画像形成装置、同装置の騒音防止方法及び騒音防止プログラム
【課題】複数の回転体を同時に回転させる際の動作音に対し、ANC制御を有効に発揮させ騒音低減効果の向上を図ることが可能な画像形成装置等を提供する。
【解決手段】騒音計測手段403により計測された複数の回転体406,407の騒音が解析手段403により解析され、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性が変更される。そして、複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声が発音体404を通して出力される。
【解決手段】騒音計測手段403により計測された複数の回転体406,407の騒音が解析手段403により解析され、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性が変更される。そして、複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声が発音体404を通して出力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファン等の回転体に対する騒音防止機能を備えたMFP(Multi Function Peripherals)等に適用される画像形成装置、同装置の騒音防止方法及び騒音防止プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MFP等の画像形成装置では、定着部の上側に用紙冷却や用紙付着防止のために複数のファンが設けられているが、これらファンが回転動作音が騒音源となっており、オフィス環境の静音化が推進されている現今では、有効な対策が求められている。
【0003】
一般に、上記のようなファンに対する回転制御は、図11に示すように、モード(例えばモノクロモード、カラーモード)毎に予め設定した制御信号を制御基板300に実装されたCPU301から複数(例えば二つ)のファン302,303に入力することにより、これらファン302,303の回転数を変更させて最適なファン風量および騒音レベルを得るようになっている。
【0004】
しかし、このように、予め設定した制御信号でファン302,303の回転数を制御する構成においては、ファン自体の個体ばらつきや供給する電源電圧のばらつき等を考慮すると、装置毎に同じ制御信号を入力しても厳密には、同じファン回転数(騒音レベル)が得られないという問題がある。
【0005】
このような事情から、従来、いわゆるANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)システムとして、ファンの近傍に発音体としてスピーカーを配置し、このスピーカーからの音声によりファンの騒音を打ち消すようにした技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、待機中に回転しているファンに対して、予め記憶されたサンプリング音(最大スペクトラム周波数での信号)に基づいて逆位相の音声データを作成し、この逆位相の音声を出力して消音化するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平4−169401号公報
【特許文献2】特願2003−7794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記ANCを導入した従来技術では、一つのファンに対しての騒音打ち消し作用が低周波数帯域に限ってはある程度有効であるものの、高周波数帯域では、ほとんど消音効果が発揮されにくい傾向にある。とくに、複数のファンを有している場合には、一つの場合に比べて騒音のピークやアベレージのピークがでる周波数ポイント数が増えて、ANC制御を実施しても、完全に消音させることは難しく、却って音が大きくなってしまうことがあるという問題がある。
【0009】
また、予め記憶されたサンプリング音に基づいて逆位相の音声を出力する技術によっても、複数のファンに対しての消音作用は十分ではなかった。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の回転体を同時に回転させる際の動作音に対して、ANC制御を有効に発揮させて騒音低減効果の向上を図ることが可能な画像形成装置及び同装置の騒音防止方法を提供し、さらには前記騒音防止方法を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測手段と、計測された騒音を解析する解析手段と、前記解析手段による解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更手段と、前記特性変更手段により複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(2)前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークが低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する前項1に記載の画像形成装置。
(3)前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する前項1または2に記載の画像形成装置。
(4)前記騒音計測手段による複数の回転体の騒音計測、前記解析手段による解析、前記特性変更手段による回転体の駆動パラメータの調整、及び前記音声出力手段による音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるとともに、その時の各回転体の駆動パラメータ及び音声出力手段による音声出力のパラメータを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された駆動パラメータ及び音声出力パラメートを用いて、その後の各回転体の駆動と回転体の騒音に対する打ち消し制御が行われる前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(5)前記駆動パラメータの調整は、回転体の回転数及び/または位相の制御である前項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
(6)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、計測された騒音を解析する解析ステップと、前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、を備えたことを特徴とする画像形成装置の騒音防止方法。
(7)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、計測された騒音を解析する解析ステップと、前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラム。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、騒音計測手段により計測された複数の回転体の騒音が解析手段により解析され、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性が変更される。そして、複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声が発音体を通して出力される。つまり、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、ANC制御をより適用しやすい騒音特性に変更することができる。このため、ANC制御の実施による発音体からの音声で騒音の打ち消し作用を有効に発揮させることができる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークがANC制御の効果が効き易い低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータが調整されるから、更に大きな騒音防止効果を得ることができる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整するから、全体の騒音レベルのピークの数が減少し、ANS制御を行いやすくなる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、複数の回転体の騒音計測、解析、回転体の駆動パラメータの調整、及び音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるから、回転体の最新の状態に合致したANC制御を行うことができる。
【0016】
前項(5)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の回転数及び/または位相を制御することで、複数の回転体全体としての騒音特性を変更できる。
【0017】
前項(6)に記載の発明によれば、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、ANC制御をより適用しやすい騒音特性に変更することができるから、ANC制御の実施による発音体からの音声で騒音の打ち消し作用を有効に発揮させることができる。
【0018】
前項(7)に記載の発明によれば、複数の回転体の騒音を解析し、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更し、この状態でANC制御を行う処理を、画像形成装置のコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態にかかる画像形成装置が適用されたMFPを示す概略構成図である。
【図2】MFPの定着部のファン設置状況を示す斜視図である。
【図3】MFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】ANCの原理的構成図である。
【図5】ANCによる動作説明用の波形図である。
【図6】ANCによる騒音制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】ANCが導入された回転体制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】騒音源である複数のファンの回転数制御前(図8(A))と制御後(図8(B))における騒音レベルと中心周波数との関係を示すグラフである。
【図9】電源ON時もしくは画像安定化制御時に行われるANC制御の前の調整段階での制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートの一部である。
【図11】従来の回転体制御の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態にかかる画像形成装置が適用されたMFPを示す概略構成図である。
【0022】
図1において、このMFP100は、原稿画像を読み取る読み取り部105と、画像処理部106と、画像データを印刷する画像形成部107と、用紙給紙部201と、排紙部101とを備えている。
【0023】
前記画像形成部107は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)にそれぞれ対応する画像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kや転写ベルト51等を有している他、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部400等を有している。
【0024】
前記画像読み取り部105で原稿画像が読み取られ、その画像データは、画像処理部106で処理されて、画像形成部107に送給される。ここで、画像データは、画像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kにより各色の画像データに対応したトナー像が形成され、各色のトナー像は、転写ベルト51に転写される。
【0025】
一方、給紙部201から給紙された用紙は、画像形成部107まで搬送される。そして、前記転写ベルト51から各色のトナー像が用紙に転写された後、この用紙は、定着部400に搬送されてトナー像を定着された後、排紙部101に排紙される。
【0026】
前記定着部400には、図2に示すように、用紙を冷却したり、用紙の付着を防止するために、ファン406,407が設置されている。
【0027】
また、これらファン406,407の近傍には、ファン406,407の回転動作時の騒音に対する消音データを発するための発音体としてのスピーカー404や、マイクロフォン(以下、マイクという)405が配設されており、前述したANC制御(図4参照)を行いうるものとなされている。
【0028】
図3は、このMFP100の電気的構成を示すブロック図である。
【0029】
図3において、このMFP100は、CPUを備えた制御部101と、操作パネル部102と、ROM103と、RAM104と、画像読み取り部105と、画像処理部106と、画像形成部107と、データ記憶部108と、外部インターフェース(I/F)部109と、ユーザ識別部110とを備えている。
【0030】
前記制御部101は、MFP100の全体の動作を統括的に制御するが、この実施形態では、前述したANC制御などを実行する。
【0031】
前記操作パネル部102は、例えばLCD等からなる表示部102Aと、キー部102Bとを備えている。表示部102Aは、様々な機能の操作設定を行う際に使用でき、また、各種メッセージ等が表示可能である。また、キー部102は、例えばテンキー、スタートボタン、ストップボタン等を有している。
【0032】
前記ROM103は、前記制御部101の動作プログラムが格納されたメモリである。
【0033】
前記RAM104は、制御部101が動作する際の作業領域を提供するメモリである。
【0034】
前記画像読み取り部105は、原稿等の画像を読み取り電子データ化するものである。
【0035】
前記画像処理部106は、画像読み取り部105からの画像データに所定の画像処理を施して画像形成部107に送出するものである。
【0036】
前記画像形成部107は、画像データを所定のジョブ条件に従って用紙にプリントするためのエンジン機能を有するものである。
【0037】
前記データ記憶部108は、各種データを記憶するものである。ここでは、前記ファン406,407の回転動作時に発生する騒音を計測したデータやデータの解析結果ないしはファン406,407の回転数や位相を制御した後のデータや消音用の逆位相データを記憶している。
【0038】
前記外部I/F部109は、例えば社内LAN等のネットワーク111を介して接続された図示しないユーザ端末(例えばパーソナルコンピュータ:PCという)との間でのデータの送受信を行う通信機能を有するものである。
【0039】
前記ユーザ識別部110は、例えば赤外線センサ等により装置周囲に近接したユーザを検知したり、ログインするユーザIDを無線通信で検出してユーザを識別する機能を有している。
【0040】
図4は、ANC制御機構の原理的構成図である。
【0041】
図4において、ANC制御機構は、主に、騒音源である回転体例えばファン11の近傍に配置された騒音集音用のマイク12と、マイク12からの音声信号を受けてファン11が発生する騒音波形と同振幅で逆位相の音声信号(図5参照)を生成する信号処理部13と、信号処理部13で生成された逆位相の音声信号を出力する発音体としてのスピーカー14と、ファン11の騒音とスピーカー14の音声との相互干渉による合成音源を検出して前記信号処理部13にフィードバック信号として送出する誤差検出用のマイク15とを備えている。
【0042】
具体的には、マイク12により騒音源であるファン11の回転動作音が集音されて、信号処理部13により騒音レベルが計測される。一方、信号処理部13により騒音レベルと同じ振幅で逆位相の音声信号が生成され、逆位相音声用のスピーカー14を介して前記逆位相の音声信号が出力される。これにより、図5に示すように、ファン11からの騒音と逆位相の音声との相互干渉により該ファン11からの騒音が打ち消される。
【0043】
さらに、マイク15により、ファン11からの騒音とスピーカー14からの逆位相音声との相互干渉による合成音声が検出され、その検出信号が信号処理部13にフィードバックされることにより、逆位相の音声の振幅特性および位相特性が調整されるので、ファン11が発生する騒音に対する相殺効果が有効に発揮される。
【0044】
なお、フィードバック制御を行わず、誤差検出用のマイク15が不要な場合ある。
【0045】
図6は、ANCによる騒音制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
図6において、ステップS1では、ファン11で発生する騒音をマイク12により検知し、ステップS2では、信号処理部13により、計測した騒音に対する逆位相の音声信号を生成する。ステップS3では、信号処理部13により生成された逆位相音声をスピーカー14から出力して、ファン11で発生する騒音に対して合成させて相互干渉させる。
【0047】
ステップS4では、誤差検出用のマイク15により、ファン11で発生する騒音と前記スピーカー14からの逆位相音声との合成音声を計測し、ステップS5では、計測信号で信号処理部13にフィードバックをかけて、逆位相の音声の振幅特性および位相特性を調整する。
【0048】
ステップS6では、終了指示があるか否かを判断し、終了指示がなければ(ステップS6でNO)、ステップS5に戻り、終了指示があれば(ステップS6でYES)、そのまま終了する。
【0049】
図7は、ANCが導入された回転体制御部の構成を示すブロック図である。
【0050】
図7において、この回転体制御部は、制御基板400に実装されたCPU402(図3の制御部101に相当)と、ANC制御基板401に実装されるとともに、DSP(Digital Signal Processor) で構成された信号処理部403と、複数(例えば2個)のファン406,407の近傍に配置された集音用のマイク405と、信号処理部405によって生成された音声信号を出力する発音体としてのスピーカー404とを備えている。
【0051】
なお、この例では、騒音データの解析機能や音声の出力機能等を前記信号処理部403に持たせてあるが、これらの各機能を個別の手段で実現してもよく、またCPU402により実現しても良い。
【0052】
前記CPU402は、ファン406,407に対してモード毎に回転数の制御信号を送出するようになっている。勿論、前記CPU402と信号処理部403とで制御を振り分けなくても、どちらか一方ですべての制御を行わせるようにしてもよい。
【0053】
このような構成の回転制御においては、2つのファン406,407の回転による各騒音がマイク405で検出され、その検出された騒音信号が信号処理部403に送出され、信号処理部403により入力された各騒音レベルや周波数等が解析される。
【0054】
この解析結果、CPU402は、騒音レベルの一定のしきい値(例えば、図8に示す30dB)以上の騒音レベルの周波数ポイント数が所定数以上であると判断した場合には、ファン406,407のうちの少なくとも一方について、駆動パラメータである回転数および/または動作タイミング(位相)をずらして駆動させる。
【0055】
そして、再度、マイク405により騒音を集音し、前記信号処理部403により入力された各騒音の周波数が解析される。この解析により、一定のしきい値以上の騒音レベルの周波数ポイント数が所定数未満になるまで、上述の動作を繰り返す。その際、例えば4kHz以上の周波数帯域で騒音レベルが下がるように重み付けされた回転数及び/または位相の制御を行う。
【0056】
この回転数等の制御の終了後に、その時のファン駆動パラメータ値は、前記データ記憶部108(図3)に記憶される。その後、前述の制御により調整された波形に対して、前述のANC制御が行われ、ファン406,407の騒音が低減されるようになっている。
【0057】
ANC制御で使用された逆位相音声の波形データも前記データ記憶部108に記憶される。
【0058】
前記回転制御において、前記騒音の解析結果に基づいて、ANC制御が効かせやすい低周波帯域では、全体の騒音ピークの数が少ない状態となるようにファン406,407の回転数や位相を制御すれば、ANC制御の負担が軽減でき、しかも有効な騒音低減効果を得ることができる。
【0059】
また、前記騒音の解析結果に基づいて、ファン406,407の少なくとも一方の回転数や位相を制御して、高周波域の騒音レベルのピークを低周波域に移動させることで、ANC制御が効きやすくなる。
【0060】
さらに、前記騒音の解析したデータと前記データ記憶手段108に記憶されている騒音データとを比較し、低周波側においてANC制御による消音効果が大きいと判断された周波数帯に騒音ピークを合わせ込むようにファン406,407の回転数や位相を制御すれば、ANC制御による消音作用を容易、かつ効果的に発揮させることもできる。
【0061】
図8(A)(B)は、前記ファン406,407の回転数及び/または位相の変更前と変更後における騒音レベルと中心周波数との関係を示すグラフである。
【0062】
なお、前記信号処理部403で解析される騒音レベルのしきい値は、例えば30dBに設定されている。
【0063】
ここでは、2つのファン406,407の騒音レベルについて、しきい値30dBレベル以上のポイントに対して、高周波帯のピークから、一方のファン407を回転数や位相を変化させてピークが低周波側にずれるようことを確認しながら繰り返して制御を行う。
【0064】
ANC制御を効かせやすい低周波数側は、ピークが重なるようにしてピークの少ない状態にしてから、ANC制御を負担を軽減する。
【0065】
前記ファン406,407の回転数制御前においては、図8(A)で示すように、中心周波数1600Hzに2つのファン406,407の各騒音レベルのピークが重なっている。
【0066】
これに対して、ファン406,407の回転数制御後においては、図8(B)で示すように、一方のファン407については、回転数や位相を変更することにより、騒音レベルのピークが中心周波数1250Hzにシフトしている。つまり、騒音レベルのピークが低周波側にシフトされて、ANC制御が一層効きやすい状態となっている。
【0067】
また、ANC制御の効果が出しやすい低周波領域(1000Hz以下)の騒音レベルのピークは、ずれることなく、そのままに保持されている。
【0068】
また、ANC制御が難しくなってくる中心周波数2500〜3150Hzでも騒音レベルの低減効果が出ている。
【0069】
図9および図10は、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時もしくは画像安定化制御時に行われるANC制御をする前の調整段階での制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、MFP100のCPU101(402)が、ROM103などの記録媒体に記録された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0070】
図9において、ステップS11では、ファン406,407を動作させる。ステップS12では、ファン406,407が定常回転数に達したか否かを判断し、ファン406,407が定常回転数に達しなければ(ステップS12でNO)、達するまで待つ。ファン406,407が定常回転数に達すれば(ステップS12でYES)、ステップS13では、ファン406,407の騒音レベルを計測する。
【0071】
ステップS14では、計測したファン406,407の騒音に対して周波数解析を行い、ステップS15では、周波数数解析されたファン406,407の騒音データをデータ記憶部108に記憶させる。
【0072】
ステップS16では、周波数数解析されたファン406,407の騒音データについて、しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがあるか否かを判断し、しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがなければ(ステップS16でNO)、最終の騒音データをデータ記憶部108に記憶して終了する。
【0073】
しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがあれば(ステップS16でYES)、ステップS18では、ファン406,407の少なくとも一方に対する回転数及び/または位相の調整モードに入ってから、図10のステップS19に進む。
【0074】
図10において、ステップS19では、ファン406,407に対する回転数及び/または位相の調整が1回目か否かを判断し、ファン406,407に対する回転数及び/または位相の調整が1回目であれば(ステップS19でYES)、ステップS22では、ファン406、407のうち少なくとも一方の回転数および/または位相を変更してから、ステップS13(図9)に戻る。ファン406,407に対する回転数および/または位相の調整が1回目でなければ(ステップS19でNO)、ステップS20に進む。
【0075】
ステップS20では、ファン406,407の騒音について、1000Hz以上の周波数ポイントでピークがあるか否かを判断し、1000Hz以上の周波数ポイントでピークがあれば(ステップS20でYES)、ステップS21では、前回記憶された周波数解析データと今回記憶された周波数解析データとを比較して、周波数のピークが低域周波数側にずれたか否かを判断し、周波数のピークが低域周波数側にずれていれば(ステップS21でYES)、ステップS17に戻り、周波数のピークが低域周波数側にずれていなければ(ステップS21でNO)、ステップS22を経て、ステップS13に戻る。
【0076】
1000Hz以上の周波数ポイントでピークがなければ(ステップS20でNO)、ステップS23では、前回記憶された周波数解析データと今回記憶された周波数解析データとを比較して、低周波側に周波数のピークが重なったか否かを判断し、低周波数側に周波数のピークが重なっていれば(ステップS23でYES)、ステップS17に進み、低域周波数側に周波数のピークが重なっていなければ(ステップS23でNO)、ステップS22を経て、ステップS13に戻る。
【0077】
前記制御を行うタイミングとしては、MFP100の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時ないしは画像安定化制御時に、前記回転数および/または位相制御を行った状態でANC制御を実施する。また、その時のデータを基に、MFP100の待機時ならびに印字終了から待機時に移行する間でANC制御のみを実施してもよい。
【0078】
また、印字時には、MFP100の待機時ならびに印字終了から待機時に移行する間でANC制御した時の逆位相波形を出力してもよい。
【0079】
なお、この例では、2つのファン406,407の騒音対策について説明したが、ファンの数は3個以上の場合も同様の制御により騒音値を低減することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 MFP(画像形成装置)
108 記憶部
402 CPU
405 マイクロフォン
403 信号処理部(音声出力部、解析部)
404 スピーカー
406,407 ファン
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファン等の回転体に対する騒音防止機能を備えたMFP(Multi Function Peripherals)等に適用される画像形成装置、同装置の騒音防止方法及び騒音防止プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MFP等の画像形成装置では、定着部の上側に用紙冷却や用紙付着防止のために複数のファンが設けられているが、これらファンが回転動作音が騒音源となっており、オフィス環境の静音化が推進されている現今では、有効な対策が求められている。
【0003】
一般に、上記のようなファンに対する回転制御は、図11に示すように、モード(例えばモノクロモード、カラーモード)毎に予め設定した制御信号を制御基板300に実装されたCPU301から複数(例えば二つ)のファン302,303に入力することにより、これらファン302,303の回転数を変更させて最適なファン風量および騒音レベルを得るようになっている。
【0004】
しかし、このように、予め設定した制御信号でファン302,303の回転数を制御する構成においては、ファン自体の個体ばらつきや供給する電源電圧のばらつき等を考慮すると、装置毎に同じ制御信号を入力しても厳密には、同じファン回転数(騒音レベル)が得られないという問題がある。
【0005】
このような事情から、従来、いわゆるANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)システムとして、ファンの近傍に発音体としてスピーカーを配置し、このスピーカーからの音声によりファンの騒音を打ち消すようにした技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、待機中に回転しているファンに対して、予め記憶されたサンプリング音(最大スペクトラム周波数での信号)に基づいて逆位相の音声データを作成し、この逆位相の音声を出力して消音化するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平4−169401号公報
【特許文献2】特願2003−7794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記ANCを導入した従来技術では、一つのファンに対しての騒音打ち消し作用が低周波数帯域に限ってはある程度有効であるものの、高周波数帯域では、ほとんど消音効果が発揮されにくい傾向にある。とくに、複数のファンを有している場合には、一つの場合に比べて騒音のピークやアベレージのピークがでる周波数ポイント数が増えて、ANC制御を実施しても、完全に消音させることは難しく、却って音が大きくなってしまうことがあるという問題がある。
【0009】
また、予め記憶されたサンプリング音に基づいて逆位相の音声を出力する技術によっても、複数のファンに対しての消音作用は十分ではなかった。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の回転体を同時に回転させる際の動作音に対して、ANC制御を有効に発揮させて騒音低減効果の向上を図ることが可能な画像形成装置及び同装置の騒音防止方法を提供し、さらには前記騒音防止方法を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測手段と、計測された騒音を解析する解析手段と、前記解析手段による解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更手段と、前記特性変更手段により複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(2)前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークが低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する前項1に記載の画像形成装置。
(3)前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する前項1または2に記載の画像形成装置。
(4)前記騒音計測手段による複数の回転体の騒音計測、前記解析手段による解析、前記特性変更手段による回転体の駆動パラメータの調整、及び前記音声出力手段による音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるとともに、その時の各回転体の駆動パラメータ及び音声出力手段による音声出力のパラメータを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された駆動パラメータ及び音声出力パラメートを用いて、その後の各回転体の駆動と回転体の騒音に対する打ち消し制御が行われる前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(5)前記駆動パラメータの調整は、回転体の回転数及び/または位相の制御である前項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
(6)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、計測された騒音を解析する解析ステップと、前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、を備えたことを特徴とする画像形成装置の騒音防止方法。
(7)複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、計測された騒音を解析する解析ステップと、前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラム。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、騒音計測手段により計測された複数の回転体の騒音が解析手段により解析され、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性が変更される。そして、複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声が発音体を通して出力される。つまり、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、ANC制御をより適用しやすい騒音特性に変更することができる。このため、ANC制御の実施による発音体からの音声で騒音の打ち消し作用を有効に発揮させることができる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークがANC制御の効果が効き易い低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータが調整されるから、更に大きな騒音防止効果を得ることができる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整するから、全体の騒音レベルのピークの数が減少し、ANS制御を行いやすくなる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、複数の回転体の騒音計測、解析、回転体の駆動パラメータの調整、及び音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるから、回転体の最新の状態に合致したANC制御を行うことができる。
【0016】
前項(5)に記載の発明によれば、被調整対象の回転体の回転数及び/または位相を制御することで、複数の回転体全体としての騒音特性を変更できる。
【0017】
前項(6)に記載の発明によれば、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、ANC制御をより適用しやすい騒音特性に変更することができるから、ANC制御の実施による発音体からの音声で騒音の打ち消し作用を有効に発揮させることができる。
【0018】
前項(7)に記載の発明によれば、複数の回転体の騒音を解析し、その解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更し、この状態でANC制御を行う処理を、画像形成装置のコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態にかかる画像形成装置が適用されたMFPを示す概略構成図である。
【図2】MFPの定着部のファン設置状況を示す斜視図である。
【図3】MFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】ANCの原理的構成図である。
【図5】ANCによる動作説明用の波形図である。
【図6】ANCによる騒音制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】ANCが導入された回転体制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】騒音源である複数のファンの回転数制御前(図8(A))と制御後(図8(B))における騒音レベルと中心周波数との関係を示すグラフである。
【図9】電源ON時もしくは画像安定化制御時に行われるANC制御の前の調整段階での制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートの一部である。
【図11】従来の回転体制御の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態にかかる画像形成装置が適用されたMFPを示す概略構成図である。
【0022】
図1において、このMFP100は、原稿画像を読み取る読み取り部105と、画像処理部106と、画像データを印刷する画像形成部107と、用紙給紙部201と、排紙部101とを備えている。
【0023】
前記画像形成部107は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)にそれぞれ対応する画像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kや転写ベルト51等を有している他、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部400等を有している。
【0024】
前記画像読み取り部105で原稿画像が読み取られ、その画像データは、画像処理部106で処理されて、画像形成部107に送給される。ここで、画像データは、画像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kにより各色の画像データに対応したトナー像が形成され、各色のトナー像は、転写ベルト51に転写される。
【0025】
一方、給紙部201から給紙された用紙は、画像形成部107まで搬送される。そして、前記転写ベルト51から各色のトナー像が用紙に転写された後、この用紙は、定着部400に搬送されてトナー像を定着された後、排紙部101に排紙される。
【0026】
前記定着部400には、図2に示すように、用紙を冷却したり、用紙の付着を防止するために、ファン406,407が設置されている。
【0027】
また、これらファン406,407の近傍には、ファン406,407の回転動作時の騒音に対する消音データを発するための発音体としてのスピーカー404や、マイクロフォン(以下、マイクという)405が配設されており、前述したANC制御(図4参照)を行いうるものとなされている。
【0028】
図3は、このMFP100の電気的構成を示すブロック図である。
【0029】
図3において、このMFP100は、CPUを備えた制御部101と、操作パネル部102と、ROM103と、RAM104と、画像読み取り部105と、画像処理部106と、画像形成部107と、データ記憶部108と、外部インターフェース(I/F)部109と、ユーザ識別部110とを備えている。
【0030】
前記制御部101は、MFP100の全体の動作を統括的に制御するが、この実施形態では、前述したANC制御などを実行する。
【0031】
前記操作パネル部102は、例えばLCD等からなる表示部102Aと、キー部102Bとを備えている。表示部102Aは、様々な機能の操作設定を行う際に使用でき、また、各種メッセージ等が表示可能である。また、キー部102は、例えばテンキー、スタートボタン、ストップボタン等を有している。
【0032】
前記ROM103は、前記制御部101の動作プログラムが格納されたメモリである。
【0033】
前記RAM104は、制御部101が動作する際の作業領域を提供するメモリである。
【0034】
前記画像読み取り部105は、原稿等の画像を読み取り電子データ化するものである。
【0035】
前記画像処理部106は、画像読み取り部105からの画像データに所定の画像処理を施して画像形成部107に送出するものである。
【0036】
前記画像形成部107は、画像データを所定のジョブ条件に従って用紙にプリントするためのエンジン機能を有するものである。
【0037】
前記データ記憶部108は、各種データを記憶するものである。ここでは、前記ファン406,407の回転動作時に発生する騒音を計測したデータやデータの解析結果ないしはファン406,407の回転数や位相を制御した後のデータや消音用の逆位相データを記憶している。
【0038】
前記外部I/F部109は、例えば社内LAN等のネットワーク111を介して接続された図示しないユーザ端末(例えばパーソナルコンピュータ:PCという)との間でのデータの送受信を行う通信機能を有するものである。
【0039】
前記ユーザ識別部110は、例えば赤外線センサ等により装置周囲に近接したユーザを検知したり、ログインするユーザIDを無線通信で検出してユーザを識別する機能を有している。
【0040】
図4は、ANC制御機構の原理的構成図である。
【0041】
図4において、ANC制御機構は、主に、騒音源である回転体例えばファン11の近傍に配置された騒音集音用のマイク12と、マイク12からの音声信号を受けてファン11が発生する騒音波形と同振幅で逆位相の音声信号(図5参照)を生成する信号処理部13と、信号処理部13で生成された逆位相の音声信号を出力する発音体としてのスピーカー14と、ファン11の騒音とスピーカー14の音声との相互干渉による合成音源を検出して前記信号処理部13にフィードバック信号として送出する誤差検出用のマイク15とを備えている。
【0042】
具体的には、マイク12により騒音源であるファン11の回転動作音が集音されて、信号処理部13により騒音レベルが計測される。一方、信号処理部13により騒音レベルと同じ振幅で逆位相の音声信号が生成され、逆位相音声用のスピーカー14を介して前記逆位相の音声信号が出力される。これにより、図5に示すように、ファン11からの騒音と逆位相の音声との相互干渉により該ファン11からの騒音が打ち消される。
【0043】
さらに、マイク15により、ファン11からの騒音とスピーカー14からの逆位相音声との相互干渉による合成音声が検出され、その検出信号が信号処理部13にフィードバックされることにより、逆位相の音声の振幅特性および位相特性が調整されるので、ファン11が発生する騒音に対する相殺効果が有効に発揮される。
【0044】
なお、フィードバック制御を行わず、誤差検出用のマイク15が不要な場合ある。
【0045】
図6は、ANCによる騒音制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
図6において、ステップS1では、ファン11で発生する騒音をマイク12により検知し、ステップS2では、信号処理部13により、計測した騒音に対する逆位相の音声信号を生成する。ステップS3では、信号処理部13により生成された逆位相音声をスピーカー14から出力して、ファン11で発生する騒音に対して合成させて相互干渉させる。
【0047】
ステップS4では、誤差検出用のマイク15により、ファン11で発生する騒音と前記スピーカー14からの逆位相音声との合成音声を計測し、ステップS5では、計測信号で信号処理部13にフィードバックをかけて、逆位相の音声の振幅特性および位相特性を調整する。
【0048】
ステップS6では、終了指示があるか否かを判断し、終了指示がなければ(ステップS6でNO)、ステップS5に戻り、終了指示があれば(ステップS6でYES)、そのまま終了する。
【0049】
図7は、ANCが導入された回転体制御部の構成を示すブロック図である。
【0050】
図7において、この回転体制御部は、制御基板400に実装されたCPU402(図3の制御部101に相当)と、ANC制御基板401に実装されるとともに、DSP(Digital Signal Processor) で構成された信号処理部403と、複数(例えば2個)のファン406,407の近傍に配置された集音用のマイク405と、信号処理部405によって生成された音声信号を出力する発音体としてのスピーカー404とを備えている。
【0051】
なお、この例では、騒音データの解析機能や音声の出力機能等を前記信号処理部403に持たせてあるが、これらの各機能を個別の手段で実現してもよく、またCPU402により実現しても良い。
【0052】
前記CPU402は、ファン406,407に対してモード毎に回転数の制御信号を送出するようになっている。勿論、前記CPU402と信号処理部403とで制御を振り分けなくても、どちらか一方ですべての制御を行わせるようにしてもよい。
【0053】
このような構成の回転制御においては、2つのファン406,407の回転による各騒音がマイク405で検出され、その検出された騒音信号が信号処理部403に送出され、信号処理部403により入力された各騒音レベルや周波数等が解析される。
【0054】
この解析結果、CPU402は、騒音レベルの一定のしきい値(例えば、図8に示す30dB)以上の騒音レベルの周波数ポイント数が所定数以上であると判断した場合には、ファン406,407のうちの少なくとも一方について、駆動パラメータである回転数および/または動作タイミング(位相)をずらして駆動させる。
【0055】
そして、再度、マイク405により騒音を集音し、前記信号処理部403により入力された各騒音の周波数が解析される。この解析により、一定のしきい値以上の騒音レベルの周波数ポイント数が所定数未満になるまで、上述の動作を繰り返す。その際、例えば4kHz以上の周波数帯域で騒音レベルが下がるように重み付けされた回転数及び/または位相の制御を行う。
【0056】
この回転数等の制御の終了後に、その時のファン駆動パラメータ値は、前記データ記憶部108(図3)に記憶される。その後、前述の制御により調整された波形に対して、前述のANC制御が行われ、ファン406,407の騒音が低減されるようになっている。
【0057】
ANC制御で使用された逆位相音声の波形データも前記データ記憶部108に記憶される。
【0058】
前記回転制御において、前記騒音の解析結果に基づいて、ANC制御が効かせやすい低周波帯域では、全体の騒音ピークの数が少ない状態となるようにファン406,407の回転数や位相を制御すれば、ANC制御の負担が軽減でき、しかも有効な騒音低減効果を得ることができる。
【0059】
また、前記騒音の解析結果に基づいて、ファン406,407の少なくとも一方の回転数や位相を制御して、高周波域の騒音レベルのピークを低周波域に移動させることで、ANC制御が効きやすくなる。
【0060】
さらに、前記騒音の解析したデータと前記データ記憶手段108に記憶されている騒音データとを比較し、低周波側においてANC制御による消音効果が大きいと判断された周波数帯に騒音ピークを合わせ込むようにファン406,407の回転数や位相を制御すれば、ANC制御による消音作用を容易、かつ効果的に発揮させることもできる。
【0061】
図8(A)(B)は、前記ファン406,407の回転数及び/または位相の変更前と変更後における騒音レベルと中心周波数との関係を示すグラフである。
【0062】
なお、前記信号処理部403で解析される騒音レベルのしきい値は、例えば30dBに設定されている。
【0063】
ここでは、2つのファン406,407の騒音レベルについて、しきい値30dBレベル以上のポイントに対して、高周波帯のピークから、一方のファン407を回転数や位相を変化させてピークが低周波側にずれるようことを確認しながら繰り返して制御を行う。
【0064】
ANC制御を効かせやすい低周波数側は、ピークが重なるようにしてピークの少ない状態にしてから、ANC制御を負担を軽減する。
【0065】
前記ファン406,407の回転数制御前においては、図8(A)で示すように、中心周波数1600Hzに2つのファン406,407の各騒音レベルのピークが重なっている。
【0066】
これに対して、ファン406,407の回転数制御後においては、図8(B)で示すように、一方のファン407については、回転数や位相を変更することにより、騒音レベルのピークが中心周波数1250Hzにシフトしている。つまり、騒音レベルのピークが低周波側にシフトされて、ANC制御が一層効きやすい状態となっている。
【0067】
また、ANC制御の効果が出しやすい低周波領域(1000Hz以下)の騒音レベルのピークは、ずれることなく、そのままに保持されている。
【0068】
また、ANC制御が難しくなってくる中心周波数2500〜3150Hzでも騒音レベルの低減効果が出ている。
【0069】
図9および図10は、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時もしくは画像安定化制御時に行われるANC制御をする前の調整段階での制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、MFP100のCPU101(402)が、ROM103などの記録媒体に記録された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0070】
図9において、ステップS11では、ファン406,407を動作させる。ステップS12では、ファン406,407が定常回転数に達したか否かを判断し、ファン406,407が定常回転数に達しなければ(ステップS12でNO)、達するまで待つ。ファン406,407が定常回転数に達すれば(ステップS12でYES)、ステップS13では、ファン406,407の騒音レベルを計測する。
【0071】
ステップS14では、計測したファン406,407の騒音に対して周波数解析を行い、ステップS15では、周波数数解析されたファン406,407の騒音データをデータ記憶部108に記憶させる。
【0072】
ステップS16では、周波数数解析されたファン406,407の騒音データについて、しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがあるか否かを判断し、しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがなければ(ステップS16でNO)、最終の騒音データをデータ記憶部108に記憶して終了する。
【0073】
しきい値以上の騒音レベルの周波数ポイントがあれば(ステップS16でYES)、ステップS18では、ファン406,407の少なくとも一方に対する回転数及び/または位相の調整モードに入ってから、図10のステップS19に進む。
【0074】
図10において、ステップS19では、ファン406,407に対する回転数及び/または位相の調整が1回目か否かを判断し、ファン406,407に対する回転数及び/または位相の調整が1回目であれば(ステップS19でYES)、ステップS22では、ファン406、407のうち少なくとも一方の回転数および/または位相を変更してから、ステップS13(図9)に戻る。ファン406,407に対する回転数および/または位相の調整が1回目でなければ(ステップS19でNO)、ステップS20に進む。
【0075】
ステップS20では、ファン406,407の騒音について、1000Hz以上の周波数ポイントでピークがあるか否かを判断し、1000Hz以上の周波数ポイントでピークがあれば(ステップS20でYES)、ステップS21では、前回記憶された周波数解析データと今回記憶された周波数解析データとを比較して、周波数のピークが低域周波数側にずれたか否かを判断し、周波数のピークが低域周波数側にずれていれば(ステップS21でYES)、ステップS17に戻り、周波数のピークが低域周波数側にずれていなければ(ステップS21でNO)、ステップS22を経て、ステップS13に戻る。
【0076】
1000Hz以上の周波数ポイントでピークがなければ(ステップS20でNO)、ステップS23では、前回記憶された周波数解析データと今回記憶された周波数解析データとを比較して、低周波側に周波数のピークが重なったか否かを判断し、低周波数側に周波数のピークが重なっていれば(ステップS23でYES)、ステップS17に進み、低域周波数側に周波数のピークが重なっていなければ(ステップS23でNO)、ステップS22を経て、ステップS13に戻る。
【0077】
前記制御を行うタイミングとしては、MFP100の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時ないしは画像安定化制御時に、前記回転数および/または位相制御を行った状態でANC制御を実施する。また、その時のデータを基に、MFP100の待機時ならびに印字終了から待機時に移行する間でANC制御のみを実施してもよい。
【0078】
また、印字時には、MFP100の待機時ならびに印字終了から待機時に移行する間でANC制御した時の逆位相波形を出力してもよい。
【0079】
なお、この例では、2つのファン406,407の騒音対策について説明したが、ファンの数は3個以上の場合も同様の制御により騒音値を低減することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 MFP(画像形成装置)
108 記憶部
402 CPU
405 マイクロフォン
403 信号処理部(音声出力部、解析部)
404 スピーカー
406,407 ファン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測手段と、
計測された騒音を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更手段と、
前記特性変更手段により複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークが低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記騒音計測手段による複数の回転体の騒音計測、前記解析手段による解析、前記特性変更手段による回転体の駆動パラメータの調整、及び前記音声出力手段による音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるとともに、その時の各回転体の駆動パラメータ及び音声出力手段による音声出力のパラメータを記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段に記憶された駆動パラメータ及び音声出力パラメートを用いて、その後の各回転体の駆動と回転体の騒音に対する打ち消し制御が行われる請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動パラメータの調整は、回転体の回転数及び/または位相の制御である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、
計測された騒音を解析する解析ステップと、
前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、
前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、
を備えたことを特徴とする画像形成装置の騒音防止方法。
【請求項7】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、
計測された騒音を解析する解析ステップと、
前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、
前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、
を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラム。
【請求項1】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測手段と、
計測された騒音を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更手段と、
前記特性変更手段により複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の高周波域の騒音レベルのピークが低周波域に移動するように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特性変更手段は、被調整対象の回転体の低周波域の騒音レベルのピークが、他の回転体の騒音レベルのピークと重なるように、前記被調整対象の回転体の駆動パラメータを調整する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記騒音計測手段による複数の回転体の騒音計測、前記解析手段による解析、前記特性変更手段による回転体の駆動パラメータの調整、及び前記音声出力手段による音声の出力が、画像形成装置の電源ON時、節電モードから復帰後のイニシャル動作時、画像安定化時の少なくともいずれかに行われるとともに、その時の各回転体の駆動パラメータ及び音声出力手段による音声出力のパラメータを記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段に記憶された駆動パラメータ及び音声出力パラメートを用いて、その後の各回転体の駆動と回転体の騒音に対する打ち消し制御が行われる請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動パラメータの調整は、回転体の回転数及び/または位相の制御である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、
計測された騒音を解析する解析ステップと、
前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、
前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、
を備えたことを特徴とする画像形成装置の騒音防止方法。
【請求項7】
複数の回転体の騒音を計測する騒音計測ステップと、
計測された騒音を解析する解析ステップと、
前記解析ステップにおける解析結果に基づいて、被調整対象である少なくともいずれかの回転体の駆動パラメータを調整することにより、前記複数の回転体全体としての騒音特性を変更する特性変更ステップと、
前記特性変更 ステップにおいて複数の回転体全体としての騒音特性を変更された状態で、前記複数の回転体の騒音を打ち消すための音声を発音体を通して出力する音声出力ステップと、
を画像形成装置のコンピュータに実行させるための騒音防止プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−252984(P2011−252984A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125366(P2010−125366)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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