説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】発色性の向上を図る。
【解決手段】主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列と、を備えるノズル列群と、前記ノズル列群を第2の方向に移動させつつ各ノズルから液体を吐出して被印刷材にドットを形成するドット形成動作と、被印刷材及び前記ノズル列群を第1の方向に移動させる移動動作とを行う制御部と、を備え、制御部は、ドット形成動作を行う際に、第1ノズル列及び第2ノズル列をそれぞれN個のノズル群に分割し、第1モードでは、N個のうちのA個の第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の第1ノズル列のノズル群を用い、第2モードでは、N個のうちのB個(A≠B)の第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の第1ノズル列のノズル群を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出して被印刷材に画像を形成する画像形成装置として、例えばインクジェット式のプリンターが知られている。このようなプリンターでは、液体を吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列を液体の色毎に備えている。また、各ノズル列をそれぞれ部分的に用いることにより、画像を重ねて形成するようにしたものが知られている。例えば特許文献1では、ノズル列を半分に分割して使用することで、被印刷材上に補助画像(例えば背景画像)と主画像を重ねて形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/105452号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように主画像と補助画像を重ねて形成した画像を見る際、印刷物に当たる光の状態によって発色性が損なわれる場合がある。例えば、被印刷材の正面(例えば印刷面)に光を当てる場合では、補助画像(背景画像)が厚いほど、その上に印刷される主画像の発色性が良好になる。しかし、電飾広告用の印刷物など、被印刷材の裏面(例えば、印刷面の反対側の面)に光を当てて、正面側で画像を見る場合では、補助画像が厚いほど光が遮られてしまうので、主画像の発色性が悪化する。
【0005】
そこで、本発明は、印刷物の発色性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが前記第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記第1ノズル列と並列に設けられた第2ノズル列と、を備えるノズル列群と、前記ノズル列群を前記第2の方向に移動させつつ各ノズルから液体を吐出して前記被印刷材にドットを形成するドット形成動作と、前記被印刷材及び前記ノズル列群のうち少なくとも一方を前記搬送方向に搬送する搬送動作とを行うことによって前記被印刷材に画像を形成する制御部と、を備えた画像形成装置であって、前記制御部は、前記ドット形成動作を行う際に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列をそれぞれN個(Nは3以上の整数)のノズル群に分割し、第1モードでは、前記N個のうちのA個の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にA層の前記補助画像と(N−A)層の前記主画像を重ねて形成し、第2モードでは、前記N個のうちのB個(A≠B)の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にB層の前記補助画像と(N−B)層の前記主画像を重ねて形成することを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書、及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターのヘッド周辺の概略図である。
【図3】図3A及び図3Bは、プリンターの横断面図である。
【図4】ヘッドの構成の説明図である。
【図5】図5Aは、正面光で画像を観察する場合を示す概略図であり、図5Bはバックライトで画像を観察する場合を示す概略図である。
【図6】第1実施形態における第1モードの印刷処理を行う際のノズル群の設定についての説明図である。
【図7】図7A〜図7Cは、第1モードで画像が形成される様子を順に示した概略説明図である。
【図8】第1実施形態における第2モードの印刷処理を行う際のノズル群の設定についての説明図である。
【図9】図9A〜図9Cは、第2モードで画像が形成される様子を順に示した概略説明図である。
【図10】図10Aは、第1実施形態の第1モードで印刷された印刷物の説明図であり、図10Bは、第1実施形態の第2モードで印刷された印刷物の説明図である。
【図11】図11Aは、第2実施形態における第1モードのノズル群の設定と印刷物の説明図であり、図11Bは、第2実施形態における第2モードのノズル群の設定と印刷物の説明図である。
【図12】インターレース記録印刷方式による本発明の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが前記第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記第1ノズル列と並列に設けられた第2ノズル列と、を備えるノズル列群と、前記ノズル列群を前記第2の方向に移動させつつ各ノズルから液体を吐出して前記被印刷材にドットを形成するドット形成動作と、前記被印刷材及び前記ノズル列群の少なくとも一方を前記第1の方向に移動させる移動動作とを行うことによって前記被印刷材に画像を形成する制御部と、を備えた画像形成装置であって、前記制御部は、前記ドット形成動作を行う際に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列をそれぞれN個(Nは3以上の整数)のノズル群に分割し、第1モードでは、前記N個のうちのA個の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にA層の前記補助画像と(N−A)層の前記主画像を重ねて形成し、第2モードでは、前記N個のうちのB個(A≠B)の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にB層の前記補助画像と(N−B)層の前記主画像を重ねて形成することを特徴とする画像形成装置が明らかとなる。
このような画像形成装置によれは、各モードで補助画像と主画像の層数を変えているので、印刷物の発色性の向上を図ることができる。
【0011】
かかる画像形成装置であって、前記第1モードは、前記被印刷材の一方の面に光を照射して前記一方の面側で画像を見るための印刷物を印刷するモードであり、前記第2モードは、前記被印刷材の他方の面に光を照射して前記一方の面側で画像を見るための印刷物を印刷するモードであることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、印刷物に当たる光の状態にかかわらずに良好な発色性を得ることができる。
【0012】
かかる画像形成装置であって、前記Aの値は、前記Bの値よりも大きいことが望ましい。
このような画像形成装置によれば、第1モードでは補助画像を厚く形成でき、第2モードでは主画像を厚く形成できる。これにより、各モードで形成される印刷物の発色性を向上させることができる。
【0013】
かかる画像形成装置であって、前記(N−B)の値は、前記Bの値以上であることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、第2モードの印刷物の発色性をさらに良好にすることができる。
【0014】
かかる画像形成装置であって、前記第1液体は着色剤として染料が用いられ、前記第2液体は着色剤として顔料が用いられている場合、特に発色性を向上させるのに効果的である。
【0015】
かかる画像形成装置であって、前記第1液体及び前記第2液体は光の照射によって硬化する液体であり、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列によって、前記被印刷材に形成されたドットに前記光を照射する照射部を有することが望ましい。
このような画像形成装置によれば、ドット形成後瞬時に硬化させることが可能であるので、被印刷材のインク吸収性に依存することなく厚みのある画像を形成できる。これにより、被印刷材の上に補助画像と主画像を確実に複数の層に重ねて形成できる。
【0016】
また、主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが前記第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記第1ノズル列と並列に設けられた第2ノズル列と、を備えるノズル列群を備えた画像形成装置によって前記被印刷材に画像を形成する画像形成方法であって、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列をそれぞれN個(Nは3以上の整数)のノズル群に分割する分割工程と、前記ノズル列群を前記第2の方向に移動させつつ、第1モードでは、前記N個のうちのA個の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて前記被印刷材にドットを形成し、第2モードでは、前記N個のうちのB個(A≠B)の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて前記被印刷材にドットを形成するドット形成工程と、前記ドット形成工程の合間に前記被印刷材及び前記ノズル列群の少なくとも一方を前記第1の方向に移動させる移動工程と、を有し、前記第1モードでは、前記被印刷材にA層の前記補助画像と(N−A)層の前記主画像を重ねて形成し、前記第2モードでは、前記被印刷材にB層の前記補助画像と(N−B)層の前記主画像を重ねて形成することを特徴とする画像形成方法が明らかとなる。
【0017】
以下の実施形態では、画像形成装置としてインクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0018】
===第1実施形態===
<プリンターの構成について>
以下、図1、図2、図3A、及び図3Bを参照しながら本発明の実施形態のプリンター1について説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図3A、及び図3Bは、プリンター1の横断面図である。図3Aは図2のA−A断面に相当し、図3Bは図2のB−B断面に相当する。
【0019】
プリンター1は、紙、布、フィルムシート等の被印刷材に向けて、液体の一例として、光の一種である紫外線(Ultra Violet Light:「UV」と略す)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、被印刷材に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、プリンター1は、後述するようにCMYKの4色のインク(カラーインク)と、背景用の白インクの各UVインクを用いて印刷を行う。
【0020】
プリンター1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、被印刷材に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0021】
搬送ユニット10は、被印刷材(例えば、塩化ビニールフィルム)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された被印刷材をプリンター1の内部に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された被印刷材を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の被印刷材を支持する。排紙ローラー15は、被印刷材をプリンター1の外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0022】
キャリッジユニット20は、搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)にヘッド31を移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。なお、交差方向とは一般的には直交方向である。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述する搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーターによりガイド軸24に沿って往復移動する。
【0023】
ヘッドユニット30は、被印刷材に液体(本発明の実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が被印刷材に形成される。なお、以下の説明において、図2に示す移動方向の一端側から他端側に向かって移動する経路のこと往路と呼び、移動方向の他端側から一端側に移動する経路のことを復路と呼ぶ。プリンター1では、この往路、及び復路の両期間においてヘッド31からUVインクが吐出される。すなわち、プリンター1は、双方向印刷を行う。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0024】
照射ユニット40は、被印刷材に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。被印刷材上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることによって硬化する。照射ユニット40は、照射部42a、42bを備えている。なお、照射部42a、42bは、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、照射部42a、42bも移動方向に移動する。
【0025】
照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上の移動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。また、照射部42a、42bの搬送方向の長さは、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じかそれよりも長くなっている。言い換えると、照射部42a、42bは、ヘッド31の各ノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する。なお、照射部42a、42bのUV照射の光源としては、メタルハライドランプ、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などが用いられる。光源がLEDの場合、入力電流の大きさを制御することによって、UVの照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
【0026】
検出器群50には、リニア式エンコーダー(不図示)、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の被印刷材の先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被印刷材の有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら被印刷材の端部の位置を検出し、被印刷材の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、被印刷材の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0027】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部(I/F)61と、CPU(Central Processing Unit)62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0028】
印刷を行うとき、コントローラー60は、後述するように往路方向及び復路方向に移動中のヘッド31からUVインクを吐出させるドット形成動作と、搬送方向に紙を搬送する搬送動作とを繰り返して行い、複数のドットから構成される画像を紙に印刷する。なお、以下の説明において、ドット形成動作のことを「パス」と呼ぶ。また、n回目のパスのことをパスnと呼ぶ。また、後述するように、パスの際には照射部42a、42bによるUV照射も行われる。
【0029】
<ヘッド31の構成について>
図4は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。なお、図4はヘッド31を下から(すなわちプラテン14側から)見た図である。図4に示すように、ヘッド31の下面には、シアンインクノズル列Ncと、マゼンダインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyと、ブラックインクノズル列Nkと、ホワイトインクノズル列Nwが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(例えば180個)備えている。また、図に示すように各ノズル列は、それぞれ移動方向に並ぶように設けられている。以下の説明において、シアンインクのことをCインク、マゼンダインクのことをMインク、イエローインクのことをYインク、ブラックインクのことをKインク、ホワイト(白)インクのことをWインクともいう。さらに、Cインク、Mインク、Yインク、Kインクのことをまとめてカラーインク(第1液体に相当する)ともいい、これらのカラーインクを吐出する各ノズル列をカラーインクノズル列(第1ノズル列に相当する)ともいう。また、これらのカラーインクによって形成される画像のことをカラー画像(主画像に相当する)ともいう。なお、カラーインクには着色剤として染料が用いられている。
【0030】
また、Wインク(第2液体に相当する)を吐出するホワイトインクノズル列Nwは第2ノズル列に相当し、Wインクによって形成される画像のことを背景画像ともいう。このWインクは、被印刷材に印刷を行うときに、カラー画像の背景色を印刷するための白色のインクであり、着色剤として酸化チタンなどの顔料が用いられている。なお、一般的に染料系のインクよりも顔料系のインクの方が光の透過率が低い。つまりWインクは、カラーインクよりも光の透過率が低い。
【0031】
Wインクを用いて、背景を白色にすることによって、重ねて形成されるカラー画像が見やすくなる。つまり、白色の背景画像はカラー画像(主画像)を補助する補助画像に相当する。なお、「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、いわゆる「白っぽい色」のように、社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。
【0032】
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ整列している。各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。これらの各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、被印刷材に着弾してドットを形成する。
【0033】
≪正面光とバックライトについて≫
印刷物として、被印刷材の一方の面(例えば印刷面:以下正面とする)に光を当てて、正面側で画像を見るものと、被印刷材の他方の面(例えば印刷面の裏面)に光を当てて、正面側で画像を見るもの(例えば、電飾広告用の印刷物など)がある。なお、以下の説明において、正面に当てる光のことを正面光といい、裏面にあてる光のことをバックライトという。
【0034】
図5Aは、正面光で画像を観察する場合を示す概略図であり、図5Bはバックライトで画像を観察する場合を示す概略図である。
図において被印刷材S(例えば透明フィルム)上には、白色の背景画像Wが形成され、その上にカラー画像Cが重ねて形成されている。なお、プリンター1はUVインクを使用しており、後述するように、ドット形成直後にUV照射を行ってドットを硬化させている。このようにUV照射により瞬時にドットを硬化させることが可能であるので、被印刷材Sのインク吸収性に依存することなく厚みのある画像を形成できることが多い。つまり、被印刷材Sの上に背景画像Wとカラー画像Cを複数の層に重ねて形成することが可能である。
【0035】
図5Aでは、印刷面側に光源が設けられており、当該光源から被印刷材Sに向けて光(正面光)を当てている。こうして、被印刷材S上の画像(カラー画像C及び背景画像W)が印刷面側の観察者に視認される。
これに対し、図5Bでは、印刷面の裏面側に光源が設けられており、当該光源から被印材Sに向けて光(バックライト)を当てている。この光が被印刷材S及び画像(カラー画像C及び背景画像W)を透過することによって、被印刷材S上の画像が印刷面側の観察者に視認される。
【0036】
≪重ね印刷について≫
図5A、図5Bでは、背景画像Wとカラー画像Cをそれぞれ1層形成していたが、画像の重ね数(層数)を増やすことで、印刷物(より具体的にはカラー画像C)の発色性を向上させることができる。例えば、背景画像Wを2層に重ねて印刷し、その上にカラー画像Cを形成すると、正面光で画像を見る場合では、背景の白色が厚くなることによって、カラー画像Cの発色性が良好になる。しかしながら、その画像を図5Bのようにバックライトで見ると、バックライトの光が2層の背景画像W(光の透過率の低いWインク)によって遮られて光の透過量(光量)が低下し、カラー画像Cの発色性が悪化してしまう。特にWインクには光の透過率の低い顔料が用いられているので、背景画像Wが厚くなるとカラー画像Cの発色性の悪化が顕著になる。
このようにカラー画像Cと背景画像Wを重ねて形成する場合、印刷物に当たる光の状態で発色性が損なわれるおそれがある。
そこで、以下に示すようにプリンター1では、正面光で見る画像を印刷する第1モードと、バックライトで見る画像を印刷する第2モードの2つの印刷モードを行うようにしている。そして、第1モードと第2モードにおいて、カラー画像Cと背景画像Wの重ね数(層数)を変えることで、各モードの印刷物の発色性の向上を図っている。なお、第1実施形態では被印刷材S上に背景画像Wとカラー画像Cを合わせて3層形成する。
【0037】
≪印刷処理について≫
<第1モードの印刷処理>
まず、第1モードの印刷処理について説明する。
図6は、第1実施形態における第1モードの印刷処理を行う際のノズル群の設定についての説明図である。図では説明の都合上、ヘッド31の各ノズル列を直線で示している。第1モードの印刷を行う際、コントローラー60は、図のようにヘッド31の各ノズル列をそれぞれ均等に3分割(すなわち3等分)して使用する。3分割されたノズルの群を搬送方向上流側から順にノズル群X1、ノズル群X2、ノズル群X3とする。例えば、各ノズル列のノズル数が180個の場合、ノズル群X1はノズル番号#121〜#180、ノズル群X2はノズル番号#61〜#120、ノズル群X3はノズル番号#1〜#60となる。
また、図6において各ノズル列のうち第1モードの印刷で使用するノズル群を丸で囲んで示している。例えば、ホワイトインクノズル列Nwではノズル群X1とノズル群X2を使用する。また、カラーインクノズル列ではノズル群X3を使用する。
【0038】
図7A〜図7Cは、第1モードで画像が形成される様子を順に示した概略説明図である。なお、プリンター1の印刷領域には既に被印刷材Sが搬送されており、ノズル群X1と対向する位置の被印刷材Sにはまだ画像が形成されていないこととする。
まず、コントローラー60は、パスn(例えば往路のパス)では、キャリッジ21を移動方向(往路方向)に移動させつつ、ヘッド31の各ノズルからインクを吐出させる。このとき、コントローラー60は、図6で示したように、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1、ノズル群X2のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、ノズル群X1と対向する位置の被印刷材S上には、ホワイトインクノズル列NwからWインクが吐出されて、図7Aに示すように背景画像Wが形成される。また、コントローラー60は、移動方向上流側の照射部42aからUVを照射させる。これにより被印刷材Sに形成された背景画像Wは直ちに硬化する。
【0039】
パスnの後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわちノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。被印刷材Sは搬送方向下流側にノズル列長さの1/3移動するので、図7Aの背景画像Wは、この搬送動作によってノズル群X2と対向する位置に搬送される。また、この搬送動作によって、ノズル群X1と対向する位置には、まだ画像の形成されていない被印刷材Sが搬送される。
【0040】
搬送動作の後、コントローラー60は、パス(n+1)を行う。プリンター1は、双方向印刷を行うため、パスnが往路のパスの場合、パス(n+1)は復路のパスになる。
【0041】
コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向(復路方向)に移動させつつヘッド31のノズルからUVインクを吐出させる。このとき、コントローラー60は、パスnのときと同様に、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1、ノズル群X2のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、ノズル群X2と対向する位置に搬送された背景画像W上に、ホワイトインクノズル列Nwのノズル群X2からWインクが吐出されて、図7Bに示すように背景画像Wが重ねて形成される。すなわち、2層の背景画像Wが形成される。
【0042】
また、コントローラー60は、パス(n+1)において、ヘッド31の移動方向の上流側の照射部42bからUVを照射させる。このように、パス(n+1)では、移動方向がパスnと逆なので、UV照射に用いる照射部がパスnの場合と異なる。
【0043】
パス(n+1)の後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわちノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。被印刷材Sは搬送方向下流側にノズル列長さの1/3移動するので、図7Bの2層の背景画像Wは、この搬送動作によってノズル群X3と対向する位置に搬送される。
【0044】
その後、コントローラー60は、パス(n+2)を行う。パス(n+2)では、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向(往路方向)に移動させつつ、ヘッド31の各ノズルからインクを吐出させる。このパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1、ノズル群X2のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、ノズル群X3と対向する位置に搬送された2層の背景画像W上に、カラーインクノズル列のノズル群X3からカラーインクが吐出される。こうして、図7Cに示すように2層の背景画像Wと1層のカラー画像Cが重ねて形成される。
【0045】
また、コントローラー60は、パス(n+2)では、ヘッド31の移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。
【0046】
パス(n+2)の後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわち各ノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。この搬送動作によって、図7Cの画像は、印刷領域外(ヘッド31よりも搬送方向下流側)に搬送され、印刷領域の搬送方向上流側には、まだ画像の形成されていない被印刷材Sが搬送される。
【0047】
以下、同様にしてコントローラー60は、パスと搬送動作を交互に繰り返し実行させる。これにより、被印刷材S上に画像(2層の背景画像Wと1層のカラー画像C)が順次印刷されていく。
【0048】
<第2モードの印刷処理>
次に、第2モードの印刷処理について説明する。
図8は、第1実施形態における第2モードの印刷処理を行う際のノズル群の設定についての説明図である。第2モードの印刷を行う際にも、コントローラー60は、第1モードの場合と同様に、ヘッド31の各ノズル列を3等分して使用する。ただし、使用するノズル群が第1モード印刷の場合(図6)と異なる。例えば、ホワイトインクノズル列Nwではノズル群X1のみを使用する。また、カラーインクノズル列ではノズル群X2とノズル群X3を使用する。
【0049】
図9A〜図9Cは、第2モードで画像が形成される様子を順に示した概略説明図である。なお、プリンター1の印刷領域には既に被印刷材Sが搬送されており、ノズル群X1と対向する位置の被印刷材Sにはまだ画像が形成されていないこととする。
【0050】
まず、コントローラー60は、パスn(例えば往路のパス)では、キャリッジ21を移動方向(往路方向)に移動させつつ、ヘッド31の各ノズルからインクを吐出させる。このとき、コントローラー60は、図8で示したように、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X2及びノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、ノズル群X1と対向する位置の被印刷材S上には、ホワイトインクノズル列NwからWインクが吐出されて、図9Aに示すように背景画像Wが形成される。また、コントローラー60は、移動方向上流側の照射部42aからUVを照射させる。これにより被印刷材Sに形成された背景画像Wは直ちに硬化する。
【0051】
パスnの後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわちノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。被印刷材Sは搬送方向下流側にノズル列長さの1/3移動するので、図9Aの背景画像Wは、この搬送動作によってノズル群X2と対向する位置に搬送される。また、この搬送動作によって、印刷領域の搬送方向上流側には、まだ画像の形成されていない被印刷材Sが搬送される。
【0052】
搬送動作の後、コントローラー60は、パス(n+1)を行う。プリンター1は、双方向印刷を行うため、パスnが往路のパスの場合、パス(n+1)は復路のパスになる。
コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向(復路方向)に移動させつつヘッド31のノズルからUVインクを吐出させる。このとき、コントローラー60は、パスnのときと同様に、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X2及びノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、図9Aの背景画像W上に、カラーインクノズル列の各ノズル群X2からカラーインクが吐出されて、図9Bに示すように背景画像Wの上にカラー画像Cが重ねて形成される。
【0053】
また、コントローラー60は、パス(n+1)において、ヘッド31の移動方向の上流側の照射部42bからUVを照射させる。このように、パス(n+1)では、移動方向がパスnと逆なので、UV照射に用いる照射部がパスnの場合と異なる。
パス(n+1)の後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわち各ノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。被印刷材Sは搬送方向下流側にノズル列長さの1/3移動するので、図9Bの背景画像Wとカラー画像Cは、この搬送動作でノズル群X3と対向する位置に搬送される。
【0054】
その後、コントローラー60は、パス(n+2)を行う。パス(n+2)では、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向(往路方向)に移動させつつ、ヘッド31の各ノズルからインクを吐出させる。このパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X1のノズルからWインクを吐出させる。また、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X2及びノズル群X3からそれぞれカラーインクを吐出させる。これにより、図9Bのカラー画像Cの上に、カラーインクノズル列からカラーインクが吐出される。こうして、図9Cに示すように1層の背景画像Wと2層のカラー画像Cが重ねて形成される。
【0055】
また、コントローラー60は、パス(n+2)では、ヘッド31の移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。
パス(n+2)の後、コントローラー60は被印刷材Sをノズル列長さの1/3(すなわち各ノズル群の長さ)の搬送量で搬送方向下流側に搬送させる(搬送動作)。この搬送動作によって、図9Cの画像は、印刷領域外(ヘッド31よりも搬送方向下流側)に搬送される。また、印刷領域の搬送方向上流側には、まだ画像の形成されていない被印刷材Sが搬送される。
【0056】
以下、同様にしてコントローラー60は、パスと搬送動作を交互に繰り返し実行させる。これにより、被印刷材S上に画像が順次印刷されていく。
【0057】
≪印刷物について≫
図10Aは、第1実施形態の第1モードで印刷された印刷物の説明図であり、図10Bは、第1実施形態の第2モードで印刷された印刷物の説明図である。
第1モードの印刷処理で印刷された印刷物は、図10Aに示すように、被印刷材S上に2層の背景画像Wと、1層のカラー画像Cが重ねて形成されている。この印刷物に正面光を当てると、背景画像Wが厚く印刷されているので、カラー画像Cの発色性が良好になり、カラー画像Cが見やすくなる。
一方、第2モードの印刷処理で印刷された印刷物は、図10Bに示すように、被印刷材S上に1層の背景画像Wと、2層のカラー画像Cが重ねて形成されている。つまり、第1モードの印刷物よりも背景画像Wが薄くなっている。この印刷物にバックライトを当てると、第1モードの印刷物にバックライトを当てる場合と比べて、光が透過しやすく、また、カラー画像Cが2層に形成されているのでカラー画像Cの発色性が良好になる。
【0058】
以上、説明したように、第1実施形態のプリンター1ではヘッド31の各ノズル列をそれぞれ3つのノズル群に分割している。そして、正面光で見る画像を印刷するモード(第1モード)と、バックライトで見る画像を印刷するモード(第2モード)で、使用するノズル群を変更することにより、第1モードでは、被印刷材S上に2層の背景画像Wと、1層のカラー画像Cを重ねて形成し、第2モードでは、被印刷材S上に1層の背景画像Wと、2層のカラー画像Cを重ねて形成している。こうすることにより、各モードにおいて印刷物の発色性の向上を図ることができる。
【0059】
また、第2モードの際には、カラーインク(染料インク)を吐出するカラーインクノズル列の使用ノズル群の数がWインク(顔料インク)を吐出するホワイトインクノズル列Nwの使用ノズル群の数よりも多くなるようにしている。これにより、背景画像Wを薄く且つカラー画像を厚く形成できる。よって、画像をバックライトで見るときに光が透過しやすくなり、且つ、カラー画像Cが濃くなるので、発色性を良好にすることができる。
【0060】
===第2実施形態===
第2実施形態では、ヘッド31の各ノズルの分割数が第1実施形態と異なる。なお、プリンター1の構成などは第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
図11Aは、第2実施形態における第1モードのノズル群の設定と印刷物の説明図であり、図11Bは、第2実施形態における第2モードのノズル群の設定と印刷物の説明図である。なお、図11A、図11Bにおいて、上側の図は、各モードでのノズル群の設定を示しており、下側の図は、各モードの印刷によって形成された印刷物を示している。
【0061】
第2実施形態では、図11A、図11Bに示すように、ヘッド31の各ノズル列を5つのノズル群(X1〜X5)に分割(5等分)している。また、図では、各印刷モードにおいて使用するノズル群を丸で囲んで示している。例えば、第1モード(図11A)の場合、ホワイトインクノズル列Nwでは、ホワイトインクノズル列Nwでは、ノズル群X1、ノズル群X2、ノズル群X3の3つのノズル群を使用し、カラーインクノズル列では、ノズル群X4、ノズル群X5の2つのノズル群を使用する。一方、第2モード(図11B)の場合、ホワイトインクノズル列Nwでは、ノズル群X1とノズル群X2の2つのノズル群を使用し、カラーインクノズル列では、ノズル群X3、ノズル群X4、ノズル群X5の3つのノズル群を使用する。
【0062】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様にパスと搬送動作を繰り返し行い、被印刷材Sに画像を形成していく。ただし、パス間の搬送動作による搬送量はノズル列の分割数に応じて定められる。例えばノズル列をn分割した場合、搬送動作の搬送量は、ノズル列長さの1/nになる。この第2実施形態では、ノズル列を5分割しているので、パス間の搬送動作における被印刷材Sの搬送量は、ノズル列長さの1/5である。
【0063】
第1モードの印刷処理で印刷された印刷物は、図11Aの下側に示すように被印刷材S上に3層の背景画像Wと、2層のカラー画像Cが重ねて形成されている。このように第1モードの印刷物は、背景画像Wが厚く(3層に)形成されているので、正面光を当てて見る場合にカラー画像Cの発色性が良好になる。ただし、バックライトを当てて見る場合には、背景画像が厚いことによりカラー画像Cの発色性が悪化する。
【0064】
一方、第2モードの印刷処理で印刷された印刷物は、図11Bの下側に示すように被印刷材S上に2層の背景画像Wと、3層のカラー画像Cが重ねて形成されている。この第2モードの印刷物は、背景画像Wが第1モードの印刷物よりも薄いので、第1モードの印刷物よりも光が透過しやすくなっている。また、カラー画像Cが3層に形成されている。よって、バックライトを当てて見る場合にカラー画像Cの発色性が良好になる。
【0065】
なお、第1モードでは背景画像Wは厚く形成するのが望ましく、第2モードでは背景画像Wは薄く形成するのが望ましい。よって、例えば、第1モードでは4層の背景画像Wと、1層のカラー画像Cを重ねて形成し、第2モードでは1層の背景画像Wと、4層のカラー画像Cを重ねて形成するようにしてもよい。こうすることにより、第1モード及び第2モードの印刷物の発色性をさらに向上させることができる。
【0066】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0067】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、前述した実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0068】
<吐出方式について>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0069】
<インクについて>
前述の実施形態は、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の光(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから吐出しても良い。この場合、各照射部から、その液体を硬化させるための光(可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0070】
また、このような光硬化型インク以外のインクを用いても良い。例えば、レジンインクを用いてドットを形成し、ヒーター等で加熱することでインクを乾燥させるようにしてもよい。なお、この場合、UVの照射部は設けなくてもよい。
また、前述の実施形態ではカラーインクはCMYKの4色であったが、これ以外の色(例えばライトシアン、ライトマゼンダ)のインクを用いるようにしてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態ではWインクを用いて白色の背景画像Wを形成していたが、Wインク以外のインクを用いてもよい。例えば、被印刷材とは異なる色(シルバーなど)のメタリックインクを用いて被印刷材と異なる色の背景画像を形成するようにしてもよい。なお、メタリックインクとは、印刷物がメタリック感を発現するインクであり、このようなメタリックインクとしては、例えば、金属顔料と有機溶剤と樹脂とを含む油性インク組成物を用いることができる。視覚的に金属的な質感を効果的に生じさせるためには、前述の金属顔料は、平板状の粒子であることが好ましい。このような金属顔料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金によって形成することができ、また、金属蒸着膜を破砕して作成することも可能である。メタリックインクに含まれる金属顔料の濃度は、例えば、0.1〜10.0重量%とすることができる。もちろん、メタリックインクはこのような組成に限らず、メタリック感が生じる組成であれば他の組成を適宜採用することが可能である。このようにメタリックインを使用する場合においても、前述した実施形態のWインクと同様にノズル群を設定してインクを吐出するようにすればよい。
【0072】
<照射部について>
前述した実施形態では、キャリッジ21における移動方向の両端にそれぞれUVの照射部(42a、42b)を設けていた。そして、双方向印刷におけるキャリッジ21の移動する方向(移動方向)に応じて使用する照射部を切り替えていたが、これには限られない。例えば、キャリッジ21の片側端に照射部を設けて単方向印刷を行うようにしてもよい。この場合、ドットを形成するパスの際にヘッドよりも移動方向の上流側に位置するように照射部を設ければよい。こうすることで、ドット形成後に直ちにUV照射を行うことができる。ただし、前述した実施形態のように、キャリッジ21に照射部42a、42bを設け、キャリッジ21の移動方向に応じて使用する照射部を変更するとパス数を減らすことができ、印刷速度を速くすることができる。
【0073】
<コントローラーについて>
前述した実施形態では、プリンター1が液体吐出装置に相当し、プリンター1のコントローラー60(制御部)が画像を形成する際のドット形成動作及び搬送動作等の制御を行っていたが、これには限られない。例えば、プリンター1とコンピューター110とから構成される装置(システム)で液体吐出装置を構成してもよい。この場合、コンピューター110が制御部であってもよい。あるいは、プリンター1のコントローラー60とコンピューター110とで制御部を構成してもよい。
【0074】
<ノズル列の分割について>
前述した実施形態ではノズル列を3分割する場合と、5分割する場合について説明したがこれ以外の数に分割してもよい。例えば4分割してもよい。この場合、第1モードでのホワイトインクノズル列Nwの使用ノズル群の数が、第2モードでのホワイトインクノズル列Nwの使用ノズル群の数よりも多くなるようにすればよい。例えば、第1モードではホワイトインクノズル列Nwの3個のノズル群と、カラーインクノズル列の1個のノズル群を使用して、被印刷材S上に3層の背景画像Wと1層のカラー画像Cを重ねて形成し、第2モードでは、ホワイトインクノズル列Nwの1個のノズル群と、カラーインクノズル列の3個のノズル群を用いて、被印刷材S上に1層の背景画像Wと3層のカラー画像Cを重ねて形成するようにすればよい。あるいは、第2モードでホワイトインクノズル列Nwの2個のノズル群と、カラーインクノズル列の2個のノズル群を用いて、被印刷材S上に2層の背景画像Wと2層のカラー画像Cを重ねて形成するようにしてもよい。このような場合においても、発色性を向上させることができる。
【0075】
<記録方法について>
前述した実施形態では、ノズル列の分割数に応じたバンド幅印刷記録方法について説明したがこれ以外の印刷記録方法であってもよい。例えば分割した範囲内のノズルを使ったインターレース印刷記録方法であってもよい。インターレース印刷とは、形成されるドット間隔(dとする)がノズルピッチDの2倍以上(D=k・dにおいてkが2以上)であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方法を意味する。すなわち、インターレース印刷では、ノズルピッチDよりも細かい解像度でカラー画像や背景画像を形成することが可能である。以下に示す例では、kが4であり、1回のパスで形成されるラスタラインの間に3本のラスタラインが挟まれる。なお、ラスタラインとは、前述したように、パスの際に移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されて形成される移動方向に並ぶドットライン(ドットの列)のことである。
【0076】
インターレース印刷では、被印刷材が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・dに設定されること、が条件となる。
インターレース印刷の場合、ノズルピッチ幅の連続するラスタラインが完成するためには、k回のパスが必要となる。例えば、180dpiのノズルピッチのノズル列を用いて720dpiのドット間隔にて連続する4つのラスタラインが完成するためには、4回のパスが必要となる。
【0077】
図12は、インターレース印刷記録方式による本発明の実施形態の説明図である。図中では、説明の簡略化のため、カラーインク(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のカラーノズル列を1つのノズル列として示している。また、カラーノズル列のノズルを丸印で示し、ホワイト(白)ノズル列のノズルを三角印で示している。また、図中黒色で示されるノズルは、インクを吐出可能なノズルであり、白色で示されるノズルは、インクを吐出不可のノズルである。また、説明の便宜上、ヘッド(ノズル列)が被印刷材に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッドと被印刷材との相対的な位置を示すものであって、実際には被印刷材が搬送方向に搬送される。
【0078】
また、この実施形態では説明の簡略化のため各ノズル列のノズル数を18としている。そして、各ノズル列を3分割して3つのノズル群(Z1、Z2、Z3)としている。
例えば2層の背景画像Wを形成した後、その上にカラー画像Cを形成する場合には、カラーノズル列のノズル群Z1(ノズル#1〜6)、白ノズル列のノズル群Z2(ノズル#7〜12)及びノズル群Z3(ノズル#13〜18)が用いられる。既に説明したインターレース印刷の条件((1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・dに設定されること)を満たすようにするため、6個のノズルでインターレース印刷を行う場合には、5個のノズルからインクが吐出されると共に、媒体は搬送量5・dにて搬送される。
【0079】
このようにドットを形成することにより、被印刷材上に白ノズル列のノズルによってホワイトドット(白ドット)を2回形成してから、カラーノズル列のノズルによってカラードットを形成できる。例えば、図中の点線で示す位置のラスタラインでは、パス1において白ドットが形成され、パス5において白ドットが形成され。パス9においてカラードットが形成される。よって、2層の背景画像上に、カラー画像を1層形成できる。なお、カラーノズル列のノズル群Z1、Z2と白ノズルの群Z3を用いて同様に印刷を行うと、1層の背景画像上にカラー画像を2層形成することができる。
【0080】
<印刷物について>
前述した実施形態では、印刷面側から画像を見る印刷物を形成する場合について説明していたが、例えば透明な被印刷材に画像を形成して印刷面の反対側から画像を見る印刷物を形成するようにしてもよい。例えば、第1実施形態の第1モードの場合、ヘッド31のカラーインクノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)のノズル群X1から、それぞれカラーインクを吐出し、ヘッド31のホワイトインクノズル列Nwのノズル群X2、X3からWインクを吐出すると、被印刷材S上に1層のカラー画像Cが形成され、その上に2層の背景画像Wが形成される。この印刷物の場合、2層の背景画像Wを背景としたカラー画像Cを、透明な被印刷材Sを介して、印刷面の反対面(非印刷面)側から見ることになる。なお、このような印刷物では、正面光は被印刷材の非印刷面に当てられ、バックライトは被印刷材の印刷面に当てられる。
この場合においても、前述の実施形態と同様にカラー画像Cと背景画像Wをそれぞれ重ねて形成することで発色性を向上させることができる。
【0081】
前述した実施形態では、被印刷材を搬送方向に搬送する構成を採用していたがこれに限られることはない。例えば、被印刷材を所定の位置に固定した状態で、ヘッド31を移動方向、および前記移動方向と交差する方向に移動させ、印刷を行っても良い。さらに、被印刷材、及びヘッド31の双方を前記移動方向と交差する方向へ移動させ、印刷を行っても良い。すわなち、ヘッド31、及び被印刷材の少なくとも一方が移動し、ヘッド31が被印刷材に対して相対的に移動する構成であれば良い。
【符号の説明】
【0082】
1…プリンター、10…搬送ユニット、11…給紙ローラー、13…搬送ローラー、14…プラテン、15…排紙ローラー、20…キャリッジユニット、21…キャリッジ、30…ヘッドユニット、31…ヘッド、40…照射ユニット、42a、42b…照射部、50…検出器群、53…紙検出センサー、54…光学センサー、60…コントローラー、61…インターフェイス部、62…CPU、63…メモリー、64…ユニット制御回路、110…コンピューター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが前記第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記第1ノズル列と並列に設けられた第2ノズル列と、を備えるノズル列群と、
前記ノズル列群を前記第2の方向に移動させつつ各ノズルから液体を吐出して前記被印刷材にドットを形成するドット形成動作と、前記被印刷材及び前記ノズル列群の少なくとも一方を前記第1の方向に移動させる移動動作とを行うことによって前記被印刷材に画像を形成する制御部と、
を備えた画像形成装置であって、
前記制御部は、前記ドット形成動作を行う際に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列をそれぞれN個(Nは3以上の整数)のノズル群に分割し、
第1モードでは、前記N個のうちのA個の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にA層の前記補助画像と(N−A)層の前記主画像を重ねて形成し、
第2モードでは、前記N個のうちのB個(A≠B)の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて、前記被印刷材にB層の前記補助画像と(N−B)層の前記主画像を重ねて形成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記第1モードは、前記被印刷材の一方の面に光を当てて前記一方の面側で画像を見るための印刷物を印刷するモードであり、
前記第2モードは、前記被印刷材の他方の面に光を当てて前記一方の面側で画像を見るための印刷物を印刷するモードである、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記Aの値は、前記Bの値よりも大きい、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置であって、
前記(N−B)の値は、前記Bの値以上である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置であって、
前記第1液体は着色剤として染料が用いられ、
前記第2液体は着色剤として顔料が用いられている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の画像形成装置であって、
前記第1液体及び前記第2液体は光の照射によって硬化する液体であり、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列によって、前記被印刷材に形成されたドットに前記光を照射する照射部を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
主画像を形成するための第1液体を吐出するノズルが第1の方向に複数並ぶ第1ノズル列と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための第2液体を吐出するノズルが前記第1の方向に複数並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記第1ノズル列と並列に設けられた第2ノズル列と、を備えるノズル列群を備えた画像形成装置によって前記被印刷材に画像を形成する画像形成方法であって、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列をそれぞれN個(Nは3以上の整数)のノズル群に分割する分割工程と、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記第2の方向に移動させつつ、第1モードでは、前記N個のうちのA個の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−A)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて前記被印刷材にドットを形成し、第2モードでは、前記N個のうちのB個(A≠B)の前記第2ノズル列のノズル群と、(N−B)個の前記第1ノズル列のノズル群を用いて前記被印刷材にドットを形成するドット形成工程と、
前記ドット形成工程の合間に前記被印刷材及び前記ノズル列群の少なくとも一方を前記第1の方向に移動させる移動工程と、を有し、
前記第1モードでは、前記被印刷材にA層の前記補助画像と(N−A)層の前記主画像を重ねて形成し、
前記第2モードでは、前記被印刷材にB層の前記補助画像と(N−B)層の前記主画像を重ねて形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−99930(P2013−99930A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176771(P2012−176771)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】