説明

画像形成装置および両面画像形成方法

【課題】電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に熱定着によって可視画像を形成した場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができ、しかも熱定着に係る熱源から供給すべき熱量の低減化を図ることのできる画像形成装置および両面画像形成方法の提供。
【解決手段】画像形成装置は、前記画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構を備え、熱循環機構が、吸熱部により、一面に可視画像が形成され、画像形成支持体反転部を経て再び画像形成部に供給された画像形成支持体の表面温度をトナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内の温度にまで冷却し、放熱部により、画像形成支持体反転部を経ることなく画像形成部に供給される両面未処理の画像形成支持体を予熱するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置および両面画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子写真方式の画像形成装置においては、いわゆる電子RDH(Recirculating Document Handler)を利用して電子的に両面印字が行われている。この電子RDHによる両面印字は、従来のアナログ複写機によって両面印字を行う方式とは異なり、画像形成支持体の一面に印字されたものをストックすることなく、直ちに当該画像形成支持体の他面に連続して印字することができる。すなわち、デジタル信号に変換された画像情報に基づき、静電潜像担持体上に第1の静電潜像を形成し、この静電潜像に基づいてトナー像を形成し、このトナー像を画像形成支持体の一面上に転写および定着処理した後、当該画像形成支持体をストックすることなく直ちにこの画像形成支持体の他面上に前記静電潜像担持体上に形成された第2の静電潜像に基づいて形成されたトナー像を転写および定着処理することにより、両面印字が行われる。
【0003】
この電子RDHを利用した両面画像形成方法においては、定着処理が一般的に加熱方式によって行われている。このような場合には、第1の静電潜像に基づく可視画像が一面に形成された画像形成支持体は、定着処理による熱を保有した高温状態とされており、この高温状態のまま静電潜像担持体に形成された第2の静電潜像に基づくトナー像が転写されることとなるため、このトナー像の転写過程において、画像形成支持体と静電潜像担持体とが密着した状態とされることによって画像形成支持体の保有している熱が静電潜像担持体に移行され、これにより、静電潜像担持体が加熱されて高温となることに起因して熱劣化などが生じてしまう、という問題がある。
しかも、静電潜像担持体が高温となることによっては、定着処理が加熱方式によって行われる場合に用いられる現像剤が、当該現像剤を構成するトナーとして、軟化点温度およびガラス転移点温度が比較的低い結着樹脂を含有するものであることから、静電潜像担持体上にトナーが融着することに起因するクリーニング不良などが生じてしまう、という問題がある。
【0004】
一方、画像形成装置においては、画像形成装置を構成する構成要素を冷却あるいは加熱するために蓄熱材を用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照。)。
特許文献1には、定着装置において、蓄熱材よりなる蓄熱部材を加熱ローラに接触可能に配設し、この蓄熱部材を、加熱ローラと離間した状態において当該加熱ローラなどからの輻射熱や空気を介した熱伝導により蓄熱しておき、加熱ローラの温度が所期の温度よりも低下した場合に、蓄熱部材を接触させて加熱ローラを加熱することが開示されている。
特許文献2には、現像装置や定着装置などの自らの発熱あるいは周囲からの受熱によって温度上昇する画像形成装置の構成要素を、蓄熱材を用いることによって冷却することが開示されている。
特許文献3には、定着装置あるいは原稿照明用ランプなどの構成要素において生じる熱を、ダクト、ヒートパイプまたは金属部材よりなる熱輸送手段を介して蓄熱材に蓄熱し、その熱を画像形成支持体の除湿用に利用することが開示されている。
特許文献4には、定着装置において生じる熱を、ヒートパイプよりなる熱輸送手段を介して蓄熱材に蓄熱し、その熱を画像形成支持体の除湿用または原稿読取装置の結露防止用に利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−225256号公報
【特許文献2】特開2008−116681号公報
【特許文献3】特開2006−154673号公報
【特許文献4】特開2004−061580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に熱定着によって可視画像を形成した場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができ、しかも熱定着に係る熱源から供給すべき熱量の低減化を図ることのできる画像形成装置および両面画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、結着樹脂および着色剤を含有するトナーによって現像してトナー像を形成し、当該トナー像を画像形成支持体上に転写し、この転写されたトナー像に対して熱定着処理を行って画像形成支持体上に可視画像を形成する画像形成部と、当該画像形成部を通る画像形成支持体処理用搬送路に連続し、一面に可視画像が形成された画像形成支持体を反転した状態で再び画像形成部に供給するための画像形成支持体反転用搬送路よりなる画像形成支持体反転部とを有する画像形成装置において、
前記画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構が設けられており、
当該熱循環機構が、吸熱部により、画像形成部において一面に可視画像が形成され、画像形成支持体反転部を経て再び画像形成部に供給された画像形成支持体の表面温度をトナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内の温度にまで冷却し、放熱部により、画像形成支持体反転部を経ることなく画像形成部に供給される両面未処理の画像形成支持体を予熱するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の両面画像形成方法は、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、結着樹脂および着色剤を含有するトナーによって現像してトナー像を形成し、次いで、当該トナー像を画像形成支持体の一面上に転写し、この転写されたトナー像に対して画像形成支持体の一面に係る熱定着処理を行って可視画像を形成する第1の可視画像形成処理を行った後、この第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像の形成された画像形成支持体を画像形成支持体反転用搬送路において反転した状態とすると共に、前記静電潜像担持体上にトナー像を形成し、次いで、当該トナー像を前記画像形成支持体の他面上に転写し、この転写されたトナー像に対して画像形成支持体の他面に係る熱定着処理を行って可視画像を形成する第2の可視画像形成処理を行う両面画像形成方法において、
前記画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により、両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構により、当該吸熱部によって第1の可視画像形成処理により一面にのみ可視画像が形成された画像形成支持体の表面温度がトナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内の温度にまで冷却され、当該放熱部によって第1の可視画像形成処理に供される画像形成支持体が予熱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置においては、定着処理が加熱方式によって行われることから、画像形成支持体の両面に可視画像を形成する場合には、一面に可視画像の形成された画像形成支持体は画像形成部において熱定着処理による熱を保有した高温状態とされるが、画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構が設けられており、この熱循環機構により、一面に可視画像の形成された画像形成支持体の熱が吸熱部において蓄熱材に受熱され、これにより、当該画像形成支持体の表面温度が特定の温度にまで冷却される。このようにして、一面に可視画像の形成された画像形成支持体を再び画像形成部に供給される以前に冷却することにより、一面に可視画像の形成された画像形成支持体の他面に可視画像を形成する過程中に、画像形成支持体がトナー像の形成された静電潜像担持体に密着した状態において、当該画像形成支持体から熱が移行されることに起因する静電潜像担持体の温度上昇が抑制されるため、静電潜像担持体の熱劣化を抑制することができると共に、静電潜像担持体上においてトナーが過剰に加熱されることに起因する静電潜像担持体上におけるトナーの融着およびトナーの熱劣化などの弊害の発生を抑制することができる。しかも、熱循環機構の吸熱部において吸収された熱が廃棄されることなく有効に利用され、放熱部によって画像形成支持体反転部を経ることなく画像形成部に供給される両面未処理の画像形成支持体が予熱されることから、画像形成支持体の一面における熱定着処理において、熱源から供給することが必要とされる熱源を小さくすることができる。
従って、本発明の画像形成装置によれば、電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に熱定着によって可視画像を形成した場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができ、しかも熱定着に係る熱源から供給すべき熱量の低減化を図ることができる。
【0010】
本発明の両面画像形成方法によれば、画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構により、吸熱部によって第1の可視画像形成処理により一面にのみ可視画像が形成された画像形成支持体の表面温度が冷却され、かつ放熱部によって第1の可視画像形成処理に供される画像形成支持体が予熱されるため、電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に熱定着によって可視画像を形成した場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができ、しかも熱定着に係る熱源から供給すべき熱量の低減化を図ることができる。
すなわち、第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像の形成された画像形成支持体は熱定着処理による熱を保有した高温状態とされるが、画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構により、一面に可視画像の形成された画像形成支持体の熱が吸熱部において蓄熱材に受熱され、これにより、当該画像形成支持体の表面温度が、第2の可視画像形成処理に供給される以前に特定の温度にまで冷却されることから、第2の可視画像形成処理中に、一面に可視画像の形成された画像形成支持体がトナー像の形成された静電潜像担持体に密着した状態において、当該画像形成支持体から熱が移行されることに起因する静電潜像担持体の温度上昇が抑制されるため、静電潜像担持体の熱劣化が抑制されると共に、静電潜像担持体上においてトナーが過剰に加熱されることに起因する静電潜像担持体上におけるトナーの融着およびトナーの熱劣化などの弊害の発生が抑制される。しかも、熱循環機構の吸熱部において吸収された熱が廃棄されることなく有効に利用され、放熱部によって第1の可視画像形成処理に供される両面未処理の画像形成支持体が予熱されることから、第1の可視画像形成処理における熱定着処理において、熱源から供給することが必要とされる熱量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の両面画像形成装置および両面画像形成方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明の画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
この両面画像形成装置10は、電子RDHを用いて画像形成支持体の両面に可視画像を形成するデジタル複写機であって、画像読み取り部A、画像処理部B、画像記憶部C、画像形成部Dおよび画像形成支持体反転部Eによって構成されている。
【0014】
画像読み取り部Aにおいては、原稿台ガラス122上に載置された原稿121に、ガイドレール上を移動するキャリッジ(図示せず)に設けられたハロゲン光源123によって当該原稿121に光が照射され、この原稿121からの反射光すなわち当該原稿121上の画像に対応する光学像が、ハロゲン光源123と共にキャリッジに設けられたミラー127、および前記ガイドレール上を移動する、一対のミラー124、125を有する可動ミラーユニット126を介してレンズ読み取りユニット128に導かれる。このレンズ読み取りユニット128は、結像レンズ129およびCCDラインセンサ130から構成されるものであり、このレンズ読み取りユニット128に導入された光学像は、結像レンズ129により収束されてCCDラインセンサ130の受光面に結像され、当該CCDラインセンサ130によってライン上の光学像が順次電気信号に光電変換される。
【0015】
具体的には、モータ(図示せず)によって、ハロゲン光源123およびミラー127、並びに可動ミラーユニット126が連動して駆動され、1頁分の原稿の画像情報がCCDラインセンサ130に画像データとして読み取られ、この画像読み取り部Aで読み取られた原稿121の画像データは、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理、変倍処理、γ補正などの各種画像処理が施された後、画像記憶部Cに格納される。
【0016】
81は、原稿台ガラス122上に読み取り原稿121を自動搬送する自動原稿送り装置であって、原稿セット台82上に読み取り原稿121を複数枚重ねてセットし、操作パネル80のコピーボタンを押すと、給紙ローラ83によってこの原稿121の各ページを1枚づつ取り出し、当該原稿121を、駆動ローラ84、従動ローラ92、および当該駆動ローラ84および従動ローラ92によって循環移動されるベルト86によって原稿台ガラス122上の所定位置に順次に自動搬送すると共に、読み取りの終了したページを原稿台ガラス122上から取除いて原稿排出ローラ87を介して原稿排出トレー94上に排出するものである。
この自動原稿送り装置81においては、1枚の両面原稿の両面を自動で読み取ることもできる。すなわち、両面原稿を原稿台ガラス122上に自動搬送してその片面の画像データを読み取った後、当該両面原稿を、ガイド板89、反転ローラ90、および図示されないソレノイドで駆動される切替えガイド88を備える反転機構によって両面原稿を逆転した状態で方向を転換させて、再度原稿台ガラス122の所定位置に自動搬送し、原稿の裏面の画像データを読み取ることができる。
【0017】
画像形成部Dにおいては、画像記憶部Cを経て出力された画像データに応じて、画像形成支持体上に可視画像が形成される。
すなわち、画像形成部Dにおいては、半導体レーザー(図示せず)によって発生されるレーザービームを画像データに基づいて変調し、この変調されたレーザービームを駆動モータ141により回転されるポリゴンミラー142によって回転走査させ、fθレンズ(図示せず)および反射ミラー143を介して、円筒状の基体21の外周面上に電荷発生層22および電荷輸送層23が形成されてなる有機静電潜像担持体(OPC)よりなり、図示しない駆動源からの動力により時計方向に回転される静電潜像担持体20の表面上に照射し、例えばスコロトロン帯電器よりなる帯電器152によって予め一様に帯電された静電潜像担持体20上に像露光により静電潜像を形成させ、現像器153の回転される現像スリーブ153A上によってトナーを静電潜像担持体20の表面に搬送してトナー像を形成し、このトナー像が、タイミングを合わせてカセット171から供給され、画像形成支持体処理用搬送路174を搬送される画像形成支持体上に、転写極157により転写され、分離極158によって静電潜像担持体20から分離された後、例えばヒーター31Aよりなる熱源を内蔵する加熱ローラ31と加圧ローラ32とを備えた加熱方式の定着装置30において熱定着され、これにより、可視画像が形成される。なお、現像器153は、接触方式および非接触方式のいずれの現像方式のものであってもよい。
また、図1において159はクリーニング装置である。なお、クリーニング装置159は、ブレード方式およびブラシ方式のいずれのクリーニング方式のものであってもよい。
【0018】
画像形成支持体反転部Eにおいては、画像形成支持体反転用搬送路によって、画像形成部Dにおいて一面にのみ可視画像の形成された画像形成支持体のうちの他面にも可視画像を形成すべきものが、反転され、その反転した状態の画像形成支持体が再び画像形成部Dに向かって給送される。
すなわち、画像形成支持体反転部Eにおいては、一面にのみ可視画像が形成されて定着装置30から排出された画像形成支持体が、第1の切替え爪177が右上方向に伸びて、画像形成支持体処理用搬送路174に連続する両面複写用搬送路184の入口が開状態にされることによって下方に搬送され、両面複写用搬送路184の第2の切替え爪180が左下方向に伸びて両面複写用搬送路184の出口が開状態にされることによって反転ローラ181に搬送され、更にこの反転ローラ181が逆転すると共に前記第2の切替え爪180が左上方向に伸びて両面複写用搬送路184の出口が閉状態にされることによって表裏逆転された状態で反転搬送路183を、画像形成部Dに向かって搬送される。
この図の例においては、両面複写用搬送路184および反転搬送路183によって画像形成支持体反転用搬送路が形成されている。
【0019】
以上のように画像形成動作が行われる電子RDHによる両面画像形成装置においては、次のようにして両面画像形成処理が行われる。
すなわち、操作パネル80に設けられたコピーボタンを押すと、まず、上記のように画像読み取り部Aによって原稿121の両面の画像データが得られ、カセット171からストックされていた画像形成支持体が取り出され、複数の搬送ローラおよび搬送ベルトを有して構成される画像形成支持体搬送路175によって、画像形成部Dに給送され、当該画像形成部Dを通る画像形成支持体処理用搬送路174を搬送されることによって上記の画像形成動作が行われて画像形成支持体の一面上に原稿の表面の画像データに対応するトナー像が形成されて定着装置30において画像形成支持体の一面に係る熱定着処理が行われて可視画像が形成される。このようにして、第1の可視画像形成処理が行われる。
次いで、一面にのみ可視画像が形成された画像形成支持体が定着装置30から排出されると、当該画像形成支持体は、画像形成支持体反転用搬送路よりなる画像形成支持体反転部Eを経由することによって反転した状態とされた後、カセット171から供給されたときと同様にして画像形成支持体搬送路175によって再び画像形成部Dに給送され、画像形成支持体処理用搬送路174を搬送されることによって上記の画像形成動作が行われて画像形成支持体の他面上に原稿の裏面の画像データに対応するトナー像が形成されて定着装置30において画像形成支持体の他面に係る熱定着処理が行われて可視画像が形成される。このようにして、第2の可視画像形成処理が、第1の可視画像形成処理に続いて行われる。
そして、第1の切替え爪177が右下方向に伸びて両面複写用搬送路184の入口が閉状態にされることによって画像形成支持体排出トレー176から両面に画像が形成された画像形成支持体が機外に排出される。
【0020】
そして、この両面画像形成装置10には、画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部13と、当該吸熱部13において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部14とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構が設けられている。この熱循環機構は、吸熱部13と放熱部14との間において蓄熱材が連続的に循環されてなる構成を有するものである。
【0021】
熱循環機構によれば、吸熱部13において、第1の可視画像形成処理によって一面のみに可視画像が形成され、当該第1の可視画像形成処理に係る定着処理による熱を保有した状態の画像形成支持体から熱が受容され、これにより、当該画像形成支持体の表面温度、具体的には、定着装置30から排出され、両面複写用搬送路184および反転搬送路183よりなる画像形成支持体反転用搬送路上の吸熱部13の配設位置を通過した位置における画像形成支持体の一面における表面温度、すなわち、第2の可視画像形成処理に供されることとなる画像形成支持体の一面における表面温度が、トナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内、好ましくはガラス転移点温度(Tg)以内の温度にまで冷却される。
ここに、トナーのガラス転移点温度(Tg)とは、DSCにて測定された値をいい、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をガラス転移点温度とする。
具体的には、示差走査熱量計(DSC)を用い、100℃まで昇温しその温度にて3分間放置した後に降下温度10℃/minで室温まで冷却する。次いで、このサンプルを昇温速度10℃/minで測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点として示す。ここに、測定装置としては、パーキンエルマー社製のDSC−7などを使用することができる。
【0022】
熱循環機構によって一面のみに可視画像が形成された画像形成支持体が冷却され、その表面温度が上記の温度範囲とされることにより、第2の可視画像形成処理中において、一面に可視画像の形成された画像形成支持体からの熱が移行されることに起因する静電潜像担持体20の温度上昇が十分に抑制された状態となるため、静電潜像担持体20の熱劣化を抑制することができると共に、静電潜像担持体20上においてトナーが、当該トナーのガラス転移点温度(Tg)との関係において過剰に加熱されることを抑制することができ、その結果、静電潜像担持体20上におけるトナーの融着およびトナーの熱劣化などの弊害の発生を抑制することができる。
【0023】
一方、放熱部14においては、吸熱部13において吸収した熱が放出され、この熱により、画像形成支持体反転部Eを経ることなく画像形成部Dに供給される両面未処理の画像形成支持体、すなわちこれから第1の可視画像形成処理に供される画像形成支持体が予熱される。
【0024】
このような熱循環機構10を構成する蓄熱材としては、吸熱部13において一面にのみ可視画像が形成されており、第1の可視画像形成処理に係る定着処理による熱を保有した状態の画像形成支持体の表面温度の表面温度を、蓄熱材の有する、相変化が生じている間は一定温度を維持するという特性を利用することによって所望の温度範囲にまで冷却することができるものであればよく、用いられる現像剤を構成するトナーのガラス転移点温度(Tg)に応じて適宜のものを用いることができる。
【0025】
具体的に、蓄熱材としては、例えば酢酸ナトリウム水和物(融点:58℃、融解熱:264kJ/kg)、チオ硫酸ナトリウム水和物(融点:48℃、融解熱:197kJ/kg)、硫酸ナトリウム水和物(融点:32.4℃、融解熱:251kJ/kg)等の無機水和塩;C2042(融点:36.4℃、融解熱:247kJ/kg)、C2246(融点:44℃、融解熱:251kJ/kg)、C2450(融点:51℃、融解熱:255kJ/kg)等のn−パラフィンなどが挙げられる。
【0026】
両面画像形成装置10を構成する熱循環機構としては、具体的に、例えば蓄熱材そのもの、あるいは蓄熱材が適宜の手法によってマイクロカプセル化されたものおよび当該マイクロカプセル化された蓄熱材が水中に分散された状態のものが、無端パイプ状の蓄熱材容器16内に封入されており、この蓄熱材容器16内において、循環移送手段によって連続的に循環される構成の循環パイプ状体15よりなり、この循環パイプ状体15の一部分が画像形成支持体反転部Eを構成する画像形成支持体反転用搬送路(具体的には、両面複写用搬送路184および反転用搬送路183)を搬送される画像形成支持体に接触、あるいは近接するよう、当該画像形成支持体反転用搬送路の一部の領域に沿うように配設されることによって吸熱部13が構成され、他の一部分がカセット171内にストックされている画像形成支持体のうちの最上部に位置するもの、すなわちカセット171内において最も早くに第1の可視画像形成処理に供されることとなる画像形成支持体に接触、あるいは近接するように配設されることによって放熱部14が構成されてなるものを用いることができる。
ここに、吸熱部13および放熱部14が画像形成支持体に近接した状態とされる場合においては、その離間距離(近接距離)が1mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下である。
また、熱循環機構を構成する蓄熱材容器16としては、その材質が特に限定されるものではなく、蓄熱材を保持することができると共に、比較的優れた伝熱性を有する材料よりなるものを、例えば蓄熱材容器16に必要とされる配設位置との関係において必要とされる形状への加工性などを考慮して適宜に用いることができる。
蓄熱材容器16を構成する材料の具体例としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウムなどが挙げられる。これらの材料は、比較的優れた伝熱性を有すると共に成型性および加工性も良好であり、且つ、保持状態における精度をも確保することができるため、好ましい。このような材料よりなる蓄熱材容器16においては、その厚みが、強度および熱伝導の観点から、0.1〜2mmであることが好ましい。
【0027】
この図の例においては、熱循環機構を構成する循環パイプ状体15は、樹脂製の蓄熱材容器16を備え、その外観形状が略L字状とされており、L字状に係る一端部が画像形成支持体反転用搬送路を構成する両面複写用搬送路184上の搬送ローラ184A、184Bの間の領域を挟装し、この領域を通過する画像形成支持体の表裏面に接触するように配設され、これにより吸熱部13が形成されると共に、他端部がカセット171内にストックされている画像形成支持体のうちの最上部に位置するものに接触するように配設され、これにより放熱部14が形成されている。また、循環パイプ状体15には、吸熱部13を構成する一端部と放熱部14を構成する他端部との間の流路中にポンプよりなる循環移送手段(図示せず)が設けられており、このポンプによって蓄熱材が図1における矢印方向に連続的に循環されている。
【0028】
このような構成の熱循環機構は、少なくとも両面画像形成が行われる両面画像形成処理中において、蓄熱材が連続的に循環している状態とされ、これにより、吸熱部13による第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像の形成された画像形成支持体の冷却、および放熱部14による第1の可視画像形成処理に供されることとなる画像形成支持体の予熱が行われる。
すなわち、循環パイプ状体15よりなる熱循環機構によれば、第1の可視画像形成処理を経た画像形成支持体を再び画像形成部Dに供給する過程中において、第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像が形成され、第1の可視画像形成処理に係る定着処理による熱を保有した状態の画像形成支持体が、画像形成支持体反転用搬送路上の吸熱部13が配設されている部分において、当該吸熱部13に接触した状態とされ、これにより、当該画像形成支持体の熱が吸熱部13において蓄熱材に移行され、最終的には蓄熱材に、当該蓄熱材の相変化によって吸収されることにより、一面のみに可視画像が形成された画像形成支持体が冷却されて当該画像形成支持体の一面における表面温度が所望の温度範囲とされる。
また、このようにして吸熱部13において蓄熱材に蓄熱された熱は、循環移送手段によってあるいは蓄熱材の相変化によって放熱部14にまで移送され、この放熱部14において、当該放熱部14に接触した状態のカセット171における最上部に位置している画像形成支持体に対して蓄熱材から、当該蓄熱材の相変化によって放出される、すなわち移行されることにより、当該画像形成支持体が予熱される。
【0029】
〔画像形成支持体〕
本発明に用いられる画像形成支持体としては、トナー像を保持する支持体であって、具体的には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
〔現像剤〕
本発明に用いられる現像剤は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するトナーよりなるものであり、トナーのみよりなる磁性または非磁性の一成分現像剤であっても、また後述のキャリアが混合されてなる二成分現像剤であってもよい。
【0031】
〔トナー〕
現像剤を構成するトナーは、具体的には、例えば結着樹脂中に着色剤微粒子および必要に応じて離型剤や荷電制御剤などの内添剤の微粒子が含有された状態のカプセル型トナーであることが好ましい。
また、このトナーは低温定着型のものとして構成されていることが好ましい。
【0032】
このようなトナーを製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル分子伸長法その他の公知の方法などを挙げることができる。
【0033】
〔粉砕法〕
粉砕法は、以下のように行われる。すなわち、結着樹脂および着色剤を、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分と共にヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機により十分混合し、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕および分級することにより、トナー粒子を得ることができる。
【0034】
〔懸濁重合法〕
懸濁重合法は、以下のように行われる。すなわち、ラジカル重合性単量体中に離型剤や着色剤などのトナー構成成分、およびラジカル重合開始剤を添加し、次いでサンドグラインダーなどによってラジカル重合性単量体中にこれらを溶解あるいは分散させ、均一な単量体分散液を調製し、次いで、あらかじめ分散安定剤が添加された水系媒体中に前記単量体分散液を添加し、ホモミキサーや超音波分散などによって単量体分散液を水系媒体中に分散させ、油滴を形成させる。この油滴の粒径は最終的にトナーの粒径となるため、所望の粒径になるように制御して分散させる。分散される油滴の大きさとしては、体積基準のメジアン径にて3〜10μmとすることが好ましい。その後、加熱して重合処理し、重合反応終了後、分散安定剤を除去し、洗浄、乾燥することにより着色粒子を得、必要に応じて外添剤を添加、混合してトナー粒子を得ることができる。
【0035】
〔結着樹脂〕
トナーを構成するトナー粒子が粉砕法、溶解懸濁法などによって製造される場合には、トナーを構成する結着樹脂としては、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン置換体の重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などを挙げることできる。また、好ましい結着樹脂としては、1部または全部が架橋されたスチレン系樹脂を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
一方、トナーを構成するトナー粒子が懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナーを構成する各樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、架橋剤として、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどの多官能性ビニル類を重合性単量体として用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明に用いられる現像剤のトナーに含有される結着樹脂としては、定着性、保存性の観点から、ガラス転移点温度(Tg)が55℃未満のものが好ましい。
また、トナーを低温定着型のものとする場合においては、ガラス転移点温度(Tg)の異なる2種の樹脂によっていわゆるコアシェル構造が形成されてなるものであることが好ましく、このような構成のトナーにおいては、コア層をガラス転移点温度(Tg)が50℃未満の樹脂によって形成し、このコア層を被覆するシェル層をガラス転移点温度(Tg)が55℃以上の樹脂によって形成することが好ましい。
このようなコアシェル構造のトナーにおいては、トナー全体、すなわちトナーとしてのガラス転移点温度(Tg)が55℃未満であること好ましく、30〜50℃であることが好ましい。
トナーのガラス転移点温度(Tg)が30℃未満である場合には、保存条件によっては、シェル層を構成する樹脂としてガラス転移点温度(Tg)の高い樹脂が用いられていたとしても、トナー粒子間でのブロッキング、いわゆる凝集が発生してしまう問題が生じてしまうおそれがある。
【0039】
ここで、結着樹脂のガラス転移点温度(Tg)とは、DSCにて測定された値をいい、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をガラス転移点温度とする。
具体的には、トナーのガラス転移点温度と同様に、示差走査熱量計を用い、100℃まで昇温しその温度にて3分間放置した後に降下温度10℃/minで室温まで冷却する。次いで、このサンプルを昇温速度10℃/minで測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点として示す。ここに、測定装置としては、パーキンエルマー社製のDSC−7などを使用することができる。
【0040】
また、結着樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたスチレン換算分子量による分子量分布において、600〜50,000の範囲にピークまたはショルダーを有し、特に、低分子量成分のピークまたはショルダーが3,000〜15,000の範囲にあることが好ましく、さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が2〜100であるものが好ましい。
【0041】
ここに、GPCによる結着樹脂の分子量の測定方法は次のとおりである。すなわち、測定試料0.5〜5mg、例えば1mgに対してテトラヒドロフラン(THF)を1cc加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行って十分に溶解させ、次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCカラムに注入する。GPCの測定は、温度40℃にカラムを安定化させ、THFを毎分1ccの流速で流し、1mg/ccの濃度の試料を約100μL注入して、行う。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せ、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組み合わせなどを挙げることができる。検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)またはUV検出器を用いることができる。試料の分子量は、試料の有する分子量分布に基づき、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0042】
〔界面活性剤〕
トナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂を得るために使用する界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルフォン酸塩(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルフォン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。これらの界面活性剤はトナーを乳化重合法によって得る場合に乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0043】
〔分散安定剤〕
トナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法によって製造する場合には、容易に除去できる無機化合物よりなる分散安定剤を使用することもできる。分散安定剤としては、例えばリン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、親水性コロイダルシリカなどを挙げることができ、特にリン酸三カルシウムが好ましい。この分散安定剤は、塩酸などの酸によって容易に分解されるので、トナー粒子の表面から簡単に除去することができる。
【0044】
〔重合開始剤〕
トナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。
懸濁重合法を用いる場合においては油溶性ラジカル重合開始剤を用いることができ、油溶性重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0045】
〔連鎖移動剤〕
トナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素およびα−メチルスチレンダイマーなどが使用される。
【0046】
〔着色剤〕
トナーを構成する着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。以下に、具体的な着色剤を示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0047】
以上の着色剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
【0048】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを好ましく用いることができる。
【0049】
〔荷電制御剤〕
トナーを構成するトナー粒子中には、必要に応じて荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
【0050】
〔離型剤〕
また、トナーを構成するトナー粒子中には、必要に応じて離型剤が含有されていてもよい。離型剤としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、カルナバワックスおよびこれらの誘導体を挙げることができる。この誘導体としては、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合体、グラフト変性物などが挙げられる。また、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、酸アミド、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタムなども使用できる場合がある。
【0051】
〔トナー粒子の粒径〕
トナー粒子の粒径は、体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましく、特に3〜7μmであることが好ましい。
この粒径は、懸濁重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、油滴の分散径を調節することによって制御することができる。
体積基準のメジアン径が3〜8μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。
トナー粒子の体積基準のメジアン径は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、50μmのアパーチャーで、2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用いて測定することができる。
【0052】
トナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子、有機微粒子および滑剤を使用することができる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0053】
〔キャリア〕
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、特に限定されるものではなく、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
【0054】
キャリアは、その体積平均粒径が15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。
キャリアの体積平均粒径は、例えば湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0055】
また、キャリアとしては、磁性粒子が樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。
被覆用の樹脂組成としては、特に限定はなく、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂などが用いられる。
樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを用いることができ、具体的には、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂などを用いることができる。
【0056】
本発明に用いられる二成分現像剤におけるトナーおよびキャリアの混合比率は、二成分現像剤におけるトナー濃度が3〜20質量%、好ましくは4〜15質量%であることが好ましい。
【0057】
以上のように、両面画像形成装置10によって画像形成支持体の両面に可視画像を形成する両面画像形成処理が行われる場合においては、定着装置30が加熱方式によって定着処理を行うものであることから、第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像の形成された画像形成支持体は画像形成部Dにおいて熱定着処理による熱を保有した高温状態とされるが、画像形成支持体反転用搬送路における両面複写用搬送路184に設けられた吸熱部13と、カセット171にストックされている両面未処理の画像形成支持体に接触するよう設けられた放熱部14とを有する循環パイプ状体15よりなる熱循環機構により、一面に可視画像の形成された画像形成支持体の熱が吸熱部13において蓄熱材に受熱され、また相変化が生じている間には一定温度を維持するという蓄熱材の特性を利用した温度制御がなされることから、当該画像形成支持体の表面温度が特定の温度にまで冷却されることとなる。このようにして、画像形成支持体反転部Eにおいて、一面に可視画像の形成された画像形成支持体が再び画像形成部Dに供給される以前に冷却されることから、第2の可視画像形成処理中に、画像形成支持体がトナー像の形成された静電潜像担持体20に密着した状態において、当該画像形成支持体から熱が移行されることに起因する静電潜像担持体20の温度上昇が抑制されるため、静電潜像担持体20の熱劣化が抑制されると共に、静電潜像担持体20上においてトナーが、当該トナーのガラス転移点温度(Tg)との関係から過剰に加熱されることに起因する静電潜像担持体20上におけるトナーの融着およびトナーの熱劣化などの弊害の発生を抑制することができる。
しかも、熱循環機構の吸熱部13において吸収された熱は、蓄熱材容器16内を循環する蓄熱材によって放熱部14に移送され、この放熱部14において廃棄されることなく有効に利用されることとなり、具体的には、放熱部14によって第1の可視画像形成処理に供される両面未処理の画像形成支持体が予熱されることから、第1の可視画像形成処理における熱定着処理に係る熱源、すなわち定着装置30において加熱ローラ31を構成するヒーター31Aから供給することが必要とされる熱量を小さくすることができる。
【0058】
従って、両面画像形成装置10によれば、電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に、加熱方式による定着処理を行う第1の可視画像形成処理および第2の可視画像形成処理によって可視画像を形成させる場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができ、しかも熱定着に係る熱源から供給すべき熱量の低減化を図ることができる。
【0059】
また、両面画像形成装置10においては、静電潜像担持体20の温度上昇が抑制されることから、当該静電潜像担持体20上においてトナーが過剰に加熱されることに起因するトナーの熱劣化が抑制されるため、静電潜像担持体20に残留したトナーをクリーニング装置159によって回収し、現像器153に戻して再使用する、いわゆるトナーリサイクル方式を好適に採用することができる。
【0060】
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、熱循環機構は、画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により、両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有し、蓄熱材よりなるものであれば、上記のものに限定されず、蓄熱材を処理または加工することなどによって得られる長尺なシート状体よりなり、当該シート体の一端部が画像形成支持体反転用搬送路上を搬送される画像形成支持体に接触するように配設されており、他端部がカセット内にストックされている画像形成支持体のうちの最上部に位置するものに接触するように配設されている構成のものであってもよい。
ここに、シート状体としては、例えば蓄熱材そのもの、あるいは蓄熱材が適宜の手法によってマイクロカプセル化されたものおよび当該マイクロカプセル化された蓄熱材が水中に分散された状態のものが、例えばラミネートフィルムなどよりなるシート状の蓄熱材容器内に封入されてなる構成のもの、例えば紙、不織布、繊維およびフィルムなどのシート状の孔質体よりなる基材に充填されてなる構成のものなどを用いることができる。
【0061】
また、画像形成装置は、上述のようにモノクロ画像の形成に限定されず、カラー画像の形成にも適用することができる。このとき、イエロー、マゼンタ、シアン、黒色の各々に係る4種類のカラー現像器と、1つの静電潜像担持体とにより構成される4サイクル方式の両面画像形成装置や、各色に係るカラー現像器および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の両面画像形成装置など、いずれの構成のものとしてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0063】
(トナーの製造例1)
スチレンアクリル樹脂(ガラス転移点温度(Tg)56℃)100質量部、カーボンブラック8質量部およびペンタエリスリトールベヘン酸エステル4質量部を2軸押出機を用いて混練した後、固化し、その後、粉砕および分級し、更に疎水性シリカ1.2質量部および疎水性チタニア0.3質量部を外添混合することにより、粒子径が体積基準のメジアン径で6.3μmであってガラス転移点温度(Tg)が54℃であるトナー(以下、「トナー(1)」という。)を得た。
【0064】
(トナーの製造例2)
トナーの製造例1において、スチレンアクリル樹脂に代えてポリエステル樹脂(ガラス転移点温度(Tg)50℃)を用いたこと以外は当該トナーの製造例1と同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で6.1μmであってガラス転移点温度(Tg)が49℃であるトナー(以下、「トナー(2)」という。)を得た。
【0065】
(トナーの製造例3)
ポリエステル樹脂(ガラス転移点温度(Tg)36℃)100質量部、カーボンブラック8質量部およびペンタエリスリトールベヘン酸エステル4質量部を2軸押出機を用いて混練した後、冷凍粉砕し、冷却状態にて分級することにより、粒子径が体積基準のメジアン径で5.3μmであってガラス転移点温度(Tg)が34℃である着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子を界面活性剤を含有する水系媒体中に分散し、この系にガラス転移点温度(Tg)が55℃の樹脂よりなり、数平均一次粒子径が120nmである樹脂粒子の分散液を添加して、塩析によって着色樹脂粒子の表面に樹脂粒子を凝集させた後、90℃に加熱することによって着色樹脂粒子の表面に樹脂粒子を被覆した。その後、この系を冷却した後、濾過および洗浄し、更に疎水性シリカ1.2質量部および疎水性チタニア0.3質量部を外添混合することにより、コアシェル構造を有し、粒子径が体積基準のメジアン径で5.7μmであってガラス転移点温度(Tg)が42℃であるトナー(以下、「トナー(3)」という。)を得た。
【0066】
(トナーの製造例4)
トナー製造例3において、ガラス転移点温度が36℃のポリエステル樹脂に代えてガラス転移点温度が30℃のポリエステル樹脂を用いたこと以外は当該トナーの製造例3と同様にして、コアシェル構造を有し、粒子径が体積基準のメジアン径で5.7μmであってガラス転移点温度(Tg)が38℃であるトナー(以下、「トナー(4)」という。)を得た。
【0067】
〔実施例1〕
電子RDHを利用した画像形成装置「bizhub750」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製;75PPM(75枚/分);自動両面機構採用)を改造することにより、アルミニウム製であって厚み1mmの蓄熱材容器を備え、蓄熱材として酢酸ナトリウム水和物を用いた熱循環機構を装着した画像形成装置を作製した。この熱循環機構を備えた画像形成装置は、基本的には図1に示すような構造を有するものである。
【0068】
作製した熱循環機構を備えた画像形成装置を用い、温湿度30℃/50%RHの条件下において、原稿として、画素率が15%のハーフトーン画像が用紙先端から1/3の部分までの領域に形成されたA4画像を使用し、定着装置を構成する加熱ローラの表面温度を180℃に設定した条件にて、トナー(1)を一成分現像剤として用いることによってA4の転写紙に対して両面画像形成処理を行い、両面印字にて連続5万枚の画像形成を行った。形成された画像のうちの初期のもの(1枚目)と5万枚目のものについて、静電潜像担持体におけるトナーフィルミングによる画像カブリ(筋状のもの)の発生の有無を確認し、画像カブリの発生のない場合を「○」、画像カブリが発生した場合を「×」と評価した。
また、両面印字連続5万枚の両面画像形成処理後の静電潜像担持体上のトナーフィルミングの発生状態を目視にて確認し、トナーフィルミングの発生がない場合を「○」、一部にトナーフィルミングが確認できるものの、実用上問題のない場合を「△」、トナーフィルミングの発生が著しく、実用上問題が生じるおそれのある場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
また、両面画像形成処理中において、一面に可視画像が形成された転写紙の一面における表面温度を、画像形成支持体処理用搬送路上における吸熱部の配設位置を通過した位置において、非接触式温度計にて計測したところ、58℃であった。
【0069】
〔実施例2〜実施例9並びに比較例1および比較例2〕
実施例1において、熱循環機構を構成する蓄熱材として表1に示したものを用い、現像剤として表1に示すトナーよりなる一成分現像剤を用いたこと以外は当該実施例1と同様にして両面画像形成処理を行って画像カブリおよび静電潜像担持体上におけるトナーフィルミングの発生状態を確認した。結果を表1に示す。
また、両面画像形成処理中において、一面に可視画像が形成されて他面にトナー像が転写された転写紙の一面における表面温度を実施例1と同様の手法によって確認した。結果を表1に示す。
ここに、比較例1においては、画像形成装置内に配設された蓄熱材容器内に蓄熱材が封入されておらず、実質的に熱循環機構が設けられていない場合の例を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果から、電子RDHを利用して画像形成支持体の両面の各々に熱定着によって可視画像を形成した場合においても、安定して良好な可視画像を得ることができることが確認された。
また、実施例1〜実施例9に係る画像形成装置と、熱循環機構の設けられていない比較例1に係る画像形成装置とについて、両面画像形成処理中において、定着装置を構成する加熱ローラの熱源であるヒーターに供給される電力量を比較した。比較例1において消費された電力量を100%としたときの実施例1〜9において消費された電力量の相対比が、各々、実施例1においては74%、実施例2〜4においては85%、実施例5〜7においては88%、実施例8および9においては95%と、いずれの実施例に係る画像形成装置も比較例1に係る画像形成装置に比して消費された電力量が小さかった。このことから、熱循環機構を設けることにより、両面画像形成処理中において、熱定着に使用される電力量を低減することができ、省エネルギー効果があることが確認された。
【符号の説明】
【0072】
A 画像読み取り部
B 画像処理部
C 画像記憶部
D 画像形成部
E 画像形成支持体反転部
10 両面画像形成装置
13 吸熱部
14 放熱部
15 循環パイプ状体
16 蓄熱材容器
20 静電潜像担持体
21 基体
22 電荷発生層
23 電荷輸送層
30 定着装置
31 加熱ローラ
31A ヒーター
32 加圧ローラ
80 操作パネル
81 自動原稿送り装置
82 原稿セット台
83 給紙ローラ
84 駆動ローラ
86 ベルト
87 原稿排出ローラ
88 切替えガイド
89 ガイド板
90 反転ローラ
92 従動ローラ
94 原稿排出トレー
121 原稿
122 原稿台ガラス
123 ハロゲン光源
124 ミラー
125 ミラー
126 可動ミラーユニット
127 ミラー
128 レンズ読み取りユニット
129 結像レンズ
130 CCDラインセンサ
141 駆動モータ
142 ポリゴンミラー
143 反射ミラー
152 帯電器
153 現像器
153A 現像スリーブ
157 転写極
158 分離極
159 クリーニング装置
171 カセット
174 画像形成支持体処理用搬送路
175 画像形成支持体搬送路
176 画像形成支持体排出トレー
177 第1の切替え爪
180 第2の切替え爪
181 反転ローラ
183 反転搬送路
184 両面複写用搬送路
184A、184B 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、結着樹脂および着色剤を含有するトナーによって現像してトナー像を形成し、当該トナー像を画像形成支持体上に転写し、この転写されたトナー像に対して熱定着処理を行って画像形成支持体上に可視画像を形成する画像形成部と、当該画像形成部を通る画像形成支持体処理用搬送路に連続し、一面に可視画像が形成された画像形成支持体を反転した状態で再び画像形成部に供給するための画像形成支持体反転用搬送路よりなる画像形成支持体反転部とを有する画像形成装置において、
前記画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構が設けられており、
当該熱循環機構が、吸熱部により、画像形成部において一面に可視画像が形成され、画像形成支持体反転部を経て再び画像形成部に供給された画像形成支持体の表面温度をトナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内の温度にまで冷却し、放熱部により、画像形成支持体反転部を経ることなく画像形成部に供給される両面未処理の画像形成支持体を予熱するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、結着樹脂および着色剤を含有するトナーによって現像してトナー像を形成し、次いで、当該トナー像を画像形成支持体の一面上に転写し、この転写されたトナー像に対して画像形成支持体の一面に係る熱定着処理を行って可視画像を形成する第1の可視画像形成処理を行った後、この第1の可視画像形成処理によって一面に可視画像の形成された画像形成支持体を画像形成支持体反転用搬送路において反転した状態とすると共に、前記静電潜像担持体上にトナー像を形成し、次いで、当該トナー像を前記画像形成支持体の他面上に転写し、この転写されたトナー像に対して画像形成支持体の他面に係る熱定着処理を行って可視画像を形成する第2の可視画像形成処理を行う両面画像形成方法において、
前記画像形成支持体反転用搬送路に設けられた吸熱部と、当該吸熱部において吸収された熱により、両面未処理の画像形成支持体を加熱する放熱部とを有する蓄熱材よりなる熱循環機構により、当該吸熱部によって第1の可視画像形成処理により一面にのみ可視画像が形成された画像形成支持体の表面温度がトナーのガラス転移点温度(Tg)+10℃以内の温度にまで冷却され、当該放熱部によって第1の可視画像形成処理に供される画像形成支持体が予熱されることを特徴とする両面画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−2697(P2011−2697A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146368(P2009−146368)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】