画像処理装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、背景画像と、静止物体またはある速度までの移動物体と背景が含まれる画像を組み合わせ、差分処理を行うことにより静止物体または移動物体を同定したり、移動物体の動きを解析できるようにした画像処理装置に関する。
【0002】
【0003】画像中の移動物体を抽出し、解析し、何らかの情報を得る技術は様々な産業分野において必要不可欠である。例えば人間や動物等生物の動きを解析し、それから得た知識を基にして商品の設計等に応用するようなことは、より安全で合理的な商品開発に必要である。
【0004】また画像を用いた監視処理は種々の場所において利用されており、事故や災害等の発見に寄与している。しかも近年では単に異常や有事を検知するのみにとどまらず、事故や災害を未然に防ぐという防災の目的が強くなってきている。
【0005】そのためには事故や災害をもたらす異常な動きを示す対象物をいち早く検出する必要がある。そこで移動物体の動きを捕らえ解析したり、移動物体間の距離を精度よく算出したりして、その値からいち早く事故や災害をもたらす異常な動きをする移動物体を検出する効率的な手法が必要である。
【0006】
【従来の技術】ところで、画像処理を応用した移動物体の解析として、本特許出願人の出願にかかる例えば特願平3−320594号、特願平3−320597号等が先行技術としてあるが、これらでは始めに移動物体があるかも知れない領域抽出を行い、それらの領域のサイズや中心位置等の特徴から対象物を区別し、この対象物の時間的な変化からその動きを捕らえている。
【0007】例えば人間の運動解析を行う場合、始めに解析したい部分を抽出する。この抽出した対象に対して投影値や領域の中心値等の特徴量を算出し、この特徴量を基にして物体を区別する。次にこのような上記の特徴量の算出処理を時間的な流れのある画像つまり連続画像に対して処理を行い、特徴量から画像間での物体の対応付けを行い、動きを解析している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような上記の手法では、時系列画像それぞれに対して、物体全ての領域抽出・同定処理を行い、且つ画像間での物体の対応付けを求めなければ、移動物体の属性の抽出、例えば速度を求めることができない。
【0009】移動物体がただ1つのみであれば画像間の対応付けは単純であり、比較的簡単にこの時間軸の変化を含めた、例えば速度の如き属性を求めることができる。しかし移動物体が数多く存在する場合においては画像間の対応付けは難しく、しかも物体が静止していたり、別々の速度で移動している場合は、それら全てについてビデオレート処理を行うのは困難である。
【0010】従って本発明の目的は、移動物体が数多く存在する場合でも、静止していたり異なる速度で移動している場合でもビデオレートでこれらの動きが解析できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明では、図1に示す如く、ビデオカメラの如き画像入力部1と、背景画像抽出部2と、第1平均背景抽出部3と、第2平均背景抽出部4と、第1差分演算処理部5と、第2差分演算処理部6と、第3差分演算処理部7を設ける。
【0012】背景画像抽出部2は静止物体及び移動物体を除き背景のみを抽出し、保持するものであり、例えば静止物体も移動物体も抽出されない時に入力画像を保持蓄積するものである。この背景は予めシステムに組み込んでおくこともできる。第1平均背景抽出部3は、停止物体と低速移動物体及び背景を抽出するもの、第2平均背景抽出部4は、停止物体と低速移動物体と中速移動物体及び背景を抽出するものである。
【0013】また第1差分演算処理部5は背景画像抽出部2の保持している背景と、第1平均背景抽出部3の出力との差分を取るものである。第2差分演算処理部6は第1平均背景抽出部3の出力と第2平均背景抽出部4の出力との差分を取るものである。第3差分演算処理部7は第2平均背景抽出部4の出力と画像入力部1の出力との差分を取るものである。
【0014】
【作用】いま、図1のaで示すように、道路の左車線に停止車両が存在しかつ低速車両が走行し、黒印で示す障害物が存在しており、また右車線に2台の中速車両が走行している場合について、本発明の動作を説明する。
【0015】画像入力部1から画像aが入力されると、第1平均背景抽出部3からcで示す画像が出力され、第2平均背景抽出部4からdで示す画像が出力される。また背景画像抽出部2ではbで示す背景画像が保持、出力されている。
【0016】したがって、第1差分演算処理部5からは背景画像bと画像cとの差分である画像eが出力され、第2差分演算処理部6からは画像cと画像dとの差分である画像fが出力される。そして第3差分演算処理部7からは画像dと画像aの差分である画像gが出力される。
【0017】これにより、第1差分演算処理部5からは左車線に存在する2台の停止車両又は低速車両と障害物が画像eとして出力され、第2差分演算処理部6からは右車線に存在する2台の中速車両が画像fとして出力される。しかし画像aには中速より速く走行する車両が存在しないので、第3差分演算処理部6の出力する画像gには何も出力されないものとなる。
【0018】このようにして異なる速度で移動する複数の移動物体の動きをビデオレートで処理することができる。
【0019】
【実施例】A.第1実施例本発明の一実施例を図2〜図10にもとづき説明する。図2は本発明の一実施例構成図、図3は本発明における原画像説明図、図4は本発明における局所領域説明図、図5は本発明における速度画像抽出説明図、図6は本発明における局所領域内特徴量抽出部の説明図、図7は停止物体と低速移動物体の存在する場合の説明図、図8は中速移動物体説明図、図9は高速移動物体説明図、図10R>0は大型移動物体説明図である。
【0020】図中他図と同記号は同一部を示し、1は画像入力部、2は背景画像抽出部、3は第1平均背景抽出部、4′は第n平均背景抽出部、5は第1差分演算処理部、6は第2差分演算処理部、7′は第n+1差分演算処理部、8は第1局所領域内特徴量抽出部、9は第2局所領域内特徴量抽出部、10は第n+1局所領域内特徴量抽出部、20は軌跡算出部である。
【0021】画像入力部1は監視すべき領域の画像をビデオレートで入力するものであり、例えばビデオカメラである。背景画像抽出部2は監視すべき領域の背景画像を入力し、保持するものであり、後述するように移動物体と静止物体のいずれも抽出されないときに随時入力して、後述する図5(A)で示す背景画像メモリ2−1に蓄積したり、予めシステムに保持しておくこともできる。
【0022】第1平均背景抽出部3は停止物体と低速移動物体及び背景を抽出するものであり、また第n平均背景抽出部4′は停止物体と低速〜高速の移動物体及び背景を抽出するものである。これらの第1平均背景抽出部3〜第n平均背景抽出部4′により移動物体の速度別画像を作成することができる。
【0023】勿論第1平均背景抽出部3と第n平均背景抽出部4′との間に、停止物体と低速〜中速の移動物体及び背景を抽出する他の平均背景抽出部(例えば図1における第2平均背景抽出部4)を設けれることもできる。
【0024】第1差分演算処理部5は背景画像抽出部2の出力と第1平均背景抽出部3の出力との差分を取るものであり、第2差分演算処理部6は第1平均背景抽出部3の出力と第n平均背景抽出部4′の出力との差分を取るものである。そして第n+1差分演算処理部7′は第n平均背景抽出部4′の出力と画像入力部1の出力との差分を取るものである。
【0025】これら差分演算処理部により、目的の速度で移動している物体のみを抽出することができる。勿論図1に示す如く、n=2の状態で構成することもできる。差分演算処理部の種類は前段の平均画像抽出部に依存しており、その種類つまりどの平均画像抽出部間の出力差を求めるのかということは定まったものではない。しかし最大数は、平均背景画像抽出部の数と背景画像抽出部と原画像すなわち画像入力部の出力画像の和をX(図1の場合は4)とすると、X*(X−1)/2(*は乗算を示す)だけの種類の差分演算処理部を設定することができる。
【0026】第1局所領域内特徴量抽出部8は、第1差分演算処理部5の出力を受けて、後述するように、その定められた領域内の特徴量の有無や物体の形状特徴等を求める。ここで求めた特徴量の有無とは位置変化を表し、形状特徴は例えばバス乗用車等の対象物体の属性を表すものである。
【0027】第2局所領域内特徴量抽出部9は、第2差分演算処理部6の出力を受けてその定められた領域内の特徴の有無や物体の形状特徴等を求めるものである。第n+1局所領域内特徴量抽出部10は、同様に第n+1差分演算処理部7′の出力を受けてその定められた領域内の特徴の有無や物体の形状特徴等を求めるものである。
【0028】軌跡算出部20はこれら第1局所領域内特徴抽出部9〜第n+1局所領域内特徴部10の出力にもとづき、特徴量の有無の時系列変化から物体の軌跡を算出したり、さらに形状特徴から同一物体の軌跡を求める等の処理を行うものであり、物体の形状特徴解析を行う特徴解析部20−1、作表を行う作表部20−2、表の解析を行う表解析部20−3等を具備している。
【0029】本発明を道路監視用、例えばトンネル内の監視用に使用した場合について以下に説明する。図3(A)はトンネル内に設置した画像入力部1で撮影したある時刻の画像であり、同(B)はそれから数秒後に撮影した画像である。画像入力部1ではビデオレートで連続して撮影しているので、この2つの画像の間に図示省略した画像が連続撮影されている。
【0030】図3(A)、(B)において右車線Rは正常に車両が流れているが、左車線には故障車P1 が停車しており尾燈を点滅させている。しかもこの故障車P1 の後方には障害物P2 があり、この障害物P2 に気づいた後続車両P3 は減速して低速走行しているものと仮定する。以後この2枚を用いて説明するが、ビデオレートで連続して処理を行っているものと仮定する。
【0031】また画像入力部1で撮影される画像領域は、図4に示す如く、複数の局所領域に設定される。図4R>4においてL0〜L4は左車線用の車両追跡用局所領域であり、このうちL0は大型車検出用の局所領域であり、L1〜L4は追跡用の局所領域である。同様にR0〜R4は右車線用の車両追跡用局所領域であり、R0は右車線での大型車検出用局所領域であり、R1〜R4は追跡用の局所領域である。
【0032】次に図5により本発明における速度画像抽出状態を説明する。図5は、停止物体と低速移動物体、中速移動物体、高速移動物体の3種類をそれぞれ出力するものであり図1に対応するものであり、また図2に関して対応させる場合には、n=2の場合における背景画像抽出部2、第1平均背景抽出部3、第n平均背景抽出部4′、第1差分演算処理部5、第2差分演算処理部6、第n+1差分演算処理部7′に相当するものである。
【0033】背景画像抽出部2の画像メモリ2−1には背景が保持されており、この背景がルックアップテーブル■のiとして入力される。ルックアップテーブル■の他方の入力jは、ルックアップテーブル■の出力である背景+停止物体+低速物体が入力される。
【0034】ルックアップテーブル■は、図5(B)に示す如く、|i−j|の値が閾値th2(例えばth2=50)より大きいとき|i−j|を出力する。したがって背景の部分についてはi=jのためルックアップテーブル■からの出力kはk=0であるので、ルックアップテーブル■の出力は停止物体と低速物体の存在する部分だけ|i−j|が出力され、ルックアップテーブル■にiとして入力される。
【0035】このときルックアップテーブル■の他方の入力jには画像入力部1で撮影された入力画像が入力される。この入力画像は、背景と停止物体(障害物も含む)と低速物体と中速物体と高速物体が含まれており、このうち、停止物体(障害物も含む)と低速物体の存在する部分にのみ|i−j|の値が入力されることになる。
【0036】なお、ルックアップテーブル■は、図5(B)に示す如く、iの値が閾値th1(例えばth1=5)のときjからの入力を出力kとし、それ以外はk=0となる。それ故、ルックアップテーブル■から入力画像の内の停止物体(障害物も含む)と低速物体のみが出力される。
【0037】ところでルックアップテーブル■は画像入力部1で撮影された入力画像がiとして入力され、画像メモリ3−1に保持された画像がjとして入力される。そしてi=jのとき出力kとして画像メモリ3−1に保持された画像が、そのまま出力されまた画像メモリ3−1に保持される。
【0038】この外0≦(i−j)≦th31(例えば閾値th31=10)の場合はjにオフセット値α31(例えばα31=1)を加算した値のk=j+α31を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。0≦(j−1)≦th31の場合はjからα31を減算した値のk=j−α31を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。
【0039】th31<(i−j)≦th32(例えば閾値th32=255)の場合はjにオフセット値α32(例えばα32=3)を加算した値のk=j+α32を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。th31<(j−i)≦th32の場合はjからα32を減算した値のk=j−α32を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。
【0040】このようにして後述する理由により背景と停止物体(これらはいずれもi=j)の外に低速物体の存在する部分にもルックアップテーブル■よりkが出力され、ルックアップテーブル■′にiとして入力される。
【0041】ルックアップテーブル■′の他方の入力jは、ルックアップテーブル■の出力である背景+停止物体+低速物体+中速物体が入力される。ルックアップテーブル■′は、図5(B)の■に示す如く設定され、|i−j|の値が閾値th2より大きいとき|i−j|を出力する。
【0042】したがって、背景と低速の部分についてはi=jのためルックアップテーブル■′からの出力kはk=0であり、このためルックアップテーブル■′の出力は入力画像に中速物体の存在する部分だけ|i−j|が出力され、ルックアップテーブル■′にiとして入力される。
【0043】このときルックアップテーブル■′の他方の入力jには画像入力部1で撮影された入力画像が入力される。この入力画像は、背景と停止物体と低速物体と中速物体と高速物体が含まれており、このうち中速物体の存在する部分のみ|i−j|の値が入力される。ルックアップテーブル■′は図5(B)に示す■と同様に動作設定されているので、ルックアップテーブル■′からは中速物体のみが出力される。
【0044】またルックアップテーブル■は画像入力部1で撮影された入力画像がiとして入力され、画像メモリ4−1に保持された画像がjとして入力される。そしてi=jのとき出力kとして画像メモリ4−1に保持された画像がそのまま出力され、また画像メモリ4−1に保持される。
【0045】この外0≦(i−j)≦th41(例えば閾値th41=10)の場合はjにオフセット値α41(例えばα41=1)を加算した値のk=j+α41を出力し、同時に画像メモリ4−1に保持する。0≦(j−i)≦th41の場合はjからα41を減算した値のk=j−α41を出力し、同時に画像メモリ4−1に保持する。
【0046】th41<(i−j)≦th42(例えば閾値th42=255)の場合はjにオフセット値α42(例えばα42=10)を加算した値のk=j+α42を出力し、同時にこれを画像メモリ4−1に保持する。th41<(j−i)≦th42の場合はjからα42を減算した値のk=j−α42を出力し、同時にこれを画像メモリ4−1に保持する。
【0047】このようにして後述する理由によりルックアップテーブル■より背景、停止物体、低速物体の外に中速物体の存在する部分にはkが出力され、ルックアップテーブル■′及び■″にiとして入力される。
【0048】ルックアップテーブル■″の他方の入力jには画像入力部1で撮影された入力画像が入力される。ルックアップテーブル■″は、図5(B)の■に示す如く設定され、|i−j|の値が閾値th2より大きい時|i−j|を出力する。従って、背景と低速と中速の部分についてはi=jのため、ルックアップテーブル■″の出力kはk=0であり、入力画像に高速物体の存在する部分だけルックアップテーブル■″から|i−j|が出力され、ルックアップテーブル■″にiとして入力される。
【0049】このときルックアップテーブル■″の他方の入力jは画像入力部1で撮影された、背景、停止物体、低速物体、中速物体、高速物体が含まれており、このうち高速物体の存在する部分のみ|i−j|の値が入力されるので、ルックアップテーブル■″からは高速物体のみが出力されるものとなる。
【0050】このように、移動物体の速度別に画像を求め、対象物を抽出することで、監視対象を限定することができる。ところで前記の如くルックアップテーブル■又は■の出力にオセフット値を加算または減算して画像メモリ3−1または画像メモリ4−1のデータを修正し、保持する理由について説明する。
【0051】これら画像メモリと入力画像の差が閾値以上の場合、オフセット値を加算又は減算して画像メモリを修正する。対象物体の動きが遅い場合には小さなオフセット値により何度か修正すれば、画像メモリの保持出力する値が入力画像と同じになる。しかし動きが早い対象物の場合少ない修正回数で画像メモリの値を修正しないと入力画像の領域外に移動し、消えることになる。
【0052】このため速度の大きな対象物の検出に対してはオフセット値を大きくして早く修正し、速度の小さな対象物の検出に対してはオフセット値を小さくして修正回数を多くして、時間をかけることにより行う。このようにオフセット値を変えることにより対象物体の速度の違いを判断し、目的とする対象物のみを検出することができる。
【0053】また、図6により平均背景抽出部による各物体の移動速度に応じて、物体を分離した画像を抽出する他の手法を説明する。図6(A)に示す如く、矢印方向に移動している移動物体Aと停止物体Bが存在しているとき、時刻t1 、t2 ・・・tn で移動物体Aと停止物体Bがそれぞれ図示の状態になるが、これらのt1〜tn の各画像を図示省略したメモリに累積する。そしてその累積画像を平均して平均背景を算出する。
【0054】この場合、停止物体Bはn個の画像を累積した値をn等分した値で算出されるが、停止物体Bは各時刻において停止、つまり位置変化がないので、物体Bは変化なく抽出できる。
【0055】一方、移動物体Aは、特にこの移動物体Aの移動速度が速い場合には、各時刻の画像間での移動物体Aの重なりがなく、1時刻の移動物体Aと、(n−1)個の背景との平均をとることになるため、平均の濃度値が小さく閾値より小さな値になり移動物体Aは消失される。かくして平均背景に停止物体Bが残り、移動物体Aは存在しないものとなる。
【0056】なお、移動物体Aだけを含む画像は、平均背景と各時刻の画像との差を算出することにより抽出することが可能となる。また図6(B)に示す如く、停止物体Bに加えて、低速移動物体Dと、中速移動物体Eが存在する場合、これらの移動物体D、Eは次のようにして区分できる。
【0057】低速の移動物体Dは、時刻t2 、t3 、の時刻ではいずれも、時刻t1 の画像とその一部が重複しているが時刻t4 の画像は時刻t1 の画像と重なりがなくなる。
【0058】また中速の移動物体Eは、時刻t2 では時刻t1 の画像とその一部が重複しているが、時刻t3 の画像は時刻t1 の画像と重なりがない。したがって時刻t1 とt4 の画像を累積して2等分すれば低速の移動物体Dと中速の移動物体Eの値は、いずれも閾値以下となり停止物体Bが得られる。また時刻t1 とt2 とt3 の画像を累積して3等分すれば、同様に中速の移動物体Eのみの画像濃度値が閾値以下となる。しかし低速の移動物体Dは、これらの時刻の重なり部分が存在するため、これにもとづき得ることができる。このとき停止物体Bも得られるが、停止物体Bは前記の如く別に得たものとの差で消去すれば低速の移動物体Dを得ることができる。
【0059】また低速の移動物体Dと停止物体Bを原画像より消去することにより中速の移動物体Eを抽出することができる。同様にして、更に高速の移動物体が存在するとき、これを抽出することができる。なお、停止物体の背景も、停止物体と一緒に得ることができる。
【0060】このようにして、図5(A)に示すものとは別の手法により、第1平均背景抽出部から「背景+停止物体+低速移動物体」を出力し、第2平均背景抽出部から「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」を出力することができる。これらにもとづき、第1差分演算処理部において、背景画像抽出部から出力される背景と、第1平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体」との差分を求めることにより、第1差分演算処理部から「停止物体+低速移動物体」が得られる。
【0061】第2差分演算処理部において第1平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体」と第2平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」との差分を求めることにより、第2差分演算処理部から中速移動物体が得られる。
【0062】さらに第3差分演算処理部において、第2平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」と入力画像との差分を求めることにより、第3差分演算処理部から高速移動物体が得られる。
【0063】例えば図1において、第1平均背景抽出部3が背景+停止物体(障害物も含む)+低速移動物体のみを抽出し、第2平均背景抽出部4では背景+停止物体(障害物も含む)+低速移動物体+中速移動物体のみを抽出する場合、第1平均背景抽出部3より得られるものは画像cであり、第2平均背景抽出部4から得られるものは画像dとなる。
【0064】この結果第1差分演算処理部5から停止物体+低速移動物体のみの画像eが得られ、第2差分演算処理部6から中速移動物体のみの画像fが得られ、第3差分演算処理部7から高速移動物体のみの画像gが得られる。ただし図1の例では画像入力部1から得られた入力画像に高速移動物体が存在していない場合であり、このとき画像gには何も検出されないものとなる。従って、画像e、f、gに何も存在しない時に画像入力部1の入力を背景画像抽出部2で蓄積保持することにより背景を更新することができる。
【0065】次に第1局所領域内特徴量抽出部8、第2局所領域内特徴量抽出部9、第n+1局所領域内特徴量抽出部10については、いずれも同一構成のため、図6により第1局所領域内特徴量抽出部8について代表的に説明する。
【0066】本発明では、画像入力部1で撮影される画像領域を予め複数の局所領域に設定しておく。例えば図4R>4に示す如く、左車線用の車両追跡用局所領域としてL0〜L4を設定し、右車線用の車両追跡用局所領域としてR0〜R4を設定する。
【0067】そして各車両追跡用局所領域に対して、図7R>7に示す局所領域内特徴抽出処理部8−1、8−2・・・8−mが用意されている。従って図4に示す如く、車両追跡用局所領域L0〜L4、R0〜R4が設定されているときにはm=10即ち10個の局所領域内特徴抽出処理部が必要となる。
【0068】局所領域内特徴量抽出処理部8−1は局所領域決定部11−1と、雑音除去部12−1と、ラベリング処理部13−1と、特徴量算出部14−1を有する。局所領域決定部11−1はその局所領域内特徴量抽出処理部8−1が処理すべき車両追跡用局所領域の1つを定義するものであり、L0についての処理を行うものであればL0の範囲を定義しておき、この局所領域内の入力画像を抽出するものである。雑音除去部12−1は局所領域決定部11−1から伝達された信号より雑音を除去するものであり、例えばロ−パス・フィルタで構成されている。
【0069】ラベリング処理部13−1は局所領域内の入力画像に対し同一の物体について同一のラベルを付与するラベリング処理を行うものである。そして特徴算出部14−1は、ラベル付けされた領域の有無を検出し、ラベル付けされた領域があれば同一ラベルの領域に対してそのラベル領域の重心位置や、面積、横方向・縦方向の投影値等を求め、各ラベル領域毎の特徴量を算出するものである。
【0070】局所領域内特徴量抽出処理部8−2・・・8−mも前記局所領域内特徴量抽出処理部8−1と同様に構成され、それぞれ局所領域決定部11−2・・・11−m、雑音除去部12−2・・・12−m、ラベリング処理部13−2・・・13−m、特徴量算出部14−2・・・14−mを具備している。
【0071】いま、図8(A)に示す如く、時刻tにおいて、ランプの点滅している停止物体P1 と障害物P2 と低速移動物体P3 が存在する場合、図2に示す第1差分演算処理部5の出力は図8(C)に示す如きものとなり、この車両抽出画像(障害物も含まれる)に、図4に示す局所領域を重ねると図8(E)に示す如きものとなる。この場合、局所領域L1、L2、L4の部分に車両があり、特徴量を算出することができる。
【0072】図8(A)に示す速度画像は、t1+数秒後の時点において、同(B)に示す如き速度画像となり、これにより同(D)に示す如き車両抽出画像が得られる。これに局所領域を重ねると図8(F)に示す如きものとなる。この場合は、局所領域L2、L4に車両が存在するので、これに対して特徴量を計算する。
【0073】これらの結果、図2に示す軌跡算出部20の作表部20−2により時系列的にまとめられた表1が作成される。表1における○印は、局所領域L0〜L4、R0〜R4において各時刻に特徴量が求められたもの、即ち何らかの物体(障害物も含む)が存在していたことを示している。
【0074】
【表1】
【0075】図9は、中速移動物体が存在する場合の時刻t及びt+数秒時の速度画像、車両抽出画像、局所領域重ね合わせ状態を示し、図9に対応する時系列的な特徴量検出状態を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】また図10は高速移動物体に関する時刻t及びt+数秒時の速度画像、車両抽出画像、局所領域重ね合わせ状態を示すが、この場合高速移動物体が存在していないので、図9には高速移動物体は図示されていない。従って、これに対応する表3でも○印はない。
【0078】
【表3】
【0079】従って軌跡算出部20において表解析部20−3が表3を解析することにより高速で走行している車両が、この場合は存在していないと判断することができる。
【0080】また表2を解析することによりL0〜L4には○印がないので、左車線には中速で走行中の車両がこの時点では存在しないこと、また右車線には時刻tとt1には○印がR1とR4の2ヶ所に有ることから中速で走行中の車両が2台走行していることがわかる。
【0081】なお時刻t3も○印が2ヶ所有るが、これはR1とR2という隣接局所領域であり、続く時刻t4には○印が1ヶ所しかないことより、時刻t3におけるR1に存在する対象物とR2に存在する対象物とは同一であると判断できる。
【0082】停止物体と低速移動物体についてまとめた前記表1からは、多少複雑であるが以下のことが判断できる。R0〜R4には○印がないので、右車線に停止または低速走行している車両が存在していない。しかしL1〜L4には○印があり停止または低速走行車両が存在していると判断できる。
【0083】この場合、局所領域L4には一定間隔で○が現れたり消えたりしており、隣接するL3には静止物体が存在しているものと推測できる。一方L1とL2における○印の時間的変化(t〜t3まではL1に、t4〜t7はL1とL2と、t8以降はL2に存在)から、何か低速で移動している物体が存在していることを判断できる。
【0084】なお、前記の解析は時刻と場所の関係において、対象物体が存在するか否かについてのみ判断した例について説明したが、これ以外に特徴量として面積や縦横比等を使用するとより多くの情報を抽出することができる。
【0085】表4は、車線変更を行っている車両について示した例であり、いままでの説明から容易に推察できる。ある領域にある時刻まで存在していた対象物体が瞬間的に消える。しかしその時刻と前後して別の領域、特に隣車線領域に対象物体が出現した場合には車線変更を行った車両であると判断できる。
【0086】
【表4】
【0087】表4において、時刻t3までL1に存在した○印が、時刻t4でL1、L2、R2でも○印が表れ、以下時刻t5、t6、t7においてR2に表れるようなとき、車線変更と判断できる。
【0088】なお、物体の移動時間と各局所領域の大きさの実測値がわかれば移動物体の速度も算出することができる。例えばある局所領域の長さをL、その領域に存在していた時間をTとするとL/Tで速度を求めることができる。
【0089】また図11に示す如く、右車線に大型車PL と小型車PS が走行しているとき、これに図4で示す局所領域を重ねると図11(B)に示す状態となる。これにより大型車PL の走行によりR0に○印が連続して存在するので大型車の存在を検出できる。
【0090】
【表5】
【0091】なお、表5、図11では、小型車PS が時刻t4ではR4より外に走行した状態を示し、時刻t5では大型車がR1を走行し終わりR2に入ったことを示している。
【0092】大型車により走行中の車が隠された状態を表6により説明する。
【0093】
【表6】
【0094】表6では、時刻t1において大型車が局所領域R1を走行し、他の車(例えば小型車)が局所領域R3を走行しており、時刻t4において大型車が局所領域R2を走行していることを示す。そして時刻t7において大型車がR3を走行しており、このとき大型車がその前を走行中の他の車を隠した状態を示す。なおこの隠された車は時刻t11において局所領域R4を走行し、大型車の前方に再び出現した状態を示す。このようなことは表解析部20−3により判断することができる。
【0095】軌跡算出部20ではその特徴解析部20−1が物体の形状特徴を解析して、同一移動物体を判別し、これにもとづき同一移動物体の軌跡を作表部20−2に指示してその軌跡を算出作成することができる。
【0096】B.第2実施例本発明の第2実施例として、空港のスポット監視の場合について説明する。この例では低速で移動している大きな移動物体(例えば航空機)と、中速或いは、高速で移動している小さな物体例えば作業用の特殊車両)とを分離し、その属性について判断するものである。
【0097】この例では、図12(A)に示す状態で局所領域C0、L0〜L7、R0〜R7を設定した。局所領域C0は航空機の機体検出を目的としたものであり、それ以外のL0〜L7、R0〜R7は作業用の特殊車両を検出するための局所領域である。
【0098】図12(B)は航空機Jがスポットに停止している状態を示し、同(C)は特殊車両SP1、SP2が行き交って走行している状態を示す。そして図12(B)及び(C)に、同(A)で示す局所領域を被せた状態を示したのが同(D)及び(E)である。
【0099】航空機がスポットに近づき低速し、停止すると局所領域C0に航空機Jの機体が表れる。この状態を前記低速移動物体抽出の手法を用いて検出する。この場合、図13(A)で示すように、局所領域C0内の長辺方向に航空機Jの投影を落としてその長さを求めると、機体の長さを測定することができる。そしてこの機体の長さから機種を判定することができる。航空機がスポットに近づき、停止するまでの投影値の変化を示したのが表7である。
【0100】
【表7】
【0101】表7より明らかなように、時刻t1、t2、t3・・・と変化すると共に投影の長さ即ち投影値が増加し、ある時刻(この例ではt4)を越えるとその増加が停止する。そして投影値の変動が止まり安定した段階で航空機が停止したと判断する。一方投影値と実際の長さの関係を求めて変換式を求めておけば航空機の実際の長さが分かり、長さの違いから航空機の種類が判断できる。
【0102】また図12(C)、(E)に示している特殊車両SP1、SP2に関しては、前記中速・高速移動物体抽出の手法を用いてこれらを検出できる。航空機と同様に投影値を求めることにより局所領域内に存在している対象物の個数を求めることができる。
【0103】例えば図12(E)において、局所領域L5について投影値を求めたものが図13(B)である。これにより投影値がそれぞれ2つ存在するので、局所領域内に2種類の独立した対象物体が存在していることが判断できる。
【0104】図12(E)の様に特殊車両が移動した場合の局所領域における対象物体の検出個数の変化を時系列的に示したのが表8である。
【0105】
【表8】
【0106】この表8により車両の移動とともに局所領域内の対象物体の数が変動しているのがわかる。これにもとづき、時刻t5では、局所領域L6に存在した特殊車両が局所領域L7に移動して、その個数が2になったこと、時刻t7では局所領域L7を走行していた2個のうちの1つが局所領域L5に移動したこと、時刻t9では他の1つも局所領域L5に移動して再びその個数が2になったこと等が解析できる。
【0107】前記説明ではトンネル及び空港の例について説明したが本発明は勿論これのみに限定されるものではない。走行速度も低中高の3種類の例について説明したが勿論これに限定されるものではなく、例えば0〜30km、30〜60km、60〜90km、90〜120km、120〜150km、150km以上というように細かく区分することも勿論できる。
【0108】
【発明の効果】本発明により以下の如くすぐれた効果が得られる。本発明では複数の区分の速度画像を生成することができるので、種々の速度で移動している対象物体が数多く存在する場合に、ある速度範囲で対象物体を分離することが可能となり、解析処理を容易に行うことができる。
【0109】また対象物体の特徴量を求め、特徴量の時系列変化を求め、特徴量を解析することにより容易に対象物体の軌跡を求めることができる。さらに局所領域における特徴量を算出し、局所領域毎の特徴量の有無から時系列変化を求めることにより、これまた対象物体の軌跡を容易に求めることができる。
【0110】しかも特徴量の形状情報を用いることにより、より詳細な対象物体の軌跡を容易に抽出することもできる。時刻毎の位置の変化及び面積の変化が極めて少ない停止物体を容易に抽出することができる。
【0111】原画像からでは同定が困難な、急激な速度変化や方向変化を生じた対象物体について特徴量の有無及び形状特徴の時系列変化または速度画像間変化から軌跡を算出し移動物体を容易に同定することができる。
【0112】面積の大小のみでは判断できない大型の対象物体の存在を容易に抽出することができる。しかも小型物体が大型の対象物体に隠された状態でも、同一物体の軌跡を抽出することができる。
【0113】速度画像に分離したのち、停止+低速画像に対し、局所領域における物体の有無や、ランプの点滅のような同一形状特徴の周期性を解析することにより点滅している物体を容易に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】本発明一実施例構成図である。
【図3】本発明に使用される原画像説明図である。
【図4】本発明における局所領域説明図の一例である。
【図5】本発明における速度画像抽出説明図である。
【図6】本発明における速度画像抽出の他の例である。
【図7】本発明における局所領域内特徴量抽出部の説明図である。
【図8】停止物体と低速移動物体の存在する場合の説明図である。
【図9】中速移動物体説明図である。
【図10】高速移動物体説明図である。
【図11】大型移動物体説明図である。
【図12】本発明を空港のスポット監視用に使用した場合の説明図である。
【図13】本発明における投影値算出説明図である。
【符号の説明】
1 画像入力部
2 背景画像抽出部
3 第1平均背景抽出部
4 第2平均背景抽出部
4′ 第n平均背景抽出部
5 第1差分演算処理部
6 第2差分演算処理部
7 第3差分演算処理部
7′ 第n+1差分演算処理部
8 第1局所領域内特徴抽出部
9 第2局所領域内特徴抽出部
10 第n+1局所領域内特徴抽出部
20 軌跡算出部
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、背景画像と、静止物体またはある速度までの移動物体と背景が含まれる画像を組み合わせ、差分処理を行うことにより静止物体または移動物体を同定したり、移動物体の動きを解析できるようにした画像処理装置に関する。
【0002】
【0003】画像中の移動物体を抽出し、解析し、何らかの情報を得る技術は様々な産業分野において必要不可欠である。例えば人間や動物等生物の動きを解析し、それから得た知識を基にして商品の設計等に応用するようなことは、より安全で合理的な商品開発に必要である。
【0004】また画像を用いた監視処理は種々の場所において利用されており、事故や災害等の発見に寄与している。しかも近年では単に異常や有事を検知するのみにとどまらず、事故や災害を未然に防ぐという防災の目的が強くなってきている。
【0005】そのためには事故や災害をもたらす異常な動きを示す対象物をいち早く検出する必要がある。そこで移動物体の動きを捕らえ解析したり、移動物体間の距離を精度よく算出したりして、その値からいち早く事故や災害をもたらす異常な動きをする移動物体を検出する効率的な手法が必要である。
【0006】
【従来の技術】ところで、画像処理を応用した移動物体の解析として、本特許出願人の出願にかかる例えば特願平3−320594号、特願平3−320597号等が先行技術としてあるが、これらでは始めに移動物体があるかも知れない領域抽出を行い、それらの領域のサイズや中心位置等の特徴から対象物を区別し、この対象物の時間的な変化からその動きを捕らえている。
【0007】例えば人間の運動解析を行う場合、始めに解析したい部分を抽出する。この抽出した対象に対して投影値や領域の中心値等の特徴量を算出し、この特徴量を基にして物体を区別する。次にこのような上記の特徴量の算出処理を時間的な流れのある画像つまり連続画像に対して処理を行い、特徴量から画像間での物体の対応付けを行い、動きを解析している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような上記の手法では、時系列画像それぞれに対して、物体全ての領域抽出・同定処理を行い、且つ画像間での物体の対応付けを求めなければ、移動物体の属性の抽出、例えば速度を求めることができない。
【0009】移動物体がただ1つのみであれば画像間の対応付けは単純であり、比較的簡単にこの時間軸の変化を含めた、例えば速度の如き属性を求めることができる。しかし移動物体が数多く存在する場合においては画像間の対応付けは難しく、しかも物体が静止していたり、別々の速度で移動している場合は、それら全てについてビデオレート処理を行うのは困難である。
【0010】従って本発明の目的は、移動物体が数多く存在する場合でも、静止していたり異なる速度で移動している場合でもビデオレートでこれらの動きが解析できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明では、図1に示す如く、ビデオカメラの如き画像入力部1と、背景画像抽出部2と、第1平均背景抽出部3と、第2平均背景抽出部4と、第1差分演算処理部5と、第2差分演算処理部6と、第3差分演算処理部7を設ける。
【0012】背景画像抽出部2は静止物体及び移動物体を除き背景のみを抽出し、保持するものであり、例えば静止物体も移動物体も抽出されない時に入力画像を保持蓄積するものである。この背景は予めシステムに組み込んでおくこともできる。第1平均背景抽出部3は、停止物体と低速移動物体及び背景を抽出するもの、第2平均背景抽出部4は、停止物体と低速移動物体と中速移動物体及び背景を抽出するものである。
【0013】また第1差分演算処理部5は背景画像抽出部2の保持している背景と、第1平均背景抽出部3の出力との差分を取るものである。第2差分演算処理部6は第1平均背景抽出部3の出力と第2平均背景抽出部4の出力との差分を取るものである。第3差分演算処理部7は第2平均背景抽出部4の出力と画像入力部1の出力との差分を取るものである。
【0014】
【作用】いま、図1のaで示すように、道路の左車線に停止車両が存在しかつ低速車両が走行し、黒印で示す障害物が存在しており、また右車線に2台の中速車両が走行している場合について、本発明の動作を説明する。
【0015】画像入力部1から画像aが入力されると、第1平均背景抽出部3からcで示す画像が出力され、第2平均背景抽出部4からdで示す画像が出力される。また背景画像抽出部2ではbで示す背景画像が保持、出力されている。
【0016】したがって、第1差分演算処理部5からは背景画像bと画像cとの差分である画像eが出力され、第2差分演算処理部6からは画像cと画像dとの差分である画像fが出力される。そして第3差分演算処理部7からは画像dと画像aの差分である画像gが出力される。
【0017】これにより、第1差分演算処理部5からは左車線に存在する2台の停止車両又は低速車両と障害物が画像eとして出力され、第2差分演算処理部6からは右車線に存在する2台の中速車両が画像fとして出力される。しかし画像aには中速より速く走行する車両が存在しないので、第3差分演算処理部6の出力する画像gには何も出力されないものとなる。
【0018】このようにして異なる速度で移動する複数の移動物体の動きをビデオレートで処理することができる。
【0019】
【実施例】A.第1実施例本発明の一実施例を図2〜図10にもとづき説明する。図2は本発明の一実施例構成図、図3は本発明における原画像説明図、図4は本発明における局所領域説明図、図5は本発明における速度画像抽出説明図、図6は本発明における局所領域内特徴量抽出部の説明図、図7は停止物体と低速移動物体の存在する場合の説明図、図8は中速移動物体説明図、図9は高速移動物体説明図、図10R>0は大型移動物体説明図である。
【0020】図中他図と同記号は同一部を示し、1は画像入力部、2は背景画像抽出部、3は第1平均背景抽出部、4′は第n平均背景抽出部、5は第1差分演算処理部、6は第2差分演算処理部、7′は第n+1差分演算処理部、8は第1局所領域内特徴量抽出部、9は第2局所領域内特徴量抽出部、10は第n+1局所領域内特徴量抽出部、20は軌跡算出部である。
【0021】画像入力部1は監視すべき領域の画像をビデオレートで入力するものであり、例えばビデオカメラである。背景画像抽出部2は監視すべき領域の背景画像を入力し、保持するものであり、後述するように移動物体と静止物体のいずれも抽出されないときに随時入力して、後述する図5(A)で示す背景画像メモリ2−1に蓄積したり、予めシステムに保持しておくこともできる。
【0022】第1平均背景抽出部3は停止物体と低速移動物体及び背景を抽出するものであり、また第n平均背景抽出部4′は停止物体と低速〜高速の移動物体及び背景を抽出するものである。これらの第1平均背景抽出部3〜第n平均背景抽出部4′により移動物体の速度別画像を作成することができる。
【0023】勿論第1平均背景抽出部3と第n平均背景抽出部4′との間に、停止物体と低速〜中速の移動物体及び背景を抽出する他の平均背景抽出部(例えば図1における第2平均背景抽出部4)を設けれることもできる。
【0024】第1差分演算処理部5は背景画像抽出部2の出力と第1平均背景抽出部3の出力との差分を取るものであり、第2差分演算処理部6は第1平均背景抽出部3の出力と第n平均背景抽出部4′の出力との差分を取るものである。そして第n+1差分演算処理部7′は第n平均背景抽出部4′の出力と画像入力部1の出力との差分を取るものである。
【0025】これら差分演算処理部により、目的の速度で移動している物体のみを抽出することができる。勿論図1に示す如く、n=2の状態で構成することもできる。差分演算処理部の種類は前段の平均画像抽出部に依存しており、その種類つまりどの平均画像抽出部間の出力差を求めるのかということは定まったものではない。しかし最大数は、平均背景画像抽出部の数と背景画像抽出部と原画像すなわち画像入力部の出力画像の和をX(図1の場合は4)とすると、X*(X−1)/2(*は乗算を示す)だけの種類の差分演算処理部を設定することができる。
【0026】第1局所領域内特徴量抽出部8は、第1差分演算処理部5の出力を受けて、後述するように、その定められた領域内の特徴量の有無や物体の形状特徴等を求める。ここで求めた特徴量の有無とは位置変化を表し、形状特徴は例えばバス乗用車等の対象物体の属性を表すものである。
【0027】第2局所領域内特徴量抽出部9は、第2差分演算処理部6の出力を受けてその定められた領域内の特徴の有無や物体の形状特徴等を求めるものである。第n+1局所領域内特徴量抽出部10は、同様に第n+1差分演算処理部7′の出力を受けてその定められた領域内の特徴の有無や物体の形状特徴等を求めるものである。
【0028】軌跡算出部20はこれら第1局所領域内特徴抽出部9〜第n+1局所領域内特徴部10の出力にもとづき、特徴量の有無の時系列変化から物体の軌跡を算出したり、さらに形状特徴から同一物体の軌跡を求める等の処理を行うものであり、物体の形状特徴解析を行う特徴解析部20−1、作表を行う作表部20−2、表の解析を行う表解析部20−3等を具備している。
【0029】本発明を道路監視用、例えばトンネル内の監視用に使用した場合について以下に説明する。図3(A)はトンネル内に設置した画像入力部1で撮影したある時刻の画像であり、同(B)はそれから数秒後に撮影した画像である。画像入力部1ではビデオレートで連続して撮影しているので、この2つの画像の間に図示省略した画像が連続撮影されている。
【0030】図3(A)、(B)において右車線Rは正常に車両が流れているが、左車線には故障車P1 が停車しており尾燈を点滅させている。しかもこの故障車P1 の後方には障害物P2 があり、この障害物P2 に気づいた後続車両P3 は減速して低速走行しているものと仮定する。以後この2枚を用いて説明するが、ビデオレートで連続して処理を行っているものと仮定する。
【0031】また画像入力部1で撮影される画像領域は、図4に示す如く、複数の局所領域に設定される。図4R>4においてL0〜L4は左車線用の車両追跡用局所領域であり、このうちL0は大型車検出用の局所領域であり、L1〜L4は追跡用の局所領域である。同様にR0〜R4は右車線用の車両追跡用局所領域であり、R0は右車線での大型車検出用局所領域であり、R1〜R4は追跡用の局所領域である。
【0032】次に図5により本発明における速度画像抽出状態を説明する。図5は、停止物体と低速移動物体、中速移動物体、高速移動物体の3種類をそれぞれ出力するものであり図1に対応するものであり、また図2に関して対応させる場合には、n=2の場合における背景画像抽出部2、第1平均背景抽出部3、第n平均背景抽出部4′、第1差分演算処理部5、第2差分演算処理部6、第n+1差分演算処理部7′に相当するものである。
【0033】背景画像抽出部2の画像メモリ2−1には背景が保持されており、この背景がルックアップテーブル
【0034】ルックアップテーブル
【0035】このときルックアップテーブル
【0036】なお、ルックアップテーブル
【0037】ところでルックアップテーブル
【0038】この外0≦(i−j)≦th31(例えば閾値th31=10)の場合はjにオフセット値α31(例えばα31=1)を加算した値のk=j+α31を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。0≦(j−1)≦th31の場合はjからα31を減算した値のk=j−α31を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。
【0039】th31<(i−j)≦th32(例えば閾値th32=255)の場合はjにオフセット値α32(例えばα32=3)を加算した値のk=j+α32を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。th31<(j−i)≦th32の場合はjからα32を減算した値のk=j−α32を出力し、同時に画像メモリ3−1に保持する。
【0040】このようにして後述する理由により背景と停止物体(これらはいずれもi=j)の外に低速物体の存在する部分にもルックアップテーブル
【0041】ルックアップテーブル
【0042】したがって、背景と低速の部分についてはi=jのためルックアップテーブル
【0043】このときルックアップテーブル
【0044】またルックアップテーブル
【0045】この外0≦(i−j)≦th41(例えば閾値th41=10)の場合はjにオフセット値α41(例えばα41=1)を加算した値のk=j+α41を出力し、同時に画像メモリ4−1に保持する。0≦(j−i)≦th41の場合はjからα41を減算した値のk=j−α41を出力し、同時に画像メモリ4−1に保持する。
【0046】th41<(i−j)≦th42(例えば閾値th42=255)の場合はjにオフセット値α42(例えばα42=10)を加算した値のk=j+α42を出力し、同時にこれを画像メモリ4−1に保持する。th41<(j−i)≦th42の場合はjからα42を減算した値のk=j−α42を出力し、同時にこれを画像メモリ4−1に保持する。
【0047】このようにして後述する理由によりルックアップテーブル
【0048】ルックアップテーブル
【0049】このときルックアップテーブル
【0050】このように、移動物体の速度別に画像を求め、対象物を抽出することで、監視対象を限定することができる。ところで前記の如くルックアップテーブル
【0051】これら画像メモリと入力画像の差が閾値以上の場合、オフセット値を加算又は減算して画像メモリを修正する。対象物体の動きが遅い場合には小さなオフセット値により何度か修正すれば、画像メモリの保持出力する値が入力画像と同じになる。しかし動きが早い対象物の場合少ない修正回数で画像メモリの値を修正しないと入力画像の領域外に移動し、消えることになる。
【0052】このため速度の大きな対象物の検出に対してはオフセット値を大きくして早く修正し、速度の小さな対象物の検出に対してはオフセット値を小さくして修正回数を多くして、時間をかけることにより行う。このようにオフセット値を変えることにより対象物体の速度の違いを判断し、目的とする対象物のみを検出することができる。
【0053】また、図6により平均背景抽出部による各物体の移動速度に応じて、物体を分離した画像を抽出する他の手法を説明する。図6(A)に示す如く、矢印方向に移動している移動物体Aと停止物体Bが存在しているとき、時刻t1 、t2 ・・・tn で移動物体Aと停止物体Bがそれぞれ図示の状態になるが、これらのt1〜tn の各画像を図示省略したメモリに累積する。そしてその累積画像を平均して平均背景を算出する。
【0054】この場合、停止物体Bはn個の画像を累積した値をn等分した値で算出されるが、停止物体Bは各時刻において停止、つまり位置変化がないので、物体Bは変化なく抽出できる。
【0055】一方、移動物体Aは、特にこの移動物体Aの移動速度が速い場合には、各時刻の画像間での移動物体Aの重なりがなく、1時刻の移動物体Aと、(n−1)個の背景との平均をとることになるため、平均の濃度値が小さく閾値より小さな値になり移動物体Aは消失される。かくして平均背景に停止物体Bが残り、移動物体Aは存在しないものとなる。
【0056】なお、移動物体Aだけを含む画像は、平均背景と各時刻の画像との差を算出することにより抽出することが可能となる。また図6(B)に示す如く、停止物体Bに加えて、低速移動物体Dと、中速移動物体Eが存在する場合、これらの移動物体D、Eは次のようにして区分できる。
【0057】低速の移動物体Dは、時刻t2 、t3 、の時刻ではいずれも、時刻t1 の画像とその一部が重複しているが時刻t4 の画像は時刻t1 の画像と重なりがなくなる。
【0058】また中速の移動物体Eは、時刻t2 では時刻t1 の画像とその一部が重複しているが、時刻t3 の画像は時刻t1 の画像と重なりがない。したがって時刻t1 とt4 の画像を累積して2等分すれば低速の移動物体Dと中速の移動物体Eの値は、いずれも閾値以下となり停止物体Bが得られる。また時刻t1 とt2 とt3 の画像を累積して3等分すれば、同様に中速の移動物体Eのみの画像濃度値が閾値以下となる。しかし低速の移動物体Dは、これらの時刻の重なり部分が存在するため、これにもとづき得ることができる。このとき停止物体Bも得られるが、停止物体Bは前記の如く別に得たものとの差で消去すれば低速の移動物体Dを得ることができる。
【0059】また低速の移動物体Dと停止物体Bを原画像より消去することにより中速の移動物体Eを抽出することができる。同様にして、更に高速の移動物体が存在するとき、これを抽出することができる。なお、停止物体の背景も、停止物体と一緒に得ることができる。
【0060】このようにして、図5(A)に示すものとは別の手法により、第1平均背景抽出部から「背景+停止物体+低速移動物体」を出力し、第2平均背景抽出部から「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」を出力することができる。これらにもとづき、第1差分演算処理部において、背景画像抽出部から出力される背景と、第1平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体」との差分を求めることにより、第1差分演算処理部から「停止物体+低速移動物体」が得られる。
【0061】第2差分演算処理部において第1平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体」と第2平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」との差分を求めることにより、第2差分演算処理部から中速移動物体が得られる。
【0062】さらに第3差分演算処理部において、第2平均背景抽出部から出力される「背景+停止物体+低速移動物体+中速移動物体」と入力画像との差分を求めることにより、第3差分演算処理部から高速移動物体が得られる。
【0063】例えば図1において、第1平均背景抽出部3が背景+停止物体(障害物も含む)+低速移動物体のみを抽出し、第2平均背景抽出部4では背景+停止物体(障害物も含む)+低速移動物体+中速移動物体のみを抽出する場合、第1平均背景抽出部3より得られるものは画像cであり、第2平均背景抽出部4から得られるものは画像dとなる。
【0064】この結果第1差分演算処理部5から停止物体+低速移動物体のみの画像eが得られ、第2差分演算処理部6から中速移動物体のみの画像fが得られ、第3差分演算処理部7から高速移動物体のみの画像gが得られる。ただし図1の例では画像入力部1から得られた入力画像に高速移動物体が存在していない場合であり、このとき画像gには何も検出されないものとなる。従って、画像e、f、gに何も存在しない時に画像入力部1の入力を背景画像抽出部2で蓄積保持することにより背景を更新することができる。
【0065】次に第1局所領域内特徴量抽出部8、第2局所領域内特徴量抽出部9、第n+1局所領域内特徴量抽出部10については、いずれも同一構成のため、図6により第1局所領域内特徴量抽出部8について代表的に説明する。
【0066】本発明では、画像入力部1で撮影される画像領域を予め複数の局所領域に設定しておく。例えば図4R>4に示す如く、左車線用の車両追跡用局所領域としてL0〜L4を設定し、右車線用の車両追跡用局所領域としてR0〜R4を設定する。
【0067】そして各車両追跡用局所領域に対して、図7R>7に示す局所領域内特徴抽出処理部8−1、8−2・・・8−mが用意されている。従って図4に示す如く、車両追跡用局所領域L0〜L4、R0〜R4が設定されているときにはm=10即ち10個の局所領域内特徴抽出処理部が必要となる。
【0068】局所領域内特徴量抽出処理部8−1は局所領域決定部11−1と、雑音除去部12−1と、ラベリング処理部13−1と、特徴量算出部14−1を有する。局所領域決定部11−1はその局所領域内特徴量抽出処理部8−1が処理すべき車両追跡用局所領域の1つを定義するものであり、L0についての処理を行うものであればL0の範囲を定義しておき、この局所領域内の入力画像を抽出するものである。雑音除去部12−1は局所領域決定部11−1から伝達された信号より雑音を除去するものであり、例えばロ−パス・フィルタで構成されている。
【0069】ラベリング処理部13−1は局所領域内の入力画像に対し同一の物体について同一のラベルを付与するラベリング処理を行うものである。そして特徴算出部14−1は、ラベル付けされた領域の有無を検出し、ラベル付けされた領域があれば同一ラベルの領域に対してそのラベル領域の重心位置や、面積、横方向・縦方向の投影値等を求め、各ラベル領域毎の特徴量を算出するものである。
【0070】局所領域内特徴量抽出処理部8−2・・・8−mも前記局所領域内特徴量抽出処理部8−1と同様に構成され、それぞれ局所領域決定部11−2・・・11−m、雑音除去部12−2・・・12−m、ラベリング処理部13−2・・・13−m、特徴量算出部14−2・・・14−mを具備している。
【0071】いま、図8(A)に示す如く、時刻tにおいて、ランプの点滅している停止物体P1 と障害物P2 と低速移動物体P3 が存在する場合、図2に示す第1差分演算処理部5の出力は図8(C)に示す如きものとなり、この車両抽出画像(障害物も含まれる)に、図4に示す局所領域を重ねると図8(E)に示す如きものとなる。この場合、局所領域L1、L2、L4の部分に車両があり、特徴量を算出することができる。
【0072】図8(A)に示す速度画像は、t1+数秒後の時点において、同(B)に示す如き速度画像となり、これにより同(D)に示す如き車両抽出画像が得られる。これに局所領域を重ねると図8(F)に示す如きものとなる。この場合は、局所領域L2、L4に車両が存在するので、これに対して特徴量を計算する。
【0073】これらの結果、図2に示す軌跡算出部20の作表部20−2により時系列的にまとめられた表1が作成される。表1における○印は、局所領域L0〜L4、R0〜R4において各時刻に特徴量が求められたもの、即ち何らかの物体(障害物も含む)が存在していたことを示している。
【0074】
【表1】
【0075】図9は、中速移動物体が存在する場合の時刻t及びt+数秒時の速度画像、車両抽出画像、局所領域重ね合わせ状態を示し、図9に対応する時系列的な特徴量検出状態を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】また図10は高速移動物体に関する時刻t及びt+数秒時の速度画像、車両抽出画像、局所領域重ね合わせ状態を示すが、この場合高速移動物体が存在していないので、図9には高速移動物体は図示されていない。従って、これに対応する表3でも○印はない。
【0078】
【表3】
【0079】従って軌跡算出部20において表解析部20−3が表3を解析することにより高速で走行している車両が、この場合は存在していないと判断することができる。
【0080】また表2を解析することによりL0〜L4には○印がないので、左車線には中速で走行中の車両がこの時点では存在しないこと、また右車線には時刻tとt1には○印がR1とR4の2ヶ所に有ることから中速で走行中の車両が2台走行していることがわかる。
【0081】なお時刻t3も○印が2ヶ所有るが、これはR1とR2という隣接局所領域であり、続く時刻t4には○印が1ヶ所しかないことより、時刻t3におけるR1に存在する対象物とR2に存在する対象物とは同一であると判断できる。
【0082】停止物体と低速移動物体についてまとめた前記表1からは、多少複雑であるが以下のことが判断できる。R0〜R4には○印がないので、右車線に停止または低速走行している車両が存在していない。しかしL1〜L4には○印があり停止または低速走行車両が存在していると判断できる。
【0083】この場合、局所領域L4には一定間隔で○が現れたり消えたりしており、隣接するL3には静止物体が存在しているものと推測できる。一方L1とL2における○印の時間的変化(t〜t3まではL1に、t4〜t7はL1とL2と、t8以降はL2に存在)から、何か低速で移動している物体が存在していることを判断できる。
【0084】なお、前記の解析は時刻と場所の関係において、対象物体が存在するか否かについてのみ判断した例について説明したが、これ以外に特徴量として面積や縦横比等を使用するとより多くの情報を抽出することができる。
【0085】表4は、車線変更を行っている車両について示した例であり、いままでの説明から容易に推察できる。ある領域にある時刻まで存在していた対象物体が瞬間的に消える。しかしその時刻と前後して別の領域、特に隣車線領域に対象物体が出現した場合には車線変更を行った車両であると判断できる。
【0086】
【表4】
【0087】表4において、時刻t3までL1に存在した○印が、時刻t4でL1、L2、R2でも○印が表れ、以下時刻t5、t6、t7においてR2に表れるようなとき、車線変更と判断できる。
【0088】なお、物体の移動時間と各局所領域の大きさの実測値がわかれば移動物体の速度も算出することができる。例えばある局所領域の長さをL、その領域に存在していた時間をTとするとL/Tで速度を求めることができる。
【0089】また図11に示す如く、右車線に大型車PL と小型車PS が走行しているとき、これに図4で示す局所領域を重ねると図11(B)に示す状態となる。これにより大型車PL の走行によりR0に○印が連続して存在するので大型車の存在を検出できる。
【0090】
【表5】
【0091】なお、表5、図11では、小型車PS が時刻t4ではR4より外に走行した状態を示し、時刻t5では大型車がR1を走行し終わりR2に入ったことを示している。
【0092】大型車により走行中の車が隠された状態を表6により説明する。
【0093】
【表6】
【0094】表6では、時刻t1において大型車が局所領域R1を走行し、他の車(例えば小型車)が局所領域R3を走行しており、時刻t4において大型車が局所領域R2を走行していることを示す。そして時刻t7において大型車がR3を走行しており、このとき大型車がその前を走行中の他の車を隠した状態を示す。なおこの隠された車は時刻t11において局所領域R4を走行し、大型車の前方に再び出現した状態を示す。このようなことは表解析部20−3により判断することができる。
【0095】軌跡算出部20ではその特徴解析部20−1が物体の形状特徴を解析して、同一移動物体を判別し、これにもとづき同一移動物体の軌跡を作表部20−2に指示してその軌跡を算出作成することができる。
【0096】B.第2実施例本発明の第2実施例として、空港のスポット監視の場合について説明する。この例では低速で移動している大きな移動物体(例えば航空機)と、中速或いは、高速で移動している小さな物体例えば作業用の特殊車両)とを分離し、その属性について判断するものである。
【0097】この例では、図12(A)に示す状態で局所領域C0、L0〜L7、R0〜R7を設定した。局所領域C0は航空機の機体検出を目的としたものであり、それ以外のL0〜L7、R0〜R7は作業用の特殊車両を検出するための局所領域である。
【0098】図12(B)は航空機Jがスポットに停止している状態を示し、同(C)は特殊車両SP1、SP2が行き交って走行している状態を示す。そして図12(B)及び(C)に、同(A)で示す局所領域を被せた状態を示したのが同(D)及び(E)である。
【0099】航空機がスポットに近づき低速し、停止すると局所領域C0に航空機Jの機体が表れる。この状態を前記低速移動物体抽出の手法を用いて検出する。この場合、図13(A)で示すように、局所領域C0内の長辺方向に航空機Jの投影を落としてその長さを求めると、機体の長さを測定することができる。そしてこの機体の長さから機種を判定することができる。航空機がスポットに近づき、停止するまでの投影値の変化を示したのが表7である。
【0100】
【表7】
【0101】表7より明らかなように、時刻t1、t2、t3・・・と変化すると共に投影の長さ即ち投影値が増加し、ある時刻(この例ではt4)を越えるとその増加が停止する。そして投影値の変動が止まり安定した段階で航空機が停止したと判断する。一方投影値と実際の長さの関係を求めて変換式を求めておけば航空機の実際の長さが分かり、長さの違いから航空機の種類が判断できる。
【0102】また図12(C)、(E)に示している特殊車両SP1、SP2に関しては、前記中速・高速移動物体抽出の手法を用いてこれらを検出できる。航空機と同様に投影値を求めることにより局所領域内に存在している対象物の個数を求めることができる。
【0103】例えば図12(E)において、局所領域L5について投影値を求めたものが図13(B)である。これにより投影値がそれぞれ2つ存在するので、局所領域内に2種類の独立した対象物体が存在していることが判断できる。
【0104】図12(E)の様に特殊車両が移動した場合の局所領域における対象物体の検出個数の変化を時系列的に示したのが表8である。
【0105】
【表8】
【0106】この表8により車両の移動とともに局所領域内の対象物体の数が変動しているのがわかる。これにもとづき、時刻t5では、局所領域L6に存在した特殊車両が局所領域L7に移動して、その個数が2になったこと、時刻t7では局所領域L7を走行していた2個のうちの1つが局所領域L5に移動したこと、時刻t9では他の1つも局所領域L5に移動して再びその個数が2になったこと等が解析できる。
【0107】前記説明ではトンネル及び空港の例について説明したが本発明は勿論これのみに限定されるものではない。走行速度も低中高の3種類の例について説明したが勿論これに限定されるものではなく、例えば0〜30km、30〜60km、60〜90km、90〜120km、120〜150km、150km以上というように細かく区分することも勿論できる。
【0108】
【発明の効果】本発明により以下の如くすぐれた効果が得られる。本発明では複数の区分の速度画像を生成することができるので、種々の速度で移動している対象物体が数多く存在する場合に、ある速度範囲で対象物体を分離することが可能となり、解析処理を容易に行うことができる。
【0109】また対象物体の特徴量を求め、特徴量の時系列変化を求め、特徴量を解析することにより容易に対象物体の軌跡を求めることができる。さらに局所領域における特徴量を算出し、局所領域毎の特徴量の有無から時系列変化を求めることにより、これまた対象物体の軌跡を容易に求めることができる。
【0110】しかも特徴量の形状情報を用いることにより、より詳細な対象物体の軌跡を容易に抽出することもできる。時刻毎の位置の変化及び面積の変化が極めて少ない停止物体を容易に抽出することができる。
【0111】原画像からでは同定が困難な、急激な速度変化や方向変化を生じた対象物体について特徴量の有無及び形状特徴の時系列変化または速度画像間変化から軌跡を算出し移動物体を容易に同定することができる。
【0112】面積の大小のみでは判断できない大型の対象物体の存在を容易に抽出することができる。しかも小型物体が大型の対象物体に隠された状態でも、同一物体の軌跡を抽出することができる。
【0113】速度画像に分離したのち、停止+低速画像に対し、局所領域における物体の有無や、ランプの点滅のような同一形状特徴の周期性を解析することにより点滅している物体を容易に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】本発明一実施例構成図である。
【図3】本発明に使用される原画像説明図である。
【図4】本発明における局所領域説明図の一例である。
【図5】本発明における速度画像抽出説明図である。
【図6】本発明における速度画像抽出の他の例である。
【図7】本発明における局所領域内特徴量抽出部の説明図である。
【図8】停止物体と低速移動物体の存在する場合の説明図である。
【図9】中速移動物体説明図である。
【図10】高速移動物体説明図である。
【図11】大型移動物体説明図である。
【図12】本発明を空港のスポット監視用に使用した場合の説明図である。
【図13】本発明における投影値算出説明図である。
【符号の説明】
1 画像入力部
2 背景画像抽出部
3 第1平均背景抽出部
4 第2平均背景抽出部
4′ 第n平均背景抽出部
5 第1差分演算処理部
6 第2差分演算処理部
7 第3差分演算処理部
7′ 第n+1差分演算処理部
8 第1局所領域内特徴抽出部
9 第2局所領域内特徴抽出部
10 第n+1局所領域内特徴抽出部
20 軌跡算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 背景及び物体を含む画像を入力する画像入力手段と、背景を保持、出力する背景画像抽出手段と、第1の速度までの移動物体と背景が含まれる画像を抽出する第1平均背景抽出手段と、第2の速度までの移動物体と背景が含まれる画像を抽出する第2平均背景抽出手段と、背景画像抽出手段の出力と、前記第1平均背景抽出手段の出力との差分を求めて速度画像を生成する第1差分演算処理手段と、前記2つの平均背景抽出手段の出力の差分を求めて速度画像を生成する第2差分演算処理手段と、前記画像入力手段の出力と、前記第2の平均背景抽出手段の出力との差分を求めて速度画像を生成する第3差分演算処理手段を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 前記各差分演算処理手段の出力を、複数の局所領域を設定する局所領域決定手段と、前記局所領域決定手段で決定された局所領域内の入力画像にラベルを付与して物体を分離するラベル処理手段と、前記ラベル処理手段において処理された同一ラベル付けされた領域に対して特徴量を算出する特徴量算出手段を有する局所領域内特徴量抽出処理手段により処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】 前記第1差分演算処理手段の出力を、複数の局所領域を設定する局所領域決定手段と、前記局所領域決定手段で決定された局所領域内の入力画像にラベルを付与して物体を分離するラベル処理手段と、前記ラベル処理手段において処理された同一ラベル付けされた領域に対して投影をとり、物体の位置を算出し、物体の縦横の長さ、面積等の特徴量を算出する特徴量算出手段を有する局所領域内特徴量抽出処理手段により処理し、時刻毎に物体の位置変化と特徴量の変化を求め、その変化により停止物体を抽出する軌跡算出手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】 前記各差分演算処理手段から出力される速度画像毎に、前記局所領域に対応してそれぞれ局所領域内特徴量抽出処理手段を具備する局所領域内特徴抽出手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】 前記各局所領域内特徴抽出手段の出力にもとづき各局所領域内の物体の存在を時系列的に検知して作表する作表手段を有する軌跡算出手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】 軌跡算出手段に特徴を抽出する特徴解析手段を設け、前記特徴算出手段より算出された特徴のうち物体の形状特徴により同一移動物体の軌跡を作表するようにしたことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】 複数の局所的な処理領域における物体の通過の有無と、物体の形状特徴を検知する特徴解析部と、通過時の時刻を示す作表手段より同一移動物体の軌跡を算出し、物体の急激な速度変化や方向変化を判別し移動物体を同定することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】 複数の局所領域を物体のサイズに応じて設定し、前記各局所領域内の物体の存在を時系列的に検知して作表する作表手段を有する軌跡算出手段に同一移動体を判別する特徴解析部と表を解析する表解析部を設け、大きい物体が小さい物体を隠す場合でもこれらの局所領域の軌跡を判別して同一移動物体の軌跡を認識することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項9】 複数の局所領域を設定し、各局所領域における物体の通過の有無の周期性を調べる表解析部と、同一形状特徴の周期性を調べる特徴解析手段を設け、現れたり消えたりしている物体を同定することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項1】 背景及び物体を含む画像を入力する画像入力手段と、背景を保持、出力する背景画像抽出手段と、第1の速度までの移動物体と背景が含まれる画像を抽出する第1平均背景抽出手段と、第2の速度までの移動物体と背景が含まれる画像を抽出する第2平均背景抽出手段と、背景画像抽出手段の出力と、前記第1平均背景抽出手段の出力との差分を求めて速度画像を生成する第1差分演算処理手段と、前記2つの平均背景抽出手段の出力の差分を求めて速度画像を生成する第2差分演算処理手段と、前記画像入力手段の出力と、前記第2の平均背景抽出手段の出力との差分を求めて速度画像を生成する第3差分演算処理手段を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 前記各差分演算処理手段の出力を、複数の局所領域を設定する局所領域決定手段と、前記局所領域決定手段で決定された局所領域内の入力画像にラベルを付与して物体を分離するラベル処理手段と、前記ラベル処理手段において処理された同一ラベル付けされた領域に対して特徴量を算出する特徴量算出手段を有する局所領域内特徴量抽出処理手段により処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】 前記第1差分演算処理手段の出力を、複数の局所領域を設定する局所領域決定手段と、前記局所領域決定手段で決定された局所領域内の入力画像にラベルを付与して物体を分離するラベル処理手段と、前記ラベル処理手段において処理された同一ラベル付けされた領域に対して投影をとり、物体の位置を算出し、物体の縦横の長さ、面積等の特徴量を算出する特徴量算出手段を有する局所領域内特徴量抽出処理手段により処理し、時刻毎に物体の位置変化と特徴量の変化を求め、その変化により停止物体を抽出する軌跡算出手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】 前記各差分演算処理手段から出力される速度画像毎に、前記局所領域に対応してそれぞれ局所領域内特徴量抽出処理手段を具備する局所領域内特徴抽出手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】 前記各局所領域内特徴抽出手段の出力にもとづき各局所領域内の物体の存在を時系列的に検知して作表する作表手段を有する軌跡算出手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】 軌跡算出手段に特徴を抽出する特徴解析手段を設け、前記特徴算出手段より算出された特徴のうち物体の形状特徴により同一移動物体の軌跡を作表するようにしたことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】 複数の局所的な処理領域における物体の通過の有無と、物体の形状特徴を検知する特徴解析部と、通過時の時刻を示す作表手段より同一移動物体の軌跡を算出し、物体の急激な速度変化や方向変化を判別し移動物体を同定することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】 複数の局所領域を物体のサイズに応じて設定し、前記各局所領域内の物体の存在を時系列的に検知して作表する作表手段を有する軌跡算出手段に同一移動体を判別する特徴解析部と表を解析する表解析部を設け、大きい物体が小さい物体を隠す場合でもこれらの局所領域の軌跡を判別して同一移動物体の軌跡を認識することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項9】 複数の局所領域を設定し、各局所領域における物体の通過の有無の周期性を調べる表解析部と、同一形状特徴の周期性を調べる特徴解析手段を設け、現れたり消えたりしている物体を同定することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【図3】
【図4】
【図1】
【図2】
【図7】
【図6】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図1】
【図2】
【図7】
【図6】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【特許番号】特許第3288474号(P3288474)
【登録日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【発行日】平成14年6月4日(2002.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−122563
【出願日】平成5年5月25日(1993.5.25)
【公開番号】特開平6−337938
【公開日】平成6年12月6日(1994.12.6)
【審査請求日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【参考文献】
【文献】特開 平2−294184(JP,A)
【登録日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【発行日】平成14年6月4日(2002.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成5年5月25日(1993.5.25)
【公開番号】特開平6−337938
【公開日】平成6年12月6日(1994.12.6)
【審査請求日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【参考文献】
【文献】特開 平2−294184(JP,A)
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