説明

画像形成方法

【課題】高速記録においても、記録媒体への密着性に優れ、描画性が良好で高精細な画像を形成可能な画像形成方法を提供する。
【解決手段】原紙11と、バインダーを含む第1の層12と、白色顔料および酸性物質を含む第2の層13と、が順次積層されており、前記原紙上に配置された前記第1の層の表面におけるJIS P8140に準拠した吸水度試験による接触時間120秒のコッブ吸水度が2.0g/m以下であって、前記第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2ml/m以上8ml/m以下であり、かつ前記第2の層の表面のpHが5.5以下である記録媒体上に、顔料、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマー、及び水を少なくとも含むインク組成物を、インクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程を有する画像形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法の一つとして、インクジェット技術がある。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では、商業印刷分野での応用がなされつつある。
特に、近年、印画の高速化に対するニーズが高まっており、シングルパスのような高速印刷システムを用いてインクジェット記録を行う場合、カールやカックル、紙変形を押さえつつ、ブロンズ及び色間混色を防止した記録媒体を用いることによって、高品質な画像の形成を安価に行える方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、顔料を含有するインクに良好な耐擦性を与えるために、多孔質性インク受像層を有する記録媒体上に、着色剤、光硬化性モノマーを含有するインクジェット用インクを付与する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−125948号公報
【特許文献2】特開2001−323194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の顔料とポリマー粒子を含有するインクでは、該ポリマー粒子がバインダーとして機能することで、定着性および耐水性をある程度向上させることができるが、その定着性はポリマーの熱特性に左右されることから、十分な性能が得られにくく、特に高速記録においてはそれが顕著に現れる場合がある。このような場合に、ポリマーの軟化点を下げることにより定着性がある程度向上するが、高温環境下での画像面の接着減少が発生し、両性能を両立することが困難となる。
また、特許文献2に記載の方法では、高速印画の際にインク同士が合一(着弾干渉)するため、高速記録に適さないという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、高速記録においても、記録媒体への密着性に優れ、描画性が良好で高精細な画像を形成可能な画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 原紙と、バインダーを含む第1の層と、白色顔料および酸性物質を含む第2の層と、が順次積層されており、前記原紙上に配置された前記第1の層の表面におけるJIS P8140に準拠した吸水度試験による接触時間120秒のコッブ吸水度が2.0g/m以下であって、前記第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2ml/m以上8ml/m以下であり、かつ前記第2の層の表面におけるpHが5.5以下である記録媒体上に、顔料、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマー、及び水を少なくとも含むインク組成物を、インクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程を有する画像形成方法。
【0006】
<2> 前記酸性物質は、分子量が100以上で、かつ分子内に2以上のカルボキシル基を有し、そのpKa(25℃)が2.6以上4.6以下であって、pKa(25℃)が3.8以上5.4以下である、前記<1>に記載の画像形成方法。
<3> 前記酸性物質は、水への溶解度(25℃)が5質量%以上である、前記<1>または<2>に記載の画像形成方法。
<4> 前記酸性物質は、水への溶解度(25℃)が、30質量%以上70質量%以下である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<5> 前記酸性物質は、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びクエン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<6> 前記第2の層は、さらに水溶性多価金属化合物を含有する前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0007】
<7> 前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<8> 前記ポリマー分散剤は、カルボキシル基を有する、前記<7>に記載の画像形成方法。
【0008】
<9> 前記重合性モノマーは、ノニオン性化合物である、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<10> 前記インク組成物は、顔料の含有率が1.8質量%以上5.5質量%以下であり、前記重合性モノマーの含有率が10質量%以上22質量%以下である、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<11> 前記インク組成物は、さらに光重合開始剤を含む、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0009】
<12> 前記バインダーは、熱可塑性樹脂を含む、前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<13> 前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系ウレタン樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂から選択される少なくとも1種である、前記<12>に記載の画像形成方法。
<14> 前記第1の層は、白色顔料をさらに含む、前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<15> 前記第1の層及び第2の層に含まれる白色顔料の少なくとも一方は、カオリンである、前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<16> 前記第2の層は、層表面のpHが4以下である、前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速記録においても、記録媒体への密着性に優れ、描画性が良好で高精細な画像を形成可能な画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における記録媒体の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、原紙と、バインダーを含む第1の層と、白色顔料および酸性物質を含む第2の層と、が順次積層されており、前記原紙上に配置された前記第1の層の表面におけるJIS P8140に準拠した吸水度試験による接触時間120秒のコッブ吸水度が2.0g/m以下であって、前記第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2ml/m以上8ml/m以下であり、かつ前記第2の層の表面におけるpHが5.5以下である記録媒体(以下、「特定記録媒体」ということがある)上に、顔料、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマー(以下、単に「重合性モノマー」ということがある)、及び水を少なくとも含むインク組成物を、インクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
特定記録媒体上に、重合性モノマーを含むインク組成物を付与することで、高速記録においても、記録媒体への密着性に優れ、着弾干渉が抑制された高精細な画像を形成することができる。
【0013】
[インク付与工程]
本発明におけるインク付与工程では、顔料、水溶性の重合性モノマー、及び水を含有するインク組成物を、特定記録媒体上に、インクジェット法で付与して画像を形成する。記録媒体およびインク組成物の詳細については後述する。
【0014】
(インクジェット法)
インクジェット法による画像形成では、エネルギーを供与することにより、記録媒体上にインク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0015】
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0016】
またインクジェット法として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0017】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
【0018】
インク組成物の記録媒体への付与量は、所望の画像濃度等に応じて適宜選択できるが、画像密着性と画像濃度の観点から、インク組成物の最大付与量が3〜20ml/mであることがより好ましく、5〜15ml/mであることがさらに好ましい。
【0019】
[活性エネルギー線照射工程]
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射することでインク組成物に含まれる重合性モノマーが重合して、顔料を含む硬化膜を形成する。これにより画像の密着性、耐擦性、耐ブロッキング性がより効果的に向上する。
【0020】
記録媒体上に付与されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射されることで硬化する。これは、例えば、必要に応じてインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種により重合性モノマーの重合反応が開始・促進されてインク組成物が硬化するためである。
【0021】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが使用される。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、その積算照射量が5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。活性エネルギー線の積算照射量がかかる範囲であることで、画像の密着性がより効果的に向上する。
【0022】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LEDおよび紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。
本発明で特に好ましい活性エネルギー線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0023】
[インク乾燥工程]
本発明の画像形成方法においては、必要に応じて、記録媒体上に付与されたインク組成物中のインク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶剤等)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、インク溶媒の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
【0024】
例えば、インク乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行える。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0025】
またインク乾燥工程は、インク付与工程の後に行われればよく、活性エネルギー線照射工程の前でも、後であってもよい。本発明においては、硬化感度と密着性の観点から、活性エネルギー線照射工程の前に行われることが好ましい。
【0026】
以下、本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体、インク組成物、処理液等について詳細に説明する。
[記録媒体]
本発明における記録媒体は、原紙と、該原紙側から順に設けられた第1の層及び第2の層とを有してなり、必要に応じて、更に適宜選択された他の層を設けて構成することができる。本発明の記録媒体は、例えば、図1に示す記録媒体100のように、原紙としての上質紙111と、上質紙111の上に形成された第1の層としての溶媒ブロッキング層112と、溶媒ブロッキング層112の上に形成された第2の層としてのコート層113とを設けて構成される。また、記録媒体は、シート紙及びロール紙のいずれであってもよい。
【0027】
(原紙)
原紙としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
【0028】
原紙の原料として使用できるパルプとしては、原紙の表面平滑性、剛性及び寸法安定性(カール性)を同時にバランス良く、かつ高いレベルにまで向上させる点から、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が望ましい。また、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹サルファイトパルプ(LBSP)等を使用することもできる。
【0029】
パルプの叩解には、ビータやリファイナー等を使用できる。パルプを叩解した後に得られるパルプスラリー(以下、「パルプ紙料」ということがある。)には、必要に応じて各種添加材、例えば、填料、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、定着剤、pH調整剤、その他の薬剤等が添加される。
【0030】
填料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、白土、タルク、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
乾燥紙力増強剤としては、例えば、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、脂肪酸塩、ロジン、マレイン化ロジン等のロジン誘導体、パラフィンワックス、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、エポキシ化脂肪酸アミド等が挙げられる。
湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂等が挙げられる。
定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の多価金属塩、カチオン化澱粉等のカチオン性ポリマー等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、苛性ソーダ、炭酸ソーダ等が挙げられる。
その他の薬剤としては、例えば、消泡剤、染料、スライムコントロール剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0031】
また、パルプ紙料には、必要に応じて、柔軟化剤等を添加することもできる。柔軟化剤については、例えば、新・紙加工便覧(紙薬タイム社編)554〜555頁(1980年発行)に記載がある。
【0032】
表面サイズ処理に使用される処理液には、例えば、水溶性高分子、サイズ剤、耐水性物質、顔料、pH調整剤、染料、蛍光増白剤等が含まれていてもよい。
水溶性高分子としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェート、ゼラチン、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、石油樹脂エマルジョン、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルキルエステルのアンモニウム塩、ロジン、高級脂肪酸塩、アルキルケテンダイマー(AKD)、エポキシ化脂肪酸アミド等が挙げられる。
耐水性物質としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、塩化ビニリデン共重合体等のラテックス・エマルジョン類、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等が挙げられる。
顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、苛性ソーダ、炭酸ソーダ等が挙げられる。
【0033】
原紙の材料の例としては、上記した天然パルプ紙の他に、合成パルプ紙、天然パルプと合成パルプの混抄紙、更には各種の抄き合わせ紙を挙げることができる。
【0034】
原紙の厚みとしては、30〜500μmが好ましく、より好ましくは50〜300μmであり、さらに好ましくは70〜200μmである。
【0035】
(第1の層)
前記記録媒体においては、前記原紙の上に第1の層が配置されている。第1の層を設けることにより、インク溶媒の原紙への浸透が抑制される。例えば、原紙に溶媒ブロッキング層が設けられた紙として、ポリエチレン樹脂を主成分とした被膜層を原紙表面に設けたものが公知となっている。しかしながら、上述の溶媒ブロッキング層を設けて耐水性を与えた紙では、水の浸透防止効果はほぼ完全なものが得られるが、紙としての風合いについては必ずしも満足できるものではない。
【0036】
第1の層は、バインダーを少なくとも含み、第1の層が設けられた原紙の、第1の層の表面におけるJIS P8140に準拠した吸水度試験による接触時間120秒間のコッブ吸水度が2.0g/m以下である。この範囲であれば特に制限はなく、第1の層としては、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。前記コッブ吸水度が2.0g/mを超えるとインク溶媒の原紙への浸透を充分に抑制できず、カール・カックル等の記録媒体の変形が生じる事がある。
また、第1の層は、前記バインダー以外に、必要に応じて更に白色顔料等の他の成分を用いて構成することができる。
【0037】
−バインダー−
第1の層は、バインダーの少なくとも1種を含有する。バインダーは、分散のみならず、塗膜強度を向上させる目的で用いられる。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性、カルボキシ変性、イタコン酸変性、マレイン酸変性、シリカ変性及びアミノ基変性等の変性ポリビニルアルコールを含む)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類(変性デンプンを含む)、ゼラチン、アラビヤゴム、カゼイン、スチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−ポリアクリル酸共重合体のケン化物等が挙げられる。また、スチレン・ブタジエン共重合物、酢酸ビニル共重合物、アクリロニトリル・ブタジエン共重合物、アクリル酸メチル・ブタジエン共重合物、ポリ塩化ビニリデン等の合成高分子のラテックス系のバインダーが挙げられる。
【0038】
前記ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルの低級アルコール溶液をケン化して得られるポリビニルアルコール及びその誘導体が、さらに酢酸ビニルと共重合しうる単量体と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物が含まれる。ここで、酢酸ビニルと共重合しうる単量体としては、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、スルホン酸マレート等のオレフィンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸ソーダ、エチレンスルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート等のオレフィンスルホン酸アルカリ塩、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩等のアミド基含有単量体、さらには、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0039】
ポリビニルアルコールのうち、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、一般には、前記ポリビニルアルコール系樹脂の溶液、分散液あるいは粉末に、液状又はガス状のジケテンを添加反応させて製造することができる。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールのアセチル化度は、目的とする品質に応じて適宜選定することができるが、0.1モル%〜20モル%が好ましく、より好ましくは0.5モル%〜10モル%である。
【0040】
バインダーとしては更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のα−オレフィンの単独重合体又はこれらの混合物等のポリオレフィン類;ポリアミドやポリイミド類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;等の汎用の熱可塑性重合体をはじめ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸フェニル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;スチレン、クロルスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等からなる単独重合体、あるいはこれらの構成単位を含む任意の共重合体など、公知の熱可塑性樹脂やそのラテックスの中から適宜選択することができる。
【0041】
中でも、水遮断性の点で、熱可塑性樹脂が好ましく、水不溶性の熱可塑性樹脂がより好ましい。水不溶性の熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、アクリルエポキシ系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
特には、インク溶媒浸透性とコックリング抑制の効果が高く経済性と製造適性を兼ね備える点で、ポリエステル系ウレタン樹脂、アクリルシリコーン系樹脂が好ましい。
【0042】
前記熱可塑性樹脂の分子量としては、数平均分子量で3,000〜1,000,000が好ましく、特に5,000〜100,000程度のものがより好ましい。該分子量は、3,000以上であると第1の層の力学強度を確保でき、1,000,000以下であると分散安定性や粘度等の製造適性面で有利である。
【0043】
具体的には、アクリル系樹脂としては、市販品のラテックスも使用でき、例えば、以下のような水分散性ラテックスが利用できる。すなわち、アクリル系樹脂の例として、ダイセル化学工業(株)製の「セビアンA4635、46583、4601」など、日本ゼオン(株)製の「Nipol Lx811、814、821、820、857」等が挙げられる。特に、特開平10−264511号、特開2000−43409号、特開2000−343811号、特開2002−120452号の各公報に記載のアクリルシリコンラテックスのアクリルエマルジョン(市販品としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製のアクアブリッドシリーズ UM7760、UM7611、UM4901、アクアブリッド903、同ASi−86、ASi−89、同ASi−91、ASi−753、同4635、同4901、同MSi−04S、同AU−124、同AU−131、同AEA−61、同AEC−69、同AEC−162など)等も好適に使用することができる。
また、ポリエステル系ウレタン樹脂としては、例えば、市販品として、大日本インキ化学工業(株)製のHYDRAN APシリーズ(例えば、HYDRAN AP−20、同AP−30、同AP−30F、同AP−40(F)、同AP−50LM、同APX−101H、同APX−110、同APX−501など)等が挙げられる。
なお、上記の熱可塑性樹脂は、上記から少なくとも1種を選択して用いるのが好ましく、1種単独で用いるのみならず、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、5〜70℃が好ましく、特に15〜50℃が好ましい。前記Tgが特に前記範囲内であると、第1の層形成用の造膜液(例えば塗布液)のカワバリ等の問題が防止される等、製造上の取扱いが容易であり、またTgが高すぎてカレンダー温度をかなり高く設定しないと所望の光沢が得られない、金属ロール表面への接着が発生し易く逆に面状が悪化する等の支障を来すこともなく、容易に高光沢性、高平面性を得ることができる。
【0045】
また、熱可塑性樹脂(好ましくはラテックスの樹脂粒子)の最低造膜温度としては、20〜60℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。造膜しようとしたときの造膜可能な最低造膜温度領域が特に前記範囲内であると、第1の層形成用の造膜液(例えば塗布液)のカワバリ等の問題が防止される等、製造上の取扱いが容易であり、また第2の層を形成したときの染み込みが抑えられ、形成される第2の層の塗布面状が良好になり、インク溶媒を速やかに透過するのに充分な微孔性を有する層に構成することができる。液(例えば塗布液)を付与しただけの層は必ずしも良好な光沢性を備えるものではないが、後にソフトカレンダー処理を施すことで微孔性を保有した高光沢性の層が得られる。
【0046】
バインダー(好ましくは熱可塑性樹脂)の第1の層中における含有量としては、該第1の層の全固形分に対して、15〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。該含有量が特に前記範囲内であると、カレンダー処理を施したときに光沢性、平面性が良好であり、インク溶媒の浸透性が得られ、経時滲みの発生をより効果的に防止することができる。
また、第1の層には、必要に応じて、これらのバインダーの種類に応じて、適当なバインダーの架橋剤を添加してもよい。
【0047】
〜コッブ吸水度〜
本発明においては、第1の層が設けられた原紙の第1の層の側からJIS P8140に準拠した吸水度試験により測定した接触時間120秒間のコッブ吸水度を2.0g/m以下とする。コッブ吸水度が2.0g/m以下であることにより、第1の層が設けられた原紙は緩浸透性を有し、インク等の液体が付与されたときの吸収を遅らせ、カールの発生の度合いを低減できる。
更には、コッブ吸水度は、1.0g/m以下であることがより好ましい。また、コッブ吸水度の下限値は0.2g/mが望ましい。
【0048】
前記コッブ吸水度は、JIS P8140に準拠した吸水度試験により測定されるものであり、原紙の片面、具体的には第1の層が設けられた原紙の第1の層の表面(原紙とは反対側の面)から一定時間水が接触した場合に吸収される水の量を測定したものである。本発明においては、接触時間は120秒間である。
【0049】
第1の層には、上記成分以外に、白色顔料、硬膜剤、層状無機化合物などの他の成分を用いることができる。
−白色顔料−
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、リトポン、アルミナ白、酸化亜鉛、シリカ三酸化アンチモン、燐酸チタン、水酸化アルミニウム、カオリン、クレー、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、等が挙げられる。
上記のうち、白色度、分散性及び安定性の点で、特に酸化チタンが好ましい。また、水遮断性の点で、特にカオリンが好ましい。カオリンとしては、例えば、白石カルシウム(株)製のカオブライト90、カオグロス、カオホワイト等、などを挙げることができる。
また、第1の層が白色顔料を含むことにより、第1の層を形成した後にカレンダー処理するときには、カレンダーへの貼りつきを防止することもできる。
【0050】
白色顔料の粒子サイズとしては、0.1〜0.5μmが好ましい。粒子サイズが前記範囲内であると、白色度、光沢度が良好になる。
【0051】
酸化チタンは、ルチル系、アナターゼ型のいずれでもよく、これらを単独もしくは混合して使用することができる。また、硫酸法で製造されたものや塩素法で製造されたもののいずれでもよい。前記酸化チタンとしては、含水アルミナ処理、含水二酸化ケイ素系処理、又は酸化亜鉛処理等の無機物質による表面被覆処理したもの、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,4−ジヒドロキシ−2−メチルペンタン等の有機物質による表面被覆処理したもの、あるいはポリジメチルシロキサン等のシロキサン処理したもの等から適宜選択できる。
【0052】
白色顔料の屈折率としては、1.5以上であるのが好ましい。屈折率が該範囲にある白色顔料を含むと、高画質画像を形成することができる。
【0053】
また、白色顔料のBET法による比表面積としては100m/g未満であるのが好ましい。この範囲の比表面積を持つ白色顔料を含むと、第2の層を塗布形成する際の塗布液の染み込みが抑えられ、第2の層のインク吸収性を高めることができる。
【0054】
前記BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の1つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が一般的である。多分子吸着の等温線を表す著名なものとして、Brunauer,Emmett,Tellerの式(BET式)があり、これに基づき吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0055】
白色顔料は、1種単独で用いるほか、2種以上を混合して用いることができる。
白色顔料の第1の層中における含有量としては、白色顔料の種類や熱可塑性樹脂の種類、層厚等によって異なるが、前記バインダーの質量(固形分)に対して、通常は5〜200質量%程度が望ましい。
【0056】
−硬膜剤−
本発明の第1の層は、前記バインダーを硬膜する硬膜剤を含んでもよい。硬膜剤としては、アルデヒド系化合物、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン及びその誘導体、及びハメットの置換基定数σが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物から選択することができる。
第1の層に硬膜剤を含有することにより、第1の層形成用の造膜液を増粘させることなく、記録媒体の耐水性を向上させることができる。これより、第1の層形成用の造膜液の塗布安定性が向上し、作製された記録媒体の耐水性も向上する。
【0057】
ハメットの置換基定数σが正である置換基としては、CF基(σ値:0.54)、CN基(σ値:0.66)、COCH基(σ値:0.50)、COOH基(σ値:0.45)、COOR(Rはアルキル基を表す。)基(σ値:0.45)、NO基(σ値:0.78)、OCOCH基(σ値:0.31)、SH基(σ値:0.15)、SOCH基(σ値:0.49)、SOCH基(σ値:0.72)、SONH基(σ値:0.57)、SCOCH基(σ値:0.44)、F基(σ値:0.06)、Cl基(σ値:0.23)、Br基(σ値:0.23)、I基(σ値:0.18)、IO基(σ値:0.76)、N(CH基(σ値:0.82)、S(CH基(σ値:0.90)等が挙げられる。
【0058】
ハメットの置換基定数σが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物としては、2−エチレンスルホニル−N−[2−(2−エチレンスルホニル−アセチルアミノ)−エチル]アセトアミド、ビス−2−ビニルスルホニルエチルエーテル、ビスアクリロイルイミド、N,N’−ジアクリロイルウレア、1,1−ビスビニルスルホンエタン、エチレン−ビス−アクリルアミドの他、下記構造式で表されるジアクリレート及びジメタクリレート化合物が挙げられ、この中でも2−エチレンスルホニル−N−[2−(2−エチレンスルホニル−アセチルアミノ)−エチル]アセトアミドが特に好ましい。
【0059】
【化1】

【0060】
硬膜剤の第1の層中における含有率は、前記バインダーの固形分に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。硬膜剤の含有量が前記範囲内であると、第1の層形成用の造膜液が増粘せず、記録材料の耐水性を向上させることができる。
【0061】
−層状無機化合物−
第1の層は、さらに層状無機化合物を含有してもよい。層状無機化合物としては、膨潤性無機層状化合物が好ましく、例えば、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、ビーデライト、ノントロナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリナイト等の膨潤性粘度鉱物類、膨潤性合成雲母、膨潤性合成スメクタイト等が挙げられる。膨潤性無機層状化合物は、1〜1.5nmの厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物よりも著しく大きいため、格子層は正荷電不足を生じ、それを補償するために層間にNa、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に層間の陽イオンがLi、Na等の場合、イオン半径が小さいため、層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母は、この傾向が強い点で好ましい。特には、水膨潤性合成雲母が好ましい。
【0062】
水膨潤性合成雲母としては、NaテトラシックマイカNaMg2.5(Si10)FNa、Liテニオライト(NaLi)Mg(Si10)FNa、又はLiヘクトライト(NaLi)/3Mg/3Li1/3Si10)F等が挙げられる。
水膨潤性合成雲母のサイズは、好ましくは、厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μmである。拡散制御のためには、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性及び透明性を悪化しない範囲で大きいほどよい。したがって、アスペクト比は100以上が好ましく、より好ましくは200以上、特に好ましくは500以上である。
【0063】
前記水膨潤性合成雲母を用いる場合、第1の層中のバインダーの質量(固形分)xと水膨潤性合成雲母の質量yとの質量比率x/yは、1以上30以下の範囲が好ましく、5以上15以下の範囲がより好ましい。該質量比率が前記範囲内であると、酸素透過抑制、ブリスター発生の抑制に効果が大きい。
なお、第1の層には、酸化防止剤等の公知の添加剤を添加することもできる。
【0064】
第1の層の厚みとしては、1〜30μmの範囲が好ましく、5〜20μmの範囲がより好ましい。第1の層の厚みが前記範囲内であると、後にカレンダー処理を施したときの表面の光沢性が向上し、少量の白色顔料での白色性が得られると同時に、折り曲げ適性などの取扱い性をコート紙やアート紙と同等にすることができる。
【0065】
本発明における第1の層は、インク溶媒の浸透を抑え、良好な表面性状を得る点で、例えば、バインダーとして熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂粒子、より好ましくはポリエステル系ウレタン樹脂粒子、アクリルシリコーン系樹脂粒子)を、白色顔料としてカオリンを用い、熱可塑性樹脂の質量(固形分)xとカオリンの質量yとの質量比率x/yを1以上30以下とした層などが好ましい。
【0066】
(第2の層)
本発明の記録媒体は、原紙上の第1の層の上に更に第2の層を有する。
第2の層は、白色顔料と酸性物質とを少なくとも含み、第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2mL/m以上8mL/m以下であり、かつ、層表面のpHが5.5以下とする。この範囲であれば特に制限はなく、第2の層としては、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
また、第2の層は、必要に応じて、更に水溶性多価金属化合物や熱可塑性樹脂などの他の成分を用いて構成することができる。
【0067】
本発明における第2の層は、例えば、水溶性多価金属化合物を更に含む層や、熱可塑性樹脂を更に含む層、白色顔料の固形質量100部当たり固形質量10〜60部の熱可塑性樹脂を更に含む層、層表面のpHが4以下である層などが好ましい。
【0068】
−白色顔料−
第2の層は、白色顔料の少なくとも1種を含有する。白色顔料を含有することにより、インク(特にインク中の顔料)を第2の層内に留めることができ、地肌白色度も高められる。
【0069】
第2の層に含まれる白色顔料としては、特に制限はなく、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、三水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、サチン白、タルクなど、一般に印刷用コート紙の白色顔料として利用されるものの中から選択できる。
【0070】
中でも、光沢性の点で、カオリンが特に好ましい。カオリンとしては、例えば、白石カルシウム(株)製のカオブライト90、カオグロス、カオホワイト等、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン製のコンツアー 1500、アストラプレート、XP03−8390、エンゲルハード社製のミラグロス等を挙げることができる。
カオリンの中でも、アスペクト比が30以上のカオリンがより好ましい。アスペクト比が30以上であると、インク(特にインク中の顔料)を第2の層内に留めやすく、インク定着性をより向上させることができる。
【0071】
前記記録媒体を本発明のインクジェット画像形成方法に適用して画像形成する場合、すなわち、第2の層の層表面のpHを酸性側(好ましくは4以下)に調整したり、あるいは後述の酸性物質を含む処理液を用いたインク描画を行なったりするときには、インク描画した際の画像の滲みや混色を回避する観点から、炭酸カルシウムの含有量は、第2の層中の全顔料の5質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましく、炭酸カルシウムを含有しない場合がより好ましい。
【0072】
白色顔料の第2の層中における含有量としては、第2の層の全固形分に対して、70〜96質量%が好ましく、80〜94質量%がより好ましい。
また、第2の層中における第1の白色顔料の粒径は、第1の層中における第2の白色顔料の粒径と同様である。
【0073】
−酸性物質−
第2の層は、酸性物質の少なくとも1種を含有する。第2の層が酸性物質を含有していることで、付与されたインク組成物の成分を凝集させ、形成される画像の定着を向上させることができる。すなわち、例えば、着色成分として顔料を含むインクの場合、第2の層に着滴した際に、pH変化で顔料が凝集し、インクの経時滲み、色間混色(色間にじみ)を効果的に抑制することができる。
【0074】
前記酸性物質としては、公知の酸性物質を用いることができ、無機酸であっても有機酸であってもよい。酸性物質としては、例えば、塩酸、硝酸等のような無機酸のほか、リン酸基、ホスホン基、ホスフィン基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボン酸基あるいはその塩由来の基を有する化合物を用いることができる。また、酸ポリマーも好適に用いることができる。
例えば、リン酸基を有する化合物としては、リン酸、ポリリン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩があり、カルボン酸基を有する化合物としては、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物等、例えば、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等がある。
【0075】
中でも塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、ホスホン酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、乳酸、酢酸、トリクロロ酢酸、クロロ酢酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、ピコリン酸、キノリン酸、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸、およびポリホスホン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、およびクエン酸から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、顔料インクの凝集速度の点からは、メタンスルホン酸、リン酸が好ましく、紙の長期保存・長期安定性の点からは、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、クエン酸が好ましく、画像固定性の点からは、コハク酸、フタル酸が好ましい。
さらに、第2の層に含有する酸性物質が酸性ポリマーであることもまた好ましい。酸性ポリマーとして、特に、ポリリン酸、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸、ポリホスホン酸等を用いると、これらの酸性物質が紙中に拡散しにくくなるため、経時で色間にじみが悪化することが抑制され、印画前の紙の長期保存性の点で好ましい。
【0076】
また本発明においては、形成される画像の密着性と着弾干渉抑制の観点から、前記酸性物質は、分子量が100以上で、かつ分子内に2以上のカルボキシル基を有する化合物であることが好ましく、分子量が100以上で、かつ分子内に2以上のカルボキシル基を有し、そのpKa(第一酸解離定数、25℃)が2.6以上4.6以下であって、pKa(第二酸解離定数、25℃)3.8以上5.4以下であることがより好ましい。
さらにまた前記酸性物質は、インク成分の凝集速度の観点から、水への溶解度が5質量%以上であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
前記酸性物質のうち、分子量が100以上で、かつ分子内に2以上のカルボキシル基を有し、そのpKa(、25℃)が2.6以上4.6以下であって、、pKa(25℃)3.8以上5.4以下である酸性物質としては、例えば、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、およびフマル酸、フタル酸等を挙げることができ、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、およびクエン酸から選ばれる少なくとも1種の酸性物質が第2の層に含まれることが好ましい。
【0078】
上記酸性物質は、1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
これらの酸性物質を第2の層形成用の造膜液に添加することにより、pHを5.5以下に調整することができる。添加量は、第2の層の層表面のpHが5.5以下になるように適宜選択すればよい。
【0079】
〜pH〜
上述したように、第2の層は、色間混色・にじみの発生を抑制するために、その層表面のpHを5.5以下とするが、pH4.5以下であることが好ましく、pH4.0以下であることがより好ましく、pH3.7以下であることが特に好ましい。
また、記録媒体の取り扱いの際における安全上の問題を回避し、また、第2の層中にpHの低い酸があることにより、記録媒体の長期保存時に紙が損傷し易くなり却って色間にじみ等の印画故障を発生することを防止するため、第2の層の層表面のpHは、2.0以上とすることが好ましく、2.5以上がより好ましい。
【0080】
pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI紙)の定めた膜面pHの測定のうちA法(塗布法)により行なうことができ、例えば、A法に相当する、(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して行なうことができる。形式MPCでは、紙面に試験液を塗り広げてその色を標準色と比較して測定される。
【0081】
−水溶性多価金属化合物−
前記第2の層には、経時にじみを抑制する観点から、更に水溶性多価金属化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。前記水溶性多価金属化合物としては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、チタン、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンが挙げられ、これらの金属の水溶性塩として用いることができる。
具体的には、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、乳酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニル、炭酸ジルコニル・アンモニウム、炭酸ジルコニル・カリウム、硫酸ジルコニル、フッ化ジルコニル、塩化ジルコニル、塩化ジルコニル八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニル、塩化チタン、硫酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、乳酸マグネシウム、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングスト珪酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n水和物等が挙げられる。
ここで、前記水溶性多価金属化合物における「水溶性」とは、常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0082】
上記以外の水溶性アルミニウム化合物として、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、主成分が、下記一般式1、下記一般式2、または下記一般式3で示される。例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0083】
[Al(OH)Cl6−n 一般式1
[Al(OH)AlCl 一般式2
Al(OH)Cl(3n−m) 0<m<3n 一般式3
【0084】
これらのものは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として市販され、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で市販され、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で市販されている。また、他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。これらの塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、特公平3−24907号公報、同平3−42591号公報にも記載されている。
【0085】
前記した水溶性多価金属化合物の中でも、画像の耐水性の点で、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物が好ましく、さらにアルミニウム化合物の中では、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましい。
【0086】
前記水溶性多価金属化合物の添加量は、前記第2の層の全固形分に対して、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0087】
−その他の成分−
第2の層は、上記成分以外に、バインダーなどの他の成分を含んでもよい。
バインダーとしては、特に制限はなく、例えば、既述の第1の層で挙げられたものと同様の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0088】
〜ブリストー法による吸水量〜
本発明においては、第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量を2mL/m以上8mL/m以下とする。この吸水量が2〜8mL/mであることにより、第2の層は緩浸透性であり、インク等の液体が付与されたときの付与面での液吸収を遅らせ、カールの程度を抑制できると共に、色間滲みや混色が防止される。すなわち本発明においては、前記吸水量が2mL/m未満または8mL/mを超えると色間滲みや混色が発生する場合がある。
色間滲みや混色の防止は、既述のように第2の層の層表面のpHを酸性(特にpH4以下)に調整するか、あるいは後述の酸性物質を含む処理液をインクと共に用いる場合に特に有効である。
第2の層における前記吸水量は、更には、前記同様の理由から、2mL/m以上4mL/m以下の範囲が好ましい。
【0089】
ブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として利用されている方法であり、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細については、J.TAPPI紙 パルプ試験方法No51−87「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」(ブリストー法),紙パ技協誌41(8),57−61(1987)の記載を参照することができる。ここでは、上記に記載の試験装置(ブリストー試験機)を用いて、接触時間0.5秒に定めて測定し、測定時には、インクの表面張力に合わせてブリストー試験のヘッドボックススリット幅を調節する。また、紙の裏にインクがぬけてしまう点は計算から除外する。
【0090】
第2の層の厚みとしては、3μm〜50μmの範囲が好ましく、4μ〜40μmの範囲がより好ましい。第2の層の厚みが3μm以上あれば、第2の層の吸水量の低下を抑えられ、色間混色・にじみ発生をより効果的に防止することができる。また、第2の層が50μm以下であれば、脆性、耐傷性等の取り扱い性に優れる。
【0091】
(その他の層)
本発明の記録媒体には、その他の層として上記第1及び第2の層以外の他の層を設けてもよい。他の層としては、目的に応じて適宜選択することができる。
【0092】
本発明における特定記録媒体は、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、特開2009−125948号公報の段落番号0086〜0098に記載の製造方法に準拠して、本発明における特定記録媒体を製造することができる。
【0093】
[インク組成物]
本発明におけるインク組成物は、顔料の少なくとも1種、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマーの少なくとも1種、および水を含んでなり、必要に応じて、更に光重合開始剤、ポリマー粒子、分散剤、界面活性剤、その他の成分等を用いて構成することができる。
【0094】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも1種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0095】
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機および無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0096】
また前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0097】
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
【0098】
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
【0099】
〜分散剤〜
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0100】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、インクを低粘度に保ちつつ、顔料を水溶媒に安定に分散させることができる。低分子の界面活性剤型分散剤は、分子量2,000以下の低分子分散剤である。また、低分子の界面活性剤型分散剤の分子量は、100〜2,000が好ましく、200〜2,000がより好ましい。
【0101】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基とは、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基とを連結するための連結基も適宜有することができる。
【0102】
前記親水性基は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等である。
【0103】
前記アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであればいずれでもよいが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
【0104】
前記カチオン性基は、プラスの荷電を有するものであればいずれでもよいが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素又はリンのカチオン性基であることがより好ましい。また、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることがさらに好ましい。
【0105】
前記ノニオン性基は、ポリエチレンオキシドやポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
【0106】
前記親水性基は、アニオン性基であることが好ましい。アニオン性基は、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
【0107】
また、低分子の界面活性剤型分散剤がアニオン性の親水性基を有する場合、凝集反応を促進させる観点から、pKaが3以上であることが好ましい。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaは、テトラヒドロフラン−水(3:2=V/V)溶液に低分子の界面活性剤型分散剤1mmol/Lを溶解した液を酸あるいはアルカリ水溶液で滴定し、滴定曲線より実験的に求めた値のことである。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaが3以上であると、理論上pH3程度の液と接したときにアニオン性基の50%以上が非解離状態になる。したがって、低分子の界面活性剤型分散剤の水溶性が著しく低下し、凝集反応が起こる。すなわち、凝集反応性が向上する。かかる観点からも、低分子の界面活性剤型分散剤は、アニオン性基としてカルボン酸基を有する場合が好ましい。
【0108】
前記疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等の構造を有しており、特に炭化水素系であることが好ましい。また、疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また、疎水性基は、1本鎖状構造又はこれ以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
【0109】
前記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
【0110】
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
【0111】
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0112】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや、他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
【0113】
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0114】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0115】
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、180mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜150mgKOH/gがより好ましく、25〜105mgKOH/gが更に好ましい。ポリマー分散剤の酸価が25mgKOH/g以上であると、顔料分散物やインク組成物にした時の安定性が良好になる。
【0116】
ポリマー分散剤は、分散安定性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜150mgKOH/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0117】
顔料(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:1.5の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:0.7である。
【0118】
本発明においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。
また、顔料は、凝集性の観点から、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましく、その表面の少なくとも一部がカルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性の水分散性顔料であることがより好ましい。
【0119】
前記表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料は、例えば、顔料、分散剤、水、必要に応じて溶媒(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで顔料分散物として得ることができる。
【0120】
前記顔料分散物は、例えば、前記顔料と前記水不溶性ポリマー分散剤と該分散剤を溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた顔料粒子の分散物を作製することができる。
【0121】
有機溶剤は、前記分散剤を溶解または分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃下で水に対する溶解度が10質量%以上50質量%以下であるものが好ましい。
【0122】
前記顔料粒子の分散物は、更に詳細には、下記の工程(1)および工程(2)を含む製造方法で製造することができるが、これに限定されるものではない。
工程(1):顔料、分散剤、および該分散剤を溶解または分散する有機溶剤と共に、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液を含有する混合物を分散処理する工程
工程(2):分散処理後の混合物から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程
【0123】
前記工程(1)では、まず、前記分散剤を有機溶剤に溶解または分散させて混合物を得る(混合工程)。次に、顔料、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液、水、および必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物に加えて混合、分散処理し、水中油型の分散物を得る。
【0124】
前記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくは、カルボキシル基)の中和に用いられる。前記アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
【0125】
前記有機溶剤の好ましい例としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。これらのうちアルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトンおよびメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
【0126】
前記顔料粒子の分散物の製造においては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行うことができる。なお、混練、分散についての詳細は、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機、高圧分散機等を用い、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズを用いた微分散処理を行うことにより得ることができる。
【0127】
前記顔料分散物の製造方法における有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により除去できる。
【0128】
このようにして得られた顔料分散物における顔料粒子は良好な分散状態を保ち、かつ、得られた顔料粒子の分散物は経時安定性に優れたものとなる。
【0129】
顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0130】
顔料は、1種単独で又は2種以上を組合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、1.5〜20質量%がより好ましく、1.8〜5.5質量%がさらに好ましい。
【0131】
(重合性モノマー)
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマーの少なくとも1種を含有する。この重合性モノマーは、前記顔料と共に併用し、処理液と接触して凝集するときには粒子間に取り込まれて、その後の重合硬化により画像を強化する。
【0132】
水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が2質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、任意の割合で水と均一に混合することが特に好ましい。
【0133】
重合性モノマーとしては、第2の層に含まれる酸性物質および必要に応じて用いられる処理液中の凝集剤と、顔料との反応を妨げない点で、ノニオン性の重合性モノマーが好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性モノマーが好ましい。
【0134】
ノニオン性の重合性モノマーとしては、例えば、アクリルモノマー類などの重合性モノマーを挙げることができる。
【0135】
前記アクリルモノマー類としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物などの紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが挙げられる。
前記多価アルコールは、エチレンオキシドの付加により内部にエチレンオキシド鎖で鎖延長されたものでもよい。
【0136】
以下、ノニオン性の重合性モノマーの具体例(ノニオン性化合物1〜4)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0137】
【化2】

【0138】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルも用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0139】
更に、ノニオン性の重合性モノマーとしては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステルも好適である。以下に、これらの具体例(ノニオン性化合物a〜k)を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
【化3】

【0141】
【化4】

【0142】
【化5】

【0143】
【化6】

【0144】
本発明における重合性モノマーとしては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
【0145】
重合性モノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性モノマーのインク組成物中における含有率としては、4〜30質量%であることが好ましく、10〜22質量%であることがより好ましい。
また重合性モノマーの顔料の固形分に対する含有率としては、顔料:重合性モノマー=1:1〜1:30が好ましく、1:3〜1:15がより好ましい。重合性モノマーの含有率は、顔料の1倍以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、30倍以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0146】
(開始剤)
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により前記重合性モノマーの重合を開始可能な開始剤の少なくとも1種を含有することが好ましく、光重合開始剤の少なくとも1種を含有することがより好ましい。開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
【0147】
開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
【0148】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメートが挙げられる。更に、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等の、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0149】
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
【0150】
前記増感剤としては、アミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンなど)、尿素(アリル系、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジ置換p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリn−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスフェートなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物の高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート、等が挙げられる。
増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0151】
(水系媒体)
本発明におけるインク組成物は水系媒体を含む。水系媒体は少なくとも水を含み、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含んで構成される。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0152】
−有機溶剤−
本発明における水系媒体は水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また水溶性有機溶剤は、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0153】
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0154】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0155】
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的で好適である。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
【0156】
水溶性有機溶媒は、上記以外にも粘度の調整のために用いられる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。この場合も、水溶性有機溶媒は1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
【0157】
(ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。ポリマー粒子を含むことにより、インク組成物の記録媒体への定着性、画像の耐擦性、耐ブロッキング性を効果的に向上させることができる。
またポリマー粒子は、既述の処理液又はこれを乾燥させた記録媒体上の領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このようなポリマー粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
【0158】
本発明におけるポリマー粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
またポリマー粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
【0159】
ポリマー粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
またポリマー粒子の体積平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
ポリマー粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
【0160】
ポリマー粒子の添加量はインクに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましい。
また、ポリマー微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー粒子を、2種以上混合して使用してもよい
【0161】
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加し、また、油性染料を分散物として用いる場合は染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0162】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させることができる。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載のベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載のベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載の桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載のトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載の化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0163】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させることができる。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤が挙げられる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。より具体的には、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載の化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載の代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
【0164】
前記防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。防黴剤の含有量は、インク組成物に対して0.02〜1.00質量%の範囲が好ましい。
【0165】
前記pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は、インク組成物の保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、インク組成物のpHが6〜10となるように添加するのが好ましく、pHが7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0166】
前記表面張力調整剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
表面張力調整剤の添加量は、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲が好ましく、20〜45mN/mに調整できる範囲がより好ましく、25〜40mN/mに調整できる範囲が更に好ましい。添加量が前記範囲内であると、インクジェット法で良好に打滴することができる。
【0167】
前記界面活性剤の具体例としては、炭化水素系では、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるオルフィン(日信化学工業社製)やSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
【0168】
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等も使用可能である。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0170】
<記録媒体1の製造>
(第1の層形成用塗布液Aの調製)
カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部、0.1N水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)3.8部、40%ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亞合成(株)製)1.3部、及び水49.6部を混合し、ノンバブリングニーダー(商品名:NBK−2、日本精機製作所(株)製)を用いて分散を行い、65%カオリン分散液を得た。次いで、22.5%ポリエステル系ウレタンラテックス水分散液(ガラス転移温度49℃、最低造膜温度29℃;商品名:ハイドランAP−40F、大日本インキ化学工業(株)製)100部に、水5部と得られた65%カオリン分散液7.0部と、10%エマルゲン109P(花王(株)) 0.8部を加え、十分に攪拌混合した後、得られた混合液の液温度を15〜25℃に保って、最終的な固形分濃度が24.0%の第1の層形成用塗布液Aを得た。
【0171】
(第2の層形成用塗布液aの調製)
カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部と、40%ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亞合成(株)製)1.3部とを混合し、水中に分散し、7%PVA245((株)クラレ製)水溶液100部と、10%エマルゲン109P((株)花王製)水溶液3.5部を添加して、さらに塗布後の第2の層の層表面pHが3.5となるように塩酸 硝酸を添加し、最終的な固形分濃度が27%の第2の層形成用塗布液aを調製した。
【0172】
(第1の層の形成)
坪量81.4g/mの上質紙(商品名:しらおい、日本製紙(株)製)の両面に、得られた第1の層形成用塗布液Aを、エクストルージョンダイコーターを用いて、片面当たりの塗布量が8.0g/mとなるように調整しながら片面ずつ塗布し、85℃、風速15m/秒で1分間乾燥して、第1の層を形成した。さらに、形成した第1の層に対して、下記に示すソフトカレンダー処理を行った。得られた第1の層の厚みは8.1μmであった。
【0173】
〜ソフトカレンダー処理〜
前記第1の層が表面に形成された上質紙に対し、金属ロールと樹脂ロールとが対をなすロール対を備えたソフトカレンダーを用いて、金属ロールの表面温度50℃、ニップ圧50kg/cmの条件でソフトカレンダー処理を行った。
【0174】
(第2の層の形成)
第1の層が形成された上質紙の両面に、上記で調製した第2の層形成用塗布液aを、エクストルージョンダイコーターを用いて、片面当たりの乾燥質量が20g/mとなるように調整しながら片面ずつ塗布し、70℃、風速10m/秒で1分間乾燥して、第2の層を形成した。さらに形成された第2の層に対して、上記と同様にしてカレンダー処理を行った。得られた第2の層の厚みは20.2μmであった。
以上のようにして、記録媒体1を作製した。
【0175】
<記録媒体2〜9の製造>
上記記録媒体1の製造において、硝酸の代わりに下記表1に示した酸性物質を用いたこと以外は上記と同様にして記録媒体2〜9をそれぞれ製造した。
【0176】
<記録媒体10の製造>
記録媒体6の製造において、第2の層形成用塗布液aに、更に塩基性ポリ水酸化アルミニウム(ピュケラムWT、理研グリーン(株)製)〔水溶性多価金属化合物〕を6.0部添加した以外は、上記と同様にして、記録媒体10を製造した。
【0177】
<記録媒体11の製造>
記録媒体6の製造において、第2の層形成用塗布液aに、更に酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−20、第一稀元素化学工業(株)製)〔水溶性多価金属化合物〕を6.0部添加した以外は、上記と同様にして記録媒体11を製造した。
【0178】
<記録媒体C1の製造>
記録媒体1の製造において、第1の層の塗布量を4g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして、記録媒体C1を作製した。
【0179】
<記録媒体C2の製造>
記録媒体1の製造において、第2の層形成用塗布液a成分中のカオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)を、酸化チタン(商品名:タイペークR280、石原産業(株)製)に変更した以外は、上記と同様にして記録媒体C2を作製した。
【0180】
<記録媒体C3の製造>
記録媒体1の製造において、第2の層の層表面がpH6.0となるように第2の層形成用塗布液aに硝酸を添加した以外は、上記と同様にして記録媒体C3を作製した。
【0181】
<記録媒体C4の製造>
記録媒体1の製造において、第2の層形成用塗布液aに硝酸を添加しなかった以外は、上記と同様にして、記録媒体C4を作製した。
【0182】
<記録媒体C5の製造>
記録媒体1の製造において、第2の層の塗布量を10g/mに変更した以外は、上記と同様にして、記録媒体C5を作製した。
【0183】
<記録媒体の評価>
得られた記録媒体について、下記の評価1.〜2.を行なった。評価結果は下記表1に示す。
−1.第1の層のコッブ吸水度試験−
JIS P8140に準拠した吸水度試験にしたがって、第1の層が形成された上質紙の第1の層表面にてコッブ吸水度(20℃の水に120秒間接触させたときの水の浸透量g/m)を測定した。
【0184】
−2.第2の層の吸水量試験−
ブリストー法に基づき、以下のようにして測定した。
得られたインクジェット記録媒体をA6サイズにカットして得られた第2の層のサンプル片を測定盤に設置した。設置されたサンプル片に、試験液が充填されたヘッドを接触させた後、内側から外側へのらせん状の走査ラインを自動走査して吸液特性を測定した。測定盤が回転速度(紙とインクとの接触時間)を段階的に変化させ、回転させることにより接触時間と吸水量との関係を得た。下記表1には、接触時間0.5秒における吸水量を示す。
【0185】
【表1】

【0186】
<インク組成物の調製>
《シアンインクAの調製》
−シアン分散液の調製−
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
【0187】
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)9部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を加え、混合溶液を調液した。
【0188】
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤溶液を得た。
【0189】
得られたポリマー分散剤溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ、重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は、ポリスチレン換算で25,000であった。また、酸価は100mgKOH/gであった。
【0190】
次に、上記のポリマー分散剤溶液をポリマー分散剤の固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトンが総量で45.0gとなるように加え、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、並列四筒バッチ式サンドグラインダー(アイメックス(株)製、LS G−4U−08)を用い、1000rpm〜1200rpmで、体積平均粒子径が100nmになるまで分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに顔料濃度が10%になるまで濃縮して、水分散性顔料が分散したシアン分散液を調製した。
【0191】
上記のようにシアン分散液を調製した後、下記組成になるように各成分を混合してシアンインクAを調製した。
−シアンインクAの組成−
・シアン分散液 ・・・40%
・下記ノニオン性化合物2(ノニオン性の重合性モノマー) ・・・19%
・サンニックスGP250 ・・・1%
(三洋化成工業(株)製;水溶性有機溶剤)
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1%
・イルガキュア2959 ・・・2.9%
(チバ・ジャパン(株)製;光重合開始剤)
・イオン交換水 ・・・上記との合計が100%となるように加水した。
【0192】
【化7】

【0193】
《マゼンタインクAの調製》
−マゼンタ分散液の調製−
上記シアン分散液の調製において、シアン顔料の代わりに、マゼンタ顔料(Pigment Red 122、チバ・ジャパン(株)製)を用いたこと以外は上記と同様にして、マゼンタ分散液を調製した。
【0194】
−マゼンタインクAの調製−
上記シアンインクの調製において用いたシアン分散液を、マゼンタ分散液に代えた以外は同様にして、マゼンタインクAを調製した。
【0195】
《シアンインクBの調製》
重合性モノマーを下記ノニオン性化合物(c)に変更し、下記組成になるように各成分を混合してシアンインクBを調製した。
−シアンインクBの組成−
・シアン分散液 ・・・40%
・下記ノニオン性化合物c(ノニオン性の重合性モノマー) ・・・19%
・サンニックスGP250 ・・・1%
(三洋化成工業(株)製;親水性有機溶剤)
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1%
・イルガキュア 2959 ・・・2.9%
(チバ・ジャパン(株)製;光重合開始剤)
・イオン交換水 ・・・上記との合計が100%となるように加水した。
【0196】
【化8】

【0197】
《マゼンタインクBの調製》
上記シアンインクBの調製において、シアン分散物をマゼンタ分散物に代えた以外は同様にして、マゼンタインクBを調製した。
【0198】
《シアンインクCの調製》
重合性モノマーを用いずに、下記組成になるように、各成分を混合してシアンインクCを調製した。
−シアンインクCの組成−
・シアン分散液 ・・・40%
・サンニックスGP250 ・・・10%
(三洋化成工業(株)製;親水性有機溶剤)
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル ・・・8%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1%
・イオン交換水 ・・・上記との合計が100%となるように加水した。
【0199】
《マゼンタインクCの調製》
上記シアンインクCの調製において、シアン分散液をマゼンタ分散液に代えた以外は同様にして作製した。
【0200】
<画像形成>
下記表2に示したような記録媒体とインク組成物の組み合わせを用いて、以下のようにして画像を形成した。
【0201】
記録媒体の搬送方向に向かって順次、各種水性インクを吐出するインク吐出部と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーンと、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプを備えたUV照射部とが配設されたインクジェット装置を準備した。
【0202】
インク吐出部は、搬送方向にブラックインク吐出用ヘッド、シアンインク吐出用ヘッド、マゼンタインク吐出用ヘッド、及びイエローインク吐出用ヘッドが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz、記録媒体の搬送速度530mm/sec)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
【0203】
上記のように構成されたインクジェット装置の各色インク吐出用ヘッドにそれぞれ繋がる貯留タンクに、上記で得たインク組成物を装填して、記録媒体にベタ画像及び1200dpiのライン画像を記録した。
【0204】
画像の記録に際し、各色インクは、解像度1200dpi×1200dpi、インク滴量2.8pl、インク組成物の最大付与量8.5ml/mにて吐出した。このとき、ライン画像は、1200dpiの幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインをシングルパスで主走査方向に吐出して記録し、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクを吐出してベタ画像とした。
【0205】
画像の記録はまず、記録媒体上にインク吐出用ヘッドにより、シングルパスで吐出して画像を記録し、その後、インク乾燥ゾーンでインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV照射部において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3000mJ/cmになるように照射して画像を硬化した。
【0206】
<画像評価>
−1.画像品質(描画性)−
上記のようにして記録媒体上に記録された、幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインについて、下記の評価基準にしたがって描画性を評価した。評価結果は下記表2に示す。
〜評価基準〜
1:全てのラインが均質なラインであった。
2:幅1ドットのラインは均質であったが、幅2ドット及び幅4ドットのラインの一部にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが認められた(実用上の限界)。
3:幅1ドットのラインは均質であったが、幅2ドット及び幅4ドットのラインの全般にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが認められた。
4:ライン全体にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが顕著に認められた。
【0207】
−2.画像密着性−
前記で作製したベタ画像部に、描画1日経過後、セロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、貼付後すぐにはがしたときの、描画画像のインクのはがれ程度を評価した。評価基準は、ほぼ全面剥離を5、まったくはがれないものを1とし、その間のはがれ程度に応じて5段階評価を行った。
〜評価基準〜
1:まったくはがれなかった。
2:画像としては剥離がわからないが、はがしたテープの接着面に極わずかに着色があった。
3:良く見るとわずかに白地が見え、はがしたテープの接着面にわずかに着色が見えた(実用上の限界)。
4:目視で描画像に白点状のはがれが多く見られた。
5:全面剥離し、紙地がむき出しとなった。
【0208】
【表2】

【0209】
表2から、本発明の画像形成方法によって、高速記録においても、記録媒体への密着性に優れ、描画性が良好で高精細な画像を形成できることが分かる。
【符号の説明】
【0210】
100・・・記録媒体
11・・・上質紙
12・・・溶媒ブロッキング層(第1の層)
13・・・コート層(第2の層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と、バインダーを含む第1の層と、白色顔料および酸性物質を含む第2の層と、が順次積層されており、前記原紙上に配置された前記第1の層の表面におけるJIS P8140に準拠した吸水度試験による接触時間120秒のコッブ吸水度が2.0g/m以下であって、前記第2の層の表面におけるブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2ml/m以上8ml/m以下であり、かつ前記第2の層の表面におけるpHが5.5以下である記録媒体上に、
顔料、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性モノマー、及び水を少なくとも含むインク組成物を、インクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記酸性物質は、分子量が100以上で、かつ分子内に2以上のカルボキシル基を有し、そのpKa(25℃)が2.6以上4.6以下であって、pKa(25℃)が3.8以上5.4以下である、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記酸性物質は、水への溶解度(25℃)が5質量%以上である、請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記酸性物質は、水への溶解度(25℃)が、30質量%以上70質量%以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記酸性物質は、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びクエン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第2の層は、さらに水溶性多価金属化合物を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ポリマー分散剤は、カルボキシル基を有する、請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記重合性モノマーは、ノニオン性化合物である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記インク組成物は、顔料の含有率が1.8質量%以上5.5質量%以下であり、前記重合性モノマーの含有率が10質量%以上22質量%以下である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記インク組成物は、さらに光重合開始剤を含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記バインダーは、熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系ウレタン樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記第1の層は、白色顔料をさらに含む、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記第1の層及び第2の層に含まれる白色顔料の少なくとも一方は、カオリンである、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項16】
前記第2の層は、層表面のpHが4以下である、請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207169(P2011−207169A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79521(P2010−79521)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】