説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】 安定して高画質・高品位のカラー画像を形成でき、優れた転写性・クリーニング性を有し、鮮明な高画質を提供できる画像形成方法と装置を提供する。
【解決手段】表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも用いる画像形成方法であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いる画像形成方法と、表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも備えた画像形成装置であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いる画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法または静電記録法等により形成される静電潜像を現像剤により現像する際に用いられる静電荷現像用トナー・現像剤及び画像形成方法方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、その技術の発展と市場要求の拡大に伴い複写機、プリンターなど現在様々な分野で利用されている。
電子写真法においては、帯電、露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、トナーを含む現像剤で静電潜像を現像し、転写・定着工程を経て可視化される。
【0003】
ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナー または非磁性トナーを単独でもちいる1成分現像剤とがある。
そのトナーの製法は通常、熱可塑性樹脂を顔料、帯電制御剤、離型剤等とともに溶融混練し、冷却後微粉砕し、さらに分級する混練粉砕製法が使用され、これらトナーには、必要であれば流動性やクリーニング性を改善するための無機、有機の微粒子をトナー粒子表面に添加することもある。通常の混練粉砕製法では、トナー形状及びトナーの表面構造は不定型であり、使用材料の粉砕性や粉砕工程の条件により微妙に変化することから意図的なトナー形状及び表面構造の制御は困難である。また特に粉砕性の高い材料である場合、現像機中における機械力などにより、さらに微粉の発生を招いたり、トナー形状の変化を招いたりすることがしばしばである。これらの影響により2成分現像剤においては、微粉のキャリア表面への固着により現像剤の帯電劣化が加速されたり、1成分現像剤においては、粒度分布の拡大によりトナー飛散が生じたり、トナー形状の変化による現像性の低下により画質の劣化が生じやすくなる。
【0004】
また、ワックスなどの離型剤を内添してトナー化する場合、熱可塑性樹脂との組み合せにより表面への離型剤の露出が影響されることが多い。特に高分子量成分により弾性が付与されたやや粉砕されにくい樹脂とポリエチレンのような脆いワックス型離型剤との組み合せではトナー表面にはポリエチレンの露出が多く見られる。これらは定着時の離型性や、感光体上からの未転写トナーのクリーニングには有利であるものの、表層のポリエチレンが機械力により容易に移行するために現像ロールや感光体、キャリアの汚染を生じやすくなり、信頼性の低下につながる。またトナー形状が不定型であることにより、流動性助剤を添加しても流動性が充分とはならず、使用中機械力の作用によってトナー表面の微粒子が凹部分へ移動し、これによって経時的に流動性が低下したり、流動性助剤のトナー内部への埋没がおきることで、現像性、転写性、クリーニング性が悪化する。またクリーニングにより回収されたトナーを再び現像機に戻して使用すると、さらに画質の低下を生じやすい。これらを防ぐためにさらに流動性助剤を増加すると、感光体上への黒点の発生や助剤粒子の飛散が生じるという状態に陥る。
【0005】
近年、意図的にトナー形状及び表面構造を制御する方法として特許文献1や特許文献2等の乳化重合凝集法によるトナーの製造方法が提案されている。乳化重合凝集法は、通常1ミクロン以下の、微粒化された原材料を出発物質とするため原理的に小径トナーを効率的に作成することができる。詳しく述べると、一般に乳化重合などにより樹脂分散液を作成し、一方溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液を作成し、これらの樹脂分散液と着色剤分散液を混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、その後加熱することによって凝集粒子を融合合一しトナーとする製造方法であるが、通常これらの方法ではトナー表面と内部は同様の組成となるため意図的に表面組成を制御することは困難である。
【0006】
この問題に関しては、特許文献3 にみられるような乳化重合凝集法におけるトナーにおいても内部層から表面層への自由な制御を行うことにより、より精密な粒子構造制御を実現する手段が提案されてきている。これらのトナーの小径化が容易で、かつ精密な粒子構造制御が実現されてきたことにより従来の電子写真画像の画質は飛躍的に高まり、しかも高い信頼性との両立が可能となってきた。
【0007】
一方近年、上記のようなトナー・現像剤技術を用いた電子写真による画像形成法は、デジタル化・カラー化の進展によって、印刷領域の一部へ適用されはじめ、オンデマンドプリンテイングを初めとするグラフィックアーツ市場における実用化が顕著となり始めている。
グラフィックアーツ市場とは、版画のようなもので印刷した部数の少ない創作印刷物や、筆跡・絵画などのオリジナルの模写、複写、そしてリプロダクションとよばれる大量生産方式による印刷物製造関連業務市場全般を指し、印刷物の製造に関わる業種・部門を対象とする市場であると定義される。
【0008】
たとえばショートラン印刷市場においては、電子写真法における無版印刷の特徴を生かしてモノクロ印刷のみならず、富士ゼロックスColorDocuTech60で代表されるようなショートランカラー市場をターゲットとする技術が開発され、画質、用紙対応性、製品価格、枚あたり価格の観点で大きな進展が見られつつある。(非特許文献4)
【0009】
しかしながら、本来の本格的従来型印刷と比較した場合、無版印刷としてのオンデマンド性の特徴はあるものの、その色再現域、解像度、光沢特性に代表される画質、質感、同一画像内における画質均一性、長時間連続プリント時の画質の維持性、高画像密度時のトナー消費量に起因する高枚あたり価格、より薄い紙、より厚い紙に対する対応性、画像定着時のオイルなどに起因する画像欠陥や筆記性不良、高速での高温定着による高消費電力、高温高圧での画像定着に起因する用紙の伸び、カール、波うち、両面時のトンボレジストレーションのずれなが生じ、問題となりやすい。また原理的に比較的低軟化点の低分子樹脂からなるトナー画像を熱定着することから、画像の熱や機械的耐久性に関し、印刷画像よりも弱い場合があり、幾重にも折り曲げられたり、製本され多重に重ねられて高加重状態で高温下にさらされた場合、画像の欠損やブロッキング、オフセット、屋外暴露に伴う耐光性、耐候性など様々なストレスに対する耐久性に問題を生じる場合がある。
【0010】
このように本格的に印刷を代替し、グラフィックアーツ領域において特に生産財としての市場価値を訴求するためには、まだ数々の課題があることがわかってきている。色再現領域に関しては、電子写真領域で実用されている顔料の種類は本来の従来の印刷インクで使用されている種類に比べて少なく、さらなる高性能着色材の技術が必要である。グラフィックアーツ領域における使用条件は、オフィス市場に比較し多岐にわたるために、高度な色再現性のみならず、耐熱、耐光、耐水、耐油、耐溶剤、耐擦掻性、折り曲げ強度など画像に様々な耐久性が要求されることとなる。
解像度は画像処理システム、感光体、露光などのシステムともにトナーの粒径と分布に制限されやすいが、小径トナーを帯電、現像、転写、定着、クリーニングなどの各プロセスで効果的に、かつ信頼性高く使用することには大きな技術課題がある。
【0011】
例えば、小径トナーを均一帯電するためのキャリア、または帯電ブレード、帯電ロールの設計、背景部汚れを発生せずに、高い画像濃度を得る現像システム、精細かつ高い転写効率で転写を実現する転写システム、小径トナーと様々な紙種との組み合わせに対応する定着システム、そして小径トナーを完璧に感光体上または中間転写体上から除去し、安定な画質を実現するクリーニングシステムなどである。
【0012】
画像の面内均一性や欠陥を改善するには、画像形成システムにおける現像剤の現像能力の均一性制御が重要となる。画質の維持性の印刷市場要求に答えるには数千枚にわたる連続プリントにおいても安定した帯電性を示し安定で均一な現像を維持し、温度や湿度などに対する環境依存性の少ない高耐久な現像剤が必要であり、紙粉や異物影響を回避でき、高耐久で欠陥やノイズを発生させにくくし、面内濃度を均一に維持できる現像システムとして最適化されなければならない。
【0013】
感光体または中間転写体からの転写のシステムにおいては、現状の電子写真では静電転写システムが一般的であるが、色重ねによるトナーの画像厚みが大きくなるカラー画像の場合、転写におけるトナーの飛散などによる画像劣化を抑制するために、トナーの電界内挙動を精密に制御するための最適化がトナー材料側及び転写システム側から必要であり、場合によっては粘着転写など静電気力によらない、抜本的にトナー飛散を抑止できる転写システムなども必要となってくる。
【0014】
クリーニングシステムとしては、高耐久の感光体と合わせて、ブレード、静電ブラシ、磁性ブラシ、ウエブ、現像同時クリーニングなどの方法で、小径かつ球形など形状制御されたトナーを信頼性高く連続的に、環境依存なくクリーニングしていくシステムをやはりトナー材料、構造、ハードシステムから最適化していくことが重要である。枚あたり価格に対してはトナーの小径化と着色剤量の最適化によってトナー消費量を低下させる必要があり、そのことがまた、画質の均一性へも影響を与えやすくなる。さきの述べたような手段により高信頼な画像形成システムを実現することで、印刷において価格影響のおおきい“ヤレ”(安定画質を得るための廃棄出力分)を少なくしたり、メンテナンス負荷を減らしたりすることも、実際上枚あたり価格を少なくしていくためには重要である。
【0015】
薄紙、厚紙への対応のためには、定着ロールなど定着部材からの定着後剥離がたとえ薄紙のような腰のない紙やプラスチックフィルムなどに対しても容易であることやと塗工紙や厚紙定着時にも電力消費量を抑制できる低温定着可能なトナー材料が必須である。低温や低圧力での定着は用紙へのストレスを低減し、用紙の伸びやカール、波うちを抑制できレジずれなどの問題を解消することもできる。オイルによるしみ、筋などの画像欠陥や筆記性不良を回避するためには、オイルレス定着装置や離型材をトナー内部に含有するオイルレストナーが必要になる。
また、通常の印刷画像と比較しても遜色なく、様々な使用状況下で問題を発生させない画像耐久性を実現するには、従来のトナーに使用されている樹脂特性をさらに大幅に改善しなければならない。
【0016】
画像の光沢特性をより自由度高く、かつ均一とするためにはトナーの粘弾性制御とともに定着装置の最適化が重要である。オフセット印刷を基準とする高品位な画像を得るためには、使用する紙に対し、最適な光沢を実現できることが市場価値を高めるために重要であり、トナー、紙、定着システム3者からの最適化が必要である。
【0017】
さらにオンデマンド印刷などの分野において近年訴求されている特徴としては、その環境負荷性能がある。印刷業務をネットワークによりオンデマンド化することで在庫をもたず、または最小化することで、通常の印刷などで発生しやすい印刷物の在庫、移動や廃却に伴う環境負荷を低減することができる。また通常の印刷機で使用されるインキに使用される有機溶剤を、通常の電子写真で用いる乾式トナーにおいては使用しないことから、VOCなどに伴う環境負荷を、根本的に低減できる。ただし、さらなる改善のためには、画像の定着やハードウエアのコンデイション維持に伴う電気エネルギーの低減のみならず、定着時に発生する加熱溶融された樹脂からの臭気や揮発分、発ガン性または環境ホルモン疑義物質の低減または不使用、小径トナー成分の機外排出抑制なども、重要な課題であり、また廃棄されたトナーや印刷紙のリサイクル性も考慮されていく必要がある。
【0018】
このように、グラフィックアーツ市場及びショートラン(軽印刷市場と言っても良い)市場の要求に応えるためには、従来の電子写真技術を、システムとして、さらに高度に発展させた技術が必要となってきている。
【0019】
トナーの小径化は、解像度の高い高画質とトナー消費量を低減し、枚当たり価格を下げることができるという点から効果的であり、また先に述べた乳化重合凝集法によれば従来の混練粉砕製法では得がたかった5ミクロン以下の小径トナーが容易に生産可能となる。ただし、小径トナーはその付着性の高さから転写性やクリーニング性の観点からは、不利となり信頼性の問題を起こすことが多い。具体的には転写効率の低下によって感光体や中間転写体への転写残トナー増加したり、表面平滑度の低いラフ紙への転写性の悪化から画像濃度むら、画像欠損などが発生しやすくなる。またブレードなどのクリーニングシステムでは、ブレードからのすりぬけなどにより十分なクリーニングができずにクリーニング不良による画像欠陥、背景部の汚れ、筋などの発生を招いたりする。特にこれらの画質の低下は連続走行時などに見られることが多い。
【0020】
また、これらの傾向は、高速で生産性の高いプロセスを実現しようとすればするほども問題となりやすい。高速な画像形成プロセスにおいては通常感光体径を大きくして、感光体の実使用面積を大きくすることによって、長寿命化をはかることも多いが、これは画像形成装置の寸法を大きくすることとなり、価格・設置面積・利便性などの観点から好ましくない。また、高い生産性を実現できるタンデム構成のカラー画像形成装置では、さらにその傾向が顕著となる。そこで、小型で、高速なカラー画像形成プロセスの実現が望まれている。
【0021】
【特許文献1】特開昭63-282752号公報
【特許文献2】特開平6-250439号公報
【特許文献3】特許第3141783号
【非特許文献1】日本画像学会誌 Vol.40 No.2 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、従来の小径トナーを用いるカラー画像形成プロセスにおける上記問題点を解消し、以下の特徴を有する静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供するものである。
1.安定して高画質・高品位のカラー画像を形成できる画像形成方法と画像形成装置を提供する。
2.優れた転写性・クリーニング性を示し、鮮明な高画質画像を形成できる画像形成方法と画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的は、下記の画像形成方法及び画像形成装置によって達成される。
<1> 表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも用いる画像形成方法であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いることを特徴とする画像形成方法
<2> 表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも備えた画像形成装置であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安定して高画質・高品位のカラー画像を形成できる画像形成方法と画像形成装置を提供することができる。また、優れた転写性・クリーニング性を示し、鮮明な高画質画像を形成できる画像形成方法と画像形成装置を提供することができる
特に樹脂粒子を凝集する工程と、凝集粒子を加熱して融合・合一する工程を有するトナー製造方法によって得られる数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーは、コアシェル構造を有し、顔料、離型剤等の露出が少なく、外添剤の埋没も抑制できるため、感光体との付着力が小さく維持でき、信頼性の高いクリーニングが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
小径トナーの転写性やクリーニング性を制御するためにはトナーの感光体やカラー画像形成に用いる中間転写体への付着性を低下させることが効果的である。従来のトナーでは、トナー表面に無機または有機の微粒子(以下、外添剤)を付着させてこれらの表面微粒子の効果によってトナーの付着性を下げることが通常である。しかしながら、トナー表面に保持されたこれらの外添剤は、複写機、プリンターなどの使用下において、現像機中、転写部、クリーニング部などで常に機械的なストレスを受け続けているため、トナー表面から内部へ埋没したり、外添剤が離脱したりすることにより経時的に付着性が増大し、これにより転写効率の低下やクリーニング信頼性の低下が生じる。このような経時的な信頼性低下を防ぐためには、感光体や中間転写体表面の樹脂層を低表面エネルギー化することが効果的であることが知られる。例えば、特開平7−84394にあるように感光体表面層にフッ素または珪素を有する組成を含ませることにより低表面エネルギー化することでクリーニング信頼性や転写性の劣化をを改善する試みなどが提案されている。
ただし長期にわたる耐久性を考慮した場合、上記のような感光体や中間転写体の表面エネルギー低減のみでは効果が十分でないことも判明してきている。特にトナーが6ミクロン以下のように小径化した場合、転写後に残留するトナーは付着力が高い小径でかついびつな形状のトナーであることが多い。そのような場合のクリーニング、転写信頼性を向上するには、トナーの微粉側の粒度分布を狭くし、転写後感光体上に残留しやすい微粒トナーをできるだけ少なくする、または残留しても極小径の微粉を少なくすることが不可欠である。
【0026】
また、さらにはこのような超小径のトナーを使用する場合、感光体及び中間転写体表面の粗さの制御も重要であり、使用初期から経時にわたり、Rzを2ミクロン以下に制御することが重要である。これにより特にブレードクリーニング時における感光体上残留トナーのブレードからのすりぬけを抑止し、長期にわたるクリーニング耐久性を実現できる。Rzが2ミクロンよりも大きくなると、ブレード-感光体間にすきまやブレードニップ圧力の弱い領域が生じブレードからの微粒トナーのすり抜けが起こりやすくなり、筋や背景部汚れなどの画像結欠陥を生じやすい。
また、中間転写体表面のRzが2ミクロンよりも荒くなると感光体や中間転写体表面の荒れた部分にトナー固着の発生もおこり、黒点などの画像欠陥の原因となる。
【0027】
つまり、体積平均粒径が5ミクロン以下のような特に小径なトナーを用いて高画質・高信頼を実現するには感光体及び中間転写体表面の表面エネルギーを下げるとともに、トナー側の微粉側粒度分布を小さくし、かつ長期にわたって感光体表面及び中間転写体のRzを2ミクロン以下に維持することが重要である。感光体及び中間転写体のRzを小さくするためには、最表面層の材料選択、塗布の方法が重要である。
【0028】
上記のような粒度分布の狭い小径領域のトナーを高効率に得るには、乳化重合凝集法を用いることができる。上記効果は、特に体積平均粒径5ミクロン以下のような、小径トナーにおいて効果が高い。またトナーの形状係数SF1は、転写段階において従来よりも薄いトナー像厚みにおいても均一な画像を形成するために125以下であることが望ましい。また、本発明のトナーは、下記式で定義する表面性指標を2.0以下に調整することにより、良好なさらに転写性を示し、特に表面粗度の大きい紙や転写媒体に対しても均一で、高い転写効率により高画質を実現できる。
【0029】
本発明の乳化重合凝集法によるトナーの用いる樹脂としてはビニル系樹脂を代表とする非晶性樹脂は、もとより非結晶性のポリエステル樹脂、結晶性のポリエステル樹脂など様々なものを用いることができる。
【0030】
ビニル系結着樹脂としての例としては、スチレン、パラクロルスチレンなどのスチレン類ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n―オクチル、アクリル酸2―クロルエチル、アクリル酸フェニル、α―クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメチレン脂肪族カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル、アクリルアミド、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、例えばN―ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などの含N極性基を有する単量体やメタクリル酸、アクリル酸、桂皮酸、カルボキシエチルアクリレートなどのビニルカルボン酸類などビニル系モノマーの単独重合体及び共重合体及び/または各種ポリエステル類など、さらには各種ワックス類もあわせて使用可能である。
【0031】
ビニル系単量体の場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂微粒子分散液を作成することができ、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に解かし、イオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機により水中に微粒子状に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂微粒子分散液を得ることができる。
【0032】
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、また適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。以下、結晶性ポリエステル樹脂を例に説明する。
【0033】
結晶性脂肪族系ポリエステルには、ポリカプロラクトンのように開環重合的に進行するポリエステルもあるが、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものも多い、本発明において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
前記ポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。従って、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0034】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
尚、前記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、前記スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0035】
前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。
【0036】
また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を微粒子に作製する際に、樹脂の構造成分の中にスルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0037】
これらの脂肪族ジカルボン酸由来構成成分以外の酸由来構成成分(2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分)の、酸由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
尚、本発明において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)を1単位(モル)したときの百分率を指す。
【0038】
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸が望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。
【0039】
前記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合には、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。さらに前記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合、前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量は90構成モル%以上であるのが好ましい。
前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう。必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等の構成成分である。
【0040】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
前記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
これらの、直鎖型の脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分を加える場合、すなわち2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分を加える場合、全アルコール由来構成成分における2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分の含有量は、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
【0041】
前記脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、全アルコール由来構成成分に対して1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなったり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0042】
本発明の結着樹脂の融点は50〜120℃であり、好ましくは60〜110℃である。融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
尚、本発明において、前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。尚、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0043】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度であ
る。
【0044】
前記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0045】
モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0046】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0047】
乳化凝集法を用いる場合、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、コアとなる凝集粒子を形成する凝集工程と、前記凝集粒子の表面に低表面エネルギー型高分子微粒子を付着させる付着工程と、少なくとも含むものであることが好ましく、さらに、前記凝集粒子を加熱することにより融合させる融合工程を、含むことがより好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0048】
−乳化工程−
前記乳化工程において、原料分散液は、結着樹脂の乳化粒子(以下、「樹脂粒子」と略す)と、水系媒体および必要に応じて着色剤や離型剤を含む分散液とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。したがって結着樹脂は原料分散液中にあらかじめ樹脂粒子として分散させておく必要がある。
【0049】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記体積平均粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定機(例えば、LA−700:堀場製作所製)などを用いて測定することができる。
【0050】
前記分散液における分散媒としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエンが挙げられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0052】
前記樹脂粒子が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0053】
前記樹脂粒子が、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、該樹脂を該油性溶剤に溶解させ、この溶液を、ホモジナイザー等の分散機を用いてイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水中に微粒子分散し、その後、加熱又は減圧して該油性溶剤を蒸散させることにより、ビニル系樹脂以外の樹脂製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0054】
一方、前記樹脂粒子が、結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した、自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルフォン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0055】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体に、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の微粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜5wt%程度になるようにするのが適当である。
【0056】
このようにして得られる本発明の樹脂微粒子分散液中の微粒子の体積平均粒径(メジアン径)が1μm 以下、好ましくは50〜400 nm、より好ましくは70〜350 nmの範囲が適当である。 なお、樹脂微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-700)で測定した。
【0057】
本発明では、例えば、次のような着色剤を使用することができる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等を挙げることができる。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G 、ベンジジンイエローG 、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG 等を挙げることができる。
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR 、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG 、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等を挙げることができる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンB レーキ、レーキレッドC 、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ、ピグメントレッド146,147、184、185、155、238、269などのナフトールレッド等を挙げることができる。
【0058】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどを挙げることができる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB 、メチルバイオレットレーキ等を挙げることができる。
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG 等を挙げることができる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等をあげることができる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等を挙げることができる。
また、染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等があげられる。
【0059】
また、これらの着色剤は単独もしくは混合して使用される。これらの着色剤は、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を用いて着色剤粒子の分散液を調製することができる。また、これらの着色剤は極性を有する界面活性剤を用いて、ホモジナイザーによって水系に分散することもできる。
【0060】
本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。そして、着色剤は、トナー構成固体分総質量に対して 4〜15質量%の範囲で添加することができる。
黒色着色剤として磁性体を用いる場合は、他の着色剤とは異なり、12〜240 質量%添加することができる。
前記の着色剤の配合量は、定着時の発色性を確保するための必要量である。また、トナー中の着色剤粒子の体積平均粒径(メジアン径)は100 〜 330nmにすることにより、OHP透明性及び発色性を確保することができる。
なお、着色剤粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-700)で測定した。
また、磁性トナーとして用いる場合は、磁性粉を含有させても良い。具体的には、磁場中で磁化される物質を用いるが、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性の粉末、もしくはフェライト、マグネタイト等の化合物が使用される。
本発明で水相中でトナーを得るときには、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは予め磁性体の表面を改質し、例えば疎水化処理等を施しておくことが好ましい。
【0061】
本発明で使用する離型剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。
これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。
【0062】
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で微粒子状に分散させ、1μm以下の粒子の分散液を作成することができる。
また必要に応じて、画像の耐候性などを向上させるために重合性紫外線安定性単量体などを含有しても良い。
【0063】
重合性紫外線安定性単量体の例としては4−(メタ)アクリロイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシー1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4―(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイルー4−(メタ)アクリロイルアミノー2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン系化合物が効果的である。
これらは、1種また2種以上を用いることができる。
これらの離型剤は、トナー構成固体分総質量に対して 5〜25質量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で望ましい。
【0064】
なお、得られた離形剤粒子分散液の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-700)で測定した。また、離型剤を使用するときには、樹脂微粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を凝集した後に、さらに樹脂微粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂微粒子を付着することが帯電性、耐久性を確保する観点から望ましい。
【0065】
乳化重合、シード重合、顔料分散、樹脂粒子、離型剤分散、凝集、またはその安定化などに用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
【0066】
また、本発明のトナーは、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥した後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することができる。また、水中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより使用することができる。
【0067】
本発明において、樹脂の乳化重合、顔料の分散、樹脂微粒子の分散、離型剤の分散、凝集、凝集粒子の安定化などに界面活性剤を用いることができる。具体的には硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを使用できる。
【0068】
凝集粒子の融合・合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0069】
乳化重合凝集法を用いたトナーの調製法は、特開平6−250439号公報などに記載されている。この方法は、一般に界面活性剤を用いて乳化重合させ樹脂微粒子分散液を調製し、他方、着色剤、帯電制御剤、結晶性化合物といったトナー組成物となる分散液を用意し、これらの分散液を混合した後、前記の界面活性剤と反対の電気極性を有する界面活性剤を添加して、上記の混合粒子を所望の粒子径になるまで凝集させ、その後、凝集粒子を所望の粒子径で安定化させた後、粒子を樹脂Tg以上の温度で融合させ、トナーを作製するものである。
【0070】
発明者らは溶融時の条件を工夫すると、該結晶性化合物がトナー内部で凝集・成長してゆき、トナー表面に放射状に尖角を形作る事を見出した。この尖角が結晶性化合物の成長に伴い生成したものであるとの判断はトナーの透過型電子顕微鏡撮影(TEM)で結晶性化合物の海島構造を観察することにより判断出来る。TEMの具体的な測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が好ましく、このときの顕微鏡写真は精度の高い測定を行なうために、1万〜3万倍の倍率が好適である。本発明では、透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を装置として用い、加速電圧100kVで観察し、拡大倍率が2万倍の顕微鏡写真を用いて観察・測定した。
【0071】
またトナーの尖角には、着色剤及びまたは帯電制御剤が「含まれている」事がTEM画像の観察から明らかである。「含まれている」とは着色剤及びまたは帯電制御剤が尖角の内部に包含、分散された状態にある事、尖角の表面に着色剤及びまたは帯電制御剤の一部が露出している状態にあることのいずれであっても良い。
【0072】
前記トナーの尖角の構造を得る効果的な製造方法を以下に述べる。一例として、凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子分散液中に微粒子を分散させた微粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に微粒子を付着させて付着粒子を形成する工程(コアシェル構造を作製する為の付着工程)を設けるのが効果的である。付着工程では、凝集工程で調製された凝集粒子分散液中に、微粒子分散液を添加混合して、凝集粒子に微粒子を付着させて付着粒子を形成するが、添加される微粒子は、凝集粒子から見て新たに追加される粒子に該当するので、本明細書では「追加微粒子」と記す場合がある。追加微粒子としては、樹脂微粒子の他に離型剤微粒子、着色剤微粒子、帯電制御剤粒子等を単独もしくは複数組み合わせたものであってもよいが、中でも樹脂粒子が望ましい。微粒子分散液を追加混合する方法としては、特に制限はなく、例えば徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、微粒子(追加微粒子)を添加混合することにより、コア部の結晶性化合物を効果的にトナー表面に向けて結晶成長させる事が可能でありさらにまた結晶化合物の成長の際に、コア部に含まれた顔料や帯電制御剤を効果的にトナー尖角部に移行させることが可能である。
【0073】
本発明の構造を得るさらに効果的な製造方法としては、結晶性化合物の分散粒子を調整する際、着色剤及びまたは帯電剤と共に分散し、予め着色剤及びまたは帯電制御剤を包含した結晶性化合物の微粒子を作製し、前述のように樹脂粒子と共に凝集、融合させ尖角を有するトナーを作製する方法である。尚、トナー作製のおいて「追加微粒子」を添加しコアシェル構造を形成してもよい。
【0074】
このような結晶性化合物と顔料及びまたは帯電制御剤微粒子を含んだ複合粒子分散液の具体的な調製方法について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法を採用することができるが、例えば以下のようにして調製することができる。例えば、該複合粒子の各成分を、溶剤中に溶解分散した後、適当な分散剤と共に水中に分散し、加熱ないし減圧することにより溶剤を除去して得る方法や、結晶性化合物を水中で、イオン性界面活性剤、高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに、強い剪断力を付与できるホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて微粒子化し、1μm以下の粒子の分散液を作成した後に表面に機械的剪断又は電気的吸着を行い、顔料及びまたは帯電制御剤を固定化する方法さらにまたは該複合微粒子の各成分を加圧式ニーダー、押出し混練機等を用い乾式混練したマスターバッチを作製した後、これを後粗粉砕し前述のように適当な分散剤と共に水中で微粒子化し複合粒子分散液を作製しても良い。こうした複合粒子の微粒化に際しては分散剤の種類、系のpH、温度、せん断力等の条件を都度選択し最適化する必要がある。
【0075】
該尖角の成長および尖角の数は、結晶性化合物の融点、粘度、加熱温度、加熱時間、顔料及びまたは帯電制御粒子の粒径、粒度分布、pH,吸油量の因子が重要となり、通常、融点が低いほど、溶融粘度が低いほど、過熱する温度が高いほど、加熱時間が長いほど、粒径が小さいほどトナー表面の尖角数、あるいは尖角高さが高くなる。
【0076】
乳化凝集法で得たトナー粒子は、その粒度分布が従来の懸濁重合法等に代表される重合法で得たトナー粒子と比較して極めてシャープな粒度分布を示し、さらに超小径トナーを高い収率で製造出来る点で望ましい。
【0077】
本発明のトナーの体積平均粒径D50は3.0 〜7.0 μmの範囲、好ましくは3.0 〜5.0 μmの範囲が適当である。D50が3.0 μmを下回ると、帯電性が不十分になり、現像性が低下することがある。また、5.0 μmを超えると画像の均一性が低下する。
【0078】
また、本発明のトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.25以下であることが好ましい。GSDvが1.25を超えると解像性が著しく低下し、トナー飛散やカブリ等の画像欠陥の原因となる。
【0079】
本発明の積体積平均粒径D50や平均粒度分布指標は、例えばコールターカウンターTAII(ベックマン−コールター製)、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)等の測定器で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v 、数D16P 、累積50%となる粒径を体積D50v 、数D50P 、累積84%となる粒径を体積D84v 、数D84P と定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v /D16V1/2 、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84P /D16P1/2 として算出される。
そして、数平均粒径の小径側粒度分布(GSDps)とは、数D50P/数D16Pと定義され、大きな値であるほど、小径側の分布が広く、微粉を多く含むことを表している。
【0080】
本発明のトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より 100〜140 、好ましくは100 〜130の範囲が適当である。本発明の形状係数SF1は次のようにして求められる。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、(最大長の2乗/投影面積=ML2 /A)をトナーの形状係数SF1とした。
【0081】
トナーの尖角の高さ(r)とトナー体積平均粒径D50の関係は、r/D50で0.05以上0.30以下が望ましく。0.08から0.2がより望ましく、0.1から0.2が最も望ましい。r/D50が0.05を下回るとトナー付着力が増大してしまい、0.3を超えるとトナーの形状による転写性、現像性が低下してしまう。
尖角の大きさはTEMで観察し尖角の周囲1μmをベースにして高さを測定したものである。
【0082】
トナーの尖角を有するトナー粒子の割合は50個数%以上が望ましくより望ましくは60個%以上であり、最も望ましいのは75個数%以上である。50個数%を下回るとトナークラウドが増大したり、クラウドトナーの回収が困難に成ってくる。また本発明の尖角を有するトナーにおける尖角の数は、トナーあたり二本以上が50個数%であることが望ましくより望ましくはトナーあたり二本以上が60個数%であることが望まし、最も望ましいのはトナーあたり二本以上が75個数%である。50個数%を下回るとトナークラウドが増大したり、クラウドトナーの回収が困難に成る。尖角の数の判定法は、走査型電子顕微鏡を用い、裏面の尖角数を数え落とさないうに、資料台を傾斜させながら観察しトナー50個あたりの平均尖角数を数え判断した。
【0083】
本発明のトナーの帯電制御剤としては、公知の材料を使用できる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。含有される金属としては、Al,B,Ti,Fe,Co,Ni等が挙げられる。荷電制御剤として特に好ましいのはベンジル酸誘導体の金属錯体化合物である。尚、荷電制御剤は、含有量を、トナー全体に対して0.1〜20.0質量%とすると、良好なトナーを得ることが出来る。その際に添加される材料の体積平均粒径としては、1μm以下であることが必要であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記体積平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定することができる。
【0084】
<融点の測定>
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は以下のように測定を行う。
示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下、「DSC」と略記する。)の熱分析装置を用いて測定した。測定は、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で行い、融点をJIS規格(JIS K−7121参照)により解析して得た。
<水接触角の測定>
試作された感光体の感光体表面の水との接触角を、図1に示す接触角測定装置で評価した。
【0085】
以下、本発明の電子写真感光体を構成する各層について詳細に説明する。本発明の電子写真感光体の積層構成を示す模式的断面図である。導電性基体1に下引き層2が設けられ、さらに電荷発生層3設けられ、その上に、電荷輸送層4がそれぞれ順次設けられている感光体であり、これらの電子写真感光体には、さらに所望により保護層等を設けることができる。
【0086】
−基体−
本発明に用いられる導電性基体としては、不透明なものまたは実質的に透明なものであることができ、具体的には、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス銅等の金属類、およびアルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の膜厚を設けたプラスチックフィルム、ガラス等、あるいは導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラルチックフィルムおよびガラス等があげられる。これらの導電性基体は、ドラム状、シート状、プレート状等、適宜の形状のものとして使用されるが、れらに限定されるものではない。さらに必要に応じて導電性基体の表面には、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができ、例えば、表面の酸化処理や薬品処および着色処理等または砂目立て等の乱反射処理等を行うことができる。特に、干渉縞の防止策としては、導電性基体の乱反射処理は有効な手段の一つであり、導電性基体からの正反射光量を下げることにより、干渉縞を抑制することができる。
【0087】
−下引き層−
導電性基体と光導電層の間には、1層または複数層の下引き層を設けてもよい。この下引き層は、感光層の帯電時において導電性基体から感光層への電荷の注入を阻止すると共に、
感光層を導電性基体に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用、または場合によっては導電性基体からの光の反射防止作用等を示す。
上記下引き層としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の樹脂およびこれらの共重合体、または、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性有機金属化合物を、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も使用可能である。下引き層の膜厚は、0.01〜10μmが適当であり、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0088】
−電荷発生層−
本発明の電子写真感光体の電荷発生層の電荷発生材料としては、従来のJ字型積層感光体の電荷発生層に用いられている公知のものを使用することができる。例えば、非晶質セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スクアリリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料や染料が使用できるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0089】
本発明の上記した電荷発生材料の中で、フタロシアニン系化合物は、現在デジタル式電子写真装置の光源として使用されているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長の600〜850nmの範囲において優れた光感度を有するものであるから、本発明の電荷発生材料として特に好ましい。詳しくは、無金属フタロシアニンおよび金属フタロシアニンでありその金属フタロシアニンの中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb等があげられ、また、これらの中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等も使用することができる。具体的には、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン等をあげることができる。また、これらのフタロシアニン環に任意の置換基を有するものも使用することができる。さらにまた、これらのフタロシアニン環中の任意の炭素原子が、窒素原子で置換されたものも有効である。これらフタロシアニン系化合物の形態としては、アモルファスのもの、または全ての結晶多形のものが使用可能である。これらのフタロシアニン系化合物の中で、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンおよびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有するものであるから、電荷発生材料として使用することが特に好ましい。
【0090】
上記したフタロシアニン系化合物は、その大部分のものが正孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有しているのに対し、ジクロロ錫フタロシアニンは、電子を主たる輸送電荷とするn型半導体としての性質を有している。そのため、電荷発生材料としてジクロロ錫フタロシアニンを含有し、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次積層することにより形成されているS字型感光体は、それを負帯電で使用した場合、高感度であり、かつ、導電性基材からの正電荷の注入が抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高い良好な電子写真特性を示すことになる。
【0091】
また、六方晶セレンは、電荷発生効率に優れているため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム径は、発信波長が短くなるにつれて小径化できるため、より一層の高画質化を目指して、露光用レーザーの短波長化が検討されているが、六方晶セレンの感光域は約680nm以下の短波長域にあるため、六方晶セレンは、この範囲の短波長レーザー用の電荷発生材料として用いることが特に好ましい。
【0092】
本発明の電荷発生層は、上記した電荷発生材料を真空蒸着法により、または、電荷発生材料を結着樹脂中に分散または溶解することにより作製することができる。電荷発生層に用いる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等があげられるが、これらに限定されない。これらの結着樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体または交互共重合体であってもよく、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0093】
電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が、上記範囲より多いと、暗減衰を増大し機械的特性を悪化させ、また、上記範囲より少ないと、光感度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は、一般的には、0.05〜5μmの範囲が適当であり、好ましくは0.1〜2.0μmの範囲に設定される。その塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0094】
導電性基体の露光波長における正反射率が大きい場合は、電荷発生層の露光波長における透過率の小さい方が、導電性基体における正反射光強度を小さくするために干渉縞を防止するには有利である。電荷発生層の露光波長における透過率としては、50%以下が好ましく、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。導電性基体が鏡面であり、かつ着色処理が行われていない場合には3%以下であることが好ましい。
【0095】
また、干渉縞を防止するために、電荷発生層と電荷輸送層の界面における正反射光を少なくする目的で、電荷発生層の表面を粗面化することが望ましい。電荷発生層の表面の粗面化は必ずしも必要ではないが、粗面化する場合の電荷発生層の表面粗さ(Ra2)は、0.03〜0.5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.4μmの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜0.3μmの範囲である。その表面粗さ(Ra2)は、上記範囲より小さいと電荷発生層表面からの正反射光の抑制が不十分となり、干渉縞が発生する。また、上記範囲より大きいと黒点、白点の発生等の障害が発生する。
【0096】
−電荷輸送層または最表面層−
本発明の電荷輸送層または最表面層としては、共に従来の積層感光体において電荷輸送層として用いられている公知のものを使用することができる。例えば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物等のホール輸送性低分子化合物またはフルオレノン系化合物、マロンニトリル系化合物、ジフェノキシキノン系化合物等の電子輸送性低分子化合物を、単独でまたは2種以上を混合して、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等の絶縁性樹脂中に均一分子分散した固溶膜、または、それ自体が電荷輸送能を有する高分子化合物等を用いることができる。また、セレン、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト等の電荷輸送能を有する無機物質を用いることもできる。
電荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に持つ高分子化合物、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖とする高分子化合物およびポリシラン等を用いることができる。
【0097】
また、電荷輸送材料を含んでいてもよい適当な結着樹脂中には、電荷輸送性微粒子を分散させた分散体を使用することもできる。この電荷輸送性微粒子を構成する材料としては、六方晶セレン、セレン化カドミウム、その他のセレン化合物およびセレン合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機系材料、フタロシアニン系、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料、並びに、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物等のホール輸送性低分子化合物またはフルオレノン系化合物、マロンニトリル系化合物、ジフェノキシキノン系化合物等の電子輸送性低分子化合物等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は、単独または2種以上混合して用いることができる。
六方晶セレン結晶は、現在デジタル式の電子写真装置に光源として使用されているレーザーダイオードの発信波長である700nm以上の光を実質的に吸収せず、また優れた電荷輸送性能を有するために、電荷輸送層用の電荷輸送性微粒子として特に好ましい。
【0098】
−表面保護層−
本発明の構成を為す表面保護層は、最表面層の項で述べた構成がそのまま採用され、既述の如き方法により、導電性支持体表面に形成された感光層の上に形成される。当該表面保護層は、高い離型性と、高い撥水機能を有し、かつ、機械的強度も高い層である。表面保護層の乾燥膜厚としては、1〜10μm程度とするのが好ましい。機械的強度を高めるには、架橋構造を形成したり、保護層中に硬度の高い無機材料を含有させたりすることができる。
【0099】
−表面保護層を設けた場合の他の感光層−
本発明の構成を為す表面保護層を設けた場合、その下層に形成される感光層は、従来から公知のあらゆる感光体の感光層を採用することができ、電荷発生層と電荷輸送層を積層した積層型の感光層でもよいし、電荷発生材料を含有する単層型の感光層でもよい。以下、積層型と単層型とに分けて説明する。
【0100】
−その他の添加剤−
本発明の電子写真感光体において、最表面層に含有し得るその他の添加剤としては、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で添加する、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的にはフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、有機燐系酸化防止剤などが挙げられる。有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は、2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。酸化防止剤の添加量としては、最表面層の全固形分の15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0101】
光安定剤としては、具体的にはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体等が挙げられる。光安定剤の添加量としては、最表面層の全固形分の5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0102】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、最表面層中に1種以上の電子受容性物質を含有せしめることもできる。本発明に使用可能な電子受容性物質としては、電子受容性を示すものであれば特に限定されるものではないが、特にフルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が好ましい。
【0103】
<最表面層の接触角>
<接触角測定装置>
協和界面科学社製画像処理型接触角測定装置CA−Xを用いる。
測定方法の次の通りである。
感光体または中間転写体表面から、カッターにより表面切片を切取り、試料台上に固定、サンプル供給針先から、純水を供給して試料表面上に、純水液滴を形成する。この水滴の左端、右端、頂角の座標を画像処理によって求め、計算された水滴の直径(2r)、高さ(h)から以下の式により接触角を求める。
ω=2tan-1(h/r)
【0104】
本発明における最表面層は、水との接触角が95°以上であることが望ましく、さらに好ましくは100 °以上であることがより望ましい。水との接触角が95°以上であれば、最表面層の良好な離型性を確保することができる。なお、電子写真感光体を本発明の構成とすることにより、その表面について上記規定を容易に満たすことができる。
【0105】
表面保護層を含む最表面層の水接触角を高めるためには、フッ素または珪素などの原子を含有する樹脂または低分子量化合物を上記層中に含有させることが有効である。
具体的には、4弗化エチレン、3弗化塩化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン、2弗化2塩化エチレンの重合体、それらの共重合体、弗化カーボンさらには、フッ素系重合単量体あるいは非フッ素系重合性単量体との重合体、それらの共重合体から合成されたフッ素系セグメントを有するブロックまたはグラフト重合体、界面活性剤、マクロモノマーなどを単独または併用して用いることができる。
珪素系化合物の例としては、モノメチルシロキサン3次元化合物、ジメチルシロキサンーmノメチルシロキサン3次元架橋物、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンセグメントを有するブロックポリマー、グラフトポリマー、界面活性剤、マクロモノマー、末端修飾ポリジメチルシロキサンなどを用いることができる。
フッ素系微粒子、珪素系微粒子などの溶剤不溶の3次元架橋物などの場合は微粒子などの形状でも用いることができる。微粒子状のものは結着樹脂とともに最表面層の組成物として分散されて用いる。分散の方法としては、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ホモジナイザー、ナノマイザー、ペイントセーカー、超音波など公知のものを使用でき、あわせて分散助剤として上記グラフト重合体、ブロックポリマー、界面活性剤などを用いることができる。
【0106】
<最表面層の形成方法>
本発明の電子写真感光体における最表面層は、最終的に特定の低表面エネルギー化物質を含有するする層となっていれば、如何なる方法により形成しても構わない。本発明において、特に好ましい最表面層の形成方法(本発明の電子写真感光体の製造方法)は、前記特定の低表面エネルギー化物質、および、最表面層を構成するためのその他の固形分、を全て有機溶媒で溶解・分散して塗布液を調製し、導電性支持体表面、もしくは、導電性支持体表面に最表面層を除く各層が形成された該表面に、前記塗布液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0107】
<感光体及び中間転写体の表面粗さ>
表面粗さを示す尺度としての十点平均粗さRzにおいて、Rzは、触針式表面粗さ測定機(商品名:サーフコム1400A、東京精密社製等)を使用して測定した。測定条件はJIS B 0601−94の記載に基づいて行なった。Rzを求める場合は、評価長さLn、基準長さLが必要であるが、それは、JIS B 0601−94の標準値に合わせて行なった。より具体的には、Rzが0.1μmを超えて0.5μm以下の場合は、基準長さ=0.25mm、評価長さL=1.25mm、Rzが0.5μmを超えて10.0μm以下の場合は、基準長さ=0.8mm、評価長さL=4mmであった。
なお、十点平均粗さRzの記載の基準長さ、評価長さはJIS B 0601−94の記載に基づいて表示を省略し、Rzのみミクロンで表すか、μmRzのように記載する。
本発明において、Rzは2.0ミクロン以下、好ましくは1.5ミクロン以下、より好ましくは1.0ミクロン以下である。
【0108】
[電子写真感光体の全体構成]
−第1の態様−
第1の実施形態の電子写真感光体の構成は、導電性支持体上に電荷発生層が設けられ、その上に電荷輸送層が設けられている。
−第2の態様−
第2の実施形態の電子写真感光体の構成は、第一の態様において、さらに導電性支持体と電荷発生層との間に、下引き層が設けられているものである。
−第3の態様−
3の実施形態の電子写真感光体の構成は、第1の実施形態の層構成に対し、さらに電荷輸送層上に表面保護層が設けられているものである。
−第4の態様−
第4の実施形態の電子写真感光体の構成は、第3の実施形態の層構成に対し、さらに導電性支持体と電荷発生層との間に、下引き層が設けられているものである。
−第5の態様−
第5の実施形態の電子写真感光体の構成は、第一の態様において、導電性支持体上に単層型の感光層が設けられている。
−第6の態様−
第6の実施形態の電子写真感光体の構成は、第5の実施形態の層構成に対し、さらに導電性支持体と単層の感光層との間に下引き層が設けられているものである。
−第7の態様−
第7の実施形態の電子写真感光体の構成は、第6の実施形態の層構成に対し、さらに単層の感光層上に表面保護層が設けられているものである。
【0109】
前記本発明の電子写真感光体は、ライトレンズ系複写機、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、ディジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリ等の電子写真装置、あるいは該電子写真装置に備えられるプロセスカートリッジに好適に用いることができる。また、前記本発明の電子写真感光体は、一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも併用することができる。更に、前記本発明の電子写真感光体は、帯電ローラーや帯電ブラシを有する接触帯電器を備えた電子写真装置に用いても、電流リークの発生が少なく、容易に良好な画質を得ることができる。
【0110】
また、本発明の電子写真感光体は付着トナーの離型性が高いため、クリーニングストレスを大幅に低減でき、条件によっては全くクリーニング機能を必要としない。したがって、電子写真感光体の寿命を飛躍的に向上させることが可能であり、特にクリーニング機能を有しない、いわゆるクリーナーレスタイプの電子写真装置との組み合わせにおいて、極めて効果的である。
【0111】
−電子写真装置−
次に、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置について説明する。
本発明において、電子写真装置(画像形成装置)は、少なくも電子写真感光体と、中間転写体を有している限り、特に制約はないが、高速のタンデム型電子写真装置が好適である。また、前記本発明における電子写真感光体と、帯電手段、像露光手段、および本実施形態では含まれないクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置に着脱自在であるプロセスカートリッジを用いることにより、ユーザーはトナーによる手や衣服の汚れを回避することができるという利点を有する。
【0112】
図1に示す中間転写ベルトの断面を模式的に表した図である。
図1に示す中間転写ベルト30は、多層構造の無端ベルトであり、基材301と、弾性層302と、表面層303とを有する。
基材301は、ポリミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエス樹脂などからなるシームレスベルトである。この基材301のヤング率は、3500MPa以上9000MPa以下であり、好ましくは4000MPa以上8000MPa以下、さらに好ましくは4000MPa以上7500MPa以下である。基材のヤング率が3500MPa未満では、中間転写ベルト30の剛性が不足し、ベルト駆動時の応力によってベルトが変形し色ずれが生じてしまう。一方、9000MPaを超えると、機械的強度が高すぎてしまいベルトの円滑な駆動に支障をきたすばかりか、トナー像を形成するトナー粉体へのストレスが高まり、ライン画像の中抜け(ホローキャラクター)や転写時のトナー粒子の飛散(ブラー)が生じやすくなる。
ここにいうヤング率は、JIS K6251に準じて、半導電性ベルトをJIS3号形状に打ち抜き、引張試験に供することで得られる応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きから求めたものである。
ここでは、機械特性に優れることよりポリイミド樹脂からなる基材について詳しく説明する。ポリイミド樹脂としては、例えば芳香族テトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させて得られるものが用いられる。
【0113】
芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−アゾベンゼンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルポキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)ヘキサフオロプロパン等があり、これらのテトラカルボン酸類の混合物でもよい。また、前記の芳香族ジアミン成分としては、特に制限はなく、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(オキシ−p,p’−ジアニリン;ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミンフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0114】
また、上記有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等をあげることができる。これらの有機極性溶媒には、必要に応じて、クレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ル等のフェノ−ル類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合することができる、これらの溶剤も、単独で、または2種類以上の混合物として用いられる。
【0115】
また、基材301に用いるポリイミド樹脂には、導電剤を分散させておくことが好ましい。導電剤としては、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等の導電性もしくは半導電性の微粉末が用いられるが、特に好ましい導電剤としては、pH5以下の酸化処理カーボンブラックがあげられる。ただし、導電剤は、これらに限定されることはなく、所望の電気抵抗を安定して得ることができれるものであればよい。また、これらの材料を単独、あるいは併用して使用してもよい。
【0116】
弾性層302は、JIS A硬度が40〜70°で、かつ体積抵抗率が108Ωcm〜1013Ωcmの範囲にある材料であれば特に限定されるものではなく、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらの材料にも、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を付与する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。ここで、弾性層302にゴム生地を用いる場合には、材料の形態として、液状や糊状のものではなく、未加硫ゴムの固形シ−トが好ましい。未加硫ゴムはキャレンダーロール等で精度良くシート状に分出し、その生地を使用する。固形ゴムをシート状に形成し、この固形ゴムを基材と貼合わせてシームレスに一体成形するようにすることで、基材との密着性に優れる、基材と弾性層との2層構成の貼り合わせベルトを得ることができる。
【0117】
表面層303は、例えばフッ素系樹脂材料を主成分とする非粘着性を有する樹脂組成物から構成される。フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体(たとえばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライドなどのハロゲン化オレフィン類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類など)との共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどがあげられる。とくに好ましいフッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロプロピルビニルエーテルの少なくとも1種(通常テトラフルオロエチレンに対し40モル%以下含まれる)との共重合体などである。
この表面層303を構成する樹脂材料にも、導電剤を添加することが好ましい。導電剤としては、基材に添加した導電剤と同種のものが使用できるが、導電性カーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化したフッ素化カーボンが好ましくは用いられる。
【0118】
表面層303の体積抵抗率は、1×108〜1×1013Ωcmであることが好ましく、1×109〜1×1012Ωcmであることがより好ましい。この体積抵抗率が1×108ΩCm未満である場合には、感光体ドラムから中間転写ベルト30に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー粒子同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナー粒子が飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、前記体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、一次転写での転写電界で中間転写ベルトの表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナー粒子が飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
表面層303と弾性層302とを併せた2層の厚みの割合は、中間転写ベルト30の総厚みの10〜80%である。図3に示す中間転写ベルト30の表面(転写面)30aの硬度は、表面微小硬度で10mN/μm2以下であることが好まし
く8mN/μm2以下であることがより好ましい。
【0119】
表面微小硬度とは、金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース硬さのように、くぼみの対角線長さを求めるという方法はとらず、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求めることができる。試験荷重P(mN)、圧子の試料への侵入量(押し込み深さ)D(μm)とした時、表面微小硬度DHは下記式で定義される。
DH=αP/D2
ここで、αは圧子形状による定数で、α=3.8584(使用圧子:三角錐圧子の場合)である。
【0120】
この表面微小硬度DHは、圧子を押し込んで行く過程の過重と押し込み深さから得られる硬さで、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。なおかつ、その計測面積は微小であり、トナー粒子の粒径に近い範囲でより正確な硬度の測定が可能になる。本発明者らは、ここで得られた表面微小硬度と、トナー粒子のブラーの発生レベルおよびライン画像が中抜けするホロキャラクターの発生レベルとには極めて正確な相関があることを発見した。即ち、中間転写ベルト30の表面(転写面)の表面微小硬度が好ましくは10mN/μm2以下、より好ましくは8mN/μm2以下の場合には、一
次転写領域において、一次転写ロール20の押圧力によって中間転写ベルト30の転写面の変形が起こり、これにより感光体ドラム11上のトナー粒子が中間転写ベルト30によって覆われトナー粒子のブラーの発生が抑えられるとともに、感光体ドラム11上のトナー像に集中していた押圧力が分散されトナー粒子が凝集せず、ホロキャラクターの発生も抑えられる。
【0121】
中間転写ベルト30の転写面における表面微小硬度は、下記の方法によって求めた。中間転写ベルト30を5mm角程度の小片に切り、その小片を瞬間接着剤で硝子版に固定する。硝子版に固定された小片表面の表面微小硬度を超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて測定する。測定条件は、以下の通りである。
測定環境:23℃、55%RH
使用圧子:三角錐圧子
試験モード:3(軟質材料試験)
試験荷重:0.70gf
負荷速度:0.0145gf/sec
保持時間:5sec
【0122】
中間転写ベルト30の転写面の表面微小硬度は、弾性層302の材質、および中間転写ベルト30の総厚みに対する、表面層303と弾性層302とを併せた2層の厚みの割合が大きく関与している。弾性層302の材質は上述の通りであり、表面層303と弾性層302とを併せた2層の厚みの割合は、中間転写ベルト30の総厚みの10〜80%である。中間転写体ベルト30の総厚みは、0.05〜0.5mmの厚みであり、好ましくは、0.06〜0.30mm、より好ましくは、0.06〜0.15mmである。
【0123】
また、表面層303の摩擦係数は、0.5以下であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。該摩擦係数が0.5を超える場合には、感光体ドラム11との間に応力が発生すると、感光体ドラム11とのステックスリップによって、中間転写ベルト30の転写面に微小な変形が生じ、細部の転写画質が悪くなることがある。
前記摩擦係数は、表面層303を構成する材料を用いて厚み20μmの膜を作製し、これを試料として静動摩擦係数計(協和界面科学社製)を用いて測定することができる。測定条件は、以下の通りである。
使用鋼球:直径3mm
移動速度:0.1cm/秒
荷重:100g
【0124】
以上説明した図1に示す中間転写ベルト30は、転写電圧による抵抗の低下がなく、経時による形状の変形等の問題がなく、かつ、電界依存性がなく、環境による電気抵抗の変化が少ないという優れた性質を有する。なお、この中間転写ベルト30は、基材301と弾性層302と表面層303との3層構造のもであるが、本発明の趣旨を損なわない範囲でさらに多層化することもできる。また、上述のごとく、これらいずれの層にも導電剤を添加することが好ましいが、導電剤とは異なる添加剤をさらに添加してもよい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
感光体(1)
[電子写真感光体の作製]
(導電性支持体の準備)
導電性支持体には、ED管アルミニウム(30mmφ)の表面を、アルミナ球状微粉
末(体積平均粒子径D50=30μm)を用いて液体ホーニング法により中心線平均粗さRa=0.18μmに粗面化処理したものを用いた。
(下引き層の形成)ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4質量部をn−ブチルアルコール170質量部に溶解させ、さらに有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部および有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部の混合物を混合攪拌し、下引き層形成用塗布液を得た。前記導電性支持体の表面に、得られた下引き層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布し、150℃において1時間の硬化処理を行い、膜厚1.2μmの下引き層を形成した。
【0126】
(電荷発生層の形成)
Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロルガリウムフタロシアニン3質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(VMCH、日本ユニカー社製)2質量部、および、酢酸ブチル180質量部からなる混合物をサンドミルにより4時間分散処理し、電荷発生層形成用塗布液を得た。前記下引き層が形成された導電性支持体の表面に、得られた電荷発生層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布し、これを乾燥させて膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0127】
電荷輸送層の形成
a)電荷輸送層塗布液の調製
N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(正孔輸送性電荷輸送材料)4質量部と、ビスフェノールZ型ポリカーボネート(三菱化学社製ユーピロンZ400)6質量部と、をテトラヒドロフラン600質量部および2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール2質量部の混合溶媒に加えて溶解させ、さらにダイキン社製ポリ4弗化エチレン重合体粒子分散液(フブロン)を10質量%分混合、分散処理を行って電荷輸送層形成用塗布液を得た。
b)電荷輸送層塗布液の塗布・形成
前記下引き層および電荷発生層が形成された導電性支持体の表面に、得られた電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布し、これを120℃において40分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、3層からなる感光体(1)を作製した。
【0128】
感光体(2)
実施例1において、輸送層のポリ4弗化エチレン重合体粒子を除き表面保護層の形成工程を加えた他は、実施例1と同様にして、4層からなる感光体(2)を作製し、その評価試験を行った。結果を表にまとめて示す。
【0129】
a)表面保護層塗布液の調製と塗布
パーウルオロアルキルアクリレート−メチルメタクリレートブロック共重合体(分子量50000)0.1質量部、モノクロロベンゼン120質量部、ジクロロメタン80質量部をサンドミルで混合し、トリフェニルアミン3質量部を加えて溶解した。
スプレー塗布により3ミクロンの保護層を設け、120℃30分乾燥し、4層からなる感光体(2)を作成した。
【0130】
感光体(3)
実施例2において、(表面保護層の形成)中の「a)表面保護層塗布液の調製の
工程を以下に示す工程に代えた他は、実施例1と同様にして、4層からなる感光体(3)を作製し、その評価試験を行った。結果を表にまとめて示す。
a)表面保護層塗布液の調製
フラスコにコロイダルシリカ(固形分40質量%)の水性分散液5.5質量部を取り、
撹拌しながらコロイダルシリカ(固形分30質量%)のイソプロピルアルコール分散液20質量部、メチルトリエトキシシラン25.6質量部、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン6.0質量部及び酢酸3.0質量部を添加した。添加後、混合溶液を65〜70℃に加熱し、2時間反応させた。その後、イソプロピルアルコール21.7質量部で希釈し、硬化触媒としてベンジルトリメチルアンモニウムアセテート2.4質量部を添加し、更にポリエーテル変成ジメチルシリコーンの10質量%エタノール溶液0.16質量部を添加した。
上記の表面保護層用組成物を実施例1と同様に浸漬塗布法を用いて塗布し、110℃で4時間乾燥熱処理した。乾燥後、2μmの透明で均一な膜が得られた。これにより4層からなる実施例3の感光体を作成した。
【0131】
感光体(4)
感光体(1)において、輸送層のポリ4弗化エチレン重合体粒子を除き表面保護層の形成工程を加えた他は、感光体(1)と同様にして、3層からなる感光体(4)を作製し、その評価試験を行った。結果を表にまとめて示す。
【0132】
中間転写体において、水接触角と表面粗さRzの測定は前記の感光体(1)の場合と同様である。
【0133】
中間転写体(1)
〔中間転写ベルト(1)の作製〕
(基材)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチルー2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18wt%)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)をポリイミド樹脂固形分100質量部に対して、15質量部添加して、ボールミルで6時間室温で混合した。次いで、このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して0.3mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした後、250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱し、次いで常温に冷却して、金型より剥離して、鉄芯の外側に被覆して、更に400℃で1時間加熱して、溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻し、金型から剥離し、目的とする基材を得た。この基材の厚さは0.05mmであり、体積抵抗率は、3×1010Ωcmであり、ヤング率は、6000Mpaであった。
【0134】
(弾性層)
NBRとEPDMを質量比で4:6にブレンドしたゴム材料(NE40;日本合成ゴム(株)製)100質量部に対してアセチレンブラック(前記粒状アセチレンブラック)を7質量部およびサーマルブラック(前記アサヒサーマルFT)を20質量部の割合で配合して、3本ロールで混練した。上記混練物をキャレンダーロールにてシーティングシート状に加工して、厚さ0.2mmのシート形状に形成した。このシート状物を前記基材上に圧接して、温度150℃,圧力5.5kg/cm2の加圧下に60分間加熱して、弾性材料を加硫して、2層構成のベルトを得た。
この弾性層の硬度は、JISA硬度で70度、体積抵抗率は5×1010Ωcmであった。
【0135】
(表面層)
前記2層構成のベルトの外側にフッ化カーボンを添加してなるフッ素樹脂系導電性塗料ダイキン工業NF−7400を厚さ20μmで塗布して、150℃で10分加熱して、3層構成ベルトを形成した。
さらに精密バフ研磨を行って表面平滑化処理を行った。
表面層の体積抵抗率は、1×1011Ωcmであった。
こうして作製した中間転写ベルト(1)の表面微小硬度は9.5mN/μm2であった。
【0136】
中間転写体(2)
〔中間転写ベルト(2)の作製〕
(基材)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とからなるポリアミド酸のN−メチルー2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスA(固形分18wt%)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)をポリイミド樹脂固形分100質量部に対して、15質量部添加して、ボールミルで6時間室温で混合した。次いで、このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした後、250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱し、次いで常温に冷却して、金型より剥離して、鉄芯の外側に被覆して、更に350℃で1時間加熱して、溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻し、金型から剥離し、目的とする基材を得た。この基材の厚さは0.08mmであり、体積抵抗率は5×1010Ωcmであり、ヤング率は3500Mpaであった。
【0137】
(弾性層)
中間転写ベルト(1)の弾性層の形成において、厚さを0.2mmから0.3mmに変更した以外は、中間転写ベルト(1)の弾性層と同様にして弾性層を形成した。
この弾性層の硬度は、JISA硬度で55度、体積抵抗率は5×1010Ωcmであった。
【0138】
(表面層)
中間転写ベルト(1)の表面層と同様にして表面層を形成した後、ベルトを金型に固定した状態でスーパーフィニッシャーによる精密バフ研磨を行って表面平滑化処理を行った。表面層の体積抵抗率は、1×1011Ωcmであった。
こうして作製した中間転写ベルト(2)の表面微小硬度は7.0mN/μm2であった。
【0139】
中間転写体(3)
〔中間転写ベルト(3)の作製〕
中間転写ベルト(2)と同じ材料構成で、弾性層のゴムJISA硬度を40として、厚みを0.3mmとした以外は、中間転写ベルト(2)と同様にして中間転写ベルト(3)を作製した。
こうして作製した中間転写ベルト(3)の表面微小硬度は4.0mN/μm2であった。
【0140】
中間転写体(4)
〔中間転写ベルト(4)の作製〕
中間転写ベルト(2)と同じ材料構成で、表面のバフ研磨を行わなかった以外は、中間転写ベルト(2)と同様にして中間転写ベルト(4)を作製した。
【0141】
中間転写体(5)
〔中間転写ベルト(5)の作製〕
中間転写ベルト(2)と同じ材料構成で、フッ化カーボンを添加してなるフッ素樹脂系導電性塗料ダイキン工業NF−7400を塗布せず、表面のバフ研磨も行わなかった以外は、中間転写ベルト(2)と同様にして中間転写ベルト(5)を作製した。
こうして作製された中間転写ベルトの水接触角及び表面粗さは、表にまとめて示す。
【0142】
<トナー粒子の調整>
結晶性粒子ノ樹脂分散液(1)の調製
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル92.5mol%、および、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分と、エチレングリコール(酸成分に対し2mol倍量)と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.012質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、質量平均分子量12000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(1)を得た。
【0143】
ついで、この結晶性ポリエステル(1)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、体積平均粒径が0.15μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0144】
−結晶性樹脂分散液(2)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10ドデカン二酸90.5mol%、及びイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム2mol%、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分、および、1,9ノナンジオール100mol%と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.014質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、質量平均分子量11000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(3)を得た。
【0145】
ついで、この結晶性ポリエステル(3)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20gを滴下しながら、乳化分散を行ない、体積平均粒径が0.15μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0146】
(非結晶性樹脂微粒子分散液(1) の調製)
スチレン 480質量部
nブチルアクリレート 120質量部
カルボキシエチルアクリル酸 18 質量部
ドデカンチオール 12 質量部
前記成分を混合溶解して溶液を調製する。
他方、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)12 質量部をイオン交換水250 質量部に溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した。(単量体乳化液A)
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)1質量部を555質量部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと攪拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウオーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して重合を終了した。
これにより微粒子の体積平均粒径が250 nm、ガラス転移点が55℃、質量平均分子量が27000、固形分量が42%の非結晶性樹脂微粒子分散液(1) を得た。
【0147】
(着色剤粒子分散液(1) の調製)
黄色顔料(クラリアントジャパン社製、C.I.Pigment Yellow 74) 50 質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製、ネオゲンRK ) 5 質量部
イオン交換水 200 質量部
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA 社製、ウルトラタラックス)により10分間分散し、体積平均粒径200 nm、固形分量21.5%のYellow着色剤粒子分散液(1) を得た。
【0148】
(着色剤粒子分散液(2) の調製)
着色剤粒子分散液(1) の調製において、黄色顔料の代わりにシアン顔料(大日精化社製、銅フタロシアニン C.I.Pigment BLue 15:3)を用いた以外は着色剤粒子分散液(1) と同様に調製して、体積平均粒径190 nm、固形分量21.5%のCyan着色剤粒子分散液(2) を得た。
【0149】
(着色剤粒子分散液(3) の調製)
着色剤粒子分散液(1) の調製において、黄色顔料の代わりにマゼンタ顔料(大日インキ化学社製、C.I.Pigment Red 122 )を用いた以外は、着色剤粒子分散液(1) と同様に調製して、体積平均粒径160 nm、固形分量21.5%の着色剤粒子分散液(3) を得た。
【0150】
(着色剤粒子分散液(3) の調製)
着色剤粒子分散液(1) の調製において、黄色顔料の代わりに黒顔料(キャボット製、カーボンブラック)を用いた以外は、着色剤粒子分散液(1) と同様に調製して、体積平均粒径170 nm、固形分量21.5%の着色剤粒子分散液(3) を得た。
【0151】
(離型剤粒子分散液の調製)
HNP09(日本精蝋製 融点75℃) 50 質量部
アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製 ダウファクス) 5 質量部
イオン交換水 200 質量部
前記成分を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA 社製、ウルトラタラックスT50 )で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で分散処理し、中心径120 nm、固形分量21.0%の離型剤粒子分散液を得た。
【0152】
トナー粒子(1)
〔トナー粒子(1)の作成〕
(トナー粒子の調製)
非結晶樹脂微粒子分散液(1) 130.8 質量部(樹脂54.94質量部)
着色剤粒子分散液(1) 39.5 質量部(顔料8.5質量部)
離型剤粒子分散液 38.1 質量部(離型剤8質量部)
ポリ塩化アルミニウム 0.14 質量部
前記成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA 社製、ウルトラタラックス T50)で十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら50℃まで加熱し、50℃で60分間保持した後、非結晶樹脂微粒子分散液(1) を68質量部(樹脂28.56質量部)追加して緩やかに攪拌した。その後、51℃に昇温し、そのままの温度で180分間維持、粒度分布がより狭くなっていくことをコールターカウンターで確認した。
【0153】
その後、0.5 モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.5 に調整した後、攪拌を継続しながら95℃まで加熱した。反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水3 リットル中に再分散し、15分、300 rpm で攪拌、洗浄した。この洗浄操作を5 回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、最終乾燥温度が40℃となるように設定し凍結乾燥を10時間行いトナー粒子を得た。
【0154】
[物性測定法]
[平均粒度分布]
コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)の粒度分布測定装置で測定した。アパーチャーのサイズは50μmとした。粒度分布の算出には、分割された粒度範囲(分割数:1.00〜32.0μmまでを16チャンネルに、logスケールで0.100343間隔となるように分割する。具体的にはチャンネル1が1.00μm以上1.26未満、チャンネル2が1.26μm以上1.59μm未満、チャンネル3が1.59μm以上2.00μm未満とし、体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16P、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50P、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84Pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDvs)は、体積粒度分布における16累積体積%に対する84累積体積%の比率の平方根、即ち(D84v/D16V1/2として算出される。なお、数平均粒度分布指標(GSDps)は(D84P/D16P1/2として算出される。
【0155】
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー]
分子量分布は以下の条件で行った値である。東ソー(株)HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSK gei, SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
このトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が4.60μm 、数平均分布指標GSDpsが1.23、表面性指標は、1.50であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は120 の球形状であった。
【0156】
また、得られたトナー粒子のこのトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、トナーは高さ約0.6μmの尖角を有しており、トナー1個あたりの平均の尖角数は3.3個で二個以上の尖角を有するトナー割合は83個数%であった。さらに尖角は結晶性樹脂が内包されておりさらに顔料が良好に分散されていた。
【0157】
上記のトナー粒子50質量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720) 2質量部を添加し、サンプルミルで混合して外添トナーを得た。
そして、ポリメチルメタアクリレート(総研化学社製)を1 %被覆した平均粒径50μm のフェライトキャリアを用い、トナー濃度が5 %になるように前記の外添トナーを秤量し、両者をボールミルで5 分間攪拌・混合して現像剤を調製した。
【0158】
トナー粒子(2)
〔トナー粒子(2)の作成〕
実施例1において、非結晶樹脂微粒子分散液(1) を結晶樹脂微粒子分散液(1) に変更し着色剤粒子分散液(1) から着色剤粒子分散液(2) に変更し、95℃加熱時のPHを4.0に維持した以外は、トナー粒子(1)の例と同様にしてトナー粒子を得た。
このトナー粒子の累積体積平均粒径D50は4.50μm 、数平均粒度分布指標GSDpsが1.22、表面性指標は、1.30であった。形状係数SF1は120 と球状であった。
また、得られたトナー粒子のこのトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、トナーは高さ約0.5μmの尖角を有しており、トナー1個あたりの平均の尖角数は4.1個で二個以上の尖角を有するトナー割合は84個数%であった。さらに尖角は結晶性樹脂が内包されておりさらに顔料が良好に分散されていた。
このトナー粒子を用いて実施例1と同様に外添トナーを得てさらに現像剤を調製した。
【0159】
トナー粒子(3)
〔トナー粒子(3)の作成〕
トナー粒子(1)の作成において、非結晶樹脂微粒子分散液(1) から結晶樹脂微粒子分散液(2) に変更し、着色剤粒子分散液(2) から着色剤粒子分散液(3) に変更しとした以外は、トナー粒子(2)と同様にしてトナー粒子を得た。
このトナー粒子の累積体積平均粒径D50は4.20μm 、数平均粒度分布指標GSDpsが1.24、表面性指標は、1.35であり、形状係数SF1は128のやや球状であった。
また、得られたトナー粒子のこのトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、トナーは高さ約0.5μmの尖角を有しており、トナー1個あたりの平均の尖角数は3.7個で二個以上の尖角を有するトナー割合は81個数%であった。さらに尖角は結晶性樹脂が内包されておりさらに顔料が良好に分散されていた。
このトナー粒子を用いて実施例1と同様に外添トナーを得てさらに現像剤を調製した。
【0160】
トナー粒子(4)
〔トナー粒子(4)の作成〕
実施例1において、、凝集温度を54℃としその温度に至るまでの時間を実施例1の半分に短縮するとともに、95℃保持時のPHを6.0に維持した以外は実施例1と同様にして、を このトナー粒子の累積体積平均粒径D50は5.10μm 、数平均粒径における数平均粒度分布指標GSDpsが1.25、表面性指標は2.05、形状係数SF1は135でポテト形状であった。
このトナー粒子を用いて実施例1と同様に外添トナーを得てさらに現像剤を調製した。
【0161】
感光体(1)〜感光体(4)、中間転写体(1)〜(5)、トナー粒子(1)〜(4)を用いた形成された現像剤を用いて、表1に示すそれぞれの組み合せによる画像を形成した。
【0162】
<実機評価>
富士ゼロックス製DocuCenterColor400改造機を使用。感光体周速を毎秒310mmに増速した。転写用紙としてゼロックス社製4024紙を使用し、初期画質と1万枚の連続走行試験を行って、画質の安定の評価を行った。
【0163】
<初期画質の評価>
以下の基準により評価した。
◎:画像のかすれや欠損の発生なく極めて良好
○:画像のかすれや欠損の発生なく良好
△:画像のかすれや欠損の発生が僅かにあるが、許容可能
×:画像欠損の発生があり、画質上での問題あり
【0164】
<画質維持性の評価>
DocuCenterColor400改造機により、ブレードクリーニング法による10万枚連続走行試験を行い、以下の基準により評価した。
◎:初期の良好な画質を完全に維持している
○:若干の変化はあるが良好に維持している
△:画像欠陥はあるが、許容可能
×:画像欠陥が見られ画質上での問題あり(例 クリーニング不良による背景部汚れ、筋などの発生)
結果を表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
表1から明かなように、感光体、中間転写体、トナーがいずれも本発明における要件を備えた実施例1〜実施例4の画像形成方法では、ラフ紙の初期画質が良好で10万枚連続走行時の画質が良好に維持されていた。しかし、感光体、中間転写体、トナーのいずれかが本発明における要件を備えいていない比較例1〜比較例4の画像形成方法では、ラフ紙の初期画質が十分でなく、10万枚連続走行時の画質も不充分であった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明における中間転写体の一実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
30 中間転写体
301 基材
302 弾性層
303 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも用いる画像形成方法であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いることを特徴とする画像形成方法
【請求項2】
表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の感光体と表面水接触角95度以上かつ表面の十点平均粗さRzが2ミクロン以下の中間転写体とを少なくとも備えた画像形成装置であって、数平均粒径の小径側粒度分布が1.24以下であるトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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