説明

画像形成方法、画像形成装置、表面性改質シート、熱転写シート

【課題】記録紙の画像上に形成された保護層の表面状態を改質して光沢性、マット調又は絹目調などを与える。
【解決手段】記録紙1を所定方向に搬送する搬送手段2,3,4と、記録紙1表面に画像を形成するための染料層とその画像を保護するための保護材層とが基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シート5を所定方向に走行させる熱転写シート走行手段6,7と、熱転写シート5が記録紙1表面に直接接触するように設けられた印画用開口部と記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部とが基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シート8を移動させる改質シート移動手段9,10と、記録紙1の表面に熱転写シート5又は表面性改質シート8を対向させた状態で熱エネルギを印加して染料層、保護材層を順に記録紙1上に熱転写し、保護層の表面状態を改質するサーマルヘッド11とを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートを用いて被記録媒体に画像を形成すると共にその画像の表面を保護する保護層を形成する画像形成方法及び画像形成装置に関し、詳しくは、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態を改質して光沢性、マット調又は絹目調などを与えようとする画像形成方法及び画像形成装置並びにそれに用いる表面性改質シート、熱転写シートに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置として、熱転写シートの染料層を被記録媒体に転写させて画像を形成する昇華型の装置がある。この装置では、更に、上記被記録媒体に形成された画像の表面を保護するため透明な保護層が画像上に形成される。この保護層は、具体的には、画像劣化の要因となるガスから画像を遮断する機能、紫外線を吸収して画像の変色、退色を防止する機能、画像を形成している染料等が消しゴム等の各種可塑性を含む物品へ移行することを防止する機能、画像の摩耗を防止する機能、皮脂から保護する機能等を有している。
【0003】
上記の保護層は、例えば、リボン状の基材シートに積層して設けられており、サーマルヘッドによって画像上に熱転写される。この画像上に熱転写されることによって、画像の保護の他に、被記録媒体のカール等を防止することができる。また、上記保護層は、サーマルヘッドを用いて熱転写される際、そのサーマルヘッドからの熱エネルギを任意に変化させることにより微小な凹凸パターンを形成し、その表面を任意に光沢性、マット調又は絹目調等に表面加工処理されることもある。
【0004】
そして、従来の画像形成装置は、熱可塑性の基材上に染料を受容する受容層が形成された被記録媒体を搬送し、シート上に染料層と保護層とが走行方向に並んで形成された熱転写シートを走行させ、上記被記録媒体の受容層と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を上記被記録媒体の受容層に熱転写して画像を形成し、この被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護層を上記被記録媒体に形成された画像上に熱転写するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−76332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の画像形成装置における保護層一体型の熱転写シートでは、画像を形成するための染料層は、基材シート上に直接形成されるか、或いは、基材シートとの間に易接着層と呼ばれる接着を安定化させるための層をはさんで形成されている。また、基材シートの裏面(染料層が形成される面とは反対側の面)には、印画時のサーマルヘッドと熱転写シートとの摩擦を下げ、熱転写シートの安定した走行をさせることなどを主目的とした耐熱滑性層が形成されているのが一般的である。
【0006】
一方、画像を保護するための保護層は、被記録媒体に熱転写する際の転写性を考慮して、基材シート上の易接着層の上に剥離層が設けられ、この剥離層を介して基材シート上に形成されている。そして、被記録媒体への保護層の転写時には上記剥離層と保護層との界面で剥離が起こり、剥離層は熱転写シート側に残り、保護層のみが被記録媒体に熱転写されて印画物を保護する。この保護層と剥離層については、これらの界面で剥離がし易いような材料の組合せを用いており、保護層が熱転写シートから被記録媒体に転写される際には、この保護層と上記剥離層との界面で界面剥離がされる。このようにして被記録媒体上に形成された画像では、その最上層に保護層が形成された構成になっており、その表面がある程度平滑であるため、光沢性をもった印画物が得られるとされていた。
【0007】
しかし、上述の保護層の剥離のための剥離層は、基材シート上の易接着層の上に樹脂を塗布及び乾燥により形成したものであるため、平滑性は十分ではない。そして、保護層が熱転写シートから転写された際の剥離面は、上記剥離層表面の平滑性が影響するため、印画物最上層の保護層表面の平滑性も十分ではないものとなる。従って、従来の画像形成装置で得られた印画物では、その光沢性は十分なものではなく、一般的な銀塩写真の光沢性と比べて劣るレベルであった。なお、カラー写真のような自然画像の印画物の場合には、その印画物の表面仕上げとしては、光沢性の要求に加え、マット調又は絹目調などの要求もある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態を改質して光沢性、マット調又は絹目調などを与えようとする画像形成方法及び画像形成装置並びにそれに用いる表面性改質シート、熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による画像形成方法は、被記録媒体を所定方向に搬送するステップと、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させるステップと、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成するステップと、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写するステップと、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させるステップと、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記表面性改質シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記表面性改質シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質するステップと、を行うものである。
【0010】
このような構成により、被記録媒体を所定方向に搬送し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させ、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記表面性改質シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記表面性改質シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質する。
【0011】
また、他の手段による画像形成方法は、被記録媒体を所定方向に搬送するステップと、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させるステップと、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成するステップと、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写するステップと、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記熱転写シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記熱転写シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質するステップと、を行うものである。
【0012】
このような構成により、被記録媒体を所定方向に搬送し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写し、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記熱転写シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記熱転写シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質する。
【0013】
そして、本発明による画像形成装置は、被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させる熱転写シート走行手段と、リボン状の基材シートに、上記熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように設けられた印画用開口部と上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させる改質シート移動手段と、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写するサーマルヘッドと、を備え、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質シートの表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質するものである。
【0014】
このような構成により、搬送手段で被記録媒体を所定方向に搬送し、熱転写シート走行手段により、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、改質シート移動手段により、リボン状の基材シートに、上記熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように設けられた印画用開口部と上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させ、サーマルヘッドにより、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写し、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質シートの表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質する。
【0015】
また、他の手段による画像形成装置は、被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させる熱転写シート走行手段と、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写するサーマルヘッドと、を備え、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質するものである。
【0016】
このような構成により、搬送手段で被記録媒体を所定方向に搬送し、熱転写シート走行手段により、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、サーマルヘッドにより、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写し、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質する。
【0017】
また、本発明による表面性改質シートは、リボン状の基材シートに、画像形成装置の被記録媒体に形成された画像を保護する保護材層の表面状態を改質するための1又は複数種類の表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成されたものである。
【0018】
このような構成により、1又は複数種類の表面性改質部がリボン状の基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを用いて、画像形成装置の被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面に上記表面性改質部を加熱及び加圧して表面状態を改質する。
【0019】
そして、本発明による熱転写シートは、リボン状の基材シートに、画像形成装置の被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための1又は複数種類の表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成されたものである。
【0020】
このような構成により、染料層及び保護材層並びに1又は複数種類の表面性改質部がリボン状の基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを用いて、画像形成装置の被記録媒体表面に上記染料層を熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体表面に形成された画像の表面に上記保護材層を熱転写してその画像を保護し、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面に上記表面性改質部を加熱及び加圧して表面状態を改質する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る画像形成方法によれば、被記録媒体を所定方向に搬送し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させ、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記表面性改質シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記表面性改質シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質することができる。そして、上記表面性改質シートの表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0022】
そして、請求項2に係る発明によれば、熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように印画用開口部が設けられた表面性改質シートにより、この印画用開口部をサーマルヘッドの位置に移動させて、その印画用開口部を利用して熱転写シートと被記録媒体とを直接接触させて画像を形成することができる。
【0023】
また、請求項3に係る発明によれば、サーマルヘッドによって表面性改質シートの表面性改質部を加熱するのは、熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍の温度で加熱することにより、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層は、やや軟化した状態にて表面性改質部と密着した状態となるため、保護層の表面状態を表面性改質部の接触面の表面状態にならった表面性に改質することができる。
【0024】
さらに、請求項4に係る発明によれば、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることにより、表面光沢性の良好な印画物を得ることができる。
【0025】
さらにまた、請求項5に係る発明によれば、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることにより、マット調又は絹目調などの表面状態に仕上げた印画物を得ることができる。
【0026】
また、請求項6に係る画像形成方法によれば、被記録媒体を所定方向に搬送し、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写し、上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記熱転写シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記熱転写シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質することができる。そして、上記熱転写シートの表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0027】
そして、請求項7に係る発明によれば、サーマルヘッドによって熱転写シートの表面性改質部を加熱するのは、該熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍の温度で加熱することにより、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層は、やや軟化した状態にて表面性改質部と密着した状態となるため、保護層の表面状態を表面性改質部の接触面の表面状態にならった表面性に改質することができる。
【0028】
また、請求項8に係る発明によれば、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることにより、表面光沢性の良好な印画物を得ることができる。
【0029】
さらに、請求項9に係る発明によれば、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることにより、マット調又は絹目調などの表面状態に仕上げた印画物を得ることができる。
【0030】
また、請求項10に係る画像形成装置によれば、搬送手段で被記録媒体を所定方向に搬送し、熱転写シート走行手段により、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、改質シート移動手段により、リボン状の基材シートに、上記熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように設けられた印画用開口部と上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させ、サーマルヘッドにより、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写し、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質シートの表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質することができる。そして、上記表面性改質シートの表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0031】
そして、請求項11に係る発明によれば、リボン状の基材シートの表面に1色又は複数色の染料層と保護材層とが順次形成され、各染料層及び保護材層の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられた熱転写シートについて、その位置検出マークを、熱転写シートの走行経路の途中に備えられた検出手段で検出することができる。したがって、熱転写シートに形成された染料層と保護材層との位置を検出して、所望の染料層又は保護材層をサーマルヘッドの位置に合わせることができる。
【0032】
また、請求項12に係る発明によれば、リボン状の基材シートの表面に被記録媒体に形成された保護層について1又は異なる表面状態に改質するための1又は複数種類の表面性改質部が順次形成され、印画用開口部及び各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられた表面性改質シートについて、その位置検出マークを、表面性改質シートの移動経路の途中に備えられた検出手段で検出することができる。したがって、表面性改質シートに形成された印画用開口部と表面性改質部との位置を検出して、印画用開口部又は所望の表面性改質部をサーマルヘッドの位置に合わせることができる。
【0033】
さらに、請求項13に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与える表面性改質シートの表面性改質部により、上記保護層の表面状態に光沢性を与えて印画物の表面状態を光沢仕上げとすることができる。
【0034】
さらにまた、請求項14に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げる表面性改質シートの表面性改質部により、上記保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げて印画物の表面状態をマット調又は絹目調仕上げとすることができる。
【0035】
また、請求項15に係る画像形成装置によれば、搬送手段で被記録媒体を所定方向に搬送し、熱転写シート走行手段により、リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させ、サーマルヘッドにより、上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写し、上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質することができる。そして、上記熱転写シートの表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0036】
そして、請求項16に係る発明によれば、リボン状の基材シートの表面に1色又は複数色の染料層と保護材層と1又は複数種類の表面性改質部とが順次形成され、各染料層及び保護材層並びに各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられた熱転写シートについて、その位置検出マークを、熱転写シートの走行経路の途中に備えられた検出手段で検出することができる。したがって、熱転写シートに形成された染料層及び保護材層並びに表面性改質部の位置を検出して、所望の染料層又は保護材層又は表面性改質部をサーマルヘッドの位置に合わせることができる。
【0037】
また、請求項17に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与える熱転写シートの表面性改質部により、上記保護層の表面状態に光沢性を与えて印画物の表面状態を光沢仕上げとすることができる。
【0038】
さらに、請求項18に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げる熱転写シートの表面性改質部により、上記保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げて印画物の表面状態をマット調又は絹目調仕上げとすることができる。
【0039】
また、請求項19に係る表面性改質シートによれば、リボン状の基材シートの長手方向に並んで形成された1又は複数種類の表面性改質部を、画像形成装置の被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面に、画像形成装置のサーマルヘッドにより加熱及び加圧して上記保護層の表面状態を改質することができる。そして、上記表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0040】
そして、請求項20に係る発明によれば、リボン状の基材シートの長手方向に順次形成された印画用開口部及び1又は複数種類の表面性改質部の近傍にそれぞれ設けられた位置検出マークを利用して、表面性改質シートに形成された印画用開口部及び各表面性改質部の位置を検出することができる。
【0041】
また、請求項21又は22に係る発明によれば、画像形成装置の熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍にて耐熱性を有する樹脂フィルムから成る表面性改質部を、サーマルヘッドにより加熱しても、その加熱によって表面性改質部が劣化せずに上記保護層の表面状態を改質することができる。
【0042】
さらに、請求項23に係る発明によれば、画像形成装置の熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍にて該保護材層の表面と非接着となるように離型処理が施された表面性改質部を、サーマルヘッドにより加熱しても、表面性改質部を上記保護層の表面から剥離することができる。
【0043】
さらにまた、請求項24に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与える表面性改質部により、上記保護層の表面状態に光沢性を与えて印画物の表面状態を光沢仕上げとすることができる。
【0044】
さらに、請求項25に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げる表面性改質部により、上記保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げて印画物の表面状態をマット調又は絹目調仕上げとすることができる。
【0045】
また、請求項26に係る熱転写シートによれば、リボン状の基材シートの長手方向に並んで形成された染料層及び保護材層並びに1又は複数種類の表面性改質部を、画像形成装置のサーマルヘッドを用いて、被記録媒体表面に上記染料層を熱転写して画像を形成し、上記被記録媒体表面に形成された画像の表面に上記保護材層を熱転写してその画像を保護し、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面に上記表面性改質部を加熱及び加圧して表面状態を改質することができる。そして、上記表面性改質部の種類によって、上記保護層の表面状態に光沢性、マット調又は絹目調などを与えて印画物の表面状態を改質することができる。
【0046】
そして、請求項27に係る発明によれば、リボン状の基材シートの表面に順次形成された1色又は複数色の染料層と保護材層と1又は複数種類の表面性改質部の近傍にそれぞれ設けられた位置検出マークを利用して、熱転写シートに形成された各染料層及び保護材層並びに各表面性改質部の位置を検出することができる。
【0047】
また、請求項28に係る発明によれば、表面性改質部を基材シート自体の露出部分とすることにより、表面性改質部の材料を節減できると共に熱転写シートの製造を容易とすることができる。
【0048】
さらに、請求項29に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与える表面性改質部により、上記保護層の表面状態に光沢性を与えて印画物の表面状態を光沢仕上げとすることができる。
【0049】
さらにまた、請求項30に係る発明によれば、被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げる表面性改質部により、上記保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げて印画物の表面状態をマット調又は絹目調仕上げとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による画像形成方法に用いる画像形成装置の第1の実施形態を示す概要図である。この画像形成装置(例えば、サーマルプリンタ)は、熱転写シートを用いて被記録媒体に画像を形成すると共にその画像の表面を保護する保護層を形成するもので、記録紙1を保持するプラテンローラ2と、ピンチローラ3と、キャプスタンローラ4と、熱転写シート5の供給リール6と、巻取りリール7と、表面性改質シート8の供給リール9と、巻取りリール10と、サーマルヘッド11とを備えている。なお、以下の説明においては、ロール状に巻かれた記録紙1に画像を形成(以下「印画」と言う場合がある。)する場合について述べる。
【0051】
上記記録紙1は、上記画像形成装置において画像を形成する被記録媒体となるもので、例えば昇華転写用印画紙等から成る。ここで、プラテンローラ2は、印画時に記録紙1を保持するものである。また、上記ピンチローラ3とキャプスタンローラ4とは、記録紙1を挟んで互いに反対方向に同期回転して該記録紙1を所定方向に給送し、又はそれと反対方向に巻き戻すものである。そして、上記プラテンローラ2とピンチローラ3とキャプスタンローラ4と図示省略のローラ駆動機構とで、記録紙1を所定方向に搬送する搬送手段を構成している。
【0052】
なお、後の説明の便宜のために、上記記録紙1の搬送方向を以下のように定義する。すなわち、画像が形成された記録紙1が画像形成装置から外に出力されるために搬送される順方向Aを「下流側」、その逆方向Bを「上流側」と定義する。
【0053】
熱転写シート5は、上記画像形成装置において記録紙1の表面に染料を熱転写して画像を形成するもので、図2に示すように、リボン状の基材シート12に、上記記録紙1の表面に熱転写されて画像を形成するための1色又は複数色の染料層13と、該記録紙1の表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層14とが、該基材シート12の長手方向に並んで形成されており、通常、インクリボンと呼ばれるものである。なお、上記保護材層14は、記録紙1の表面に形成された画像の耐摩耗性、耐薬品性などを向上させるものである。また、その保護材層14に紫外線吸収剤を添加することにより、画像の耐光性を向上させることも可能である。さらに、保護材層14としては、ポリスチレン樹脂などの従来公知の熱可塑性樹脂を用いることが可能であり、また保護材層14を構成する層のひとつとして、上記記録紙1及びその表面に形成された画像表面への保護材層14の接着性を良好にするための接着層を、その上部層(保護材層としての最上層)に設けた複数層からなる構成とすることも可能である。なお、本実施例では、ポリスチレン樹脂及びその上層のアクリル変性樹脂からなる2層構造の保護材層14を用いている。
【0054】
すなわち、図2(b)において、リボン状の基材シート12の裏面側には耐熱滑性層15が形成され、該基材シート12の表面側には易接着層16が形成されており、この易接着層16の上に、記録紙1の表面に昇華転写又は溶融転写等により画像を形成する例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の染料層13y,13m,13cと、上記記録紙1の表面に形成された画像を保護する保護材層14とが、所定の厚さで面順次に形成されている。なお、上記保護材層14の下面と易接着層16との間には、剥離層17が介在されている。そして、図2(a)に示すように、これらの染料層13y,13m,13cと保護材層14との4つの領域を1つの構成単位として、これらの構成単位を用いて1枚のカラー画像若しくは白黒画像を形成することになり、複数枚の印画が可能なように、熱転写シート5の長手方向(巻き方向)に沿ってこれらの構成単位が繰返し形成されている。なお、染料層13としては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)以外にブラック(Bk)を追加して備えてもよいし、或いは、ブラック(Bk)のみであってもよい。
【0055】
なお、図2において、符号18yはイエロー(Y)の染料層13yの先頭位置を示し、符号19yはその染料層13yの後尾位置を示している。また、符号18mはマゼンタ(M)の染料層13mの先頭位置を示し、符号19mはその染料層13mの後尾位置を示している。さらに、符号18cはシアン(C)の染料層13cの先頭位置を示し、符号19cはその染料層13cの後尾位置を示している。さらにまた、符号18Lは保護材層14の先頭位置を示し、符号19Lはその保護材層14の後尾位置を示している。
【0056】
さらに、図2において、符号21yは上記染料層13y,13m,13cと保護材層14との4つの領域を組み合わせて1つの構成単位とした領域全体の先頭である染料層13yの位置を検出するために該染料層13yの近傍に設けられたインク位置検出マークを示し、符号21mは染料層13mの位置を検出するために該染料層13mの近傍に設けられたインク位置検出マークを示し、符号21cは染料層13cの位置を検出するために該染料層13cの近傍に設けられたインク位置検出マークを示し、符号21Lは保護材層14の位置を検出するために該保護材層14の近傍に設けられた保護材層位置検出マークを示している。さらに、符号21y’は複数の染料層13と保護材層14とからなる1つの構成単位に続く次の構成単位の先頭である染料層13yの位置を検出するために該染料層13yの近傍に設けられた他のインク位置検出マークを示している。
【0057】
なお、上記それぞれの位置検出マークは、リボン状の基材シート12を横断して形成された線状のマーキングであり、例えば、構成単位の先頭である染料層13yの位置を示すインク位置検出マーク21y,21y’は2本の線からなり、各染料層13m,13cの位置を示すインク位置検出マーク21m,21c及び保護材層14の位置を示す保護材層位置検出マーク21Lは1本の線からなっている。
【0058】
このように構成された熱転写シート5は、図1に示すように、供給リール6と巻取りリール7との間に張り渡されて図示省略のリボンカセットに収納されており、該リボンカセットが装置本体内に着脱可能となっている。そして、上記リボンカセットが装置本体内に装着されると、熱転写シート5は、プラテンローラ2とサーマルヘッド11とに挟まれて記録紙1の搬送に同期して矢印C方向に走行されるようになっている。ここで、上記供給リール6と巻取りリール7とで、熱転写シート5を所定方向に走行させる熱転写シート走行手段を構成している。なお、上記熱転写シート5、供給リール6及び巻取りリール7は、必ずしもリボンカセットに収納されていなくてもよく、それぞれを装置本体の所定位置にセットして動作させるような構成であっても構わない。
【0059】
そして、上記熱転写シート走行手段による熱転写シート5の走行経路の途中には、光センサ22が設けられている。この光センサ22は、上記熱転写シート5の各種の位置検出マーク21y,21y’;21m,21c,21Lを検出する検出手段となるもので、図1に示すように、記録紙1への印画時におけるサーマルヘッド11の位置から矢印Cで示す走行方向に予め定められた距離だけ離れた位置に配設されている。これにより、上記各種の位置検出マーク21y,21y’;21m,21c,21Lが検出されたとき、図2に示す各染料層13y,13m,13c及び保護材層14の位置がサーマルヘッド11の記録部位に一致することになる。
【0060】
表面性改質シート8は、上記画像形成装置において記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するもので、図3に示すように、リボン状の基材シート23に、上記熱転写シート5が記録紙1表面に直接接触するように設けられた印画用開口部24と、上記記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部25a,25b,25cとが、該基材シート23の長手方向に並んで形成されている。
【0061】
上記基材シート23は、それ自体が記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部材となるもので、所定の長さのリボン状に形成されている。そして、この基材シート23は、前記画像形成装置の熱転写シート5の保護材層14のガラス転移温度(Tg)近傍にて耐熱性を有する樹脂フィルムから成り、例えばポリイミドフィルムから成る。具体的には、厚さ25μm程度のユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)というポリイミドフィルムを用いればよい。このポリイミドフィルムの表面性は極めて平滑であるため、記録紙1に形成された画像の保護層の表面状態はこのポリイミドフィルムの表面状態にならって平滑な状態となる。
【0062】
また、上記基材シート23の表面性改質部25a,25b,25cは、画像形成装置の熱転写シート5の保護材層14のガラス転移温度(Tg)近傍にて、記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面と非接着となるように離型処理が施されていることが望ましい。これにより、記録紙1に形成された画像の保護層の表面改質処理後において表面性改質シート8を剥離する際に、上記保護層内部での凝集破壊などによる剥離不良が起きることはなく、記録紙1の保護層と表面性改質部25a,25b,25cとの界面での良好な界面剥離が可能となる。したがって、表面改質処理後の記録紙1に形成された画像の保護層表面は極めて良好な仕上がり状態となる。
【0063】
なお、上記基材シート23は、上述のユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)に限られず、例えばカプトン(商標名:デュポン社製)などの他のポリイミドや、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの表面改質処理時の温度において十分な耐熱性をもつスーパーエンジニアリングプラスチック材料や、エンジニアリングプラスチック材料などを用いてもよい。
【0064】
上記印画用開口部24は、記録紙1に画像を形成する際に上記熱転写シート5が記録紙1表面に直接接触するようにさせるもので、例えば平面形状が矩形状に形成され、基材シート23の幅方向に延びる幅W(図3(a)参照)はサーマルヘッド11の主走査方向(図1の紙面に垂直な方向)の長さよりもやや大きめになっており、基材シート23の長手方向に延びる長さL(図3(a)参照)はサーマルヘッド11の副走査方向(図1の紙面に平行な方向)の幅よりもやや大きめになっている。これにより、記録紙1の通常の印画時及び保護層形成時には、印画紙1に対して熱転写シート5を介してサーマルヘッド11が押し付けられ、印画紙1及び熱転写シート5を移動させながらサーマルヘッド11を用いて画像を形成し、更にその上に保護層を形成する印画動作を行うことができる。
【0065】
なお、上記印画用開口部24の幅Wや長さLは、必ずしもサーマルヘッド11の主走査方向の長さや副走査方向の幅よりも大きめでなくてもよく、例えば、少なくともサーマルヘッド11において印画用ヒータ(図示省略)の形成部及びその周囲の凸状のグレーズ26が形成された領域よりも幅及び長さがそれぞれ大きめになっていればよい。
【0066】
上記表面性改質部25a,25b,25cは、記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するもので、例えば各保護層について異なる表面状態に改質するために複数種類のものが、上記印画用開口部24に隣接して順次形成されている。例えば、第1の表面性改質部25aは光沢性を与える光沢仕上げ用であり、第2の表面性改質部25bはマット調仕上げ用であり、第3の表面性改質部25cは質感の異なるマット調仕上げ用(或いは絹目調仕上げ用)である。なお、改質する表面状態の種類数や配列順などは以上のものに限られず、例えば、いずれか1個だけの表面性改質部を設けてもよいし、記録紙1に形成された画像の保護層の表面改質処理で使用される頻度の予想に応じて、例えば光沢仕上げ用のもののみを複数箇所配置してもよい。
【0067】
なお、図3において、符号27aは第1の表面性改質部25aの先頭位置を示し、符号28aは該表面性改質部25aの後尾位置を示している。また、符号27bは第2の表面性改質部25bの先頭位置を示し、符号28bは該表面性改質部25bの後尾位置を示している。さらに、符号27cは第3の表面性改質部25cの先頭位置を示し、符号28cは該表面性改質部25cの後尾位置を示している。
【0068】
さらに、図3において、符号29は上記印画用開口部24の先頭位置を検出するために該印画用開口部24の近傍に設けられた開口部位置検出マークを示し、符号30aは上記第1の表面性改質部25aの先頭位置を検出するために該表面性改質部25aの近傍に設けられた改質部位置検出マークを示し、符号30bは上記第2の表面性改質部25bの先頭位置を検出するために該表面性改質部25bの近傍に設けられた改質部位置検出マークを示し、符号30cは上記第3の表面性改質部25cの先頭位置を検出するために該表面性改質部25cの近傍に設けられた改質部位置検出マークを示している。
【0069】
なお、上記それぞれの位置検出マーク29,30a,30b,30cは、基材シート23に所定の大きさの貫通穴を形成したマーキング穴から成る。ここで、開口部位置検出マーク29は2個のマーキング穴から成り、各改質部位置検出マーク30a,30b,30cは1個のマーキング穴の位置を変えて区別している。
【0070】
このように構成された表面性改質シート8は、図1に示すように、供給リール9と巻取りリール10との間に張り渡されており、装置本体内に着脱可能となっている。そして、上記供給リール9及び巻取りリール10の間に張り渡された表面性改質シート8が装置本体内に装着されると、該表面性改質シート8は、前記熱転写シート5と共にプラテンローラ2とサーマルヘッド11とに挟まれて記録紙1の搬送に同期して矢印D,E方向に移動されるようになっている。ここで、上記供給リール9と巻取りリール10とで、表面性改質シート8を移動させる改質シート移動手段を構成している。
【0071】
そして、上記改質シート移動手段による表面性改質シート8の移動経路の途中には、メカニカルセンサ31が設けられている。このメカニカルセンサ31は、上記表面性改質シート8の各種の位置検出マーク29,30a,30b,30cを検出する検出手段となるもので、図1に示すように、記録紙1への印画時におけるサーマルヘッド11の位置から矢印Dで示す移動方向に予め定められた距離だけ離れた位置に配設されている。これにより、上記各種の位置検出マーク29,30a,30b,30cが検出されたとき、図3に示す印画用開口部24及び第1〜第3の表面性改質部25a,25b,25cの位置がサーマルヘッド11の記録部位に一致することになる。
【0072】
ここで、上記メカニカルセンサ31の具体的な構造及び動作について、図4〜図6を参照して説明する。図4は、図1に示す画像形成装置に対応する具体的な機構を示す構造図であり、同一箇所には同一の符号を付している。メカニカルセンサ31は、例えばサーマルプリンタの筐体(図示省略)に取り付けられたセンサ基板35に組み付けられている。そして、上記メカニカルセンサ31が表面性改質シート8の表面に接触する先端部には、支軸36で支持されたコロ37が回転可能に設けられている。
【0073】
図5は、上記センサ基板35に組み付けられたメカニカルセンサ31の内部構造を示す上面図(a)及び正面図(b)である。センサ基板35には、例えば細長板状のアクチュエータ38が一側方に偏った支点軸39によって揺動可能に支持されている。このアクチュエータ38の一側端、例えば左側端には、支軸36で支持されてコロ37が表面性改質シート8の移動に従動して、回転可能に設けられている。この場合、図5(a)に示すように、上記アクチュエータ38及びコロ37は、表面性改質シート8に設けられた各改質部位置検出マーク30a,30b,30cが上記表面性改質シート8の移動に伴って通過する経路上に位置するように設けられている。また、図5(b)に示すように、上記支点軸39はアクチュエータ38の右側方に偏った状態で支持しているので、該アクチュエータ38は、その自重及びコロ37の重量によるバランスによって左側端が力Fで下方に付勢されている。この付勢力は、上記表面性改質シート8が変形しない程度の大きさとされている。なお、必要に応じて、適度の強さのバネを付加して付勢させてもよい。
【0074】
上記アクチュエータ38の他側端部、例えば右側端部の両サイドには、図5(a)に示すように、発光ダイオードなどの発光部40aと、フォトセンサなどの受光部40bとが設けられている。そして、上記発光部40aと受光部40bとを結ぶ光軸の途中に、上記アクチュエータ38の例えば右側端部が揺動して遮るようになっている。この状態で、上記アクチュエータ38とコロ37と発光部40a及び受光部40bとで、メカニカルセンサ31を構成している。
【0075】
次に、このように構成されたメカニカルセンサ31の動作について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、図3に示す表面性改質シート8の第1の表面性改質部25aの先頭位置を検出するための改質部位置検出マーク30aを検出する前の状態を示しており、上記メカニカルセンサ31のコロ37は、表面性改質シート8の矢印E方向の移動に伴って、その表面に接触して従動回転している。このときは、図5(b)に示すように、アクチュエータ38の例えば右側端部は揺動せず、上記発光部40aと受光部40bとを結ぶ光軸を遮ってはいない。
【0076】
上記表面性改質シート8の矢印E方向の移動に伴って、図6(b)に示すように、メカニカルセンサ31のコロ37の位置に上記改質部位置検出マーク30aが進んでくると、図5(b)に示す付勢力Fによって上記コロ37が、該改質部位置検出マーク30aとしてのマーキング穴内に落ち込む。これにより、アクチュエータ38の右側端部が矢印Uのように上向きに揺動して、図6(a)に示す発光部40aと受光部40bとを結ぶ光軸を遮る。これにより、メカニカルセンサ31の位置に改質部位置検出マーク30aが進んできたことを検出し、表面性改質シート8の第1の表面性改質部25aの先頭位置を検出することができる。
【0077】
なお、上記位置検出マーク29,30a,30b,30cとメカニカルセンサ31との組合せは、それぞれの位置を検出する機能があればよく、その他の手段の組合せでもよい。例えば、位置検出マーク29,30a,30b,30cは、貫通穴ではなく基材シート23の表面に印刷された遮光マークとし、メカニカルセンサ31を光透過センサに変えてこれらを組み合わせてもよい。或いは、遮光マークと、反射センサ又は反射板との組み合わせであってもよい。また、上記基材シート23が遮光性の高いものの場合には、貫通穴と光透過センサとの組合せでもよい。
【0078】
図7は、上記表面性改質シート8の他の実施例を示す説明図である。この実施例は、複数の表面性改質部25a,25b,25cの間に、複数個の印画用開口部24a,24bを設けたものである。図7においては、表面性改質部と印画用開口部とが交互に配置され、第1の印画用開口部24aが表面性改質部25a又は25bに隣接し、第2の印画用開口部24bが表面性改質部25b又は25cに隣接している。なお、図7において、符号29aは第1の印画用開口部24aの先頭位置を検出するために該印画用開口部24aの近傍に設けられた開口部位置検出マーク(2個のマーキング穴)を示し、符号29bは第2の印画用開口部24bの先頭位置を検出するために該印画用開口部24bの近傍に設けられた開口部位置検出マーク(3個のマーキング穴)を示している。
【0079】
この実施例の場合は、記録紙1の印画時にはこれらの印画用開口部24a,24bの中から、記録紙1に形成された画像の表面状態の改質種類に応じて適宜都合のよい方を選択することができる。例えば、複数の画像の印画を行う場合において、表面状態の改質が質感の異なるマット調仕上げ(25c)のものを連続して処理したい場合には、第3の表面性改質部25cを用いて質感の異なるマット調仕上げの1枚目の表面性改質処理を行った後に、次の印画を行う際には、上記第3の表面性改質部25cに隣接した第2の印画用開口部24bを選んで印画するようにすれば、表面性改質シート8の移動量が少なくてすみ、時間的に効率的である。
【0080】
なお、この実施例の場合も、改質シート移動手段による表面性改質シート8の移動経路の途中には、メカニカルセンサ31が設けられている。このメカニカルセンサ31の具体的な構造及び動作は、図4〜図6を参照して説明したのと同じである。
【0081】
図3及び図7の実施例では、表面性改質シート8は、基材シート23単体から成るものとして説明したが、これに限られず、上記基材シート23に対して適宜補強部材を用いて補強してもよい。例えば、上記印画用開口部24が形成された部分及び印画時にサーマルヘッド11のヒータ部が熱転写シート5を介して当たる表面性改質部25a,25b,25c以外の部分に、金属製の補強層を設けたり、その部分の基材シート23を部分的に厚くするなどしてもよい。
【0082】
図8は、例えば図3に示す表面性改質シート8を製造する際の工程を示す説明図である。まず、図8(a)は、図3において光沢仕上げ用の第1の表面性改質部25aとなる基材シート23aを示す平面図であり、図8(b)は、図8(a)のF−F線断面図である。この実施例は、基材シート23a単体から成るものであり、この基材シート23a単体としては、例えば前述のユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)などのポリイミドを用いて第1の表面性改質部25aを形成する部材を準備する。
【0083】
次に、図8(c)は、図3においてマット調仕上げ用の第2の表面性改質部25bとなる基材シート23bを示す平面図であり、図8(d)は、図8(c)のG−G線断面図である。この実施例は、基材シート23b単体から成るものであり、この基材シート23b単体としては、例えば前述のユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)などのポリイミドを用いて、サンドブラストによる表面加工を行って所定の凹凸表面を形成した状態で、第2の表面性改質部25bを形成する部材を準備する。なお、上記のサンドブラストによる表面加工の際の処理条件(例えばサンドブラストに用いる粒子の材質や粒径、吹きつけ圧力、その他の条件)を適宜選択することにより、異なる質感をもつマット調仕上げ用(25c)に対応した第3の表面性改質部25cを形成する部材を準備することも可能である。
【0084】
また、上記第2の表面性改質部25b又は第3の表面性改質部25cを形成する部材の他の製造例としては、基材シート23bの表面に意図的に凹凸を形成した、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシート部材を用いることも可能である。これは、例えばシート部材を形成するためのペレットに対してフィラーを練りこんだものを用いてシート部材を形成することにより製造可能であり、練りこむフィラーのサイズや添加量などを適宜調整することで、マット調仕上げ用(25b)や質感の異なるマット調仕上げ用(25c)に対応した表面性改質部を形成することが可能である。
【0085】
さらに、上記第2の表面性改質部25b又は第3の表面性改質部25cを形成する部材の他の製造例としては、図9に示すように、仕上げ状態の仕様に応じて、例えば機械加工やエッチングや放電加工などの従来公知の方法にて所定の凹凸パターンが形成されたエンボスローラなどの型部材32を用い、その所定の凹凸パターンを例えばPETなどの熱可塑性樹脂からなる基材シート23bにその表面形状を転写してもよい。
【0086】
ここで、図9(a)は、図3においてマット調仕上げ用の第2の表面性改質部25bとなる基材シート23bを示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のG−G線断面図である。図9(c)は、図9(b)に示す基材シート23bの表面にエンボスローラなどの型部材32を押し付けて凹凸パターンを転写する状態を示す、図9(a)のG−G線を切断面とする断面図である。図9(d)は、上記凹凸パターンが転写された状態の基材シート23bを示す平面図であり、図9(e)は、図9(d)のG−G線断面図である。
【0087】
次に、図8(e)は、図8(a)に示す第1の表面性改質部25aを形成する部材となる基材シート23aの一部に印画用開口部24を形成した状態を示す平面図であり、図8(f)は、図8(e)のF−F線断面図である。この実施例は、上記基材シート23aの一部に、印画用開口部24と同じ大きさの打ち抜き部材を押し当てて該基材シート23aの肉を打ち抜いたものである。
【0088】
そして、図8(g)は、図8(e)に示す第1の表面性改質部25aを形成する部材となる基材シート23aの一部に印画用開口部24を形成した部材に、図8(c)に示すマット調仕上げ用の第2の表面性改質部25bとなる基材シート23bをつなぎ合わせた状態を示す平面図であり、図8(h)は、図8(g)のH−H線断面図である。この実施例は、上記基材シート23aの一端縁と基材シート23bの対向縁とを接着剤等でつなぎ合わせたものであり、これにより1枚のシート部材において、例えば印画用開口部24と第1の表面性改質部25aと第2の表面性改質部25bとを一体的に有する表面性改質シート8が製造される。
【0089】
なお、図8の実施例では、一の基材シート23aに印画用開口部24に対応する打ち抜き部を形成した後に複数の基材シート23a,23bをつなぎ合わせているが、これとは逆に複数の基材シート23a,23bをつなぎ合わせて一体化させた後に、一の基材シート23aに印画用開口部24を形成してもよい。また、図3に示す位置検出マーク29,30a,30b,30c(マーキング穴)は、個別の基材シート23a,23bの状態で形成してもよいが、上述のように複数の基材シート23a,23bをつなぎ合わせて一体化させた後に印画用開口部24を形成する場合には、この印画用開口部24を形成する際に同時に打ち抜きなどにより形成してもよい。
【0090】
以上の説明は、例えば図3に示す表面性改質シート8を製造する際の工程を示すものであるが、図3において第1の表面性改質部25a、第2の表面性改質部25b及び第3の表面性改質部25cの三つを共に有する表面性改質シート8も同様にして製造できる。また、図7に示す複数個の印画用開口部24a,24bを有する表面性改質シート8も、同様の考え方で複数の基材シートをつなぎ合わせて製造することができる。
【0091】
サーマルヘッド11は、上記記録紙1の表面に上記熱転写シート5の染料層13又は保護材層14を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層13と保護材層14とを順に記録紙1上に熱転写するもので、多数の発熱素子を熱転写シート5の走行方向(矢印C方向)と略直交する方向に一直線状に並べて有し、入力される画像データに基づいて上記発熱素子を個別に駆動して熱エネルギを発生させ、該熱エネルギによって熱転写シート5の各染料層13y,13m,13c及び保護材層14を加熱するようになっている。
【0092】
そして、上記サーマルヘッド11は、図示省略のヘッド駆動機構によって駆動されて、図1に示す矢印J,K方向に移動するようになっている。この場合、印画時には、サーマルヘッド11は、矢印J方向に前進して熱転写シート5を裏面から押し上げ、該熱転写シート5をプラテンローラ2の外周面に沿って搬送される記録紙1と共にプラテンローラ2に押圧する。また、待機中や記録紙1を逆方向Bの上流側に巻き戻すときには、サーマルヘッド11は、矢印K方向に後退する。
【0093】
ここで、本発明においては、上記記録紙1に熱転写シート5を用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質シート8の表面性改質部25a,25b又は25cを上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッド11により加熱及び加圧し、上記記録紙1に形成された保護層の表面状態を改質するようになっている。例えば、記録紙1に形成された保護層の表面状態に光沢性を与えたり、マット調又は絹目調に仕上げるものである。
【0094】
次に、以上のように構成された画像形成装置を使用して行う画像形成方法について説明する。まず、図1において、図示省略のローラ駆動機構により、プラテンローラ2とピンチローラ3とキャプスタンローラ4とを駆動して、記録紙1を所定方向に搬送するステップを行う。これにより、記録紙1に画像を形成する位置の頭出しを行う。このとき、初期状態においては、前記供給リール9と巻取りリール10とで構成される改質シート走行手段の動作により表面性改質シート8を所定方向に走行させて、サーマルヘッド11において印画用ヒータ及びその周囲のグレーズ26が形成された記録部位に、図3又は図7に示す印画用開口部24が位置するように設定される。
【0095】
次に、前記供給リール6と巻取りリール7とで構成される熱転写シート走行手段の動作により熱転写シート5を矢印C方向に走行させるステップを行う。これにより、上記記録紙1に対して画像を形成する位置に、図2に示す熱転写シート5の各染料層13y,13m,13cのいずれか1つの領域が一致する。このとき、図1に示す光センサ22により、上記熱転写シート5のインク位置検出マーク21y,21m,21cを検出して位置合わせを行う。
【0096】
次に、上記記録紙1と上記熱転写シート5のいずれかの染料層13y,13m,13cとを対向させた状態でサーマルヘッド11を矢印J方向に前進させ、熱転写シート5を裏面から押し上げてプラテンローラ2に押圧しながら上記サーマルヘッド11によって熱エネルギを印加し、上記熱転写シート5の染料層13y,13m,13cを記録紙1の表面に熱転写して画像を形成するステップを行う。これにより、記録紙1に対して所望の染料層13y,13m,13cによって画像が形成される。
【0097】
次に、上記記録紙1に形成された画像と上記熱転写シート5の保護材層14とを対向させた状態で上記サーマルヘッド11によって熱エネルギを印加し、上記熱転写シート5の保護材層14を記録紙1に形成された画像上に熱転写するステップを行う。このとき、前述と同様にして、熱転写シート走行手段の動作により熱転写シート5を矢印C方向に走行させると共に、光センサ22により上記熱転写シート5のインク位置検出マーク21y,21m,21c及び保護材層位置検出マーク21Lを検出して保護材層14の位置を記録紙1に形成された画像に位置合わせするステップを同時に行う必要がある。この保護材層14の熱転写により、図10(a)に示すように、記録紙1の表面に形成された画像33の表面に保護層34が形成される。この状態では、保護層34の表面状態はまだ改質されておらず、光沢性は十分ではない。
【0098】
上記記録紙1の画像33の表面に保護層34が形成された直後は、図1に示すサーマルヘッド11の記録部位には、図2に示す熱転写シート5の保護材層14が転写された後の後尾位置19Lが位置している。そこで、熱転写シート走行手段の動作により、上記熱転写シート5を保護材層14が転写される前の位置、すなわち先頭位置18Lまで巻き戻す。このとき、図3に示す表面性改質シート8は、上記サーマルヘッド11の記録部位には、印画用開口部24が位置している。
【0099】
次に、前記供給リール9と巻取りリール10とで構成される改質シート移動手段の動作により表面性改質シート8を矢印D又はE方向に移動させるステップを行う。
【0100】
その後、上記記録紙1の画像33上に形成された保護層34と上記表面性改質シート8の表面性改質部25a,25b,25cのいずれか1つとを位置合わせして上記サーマルヘッド11によって加熱及び加圧し、冷却後に上記表面性改質シート8を剥離して上記保護層34の表面状態を改質するステップを行う。すなわち、図10(b)に示すように、記録紙1の画像33の表面に形成された保護層34の位置に、図3に示す表面性改質シート8のうち例えば光沢仕上げ用の第1の表面性改質部25aを選択して位置合わせする。このとき、図1に示すメカニカルセンサ31により、上記表面性改質シート8の各種の位置検出マーク29,30a,30b,30cを検出して位置合わせを行う。
【0101】
この状態では、熱転写シート5における転写済みの保護材層14(図示省略)の位置と、表面性改質シート8の第1の表面性改質部25aと、記録紙1の画像33上に保護層34が形成された位置とが重なっている。これに対して図1に示すサーマルヘッド11を矢印J方向に前進させ、図10(c)に示すように、通常の印画時と同様にサーマルヘッド11とプラテンローラ2とにより加圧し、約70〜120℃程度に加熱した状態で、熱転写シート5及び表面性改質シート8及び記録紙1を移動させながら表面改質処理を行う。
【0102】
上記表面改質処理が行われた後、プラテンローラ2の回転と共に熱転写シート5及び表面性改質シート8及び記録紙1が下流側に移動してサーマルヘッド11から離れ、温度が下がって冷却された状態で表面性改質シート8が記録紙1から剥離する。これにより、図10(d)に示すように、図10(a)に示す保護層34の表面状態が改質されて、例えば光沢性を与えた保護層34’が形成された印画物が得られる。
【0103】
なお、図10の説明では、表面改質処理時に用いる熱転写シート5上の領域は転写済みの保護材層14の領域としたが、これに限られず、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の染料層13y,13m,13cの転写済みの領域又は未転写の領域を用いてもよい。これら転写済み又は未転写の各染料層13y,13m,13cの領域を用いる場合も、前述と同様に熱転写シート走行手段の動作により、上記熱転写シート5をそれぞれの染料層13y,13m,13cが転写される前の位置、すなわち各染料層の先頭位置18y,18m,18cまで巻き戻せばよい。この場合、各染料層13y,13m,13cにインクが残っていても、そのインクは表面性改質シート8の裏面に転写されるが、該表面性改質シート8の存在により記録紙1には転写されない。
【0104】
図11は、上記記録紙1の画像33上に形成された保護層34に表面性改質シート8の表面性改質部を位置合わせして上記保護層34の表面状態を改質する他の実施例を示す説明図である。この実施例は、上記保護層34の表面状態をマット調に仕上げるものである。図11(a)の処理は、図10(a)の処理と全く同一である。図11(b)においては、記録紙1の画像33の表面に形成された保護層34の位置に、図3に示す表面性改質シート8のうち例えばマット調仕上げ用の第2の表面性改質部25bを選択して位置合わせする。このとき、図1に示すメカニカルセンサ31により、上記表面性改質シート8の各種の位置検出マーク29,30a,30b,30cを検出して位置合わせを行う。
【0105】
次に、図11(c)では、熱転写シート5における転写済みの保護材層14(図示省略)の位置と、表面性改質シート8の第2の表面性改質部25bと、記録紙1の画像33上に保護層34が形成された位置とが重なった状態に対して、図1に示すサーマルヘッド11を矢印J方向に前進させ、通常の印画時と同様にサーマルヘッド11とプラテンローラ2とにより加圧し、約70〜120℃程度に加熱した状態で、熱転写シート5及び表面性改質シート8及び記録紙1を移動させながら表面改質処理を行う。
【0106】
そして、図11(d)では、上記表面改質処理が行われた後、プラテンローラ2の回転と共に熱転写シート5及び表面性改質シート8及び記録紙1が下流側に移動してサーマルヘッド11から離れ、温度が下がって冷却された状態で、表面性改質シート8が記録紙1から剥離する。これにより、図11(a)に示す保護層34の表面状態が改質されて、例えばマット調に仕上げられた保護層34”が形成された印画物が得られる。
【0107】
図10及び図11の実施例では、1枚の画像33を印画し、その画像33について保護層34の表面状態を改質する場合について説明したが、本発明は、複数枚の画像33を連続的に印画し、各印画物ごとの表面改質状態が混在する場合でも、連続処理にて保護層34の表面状態を改質することができる。ここでは、説明の単純化のために、1枚目の印画物は光沢仕上げをし、2枚目の印画物はマット調仕上げを行って表面状態を改質する場合について説明する。
【0108】
まず、図10に示すと同様の動作により、1枚目の画像33及び保護層34の形成を行った後に、連続動作にて表面性改質シート8のうち光沢仕上げ用の第1の表面性改質部25aを用いて表面改質処理を行い、光沢性が向上した1枚目の印画物を得る。
【0109】
続いて、通常の連続印画時の動作と同様に、図2に示す熱転写シート5において2枚目の画像に対応する構成単位内の染料層13の先頭位置18yがサーマルヘッド11の記録部位に位置するように該熱転写シート5を送る。そして、表面性改質シート8は、印画用開口部24がサーマルヘッド11の記録部位に位置するように移動させる。この状態で、2枚目の画像33の形成及び保護層34の形成を行う。
【0110】
このとき、図1に示すサーマルヘッド11の記録部位には、図2に示す熱転写シート5の保護材層14が転写された後の後尾位置19Lが位置しているので、熱転写シート走行手段の動作により、上記熱転写シート5を保護材層14が転写される前の位置、すなわち先頭位置18Lまで巻き戻す。そして、表面性改質シート8は、マット調仕上げ用の第2の表面性改質部25bの先頭位置27bがサーマルヘッド11の記録部位に位置するように移動させる。次に、1枚目と同様にして、連続動作にて表面性改質シート8のうち第2の表面性改質部25bを用いて表面改質処理を行い、マット調に仕上げられた2枚目の印画物を得る。
【0111】
このように、本発明の画像形成装置及び画像形成方法によれば、記録紙1に対する画像33の形成及び保護層34の形成並びにその表面状態の改質処理をすべて一連の連続処理にて形成することが可能である。したがって、複数枚の画像33を連続的に印画する場合で、各印画物ごとの表面改質状態が混在する場合でも、一連の連続処理にて保護層34の表面状態の改質処理を行うことができる。
【0112】
なお、図10及び図11の実施例において、複数枚の画像33を連続的に印画し、連続処理にて保護層34の表面状態を改質する場合、まず先に、複数枚の印画物について画像33の形成及び保護層34の形成のみを行い、その後に、複数枚の印画物の保護層34について、それぞれの印画物ごとに要求された表面状態に応じて連続的に表面改質処理を行うようにしてもよい。
【0113】
図12は、本発明による画像形成装置の第2の実施形態を示す概要図である。この実施形態による画像形成装置は、図1に示す第1の実施形態による画像形成装置に対して、供給リール9と巻取りリール10との間に張り渡された表面性改質シート8を備えていない点が異なる。その他は、図1に示す第1の実施形態と基本的に同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
この第2の実施形態による画像形成装置は、表面性改質シート8を備えていない代わりに、供給リール6と巻取りリール7との間に張り渡された熱転写シート5’の構成が図1に示す第1の実施形態の熱転写シート5と異なる。例えば、図13に示すように、リボン状の基材シート12に、記録紙1の表面に熱転写されて画像を形成するための1色又は複数色の染料層13と、該記録紙1の表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層14と、該記録紙1に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部25とが、該基材シート12の長手方向に並んで形成されている。すなわち、熱転写シート5’上に1色又は複数色の染料層13及び保護材層14と並んで表面性改質部25が形成されている点が、図2に示す熱転写シート5と異なり、その他は同様である。
【0115】
この実施形態における熱転写シート5’は、熱転写シート自体に図1に示す表面性改質シート8を一体的に備えたものであり、図1に示す供給リール9と巻取りリール10とで構成され表面性改質シート8を移動させる改質シート移動手段を省略できるので、構造が簡単となり、装置全体を小型化することができる。
【0116】
図13に示す熱転写シート5’は、印画物1枚を形成する際に使用する1構成単位であり、実際には、複数枚の印画物の画像形成に対応して、これらの構成単位が熱転写シート5’の長尺方向にそって繰り返し形成されている。この実施例では、上記表面性改質部25としては、前述のユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)などのポリイミドを用いており、リボン状の基材シート12の上に易接着層16及び接着層(図示せず)を介してポリイミドフィルムを貼り付けて形成したものである。なお、図13において、符号21Tは、表面性改質部25の位置を検出するために該表面性改質部25の近傍に設けられた表面性改質部位置検出マークを示している。また、上記易接着層16は、必ずしも設けなくてもよい。
【0117】
なお、上記表面性改質部25は、ポリイミドフィルムを貼り付けて形成したものに限られず、例えば、スパッタリングやイオンプレーティング、蒸着法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法などにより形成した耐熱性の優れた材質からなる各種の膜や、シロキサン変性ポリイミド膜(例えば宇部興産社製の耐熱性接着材料「UPAシリーズ」)などの塗布、熱処理により形成したものでもよい。シロキサン変性ポリイミド膜を用いた場合には、シロキサン変性されたことにより良好な離型性を示すため、表面改質処理後の表面性改質部25と印画物の保護層との間の剥離がより安定したものとなる。
【0118】
さらに、このシロキサン変性ポリイミド膜は、ポリイミドフィルムと良好に接着することが可能であるため、表面性改質部25としてポリイミドフィルムを用いた場合に、その表面にこのシロキサン変性ポリイミド膜の薄膜層を形成することで、上記と同様に離型性をより向上させることが可能である。なお、このことに関しては、本実施例の場合に限らずに、他の実施例に用いた表面性改質部25についても同様に用いることが可能である。
【0119】
なお、図13においては、説明の簡略化のために、表面性改質部25は1種類のみを示しているが、図3又は図7に示す実施例の場合と同様に、異なる表面状態の改質の種類に応じて、光沢仕上げ用の表面性改質部25aや、マット調仕上げ用の表面性改質部25bや、質感の異なるマット調仕上げ用(或いは絹目調仕上げ用)の表面性改質部25cなどを形成してもよい。そして、光沢仕上げ用の場合には、記録紙1と接触する表面はユーピレックスS(商標名:宇部興産社製)のフィルム自身の面を用い、また、マット調仕上げ用や絹目調仕上げ用の場合には、記録紙1との接触表面には、フィルム中にフィラーを混入させることで表面に意図的に凹凸を形成したPETフィルムや、図9に示すエンボスローラなどの型部材32などにより所定の凹凸面に表面処理されたフィルムなどを貼り付けたものを用いて形成することができる。
【0120】
次に、以上のように構成された第2の実施形態による画像形成装置を使用して行う画像形成方法について説明する。この実施形態における画像形成方法は、図1に示す第1の実施形態による画像形成装置を使用して行う画像形成方法に対して、表面性改質シート8を移動させるステップが存在しない点が異なる。
【0121】
すなわち、記録紙1を所定方向に搬送するステップと、染料層13及び保護材層14並びに表面性改質部25が基材シート12の長手方向に並んで形成された熱転写シート5’を所定方向に走行させるステップと、サーマルヘッド11によって熱エネルギを印加し、上記熱転写シート5’の染料層13を記録紙1表面に熱転写して画像を形成するステップと、上記熱転写シート5’の保護材層14を記録紙1に形成された画像上に熱転写するステップと、上記記録紙1の画像上に形成された保護層と上記熱転写シート5’の表面性改質部25とを位置合わせして上記サーマルヘッド11によって加熱及び加圧し、冷却後に上記熱転写シート5’を剥離して上記保護層の表面状態を改質するステップと、を行うものである。
【0122】
このとき、図12において、通常の印画時と同様に、記録紙1と熱転写シート5’とを重ねた状態でサーマルヘッド11を矢印J方向に前進させ、熱転写シート5’を裏面から押し上げてプラテンローラ2に押圧しながら上記サーマルヘッド11によって熱エネルギを印加し、上記熱転写シート5’を用いて記録紙1表面に画像を形成し、保護層を形成し、さらにその保護層の表面状態を改質することができる。
【0123】
図14は、上記熱転写シート5’の他の実施例を示す説明図である。この実施例は、表面性改質部25’を基材シート12自体の露出部分としたものであり、その他は図13に示すものと同様である。すなわち、この実施例では、基材シート12が直接露出した状態になっている。このように、基材シート12自体の露出部分を表面性改質部25’としたことにより、基材シート12のPETフィルム面と同様の面が記録紙1の画像の保護層表面に反転転写されて表面状態が改質された印画物が得られる。この実施例によれば、表面性改質部25’の形成のために特別な部材を追加する必要がないため、その製造にあたりコスト的に有利になる。
【0124】
なお、上記表面性改質部25’は、光沢仕上げ用としては通常の基材シート12自体を用い、マット調又は絹目調仕上げ用としては、露出した基材シート12に所定の凹凸パターンを、その凹凸パターンに対応した型部材を用いた加熱転写などにより形成したものを用いればよい。
【0125】
また、上記表面性改質部25’に対して、その表面に離型性の層を形成するなどの離型性処理を行うことにより、表面改質処理後の熱転写シート5’と記録紙1との剥離性をより良好に安定させることができる。この離型性処理に用いる材料としては、例えば前述のシロキサン変性ポリイミド層の薄膜層を形成したものを用いることができる。また、例えば「KP−801M」(商品名:信越化学社製)などに代表される各種のフルオロアルキルシランや、「サイトップ」(商品名:旭硝子社製)などのフッ素系コーティング剤を用いて形成することも可能である。これらのフルオロアルキルシランや「サイトップ」などのフッ素系コーティング剤を用いて離型層を形成した場合には、その薄膜層は極めて薄く形成することが可能であり、また可視光領域で透明であるため、表面性改質シート8を一体的に備えた熱転写シート5’の製造時の検査や、画像形成装置での印画時や表面改質処理のための表面性改質部25’の位置検出時において、不具合なくスムーズに用いることができる。
【0126】
図15は、上記熱転写シート5’の更に他の実施例を示す説明図である。この実施例は、図14に示す熱転写シート5’において基材シート12の裏面側にて表面性改質部25’に対応する部分の耐熱滑性層15を省いたものであリ、その他の構成は図14に示す熱転写シート5’と同様である。上記耐熱滑性層15を省いたのは、該耐熱滑性層15は基材シート12に比べて表面平滑性が劣るからである。これにより、特に光沢性を与える表面改質処理を行う際に、より良好な光沢仕上げの印画物を得ることができる。
【0127】
なお、以上の説明においては、画像形成装置としていわゆる昇華転写方式のサーマルプリンタの例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、溶融転写方式のサーマルプリンタにも適用可能である。また、熱転写シートを必要とせずに、感熱タイプの記録紙に記録する感熱方式のサーマルプリンタにおいて、その印画物の表面状態の改質にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明による画像形成方法に用いる画像形成装置の第1の実施形態を示す概要図である。
【図2】第1の実施形態の画像形成装置に使用する熱転写シートの実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図3】上記画像形成装置に使用する表面性改質シートの実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図4】図1に示す画像形成装置に対応する具体的な機構を示す構造図である。
【図5】図4に示すセンサ基板に組み付けられたメカニカルセンサの内部構造を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は正面図である。
【図6】図5のように構成されたメカニカルセンサの動作を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は正面図である。
【図7】上記表面性改質シートの他の実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図8】図3に示す表面性改質シートを製造する際の工程を示す説明図である。
【図9】図3に示す表面性改質シートにおいてマット調仕上げ用の第2の表面性改質部を形成する部材の他の製造例を示す説明図である。
【図10】上記画像形成装置を使用して行う画像形成方法において記録紙の画像上に形成された保護層に表面性改質シートの表面性改質部を位置合わせして上記保護層の表面状態を改質する実施例を示す説明図である。
【図11】上記記録紙の画像上に形成された保護層に表面性改質シートの表面性改質部を位置合わせして上記保護層の表面状態を改質する他の実施例を示す説明図である。
【図12】本発明による画像形成装置の第2の実施形態を示す概要図である。
【図13】第2の実施形態の画像形成装置に使用する熱転写シートの実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図14】上記熱転写シートの他の実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図15】上記熱転写シートの更に他の実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0129】
1…記録紙(被記録媒体)
2…プラテンローラ
3…ピンチローラ
4…キャプスタンローラ
5,5’…熱転写シート
6…熱転写シートの供給リール
7…熱転写シートの巻取りリール
8…表面性改質シート
9…表面性改質シートの供給リール
10…表面性改質シートの巻取りリール
11…サーマルヘッド
12…熱転写シートの基材シート
13,13y,13m,13c…染料層
14…保護材層
15…耐熱滑性層
16…易接着層
21y,21m,21c…インク位置検出マーク
21L…保護材層位置検出マーク
21T…表面性改質部位置検出マーク
22…光センサ(検出手段)
23…表面性改質シートの基材シート
24,24a,24b…印画用開口部
25,25’,25a,25b,25c…表面性改質部
29,29a,29b…開口部位置検出マーク
30a,30b,30c…改質部位置検出マーク
31…メカニカルセンサ(検出手段)
33…記録紙の画像
34…画像の表面に形成された保護層
34’…光沢性を与えられた保護層
34”…マット調に仕上げられた保護層
37…コロ
38…アクチュエータ
39…支点軸
40a…発光部
40b…受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を所定方向に搬送するステップと、
リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させるステップと、
上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成するステップと、
上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写するステップと、
リボン状の基材シートに、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させるステップと、
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記表面性改質シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記表面性改質シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質するステップと、
を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
上記表面性改質シートには、上記熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように印画用開口部が設けられており、この印画用開口部をサーマルヘッドの位置に移動させて、その印画用開口部を利用して熱転写シートと被記録媒体とを直接接触させて画像を形成することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
上記サーマルヘッドによって上記表面性改質シートの表面性改質部を加熱するのは、上記熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍の温度で加熱することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項4】
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項5】
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項6】
被記録媒体を所定方向に搬送するステップと、
リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させるステップと、
上記被記録媒体と上記熱転写シートの染料層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの染料層を被記録媒体表面に熱転写して画像を形成するステップと、
上記被記録媒体に形成された画像と上記熱転写シートの保護材層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護材層を被記録媒体に形成された画像上に熱転写するステップと、
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層と上記熱転写シートの表面性改質部とを位置合わせして上記サーマルヘッドによって加熱及び加圧し、冷却後に上記熱転写シートを剥離して上記保護層の表面状態を改質するステップと、
を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
上記サーマルヘッドによって上記熱転写シートの表面性改質部を加熱するのは、該熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍の温度で加熱することを特徴とする請求項6記載の画像形成方法。
【請求項8】
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項6記載の画像形成方法。
【請求項9】
上記被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態の改質は、その保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項6記載の画像形成方法。
【請求項10】
被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、
リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層と被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させる熱転写シート走行手段と、
リボン状の基材シートに、上記熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するように設けられた印画用開口部と上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部とが、該基材シートの長手方向に並んで形成された表面性改質シートを移動させる改質シート移動手段と、
上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写するサーマルヘッドと、を備え、
上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質シートの表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
上記熱転写シートは、リボン状の基材シートの表面に1色又は複数色の染料層と保護材層とが順次形成され、各染料層及び保護材層の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられており、上記熱転写シートの走行経路の途中には、上記位置検出マークを検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
上記表面性改質シートは、リボン状の基材シートの表面に上記被記録媒体に形成された保護層について1又は異なる表面状態に改質するための1又は複数種類の表面性改質部が順次形成され、上記印画用開口部及び各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられており、上記表面性改質シートの移動経路の途中には、上記位置検出マークを検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項13】
上記表面性改質シートの表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項14】
上記表面性改質シートの表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項15】
被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、
リボン状の基材シートに、上記被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成された熱転写シートを所定方向に走行させる熱転写シート走行手段と、
上記被記録媒体の表面に上記熱転写シートの染料層又は保護材層を対向させた状態で熱エネルギを印加して上記染料層と保護材層とを順に被記録媒体上に熱転写するサーマルヘッドと、を備え、
上記被記録媒体に熱転写シートを用いて画像を形成すると共にその画像を保護する保護層を形成した後に、上記表面性改質部を上記保護層が形成された面に位置合わせして上記サーマルヘッドにより加熱及び加圧し、上記被記録媒体に形成された保護層の表面状態を改質することを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
上記熱転写シートは、リボン状の基材シートの表面に1色又は複数色の染料層と保護材層と1又は複数種類の表面性改質部とが順次形成され、各染料層及び保護材層並びに各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられており、上記熱転写シートの走行経路の途中には、上記位置検出マークを検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。
【請求項17】
上記熱転写シートの表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。
【請求項18】
上記熱転写シートの表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。
【請求項19】
リボン状の基材シートに、画像形成装置の被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための1又は複数種類の表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成されたことを特徴とする表面性改質シート。
【請求項20】
上記リボン状の基材シートには、画像形成装置の熱転写シートが被記録媒体表面に直接接触するようにさせる印画用開口部と、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層について1又は異なる表面状態に改質するための1又は複数種類の表面性改質部とが順次形成され、上記印画用開口部及び各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられたことを特徴とする請求項19記載の表面性改質シート。
【請求項21】
上記表面性改質部は、画像形成装置の熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍にて耐熱性を有する樹脂フィルムから成ることを特徴とする請求項19記載の表面性改質シート。
【請求項22】
上記樹脂フィルムは、ポリイミドから成ることを特徴とする請求項21記載の表面性改質シート。
【請求項23】
上記表面性改質部は、画像形成装置の熱転写シートの保護材層のガラス転移温度近傍にて該保護材層の表面と非接着となるように離型処理が施されていることを特徴とする請求項19記載の表面性改質シート。
【請求項24】
上記表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項19記載の表面性改質シート。
【請求項25】
上記表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項19記載の表面性改質シート。
【請求項26】
リボン状の基材シートに、画像形成装置の被記録媒体表面に熱転写されて画像を形成するための染料層及び被記録媒体表面に形成された画像の表面に熱転写されてその画像を保護するための保護材層並びに被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質するための1又は複数種類の表面性改質部が、該基材シートの長手方向に並んで形成されたことを特徴とする熱転写シート。
【請求項27】
上記リボン状の基材シートの表面には、1色又は複数色の染料層と保護材層と1又は複数種類の表面性改質部とが順次形成され、各染料層及び保護材層並びに各表面性改質部の近傍にはそれぞれ位置検出マークが設けられたことを特徴とする請求項26記載の熱転写シート。
【請求項28】
上記表面性改質部は、基材シート自体の露出部分であることを特徴とする請求項26記載の熱転写シート。
【請求項29】
上記表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態に光沢性を与えるものであることを特徴とする請求項26記載の熱転写シート。
【請求項30】
上記表面性改質部は、上記被記録媒体に形成された画像を保護する保護層の表面状態をマット調又は絹目調に仕上げるものであることを特徴とする請求項26記載の熱転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−56793(P2009−56793A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7628(P2008−7628)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】