説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】放電電極に印加する電圧を大幅に低減或いは放電電極への電圧の印加を不要とすることができ、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができる省資源性に優れた画像形成方法の提供。
【解決手段】静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定工程と、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を画像情報に基づいて選択的に加熱して放電を発生させ静電潜像担持体の誘電層の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、静電潜像を現像して静電潜像担持体の誘電層の表面に可視像を形成する現像工程と、可視像を記録媒体に転写する転写工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱放電型印字ヘッドを用いて静電潜像担持体に形成した静電潜像を現像して画像を形成する画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)乃至(特許文献3)のイオン照射方式は、放電電極に印加しただけでは放電が発生せず加熱することにより放電が発生する電圧(放電制御電圧)を印加した状態で、放電電極への加熱の有無を制御することにより、放電の有無を制御してイオンの発生制御を行う加熱放電方式であり、放電電極全体に同時に電圧を印加することができ、画像情報に基づいて放電電極に印加される電圧のオン/オフを個別に制御する必要がない。その結果、発熱抵抗体等による加熱の制御に使用する5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICで放電の発生を制御することができ、放電の制御の観点からは最も優れた制御方式であると言える。
【0003】
このイオン照射型(加熱放電型)印字ヘッドによれば、デジタルペーパに代表されるような、表面に付与された電荷(静電潜像)の作用により画像を表示する静電現像方式の記録媒体に対して、静電潜像をイオン照射により直接形成できるので、静電現像方式の記録媒体に非接触で書き込むには現在考え得る最適な印字ヘッドである。
また、イオン照射方式による静電潜像形成方式を応用したものとして、(特許文献3)には、イオンの照射により静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像を現像して、トナーやインク等を用いた顕像化手段によって静電潜像担持体の表面に可視像を形成し、その可視像を転写手段によって普通紙やOHPシート等の印字媒体に転写する画像形成装置も提案されている。
【特許文献1】特許第3725092号公報
【特許文献2】WO2005−056297号
【特許文献3】特許第3936726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(特許文献1)乃至(特許文献3)は、電圧が印加された放電電極を加熱手段で選択的に加熱して放電の発生の有無を制御するため、発熱抵抗体を用いて加熱する場合、放電電極と発熱抵抗体の間を確実に絶縁する必要があり、絶縁膜に高い絶縁性が要求され、製造工数がかかり、量産性、歩留まりの向上が望まれていた。
また、高い絶縁性を実現するために、絶縁膜を厚くすると、熱の伝達に時間がかかり、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができず、印字速度の高速化が困難であるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の要望に応えるもので、放電電極に印加する電圧を大幅に低減或いは放電電極への電圧の印加を不要とすることができ、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができる省資源性に優れた画像形成方法の提供、発熱抵抗体などの加熱手段を用いて放電電極を加熱する場合でも、加熱手段と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性、長寿命性に優れ、加熱放電型印字ヘッドからの放電量の経時変化が発生し難く、画像品質の信頼性、安定性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性に優れ、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができる印字速度の高速性に優れた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の画像形成方法は、静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定工程と、前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極を画像情報に基づいて選択的に加熱して放電を発生させ前記静電潜像担持体の前記誘電層の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記静電潜像を現像して前記静電潜像担持体の前記誘電層の表面に可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定工程で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成することにより放電に備えることができ、潜像形成工程で画像情報に基づいて加熱放電型印字ヘッドの放電電極を選択的に加熱するだけで放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御して、静電潜像担持体の誘電層の表面に静電潜像を形成することができる。
(2)電位差設定工程により、放電電極への電圧印加や接地を行ったり、誘電層を帯電させたりして、加熱放電型印字ヘッドの放電電極と静電潜像担持体の誘電層との間の電位差が放電制御電圧と等しくなるように設定することができ、電位差の調整が容易で、電位差設定の自由度を向上させることができる。
(3)現像工程により静電潜像を現像して静電潜像担持体の誘電層の表面に可視像を形成することができ、転写工程で可視像を印字媒体に転写して記録を行うことができるので、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な媒体を印字媒体として使用することができ汎用性に優れる。
【0007】
ここで、加熱放電型印字ヘッドは、電位差設定工程において静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成すると共に、潜像形成工程において放電電極を選択的に加熱することにより放電の発生を制御できるので、電位差設定工程の後工程として放電電極加熱工程を行う。
放電制御電圧とは、その電位差だけでは放電は起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域を言い、放電電極の材質、周囲の環境などに応じて変動する。放電電極と誘電層が離間して形成された放電空間が、大気等のイオン生成可能な雰囲気である場合には、放出された電子が酸素や窒素をイオン化し、それらを誘電層の表面に到達させることができ、多量のイオンで効率的に静電潜像を形成することができる。
【0008】
放電電極は、例えば複数の放電発生部の一端部を共通電極で接続して櫛型に形成したり、複数の放電発生部の両端部を共通電極で接続して梯子型等に形成したりできるほか、長方形状や正方形状等の一枚の平板状に形成することができる(例えば、特開2003−326756号、WO2005/056297参照)。
櫛型や梯子型のように放電発生部近傍に共通電極を設けることで、放電電極の放熱面積の拡大及び、熱容量の増大により、放電電極の冷却効果、加熱停止に対する応答性が向上し、また、抵抗値の低減により常に安定した電圧を印加できるので、放電の安定性等を更に向上させることができる。尚、平板状に形成した放電電極は、放電発生部以外が共通電極となる。
特に、共通電極の幅を放電発生部の幅より幅広に形成した場合、一時的に100〜300℃に加熱される放電電極の冷却効果が向上し、熱の籠りを防ぐことができるので、加熱のオフに迅速に応答して放電を停止でき、放電時間間隔を短縮して短時間で放電の有無を切替えることができ、記録速度の高速化を図ることができる。また、共通電極の抵抗値を引き下げることができ、共通電極で接続された各々の放電発生部の間に生じる電位差を極力抑えることができるので、各々の放電発生部における電子放出量のばらつきを低減でき、放電の安定性に優れる。
【0009】
放電電極は、基板上に金、銀、銅、アルミニウム等の金属を蒸着、スパッタ、印刷、メッキなどで形成した後、必要に応じてエッチングして放電発生部や共通電極をパターン形成するもの、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属の少なくとも一部をエッチングや切削等により薄肉化した後、必要に応じてエッチングやレーザ加工等により放電電極をパターン形成するもの等が好適に用いられる。また、その他にカーボン等の導電材料を用いて放電電極を形成してもよい。
基板上に放電電極を形成する場合、基板の材質としては、表面に放電電極を形成することができると共に、加熱手段による加熱に耐える耐熱性を有するものであればよい。また、加熱手段で基板の裏面側から加熱を行う場合、加熱手段が発する熱を放電電極に伝達できる熱伝達性を有するものが好適に用いられる。具体的には、ガラスやポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の合成樹脂等が好適に用いられる。
【0010】
放電電極を櫛型に形成する場合、各々の放電発生部の形状は、略矩形状、台形状、半円形状、砲弾状あるいはこれらを組合せた形状等に形成することができる。また、放電発生部の一部をさらにスリット等で分割したり、周縁部に凹凸部を形成したりすることで放電発生部の縁周辺の周長を増加させることができる(例えば、WO2005/056297参照)。放電電極は縁周辺からの電子放出量が多いので、縁周辺の周長を長くすることで、放電電極からの電子放出量を増加させて照射されるイオン量や発光強度を増加させることができ、放電制御電圧や加熱温度を低く設定することができ、省エネルギー性及び放電発生の効率性に優れる。また、放電制御電圧を低く設定できるので、放電電極の長寿命性にも優れる。
放電電極の端部を分割したり周縁部に凹凸部を形成したりする代りに、放電発生部(加熱位置)の近傍に放電孔部を形成してもよい。これにより、放電孔部の縁周辺から電子を放出させることができ、放電電極の端部を分割するのと同様の作用を得ることができる。放電孔部の形状は、略円形、略楕円形、四角形や六角形等の多角形、星形など様々な形状に形成することができる。また、放電発生部(加熱位置近傍)の1箇所当たりの放電孔部の数及び大きさは適宜選択して組合せることができる。尚、放電電極の凹凸部や放電孔部は前述のエッチングやレーザ加工等により形成することができる。
【0011】
また、放電電極の内の少なくとも共通電極の表面には導電材層を形成してもよい。これにより、共通電極の抵抗値を更に引き下げることができ、各々の放電発生部間に生じる電位差を確実に低減でき、放電の安定性に優れる。導電材層は放電電極よりも優れた導電性を有するものであればよく、銀ペーストのスクリーン印刷や銀メッキ等により容易に形成することができる。導電材層の厚みを増すことにより、共通電極の抵抗値を低減でき、放電の安定性を向上させることができる。
放電電極の厚さは材質にもよるが、金で形成する場合の厚さは0.1μm〜100μmが好ましい。放電電極の厚さが0.1μmより薄くなるにつれ摩耗の影響を受け易く放電電極の寿命が短くなる傾向があり、100μmより厚くなるにつれ熱容量が増加し加熱のオン/オフに対する応答性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。放電電極の厚さを100μm以下にすることで、加熱状態から急速に復帰させることができ、印字速度を高速化することができる。
【0012】
放電電極を加熱する加熱手段としては、放電電極の任意の位置(放電発生部)を選択的に加熱できるものであればよく、放電電極に絶縁層を介して密着して加熱するものでもよいし、放電電極から離間して加熱するものでもよい。
放電電極と絶縁層を介して密着させて加熱する加熱手段としては、従来の感熱式のファクシミリに使用されるサーマルプリントヘッドと同様の構成を好適に用いることができる。具体的には、発熱抵抗体と電気的に接続されたドライバICで発熱抵抗体の発熱を制御するものである。この発熱抵抗体としては、TaSiO2、RuO2等が好適に用いられる。
放電電極と発熱抵抗体を絶縁する絶縁層の材質としては、絶縁性及び加熱手段による加熱に耐える耐熱性を有すると共に、加熱手段が発する熱を放電電極に伝達できる熱伝達性を有するものが好適に用いられる。具体的には、ガラスやポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリフェニレンオキシド,ポリベンズイミダゾール,ボリフェニルキノキサリン,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン,アラミド等の合成樹脂等が好適に用いられる。
【0013】
放電電極と離間して加熱する加熱手段としては、レーザ光を照射する方式や赤外線を照射する方式等の光照射部を有するものが好適に用いることができる。レーザ光を照射する方式の光照射部としては、レーザ照射部とポリゴンミラーやガルバノミラー等の光走査部を組合せて放電電極に対してレーザ光のみを走査(スキャン)させるもの、放電電極に対してレーザ照射部自体をシリアル走査させるもの等が好適に用いられる。また、レーザ光や赤外線を光ファイバーや集光レンズで集光して放電電極に照射してもよい。特に多本数の光ファイバーを高密度かつ高精度に配列した光ファイバーアレイを用いた場合、同時に複数の放電電極の放電発生部に対し、レーザ光や赤外線を選択的に照射することができ、高速記録が可能である。このとき、各々の光ファイバーと放電電極(放電発生部)を一対一に対応させ、光ファイバーの出口先端を放電電極に固定してもよい。また、光ファイバーの出口先端などの集光部の光の出口表面に直接、クロムを蒸着して金メッキする等して放電電極を形成することもできる。
【0014】
静電潜像担持体としては、ドラム型,ベルト型,平板型(シート状)等の様々な形状のものを用いることができる。静電潜像担持体の素材としては、電子やイオンの照射により表面が帯電するものであればよいので、感光体である必要はなく、アルマイト等の絶縁体やポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の合成樹脂やガラス等を用いることもできる。尚、静電潜像担持体が感光体の場合は、光を照射することで除電することができ、絶縁体の場合はAC電圧で除電することができる。また、静電潜像担持体が絶縁体の場合、感光体に比べ劣化が発生し難く長寿命性に優れる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法であって、前記電位差設定工程が、前記静電潜像担持体の前記誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電工程を備えた構成を有している。
この構成により請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定工程が、静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電工程を有することにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧を低減することができ、特に帯電工程のみで放電制御電圧に相当する電位差を形成することができる場合は、放電電極を接地するだけで、直接電圧を印加する必要がなく、放電電極へのダメージを大幅に低減して絶縁破壊を防止でき、放電電極の耐久性を向上させ、経時的な画像品質の低下を防ぐことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法であって、前記電位差設定工程が、前記誘電層を挟んで前記加熱放電型印字ヘッドと対向配置された前記静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定工程が、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択工程を有するので、静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成するように、放電電極への接地又は電圧印加を行うことにより、放電に備えることができ、潜像形成工程においては、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極からの放電の発生を制御することができ、取り扱い性に優れる。
【0017】
ここで、電位差設定工程では、放電制御電圧を任意に分配して静電潜像担持体の導電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加することができる。よって、静電潜像担持体の導電層又は加熱放電型印字ヘッドの放電電極の一方を接地した場合には、他方に放電制御電圧を印加することになる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の画像形成装置は、放電電極と前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを有する加熱放電型印字ヘッドと、誘電層を有し前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で前記誘電層の表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の前記誘電層と前記加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定部と、前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像を現像して前記静電潜像担持体の表面に可視像を形成する顕像化手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定部で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成することにより、放電に備えることができ、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を加熱手段で選択的に加熱するだけで放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御でき、放電に伴って発生したイオンを所望の位置に精度良く照射して静電潜像担持体の誘電層の表面に直接、静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(2)顕像化手段により静電潜像を現像して静電潜像担持体の誘電層の表面に可視像を形成することができ、転写手段で可視像を印字媒体に転写して記録を行うことができるので、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な媒体を印字媒体として使用することができ汎用性に優れる。
(3)加熱放電型印字ヘッドからのイオンの照射により静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができるので、ポリゴンミラー等の露光光学系を必要とせず、部品点数が少なく構造を簡素化できる。
【0019】
ここで、加熱放電型印字ヘッド及び静電潜像担持体については、請求項1で説明した通りである。
顕像化手段としては、トナー現像を行う現像器が好適に用いられるが、インクやその他の方法で現像を行ってもよい。尚、トナー現像に用いるトナーは乾式でも湿式でもよい。
転写手段として、アルミニウム等の金属製のローラの表面をシリコーンゴム等の合成ゴムで被覆した転写定着ローラ等が好適に用いられる。トナー現像の際に圧力定着型のトナーを用いれば、転写手段により押圧することで可視像を記録媒体に転写できると共に、定着させることができる。
画像形成装置には、転写後の静電潜像担持体の表面に残留したトナーを物理的に掻き取って清浄化するクリーナを備えることが好ましい。これにより、常に安定した状態で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができ信頼性に優れる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置であって、前記電位差設定部が、前記静電潜像担持体の前記誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電制御部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定部が、静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電制御部を有することにより、放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができるので、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を発熱抵抗体を用いた加熱手段によって加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なくなり、絶縁膜を形成する工程を簡素化して加熱放電型印字ヘッドの歩留まりを向上させることができ、量産性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性を向上させて、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができ、印字速度の高速性に優れる。
【0021】
ここで、帯電制御部は、静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させることができるものであればよい。例えば、非接触型放電方式のコロトロン型やスコロトロン型の帯電器や接触方式の帯電ローラや帯電ブラシなどが好適に用いられる。
電位差設定部は、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に対して電圧印加又は接地を行う放電電極側電圧制御部を有している。帯電制御部により一様に帯電した静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に、放電制御電圧に相当する電位差を形成するために、不足する電圧の印加又は接地を行うためである。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置であって、前記電位差設定部が、前記誘電層を挟んで前記加熱放電型印字ヘッドと対向配置された前記静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定部が、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択部を有することにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧(接地の場合も含む)に応じて、必要な電圧の印加又は接地を行って放電制御電圧に相当する電位差を形成することができ、汎用性に優れると共に、放電に伴って発生したイオンを静電潜像担持体の表面の所望の位置に精度良く照射して静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(2)導電層側電圧選択部で静電潜像担持体の導電層へ電圧を印加することにより、放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができるので、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を発熱抵抗体を用いた加熱手段によって加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なくなり、絶縁膜を形成する工程を簡素化して加熱放電型印字ヘッドの歩留まりを向上させることができ、量産性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性を向上させて、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができ、印字速度の高速性に優れる。
【0023】
ここで、電位差設定部は、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に対して電圧印加又は接地を行う放電電極側電圧制御部を有している。導電層側電圧選択部により導電層へ電圧印加又は接地された静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に、放電制御電圧に相当する電位差を形成するために、不足する電圧の印加又は接地を行うためである。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の画像形成方法及び画像形成装によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定工程で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成した上で、潜像形成工程で画像情報を現像して加熱放電型印字ヘッドの放電電極を選択的に加熱することにより放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御して、静電潜像担持体の表面に所望の静電潜像を形成することができる制御性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定工程の帯電工程において、予め静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させることにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧を低減することができ、特に帯電工程のみで放電制御電圧に相当する電位差を形成することができる場合は、放電電極を接地するだけで、直接電圧を印加する必要がなく、放電電極へのダメージを大幅に低減して絶縁破壊を防止でき、放電電極の耐久性を向上させ、経時的な画像品質の低下を防ぐことができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定工程の導電層側電圧選択工程において、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行うことにより、接地又は電圧印加された放電電極との間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を形成して放電に備えることができ、潜像形成工程においては、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極からの放電の発生を制御することができる取り扱い性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定部で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成することにより、放電に備えることができ、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を加熱手段で選択的に加熱するだけで放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御でき、放電に伴って発生したイオンを所望の位置に精度良く照射して静電潜像担持体の誘電層の表面に直接、静電潜像を形成することができる画像の高品質性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定部の帯電制御部で静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させることにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができ、放電電極を発熱抵抗体を用いた加熱手段によって加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して加熱放電型印字ヘッドの歩留まりを向上でき、放電電極のダメージを低減して絶縁破壊の発生を防止でき、量産性、取り扱い性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性に優れ、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができる印字速度の高速性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電位差設定部の導電層側電圧選択部により、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧(接地の場合も含む)に応じて、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への必要な電圧の印加又は接地を行って確実に放電制御電圧に相当する電位差を形成することができ、汎用性に優れ、放電に伴って発生したイオンを静電潜像担持体の表面の所望の位置に精度良く照射して静電潜像を形成することができる画像の高品質性に優れた画像形成装置を提供することができる。
(2)導電層側電圧選択部で静電潜像担持体の導電層へ電圧を印加することにより、放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができ、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を発熱抵抗体を用いた加熱手段によって加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して加熱放電型印字ヘッドの歩留まりを向上させることができ、量産性、取り扱い性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性に優れ、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができる印字速度の高速性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置の要部模式正面図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置、2は画像形成装置1の加熱放電型印字ヘッド、3は誘電層3aを有し加熱放電型印字ヘッド2からの放電による電荷の作用で誘電層3aの表面に静電潜像が形成される画像形成装置1の静電潜像担持体、4は静電潜像担持体3の誘電層3a側の表面を一様に帯電させることにより静電潜像担持体3の誘電層3aと加熱放電型印字ヘッド2の放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定部としての帯電制御部、5は静電潜像を現像して静電潜像担持体3の表面にトナー35で可視像を形成する顕像化手段としての現像器、6は可視像を印字媒体30の表面30aに転写する転写手段としての転写定着ローラ、7は転写後の静電潜像担持体3の表面に残留したトナー35を物理的に掻き取って清浄化するクリーナ、30は普通紙、OHPシート、光沢紙等の各種の印字媒体である。
【0031】
本実施の形態では、ドラム型の静電潜像担持体3を使用したが、これに限定されるものではなく、ベルト型,平板型(シート状)等の様々な形状のものを用いることができる。
尚、静電潜像担持体3の素材は、電子やイオンの照射により表面が帯電するものであればよく、アルマイト等の絶縁体やポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の合成樹脂やガラス等を用いることができる。
また、帯電制御部4として、非接触型放電方式のコロトロン型の帯電器を使用したが、これに限定されるものではなく、帯電制御部4は静電潜像担持体3の誘電層3a側の表面を一様に帯電させることができるものであればよい。
顕像化手段として、トナー現像を行う現像器5を用いたが、トナーは乾式でも湿式でもよい。尚、トナーの代わりに、インクやその他の方法で現像を行ってもよい。
転写手段として、アルミニウム等の金属製のローラの表面をシリコーンゴム等の合成ゴムで被覆した転写定着ローラ6を用いた。トナー現像の際に圧力定着型のトナーを用いれば、転写定着ローラ6により押圧することで可視像を印字媒体30に転写できると共に、定着させることができる。
【0032】
次に、実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置の加熱放電型印字ヘッドについて説明する。
図2(a)は実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの要部模式断面側面図であり、図2(b)は実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの放電ユニットの要部模式平面図である。
図2中、4aは後述する加熱放電型印字ヘッド2の電気接続部13dに電気的に接続され放電電極13を接地する画像形成装置1における電位差設定部の放電電極側電圧制御部、10は加熱放電型印字ヘッド2の放電ユニット、11はポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の合成樹脂で形成された透光性を有する放電ユニット10の基板、11aは開口部11bを有し基板11が固設された放電ユニット10の形状保持板、12は基板11上にカーボン等を含有する黒色の塗料を塗布したり、クロムを蒸着したりして形成した放電ユニット10の熱吸収層、13は金、銀、銅、アルミニウム等の金属を蒸着、スパッタ、印刷、メッキなどで形成した後、エッチングして梯子型に形成した放電ユニット10の放電電極、13aは放電電極13の複数の放電発生部、13bは複数の放電発生部13aの両端部を接続した放電電極13の共通電極、13cは放電発生部13aと放電発生部13aの間に形成された放電電極13の放電開口部、13dは放電電極13の共通電極13bの一端部に連設して形状保持板11aの一側部に配置され接地される放電ユニット10の電気接続部、15は放電ユニット10の放電電極13と離間して配設され放電電極13の放電発生部13aに選択的に光を照射する光照射部を有する加熱放電型印字ヘッド2の加熱手段である。
【0033】
加熱放電型印字ヘッド2は、放電ユニット10の放電電極13に対し、加熱手段15の光照射部が発するレーザ光をポリゴンミラーやガルバノミラーなどの光走査部(図示せず)で走査させたり、加熱手段15自身を加熱手段走査部(図示せず)でシリアル走査させたりすることにより、任意の放電発生部13aを加熱することができる。尚、レーザ光を光ファイバーで集光して照射してもよい。
加熱手段15としては、放電電極13から離間して放電発生部13aを選択的に加熱できるものであればよく、光照射部からレーザ光を照射するもの以外に赤外線を光ファイバーや集光レンズで集光して照射するもの等も用いることができる。
【0034】
基板3の材質は、本実施の形態に限定されるものではなく、表面に熱吸収層12及び放電電極13を形成することができると共に、加熱手段15による加熱に耐える耐熱性と、加熱手段15が発する光によって伝播する熱を放電電極13に伝達できる熱伝達性を有するものであればよい。尚、放電電極13が十分な熱吸収性を有する場合は、熱吸収層12は必ずしも設けなくてもよい。また、基板11と熱吸収層12の配置を入れ替えても、熱吸収層12に吸収された熱を基板11を通して放電電極13に伝達することができる。
放電電極13は、梯子型に形成して複数の放電発生部13aに分割することにより、放電発生部13aの縁周辺からの放電量を増加させ、放電の効率性を向上させている。また、放電発生部13aの近傍に共通電極13bを設けることで、放電電極13の放熱面積の拡大及び、熱容量の増大により、放電発生部13aの冷却効果、加熱停止に対する応答性が向上し、高速記録が可能となる。さらに、抵抗値の低減により常に安定した電圧を印加できるので、放電の安定性にも優れる。
また、放電電極13の形状は本実施の形態に限定されるものではなく、放電発生部13aの数や配置は適宜、選択することができる。千鳥状や格子状等に配置することもできるし、放電電極13全体を長方形状や正方形状等の一枚の平板ベタ状に形成することや、複数の放電発生部13aの一端側のみを共通電極13bで接続して櫛型に形成することもできる。
【0035】
以上のように構成された画像形成装置の動作に基づいて実施の形態1の画像形成方法を説明する。
まず、電位差設定工程の帯電工程において、帯電制御部4によって静電潜像担持体3の誘電層3a側の表面を一様に負に帯電させる。
次に、潜像形成工程において、加熱放電型印字ヘッド2の放電電極13の放電発生部13aを画像情報に基づいて加熱手段15で選択的に加熱して放電を発生させ、静電潜像担持体3の誘電層3aの表面に静電潜像を形成するが、このとき、静電潜像担持体3の誘電層3aと加熱放電型印字ヘッド2の放電電極13との間には放電制御電圧に相当する電位差を形成しなければ放電は起こらない。
本実施の形態では、電位差設定部の放電電極側電圧制御部4aにより加熱放電型印字ヘッド2の放電電極13を接地することにより、一様帯電した静電潜像担持体3の誘電層3aと加熱放電型印字ヘッド2の放電電極13との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成しているが、静電潜像担持体3側の帯電量が不十分な場合は、放電電極側電圧制御部4aにより放電電極13へ電圧を印加すればよい。
尚、本実施の形態では、放電の発生に伴い正のイオンが照射されことにより、負の電荷と中和されて静電潜像が形成される場合について説明する。
次に、現像工程において、静電潜像は現像器5で現像され可視像が形成された後、転写工程において、可視像が転写定着ローラ6で押圧され、印字媒体30の表面30aに転写、定着される。
【0036】
実施の形態1の画像形成方法によれば、以下の作用を有する。
(1)電位差設定工程で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成することにより放電に備えることができ、潜像形成工程で画像情報に基づいて加熱放電型印字ヘッドの放電電極を選択的に加熱するだけで放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御して、静電潜像担持体の誘電層の表面に静電潜像を形成することができる。
(2)電位差設定工程により、放電電極への電圧印加や接地を行ったり、誘電層を帯電させたりして、加熱放電型印字ヘッドの放電電極と静電潜像担持体の誘電層との間の電位差が放電制御電圧と等しくなるように設定することができ、電位差の調整が容易で、電位差設定の自由度を向上させることができる。
(3)現像工程により静電潜像を現像して静電潜像担持体の誘電層の表面に可視像を形成することができ、転写工程で可視像を印字媒体に転写して記録を行うことができるので、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な媒体を印字媒体として使用することができ汎用性に優れる。
(4)電位差設定工程が、静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電工程を有することにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧を低減することができ、特に帯電工程のみで放電制御電圧に相当する電位差を形成することができる場合は、放電電極を接地するだけで、直接電圧を印加する必要がなく、放電電極へのダメージを大幅に低減して絶縁破壊を防止でき、放電電極の耐久性を向上させ、経時的な画像品質の低下を防ぐことができる。
【0037】
実施の形態1の画像形成装置によれば、以下の作用を有する。
(1)電位差設定部で静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成することにより、放電に備えることができ、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を加熱手段で選択的に加熱するだけで放電を発生させることができるので、高電圧の制御が不要で、容易に放電の発生を制御でき、放電に伴って発生したイオンを所望の位置に精度良く照射して静電潜像担持体の誘電層の表面に直接、静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(2)顕像化手段により静電潜像を現像して静電潜像担持体の誘電層の表面に可視像を形成することができ、転写手段で可視像を印字媒体に転写して記録を行うことができるので、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な媒体を印字媒体として使用することができ汎用性に優れる。
(3)加熱放電型印字ヘッドからのイオンの照射により静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができるので、ポリゴンミラー等の露光光学系を必要とせず、部品点数が少なく構造を簡素化できる。
(4)電位差設定部が、静電潜像担持体の誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電制御部を有することにより、放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができ、加熱放電型印字ヘッドの放電電極の絶縁破壊を防止でき、放電電極の耐久性に優れ、放電発生の安定性を向上させることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2の画像形成方法に用いる画像形成装置の要部模式正面図であり、図4は実施の形態2の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの要部模式断面側面図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図3において、実施の形態2の画像形成装置1Aが実施の形態1と異なるのは、静電潜像担持体3Aが、誘電層3aを挟んで加熱放電型印字ヘッド2と対向配置された導電層3bを有する点と、電位差設定部として静電潜像担持体3の誘電層3a側の表面を一様に帯電させる帯電制御部4の代わりに、静電潜像担持体3の導電層3bへ電圧印加を行う導電層側電圧選択部4Aを有する点である。
【0039】
実施の形態2の画像形成装置1Aで用いられる加熱放電型印字ヘッド2Aが実施の形態1と異なるのは、放電電極13Aが平板ベタ状に形成されている点と、放電電極13と離間して配置された光照射部を有する加熱手段15の代わりに、発熱抵抗体15aを用いた加熱手段15Aを有している点である。
尚、図4中、14は放電電極13Aと発熱抵抗体15aを絶縁する絶縁膜、15bは発熱抵抗体15aと電気的に接続され発熱抵抗体15aの発熱を制御する加熱手段15AのドライバICである。
【0040】
以上のように構成された画像形成装置の動作に基づいて実施の形態2の画像形成方法を説明する。
実施の形態2の画像形成方法が、実施の形態1と異なる点は、電位差設定工程において、帯電制御部4によって直接、静電潜像担持体3の誘電層3a側の表面を一様に負に帯電させる帯電工程の代わりに、導電層側電圧選択部4Aによって静電潜像担持体3の導電層3bへ負電圧を印加することにより、静電潜像担持体3の誘電層3a側を一様に負に帯電させる導電層側電圧選択工程を有する点である。
その他の工程は、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0041】
実施の形態2の画像形成方法によれば、実施の形態1の(1)乃至(3)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)電位差設定工程が、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択工程を有するので、静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成するように、放電電極への接地又は電圧印加を行うことにより、放電に備えることができ、潜像形成工程においては、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極からの放電の発生を制御することができ、取り扱い性に優れる。
【0042】
実施の形態2の画像形成装置によれば、実施の形態1の(1)乃至(3)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)電位差設定部が、誘電層を挟んで加熱放電型印字ヘッドと対向配置された静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択部を有することにより、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する電圧(接地の場合も含む)に応じて、必要な電圧の印加又は接地を行って放電制御電圧に相当する電位差を形成することができ、汎用性に優れると共に、放電に伴って発生したイオンを静電潜像担持体の表面の所望の位置に精度良く照射して静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(2)導電層側電圧選択部で静電潜像担持体の導電層へ電圧を印加することにより、放電電極に印加する電圧を低く抑えることや、放電電極を接地するだけで直接、電圧を印加しないようにすることができるので、加熱放電型印字ヘッドの放電電極を発熱抵抗体を用いた加熱手段によって加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なくなり、絶縁膜を形成する工程を簡素化して加熱放電型印字ヘッドの歩留まりを向上させることができ、量産性に優れると共に、加熱手段から放電電極への熱伝達性を向上させて、放電の発生の有無を迅速に切り替えることができ、印字速度の高速性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、放電電極に印加する電圧を大幅に低減或いは放電電極への電圧の印加を不要とすることができ、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができる画像形成方法の提供、発熱抵抗体などの加熱手段を用いて放電電極を加熱する場合でも、加熱手段と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性、長寿命性に優れ、加熱放電型印字ヘッドからの放電量の経時変化が発生し難く、画像品質の信頼性、安定性に優れる画像形成装置の提供を行って、静電潜像担持体に直接、静電潜像を形成することができ、各種印字媒体に高品質な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置の要部模式正面図
【図2】(a)実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの要部模式断面側面図(b)実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの放電ユニットの要部模式平面図
【図3】実施の形態2の画像形成方法に用いる画像形成装置の要部模式正面図
【図4】実施の形態2の画像形成方法に用いる画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの要部模式断面側面図
【符号の説明】
【0045】
1,1A 画像形成装置
2,2A 加熱放電型印字ヘッド
3,3A 静電潜像担持体
3a 誘電層
4 帯電制御部
4a 放電電極側電圧制御部
5 現像器
6 転写定着ローラ
7 クリーナ
10 放電ユニット
11 基板
11a 形状保持板
11b 開口部
12 熱吸収層
13,13A 放電電極
13a 放電発生部
13b 共通電極
13c 放電開口部
13d 電気接続部
14 絶縁膜
15,15A 加熱手段
15a 発熱抵抗体
15b ドライバIC
30 印字媒体
30a 表面
35 トナー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体の誘電層と加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定工程と、前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極を画像情報に基づいて選択的に加熱して放電を発生させ前記静電潜像担持体の前記誘電層の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記静電潜像を現像して前記静電潜像担持体の前記誘電層の表面に可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記電位差設定工程が、前記静電潜像担持体の前記誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記電位差設定工程が、前記誘電層を挟んで前記加熱放電型印字ヘッドと対向配置された前記静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
放電電極と前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを有する加熱放電型印字ヘッドと、誘電層を有し前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で前記誘電層の表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の前記誘電層と前記加熱放電型印字ヘッドの放電電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を形成する電位差設定部と、前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像を現像して前記静電潜像担持体の表面に可視像を形成する顕像化手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記電位差設定部が、前記静電潜像担持体の前記誘電層側の表面を一様に帯電させる帯電制御部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電位差設定部が、前記誘電層を挟んで前記加熱放電型印字ヘッドと対向配置された前記静電潜像担持体の導電層への電圧印加又は接地を行う導電層側電圧選択部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113322(P2009−113322A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288596(P2007−288596)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(302004366)有限会社 福岡テクノ研工業 (16)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】