5(b)に示したベクトル等に対応している。すなわち、図2のフォント辞書のフォント名「xxx」の文字コード「34」に対応する「ベクトル」は、図5(b)のベクトルv1、v1'、v2、v3であり、「始点」「制御点#1」「制御点#2」「終点」はそれぞれのベクトルの始点、制御点(2個)、終点である。
【0046】
図3のエンコードテーブルのフォント名「xxx」の文字コード「34」に対応する「情報量」は、図5(b)について説明したように2通りのベクトルの組み合わせが存在するため、「1bit」となっている。「コード」は、1bit分の情報の組み合わせとして「0」「1」が設定されている。「使用ベクトル」は、図5(b)について説明した2通りのベクトルの組み合わせがコードに対応して設定されている。
【0047】
なお、どの文字が情報埋め込み可能かが分からないので、通常は文字の数だけエンコードテーブルのサイズも必要になる。しかし、図面等で利用される文字種は、数字やアルファベット等に限定されることが多い。そこで、情報埋め込み可能な文字を予め限定しておけば、そのサイズ分だけエンコードテーブルを作れば十分である。もちろん、フォント辞書のサイズも小さくて済む。
【0048】
図1に戻り、第1情報抽出部110の復号部113は、ベクトル化部112により取得されたベクトル(ベクトル群)を図2のフォント辞書の始点・制御点・終点と照合して使用されているベクトル(ベクトル群)を特定し、そのベクトル(ベクトル群)に対応付けられている情報のコードを図3のエンコードテーブルから取得することで第1情報を得る。
【0049】
次に、画像処理装置1の第2情報抽出部114は、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する情報埋込方式(輪郭方式)によって埋め込みされた情報を抽出する部分である。なお、第2情報抽出部114は独立したユニットを想定しているが、CPU103およびメモリ104上で動作するプログラムにより実現することもできる。この場合、プログラムはHDD106に格納され、実行時にメモリ104にロードされてCPU103により実行される。
【0050】
図6は輪郭方式による情報(第2情報)の埋め込みの例を示す図である。左側がフォント方式による情報埋め込みにより展開された文字であり、この文字に情報「1010」を埋め込む例である。文字の輪郭部に等間隔で、「1」は凸、「0」は凹として埋め込んでいる。右側が埋め込んだ文字画像である。
【0051】
図1に戻り、第2情報抽出部114は、輪郭変形抽出部115と誤り訂正部116と復号部117とを備えている。
【0052】
輪郭変形抽出部115は、文書原稿の画像データの文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形(例えば、凹凸)を抽出(検出)する部分である。
【0053】
誤り訂正部116は、輪郭変形抽出部115により抽出された微小な変形をコード化して誤り訂正を行う部分である。
【0054】
復号部117は、誤り訂正部116による誤り訂正後のコードから文字コードや制御コードを復号する部分である。
【0055】
次に、輪郭変形修正部118は、輪郭の微小な変形を元に戻す部分である。なお、輪郭変形修正部118は独立したユニットを想定しているが、CPU103およびメモリ104上で動作するプログラムにより実現することもできる。この場合、プログラムはHDD106に格納され、実行時にメモリ104にロードされてCPU103により実行される。
【0056】
<動作>
図7は上記の実施形態の処理例を示すフローチャートである。
【0057】
図7において、対象となる文書原稿をスキャナエンジン107で読み込んで画像データを取得した状態で情報抽出の処理を開始すると(ステップS101)、先ず、第2情報抽出部114により第2情報の抽出を行う(ステップS102)。
【0058】
次いで、第2情報が存在したか否か判断し(ステップS103)、存在した場合、第2情報の埋め込みによる輪郭部の微小変化を復元する(ステップS104)。
【0059】
図8は第2情報の抽出後に、第2情報の埋め込みによる凹凸を平坦化して復元した例である。左が埋め込まれた凹凸位置で、その凹凸に対して平坦化したものが右である。平坦化されたものは、第2情報の埋め込みの影響が排除されており、第1情報の抽出に影響を与えないので、第1情報が安定的に抽出できる。
【0060】
次いで、図7に戻り、第1情報抽出部110により第1情報の抽出を行い(ステップS105)、情報抽出の処理を終了する(ステップS106)。
【0061】
次に、図9は上記の実施形態のより詳細な処理例を示すフローチャートである。
【0062】
図9において、対象となる文書原稿をスキャナエンジン107で読み込んで画像データを取得した状態で情報抽出の処理を開始すると(ステップS201)、先ず、第2情報抽出部114により第2情報の抽出を行う(ステップS202)。
【0063】
この第2情報の抽出(ステップS202)では、輪郭変形抽出部115により輪郭部の変形を抽出し(ステップS203)、誤り訂正部116により、抽出された微小な変形をコード列に変換して(ステップS204)、誤り訂正を行い(ステップS205)、復号部117により文字コードや制御コードを復号する(ステップS206)。
【0064】
次いで、第2情報が存在したか否か判断し(ステップS207)、存在した場合、第2情報抽出部114による復号結果と矛盾しない変形部のみを復元する(ステップS208)。すなわち、誤り訂正で正しいと判断された部分に対応する輪郭変形部についてのみ修正し、誤りと判断された部分に対応する輪郭変形部については修正しない。
【0065】
図10は輪郭部の変形の復元の例を示す図である。左が発見された凹凸位置である。最右の変形が誤った位置を抽出してしまっている例である。この凹凸位置情報に従って、コード列に変換すると「1011・・・」となる。このコード列を誤り訂正した上で復号して「1010・・・」を得たとしたら、4つ目の「1」が誤りであったことが分かる。この場合は、この誤りに対応した凸部については平坦化を行わない。図11は、比較のために、発見された変形全てに対して平坦化を行ったものである。図10の右と図11を比較すると、明らかに図10の右の方が元の画像に近いことがわかる。従って、復号結果と矛盾しない変形部のみを復元することによって、正確な画像が得られるので、第1情報の抽出を精度よく行うことができる。
【0066】
次いで、図9に戻り、第1情報抽出部110により第1情報の抽出を行う(ステップS209)。
【0067】
この第1情報の抽出(ステップS209)では、文字抽出部111により文書原稿の画像データから文字を抽出し(ステップS210)、抽出した文字をベクトル化部112によりベクトル化し(ステップS211)ベクトル化の結果から復号部113により文字コードや制御コードを復号する(ステップS212)。そして、処理を終了する(ステップS213)。
【0068】
図12は上記の実施形態のより詳細な他の処理例を示すフローチャートである。
【0069】
図12において、対象となる文書原稿をスキャナエンジン107で読み込んで画像データを取得した状態で情報抽出の処理を開始すると(ステップS301)、先ず、第2情報抽出部114により第2情報の抽出を行う(ステップS302)。
【0070】
この第2情報の抽出(ステップS302)では、輪郭変形抽出部115により輪郭部の変形を抽出し(ステップS303)、誤り訂正部116により、抽出された微小な変形をコード列に変換して(ステップS304)、誤り訂正を行い(ステップS305)、復号部117により文字コードや制御コードを復号する(ステップS306)。
【0071】
次いで、第2情報が存在したか否か判断し(ステップS307)、存在した場合、変形が検知できなかった部分についても、第2情報抽出部114による復号結果と矛盾しないように復元する(ステップS308)。すなわち、変形が検知できなかった部分に対しても、埋め込みされているはずである部分に対して平坦化処理を行う。
【0072】
図13は輪郭部の変形の復元の例を示す図である。左が発見された凹凸の位置である。3つ目の位置の凸が、少し小さかったために抽出できなかった例である。これをコード列に変形すると「10?1・・・」となり、誤り訂正した上で復号を行い「1010・・・」を得たとしたら、抽出できなかった場所も変形されているはずであると判断し、その部分についても平坦化処理を行う。右はその結果である。図14は、比較のために、検知された変形のみに対して平坦化を行ったものである。図13の右と図14を比較すると、明らかに図13の右の方が元の画像に近いことが分かる。従って、変形が検知できなかった部分についても復号結果と矛盾しないように復元することによって、正確な画像が得られるので、第1情報の抽出を精度よく行うことができる。
【0073】
上記の例では、輪郭の微小変化として凹凸を0/1に対応させて埋め込んだ。埋め込み情報量も多くなるが、処理量も多くなる。そこで、埋め込み情報量は少ないが、検出の処理量が少ない埋め込み例について以下に説明する。
【0074】
図15の例は、埋め込む情報は、ある/なしのフラグ的な情報である。例えば、この埋め込みがなされていたら、複写不可を表すというような具合である。微小変化としては、輪郭部を等距離間隔で凸に変化させている。検出時は、輪郭部を周波数解析するなどして、所定の周期で凸があることを検出したら、複写動作を中止するなどの制御を行う。埋め込み情報量は少ないが、検知処理も少なく、容易に実装可能である。
【0075】
このような埋め込み方法に対しても、埋め込み情報と矛盾しないものについてのみを平坦化した例を図16に示す。凸として検出されたが、等間隔で埋め込まれているはずであるから、最も右の検知位置は矛盾する。従って平坦化しない。図17は、比較のために、発見された凸を全て平坦化した例である。図16の右と図17を比較すると明らかに図16の右の方が元の画像に近いことが分かる。
【0076】
図18は、変形が検知できなかった部分に対しても、埋め込まれているという判断なら、埋め込まれているはずの部分についても平坦化する例である。図19は、比較のために、検知された変形のみに対して平坦化を行ったものである。図18の右と図19を比較すると、明らかに図18の右の方が元の画像に近いことが分かる。従って、変形が検知できなかった部分についても復号結果と矛盾しないように復元することによって、正確な画像が得られるので、第1情報の抽出を精度よく行うことができる。
【0077】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような利点がある。
(1)低速ではあるが埋め込める情報量の多い情報埋込方式であるフォント方式と、高速ではあるが埋め込める情報量の少ない情報埋込方式である輪郭方式とを組み合わせることで、機器の制御には輪郭方式に対応した高速な抽出情報を用い、セキュリティ管理のための書誌情報等はフォント方式に対応した抽出情報を用いるといった使い分けを行うことができ、機器の制御等に適用しやすくなる。
(2)輪郭方式の情報抽出の後に輪郭方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元することで、フォント方式による抽出精度を高めることができる。
(3)輪郭方式の情報抽出結果と矛盾しない変形部分のみを選択的に復元することで、情報埋め込み時に変形したものではないものまで復元することがなくなり、抽出精度をより高めることができる。
(4)輪郭方式の情報抽出結果に矛盾しない変形部分を、変形として検出できなかったものについても復元することで、抽出精度をより高めることができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0079】
1 画像処理装置
101 システムバス
102 キーボード
103 CPU
104 メモリ
105 ディスプレイ
106 HDD
107 スキャナエンジン
108 プリンタエンジン
109 ネットワークI/F
110 第1情報抽出部
111 文字抽出部
112 ベクトル化部
113 復号部
114 第2情報抽出部
115 輪郭変形抽出部
116 誤り訂正部
117 復号部
118 輪郭変形修正部
2 ネットワーク
3 PC
4 スキャナ
5 プリンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2006−237858号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状の異なる文字を文字展開する第1の情報埋込方式により埋め込まれた第1の情報と、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する第2の情報埋込方式により埋め込まれた第2の情報とを含む文書原稿を読み取って画像データに変換する変換手段と、
前記第2の情報を前記第2の情報埋込方式に対応する第2の情報抽出方式により抽出する第2の情報抽出手段と、
前記第2の情報抽出手段により前記第2の情報の抽出が行われた後に、前記第2の情報埋込方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元する復元手段と、
前記復元手段による復元が行われた後に、前記第1の情報を前記第1の情報埋込方式に対応する第1の情報抽出方式により抽出する第1の情報抽出手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記復元手段は、前記第2の情報抽出手段の情報抽出結果と矛盾しない変形部分のみを選択的に復元する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記復元手段は、前記第2の情報抽出手段の情報抽出結果に矛盾しない変形部分を、変形として検出できなかったものについても復元する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
形状の異なる文字を文字展開する第1の情報埋込方式により埋め込まれた第1の情報と、展開された文字・罫線・図形の輪郭部を微小に変形する第2の情報埋込方式により埋め込まれた第2の情報とを含む文書原稿を読み取って画像データに変換する変換工程と、
前記第2の情報を前記第2の情報埋込方式に対応する第2の情報抽出方式により抽出する第2の情報抽出工程と、
前記第2の情報抽出工程により前記第2の情報の抽出が行われた後に、前記第2の情報埋込方式による文字・罫線・図形の輪郭部の微小な変形を変形のない状態に復元する復元工程と、
前記復元工程による復元が行われた後に、前記第1の情報を前記第1の情報埋込方式に対応する第1の情報抽出方式により抽出する第1の情報抽出工程と
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能なプログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−138782(P2012−138782A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290069(P2010−290069)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】