説明

画像加熱装置

【課題】エアー分離に加熱ローラ301の温度低下防止のために加熱空気を用いる際、加熱手段を設けることで装置が大型化し、電力をより消費してしまう。
【解決手段】加熱ローラ301よりも高い温度で温調されている外部加熱ローラ308a・308bの加熱された雰囲気エアーを分離エアーに使用する。分離エアーはローラ長手方向端部に設けられた循環ダクトによって外部加熱部に循環される。加熱空気循環手段は加熱ローラの回転駆動に駆動接続され、加熱ローラの回転に同期して回転駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式等を利用して画像を記録材上に形成してハードコピーを得る複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に定着装置として搭載して好適な画像加熱装置に関する。
【0002】
画像加熱装置には、記録材上に形成した未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置以外にも、例えば、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
例えば電子写真方式の画像形成装置で記録材(以下、用紙と記す)に画像が印刷される場合、感光体ドラムや中間転写ベルトといった転写媒体によってトナー画像が転写された用紙は、定着部に搬送される。そして、定着部でトナー画像が用紙に定着され、排紙部の方に搬送される。定着部は加熱ローラと、それに圧接する形で対向配置される加圧ローラとからなる定着ローラ対を備えている。また、加熱・加圧ローラに代わって加熱・加圧ベルトが使用される場合もあるが、以下の説明では、加熱・加圧ローラで代表させる。
【0004】
トナー画像が転写された用紙は、定着ローラ対のニップ部に進入し、その際、加熱ローラにて加熱されるのと同時に、加圧ローラとの間で圧接されて、トナー像が用紙に定着される。この定着部における技術的課題の一つとして、定着後、ニップ部から進出した用紙が加熱ローラに巻きつかないようにすることがある。
【0005】
その技術的課題を解決するための一手段として、特許文献1に開示された発明のように、ニップ部から進出してくる用紙と加熱ローラの間に圧縮空気を噴射することにより、その風圧の作用で用紙と加熱ローラの分離を行う構成が提案されている。この方法によれば、ローラ表面を傷つけることなく用紙をローラから剥離させることが出来、かつ、用紙に傷が付いたり破損したりするおそれもなく、画質の良好な紙面を得ることができる。
【0006】
しかし、熱を与えて定着を行う定着装置では、圧縮空気を加熱ローラ表面に噴射することにより加熱ローラ表面の熱が奪われてしまい、定着装置としての定着能力を低下させ、定着不足や光沢ムラなどを引き起こし画像不良を発生させるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献2に開示された発明では、技術的課題を解決するための一手段として、加熱ローラに噴射する圧縮空気を事前に加熱する。これにより、加熱ローラ表面の温度低下を防ぎ、定着に必要な設定温度から大きく低下させて、定着不足を引き起こしたり、画像光沢ムラを引き起こしたりすることのない構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−71865号公報(第1図)
【特許文献2】特開2007−94327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2で開示された発明では、圧縮空気の流通経路内に加熱手段を設けている。この構成であると、乱流を発生させ圧損を引き起こし圧縮空気の噴射効率を下げる他、別途加熱手段を設けることにより、消費電力が増大し、また、装置が大型化するという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、消費電力を増大させることなく、かつ、空気噴射効率を下げることもなく、加熱部材の温度低下による画像加熱不足や加熱部材の傷つき、記録材の破損のないエアー分離装置を備えた画像加熱装置を大型化させることなく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱装置の代表的な構成は、回転可能な加熱部材と、前記加熱部材に当接して画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱するためのニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材と、前記ニップ部を通過した記録材の先端を前記加熱部材から剥離するために、前記ニップ部よりも記録材搬送方向の下流側から前記加熱部材に向かって空気を吹き付けるエアー分離装置と、を有する画像加熱装置であって、前記エアー分離装置は、前記外部加熱部材の周辺に生じる加熱空気を回収する熱気回収ダクトを有し、前記熱気回収ダクトによって回収された加熱空気を前記加熱部材に吹き付けるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消費電力を増大させることなく、かつ、空気噴射効率を下げることもなく、加熱部材の温度低下による画像加熱不足や加熱部材の傷つき、記録材の破損のないエアー分離装置を備えた画像加熱装置を大型化させることなく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の画像加熱装置(定着装置)の横断右側面図
【図2】同装置を記録材入口側(装置正面側)から見た一部切欠きの斜視図
【図3】図2の一部の分解斜視図
【図4】同装置を記録材出口側(装置背面側)から見た一部切欠きの斜視図
【図5】画像形勢装置の一例の構成模型図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0015】
[実施例]
<画像形成部>
図5は本発明に係る画像加熱装置を定着装置Aとして搭載している画像形勢装置100の一例の構成模型図である。この装置100は複数の画像形成部が並設されているタンデム式の中間転写電子写真4色フルカラーのレーザープリンタであり、ホスト装置400から中央制御部200に入力する電気的画像情報(画像信号)に基づいて記録材Pにカラー画像を形成することができる。装置400はパソコン(PC)、外部スキャナー(イメージリーダー)、ネットワーク上の端末、相手方ファクシミリ、ワードプロセッサ等であり、インターフェイス部を介して中央制御部200に接続されている。
【0016】
記録材(転写材)Pはトナー画像を形成することができる記録媒体であり、用紙・OHTシート・ラベル・布等のシート状の部材である。中央制御部200はCPU(演算部)を含み、操作部300やホスト装置400との間で各種の電気的な情報の授受をする。そして、中央制御部200は装置100内の各機器の動作を監視及び制御し、装置100のプリント動作(画像形成動作)を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。
【0017】
装置100の内部には、図面上、左側から右側にかけて順に第1乃至第4の4つの画像形成部PY・PM・PC・PKが水平方向(横方向)並べられて配設されている(タンデム型)。各画像形成部は現像器4に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。
【0018】
本例の各画像形成部は、それぞれ、静電潜像が形成される回転ドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。各ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、ドラム1に作用するプロセス手段としてのドラム帯電器2、画像露光装置3、現像器4、1次転写帯電器5、ドラムクリーナー6を有する。
【0019】
帯電器2はドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段である。画像露光装置3は本実施例においてはレーザースキャナユニットである。ユニット3は、光源装置としての半導体レーザー、ポリゴンミラー、fθレンズ等を有し、各画像形成部の帯電処理されたドラム1の表面を、それぞれ、対応色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。
【0020】
即ち、ユニット3は、半導体レーザーから発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光する。これにより、各ドラム1の表面に、それぞれ、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0021】
現像器4はドラム1の表面に形成された静電潜像をトナー画像として可視化する現像手段であり、供給装置4aよりトナーが所定量充填されている。画像形成部PYの現像器4にはイエロー色(Y色)のトナーが収容されている。画像形成部PMの現像器4にはマゼンタ色(M色)のトナーが収容されている。画像形成部PCの現像器4にはシアン色(C色)のトナーが収容されている。画像形成部PKの現像器4にはブラック色(K色)のトナーが収容されている。クリーナー6はドラム1の表面の1次転写残トナーを除去するクリーニング手段である。
【0022】
画像形成部PY・PM・PC・PKの下方部には中間転写ベルトユニット7が配設されている。ユニット7は、中間転写体としての可撓性を有するエンドレスのベルト8を有する。また、このベルト8を懸回張設している駆動ローラ9、2次転写対向ローラ10、テンションローラ11を有する。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1と同じ周速度をもって回転駆動される。
【0023】
各画像形成部の1次転写帯電器5は本例においては転写ローラ(導電性の帯電ローラ)であり、ベルト8の内側に配設されている。そして、各転写ローラ5は、ローラ9とローラ11との間のベルト部分を介して対応するドラム1の下面に対して圧接している。各ドラム1とベルト8との当接部(ニップ部)がそれぞれ1次転写部T1である。
【0024】
ローラ10にはベルト8を介して2次転写ローラ12が圧接している。ローラ12は導電性の帯電ローラである。ベルト8とローラ12との当接部(ニップ部)が2次転写部T2である。また、ローラ11のベルト巻回部にはクリーナー13が配設されている。本例においてこのクリーナー13はクリーニング部材としてクリーニングウエブ(不織布)を用い、これをベルト12の表面に当接させてベルト表面の2次転写残トナー及び紙粉等の異物を拭い取るようにして除去している。
【0025】
ユニット7の下方部には、それぞれ記録材Pを積載して収納している第1の給紙カセット14Aと第2の給紙カセット14Bが上下2段に配設されている。カセット14A・14Bから2次転写部T2に至る間には、給紙ローラ15、搬送ローラ対16、レジストローラ対17、転写前ガイド18を含む記録材搬送路19が配設されている。また、2次転写部T2よりも記録材搬送方向下流側には定着手段としての定着装置Aが配設されている。この定着装置Aについては後述する。
【0026】
フルカラー画像を形成するための動作は次のとおりである。各画像形成部PY・PM・PC・PKのドラム1が矢印の反時計方向に所定の制御速度で回転駆動される。ベルト8も矢印の時計方向(ドラム回転に順方向)にドラム1の速度に対応した速度で回転駆動される。ユニット3も駆動される。
【0027】
この駆動に同期して、各画像形成部においてそれぞれ所定の制御タイミングで帯電器2がドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。ユニット3は各ドラム1の表面を各色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。これにより、各ドラム1の表面に対応色の画像情報に応じた静電潜像が所定の制御タイミングをもって形成される。そして、その静電潜像が現像器4によりトナー画像として現像される。
【0028】
上記のような電子写真画像形成プロセス動作により、画像形成部PYのドラム1にはフルカラー画像のY色成分に対応するY色トナー画像が形成される。そして、そのトナー画像が転写部T1においてベルト8上に1次転写される。
【0029】
画像形成部PMのドラム1にはフルカラー画像のM色成分に対応するM色トナー画像が形成される。そのトナー画像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているY色トナー画像に重畳されて1次転写される。
【0030】
画像形成部PCのドラム1にはフルカラー画像のC色成分に対応するC色トナー画像が形成され、そのトナー画像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているY色+M色のトナー画像に重畳されて1次転写される。
【0031】
画像形成部PKのドラム1にはフルカラー画像のK色成分に対応するK色トナー画像が形成される。そして、そのトナー画像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているY色+M色+C色のトナー画像に重畳されて1次転写される。
【0032】
各画像形成部において、ドラム1からベルト8へのトナー画像の1次転写は、ローラ5に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。かくして、ベルト8上にY色+M色+C色+K色の4色フルカラーの未定着トナー画像が合成形成される。各画像形成部において、ベルト8に対するトナー画像の1次転写後のドラム1面に残留したトナーはクリーナー6により除去される。
【0033】
一方、所定の制御タイミングで給紙ローラ15が駆動される。これにより、カセット14Aまたは14Bに積載されている記録材Pが1枚分離給送される。そして、記録材Pは、搬送路19を通ってレジストローラ対17に至る。ローラ対17は中央制御部200で制御されるモーター(不図示)により回転、回転停止される。ローラ対17は搬送路19を搬送される記録材Pの先端部を一旦受け止めて記録材Pの斜行を矯正するとともに、所定の制御タイミングでその記録材Pを送り出す。送り出された記録材Pは転写前ガイド18により2次転写部T2に導入される。
【0034】
そして、記録材Pは2次転写部T2を挟持搬送されていく過程において、ベルト8上の4色フルカラーの未定着トナー画像の転写(2次転写)を順次に受ける。この2次転写は、ローラ12に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。
【0035】
記録材Pに対するトナー画像転写後のベルト面は引き続くベルト8の回転によりクリーナー13に至り、2次転写残トナー及び紙粉等の異物の除去を受けて清掃されて繰り返して画像形成に供される。本例においてクリーナー13はクリーニング部材としてクリーニングウエブ(不織布)を用い、これをベルト8の表面に当接してトナー及び紙粉等の異物を拭い取るようにしている。
【0036】
転写部T2を通過した記録材Pはベルト8の面から順次に分離されて搬送路20を通って定着装置Aに導入される。記録材Pは定着装置Aの定着ニップ部で挟持搬送されて加熱及び加圧されることにより未定着トナー画像が固着像として定着される。
【0037】
定着装置Aを出た記録材Pは、片面画像形成モードの場合には、第1姿勢に制御されている第1フラッパ21により排出搬送路22側に導入されて排出口23から排出トレイ24に排出、積載される。
【0038】
両面画像形成モードの場合には、定着装置Aを出た第1面側画像形成済みの記録材Pが第2姿勢に制御されている第1フラッパ21により反転搬送路25側に案内され、更に第1姿勢に制御されている第2フラッパ26によりスイッチバック搬送路27に導入される。そして、記録材Pはスイッチバック搬送されて第2姿勢に制御された第2フラッパ26により両面搬送経路28に導入される。
【0039】
さらに記録材Pは両面搬送経路28から再び搬送路19に導入されて、レジストローラ対17、転写前ガイド18を経由して表裏反転された状態にて2次転写部T2に導入される。これにより記録材Pの第2面に対して転写部T2にてトナー画像の転写がなされる。
【0040】
以後は、第1面に対する画像形成動作と同様に記録材Pは、搬送路20、定着装置A、排出搬送路22、排出口23を通って両面画像形成物として排出トレイ24に排出、積載される。また、モノクロなどモノカラー画像形成モードの場合には、その画像を形成するための画像形成部だけが画像形成動作して片面又は両面のモノカラー画像形成物が排出トレイ24に排出、積載される。
【0041】
<定着装置A>
図1は定着装置Aの横断右側面図、図2は同装置Aを記録材入口側(装置正面側)から見た一部切欠きの斜視図、図3は図2の一部の分解斜視図である。図4は同装置Aを記録材出口側(装置背面側)から見た一部切欠きの斜視図である。
【0042】
本例の定着装置Aは熱ローラ方式の装置であり、回転可能な加熱部材としての加熱ローラ301と、この加熱ローラ301に圧接して挟持部としての定着ニップ部Nを形成する回転可能な加圧部材としての加圧ローラ303を有する。また、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの上流側にはニップ部Nに記録材Pを案内する入口ガイド307が配設されている。
【0043】
また、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端を加熱ローラ301から分離するために、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側から加熱ローラ301に向かって空気を吹き付ける第1のエアー分離装置370が設けられている。
【0044】
また、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端を加圧ローラ303から分離するために、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側から加圧ローラ303に向かって空気を吹き付ける第2のエアー分離装置380が設けられている。
【0045】
(1)加熱ローラ301
加熱ローラ301は、アルミニウムからなる中空の芯金301aを基体とし、その外周面にシリコーンゴム層(弾性層)301bとPFAチューブからなる剥離層301cを順次に積層した複合層構造のローラである。該ローラ301は左右側の端部を装置フレーム(筺体、シャーシー)300の左右の側板300L・300R間にベアリング(軸受部材)390を介して回動自在に取り付けられている。
【0046】
芯金301aの内部には内部加熱減としての加熱ヒータ302が設けられている。ローラ301は、適正な温度、例えば180℃程度に保つために基本的にはヒータ302により内部から加熱されて温調(温度調節)される。
【0047】
また、ローラ301の外側には、ローラ301に外面に圧接してローラ301を外周面側から加熱するための外部加熱部材(補助加熱部材)が配設されている。本例において、外部加熱部材は加熱ローラ301の上半面側に加熱ローラ301に対して並行に配設した並行2本の外部加熱ローラ308a・308bである。ローラ308a・308bは共通に枠体330に回転可能に配設されている。
【0048】
枠体330は、装置フレーム300の左右の側板300L・300R間に枢軸331を中心に揺動可能に支持されて配設されている。そして、枠体330は、加圧手段としての加圧ばね(弾性部材)309により、枢軸331を中心に加熱ローラ301の側に回動付勢されている。これにより、ローラ308a・308bが加熱ローラ301の外面に対して弾性的に押圧された状態にされている。
【0049】
ローラ308a・308bの内部にはローラ308a・308bを加熱するための加熱ヒータ310a・310bが設けられている。ローラ308a・308bは、加熱ローラ301よりも高温の適正な温度、例えば230℃程度に保つためにヒータ310a・310bにより内部から加熱される。ローラ308a・308bは加熱ローラ301の温度立ち上げを迅速化すると共に、画像定着に伴う加熱ローラ301の表面温度低下をローラ外面側からの熱補給にて迅速に回復させる役目をしている。
【0050】
ローラ308a・308bの外面にはそれぞれ該ローラ308a・308bをクリーニングするクリーニングローラ311a・311bが押圧された状態で枠体330に回転可能に配設されている。
【0051】
(2)加圧ローラ303
加圧ローラ303は加熱ローラ301の下側に加熱ローラ301に並行に配設されている。ローラ303は、鉄からなる中空の芯金303aを基体とし、その外周面にシリコーンゴム層303bとPFAチューブからなる剥離層303cを順次に積層した複合層構造のローラである。ローラ303は左右側の端部を枠体340の左右の側板間にベアリング(軸受部材:不図示)を介して回動自在に取り付けられている。
【0052】
枠体340は、装置フレーム300の左右の側板300L・300R間に枢軸341を中心に揺動可能に支持されて配設されている。枠体340は、枠体340側のコロ306に対する加圧カム305の回転角が中央制御部200で制御されることで、枢軸341を中心に、ローラ303がローラ301に対して所定の圧力で押圧する方向と、押圧を解除する方向と、に揺動される。ローラ303がローラ301に対して所定の圧力で押圧する方向に枠体340が揺動された状態において、ローラ301とローラ303との間に記録材搬送方向Zに関して所定幅に定着ニップ部Nが形成される。
【0053】
ローラ303の内部には、加熱ヒータ304が設けられている。ローラ303は、適正な温度、例えば150℃程度に保つためにヒータ304により内部から加熱される。
【0054】
(3)定着動作
中央制御部200は画像形成スタート信号に基づいて画像形成シーケンス制御を開始する。定着装置Aについては、ローラ303をローラ301に圧接する制御をする。また、ローラ301を駆動手段(不図示)により図1において矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動する。ローラ308a・308b及びローラ303はローラ301の回転に従動して回転する。ローラ311a・311bはそれぞれローラ308a・308bの回転に従動して回転する。
【0055】
また、中央制御部200はヒータ302、304、310a、310bに対して電力を供給して、ローラ301、ローラ304、ローラ308a・308bをそれぞれ所定の温度に立ち上げる。そして各ローラの温度がそれぞれ所定の温度に温調されるように、ヒータ302、304、310a、310bに対する電力の供給を制御する。
【0056】
上記の状態において、画像形成部側から未定着画像Tを担持した記録材Pが定着装置Aに搬送される。記録材Pは入口ガイド307にガイドされてニップ部Nに進入して挟持搬送される。記録材Pの未定着画像担持面がローラ301に対面する。この挟持搬送により、記録材上の未定着画像Tがローラ301及びローラ303からの熱とニップ部Nの圧力により記録材面に定着される。
【0057】
ニップ部Nを出てローラ301に張り付いた状態の記録材Pは(4)項で詳述する第1のエアー分離装置370によりローラ301から分離(剥離)される。また、本実施例においては、ニップ部Nを出てローラ303に張り付いた状態の記録材Pは第2のエアー分離装置380によりローラ303から分離される。
【0058】
ニップ部Nを出てローラ301とローラ303から分離された記録材Pは上下の搬送ガイド319a・319bで形成された搬送路(上流側搬送路)319を通って搬送ローラ対318に挟持されて中継ぎ搬送される。そして搬送路(下流側搬送路)320を通って出口部350から定着装置Aの外側に送りだされる。
【0059】
(4)エアー分離装置370・380
ニップ部Nの記録材搬送方向Zの下流側には、ローラ301の表層に貼り付いた記録材Pを剥離させるための第1のエアー分離装置370が配置されている。また、ローラ303の表層に貼り付いた記録材Pを剥離させるための第2のエアー分離装置380が配置されている。
【0060】
(4−1)第1のエアー分離装置370
第1のエアー分離装置370は、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端をローラ301から分離するために、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側からローラ301に向かって空気を吹き付けるエアー吹き出し口312を有する。また、口312にエアーを送るためのファン314とダクト316を有する。口312はローラ301の長手方向(回転軸線方向)を長手とする細長いスリット状の開口である。また、本実施例においては、第1のエアー分離装置370は、ローラ301の長手方向に沿って3つのファン341とダクト316を有する。
【0061】
本実施例においては、ローラ301よりも高い温度で温調されているローラ308a・308bの加熱された雰囲気エアーを分離エアーに使用する。そのために、第1のエアー分離装置370は、ローラ308a・308bの上部に配設した熱気回収ダクト321を有する。ダクト321は、ローラ308a・308bの表層に接することでローラ308a・308bの周辺に生じた200℃以上まで加熱された加熱空気(熱気、暖気)を回収し、ファン314へ加熱空気を案内する。
【0062】
ダクト321は加熱空気の温度を保持するために断熱効果のある樹脂もしくは断熱材をその内部に設けるように構成され、加熱空気の温度を維持したままファン314へ加熱空気を案内するように配置される。ダクト321はその一端の開口部321aがファン314の吸気口314aへ接続され、他端の開口部321bはローラ308a・308bを囲んで位置するように配置されている。
【0063】
ファン314が駆動されることによって、ダクト321内の加熱空気が開口部321a・314aからダクト316内に取り込まれ、口312から出る。これによって、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側からローラ301に向かってダクト321内の加熱空気が吹き付けらて、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端がローラ301から分離される。
【0064】
ダクト321はローラ308a・308bとローラ301の表層を仕切る仕切り板321aを備える。即ち、ダクト321はローラ301を含む空間部(第1の部屋)322とローラ308a・308bを含む空間部(第2の部屋)323とを区画する仕切り板321aを有する。第1の部屋322は、ローラ301の表層に接することで160℃前後に加熱された加熱空気エリアである。第2の部屋323は、ローラ308a・308bに接することで200℃前後に加熱された加熱空気エリアである。
【0065】
仕切り板321aの先端部(=ダクト316の他端の開口部321b)は第1の部屋322から、もしくはその他外部からの雰囲気の吸入を妨げるために、ローラ308a・308bの表層から5mm以内のクリアランスで位置することが望ましい。もしくはローラ308a・308bの表面に接するように可撓性部材(不図示)が取り付けられ第2の部屋323を実質的に独立空間として構成することが好ましい。
【0066】
上記の構成の装置Aは、特に消費電力を増大させることなく記録材の分離に用いられる圧縮空気をローラ301の温度以上にすることが可能になり、加熱ローラ表面温度を容易に保つことが出来る。そのため、ローラ301の温度低下による定着不足を引き起こすことなく、安定した定着作用を持続させながら、ローラ301の傷つきや記録材の破損のない加熱ローラ301からの記録材分離を実施することができる。また、噴射効率を上げることで分離能力を向上させ、かつ、空気加熱手段を別途設ける必要がないため装置の小型化が可能になる。
【0067】
また、本実施例においては、第1のエアー分離装置370によってローラ301に吹き付けられた加熱空気を装置外部に排出することなく、ダクト321に戻して循環させるための熱気戻しダクト324を配設している。これにより、加熱空気を循環利用してローラ301への分離エアーの吹き付けによる加熱ローラ表層の温度低下をより効果的に防ぐようにしている。
【0068】
即ち、本実施例においては、ダクト324は、図2・図3のように、装置Aの左側面側に配設されている。装置フレーム300の左側板300Lには搬送路319に対応する位置に加熱空気の出口300Laが形成されている。また、ダクト321の左側板321Lには、ローラ308a・308bに対応する位置に加熱空気の入口321Laが形成されている。
【0069】
ダクト324は上記の出口300Laと入口321Laとを連通させるダクトであり、一端部側に上記の出口300Laに対応して接続される第1の開口部324aを、他端部側に上記の入口321Laに対応して接続される第2の開口部324bを有する(図3)。
【0070】
第1のエアー分離装置370によって加熱ローラ301に吹き付けられた加熱空気は、ファン314の駆動によるダクト321内の負圧により、搬送路319内を出口300La側に流れる。そして、第1の開口部324aから熱気戻しダクト324に入り、第2の開口部324b・入口321Laから、熱気回収ダクト321に戻されて循環利用される。
【0071】
加熱された空気を循環して使用することが可能になるため、装置Aからの排熱による画像形成装置本体の昇温を抑える事が可能になる。空気の循環を行うための新たな循環装置による消費電力の増大を必要とせず、さらなる画像形成装置の省電力化が可能になる。
【0072】
以上の構成により、160℃前後に加熱された加熱空気エリアである第1の部屋322の加熱空気をローラ301の表層に留めることで第1の部屋322へのフレッシュエアーの流入を抑制する。これにより、ローラ301の表層のフレッシュエアーの流入による温度低下を防ぎつつ、200℃前後に加熱された加熱空気については循環利用することでローラ301への分離エアーの吹き付けによる加熱ローラ表層の温度低下を防ぐ。
【0073】
また、本実施例においては、第1のエアー分離装置370は、ローラ301の長手方向(回転軸線方向)に沿って3つのファン341を配設している。そして、その各ファン341を、ローラ301の回転駆動力を駆動伝達手段を介して伝達して駆動するようにしている。
【0074】
即ち、図4のように、ファン314はファン軸325がファン314の背面から突出するように設けられ、突出部には駆動プーリー326が取り付けられる。プーリー326にはファン軸325に回転駆動を伝達するためのベルト327が接続される。ベルト327への回転駆動は、加熱ローラ301を回転駆動するための加熱ローラ駆動ギア328から駆動列329(駆動伝達手段)を介して伝達される。これにより、各ファン341に対してローラ301の回転駆動力が駆動伝達手段329を介して伝達されて各ファン341が駆動される。
【0075】
これにより、エアー分離装置370を駆動するための新たな駆動源による消費電力の増大を必要とせず、さらなる画像形成装置の省電力化が可能になる。
【0076】
(4−2)第2のエアー分離装置380
第2のエアー分離装置380は、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端を加圧ローラ303から分離するために、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側からローラ303に向かって空気を吹き付けるエアー吹き出し口313を有する。また、口313にエアーを送るためのファン314とダクト316を有する。口312はローラ303の長手方向を長手とする細長いスリット状の開口である。また、本実施例においては、第2のエアー分離装置380は、ローラ303の長手方向に沿って4つのファン345とダクト317を有する。
【0077】
各ファン345の駆動は本実施例においてはモータ(不図示)で行っている。第1のエアー分離装置370のファン314と同様にローラ301或いはローラ303の駆動力を利用して駆動する構成にすることもできる。各ファン345の駆動により外気がダクト316内に取り込まれて、吹き出し口313から出る。
【0078】
これによって、ニップ部Nよりも記録材搬送方向Zの下流側からローラ303に向かってダクト326内の空気が吹き付けられて、ニップ部Nを通過した記録材Pの先端がローラ303から分離される。口313から出た空気は搬送路319を通る記録材Pの下面にあたって大部分が装置フレーム300の外部に抜け出る。
【0079】
この第2のエアー分離装置380の口313から出す空気も第1のエアー分離装置370のように、ローラ308a・308b或いはローラ301或いはローラ303の熱で暖められた加熱空気を利用する構成にすることもできる。
【0080】
なお、第2のエアー分離装置380は必要に応じて配設すればよく、配設しなくてもよい。回転可能な加熱部材301はローラ体に限られず、エンドレスのベルト体であってもよい。外部加熱部材308a・308bは加熱部材301に非接触で加熱部材301を加熱する部材とすることもできる。また、加圧部材303はローラのような回転体に限られない。加圧パッド部材のような非回転の固定の加圧部材とした装置構成にすることもできる。
【0081】
本発明の画像加熱装置は実施例の定着装置に限られず、記録材に定着された画像を加熱加圧することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等として用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
A・・画像加熱装置、301・・加熱部材、303・・加圧部材、308a・308b・・外部加熱部材、N・・ニップ部、P・・記録材、T・・画像、Z・・記録材搬送方向、370・・エアー分離装置、321・・熱気回収ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な加熱部材と、前記加熱部材に当接して画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱するためのニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材と、前記ニップ部を通過した記録材の先端を前記加熱部材から剥離するために、前記ニップ部よりも記録材搬送方向の下流側から前記加熱部材に向かって空気を吹き付けるエアー分離装置と、を有する画像加熱装置であって、
前記エアー分離装置は、前記外部加熱部材の周辺に生じる加熱空気を回収する熱気回収ダクトを有し、前記熱気回収ダクトによって回収された加熱空気を前記加熱部材に吹き付けるように構成したことを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記エアー分離装置によって前記加熱部材に吹き付けられた加熱空気を前記熱気回収ダクトに戻して循環させるための熱気戻しダクトが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記エアー分離装置は前記加熱部材の駆動力が駆動伝達手段を介して伝達されて駆動されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記外部加熱部材は前記加熱部材に圧接して加熱部材を加熱し、加熱部材よりも高温に制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記熱気回収ダクトは前記加熱部材を含む空間部と前記外部加熱部材を含む空間部とを区画する仕切り板を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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