説明

画像切り抜き装置

【目的】広範囲の原画像に対して良好な画像切り抜き処理が行なえるようにする。
【構成】CRT上の原画像上で、切り抜き処理を行う領域を指定する(S11)。次いで、前記切り抜き処理領域での切り抜き条件を設定するための領域(例えば主要画像の背景部分)を、条件設定領域として指定する(S13)。そして、前記条件設定領域内の画像データに基づいて切り抜き処理の条件を設定し(S14)、該設定した切り抜き条件に従って前記指定された切り抜き処理領域で主要画像の輪郭を抽出させる(S15)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は画像切り抜き装置に関し、詳しくは、原画像を光電変換して得た画像データから特定画像を画像データ上で切り抜く装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば商品カタログの印刷のための製版工程において、印刷原画として使用される商品写真は、通常、商品の周囲に不必要な背景が撮影されるため、かかる印刷原画の背景部分を消去(マスク)した複製画像を得る必要が生じる。かかる背景部分を消去した複製画像を得る方法としては、従来、ピールオフフィルムを色分解版に重ねておいて、商品部分などの印刷に必要な部分の輪郭に合わせて熟練者がカッターによって遮光フィルム(赤色フィルム)を切り抜いてマスク版を作成する方法がある。
【0003】しかしながら、このような手作業によるフィルム切り抜き作業では、マスク版作成に多大な時間を要し、また、作業者によってマスク版の仕上がりに差が生じるという問題がある。また、製版用カラースキャナで原画像を読み取るときに、予め設定された背景色のみを抽出又は消去することで所望のマスク画像を得る方法があるが、かかる方法では、商品写真の撮影時に背景設定に配慮を要することになって汎用性に欠けると共に、背景設定によっては正確なマスク作成が行なえなくなる惧れがある。
【0004】更に、前述の手作業による切り抜き作業を、画像データ上で電気的に行なわせることも行なわれている。これは、商品写真等の原画像を光電走査によって読取り、該電気的に読み取られた原画像をディスプレイに表示させておいて、切り抜きの輪郭線をオペレータがマウスやトラックボールなどのポインティングデバイスで細かく指定し、該指定された輪郭に従って所望画像を画像データ上で切り抜いて必要部分のみの複製画像を得るものである。
【0005】しかしながら、上記の方法でも、カッターがポインティングデバイスに変わっただけであり、基本的には人が切り抜きを行なうことになるため、かかる切り抜き作業の簡略化,自動化が望まれることになる。そこで、切り抜きたい画像領域と背景領域との濃度差,色差を利用して切り抜き領域の輪郭線を自動的に求め、この輪郭線に基づいて所望画像の切り抜きを行なわせる装置が提案されている(特公昭63−5745号公報等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように濃度差や色差に基づいて切り抜き領域の輪郭線を求めるに当たって、切り抜きを行なわせる原画像は千差万別であり、切り抜きたい領域と背景領域との間の差が近い場合もあるため、安定的に所望画像を精度良く切り抜くことは困難であった。
【0007】即ち、従来では一定の輪郭抽出条件(切り抜き条件)に従って画像データから切り抜き画像の輪郭線を求める構成であり、例えば原画像の背景設定の変化などに対応することが限られ、ある特定の原画像では高精度な切り抜きができたとしても、種々の原画像で安定的な自動切り抜きが行なえるものではなかった。本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、輪郭線の抽出条件を画像個々の特性に応じて適性に設定することが簡便に行える画像切り抜き装置を提供し、広範囲な原画像に対して安定的に画像の自動切り抜き処理が行なえるようにすることを目的とする。
【0008】また、画像切り抜き処理において、大まかな判断・操作のみを人手に任せ、後は自動的に切り抜き画像の輪郭線を精度良く抽出できるようにして、安定的な画像の自動切り抜き処理が行えるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのため請求項1の発明にかかる画像切り抜き装置は、原画像を光電走査して得られた画像データから特定画像を切り抜く画像切り抜き装置であって、図1に示すように構成される。図1において、切り抜き領域指定手段は、画像の切り抜きを行う領域を指定する。
【0010】一方、条件設定領域指定手段は、切り抜き条件を設定するための領域を指定し、切り抜き条件設定手段は、条件設定領域指定手段で指定された領域の画像データに基づいて切り抜き条件を設定する。そして、画像切り抜き手段は、切り抜き条件設定手段で設定された切り抜き条件に従って前記切り抜き領域指定手段で指定された領域において画像の切り抜きを行う。
【0011】請求項2の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記切り抜き条件設定手段が、前記条件設定領域指定手段で指定された複数の領域の画像データに基づいて切り抜き条件を設定する構成とした。更に、請求項3の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記切り抜き条件設定手段が、前記条件設定領域指定手段で指定された順番に従って領域毎に重み付けして切り抜き条件を設定する構成とした。
【0012】請求項4の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記画像切り抜き手段が、前記切り抜き条件設定手段で設定された切り抜き条件を、前記切り抜き領域指定手段で指定された複数の領域に共通的に適用する構成とした。請求項5の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記画像切り抜き手段が、前記切り抜き領域指定手段で指定される複数の領域それぞれに対して、前記条件設定領域指定手段で指定された複数の領域それぞれに基づいて前記切り抜き条件設定手段で設定された複数の切り抜き条件を選択的に適用する構成とした。
【0013】請求項6の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記切り抜き条件設定手段が、前記切り抜き領域指定手段で指定された領域と前記条件設定領域指定手段で指定された領域とが相互に重なる領域を有するときに、重複領域の画像データに対して重み付けして切り抜き条件を設定する構成とした。一方、請求項7の発明にかかる画像切り抜き装置は、図2に示すように構成される。
【0014】図2において、表示手段は原画像を光電走査して得られた画像データに基づいて前記原画像を表示し、輪郭座標指定手段は、表示手段に表示された画像上での切り抜き輪郭の主要座標位置を指定する。そして、帯状領域設定手段は、輪郭座標指定手段で指定された座標位置を内包する切り抜き輪郭に沿った帯状の領域を設定し、かつ、該設定した帯状領域を前記表示手段に切り抜き処理の対象画像に重ねて表示させる。
【0015】輪郭抽出手段は、帯状領域設定手段で設定された帯状領域内の画像データに基づいて画像の輪郭線を抽出し、輪郭線表示手段は、輪郭抽出手段で抽出された輪郭線を前記表示手段に切り抜き処理の対象画像に重ねて前記帯状領域内に表示させる。そして、画像切り抜き手段は、輪郭抽出手段で抽出された輪郭線に基づいて画像の切り抜きを行う。
【0016】請求項8の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記輪郭座標指定手段によって座標位置が新たに指定されて帯状領域の終点位置が変わる毎に前記輪郭抽出手段が前記帯状領域内で画像の輪郭を新たに抽出し直す構成とした。請求項9の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記輪郭抽出手段が、帯状領域の帯幅方向の画像データ列において輪郭線上にある輪郭点を抽出する構成であり、かつ、前記画像データ列毎の輪郭点の抽出を、前記輪郭座標指定手段による座標位置の指定順に従う帯状領域の始点位置から終点位置に向けて順次行う構成とした。
【0017】請求項10の発明にかかる画像切り抜き装置では、前記画像データがカラー画像データであって、前記輪郭抽出手段が各色プレーン間又は各色プレーン毎の演算によって輪郭線を抽出する構成とした。
【0018】
【作用】請求項1の発明にかかる画像切り抜き装置によると、画像の切り抜きを行う領域と、切り抜き条件を設定するための領域とが個別に設定される。ここで、切り抜きを行う領域を特定することで、切り抜き対象以外の画像を極力排除して切り抜き対象画像の抽出を容易にできると共に、例えば切り抜き対象画像の背景部分を条件設定用の領域として指定することができ、以て、画像個々の特性に見合った条件での切り抜きが可能となる。
【0019】請求項2の発明にかかる装置では、条件設定用として複数設定された領域の画像データに基づいて切り抜き条件を設定させることで、前記複数領域から総合的に判断される適性な切り抜き条件の設定が可能となる。請求項3の発明にかかる装置では、上記のように複数の指定領域の画像データから切り抜き条件を設定するに当たって、領域指定の順番に従って重み付けすることで、切り抜き条件の設定に寄与する度合いを領域毎にランク付けできるようにして、より適性な切り抜き条件の設定を可能にする。
【0020】請求項4の発明にかかる装置では、1つの切り抜き条件を複数領域での画像切り抜きに用いる構成として、前記複数領域で安定的な画像切り抜きが行えるようにした。請求項5の発明にかかる装置では、画像の切り抜きを行う領域として複数指定された領域それぞれに対して、複数の指定領域に基づいて設定された複数の切り抜き条件を選択的に適用できるようにして、複数の切り抜き領域においてそれぞれに適性な条件の下に画像切り抜きが行えるようにした。
【0021】請求項6の発明にかかる装置では、切り抜きを行う領域として指定された領域と、切り抜き条件を設定するために指定された領域とが相互に重なる領域がある場合には、切り抜き条件設定用として指定された領域の中でも、特に、切り抜き領域と重なる部分の画像データが、切り抜き条件の設定に適当な画像データであると見做し、前記重なり領域の画像データに重み付けして切り抜き条件の設定を行わせる。
【0022】一方、請求項7の発明にかかる画像切り抜き装置では、切り抜き処理の対象画像を表示し、該表示を見ながら切り抜きたい画像の輪郭の主要座標位置を指定させる。前記座標位置が指定されると、前記座標位置を内包する切り抜き領域に沿った帯状の領域を設定し、かかる帯状領域を表示させて、帯状領域の設定状況を確認できるようにする。ここで、前記帯状領域内の画像データに基づいて画像の輪郭線が抽出され、該抽出された輪郭線を前記帯状領域の表示と共に表示させ、自動抽出された輪郭線を目視確認できるようにする。そして、最終的には、前記抽出された輪郭線に従って画像の切り抜きが行われる。
【0023】即ち、切り抜く画像の輪郭部分を大まかに指定すると、かかる指定と共に、指定された領域内で自動抽出された輪郭線が画像に重ねて表示され、輪郭線の座標指定と自動抽出結果を目視確認しながら、座標指定の作業を行うことができる。請求項8の発明にかかる装置では、前記座標位置を新たに指定して帯状領域の終点位置が変わる毎に輪郭抽出をやり直し、座標位置の指定によって、自動抽出される輪郭線を所期のものに誘導できるようにする。
【0024】請求項9の発明にかかる装置では、帯幅方向の略中央付近に輪郭線が位置するように座標位置が指定されるものと予測されるので、帯状領域の帯幅方向の画像データ列から輪郭点を抽出する構成として輪郭線の抽出を容易にする。更に、かかる画像データ列毎の輪郭点の抽出を、座標位置の指定順に従う帯状領域の始点位置から終点位置に向けて順次行わせ、座標位置の指定順に沿って順次輪郭線が抽出・表示されるようにする。
【0025】請求項10の発明にかかる装置では、画像データがカラー画像データであるときに、各色プレーン間又は各色プレーン毎の演算によって、背景色と切り抜き対象画像の色との特性の違いによって輪郭線が抽出されるようにした。
【0026】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。図3は本実施例のハードウェア構成を示すブロック図であり、画像入力手段1は、商品カラー写真などの原画像を光電走査して色分解画像データを得るものであり、この画像入力手段1によって得られた色分解画像データは、演算手段2を介してRAMなどの内部記憶手段3に一旦記憶される。
【0027】また、前記色分解画像データは、画像表示メモリ4にも格納され、該画像表示メモリ4を用いてCRT5(表示手段)上に原画像が表示される。切り抜き条件設定手段及び画像切り抜き手段としての前記演算手段2は、前記色分解画像データに基づいて切り抜きたい画像(主要画像)の輪郭を抽出し、背景などの不要部分を消去した主要画像の複製画像データを設定し、かかる複製画像データに基づいてマスク作成手段8で印刷用のマスクが作成される。
【0028】前記演算手段2には、マン・マシン・インターフェイスである入力手段6が接続されており、該入力手段6を介してオペレータが各種の画像切り抜き情報や指示を与えることができるようになっている。前記入力手段6は、本実施例において、画像の切り抜きを行う領域を指定するための切り抜き領域指定手段と、前記指定される領域内における画像の切り抜き条件(輪郭抽出処理条件)を設定するための領域を指定する条件設定領域指定手段とを兼ねるものである。
【0029】即ち、前記入力手段6は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスを含んでなり、オペレータが前記CRT5に表示される原画像を見ながら、切り抜き処理を実行させたい領域(切り抜きの輪郭線を含む領域:マスク領域)を前記ポインティングデバイスによる座標位置の入力によって指定し、また、かかる領域内での輪郭線の自動抽出における条件設定に適当な領域(条件設定領域)をやはり前記ポインティングデバイスによる座標位置の入力によって指定する(図4参照)。
【0030】このように、前記切り抜き領域指定手段としての入力手段6による指定によって切り抜きたい画像の輪郭部分を含む領域を大まかに指示させることで、自動輪郭抽出の対象となる画像データを極力少なくし、輪郭抽出が短時間に精度良く行えるようにする。更に、画像データの演算処理に基づく自動輪郭抽出においては、どの程度の濃度差,色差を切り抜き対象画像の輪郭として見做すべきであるかは、画像個々での背景の設定等によって異なり、一定の切り抜き条件の下では安定的な輪郭線の抽出は困難であり、また、オペレータが前記濃度差,色差などの輪郭抽出条件(切り抜き条件)を数値として的確に指示することは困難である。そこで、本実施例では、オペレータが切り抜きたい画像の背景部分を条件設定領域として指定し、かかる指定に応じて切り抜き条件を設定させる構成とすることで、画像個々の背景部分の設定に応じた条件で安定的に画像の切り抜きを行わせることができるようにしてある。
【0031】かかる構成によって、演算手段2は色分解画像データから主要画像の輪郭を抽出し、該演算手段2による画像切り抜き結果は、ハードディスクや光ディスクからなる外部記憶手段7に記憶・保存される一方、マスク作成手段8に与えられる。マスク作成手段8は、前記切り抜き処理された画像データに従って、切り抜き画像部分以外の不要部分を塗り潰したり、マスクデータを拡大・縮小演算し、集版演算に使用するマスクデータを作成する (かかるマスクデータを用いてマスクフィルムを作成してもよい) 。
【0032】図5は、上記構成によって行われる画像切り抜き処理の手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、まず、入力手段6を介してオペレータが自動輪郭抽出における条件設定の基礎となる画像データをサプリングする領域、即ち、条件設定領域を指定する(S1:条件設定領域指定手段)。
【0033】前記条件設定領域の指定においては、オペレータがCRT5に表示される原画像を見ながらポインティングデバイスによって主要画像の背景部分のみを含む領域を指定する(図4参照)。具体的には、図4に示すように、ポインティングデバイスによる頂点部分の座標指定によって四角な領域が指定できるようにし、かつ、かかる指定結果を、CRT5に表示されている原画像に重ねて線画表示させると良い。
【0034】尚、図4中に示すように、条件設定領域として指定された領域内に、2重に領域指定された場合には、2つの領域区分で囲まれる環状領域が条件設定領域として設定されるようにして、背景部分に条件設定に相応しくない画像が含まれる場合にその部分を容易に排除できるようにすると良い。上記の条件設定領域の指定は1つであっても良いし、また、複数領域を個別に或いは一部重複させて指定しても良い。背景部分が一定ではなく変化を示す場合には、変化する背景部分の代表的な複数領域を条件設定領域として指定することで、後述する条件設定処理において最適な切り抜き条件の設定が可能となる。
【0035】また、条件設定領域として複数領域を指定する場合には、条件設定に大きく寄与させたい領域と、参考程度に止めたい領域とに分かれる可能性があるので、例えば指定の順番に従って条件設定領域に重み付けし、指定順が早い領域に含まれる画像データが条件設定に大きく影響するようにすると良く、かかる指定順による重み付けを行うか否かを、オペレータが選択できるようにすると良い。
【0036】また、前記条件設定領域及び後述する切り抜き処理領域(マスク領域)の指定は、上記のように四角な領域の頂点部分の座標位置をポインティングデバイスで指定するものに限定されず、ディジタイザやタブレット等を用いて任意の形状で指定できるようにしても良い。条件設定領域の指定が終了すると、演算手段2は、前記条件設定領域として指定された領域内の画像データをサンプリングし、該サンプリングされた画像データ、換言すれば、主要画像の背景部分の画像データに基づいて主要画像の切り抜き条件(マスク作成条件)の設定を行う(S2:切り抜き条件設定手段)。
【0037】前記切り抜き条件の設定は、例えば、条件設定領域内の色分解画像データ(例えばR,G,Bの3原色信号r,g,b)の平均値(r+g+b)/3を求めるようにし、かかる平均値を閾値として、後述する切り抜き処理領域の画素を背景部分の画素と主要画像の画素とに弁別させるようにする。これにより、背景部分の画素と主要画像の画素との弁別(輪郭抽出)が、画像個々の背景部分の特性に応じて高精度に行える。即ち、一定の条件による輪郭抽出では、背景部分の変化などに対応できずに安定的な切り抜きは困難であるが、上記のように条件設定領域の指定によって背景部分の画像が特定されれば、切り抜き処理を行う領域の中で前記特定された背景部分を判別することが容易となり、以て、広範囲な画像に対して精度の良い切り抜きが可能になる。
【0038】尚、指定された条件設定領域に基づいて切り抜き条件(画像信号判別の閾値等)が決定された場合には、かかる条件をCRT5上に表示し、オペレータの所望の切り抜き条件が設定されたか否かを判断できるようにしても良い。また、切り抜き条件の設定は、上記の画像信号の平均値に限定されるものでないことは明らかであり、例えば、条件設定領域に含まれる色画像データを各色プレーン毎に平均し、これに基づいて各色毎に閾値を設定しても良いし、また、平均値の代わりに条件設定領域内で頻度の最も高い画像データに基づいて閾値を設定させても良い。更に、色毎のヒストグラム情報等から、背景部分(条件設定領域)の主要色を特定し、輪郭抽出に当たって前記主要色の判別のみを行わせることもできる。
【0039】また、条件設定領域内の色分解データの分散度σを数1に従って求め、この分散度σを閾値とする一方、切り抜き処理領域内を小領域でスキャンして、スキャン位置で前記小領域に含まれる画像データの分散度σを求め、閾値以上の分散度σをもつ領域の中心を輪郭として抽出する構成としても良い(図16参照)。
【0040】
【数1】


【0041】上記の条件設定領域の指定及び該指定された領域に基づく切り抜き条件の設定が終了すると(S3)、次に実際に画像の切り抜きを行う領域(マスク領域)の指定を、前記入力手段6によって行う(S4:切り抜き領域指定手段)。前記切り抜き処理領域の指定においては、条件設定領域の指定と同様に、オペレータがCRT5上の原画像を見ながら、主要画像と背景部分との境界部分を含むような領域を、ポインティングデバイスによる座標指定によって指定し、設定された切り抜き処理領域は、CRT5上の原画像に重ねて表示される。
【0042】処理領域の指定においては、なるべく領域を狭くすることが自動輪郭抽出処理の負担を少なくすることになるから、図4に示すように境界部分を複数領域に分けて指定することが好ましく、また、輪郭部分を洩れなく処理領域に含めるために、指定される処理領域間における重なりを許容し、最終的には指定された複数の処理領域を包含する領域を処理領域とすると良い。
【0043】また、指定済みの条件設定領域と、前記処理領域の指定とが一部重なったり、或いは、条件設定領域を含む形での処理領域の指定が許容されるようにすると良い。更に、切り抜きを行う領域の指定においても、図4に示すような四角な領域に限定されず、任意の形状による領域指定を行えるようにしても良い。
【0044】また、切り抜きたい主要画像が小さい場合には、主要画像を包含するように切り抜き処理を行う領域を指定しても良い。切り抜き処理の領域指定が終了すると、前記設定された切り抜き条件に従って前記切り抜き処理領域内で主要画像の輪郭線を自動抽出し(S5:画像切り抜き手段)、かかる自動抽出処理が正規に行われた場合には(S6)、該抽出結果が確定し、以て、マスクの作成がなされる(S5)。
【0045】具体的には、条件設定領域内の画像データから画像データの閾値として切り抜き条件を設定した場合には、指定された処理領域内の画像データを前記閾値と比較し、主要画像に対応する画素と背景部分に対応する画素とに区分することで、主要画像の輪郭を抽出する。即ち、上記実施例では、指定された複数或いは1つの条件設定領域内の画像データに基づいて複数の処理領域に共通の1つの切り抜き条件を設定し、複数の処理領域において一定の条件の下に切り抜き処理を実行させるようにしてある。
【0046】従って、複数の条件設定領域に基づいて切り抜き条件が設定された場合には、変化する背景部分を総合的に判断した適性な切り抜き条件の設定が可能であり、更に、複数の処理領域で共通的に1つの切り抜き条件を用いることで、各処理領域で統一的な切り抜き処理が行える。ここで、前記抽出された輪郭線を、CRT5上に原画像に重ねて表示し、オペレータに自動抽出結果が正しいか否かを判断させるようにすると良い。そして、自動抽出された輪郭に不備がある場合には、ポインティングデバイスによる手動の輪郭修正を加えたり、切り抜き条件の手動修正を加えることができるようにしたり、或いは、条件設定領域の指定をやり直すことができるようにすると良い。
【0047】上記図5のフローチャートに示す手順では、先に条件設定領域を指定し、該指定された条件設定領域(複数或いは単数)に含まれる画像データに基づいて決定される切り抜き条件に従って、その後に指定される切り抜き処理領域(複数或いは単数)で主要画像の輪郭抽出を行わせる構成としたが、図6のフローチャートに示すように、先に切り抜き処理領域を指定し、これらの領域での切り抜き処理の条件を設定するための条件設定領域を後から指定させる構成としても良い。
【0048】図6のフローチャートにおいて、まず、主要画像の輪郭部分を含む切り抜き処理領域(複数或いは単数)の指定(図4参照)を、前記図5のフローチャートの場合と同様にしてオペレータがポインティングデバイスを用いて行う(S11:切り抜き領域指定手段)。主要画像の輪郭を全て網羅するようにして処理領域の指定が終了すると(S12)、続いて該指定された処理領域での切り抜き処理条件を設定するための条件設定領域の複数或いは単数指定を(図4参照)、前記図5のフローチャートの場合と同様にしてオペレータがポインティングデバイスを用いて行う(S13:条件設定領域指定手段)。
【0049】ここでも、処理領域に含まれるような条件設定領域の設定(処理領域内での背景部分の指定)、或いは、処理領域と一部重複するような条件設定領域の設定が許容されるようにすると良い。条件設定領域の指定(複数領域或いは単数領域)が終了すると、かかる指定された条件設定領域の画像データ、即ち、主要画像の背景部分に対応する画像データに基づいて主要画像を切り抜くとき(輪郭抽出)に用いる切り抜き条件を設定する(S14:切り抜き条件設定手段)。
【0050】複数の条件設定領域が設定された場合には、前記同様に、指定順に従って領域に重み付けして切り抜き条件を設定させるようにしても良い。また、上記図6のフローチャートに示される手順では、条件設定領域の指定時には既に処理領域が指定されているから、切り抜き条件の設定時においては条件設定領域と処理領域との相関が特定されていることになる。そこで、処理領域と条件設定領域とが重なる場合には、該重複領域の画像データは、主要画像の輪郭部分に近い背景部分であるから、被重複領域の画像データに対して前記重複領域の画像データに重み付けして、切り抜き条件の設定においては、前記重複領域の画像データが大きく影響するようにすると良い。
【0051】切り抜き条件の設定が終了すると、実際にかかる条件に従って、指定された各処理領域内で主要画像の輪郭線を抽出させ、マスク作成を行わせる(S15:画像切り抜き手段)。尚、切り抜き処理領域を複数指定した後、或いは、切り抜き処理領域を指定する毎に、各処理領域毎に切り抜き条件を設定するための領域を特定して指示し、又は、条件設定領域を複数指定した後、或いは、条件設定領域を指定する毎に、各条件設定領域に基づく切り抜き条件で切り抜きを行わせる領域を特定して指示し、例えば処理領域Aについては条件設定領域aの画像データに基づいて切り抜き条件を設定させ、処理領域Bについては条件設定領域bの画像データに基づいて切り抜き条件を設定させるようにして、処理領域毎に異なる条件設定領域を対応させるようにしても良い。
【0052】かかる構成によれば、主要画像の背景部分が部位によって大きく変化する場合であっても、背景の変化に応じた複数の切り抜き条件の下で、対応する輪郭部分を精度良く抽出させることが可能となる。更に、例えば処理領域Aについては条件設定領域a,cの画像データに基づいて切り抜き条件を設定させ、処理領域Bについては条件設定領域b,cの画像データに基づいて切り抜き条件を設定させなど、各処理領域毎に対応させる条件設定領域の組み合わせは異なるものの、一部重複する条件設定領域が存在する構成としても良い。
【0053】また、CRT5上に処理領域,条件設定領域を表示するときに、各領域に識別符合を付して、処理領域と条件設定領域との対応関係の確認を容易にし、また、対応関係の指定を容易にすることが好ましい。ところで、上記のようにして、オペレータが切り抜きの輪郭部分を含む領域を大まかに指定するときには、自動輪郭抽出処理の負担を軽減し、また、精度を向上させるために、主要画像の輪郭に沿ったなるべく狭い領域を簡易に指定できるようにすることが望まれる。更に、輪郭抽出がオペレータの領域指定の意図を反映して行われ、かつ、輪郭抽出の結果が領域指定に追従して容易に確認できるようにすることが望まれる。
【0054】そこで、以下に前記輪郭部分の領域指定及び輪郭抽出のより好ましい実施例を説明する。尚、以下に説明する第2実施例は、既述の第1実施例における図3R>3に示されるハードウェア構成を参照しつつ説明する。図7のフローチャートは、第2実施例におけるマスク作成の基本手順を示すものであり、まず、オペレータがCRT5(表示手段)上の原画像を見ながら入力手段6(ポインティングデバイス)を介して、主要画像の輪郭線上の1点を輪郭抽出を行わせる始点の座標位置として入力する(S21:輪郭座標指定手段)。続いて、同様に入力手段6によって前記始点とは異なる主要画像の輪郭線上の1点を、輪郭抽出を行わせる終点位置として座標入力する(S22:輪郭座標指定手段)。
【0055】かかる始点・終点位置の座標入力によって、図8に示すように、始点を中心とする所定半径範囲と、終点を中心とする所定半径範囲とを直線的に結ぶような切り抜き輪郭に沿った帯状領域が、輪郭抽出領域(切り抜き領域)として設定され、かかる帯状領域がCRT5上で原画像に重ねて線画表示される。そして、演算手段2によって前記抽出領域内で輪郭抽出が行われ、抽出された輪郭がやはりCRT5上で画像に重ねて表示される(S23:帯状領域設定手段,輪郭線抽出手段,輪郭線表示手段)。
【0056】即ち、前記第1実施例では、輪郭線を囲むように領域を指定したのに対し、第2実施例では、輪郭線上の主要点を指定することで、輪郭線を含む輪郭抽出領域が設定される構成であり、オペレータが主要画像の輪郭線をなぞるようにして、輪郭線上の主要点をマウス等のポインティングデバイスで指定することで、輪郭を含む狭い領域を簡便に指定できるものであり、然も、本実施例における帯状領域では、主要画像の輪郭線が帯状領域の幅方向の中央付近に位置する可能性が高いから、帯状領域からの輪郭抽出が容易に行える。
【0057】上記のような主要画像の輪郭上の主要点の座標位置の入力に伴う帯状領域(輪郭抽出領域)の設定により一連の輪郭点抽出が終了するまでは(S24)、入力手段2により座標位置が入力された点を順次終点位置として更新設定し、輪郭抽出を行わせる(輪郭線抽出手段)。即ち、切り抜きたい画像の輪郭線上の点を最初に指定すると、それがまず始点として設定され、その後、輪郭線上の異なる点を指定すると、前記始点と終点とを結ぶ帯状領域が設定され、かかる帯状領域内で輪郭抽出が行われる。続いて、新たに輪郭線上の点が指定されると、前回に終点位置として指定した輪郭線上のポイントから新しい指定点(終点)にまで帯状領域が延設され、該延設された帯状領域内で輪郭抽出が行われ、一連の輪郭線を網羅する帯状領域の設定が終了するまで、輪郭線上の点の座標入力を繰り返す。
【0058】ここで、終点位置の更新設定があった場合には、前回までに求められている輪郭を一旦キャンセルし、全帯状領域内において新たに輪郭抽出を行わせるようにすると良い。これは、輪郭抽出において複数の輪郭点候補が検出され、これらの中から最終的に1つの輪郭点を選択するときに、終点位置の更新設定が、輪郭線の方向を示唆することになり、これが選択すべき輪郭候補点に変化を与えることになるためである。また、かかる終点位置の指定による輪郭抽出の方向付けにおいて、抽出された輪郭点がCRT5上に表示されるから、オペレータはかかる輪郭点の表示に基づいて抽出される輪郭線を所望の方向に導くように終点位置を意図的に指定することも可能となる。
【0059】一連の輪郭線が抽出されると、新たに輪郭抽出の始点を指定し(S25)、同様にして帯状領域の設定及び輪郭抽出を行わせ、全ての輪郭抽出が終了するまで上記のような処理を繰り返す(S26)。そして、輪郭の抽出が全て終了すると、抽出された輪郭点をベクトル化(各輪郭点を連結)して、マスク画像を作成する(S27:画像切り抜き手段)。
【0060】次に、図9のフローチャートに従って、前記図7のフローチャートのS23における輪郭抽出の様子を詳細に説明する。まず、前述のように、切り抜きを所望する画像の輪郭上で座標入力された主要点 (始点と終点) に基づいて、輪郭点の検出を行う帯状領域を設定する(S31:帯状領域設定手段)。
【0061】次に、原画像を光電変換して得られたカラー画像データ(R,G,B or Y,M,C,K)のうちの帯状領域内の画像データを、公知の方法によりH(色相),S(彩度),L(明度)のデータに変換する(S32)。そして、輪郭点の抽出に用いる複数の画像データの正規化定数を設定する(S33)。具体的には、画像データそれぞれの最大値と最小値との幅が同じになるように、例えば、画像データそれぞれの最大値Xmax 及び最小値Xmin を求め、X=X/ (Xmax −Xmin )× 100 によって正規化する (ここで、X=R,G,B,H,S,L)。
【0062】続いて、帯状領域の前記始点と終点とを結ぶ中心線と交差する幅方向に画像データを始点側から走査し(図10参照)、当該走査線上(画像データ列上)で主要画像の輪郭線と交差する輪郭点の候補を算出する(S34:輪郭線抽出手段)。具体的には、画像データ毎(各色プレーン毎)に前記走査線(画像データ列)上で隣接する画素間でのデータの差分を求め、該差分が所定以上である画素位置として輪郭候補点を求める。
【0063】尚、輪郭点の抽出を、前記画像データR,G,B,H,S,Lを用いる構成に限定するものではなく、また、色プレーン毎に画素間のデータ変化を算出するのではなく、色プレーン間でのデータ偏差を求めて輪郭点を求める構成としても良い。更に、前記第1実施例と同様に、帯状領域(切り抜き処理領域)の指定とは別に、主要画像の背景部分を含む領域(条件設定領域)を指定させ、該指定された領域に含まれる画像データに基づいて前記走査線上での輪郭点の算出に用いる閾値(切り抜き条件)を設定させるようにしても良い。
【0064】かかる輪郭点の算出を、終点位置が設定される毎に、始点から終点に向けて一定間隔(1画素単位或いは複数画素長さ)で行わせ、各走査線上で求められた輪郭候補点の連続性(連結性)を評価して、始点から終点に向けて各走査線上における輪郭候補点を選択する(S35)。そして、前記選択された輪郭候補点をベクトル化(各輪郭点を連結)して輪郭線を得て(S36)、該輪郭線をCRT5(表示手段)上に原画像に重ねて表示する(S37:輪郭線表示手段)。
【0065】オペレータは、指定した始点,終点位置に基づいて抽出された輪郭線を、前記CRT5上の表示によって目視確認することができ、これによって、自動抽出された輪郭線の適否を判断できると共に、その後の輪郭抽出結果を予測することが可能となるから、表示された抽出結果を終点位置の更新設定の指標とするこができ、以て、抽出される輪郭線を終点位置の指定によって所望の方向に導くことが可能である。
【0066】即ち、表示された輪郭の抽出結果から、切り抜きを行いたい本来の輪郭線と異なる点をトレースしている場合や、誤った輪郭部分をトレースする可能性が高いことを判断できるから、この場合には、終点位置の新たな指定において前記誤ってトレースしている部分や誤ってトレースされる可能性の高い部分を帯状領域から除くようにしたり、或いは、終点位置の指定位置の間隔を変更したりして、所期の輪郭線がトレースされるように工夫することが可能となる。そして、終点位置の指定毎に始点から輪郭点の検出をやり直すから、連続性の評価が新たな終点位置の設定によって変化し、所期の輪郭線をトレースさせることができる。
【0067】次に、前記切り抜き処理制御を基本としたより好ましい態様を説明する。まず、始点,終点位置の指定に基づいて設定される前記帯状領域の形状は、図8に示したように、円形の中心を前記設定された始点と終点との間で移動したときの円形外郭の軌跡形状として設定し、基本的には2つの円を直線状に結んだ形状とする。このような領域により、帯状領域の方向によらず、一定の幅 (円形の直径) に輪郭抽出領域が設定されるので輪郭線の抽出精度を一定に保持できる。ここで、該帯状領域の幅は、可変に設定されるのが好ましく、次のように自動的に設定することで、輪郭線の抽出精度を高めることができる。
【0068】例えば、帯幅設定方式としては、帯幅を表示された切り抜き対象画像の大きさに対して所定の比率 (画素数比) 、例えば1/20となるように設定する。これは、画像の読み込み解像度によって画像の像構造を表示する画素値の空間的変化が異なるため、帯幅が画像の切り抜き主体と一定の割合となるように設定する。例えば、同一画像を等倍で読み込んだ画像と、400 %で読み込んだ画像において、同じ輪郭線を構成する隣接画素値の並びは大きく異なる。本実施例では、オペレータが指定する被切り抜き画像領域と画像サイズから切り抜きに適切な帯幅を選択する (1:20) 。なお画素比は、1:15〜1:25が好ましく、これより下方ではキズ等のノイズの影響を受けやすく推定輪郭線が迷走し、これより上方では適切な輪郭点を抽出しずらくなり、特に1:18〜1:22が好ましい。この場合、表示された切り抜き画像の大きさ (表示画素数) は当該画像の輪郭線を知らないと得られないので、例えば切り抜き画像に略外接する方形領域を設定し、該領域の大きさ (画素数) に基づいて帯幅を設定するような構成とすれば良い。
【0069】かかる実施例 (図9のS31のサブルーチン) を図11に示す。図において、まず、切り抜き画像の表示サイズSを読み込み(S41)、次いで、帯幅Wを1/20・S (画素数比) として設定し(S42)、該設定された帯幅Wで始点と終点とを結ぶ帯状領域を設定すると共に、該帯状領域をCRT5に表示する(S43)。
【0070】また、同じ大きさの画像でも局所的に輪郭線の変化率が大きくなる部分もあることを考慮して、手動でも帯幅Wを設定できるようにしておくのが良い。ところで、帯状領域を直線形状のみに設定すると、曲率の大きい輪郭線に対して、始点,終点間を短い帯状領域で繋げて何回も設定する必要がある。そこで、オペレータの指示により帯状領域を湾曲化して設定することにより、1つの帯状領域の中に長い輪郭線を含ませることができ、設定回数を減らすことができる。具体的な湾曲化方法としては、例えばベジェー関数を用いることができる。
【0071】かかる実施例 (図9のS31のサブルーチン) を図12に示す。図において、まず、前記した方法等により帯幅Wを設定し(S51)、次いで、帯状領域を湾曲させるか否かのオペレータの指示を読み込み(S52)、湾曲しない場合は、そのまま直線状の帯状領域を表示し(S54)、湾曲させる場合は、前記ベジェー関数等を用いた湾曲処理を行うと共に(S53)、該湾曲処理された帯状領域をCRT5上に表示させる(S55)。そして、オペレータが湾曲処理された帯状領域の適性を判断し(S56)、OKとなるまで湾曲処理を続け、OKとなれば、該湾曲された帯状領域を最終設定する(S57)。
【0072】一方、同一の走査線上で輪郭候補点が複数検出された場合に、これらの中から真に所望する輪郭点を決定する方法として、帯状領域の幅方向(走査線方向)に予め重みを付けておくことが好ましい。即ち、オペレータが帯状領域を設定する際、無意識に帯状領域の中心線を所望の切り抜き輪郭線に近づけて設定する確率が高いことを考慮して、帯状領域の幅方向の中心近傍の画像データに対する重みを大きく、端の方では重みを小さく設定し、前記複数の輪郭点候補がある場合は重みの大きい方を選択する。但し、始点と終点では、輪郭線が帯幅の中心近傍にある確率が高いが、中間部では中心から離れる可能性も高まるので、始点及び終点に近い部分のみ重み付けしたり、重み付けの度合いを始点或いは終点からの距離によって変化させるようにしても良い。
【0073】また、帯幅走査方向の濃度や色の変化が小さく前記各データの差分からは実質上輪郭点を判別することが不能であるような場合は、かかる判別不能部分について帯状領域の延設方向に従って図13に示すように外挿により輪郭線を決定する。また、決定された輪郭点が前回の走査線上で決定された輪郭点の近傍にあるか否かを判定し、近傍に無い場合は、輪郭点の決定が誤っていると判断して前記同様外挿により輪郭点を決定するか、或いは、輪郭点候補が同一走査線上で複数ある場合は、2番目の候補を前回決定された輪郭点と比較し、その近傍にあれば、1番目の候補に代えて2番目の候補に選択し直すようにしてもよい。
【0074】更に、以上のようにして決定された輪郭点が図14に示すように帯状領域の中心から離れていって帯幅の端まで達したときには、その段階で輪郭線が帯状領域から外れると判断して切り抜き画像の輪郭線を手動で設定するモードに自動的に切り換えるようにしても良い。この場合は、オペレータは帯状領域から外れた部分について画面上をポインティングデバイスにより輪郭線をトレースしていけばよく、再び輪郭線が帯状領域内に入ったときに自動モードに切り換えるようにすればよい。
【0075】以上示した各輪郭線抽出処理方法を含んだ実施例 (図9のS34,S35のサブルーチン) を図15に示す。図において、まず、帯幅方向の輪郭点決定の重み分布を設定する(S61)。次いで、帯状領域の帯幅方向の画像データに基づいて、輪郭点を算出し、複数の輪郭点候補を算出した場合は、前記重み分布に従って輪郭点を決定する(S62)。
【0076】そして、前記処理で輪郭点が算出されたか否か、即ち、前述のように差分の最大値のレベルが小さすぎて算出不能であるか否かを判定する(S63)。ここで、算出不能であったと判別されたときには、前述した外挿処理を行って輪郭点の算出が不能であった区間の輪郭線を設定する(S64)。尚、算出不能であるときに手動モードに切り換えて、算出不能部分の輪郭点をポインティングデバイス操作によって手動で指定させるようにしても良い。
【0077】一方、輪郭点を算出できたときは、算出された輪郭点が前回の走査で決定された輪郭点の近傍に位置するか否かを判定し(S65)、離れている場合には前記外挿処理(或いは手動による輪郭点指定)を行い(S64)、近傍に位置する場合は、算出された輪郭点が帯状領域の幅方向の端に位置して、領域外に外れると予測されるか否かを判別する(S66)。
【0078】そして、領域から外れると判別されたときは、輪郭線を手動で設定するモードに切り換える(S67)。次いで、前記手動モードによる輪郭線の設定が終了したか否かを判別し(S68)、終了した時点、つまり帯状領域内に戻った時点で自動抽出(自動探索)モードに切り換える(S69)。
【0079】尚、自動抽出された輪郭線が帯状領域から外れるときには、帯状領域の設定が不適切で、所望の輪郭線が帯状領域から外れている可能性が高いので、輪郭線が外れる方向に帯状領域の幅を自動的に所定範囲内で増大させるか、或いは自動的に湾曲させて輪郭点を算出させるようにしても良し、また、終点位置の指定のやり直しをオペレータに要求するようにしても良い。
【0080】一方、輪郭点が帯状領域から外れないと判定されたときは(S66)、算出された輪郭点を真の輪郭点として確定する(S70)。そして、輪郭点の算出が終了したか否かを判別し(S71)、終了するまで上記の処理を繰り返す。
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明にかかる画像切り抜き装置によると、画像の切り抜き処理を行う領域を指定すると共に、前記処理領域での切り抜き条件を設定するための領域を別途指定し、前記切り抜き条件設定領域の画像データに基づいて条件設定して、切り抜き処理を行わせる構成としたので、画像個々の特性に適合する切り抜き条件を簡便に設定させることができ、以て、種々の原画像において安定的に画像の切り抜きを行うことができるという効果がある。
【0082】請求項2の発明にかかる画像切り抜き装置によると、切り抜き条件を複数の指定領域に基づいて設定させる構成とし、例えば背景部分が変化するような主要画像において、適性な切り抜き条件の設定が可能となる。請求項3の発明にかかる画像切り抜き装置によると、切り抜き条件の設定のために指定される領域に指定順に従って重み付けをすることで、複数の領域指定に基づく切り抜き条件の設定を、より適切に行わせることができるという効果がある。
【0083】請求項4の発明にかかる画像切り抜き装置によると、複数の切り抜き処理領域に切り抜き条件を共通的に用いることで、各処理領域で統一的な切り抜き処理を行わせることができるという効果がある。請求項5の発明にかかる画像切り抜き装置によると、切り抜き処理領域毎に異なる条件設定領域を対応させることで、各処理領域毎に切り抜き条件の適性が大きく変化する場合であっても、所望の画像切り抜きを行わせることができるという効果がある。
【0084】請求項6の発明にかかる画像切り抜き装置によると、切り抜き処理領域と条件設定領域とが重なるときに、該重複領域に重み付けして切り抜き条件を設定することで、切り抜き処理領域での画像特性により適合するように、切り抜き条件を設定させることができるという効果がある。請求項7の発明にかかる画像切り抜き装置によると、切り抜き輪郭の主要点を座標入力することで、簡便に輪郭抽出を行わせるのに適性な帯状領域を設定させることができ、然も、輪郭抽出結果が、前記設定された領域と共に表示されて、オペレータの操作を容易にすることができるという効果がある。
【0085】請求項8の発明にかかる画像切り抜き装置によると、帯状領域の終点位置の更新設定毎に輪郭抽出をやり直すので、抽出される輪郭を終点位置の指定によって意図的に誘導することができるという効果がある。請求項9の発明にかかる画像切り抜き装置によると、帯状領域の帯幅方向で輪郭点を算出させるから、帯幅方向の中央に位置する可能性が高い所望の輪郭点を精度良く算出させることができると共に、かかる輪郭点の算出を帯状領域の始点から終点に向けて行わせることで、オペレータによる輪郭点の誘導が容易となるという効果がある。
【0086】請求項10の発明にかかる画像切り抜き装置によると、カラー原画像の輪郭を、色プレーン毎或いは色プレーン間の画像データ演算によって精度良く求めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明にかかる装置の基本構成を示すブロック図。
【図2】請求項7の発明にかかる装置の基本構成を示すブロック図。
【図3】実施例のシステム構成を示すブロック図。
【図4】条件設定領域と切り抜き処理領域との指定の様子を示す図。
【図5】条件設定領域の指定による画像切り抜き処理の実施例を示すフローチャート。
【図6】条件設定領域の指定による画像切り抜き処理の別の実施例を示すフローチャート。
【図7】第2実施例の切り抜き処理の基本手順を示すフローチャート。
【図8】帯状領域の設定の様子と輪郭線との相関を示す図。
【図9】輪郭抽出の処理内容を示すフローチャート。
【図10】帯状領域での輪郭点の抽出の様子を示す図。
【図11】帯状領域の幅設定の様子を示すフローチャート。
【図12】帯状領域を湾曲させる実施例を示すフローチャート。
【図13】輪郭線の外挿の様子を説明するための図。
【図14】手動モードへの切り換えの様子を説明するための図。
【図15】輪郭線探索処理の詳細を示すフローチャート。
【図16】分散度に基づく輪郭抽出の様子を示す図。
1 画像入力手段
2 演算手段
3 内部記憶手段
4 画像表示メモリ
5 CRT
6 入力手段
7 外部記憶手段
8 マスク作成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】原画像を光電走査して得られた画像データから特定画像を切り抜く画像切り抜き装置であって、画像の切り抜きを行う領域を指定する切り抜き領域指定手段と、切り抜き条件を設定するための領域を指定する条件設定領域指定手段と、該条件設定領域指定手段で指定された領域の画像データに基づいて切り抜き条件を設定する切り抜き条件設定手段と、該切り抜き条件設定手段で設定された切り抜き条件に従って前記切り抜き領域指定手段で指定された領域において画像の切り抜きを行う画像切り抜き手段と、を含んで構成されたことを特徴とする画像切り抜き装置。
【請求項2】前記切り抜き条件設定手段が、前記条件設定領域指定手段で指定された複数の領域の画像データに基づいて切り抜き条件を設定することを特徴とする請求項1記載の画像切り抜き装置。
【請求項3】前記切り抜き条件設定手段が、前記条件設定領域指定手段で指定された順番に従って領域毎に重み付けして切り抜き条件を設定することを特徴とする請求項2記載の画像切り抜き装置。
【請求項4】前記画像切り抜き手段が、前記切り抜き条件設定手段で設定された切り抜き条件を、前記切り抜き領域指定手段で指定された複数の領域に共通的に適用することを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の画像切り抜き装置。
【請求項5】前記画像切り抜き手段が、前記切り抜き領域指定手段で指定される複数の領域それぞれに対して、前記条件設定領域指定手段で指定された複数の領域それぞれに基づいて前記切り抜き条件設定手段で設定された複数の切り抜き条件を選択的に適用することを特徴とする請求項1記載の画像切り抜き装置。
【請求項6】前記切り抜き条件設定手段が、前記切り抜き領域指定手段で指定された領域と前記条件設定領域指定手段で指定された領域とが相互に重なる領域を有するときに、重複領域の画像データに対して重み付けして切り抜き条件を設定することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5のいずれかに記載の画像切り抜き装置。
【請求項7】原画像を光電走査して得られた画像データに基づいて前記原画像を表示する表示手段と、該表示手段に表示された画像上での切り抜き輪郭の主要座標位置を指定する輪郭座標指定手段と、該輪郭座標指定手段で指定された座標位置を内包する切り抜き輪郭に沿った帯状の領域を設定し、かつ、該設定した帯状領域を前記表示手段に切り抜き処理の対象画像に重ねて表示させる帯状領域設定手段と、該帯状領域設定手段で設定された帯状領域内の画像データに基づいて画像の輪郭線を抽出する輪郭線抽出手段と、該輪郭抽出手段で抽出された輪郭線を前記表示手段に切り抜き処理の対象画像に重ねて前記帯状領域内に表示させる輪郭線表示手段と、前記輪郭抽出手段で抽出された輪郭線に基づいて画像の切り抜きを行う画像切り抜き手段と、を含んで構成された画像切り抜き装置。
【請求項8】前記輪郭座標指定手段によって座標位置が新たに指定されて帯状領域の終点位置が変わる毎に前記輪郭抽出手段が前記帯状領域内での画像の輪郭を新たに抽出し直すことを特徴とする請求項7記載の画像切り抜き装置。
【請求項9】前記輪郭抽出手段が、帯状領域の帯幅方向の画像データ列において輪郭線上にある輪郭点を抽出する構成であり、かつ、前記画像データ列毎の輪郭点の抽出を、前記輪郭座標指定手段による座標位置の指定順に従う帯状領域の始点位置から終点位置に向けて順次行うことを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の画像切り抜き装置。
【請求項10】前記画像データがカラー画像データであって、前記輪郭抽出手段が各色プレーン間又は各色プレーン毎の演算によって輪郭線を抽出することを特徴とする請求項7,8又は9のいずれかに記載の画像切り抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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